特許第6158191号(P6158191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158191共摩耗型の微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースの安定化剤組成物、該組成物の製造方法および用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158191
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】共摩耗型の微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースの安定化剤組成物、該組成物の製造方法および用途
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/00 20160101AFI20170626BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20170626BHJP
   A23L 2/44 20060101ALI20170626BHJP
   A23L 23/00 20160101ALI20170626BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20170626BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20170626BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20170626BHJP
   C08L 1/26 20060101ALI20170626BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170626BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A23L29/00
   A23L2/00 E
   A23L2/00 P
   A23L23/00
   A23L29/20
   A23L33/10
   C08L1/02
   C08L1/26
   C08J3/20 ZCEP
   C08J3/12 101
   A61K8/73
   A61K47/38
【請求項の数】28
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-534544(P2014-534544)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2015-502136(P2015-502136A)
(43)【公表日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】US2012000482
(87)【国際公開番号】WO2013052118
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】61/543,660
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391022452
【氏名又は名称】エフ エム シー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【弁理士】
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】タン、ゼン
(72)【発明者】
【氏名】リンチ、マウリス ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ラスズカイ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】セストリック、マイケル
【審査官】 福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−505004(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/136157(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.微結晶セルロース、および、
b.10〜200cpsの粘度であって、置換度が約0.45〜約0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロース、を含む安定化剤組成物であって、
前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比は、約95:5〜約70:30であり、
2.6%の固形分濃度で水中に分散した場合、前記安定化剤組成物の初期の粘度は少なくとも750cpsであり、24時間後の粘度は少なくとも2900cpsであり、24時間後のゲル強度は少なくとも20Paである、
安定化剤組成物。
【請求項2】
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である、
請求項1の安定化剤組成物。
【請求項3】
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、
請求項2の安定化剤組成物。
【請求項4】
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、0.45〜0.80である、
請求項3の組成物。
【請求項5】
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.7である、
請求項4の組成物。
【請求項6】
前記初期の粘度は、750cps〜3000cpsである、
請求項1の組成物。
【請求項7】
前記24時間後の粘度は、3000cps〜7200cpsである、
請求項1の組成物。
【請求項8】
前記24時間後のゲル強度は、30Pa〜100Paである、
請求項1の組成物。
【請求項9】
a)微結晶セルロース、および、
b)200〜4000cpsの粘度であって、置換度が0.45〜0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロースを、含む安定化剤組成物であって、
前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比は、約95:5〜約70:30であり、
2.6%の固形分濃度で水中に分散した場合、前記安定化剤組成物の初期の粘度は、少なくとも1000cpsであり、24時間後の粘度は、少なくとも3500cpsであり、24時間後のゲル強度は少なくとも40Paである、
安定化剤組成物。
【請求項10】
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である、
請求項9の組成物。
【請求項11】
前記カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩は、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、
請求項10の安定化剤組成物。
【請求項12】
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、0.45〜0.80である、
請求項10の組成物。
【請求項13】
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.70である、
請求項12の組成物。
【請求項14】
前記24時間後のゲル強度は、45Pa〜100Paである、
請求項9の組成物。
【請求項15】
前記24時間後の粘度は、3500cps〜7200cpsである、
請求項9の組成物。
【請求項16】
前記初期の粘度は、1000cps〜3000cpsである、
請求項9の組成物。
【請求項17】
前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比は、約85:15である、
請求項1または9に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1または9の安定化剤組成物を含む、食用に適する食品製品。
【請求項19】
さらに、フルーツ、野菜、穀物、ナッツ、肉、および酪農食品からなる群から選ばれる少なくとも1種の食品を含む、
請求項18の食品製品。
【請求項20】
エマルション、飲料、ソース、スープ、シロップ、ドレッシング、フィルム、冷菓、発酵食品、パンの詰め物、パンのクリーム、超高温およびレトルト加工されたタンパク質および栄養補助飲料、超高温加工されたpHが低いタンパク質系の飲料、超高温加工されたカルシウム強化飲料、高温およびレトルト加工されたミルククリーム、含気酪農食品系、および含気非酪農食品系の形態を取る、
請求項19の食品製品。
【請求項21】
請求項1または請求項9の組成物を含む、工業用懸濁液であって、
前記工業用懸濁液は、医薬品製品、栄養補助製品、化粧品製品、パーソナルケア製品、消費製品、農業用製品、または化学製剤で使用するのに適する、
工業用懸濁液。
【請求項22】
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、
請求項21の工業的用懸濁液。
【請求項23】
a)少なくとも42%の固形分を有する微結晶セルロースのウェットケーキと、10〜200cpsまたは200〜4000cpsの粘度であって、置換度が約0.45〜0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロースとを、前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比が約95:5〜約70:30となるように混合するステップ、
b)ステップa)の混合物を、高剪断および高圧縮下で押し出し成形するステップ、および、
c)ステップb)の押し出し成形された製品を乾燥するステップ、を含む、
請求項1または請求項9の安定化剤組成物を作成する方法。
【請求項24】
前記MCCのウェットケーキの固形分は、42.5%〜50%である、
請求項25の方法。
【請求項25】
前記乾燥ステップcは、噴霧乾燥、流動層乾燥、フラッシュ乾燥、またはバルク乾燥によるものである、
請求項23の方法。
【請求項26】
ゲル強度が改良された安定化剤組成物を作成する方法であって、
前記方法は、
a)i.微結晶セルロースのウェットケーキ、
ii.乾燥したコロイド状の微結晶セルロース、および、
iii.置換度が0.45〜0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロースを混合するステップであって、ステップa)後の前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比が約95:5〜約70:30となり、a)iおよびa)iiのMCCの固形分の総量が少なくとも42%となるように混合するステップ、
b)ステップa)の混合物を押し出し成形するステップ、および、
c)ステップb)の押し出し成形された製品を、乾燥するステップ、を含み、
2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に分散した場合、ステップc)の製品の初期の粘度は少なくとも750cpsであり、24時間後の粘度は少なくとも2900cpsであり、ゲル強度は少なくとも35Paである、
安定化剤組成物を作成する方法。
【請求項27】
a)iおよびa)iiのMCCの固形分の総量は、42.5%〜50%である、
請求項26の方法。
【請求項28】
前記乾燥ステップcは、噴霧乾燥、流動層乾燥、フラッシュ乾燥、またはバルク乾燥によるものである、
請求項26の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に食品用途において、所定の乾燥粉末材料を含む水性媒体中で安定化剤および分散剤として使用する微結晶セルロース:カルボキシメチルセルロース組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微結晶セルロースは、MCCまたはセルロースゲルとしても知られ、最終の食品製品の性質または特性を向上させるために、一般に、食品分野で使用される。例えば、微結晶セルロースは、飲料を含む食品用途では、バインダ兼安定化剤、および安定化剤として使用されてきた。また、微結晶セルロースは、製薬錠剤中においてバインダ兼崩壊剤として使用され、液体の医薬製剤中において懸濁化剤として使用され、工業用途、洗剤および/または漂白剤の錠剤などの家庭用品、農業製剤、および歯磨粉および化粧品などのパーソナルケア製品おいてバインダ、崩壊剤、および加工助剤として使用されてきた。
【0003】
微結晶セルロースは、鉱酸、好ましくは、塩酸で、セルロース源、好ましくは、繊維状の植物材料から得られるパルプの形態をとるアルファセルロースを処理して製造される(酸加水分解)。前記酸は、セルロースポリマー鎖の配列の程度が劣る領域を選択的に攻撃し、それによって、微結晶セルロースを構成する結晶集合体を形成する結晶サイトを露にして攻撃されやすくする(freeing)。その後、これらは反応混合物から分離されて、分解後の副生成物を除去するために洗浄される。その結果生じる湿った集合物は、一般に、40〜60パーセントの水分を含み、当該技術分野では、「加水分解セルロース」、「加水分解セルロースのウェットケーキ」、「レベルオフDPセルロース」、「微結晶セルロースのウェットケーキ」、または単なる「ウェットケーキ」を含む、いくつかの名称で呼ばれる。
【0004】
旧来のMCCの製造プロセスは、精製されたセルロースの酸加水分解であり、O.A.Battistaが先駆者である(特許文献1、2、および3)。MCCの品質を維持または改良するとともに、コストを低減する試みでは、種々の代替プロセスが提案されてきた。これらの内訳は、蒸気爆砕(特許文献4、Haら)、反応押し出し成形(特許文献5、Hannaら)、1ステップの加水分解と漂白(特許文献6、Schaibleら)、および酸素および/または二酸化炭素ガスで加圧され、100〜200℃で運転する反応器内での半結晶セルロースと水反応性溶剤との部分的な加水分解(特許文献7、Bergfeldら)である。
【0005】
微結晶セルロースおよび/または加水分解セルロースのウェットケーキは、種々の用途のために、改変されてきた。食品製品において、該セルロースは、ゲル化剤、増粘剤、脂肪代替品および/またはノンカロリーのフィラーとして、並びに、懸濁安定化剤および/または調質剤として使用される。該セルロースは、医薬品および化粧品のローションおよびクリームにおいて、エマルション安定化剤および懸濁化剤としても使用される。このような用途の改変は、微結晶セルロースまたはウェットケーキを、大きな摩擦(高剪断)力に曝して実行される。その結果、微結晶は、実質的に細分化されて、微細化粒子が製造される。もっとも、粒子の大きさが小さくなるにつれ、個々の粒子は、乾燥時に集合し、角状になる傾向がある。(カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)などの)保護コロイドが、磨耗中または磨耗後であるが乾燥前に添加されてもよい。前記保護コロイドによって、小径粒子間に作用する水素または他の結合力の全部または一部が無効にされる。コロイド状の微結晶セルロースとは、例えば、特許文献8(Durandら)に開示されるカルボキシメチルセルロースで被覆される微結晶セルロースである。この添加物によって、乾燥後の材料の再分散も促進される。得られる材料は、摩耗後の微結晶セルロースまたはコロイド状の微結晶セルロースと呼ばれることが多い。
【0006】
水中に分散されているとき、コロイド状の微結晶セルロースは、粒径が1ミクロン未満の微結晶セルロース粒子とともに、白色の、不透明な、揺変性のゲルを形成する。(米国のペンシルバニア州のフィラデルフィアにある)エフ・エム・シー・コーポレーションは、この製品の種々のグレードを製造販売している。この製品には、特に、アヴィセル(AVICEL(登録商標))およびゲルスター(GELSTAR(登録商標))という名称で呼ばれ、共処理される微結晶セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムが含まれる。
【0007】
しかしながら、安定性が高められ、ゲル強度G’が改善され、種々の用途、特に、食品製品において有用である他の所望のレオロジー特性を有するコロイド状の微結晶セルロース:カルボキシメチルセルロース組成物を製造する方法に対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2978446号明細書
【特許文献2】米国特許第3023104号明細書
【特許文献3】米国特許第3146168号明細書
【特許文献4】米国特許第5769934号明細書
【特許文献5】米国特許第6228213号明細書
【特許文献6】国際公開第01/0244号
【特許文献7】米国特許第5543511号明細書
【特許文献8】米国特許第3539365号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コロイド状の微結晶セルロースを製造する方法を提供する。得られる本発明の製品は、20Paよりも大きく、好ましくは40Paよりも大きい高ゲル強度G’を示し、食用に適する食品製品中において、安定化剤および分散剤として有用である。
【0010】
本発明の方法は、i)固形分が少なくとも約42%である微結晶セルロースのウェットケーキ、およびii)置換度が0.45〜0.85であるカルボキシメチルセルロースを含む混合物であって、固形分が組み合わされた後の重量で、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースの重量比が95:5〜70:30である混合物を、十分な摩耗強度で押し出し成形するステップを含む。一実施形態では、微結晶セルロースのウェットケーキとカルボキシメチルセルロースとの重量比に、特定の重量比である85:15を用いる。前記混合物は、高剪断/高圧縮処理条件下で押し出し成形され、製品は乾燥される。
【0011】
使用されるカルボキシメチルセルロースの粘度が低く、その範囲が10〜200cps、好ましくは10〜100cps、さらに好ましくは30〜60cpsの場合、本発明に従って製造され、2.6%の固形分濃度で水中に分散される製品は、a)初期粘度が少なくとも740cpsであり、より好ましくは1000〜3000cpsであり、b)24時間後のセットアップ粘度が少なくとも2900cps、より好ましくは3000〜7500cps、さらに好ましくは3000〜7200cpsであり、c)ゲル強度G’が少なくとも20Pa、好ましくは少なくとも25Pa、さらに好ましくは30Pa〜100Paである。
【0012】
使用されるカルボキシメチルセルロースの粘度が中程度であり、その範囲が200〜4000cps、好ましくは200〜3000cps、より好ましくは300〜900cpsの場合、本発明の方法に従って製造され、2.6%の固形分濃度で水中に分散される製品は、a)初期粘度が少なくとも1000cps、少なくとも2000cps、好ましくは少なくとも2500cps、より好ましくは2500〜4500cpsであり、b)24時間後のセットアップ粘度が少なくとも3500cps、好ましくは3500〜7500cpsであり、c)ゲル強度G’が少なくとも40Pa、好ましくは40〜100Paである。
【0013】
一実施形態では、微結晶セルロースのウェットケーキの固形分は、少なくとも約42%〜60%であり、好ましくは42.5%〜55%であり。より好ましくは少なくとも42.5%〜50%である。微結晶セルロースのウェットケーキ材料は、必要に応じて、共処理前に長期の調製時間あるいは化学的または機械的な処理により、共摩耗の影響をより受け易くなるようにされてもよい。
【0014】
一実施形態では、カルボキシメチルセルロースの置換度は、0.45〜0.85であり、より好ましくは0.45〜0.80であり、最適には約0.7である。別の実施形態では、カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩であり、最適にはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0015】
さらなる実施形態は、本開示方法で製造される安定化剤組成物を含む食品製品を包含する。さらなる実施形態は、医薬品製品、栄養補助製品、ヘルスケア製品、化粧品製品、パーソナルケア製品、消費製品、農業用製品、または化学製剤での使用に適する安定化剤組成物を含む懸濁液を包含する。
【0016】
前述の実施形態の他の特徴および利益は、以下の詳細な説明と特許請求の範囲から明らかになるであろう。開示の実施形態は、単に、例示的なものであり、説明的なものであって、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、置換度(DS)が低いカルボキシメチルセルロースとともに共摩耗される少なくとも42%の固形分を含むウェットケーキで作成される、水分散性のコロイド状の微結晶セルロースを包含する。低粘度のカルボキシメチルセルロースが使用される場合、製品は、(水中において2.6%の分散体として測定される場合、)20Paよりも大きい高ゲル強度G’をもたらし、食用に適する食品製品において安定化剤として有用である。中粘度のカルボキシメチルセルロースが使用される場合、製品は、(水中において2.6%の分散体として測定される場合、)40Paよりも大きい高ゲル強度G’をもたらし、食用に適する食品製品において安定化剤として有用である。
【0018】
「コロイド」および「コロイド状」は、混合物中に懸濁されてもよい粒子を定義するために、本明細書において互換可能に使用される。当業者に公知のように、コロイド粒子は、ある特定の平均粒径のものである。例えば、約0.1〜10ミクロンのオーダーである。本願明細書で記載されるコロイド粒子は、コロイド状の懸濁液を形成できるのであれば、全ての好適な粒径であってもよい。
【0019】
「ゲル」とは、軟質の、固体の、または固体様状の材料であり、少なくとも2種の成分からなるものを言う。成分の1つは、大量に存在する液体である(Almdal,K.,Dyre,J.,Hvidt,S.,Kramer,O.;Towards a phenomological definition of the term‘gel’.Polymer and Gel Networks 1993,1,5−17)。
【0020】
「ゲル強度G」とは、可逆的に保存される系のエネルギー(弾性係数G’)のことを言い、本願明細書では、組成物に対しては、セルロース濃度の関数になっている。ゲル強度Gの測定は、1Hzおよび20℃での振動歪みの掃引条件にし、ギャップサイズを1.8mmにし、ティー・エイ・インスツルメントのレオメーター(ARES−RFS3)を用いて行う。試験は、脱イオン水中に固形分が2.6%分散された組成物を24時間かけてセットアップして行う。
【0021】
活性化された組成物(脱イオン水中に2.6%の固体が分散された材料)の初期粘度を得るため、ブルックフィールド粘度試験が使用される。この試験は、24時間後の粘度を得るために繰り返される。好適なスピンドルを有するRTV粘度計が、20℃〜23℃において、20rpmの条件で使用される。
【0022】
組成物を形成する方法が提供される。前記方法は、置換度が低い水溶性のカルボキシメチルセルロースを、固形分を少なくとも42%含む微結晶セルロースのウェットケーキと混合するステップを含み、微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースとの重量比は、約95:5〜約70:30である。微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースとの特定の重量比は、約90:10〜約70:30である。微結晶セルロースとカルボキシメチルセルロースとのさらに特定の重量比は、約90:10〜約80:20である。一実施形態では、特定の重量比は、85:15である。
【0023】
共摩耗および各成分間での微結晶セルロース:カルボキシメチルセルロースの相互作用を十分得るための均質混合に影響を及ぼすように、湿潤混合物は十分な強度で押し出し成形される。本明細書中で使用されるように、「摩耗される」および「摩耗」という用語は、互換可能に使用され、粒子の全てではないにしても、少なくとも一部の粒子の大きさをコロイドの大きさにまで有効に低減する処理を意味する。該処理は、CMCと混合する前のMCCのウェットケーキ、または、MCCとCMCとの混合物のいずれかに剪断力を付与する機械的な処理である。「共摩耗」は、MCCおよびCMC成分の混合物に高剪断力を加えることを指すために用いられる。好適な摩耗条件は、例えば、共押し出し成形、粉砕、または混練によって得られてもよい。
【0024】
押し出し成形物は、乾燥されたり、スラリーを形成するために水中に分散されたりし得る。スラリーは、ホモジナイズおよび乾燥、好ましくは噴霧乾燥され得る。噴霧乾燥以外の乾燥工程には、例えば、流動層乾燥、ドラム乾燥、バルク乾燥、およびフラッシュ乾燥が含まれる。噴霧乾燥から形成される乾燥粒子は、本願明細書に記載される組成物、食用に適する食品製品、および工業上の応用物を形成するために、所望の水性媒体または溶液中で元に戻される。
【0025】
本願明細書に開示されるMCC:CMCの押し出し成形は、得られるコロイド状のMCC製品が十分に摩耗されるように、高剪断および高圧縮を伴う高強度下で実行される。本明細書で使用されるように、「剪断力」は、混合物の2個の隣接する部分を、それらの接触面に対して略平行な方向に互いに滑らせる原因となる、または原因となる傾向がある、加えられた力から結果として生じる作用を意味する。加えられる力の量は、微結晶セルロース粒子とカルボキシメチルセルロースとの間に、十分に会合が形成される量である必要がある。加えられる力が不十分な場合、密な会合形成のために加えられる剪断力を材料または混合物に移すには、各成分は、過度に「滑りやすい(slippery)」状態である。このような場合、剪断力は、主に、滑り作用によって機械的なエネルギーとして消耗される。押し出し成形の強度を増加させる全ての手段が用いられてもよい。該手段には、これらに限られる訳ではないが、押出成形機のデザイン、押し出し成形の継続時間/経路、エフ・エム・シーの特許である米国特許第6037380号明細書(Venablesら)によって述べられる全てを含む摩耗助剤(attriting aid)を用いる押し出し成形、高剪断/高固形分レベル、および滑り防止剤が含まれる。
【0026】
押し出し成形の強度を高めるのに影響を及ぼす好適な方法は、押し出し成形される微結晶セルロースのウェットケーキの固形分レベルを制御することである。ウェットケーキの固形分レベルが約41%を下回ると、所定のゲル粘度およびゲル強度G’を有するコロイド状のMCCが得られる。しかしながら、ウェットケーキの固形分が約42%よりも高くなると、最終的なコロイド状のMCC製品では、ゲル強度G’の増加が顕著になる。有効なウェットケーキの固形分レベルを広く網羅する範囲は、約42%〜60%の間、好ましくは42.5%〜60%の間、より好ましくは42.5%〜55%の間、最適には43%〜50%の間である。
【0027】
ウェットケーキの固形分を増加する方策には、これらに限られる訳ではないが、洗浄/濾過の間に、真空度を高め/フェルティング(felting)を高め/より加圧し/フィルタの表面積を増やしてさらに脱水すること、CMCを加える前に、蒸気加熱によってウェットケーキから水分をインライン蒸発させること、高温気流、赤外線照射、およびラジオ周波(RF)/マイクロ波による加熱が含まれる。別の方策は、乾燥済の(または固形分が多い)MCC(またはアヴィセル(Avicel)RC591またはアヴィセル(Avicel)CL611粉末などのコロイド状のMCC)をウェットケーキ中に加えて、組成物中のMCCの固形分の総量を増すことである。
【0028】
押し出し成形/摩耗の強度の改良は、押し出し成形の滞留時間を長くして(あるいは経路を増やして)実行されてもよく、押し出し成形の温度を下げることによって実現されてもよい。本発明の実施形態には、全ての一般的な冷却剤の使用が含まれ、これらに限られる訳ではないが、水冷、およびアンモニア冷却が含まれる。
【0029】
別の実施形態では、十分な押し出し成形/摩耗は、2またはそれ以上の別個のステップで実現されてもよい。例えば、MCCのウェットケーキは、最初に押し出し成形/摩耗された後に、CMCが加えられ、押し出し成形/摩耗されてもよい。昨今のMCCの製造で用いられるような種々のタイプの押出成形機に加え、MCCのウェットケーキまたはMCC:CMCを摩耗する装置には、圧縮ロール/ベルト、カレンダロール(calendaring roll)、機械的なリファイナディスク(refiner disc)、超音波リファイナ、(微小流体デバイスを含む)高圧ホモジナイザー、高圧縮型のプラネタリー混合機、および衝撃波/キャビテーションデバイスが含まれる。
【0030】
(微結晶セルロースのウェットケーキ)
全ての材料源から得られるMCCが本方法で使用されてもよい。MCCが得られてもよい好適な原料には、例えば、(晒し亜硫酸塩パルプ(bleached sulfite pulp)および硫酸塩パルプなどの)木材パルプ(wood pulp)、トウモロコシの皮、バガス、麦わら、綿、コットンリンター、亜麻、大麻、苧麻(ちょま)、海藻、セルロース、および発酵セルロースが含まれる。原料には、さらに、晒し針葉樹クラフトパルプ、晒し広葉樹クラフトパルプ、晒しユーカリクラフトパルプ、製紙用パルプ、フラッフパルプ(fluff pulp)、溶解パルプ、および非木材の晒しセルロース質パルプが含まれる。一実施形態では、使用されるMCCは、アメリカ食品医薬品局によって人による消費が認可されているものである。
【0031】
必要に応じて、MCCは、低価格のパルプまたは低価格のパルプと特定のパルプの混合物から作成されてもよい。次に、混合物が望ましい場合、例えば、MCCの総量の30〜80%が低価格のパルプから作成され、得られるMCC製品のコロイドの含有量は、少なくとも60%にされ得る。低価格のパルプの例には、南方晒し針葉樹クラフトパルプ(Southern Bleached Softwood Kraft Pulp)、北方晒し針葉樹クラフトパルプ(Nothern Bleached Softwood Pulp)、ユーカリ晒しクラフトパルプ(Bleached Eucalyptus Kraft Pulp)、広葉樹晒しクラフトパルプ(Bleached Hardwood Kraft Pulp)、サルファイト晒しパルプ(Bleached Sulfite Pulp)、ソーダ晒しパルプ(Bleached Soda Pulp)、および非木材晒しパルプ(bleached nonwood pulp)などの全ての紙のグレードのパルプおよびフラッフパルプが含まれる。特定の低価格のパルプには、ウェアーハウザーから得られるCPHパルプおよびビスコースグレードの溶解パルプが含まれる。
【0032】
化学的または機械的な処理によって、MCCは、押し出し成形/摩耗の強度の影響を受けやすくなる。例えば、MCCを酸加水分解処理する間(またはMCCを酸処理した後)、MCCスラリーは、酸性のpHにおいて、過酸化物、過酢酸、過蟻酸、過硫酸塩、またはオキソンで処理され得る。MCCを作成するための酸加水分解工程は、他の添加物(鉄塩、つまり、塩化第二鉄など)を用いて促進されてもよい。別の取り組みは、実施例5に示すように、MCCの酸加水分解の処理時間を延ばすことである。酸処理を延ばす効果は、酸濃度を高めることおよび/または処理温度を上げることを含む、酸加水分解の他の条件を変えて実現されてもよい。
【0033】
MCCのウェットケーキの固形分を増加するための、およびMCCの処理を機械的または化学的に変えるための開示の技術は、任意の技術を単独で使用する場合よりも最終製品のゲル強度G’を高めるために、組み合わされてもよい。
【0034】
(カルボキシメチルセルロース)
カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩、例えば、CMCのナトリウム、カリウム、またはアンモニウム塩を含む。最適には、カルボキシメチルセルロースは、CMCナトリウムである。
【0035】
CMCは、特に、存在する置換度(DS)によって特徴付けられる。置換度は、アンヒドログルコース単位ごとに置換される水酸基の平均数を示す。例えば、CMCでは、各アンヒドログルコース単位は3個の水酸基を含み、該水酸基は、CMCに、理論上最大で3の置換度を付与する。
【0036】
CMCは、特に、(ブルックフィールドにより)25℃において2%の水溶液で測定される粘度よっても特徴付けられる。「低粘度」のCMCの範囲は、10〜200cps(60rpm)である。特定の「低粘度」のCMCの範囲は、10〜100cpsであり、より特定の「低粘度」のCMCの範囲は、30〜60cpsである。「中粘度」のCMCの範囲は、200〜4000cps(30rpm)である。特定の「中粘度」のCMCの範囲は、200〜3000cpsであり、より特定の「中粘度」のCMCの範囲は、300〜900cpsである。2個の市販のカルボキシメチルセルロースは、アクアロン(AQUALON(登録商標))7LF(低粘度)およびアクアロン(AQUALON(登録商標))7MF(中粘度)である(アメリカ合衆国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド社製)。両者の置換度は0.7である。これは、10個のアンヒドログルコース単位ごとに、平均7個のカルボキシメチル基があることを示している。
【0037】
本発明の方法での使用のために考案されるカルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.45〜約0.85である。いくつかの実施形態では、カルボキシメチルセルロースの置換度は、0.45〜0.80である。さらに他の実施形態では、カルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.7である。
【0038】
(コロイド状のMCC:CMC組成物)
本開示のコロイド状のMCC:CMC組成物は、置換度の低いCMCおよび少なくとも42%のMMCのウェットケーキの固形分を基体とするものであり、ゲル強度G’が顕著に改良されるとともに、粘度およびコロイド含量などのレオロジー指標が改良される。低粘度/低置換度のCMCだけがコロイド状のMCC:CMC組成物中で使用される場合、(固形分が2.6%存在する水分散体での)ゲル強度G’は、少なくとも20Pa、好ましくは少なくとも25Pa、より好ましくは少なくとも30Paである。他の実施形態では、ゲル強度G’は、30〜100Paの間にある。中粘度/低置換度のCMCを基体とするコロイド状のMCC:CMC組成物の場合、ゲル強度G’は、少なくとも35Pa、特に、少なくとも40Paである。
【0039】
比較対象の材料1
アヴィセル(AVICEL(登録商標))CL611は、市販のコロイド状のMCCであり、置換度の範囲が0.45〜0.8である低粘度のCMCを使用する。噴霧乾燥に代えてバルク乾燥を用いて製造する場合、材料は、アヴィセル(AVICEL(登録商標))CL612と特定される。前記材料は、ペンシルベニア州のフィラデルフィアにあるエフ・エム・シー・コーポレーションで製造される。2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に分散される場合、分散体は、常温での初期のブルックフィールド粘度が50〜151cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が2500cpsである。固形分が2.6%の分散体が、テキサス・インスツルメント製のレオメーターによって、24時間後のセットアップ時に測定された場合、そのゲル強度G’は9Paであった。コロイド含量は77%であった。これは、水分散体を8250rpmで15分間遠心分離した後、乾燥後の上澄み部を重量分析して測定された。
【0040】
比較対象の材料2
これは、置換度の範囲が0.9〜1.5であるCMCを基体とするコロイド状のMCCである。該コロイド状のMCCは、ペンシルベニア州のフィラデルフィアにあるエフ・エム・シー・コーポレーションで製造される。2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に分散される場合、分散体は、常温での初期のブルックフィールド粘度が1650cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が3250cpsである。固形分が2.6%の分散体が、テキサス・インスツルメント製のレオメーターによって、24時間後のセットアップ時に測定された場合、そのゲル強度G’は15Paであった。コロイド含量は80%であった。これは、水分散体を8250rpmで15分間遠心分離した後、乾燥後の上澄み部を重量分析して測定された。
【0041】
比較対象の材料3
アヴィセル(AVICEL(登録商標))RC−591は、分散性を有する、コロイド状のMCCであり、中粘度/低置換度のCMCを含む。該MCCは、ペンシルベニア州のフィラデルフィアにあるエフ・エム・シー・コーポレーションで製造される。該MCCは、粘度を調整および改良するため、および揺変性の性質のために、食品および医薬品の懸濁液中で使用される。該MCCは、熱および凍結融解に対して安定であり、長期の保存期間において安定であり、4〜11の範囲のpHで安定であり、無臭/無味である。
【0042】
脱イオン水中に1.2%の固形分濃度で分散された場合、固形分が分散された溶液は、常温での初期のブルックフィールド粘度が40〜175cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度が900〜1600cpsであった。固形分が1.2%の分散体がテキサス・インスツルメント製のレオメーターによって、24時間後のセットアップ時に測定された場合、そのゲル強度G’は23Paであった。2.6%の固形分濃度で水中に分散された場合、材料のゲル強度G’は30Paであった。
【0043】
必要に応じて、本発明の安定化剤組成物は、微結晶セルロースと、置換度が0.45〜0.85である低粘度および中粘度の両方のカルボキシメチルセルロースとの混合物にされ得る。微結晶セルロースと、組み合わせられたカルボキシメチルセルロースとの重量比は、約95:5〜約70:30である。2.6%の固形分濃度で水中に分散する場合、このような混合物は、初期の粘度が少なくとも2000cps、セットアップ時の粘度が少なくとも3500cps、セットアップ時のゲル強度G’が少なくとも40Paであってもよい。
【0044】
(用途)
本発明の組成物から形成される、食用に適する食品製品が開示される。これらの食品製品には、エマルション、飲料、ソース、スープ、シロップ、ドレッシング、フィルム、酪農および非酪農牛乳および製品、冷菓、発酵食品、パンの詰め物、およびパンのクリームが含まれる。食用に適する食品製品は、さらに、タンパク質、フルーツまたは野菜ジュース、フルーツまたは野菜パルプ、フルーツ味の物質、またはこれらの全ての組み合わせを含む、種々の食用に適する材料および添加物を含むこともできる。
【0045】
これらの食品製品は、例えば、岩塩、タンパク源、酸味料、甘味料、緩衝剤、pH調整剤、安定化に用いる塩、またはこれらの組み合わせなどの他の食用に適する成分を含むこともできる。当業者であれば、全ての数の他の食用に適する成分、例えば、付加的な香料、着色剤、防腐剤、pH緩衝剤、栄養補助食品、加工助剤などが添加されてもよいことを理解するであろう。付加的な食用に適する成分は、可溶性または不溶性にすることができ、不溶性の場合、食品製品中に懸濁される。ありふれた方法で、このように組成物を調整することは、十分に当業者の能力の範囲内であり、本発明の範囲および目的に含まれる。これらの食用に適する食品製品は、乾燥後の混合製品(インスタントソース、肉汁、スープ、インスタントココア飲料など)、pHの低い酪農系(サワークリーム/ヨーグルト、ヨーグルト飲料、固められたフローズンヨーグルトなど)、焼き菓子、および非含水性の食品系および水分の少ない食品系中に存在する充填剤のようなものである。
【0046】
安定化剤組成物を含む好適なジュースには、(これらに限られる訳ではないが、レモンジュース、ライムジュース、およびオレンジジュース(レモネード、ライムネード、またはオレンジネードなどの変形例を含む)、白色または赤色のグレープジュース、グレープフルーツジュース、アップルジュース、洋梨ジュース、クランベリージュース、ブルーベリージュース、ラズベリージュース、チェリージュース、パイナップルジュース、ザクロジュース、マンゴージュース、アプリコットジュースまたは果汁、ストロベリージュース、およびキウイジュースを含む)フルーツジュース、および(これらに限られる訳ではないが、トマトジュース、キャロットジュース、セロリジュース、ビートジュース、パセリジュース、ほうれん草ジュース、およびレタスジュースを含む)野菜ジュースが含まれる。ジュースは、ゲルまたは他の濃縮物、氷またはシャーベット、あるいは粉末などの液体、固体、または半固体の形態を含む、どのような形態であってもよく、懸濁された固体を含んでもよい。別の実施形態では、天然由来の味付けをされた、人工的に味付けをされた、あるいは他の天然の風味(「WONF」)を有するものを含むフルーツ味または他の加糖物質が、フルーツジュースの代わりに用いられてもよい。このようなフルーツ風味の物質も、粉末、ゲルまたは他の濃縮物、氷、またはシャーベットなどの液体、固体、または半固体の形態であってもよく、懸濁された固体を含んでもよい。
【0047】
食用に適し、安定化剤組成物を含む食品製品に好適なタンパク質には、食用タンパク質およびアミノ酸が含まれる。これらは、哺乳類、鳥類、爬虫類、および魚類に有益である可能性がある。食用タンパク質には、動物または植物のタンパク質および画分またはこれらの誘導体が含まれる。動物由来のタンパク質には、牛乳および牛乳由来の製品が含まれる。例えば、ヘビークリーム、ライトクリーム、全乳、低脂肪乳、スキムミルク、タンパク質強化牛乳、超加熱処理および/または濃縮処理を含む加工される牛乳および乳製品を含む強化牛乳、加糖または非加糖のスキムミルクまたは全乳、全乳の粉末および脱脂の乾燥ミルク(NFDM)を含む乾燥された牛乳の粉末、カゼインおよびカゼイン塩、ホエイおよびホエイ濃縮物、非ラクトース型のホエイ、鉱質を除去したホエイ、ホエイプロテインアイソレートなどのホエイ由来の製品などである。卵および卵由来のタンパク質が用いられてもよい。植物由来のタンパク質には、ナッツ、ナッツ由来のタンパク質、モロコシ、未加工の大豆、液体の大豆、大豆濃縮物、大豆アイソレートなどの大豆および大豆由来の製品などのマメ科植物およびマメ科植物由来のタンパク質、きな粉および米タンパク質、並びにこれらの全ての形態および画分が含まれる。食用タンパク質は、液体、濃縮物または粉末状を含む、入手可能な全ての形態で使用されてもよい。もっとも、粉末状のタンパク源を用いるときは、得られる飲料物をさらに安定させるために、安定化剤組成物およびジュースを混合する前に、タンパク質を予め水和すると好ましい場合がある。タンパク質が野菜または果物ジュースとともに添加される場合、使用量は、所望の最終結果によるであろう。タンパク質の量の典型的な範囲は、8オンスごとに約1〜約20グラムである。もっとも、安定であり、食用に適する、結果として得られる食品製品(飲料物など)の取り扱いは、用途に大きく依存するかもしれない。
【0048】
本発明の組成物が使用されてもよい他の製品および用途には、非食品系の工業的な用途が含まれる。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、医薬品、獣医製品、栄養補助製品、化粧品製品、パーソナルケア製品、消費製品、農業用製品、または化学製剤としての使用に適する。いくつかの例には、薬効成分(例えば、APAP、アスピリン、イブプロフェンなど)を矯味する咀嚼錠剤用の賦形剤、懸濁化剤、医薬品用途における徐放剤、香味剤および栄養補助剤用の伝達システム、錠剤、フィルム、および懸濁液などの医薬品の剤型として使用され得る直接圧縮型の徐放剤、パーソナルケア用途において、泡、クリーム、およびローション中で使用され得る増粘剤、セラミックス、着色剤、化粧品、およびオーラルケア中において、色素およびフィラーとともに使用され得る懸濁化剤、セラミックスなどの材料、殺虫剤を含む伝達システム、および他の農業用製品が含まれる。
【0049】
ある実施形態では、組成物は乾燥混合物として調製される。前記乾燥混合物は、界面活性剤、フィラー、または活性物質を含む他の成分とともに添加され分散され得る好適な中間体である。所望の食品製品、医薬品製品、栄養補助製品、パーソナルケア製品、化粧品製品、消費製品、農業用製品、または化学製剤中で安定化剤を活性化するのに適するように、十分な水が加えられ加熱攪拌される。
【0050】
好適な界面活性剤には、これらに限られる訳ではないが、HLBが1〜40である、イオン性または非イオン性のものが含まれる。活性物質が組成物に添加されてもよく、該活性物質には、これらに限られる訳ではないが、栄養補助剤、ビタミン、ミネラル、着色剤、甘味料、香味料、芳香剤、唾液の分泌を刺激する成分、食品、オーラルケア成分、息を爽やかにする成分、医薬成分、農業成分、治療成分、化粧成分、化学物質、緩衝剤、またはpH調整剤が含まれる。活性物質は、その放出特性を変更するために、カプセル化され、あるいは他の処理または処置を施され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、開示される食用に適する食品製品は、保存安定性が高められていたので、商品としての魅力が高かった。安定な組成物は、許容可能な水準の保存安定性を示すものである。保存安定性とは、製品の所望の保存寿命に渡って、1または複数の以下の製品特性を意味することを意図する。つまり、液体系においては、沈降が最小または沈降がなく、漿液の分離が最小または漿液の分離がなく、クリーミングが最小またはクリーミングがなく、まだらが最小またはまだらがなく、波打ちがなく、ゲルの局在化またはゲル化がない、懸濁液である。固体、半固体、ゲル、泡またはフィルム系においては、漿液の分離が最小または漿液の分離がなく、脱気されたものまたは集合体状のものである。さらに、凍結系の場合は、氷晶の大きさの成長または数の増加を低減または回避するものである。上記の記載で使用されるように、沈降が最小とは、存在するあらゆる沈降物が、遊離した沈降物であって、振動しながら容易に系内に戻ってもよい沈降物として存在することを意味する。上記の記載で使用されるように、漿液の分離が最小とは、液体系が250mLのフラスコ中に見られる場合、5mm未満の漿液が存在することを意味する。いくつかの実施形態では、食用に適する食品製品は、(組成物中で使用されるカルボキシメチルセルロースの外部にある)補助的な安定化剤を要さずに、保管能力を高めることができる。例えば、キサンタンガムなどの補助的な安定化剤を欠くいくつかのソースは、相対粘度を長時間維持することを示す。該期間は、いくつかの例では少なくとも6ヶ月である。
【0052】
最終的な飲料組成物は、様々な方法で、熱処理によって加工されてもよい。これらの方法には、これらに限られる訳ではないが、低温殺菌法、超低温殺菌法、高温短時間殺菌法(「HTST」)、および超高温処理法(「UHT」)が含まれてもよい。これらの飲料組成物は、回転式レトルトまたは静置式レトルト加工のいずれかによって、レトルト処理されてもよい。ジュース添加用の、あるいは天然または人工的な風味のソフトドリンクなどの、いくつかの組成物は、冷却加工されてもよい。これらの加工の多くには、ホモジナイゼーションまたは他の高剪断/高圧縮法が含まれてもよい。これらは、共乾燥組成物であってもよい。該共乾燥組成物は、乾燥固体の形態で調製でき、次に、消費するために、必要に応じて元に戻されると都合がよい。得られる飲料組成物は、商業的に許容される期間、冷蔵され保存されてもよい。代替案では、結果物として得られる飲料組成物は、無菌状態で充填されるという条件で、常温で保管されてもよい。
【0053】
本発明をさらに詳細に記載するために、以下に非限定的な例を示す。該例は、最終的な製品中に本発明の組成物を使用するときに、調製される特定の製品の性質および品質を決定する多様なおよび種々の調製因子をどのように考慮に入れる必要があるかについても示す。
【実施例】
【0054】
[実施例1:固形分が43%であるウェットケーキを用いたコロイド状のMCC:CMCの作成]
MCCのウェットケーキは、(アメリカ合衆国のデラウェア州のニューアークにある)エフ・エム・シーの設備で酸加水分解処理して得られた。該ウェットケーキは、固形分レベルが43%になるまで脱水された。ホバートミキサー(Hobart mixer)中で、MCCのウェットケーキは、(アメリカ合衆国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド社製の)アクアロン(Aqualon(登録商標))7LF・CMCとともに、85重量部:15重量部の比率で数分間混合された。混合物は、共同方向回転二軸押出機に数回通されて、制作物の十分な特徴・外形にされた。次に、MCC:CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に分散された。得られたスラリーは、マントン・ガウリン・ホモジナイザー(Manton Gaulin homogenizer)に2500〜3000psiで通されて、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。
【0055】
乾燥後のMCC:CMCの粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、常温において、その初期のブルックフィールド粘度は2350cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は7200cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は68Paであった。コロイド含量は90%であった。これは、水分散体を8250rpmで15分間遠心分離した後、乾燥後の上澄み部を重量分析して測定された。
【0056】
[実施例2:固形分が43%であるウェットケーキを用いたコロイド状のMCC:CMCの作成]
微結晶セルロースのウェットケーキは、(アメリカ合衆国のデラウェア州のニューアークにある)エフ・エム・シーの設備で酸加水分解処理して得られた。MCCのウェットケーキの固形分は、実験室の乾燥炉を用いて43%に調整された。ホバートミキサー(Hobart mixer)中で、MCCのウェットケーキは、(アメリカ合衆国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド社製の)アクアロン(Aqualon(登録商標))7LF・CMCとともに、85重量部:15重量部の比率で数分間混合された。混合物は、高い押し出し成形強度で、共同方向回転二軸押出機に数回通された。次に、MCC:CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に再分散された。得られたスラリーは、マントン・ガウリン・ホモジナイザー(Manton Gaulin homogenizer)に2500〜3000psiで通されて、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。
【0057】
乾燥後のMCC:CMC粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、常温において、その初期のブルックフィールド粘度は1521cspであり、24時間後のセットアップ時の粘度は5900cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は60Paであった。コロイド含量は93%であった。
【0058】
[(比較)例3:固形分が40%のウェットケーキコロイド状のMCC:CMCの作成]
微結晶セルロースのウェットケーキは、酸加水分解処理して得られた。MCCのウェットケーキの固形分は、実験室の乾燥炉を用いて40%に調整された。ホバートミキサー(Hobart mixer)中で、MCCのウェットケーキは、(アメリカ合衆国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド社製の)アクアロン(Aqualon(登録商標))7LF・CMCとともに、85重量部:15重量部の比率で数分間混合された。混合物は、共同方向回転二軸押出機に数回通された。次に、MCC:CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に分散された。得られたスラリーは、マントン・ガウリン・ホモジナイザー(Manton Gaulin homogenizer)に2500〜3000psiで通されて、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。
【0059】
乾燥後のMCC:CMC粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、常温において、その初期のブルックフィールド粘度は720cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は2400cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は10〜12Paであった。コロイド含量は77.7%であった。
【0060】
[実施例4:共摩耗される、乾燥したコロイド状のMCC粉末、MCCウェットケーキ、およびCMC]
以下の材料が混合された。(1)40lbのアヴィセル(AVICEL(登録商標))612の乾燥粉末(MCCが85%、LVF・CMCが15%であり、バルク乾燥されたもの)、(2)50lbの7LVF・CMCの乾燥粉末(スウェーデンのステヌングスンド(Stenungsund)にあるアクゾノーベル(AkzoNobel)製)、および(3)固形分が41%存在する状態の561lbのMCCのウェットケーキ(乾物基準で230lb)。MCCのウェットケーキは、酸加水分解処理して得られた。混合物は、高い押し出し成形強度で、共同方向回転二軸押出機に数回通された。次に、MCC:CMCの押し出し成形物はバルク乾燥(流動層)され、粉砕されて粉末に形成された。
【0061】
乾燥後のMCC:CMCの製品粉末(MMCが82.5%、CMCが17.5%)が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、分散体は、常温において、初期のブルックフィールド粘度が1600cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は6400cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は35Paであった。コロイド含量は76%であった。
【0062】
乾燥したアヴィセル(AVICEL(登録商標))CL612粉末を使用すると、押し出し成形中の固形分レベルは増加し、この特定のケースでは、固形分の総量の範囲は、55〜66%になる。MCCの固形分の部分は、初期のウェットケーキ中において固形分が41%を占める状態から、得られるMCC:CMCの混合押し出し成形物中において固形分であるMCCが44%を占める状態まで増加される。
【0063】
[実施例5:押し出し成形/摩耗強度を増加するために延長されるMCCの処理時間]
MCCのウェットケーキは、濃度が2.5%の塩酸を用いて、100℃で24時間酸加水分解されて得られた。この延長された酸加水分解処理により得られたMCCのウェットケーキは固形分レベルが40%であり、7LF・CMC(アッシュランド製)とともに、85:15の重量比で共押し出し成形された。次に、押し出し成形物は分散され、噴霧乾燥されて、製品粉末に形成された。
【0064】
乾燥後のMCC:CMCの製品粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、製品粉末が分散された溶液は、常温において、初期のブルックフィールド粘度が2500cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は5500cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は70Paであった。コロイド含量は88%であった。
【0065】
[実施例6:固形分が45%であるMCCのウェットケーキと、置換度が低い低粘度および中粘度のCMCの混合物との押し出し成形]
微結晶セルロースのウェットケーキは、酸加水分解処理して得られた。MCCのウェットケーキの固形分は、実験室の乾燥炉を用いて45%に調整された。ホバートミキサー(Hobart mixer)中で、MCCのウェットケーキは、(アメリカ合衆国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド社製の)アクアロン(Aqualon(登録商標))7LF・CMCおよび7MF・CMCの混合物とともに、それぞれ88重量部:8重量部:4重量部の比率で数分間混合された。混合物は、高い押し出し成形強度で共同方向回転二軸押出機に数回通された。次に、MCC:CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に再分散された。得られたスラリーは、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。
【0066】
乾燥後のMCC:7LF・CMC:7MF・CMCの粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、粉末が分散された溶液は、常温において、初期のブルックフィールド粘度が3100cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は5050cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は68Paであった。
【0067】
[実施例7:置換度が低い中粘度のCMCを含むMCC/CMCの押し出し成形物の長期の押し出し成形]
MCCのウェットケーキは、置換度が低い中粘度のCMCとともに押し出し成形されて、押し出し成形物が形成された後、該押し出し成形物は、噴霧乾燥され、粉末組成物に形成された。レオロジー特性は、先の段落の「比較対象の材料3」に記載されたようなものであった。この製品のゲル強度G’は、固形分が2.6%存在する分散体において、約30Paの範囲であった。これは、比較試料である。
【0068】
本発明の範囲内の実験として、上述の(噴霧乾燥前の)押し出し成形物は、さらに、実験室の共同方向回転二軸押出機において、もう一度の工程によって押し出し成形された。次に、さらに押し出し成形された、このMCC:CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に再分散された。得られたスラリーは、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。この粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、粉末が分散された溶液は、常温において、初期のブルックフィールド粘度が3700cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は7000cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は70Paであった。コロイド含量は81.7%であった。
【0069】
[実施例8:MCCのウェットケーキと置換度が低い低粘度のCMCとの長期の押し出し成形]
微結晶セルロースのウェットケーキは、酸加水分解処理して得られ、ウェットケーキの固形分は約43%であった。MCCのウェットケーキは、アクアロン(Aqualon(登録商標))7LF・CMC(アメリカ合衆国のデラウェア州のウィルミントンにあるアッシュランド社製)と、85重量部:15重量部の比率で混合され、高い押し出し成形強度で押し出された。次に、MCC:CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に分散され、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。
【0070】
乾燥後のMCC:CMCの製品粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、製品粉末が分散された溶液は、常温において、初期のブルックフィールド粘度が1400cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は5150cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は37Paであった。コロイド含量は86%であった。これは、本発明の実施例である。
【0071】
本発明の付加的な実験として、上述の(噴霧乾燥前の)押し出し成形物は、さらに、実験室の共同方向回転二軸押出機において、もう一度の工程によって押し出し成形された。次に、さらに押し出し成形された、このMCC:7LF・CMCの押し出し成形物は、脱イオン水中に再分散された。得られたスラリーは、粉末を形成するために、3フィートのボーエン(Bowen)の噴霧乾燥機で噴霧乾燥された。この粉末が、2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に再分散された場合、粉末が分散された溶液は、常温において、初期のブルックフィールド粘度が2400cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は6900cpsであった。固形分が2.6%の分散体が24時間後のセットアップ時にテキサス・インスツルメント製のレオメーターで測定された場合、そのゲル強度G’は60Paであった。コロイド含量は96.3%であった。
【0072】
食品用途(FA)の実施例
[実施例FA1:超高温処理法(UHT)によるチョコレート飲料]
・材料および方法
UHTによるチョコレート飲料の試料は、A)実施例1〜2に記載されるような置換度が低く、低粘度のCMCを基体とする、0.12%の高ゲル粘度のコロイド状のMCCと、120ppmのカラギーナンと、の混合物、B)材料1に記載されるような置換度が低く、低粘度のCMCを基体とする、0.12%の市販のコロイド状のMCCと、120ppmのカラギーナンと、を組み合わせたもの、C)材料2に記載される置換度が高いCMCを基体とする、0.12%の市販のコロイド状のMCCと、120ppmのカラギーナンと、を組み合わせたもの、を用いて調製された。各組成を表FA1.1に示す。
【0073】
【表FA1.1】
【0074】
(加工)
全ての粉末は、乾燥状態で共に混ぜられ、高剪断混合機(例えば、シルバーソン(Silverson)型またはそれに相当するもの)を用いて、低温殺菌済みの牛乳中に約15分間混合された。製品は、最初に、75℃で45秒間予備加熱された後、UHTライン(APV−SPX型またはそれに相当するもの)中において、142℃で5秒間殺菌された。次に、製品は、70〜80℃まで冷却され、ラニー(Rannie)社製のホモジナイザーに、二段階目の圧力が180barになる条件で通された。最後に、混合物は10℃に冷却され、無菌の瓶に無菌状態で入れられた。
【0075】
得られる材料の安定性指標(Stability index)は、タービスカン(Turbiscan)装置を用いて測定された。製品は、880nmの近赤外の光のビームを用いてスキャンされた。つまり、後方散乱または透過率が、小さな間隔(各40μmごとに1スキャン)で試料に沿って記録された。後方散乱の変化は、粒子の粒径または濃度の変化を示した。
【0076】
(タービスカン(Turbiscan)測定前の試料の準備)
1.タービスカンのガラス管を以下のように準備した。つまり、無菌の組織を管内に配置し、管をアルミ箔で覆う。ふたを構成する3個の異なる部品を組み立てて、ふたをアルミ箔で覆う。
2.128℃で20分間、覆われた管およびふたをオートクレーブ中で殺菌する。
3.製品をタービスカンの管に移動する前に、無菌のフローキャビネットを30分オン状態にする。試料は、最初に常温に達するであろう(試料が冷蔵庫にあったものである場合、試料は30分間調節されるであろう)。
4.管のラベルを準備し、コンピュータ(タービスカンのソフトウェア)をセットアップし、AGSステーションを30℃にする。
5.無菌のフローキャビネットの下に、全ての材料、つまり、無菌のタービスカンの管、ラベルを貼られたふた、無菌のピペット、および試料を準備する。
6.移動の直前に、無菌溶液を用いて手を綺麗にし、各試料を緩やかに振とうする(上下逆さまに5回)。
7.試料瓶を開けて、25mlの無菌のピペットを用いて、直ぐにタービスカンの管に移動し、ふたを閉める。
8.直ぐに、AGSステーション中に管を挿入し、スキャンを開始する。スキャンを開始する前に、最高で3個の試料を一度に移動する。
【0077】
視覚的なパラメータおよび尺度を表FA1.2に記載する。タービスカン測定は、30℃で5日間に渡って1時間ごとに1回行われた。
【0078】
【表FA1.2】
【0079】
(試料の評価)
4℃、22℃、および30℃で1ヶ月保管した後のpH、粘度、および視覚的な観察の結果を表FA1.3に記載する。pHは、校正されたpHメータ(イノラボ(Inolab)製)を用いて測定された。粘度は、常温にて、ブルックフィールドLV粘度計を用い、1番のスピンドルを用いて、速度を1分間60rpmにして測定された。
【0080】
【表FA1.3】
【0081】
タービスカン装置を用い30℃で測定した5日後の安定性指標の結果(1時間ごとに1スキャン)を、表FA1.4に記載する。
【0082】
【表FA1.4】
【0083】
(結論)
試料Aは、視覚上、4℃、22℃、および30℃で1ヶ月間安定であり、漿液の分離がないか、またはほんの僅かであり、ココアの沈降がないか、またはほんの僅かであり、ゲル化されていないか、またはゲル化は最小であった。試料Aの安定性指標の低さ(つまり、粒子濃度の安定性が良好であること)は、視覚的な観察を裏付けるものであり、6ヶ月の長期間に渡る安定性を示唆した。試料A(本発明)は、優れた性能を示した。
【0084】
[実施例FA2:濃縮ラズベリーを基体とし、ブリックスが40°および50°である加熱時に安定なフルーツの詰め物]
試料は、A)実施例1〜2に記載されるような置換度が低く、低粘度のCMCを基体とし、エフ・エム・シーで製造される適用量範囲の高ゲル粘度のコロイド状のMCC、およびB)材料3に記載されるような適用量範囲の市販のコロイド状のMCC(アヴィセル(AVICEL(登録商標))RC591)を用いて調製された。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
(加工)
コロイド状のMCC、他の乾燥粉末、および水分は別個に量り分けられた。最初に、シルバーソン(Silverson)の混合機または等価なものを用いて、コロイド状のMCCを10分間高剪断混合して、水中に分散した。次に、グルコースシロップを40℃で前以て加熱し、他の乾燥粉末とともに、前述の混合物に加えた。次に、該製品を緩やかに混合しながら、水浴中で90℃まで加熱した。次に、フルーツの濃縮物を加え、滑らかになるまで混合した。最後に、クエン酸を加え、滑らかになるまで混合し、該製品を適当な容器内に高温状態で入れた。
【0088】
(加熱安定性試験)
加熱安定性は、保形性を測定することにより判定された。保形性は、所与の温度で一定量の時間加熱後に、初期の形状および容積を保持するフルーツを入れた調合物の能力として定義される。製パン用のオーブンは、200℃まで前以て加熱された。カップ(30ml)を試料製品で満たした。30mlのカップから得られる充填物は、オーブンプレートの製パン用のシート上にある紙シートの同心円の中央部に置かれた。プレートはオーブンの中央部に配置された。同心円の16本の軸上での材料の幅広がりは、加熱前と加熱後に記録された。充填物は、200℃で10分間加熱された。材料の幅広がりの平均値が、百分率として計算された(つまり、加熱前の平均値と加熱後の平均値)。
【0089】
(試料の評価)
加熱安定性の結果を表FA2.1および表FA2.2に記載する。
【0090】
【表FA2.1】
【0091】
【表FA2.2】
【0092】
(結論)
本発明の試料Aは、使用レベルが1%よりも高い場合に、良好から極めて良好までの加熱安定性(つまり、幅の広がりの%が小さい)を示した。
【0093】
[実施例FA3:カルシウムが多い還元乳]
(材料および方法)
試料は、カルシウムが多いUHT処理済みの還元乳中に、A)実施例1に記載されるような置換度が低い、低粘度のCMC(固形分が43%存在する)を基体とする、0.3%の高ゲル粘度のコロイド状のMCC、比較としてB)材料2に記載されるような置換度が高いCMCを基体とする、0.3%の市販のコロイド状のMCCを用いて調製された。組成を表FA3.1に示す。
【0094】
【表FA3.1】
【0095】
(加工)
粉ミルクが、45℃〜50℃で水中に添加され、製品は勢いよく20分間混合された。次に、還元乳は60℃〜65℃で加熱された。
【0096】
炭酸カルシウムおよびコロイド状のMCCが、乾式混合され、勢いよく5分間混合される間に前記還元乳に添加された。pHが調べられ記録された。必要に応じて、pHが6.70〜6.80になるように、リン酸二ナトリウムの緩衝液が加えられた。次に、製品は70℃まで予備加熱され、二段階目の圧力が200barになる条件でホモジナイザーに通された。製品は、90℃で30秒間加熱された後、140℃まで10秒間で加熱された。最後に、製品は、20℃〜25℃に冷却され、無菌の瓶に入れられた。粘度は、常温において、ブルックフィールドDV−II+粘度計を用いて、速度を1分間30rpmにして測定された。
【0097】
(試料の評価)
22℃において、40日間保管後の粘度および視覚的な観察の結果を表FA3.2に示す。
【0098】
【表FA3.2】
【0099】
(結論)
試料Aは、視覚上、22℃において、40日間安定であり、カルシウムの沈降はなく、粘度が最小であった。
【0100】
[実施例FA4:レトルトのチョコレートミルク]
(材料および方法)
レトルトのチョコレートミルクの試料は、A)実施例1および2に記載されるような置換度が低く、分子量が小さいCMCを基体とする、0.2%の高ゲル粘度のコロイド状のMCC、比較対象としてB)材料2に記載されるような置換度が高いCMCを基体とする、0.2%の市販のコロイド状のMCCを用いて調製された。組成を表FA4.1に示す。
【0101】
【表FA4.1】
【0102】
(加工)
粉ミルクが、45℃〜50℃で水に加えられ、製品は勢いよく20分間混合された。次に、還元乳は、60℃〜65℃まで加熱された。炭酸カルシウムおよびコロイド状のMCCが、乾式混合され、勢いよく5分間混合される間に前記還元乳に添加された。pHが調べられ記録された。必要に応じて、pHが6.70〜6.80になるように、リン酸二ナトリウムの緩衝液が加えられた。次に、製品は70℃まで予備加熱され、二段階目の圧力が200barになる条件でホモジナイザーに通された。製品が缶に入れられ封止された。最後に、製品は、121℃で20分間、ロータリレトルト処理された。粘度は、常温において、ブルックフィールドDV−II+粘度計を用いて、スピンドルをS00にし、速度を1分間30rpmにして測定された。
【0103】
(試料の測定)
22℃において、1ヶ月保管後の粘度および視覚的な観察の結果を表FA4.2に示す。
【0104】
【表FA4.2】
【0105】
(結論)
試料Aは、視覚上、22℃において、1ヶ月間安定であり、ココアの沈降はなく、粘度が最小であった。
(付記1)
a.微結晶セルロース、および、
b.低粘度であって、置換度が約0.45〜約0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロース、を含む安定化剤組成物であって、
前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比は、約95:5〜約70:30であり、
2.6%の固形分濃度で水中に分散した場合、前記安定化剤組成物の初期の粘度は少なくとも750cpsであり、セットアップ時の粘度は少なくとも2900cpsであり、
セットアップ時のゲル強度G’は少なくとも20Paである、
安定化剤組成物。
(付記2)
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である、
付記1の安定化剤組成物。
(付記3)
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、
付記2の安定化剤組成物。
(付記4)
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、0.45〜0.80である、
付記3の組成物。
(付記5)
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.7である、
付記4の組成物。
(付記6)
前記初期の粘度は、750cps〜3000cpsである、
付記1の組成物。
(付記7)
前記セットアップ時の粘度は、3000cps〜7200cpsである、
付記1の組成物。
(付記8)
前記セットアップ時のゲル強度G’は、30Pa〜100Paである、
付記1の組成物。
(付記9)
a)微結晶セルロース、および、
b)中粘度であって、置換度が0.45〜0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロースを、含む安定化剤組成物であって、
前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比は、約95:5〜約70:30であり、
2.6%の固形分濃度で水中に分散した場合、前記安定化剤組成物の初期の粘度は、少なくとも1000cpsであり、セットアップ時の粘度は、少なくとも3500cpsであり、セットアップ時のゲル強度G’は少なくとも40Paである、
安定化剤組成物。
(付記10)
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩である、
付記9の組成物。
(付記11)
前記カルボキシメチルセルロースのアルカリ金属塩は、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、
付記10の安定化剤組成物。
(付記12)
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、0.45〜0.80である、
付記10の組成物。
(付記13)
前記カルボキシメチルセルロースの置換度は、約0.70である、
付記12の組成物。
(付記14)
前記セットアップ時のゲル強度は、45Pa〜100Paである、
付記9の組成物。
(付記15)
前記セットアップ時の粘度は、3500cps〜7200cpsである、
付記9の組成物。
(付記16)
前記初期の粘度は、1000cps〜3000cpsである、
付記9の組成物。
(付記17)
前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比は、約85:15である、
付記1または9に記載の組成物。
(付記18)
付記1または9の安定化剤組成物を含む、食用に適する食品製品。
(付記19)
さらに、フルーツ、野菜、穀物、ナッツ、肉、および酪農食品からなる群から選ばれる少なくとも1種の食品を含む、
付記18の食品製品。
(付記20)
エマルション、飲料、ソース、スープ、シロップ、ドレッシング、フィルム、冷菓、発酵食品、パンの詰め物、パンのクリーム、超高温およびレトルト加工されたタンパク質および栄養補助飲料、超高温加工されたpHが低いタンパク質系の飲料、超高温加工されたカルシウム強化飲料、高温およびレトルト加工されたミルククリーム、含気酪農食品系、および含気非酪農食品系の形態を取る、
付記19の食品製品。
(付記21)
付記1または付記9の組成物を含む、工業用懸濁液であって、
前記工業用懸濁液は、医薬品製品、栄養補助製品、化粧品製品、パーソナルケア製品、消費製品、農業用製品、または化学製剤で使用するのに適する、
工業用懸濁液。
(付記22)
前記カルボキシメチルセルロースは、カルボキシメチルセルロースナトリウムである、
付記21の工業的用懸濁液。
(付記23)
a)少なくとも42%の固形分を有する微結晶セルロースのウェットケーキと、低粘度または中粘度であって、置換度が約0.45〜0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロースとを、前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比が約95:5〜約70:30となるように混合するステップ、
b)ステップa)の混合物を、高剪断および高圧縮下で押し出し成形するステップ、および、
c)ステップb)の押し出し成形された製品を乾燥するステップ、を含む、
付記1または付記9の安定化剤組成物を作成する方法。
(付記24)
前記MCCのウェットケーキの固形分は、42.5%〜50%である、
付記25の方法。
(付記25)
前記乾燥ステップcは、噴霧乾燥、流動層乾燥、フラッシュ乾燥、またはバルク乾燥によるものである、
付記23の方法。
(付記26)
ゲル強度G’が改良された安定化剤組成物を作成する方法であって、
前記方法は、
a)i.微結晶セルロースのウェットケーキ、
ii.乾燥したコロイド状の微結晶セルロース、および、
iii.置換度が0.45〜0.85である水溶性のカルボキシメチルセルロースを混合するステップであって、ステップa)後の前記微結晶セルロースと前記カルボキシメチルセルロースとの重量比が約95:5〜約70:30となり、a)iおよびa)iiのMCCの固形分の総量が少なくとも42%となるように混合するステップ、
b)ステップa)の混合物を押し出し成形するステップ、および、
c)ステップb)の押し出し成形された製品を、乾燥するステップ、を含み、
2.6%の固形分濃度で脱イオン水中に分散した場合、ステップc)の製品の初期の粘度は少なくとも750cpsであり、24時間後のセットアップ時の粘度は少なくとも2900cpsであり、ゲル強度G’は少なくとも35Paである、
安定化剤組成物を作成する方法。
(付記27)
a)iおよびa)iiのMCCの固形分の総量は、42.5%〜50%である、
付記26の方法。
(付記28)
前記乾燥ステップcは、噴霧乾燥、流動層乾燥、フラッシュ乾燥、またはバルク乾燥によるものである、
付記26の方法。