特許第6158192号(P6158192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158192四価の金属酸化物を含むケイ酸リチウムガラスセラミックおよびガラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158192
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】四価の金属酸化物を含むケイ酸リチウムガラスセラミックおよびガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20170626BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 6/027 20060101ALI20170626BHJP
   A61C 13/003 20060101ALI20170626BHJP
   A61C 5/30 20170101ALI20170626BHJP
   A61C 13/20 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C03C10/04
   C03B32/02
   A61K6/027
   A61C13/003
   A61C5/30
   A61C13/20 A
【請求項の数】30
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-535092(P2014-535092)
(86)(22)【出願日】2012年10月11日
(65)【公表番号】特表2015-504400(P2015-504400A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】EP2012070222
(87)【国際公開番号】WO2013053866
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2014年7月8日
(31)【優先権主張番号】11185338.8
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リッツベルガー, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】アペル, エルケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘラント, ヴォルフラム
(72)【発明者】
【氏名】ラインベルガー, フォルカー
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04515634(US,A)
【文献】 特開2001−288027(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0009600(US,A1)
【文献】 特開2001−019485(JP,A)
【文献】 特開平06−329440(JP,A)
【文献】 特開平02−196048(JP,A)
【文献】 米国特許第05507981(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00626353(EP,A1)
【文献】 特開2005−053776(JP,A)
【文献】 特開2006−219367(JP,A)
【文献】 特開平10−101409(JP,A)
【文献】 特開昭50−094017(JP,A)
【文献】 特公昭32−005080(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 10/00 − 10/14
C03B 32/00 − 32/02
C04B 35/14 − 35/22
A61C 5/30
A61C 13/00 − 13/20
A61K 6/00 − 6/10
INTERGLAD
GAZ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される0.1〜15質量%の四価金属酸化物と、
67.0〜79.0質量%のSiOと、
12.1〜20.0質量%のLiOと、
0〜3.5質量%のAlと、
0.1質量%未満のLaと、
1.0質量%未満のKOと、
2.0質量%未満のNaOと
を含む、ケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項2】
ケイ酸リチウムガラスセラミックが、6.1質量%未満のZrOを含む、請求項1に記載のガラスセラミック。
【請求項3】
ガラスセラミックが、8.5質量%未満の遷移金属酸化物を含み、該遷移金属酸化物が、イットリウム酸化物、原子番号が41〜79である遷移金属の酸化物、およびこれらの酸化物の混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載のガラスセラミック。
【請求項4】
0.5質量%未満のKOを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項5】
実質的にKOを含まない、請求項4に記載のガラスセラミック。
【請求項6】
1.0質量%未満のNaOを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項7】
実質的にNaOを含まない、請求項6に記載のガラスセラミック。
【請求項8】
実質的にLaを含まない、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項9】
前記四価金属酸化物またはこれらの混合物を、2.0〜15.0質量%の量で含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項10】
主結晶相としてメタケイ酸リチウムを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項11】
5体積%より多いメタケイ酸リチウム結晶を有する、請求項10に記載のガラスセラミック。
【請求項12】
主結晶相として二ケイ酸リチウムを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項13】
10体積%より多い二ケイ酸リチウム結晶を有する、請求項12に記載のガラスセラミック。
【請求項14】
15.0〜17.0質量%のLiOを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項15】
0〜10.0質量%のPを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項16】
以下の成分:
成分 質量%
LiO 12.5〜20.0
四価金属酸化物または混合物 2.0〜15.0
0〜7.0
Al 0.5〜3.5
の少なくとも1つを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
【請求項17】
主結晶相として二ケイ酸リチウムを有し、KIC値として測定される、少なくとも1.9MPa・m0.5の破壊靱性を有する、請求項1〜9、12〜16のいずれか1項に記載のケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項18】
IC値として測定される、2.3MPa・m0.5より大きい破壊靱性を有する、請求項17に記載のケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項19】
SiOおよびLiOを1.7〜3.1のモル比で含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項20】
SiOおよびLiOを2.3〜2.5のモル比で含む、請求項19に記載のケイ酸リチウムガラスセラミック。
【請求項21】
請求項1〜9、14〜16または19〜20のいずれか1項に記載のガラスセラミックの成分を含む、出発ガラス。
【請求項22】
ケイ酸リチウムガラスであって、メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウムの結晶を形成するのに適した核を含み、該ガラスが、請求項1〜9、14〜16または19〜20のいずれか1項に記載のガラスセラミックの成分を含む、ケイ酸リチウムガラス。
【請求項23】
前記ガラスおよび前記ガラスセラミックが、粉末、顆粒材料、ブランクまたは歯修復物の形態で存在する、請求項1〜20のいずれか1項に記載のガラスセラミックまたは請求項21または22に記載のガラス。
【請求項24】
(i)請求項21もしくは23に記載の出発ガラス、請求項22もしくは23に記載の核を含むガラス、または請求項10〜11、14〜16、19〜20もしくは23のいずれか1項に記載の主結晶相としてメタケイ酸リチウムを有するガラスセラミックが、450〜950℃の範囲で少なくとも1つの熱処理に供される、請求項1〜20もしくは23のいずれか1項に記載の主結晶相として二ケイ酸リチウムを有するガラスセラミックを、
(ii)請求項21もしくは23に記載の出発ガラスまたは請求項22もしくは23に記載の核を含むガラスが、450〜950℃の範囲で少なくとも1つの熱処理に供される、請求項10〜11、14〜16、19〜20もしくは23のいずれか1項に記載の主結晶相としてメタケイ酸リチウムを有するガラスセラミックを、または
(iii)請求項21もしくは23に記載の出発ガラス、450〜950℃の範囲で少なくとも1つの熱処理に供される、請求項22もしくは23に記載の核を含むガラスを
調製するプロセス。
【請求項25】
ケイ酸リチウムガラスセラミックの調製のためのプロセスであって、該ケイ酸リチウムガラスセラミックは、
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される0.1〜15質量%の四価金属酸化物と、
55.0〜82.0質量%のSiOと、
12.1〜20.0質量%のLiOと、
0.1質量%未満のLaと、
1.0質量%未満のKOと、
2.0質量%未満のNaOと
を含み、
(a)二ケイ酸リチウムの結晶を形成するのに適した核を含むガラスを形成するために、該ガラスセラミックの成分を含む出発ガラスが、10分〜120分の期間の間に480〜520℃の温度で熱処理に供され、
(b)主結晶相として二ケイ酸リチウムを有するガラスセラミックを形成するために、該核を含むガラスが、640〜740℃の温度で熱処理に供される、プロセス。
【請求項26】
メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウムの結晶を形成するのに適した核を含む、ケイ酸リチウムガラスセラミック、出発ガラス、またはガラスの使用であって、該ガラスセラミックまたは該ガラスは、
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される0.1〜15質量%の四価金属酸化物と、
67.0〜79.0質量%のSiOと、
12.1〜20.0質量%のLiOと、
0.1質量%未満のLaと、
1.0質量%未満のKOと、
2.0質量%未満のNaOと
を歯科材料として含む、使用。
【請求項27】
歯修復物をコーティングするための請求項26に記載の使用。
【請求項28】
歯修復物を調製するための請求項26に記載の使用。
【請求項29】
プレス加工または機械加工によって前記ガラスセラミックまたは前記ガラスが、望ましい歯修復物に成形される、請求項28に記載の歯修復物を調製するための使用。
【請求項30】
前記歯修復物は、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、部分的なクラウン、クラウン、ファセットまたはアバットメントである、請求項29に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ZrO、TiO、CeO、GeO、SnO、およびこれらの混合物から選択される四価の金属酸化物を含有し、特に、歯科で使用するのに適しており、好ましくは、歯修復物の調製に適したケイ酸リチウムガラスセラミックおよびガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ケイ酸リチウムガラスセラミックは、概して、非常に良好な機械特性を特徴とし、これが歯科分野で長く使用されてきた理由であり、主に、歯科クラウンおよび小さなブリッジの調製に使用されてきた。公知のケイ酸リチウムガラスセラミックは、通常は、主成分としてSiO、LiO、NaOまたはKOと、核生成剤(例えばP)と、さらなる成分(例えば、La)とを含有する。
【0003】
特許文献1は、KOを含有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックを記載している。二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、対応する核を含有する出発ガラスを、二ケイ酸リチウムを結晶化させるために850〜870℃の温度に加熱して調製される。ガラスセラミックを使用する目的は開示されていない。
【0004】
特許文献2は、歯科目的のための焼結可能な二ケイ酸リチウムガラスセラミックを記載しており、これも、Laに加え、KOまたはNaOを含有する。二ケイ酸リチウム結晶相は、850℃の温度で生成される。
【0005】
同様にLaとKOを含有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックが特許文献3から公知である。二ケイ酸リチウムの形成のために熱処理を870℃で行う。
【0006】
特許文献4は、KOを含有するケイ酸リチウムガラスセラミックを記載し、このセラミックは、メタケイ酸リチウムが主結晶相として存在する場合、例えば、CAD/CAMプロセスを用いて非常に満足のいくように機械加工し、次いで830〜850℃の温度でさらに熱処理することによって、高強度二ケイ酸リチウムガラスセラミックに変換することができる。
【0007】
特許文献5は、同様のKOを含有し、さらに、ZnOを実質的に含まないケイ酸リチウムガラスセラミックを記載する。830〜880℃での熱処理を行い、二ケイ酸リチウムを生成する。
【0008】
特許文献6は、歯修復物を生成するためのプロセス、およびこれらのプロセスで使用可能なガラスセラミックを記載する。特に、LiOの量が少なく、概して、NaOまたはKOのいずれかを含有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックが存在する。
【0009】
特許文献7は、LiOに加え、KOも含有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックに関する。しかし、望ましい二ケイ酸リチウム結晶相の生成は、800〜1000℃の高温が必要である。
【0010】
特許文献8は、酸化ジルコニウムセラミックを覆うための二ケイ酸リチウムガラスセラミックを開示している。ガラスセラミックは、NaOを含有し、そしてこれは核を含有するガラスを800〜940℃で熱処理することによって生成される。
【0011】
特許文献9は、GeOを含有し、KOおよび少量のSiOも含有するメタケイ酸リチウムガラスセラミックを記載する。ガラスセラミックは、主に機械加工を用いて処理されて、歯科製品を形成する。
【0012】
特許文献10は、高レベルのZrOまたはHfOに加え、KOも含有する二ケイ酸リチウムガラスセラミックに関する。二ケイ酸リチウムの結晶化は、800〜1040℃の高温で行う。
【0013】
公知の二ケイ酸リチウムガラスセラミックに共通するのは、二ケイ酸リチウムを主結晶相として沈殿させるために、800℃を超える熱処理が必要なことである。したがって、生成するのに大量のエネルギーも必要である。さらに、公知のガラスセラミックの場合、アルカリ金属酸化物(例えば、特にKOまたはNaO)とLaが、概して、得ようとする特性を有するガラスセラミックの生成、特に、得ようとする二ケイ酸リチウム主結晶相の形成に明らかに必要な必須の構成要素として存在する。
【0014】
したがって、ケイ酸リチウムガラスセラミック調製中に、二ケイ酸リチウムの結晶化をより低い温度で行うことができるようなケイ酸リチウムガラスセラミックが必要である。さらに、主に光学特性および機械特性の観点で歯修復物を調製するために必要でありかつ適切であると以前は考えられていたアルカリ金属酸化物(例えば、KOまたはNaO)およびLaを含まずに上記ケイ酸リチウムガラスセラミックを調製することが可能であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】独国特許出願公開第24 51 121号明細書
【特許文献2】欧州特許第827 941号明細書
【特許文献3】欧州特許第916 625号明細書
【特許文献4】欧州特許第1 505 041号明細書
【特許文献5】欧州特許第1 688 398号明細書
【特許文献6】米国特許第5,507,981号明細書
【特許文献7】米国特許第6,455,451号明細書
【特許文献8】国際公開第2008/106958号
【特許文献9】国際公開第2009/126317号
【特許文献10】国際公開第2011/076422号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本目的は、請求項1〜15または18のいずれか1項に記載のケイ酸リチウムガラスセラミックによって達成される。さらに、本発明の主題は、請求項16または18に記載の出発ガラス、請求項17または18に記載の核を含むケイ酸リチウムガラス、請求項19または20に記載の核を含むガラスセラミックおよびケイ酸リチウムガラスを調製するためのプロセス、ならびに請求項21または22に記載の使用である。
本明細書は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される四価金属酸化物と、
少なくとも12.1重量%のLiOと、
0.1重量%未満のLaと、
1.0重量%未満のKOと、
2.0重量%未満のNaOと
を含む、ケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目2)
少なくとも6.1重量%のZrOを含むケイ酸リチウムガラスセラミックが除かれる、項目1に記載のガラスセラミック。
(項目3)
少なくとも8.5重量%の遷移金属酸化物を含み、該遷移金属酸化物が、イットリウム酸化物、原子番号が41〜79である遷移金属の酸化物、およびこれらの酸化物の混合物からなる群から選択されるガラスセラミックが除かれる、項目1または2に記載のガラスセラミック。
(項目4)
0.5重量%未満、特に、0.1重量%未満のKOを含み、好ましくは、実質的にKOを含まない、項目1〜3のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目5)
1.0重量%未満、特に、0.5重量%未満、好ましくは、0.1重量%未満のNaOを含み、実質的にNaOを含まない、項目1〜4のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目6)
実質的にLaを含まない、項目1〜5のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目7)
上記四価金属酸化物またはこれらの混合物を、0.1〜15重量%、特に、2.0〜15.0重量%、好ましくは、2.0〜8.0重量%の量で含む、項目1〜6のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目8)
主結晶相としてメタケイ酸リチウムを有し、特に、5体積%より多く、好ましくは、10体積%より多く、特に好ましくは、15体積%より多いメタケイ酸リチウム結晶を有する、項目1〜7のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目9)
主結晶相として二ケイ酸リチウムを有し、特に、10体積%より多く、好ましくは、20体積%より多く、特に好ましくは、30体積%より多い二ケイ酸リチウム結晶を有する、項目1〜7のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目10)
55.0〜82.0重量%、特に、58.0〜80.0重量%、好ましくは、60.0〜80.0重量%、特に好ましくは、67.0〜79.0重量%のSiOを含む、項目1〜9のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目11)
12.5〜20.0重量%、特に、15.0〜17.0重量%のLiOを含む、項目1〜10のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目12)
0〜10.0重量%、特に、0.5〜9.0重量%、好ましくは、2.5〜7.5重量%のPを含む、項目1〜11のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目13)
以下の成分:
成分 重量%
SiO 58.0〜79.0
LiO 12.5〜20.0
四価金属酸化物または混合物 2.0〜15.0
0〜7.0、特に、0.5〜7.0
Al 0〜6.0、特に、0.5〜3.5
の少なくとも1つ、好ましくは、すべてを含む、項目1〜12のいずれか1項に記載のガラスセラミック。
(項目14)
主結晶相として二ケイ酸リチウムを有し、KIC値として測定される、少なくとも1.9MPa・m0.5、特に、2.3MPa・m0.5より大きい破壊靱性を有する、項目1〜13のいずれか1項に記載のケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目15)
SiOおよびLiOを1.7〜3.1、特に、1.75〜3.0のモル比、または少なくとも2.2、特に、2.3〜2.5、好ましくは約2.4のモル比で含む、項目1〜13のいずれか1項に記載のケイ酸リチウムガラスセラミック。
(項目16)
項目1〜7、10〜13または15のいずれか1項に記載のガラスセラミックの成分を含む、出発ガラス。
(項目17)
ケイ酸リチウムガラスであって、メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウムの結晶を形成するのに適した核を含み、該ガラスが、項目1〜7、10〜13または15のいずれか1項に記載のガラスセラミックの成分を含む、ケイ酸リチウムガラス。
(項目18)
上記ガラスおよび上記ガラスセラミックが、粉末、顆粒材料、ブランクまたは歯修復物の形態で存在する、項目1〜15のいずれか1項に記載のガラスセラミックまたは項目16または17に記載のガラス。
(項目19)
項目1〜15もしくは18のいずれか1項に記載のガラスセラミック、または項目17もしくは18に記載のガラスを調製するプロセスであって、項目16もしくは18に記載の出発ガラス、項目17もしくは18に記載の核を含むガラス、または項目8、10〜15もしくは18のいずれか1項に記載の主結晶相としてメタケイ酸リチウムを含むガラスセラミックが、450〜950℃、特に、450〜750℃、好ましくは、480〜740℃の範囲で少なくとも1つの熱処理に供される、プロセス。
(項目20)
(a)上記核を含むガラスを形成するために、上記出発ガラスが、480〜520℃の温度で熱処理に供され、
(b)上記主結晶相として二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックを形成するために、該核を含むガラスが、640〜740℃の温度で熱処理に供される、項目19に記載のプロセス。
(項目21)
歯科材料としての、特に、歯修復物をコーティングするための歯科材料としての、好ましくは、歯修復物を調製するための歯科材料としての、項目1〜15もしくは18のいずれか1項に記載のガラスセラミックの使用、または項目16〜18のいずれか1項に記載のガラスの使用。
(項目22)
プレス加工または機械加工によって上記ガラスセラミックまたは上記ガラスが、望ましい歯修復物、特に、ブリッジ、インレー、オンレー、ベニア、部分的なクラウン、クラウン、ファセットまたはアバットメントに成形される、項目21に記載の歯修復物を調製するための使用。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のケイ酸リチウムガラスセラミックは、
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される四価金属酸化物と、
少なくとも12.1重量%のLiOと、
0.1重量%未満のLaと、
1.0重量%未満のKOと、
2.0重量%未満のNaOと
を含むことを特徴とする。
【0018】
ガラスセラミックが、四価金属酸化物またはこれらの混合物を0.1〜15重量%、特に、2.0〜15.0重量%、特に好ましくは、2.0〜11.0重量%、さらになお好ましくは、2.0〜8.0重量%の量で含むことが好ましい。
【0019】
主結晶相として二ケイ酸リチウムを用いた本発明のガラスセラミックの形成は、従来のガラスセラミック、例えば、アルカリ金属酸化物、特に、KO、NaOおよびLaに必要であると考えられる種々の構成要素が存在しない状態で、非常に低く、そのため、特に640〜740℃の有利な結晶化温度で達成されることが特に驚くべきことである。ガラスセラミックは、光学特性と機械特性の組み合わせと、歯科材料として使用するのに非常に有利な処理特性も有する。
【0020】
したがって、本発明のガラスセラミックは、好ましくは、0.5重量%未満、特に0.1重量%未満のKOを含む。特に好ましくは、本発明のガラスセラミックは、実質的にKOを含まない。
【0021】
1.0重量%未満、特に0.5重量%未満、好ましくは、0.1重量%未満のNaOを含み、特に好ましくは、実質的にNaOを含まないガラスセラミックも好ましい。
【0022】
さらに、実質的にLaを含まないガラスセラミックが好ましい。
【0023】
少なくとも6.1重量%のZrOを含むケイ酸リチウムガラスセラミックを除く、ガラスセラミックも好ましい。
【0024】
さらに、ケイ酸リチウムガラスセラミックであって、少なくとも8.5重量%の遷移金属酸化物を含み、上記遷移金属酸化物が、イットリウム酸化物、原子番号が41〜79である遷移金属の酸化物、およびこれらの酸化物の混合物からなる群から選択される、ケイ酸リチウムガラスセラミックを除く、ガラスセラミックも好ましい。
【0025】
本発明のガラスセラミックは、好ましくは、55.0〜82.0重量%、特に、58.0〜80.0重量%、好ましくは、60.0〜80.0重量%、特に好ましくは、67.0〜79.0重量%のSiOを含む。
【0026】
ガラスセラミックが、12.5〜20.0重量%、特に、15.0〜17.0重量%のLiOを含むことも好ましい。
【0027】
SiOとLiOとのモル比が1.7〜3.1、特に、1.75〜3.0であることがさらに好ましい。二ケイ酸リチウムの生成がこの広い範囲で達成されることは、非常に驚くべきことである。特に、2.0未満の比率で、従来の材料は、通常は、二ケイ酸リチウムの代わりにメタケイ酸リチウムを形成する。
【0028】
さらに好ましい実施形態では、SiOとLiOとのモル比は、特に高い強度を有するガラスセラミックがこのように得られるため、少なくとも2.2、特に2.3〜2.5、好ましくは、約2.4である。
【0029】
本発明のガラスセラミックは、核生成剤も含んでいてもよい。Pは、特に好ましくは、このために用いられる。ガラスセラミックは、好ましくは、0〜10.0重量%、特に、0.5〜9.0重量%、好ましくは、2.5〜7.5重量%のPを含む。しかし、特に、0.005〜0.5重量%の量の金属、例えば、特に、Ag、Au、PtおよびPdを核生成剤として使用することもできる。
【0030】
さらに好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、以下の成分:
成分 重量%
SiO 58.0〜79.0
LiO 12.5〜20.0
四価金属酸化物または混合物 2.0〜15.0
0〜7.0、特に、0.5〜7.0
Al 0〜6.0、特に、0.5〜3.5
の少なくとも1つ、好ましくは、すべてを含む。
【0031】
本発明のガラスセラミックは、さらに、特に、二価元素の酸化物、三価元素の酸化物、五価元素のさらなる酸化物、六価元素の酸化物、溶融促進剤、着色剤、および蛍光剤から選択されるさらなる構成要素も含んでいてもよい。
【0032】
二価元素の適切な酸化物は、特に、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOであり、好ましくは、CaOである。
【0033】
三価元素の適切な酸化物は、特に、Al、YおよびBiならびにこれらの混合物であり、好ましくは、Alであり、成分としてすでに上述している。
【0034】
「五価元素のさらなる酸化物」という用語は、Pを除く五価元素の酸化物を示す。適切な五価元素のさらなる酸化物の例は、TaおよびNbである。
【0035】
六価元素の適切な酸化物の例は、WOおよびMoOである。
【0036】
少なくとも1種類の二価元素の酸化物、少なくとも1種類の三価元素の酸化物、少なくとも1種類の五価元素のさらなる酸化物、および/または少なくとも1種類の六価元素の酸化物を含むガラスセラミックが好ましい。
【0037】
溶融促進剤の例は、フッ化物である。
【0038】
着色剤および蛍光剤の例は、d−元素およびf−元素の酸化物、例えば、Ti、V、Sc、Mn、Fe、Co、Ta、W、Ce、Pr、Nd、Tb、Er、Dy、Gd、Eu、およびYbの酸化物である。金属コロイド、例えば、Ag、AuおよびPdの金属コロイドを着色剤として使用してもよく、それに加え、核生成剤として作用してもよい。例えば、溶融プロセスおよび結晶化プロセス中の、対応する酸化物、塩化物またはニトレートの還元によってこれらの金属コロイドを形成することができる。金属コロイドは、ガラスセラミック中に0.005〜0.5重量%の量で存在していてもよい。
【0039】
以下で使用する「主結晶相」という用語は、他の結晶相と比較して、体積基準の割合が最も大きい結晶相を示す。
【0040】
本発明のガラスセラミックは、一実施形態では、主結晶相としてメタケイ酸リチウムを有する。特に、ガラスセラミックは、ガラスセラミック全体に対し、5体積%より多く、好ましくは、10体積%より多く、特に好ましくは、15体積%より多いメタケイ酸リチウム結晶を含む。
【0041】
さらに特に好ましい実施形態では、ガラスセラミックは、二ケイ酸リチウムを主結晶相として有する。特に、ガラスセラミックは、ガラスセラミック全体に対し、10体積%より多く、好ましくは、20体積%より多く、特に好ましくは、30体積%より多い二ケイ酸リチウム結晶を含む。
【0042】
本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、特に良好な機械特性を特徴とし、例えば、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックを熱処理することによって生成することができる。しかし、特に、対応する出発ガラスの熱処理または核を含む対応するケイ酸リチウムガラスの熱処理によって生成することができる。
【0043】
驚くべきことに、従来のガラスセラミックに必須であると考えられる構成要素が存在しない状態であっても、本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックが非常に良好な機械特性および光学特性と、処理特性を有することが示された。その特性の組み合わせは、歯科材料として、特に、歯修復物を調製するための材料として使用することができる。
【0044】
本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、特に、KIC値として測定される、少なくとも1.8MPa・m0.5、特に、約2.0MPa・m0.5より大きい破壊靱性を有する。この値は、Vickers法を用いて決定され、Niiharaの式を用いて算出された。
【0045】
本発明は、さらに、メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウム結晶を形成するために適切な核を含むケイ酸リチウムガラスに関し、ガラスは、本発明の上述のガラスセラミックの構成要素を含む。したがって、このガラスは、
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される四価金属酸化物と、
少なくとも12.1重量%のLiOと、
0.1重量%未満のLaと、
1.0重量%未満のKOと、
2.0重量%未満のNaOと
を含むことを特徴とする。
【0046】
このガラスの好ましい実施形態に関して、本発明のガラスセラミックの上述の好ましい実施形態を参照する。
【0047】
本発明の核を含むガラスは、対応して構成される本発明の出発ガラスの熱処理によって生成することができる。次いで、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、さらなる熱処理によって形成することができ、順にさらなる熱処理によって、本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックに変換することができるか、または、本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、好ましくは、核を含むガラスから直接形成することもできる。その結果、出発ガラス、核を含むガラス、およびメタケイ酸リチウムガラスセラミックは、高強度二ケイ酸リチウムガラスセラミックを生成するための前駆体と考えることができる。
【0048】
本発明のガラスセラミックおよび本発明のガラスは、特に、粉末、顆粒材料、またはブランク(例えば、モノリスブランク)、例えば、平板状、立方体もしくは円柱形、または粉末圧粉体、未焼結の形態、部分的に焼結した形態、または密に焼結した形態で存在する。本発明のガラスセラミックおよび本発明のガラスは、これらの形態に簡単にさらに処理することができる。しかし、本発明のガラスセラミックおよび本発明のガラスは、例えば、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントのような歯修復物の形態でも存在することができる。
【0049】
本発明は、さらに、対応して構成される出発ガラス、本発明の核を含むガラス、または本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックが、450〜950℃、特に、450〜750℃、好ましくは480〜740℃の範囲で少なくとも1つの熱処理に供される、本発明のガラスセラミックおよび本発明の核を含むガラスを調製するためのプロセスに関する。
【0050】
したがって、本発明の出発ガラスは、
ZrO、TiO、CeO、GeO、SnOおよびこれらの混合物から選択される四価金属酸化物と、
少なくとも12.1重量%のLiOと、
0.1重量%未満のLaと、
1.0重量%未満のKOと、
2.0重量%未満のNaOと
を含むことを特徴とする。
【0051】
加えて、ケイ酸リチウムガラスセラミック、特に、二ケイ酸リチウムガラスセラミックを形成するために、適切な量のSiOおよびLiOを含むことも好ましい。さらに、出発ガラスは、さらなる構成要素をなお含んでいてもよく、例えば、本発明のケイ酸リチウムガラスセラミックのために上に与えられる。これらすべての実施形態は、ガラスセラミックのために好ましいものとしても与えられる出発ガラスに好ましい。
【0052】
本発明のプロセスでは、核を含むガラスは、通常は、出発ガラスを特に480〜520℃の温度で熱処理することによって調製される。次いで、本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、通常は、600〜750℃、特に、640〜740℃でさらに熱処理することによって、好ましくは、核を含むガラスから生成される。
【0053】
したがって、従来の二ケイ酸リチウムガラスセラミックよりも二ケイ酸リチウムの結晶化について、本発明ではかなり低い温度を使用する。このようにして節約されるエネルギーは、明確な利点をあらわす。驚くべきことに、従来のガラスセラミックに必須であると考えられる構成要素(例えば、KOおよびNaO、ならびにLa)が存在しない状態で、この低い結晶化温度も可能である。
【0054】
出発ガラスを調製するために、手順は、特に、適切な出発物質の混合物(例えば、カーボネート、酸化物、ホスフェートおよびフッ化物)を、特に1300〜1600℃の温度で2〜10時間かけて溶融する。特に高い均質性を達成するために、顆粒ガラス材料を形成するために得られたガラス溶融物を水にそそぎ、次いで、得られた顆粒材料を再び溶融する。
【0055】
次いで、溶融物を型にそそぎ、出発ガラスのブランク(いわゆる、固体ガラスブランクまたはモノリスブランク)を生成することができる。
【0056】
顆粒材料を調製するために、溶融物を水に再び入れることも可能である。次いで、研磨および場合によりさらなる構成要素(例えば、着色剤および蛍光剤)を加えた後に、この顆粒材料をプレス加工し、ブランク(いわゆる粉末圧粉体)を形成することができる。
【0057】
最後に、出発ガラスを処理し、顆粒化の後に粉末を形成することもできる。
【0058】
次いで、出発ガラス(例えば、固体ガラスブランクの形態、粉末圧粉体、または粉末の形態)が、450〜950℃の範囲で少なくとも1つの熱処理に供される。第1の熱処理は、最初に、メタケイ酸リチウムおよび/または二ケイ酸リチウム結晶を形成するのに適した核を含む本発明のガラスを調製するために480〜520℃の範囲の温度で行うことが好ましい。この第1の熱処理は、好ましくは、10分〜120分、特に10分〜30分行われる。次いで、核を含むガラスが、好ましくは、より高い温度で、特に、570℃を超える温度で少なくとも1つのさらなる温度処理に供されて、メタケイ酸リチウムまたは二ケイ酸リチウムを結晶化してもよい。このさらなる熱処理は、好ましくは、10分〜120分、特に、10分〜60分、特に好ましくは10分〜30分行われる。二ケイ酸リチウムを結晶化するために、さらなる熱処理は、通常は、600〜750℃、特に640〜740℃で行われる。
【0059】
したがって、このプロセスの好ましい実施形態では、
(a)核を含むガラスを形成するために、出発ガラスが、480〜520℃の温度で熱処理に供され、
(b)主結晶相として二ケイ酸リチウムを含むガラスセラミックを形成するために、核を含むガラスが、640〜740℃の温度で熱処理に供される。
【0060】
(a)および(b)で行われる熱処理の持続時間は、好ましくは、上に与えたとおりである。
【0061】
本発明のプロセスで行われる少なくとも1つの熱処理は、本発明のガラスまたは本発明のガラスセラミックの熱プレス加工または焼結の間に行うこともできる。
【0062】
歯修復物、例えば、ブリッジ、インレー、オンレー、クラウン、ベニア、ファセットまたはアバットメントは、本発明のガラスセラミックおよび本発明のガラスから調製することができる。したがって、本発明は、歯修復物を調製するためのその使用にも関する。ガラスセラミックまたはガラスをプレス加工または機械加工によって望ましい歯修復物に成形することが好ましい。
【0063】
プレス加工は、通常は、高圧高温で行われる。プレス加工は、700〜1200℃の温度で行われることが好ましい。2〜10barの圧力でプレス加工を行うことがさらに好ましい。プレス加工中に、望ましい形状変化は、使用する材料の粘性の流れによって達成される。本発明の出発ガラス、特に、本発明の核を含むガラス、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミック、および本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックをプレス加工に使用することができる。本発明のガラスおよびガラスセラミックを、特にブランクの形態(例えば、固体ブランク、または粉末圧粉体、例えば、未焼結の形態、部分的に焼結した形態、または密に焼結した形態)で使用することができる。
【0064】
機械加工は、通常は、材料除去プロセス、特に、粉砕および/または研磨によって行われる。機械加工がCAD/CAMプロセスの一部として行われることが特に好ましい。本発明の出発ガラス、本発明の核を含むガラス、本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミック、および本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックを機械加工に使用することができる。本発明のガラスおよびガラスセラミックを、特にブランクの形態(例えば、固体ブランク、または粉末圧粉体、例えば、未焼結の形態、部分的に焼結した形態、または密に焼結した形態)で使用することができる。本発明のメタケイ酸リチウムガラスセラミックおよび本発明の二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、好ましくは機械加工に使用される。二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、より低い温度で熱処理することによって生成された完全に結晶化していない形態でも使用することができる。より簡単な機械加工、したがって、機械加工のためのより単純な装置の使用が可能であることが利点である。二ケイ酸リチウムをさらに結晶化するために、このような部分的に結晶化された材料の機械加工の後、これは、通常は、より高い温度、特に640〜740℃の温度で熱処理に供される。
【0065】
一般的に、プレス加工または機械加工によって望ましい形状の歯修復物を調製した後、これは、使用される前駆体、例えば、出発ガラス、核を含むガラスまたはメタケイ酸リチウムガラスセラミックを、二ケイ酸リチウムガラスセラミックに変換するため、または二ケイ酸リチウムの結晶化を高めるため、または、例えば、使用する多孔質粉末圧粉体の多孔度を下げるために、特に、熱処理することもできる。
【0066】
しかし、本発明のガラスセラミックおよび本発明のガラスは、例えば、セラミックおよびガラスセラミックのコーティング材料としても適している。したがって、本発明は、特に、セラミックおよびガラスセラミックをコーティングするための本発明のガラスまたは本発明のガラスセラミックの使用にも関する。
【0067】
また、本発明は、セラミックおよびガラスセラミックをコーティングするためのプロセスにも関し、本発明のガラスセラミックまたは本発明のガラスはセラミックまたはガラスセラミックに適用され、高温に供される。
【0068】
これは、特に、焼結によって、好ましくはプレス加工によって行うことができる。焼結しつつ、ガラスセラミックまたはガラスを、コーティングされるべき材料(例えば、セラミックまたはガラスセラミック)に通常の様式で(例えば、粉末として)適用し、次いで、高温で焼結させる。好ましいプレス加工をしつつ、本発明のガラスセラミックまたは本発明のガラスを、例えば、粉末圧粉体またはモノリスブランクの形態で、例えば、700〜1200℃の高温で、例えば、2〜10barの圧力を加えてプレス加工する。EP 231 773号に記載される方法およびそこに開示されるプレス炉を、特にこのために使用することができる。適切な炉は、例えば、Ivoclar Vivadent AG、Liechtenstein製のProgramat EP 5000である。
【0069】
コーティングプロセスを完了させた後、本発明のガラスセラミックは、特に良好な特性を有するため、主結晶相としての二ケイ酸リチウムとともに存在することが好ましい。
【0070】
前駆体としての本発明のガラスセラミックおよび本発明のガラスの上述の特性のため、これらは、特に、歯科で使用するのに適している。したがって、本発明の主題は、歯科材料としての、特に、歯修復物を調製するため、また、歯修復物(例えば、クラウン、ブリッジおよびアバットメント)のためのコーティング材料としての本発明のガラスセラミックまたは本発明のガラスの使用でもある。
【0071】
最後に、所望な場合に調整される特性を有する歯科材料を生成するために、本発明のガラスおよびガラスセラミックを、他のガラスおよびガラスセラミックと混合することもできる。したがって、本発明のガラスまたは本発明のガラスセラミックを、少なくとも1種類の他のガラスおよび/または他のガラスセラミックと組み合わせて含む組成物、特に歯科材料は、さらに、本発明の主題をあらわす。したがって、本発明のガラスまたは本発明のガラスセラミックを、特に、無機−無機コンポジットの主要な構成要素として、または、複数の他のガラスおよび/またはガラスセラミックと組み合わせて使用することができ、コンポジットまたは組み合わせを、特に歯科材料として使用することができる。組み合わせまたはコンポジットは、特に好ましくは、焼結したブランクの形態で存在していてもよい。無機−無機コンポジットおよび組み合わせを調製するための他のガラスおよびガラスセラミックの例は、DE 43 14 817号、DE 44 23 793号、DE 44 23 794号、DE 44 28 839号、DE 196 47 739号、DE 197 25 553号、DE 197 25 555号、DE 100 31 431号およびDE 10 2007 011 337号に開示される。これらのガラスおよびガラスセラミックは、シリケート、ボレート、ホスフェートまたはアルミノシリケートの群に属する。好ましいガラスおよびガラスセラミックは、SiO−Al−KO型(立方晶または正方晶のリューサイト結晶)、SiO−B−NaO型、アルカリ−シリケート型、アルカリ−亜鉛−シリケート型、シリコホスフェート型、SiO−ZrO型および/またはリチウム−アルミノシリケート型(スポジュメン結晶)である。このようなガラスまたはガラスセラミックと本発明のガラスおよび/またはガラスセラミックとを混合することにより、例えば、熱膨張係数を、所望な場合、6・10−6−1〜20・10−6−1の広範囲に調整することができる。
【0072】
実施例により、本発明を以下にさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0073】
(実施例1〜14−組成物および結晶相)
表Iに与えた組成を有する本発明の合計14種類のガラスおよびガラスセラミックを、対応する出発ガラスを溶融した後、制御された核生成および結晶化のための熱処理によって調製した。
【0074】
このために、100〜200gの重さの出発ガラスを、第1に従来の原材料から1400〜1500℃で溶融させ、この溶融は、気泡または縞を形成することなく非常に簡単に可能であった。出発ガラスを水にそそぐことによって、ガラスフリットを調製し、次いで、第2の時間に、均質化のために1450〜1550℃で1〜3時間かけて溶融させた。
【0075】
実施例1〜6および8〜14の場合には、次いで、ガラスモノリスを生成するために、得られたガラス溶融物を、あらかじめ加熱しておいた型にそそいだ。
【0076】
実施例7の場合には、得られたガラス溶融物を1400℃まで冷却し、水にそそぐことによって微粒子顆粒材料に変換した。顆粒材料を乾燥し、粒径が90μm未満の粉末に粉砕した。この粉末を水で湿らせ、プレス加工し、プレス加工圧20MPaで粉末圧粉体を形成した。
【0077】
次いで、ガラスモノリス(実施例1〜6および8〜14)および粉末圧粉体(実施例7)を、本発明のガラスおよびガラスセラミックを熱処理することによって変換した。制御された核化および制御された結晶化に使用する熱処理を表Iに記載する。以下の意味を適用する。
およびt 核化に使用する温度および時間
およびt 二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムの結晶化に使用する温度および時間
LS メタケイ酸リチウム。
【0078】
480〜520℃の範囲での第1の熱処理が、核を含むケイ酸リチウムガラスの形成を生じ、これらのガラスは、X線回折試験によって確立されたように、640〜740℃でのさらなる熱処理に起因して、二ケイ酸リチウムまたはメタケイ酸リチウムを主結晶相として含むガラスセラミックにすでに結晶化したことが見られ得る。
【0079】
生成されたケイ酸リチウムガラスセラミックは、CAD/CAMプロセスまたは熱プレス加工で種々の歯修復物の形態に非常に満足のいくように機械加工することができ、必要な場合、修復物は、ベニアも伴った。
【0080】
生成された二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、例えば、所望な場合、歯修復物を覆うために、特に、歯修復物へのコーティングとして熱プレス加工によって適用することもできた。
【0081】
(実施例15−粉末圧粉体による処理)
実施例1および11のガラスセラミックを粉砕し、平均粒径が90μm未満の粉末にした。
【0082】
第1の変形例では、プレス加工補助剤を用いてか、または用いずに、得られた粉末をプレス加工して粉末圧粉体を得て、これを800〜1100℃の温度で部分的に焼結するか、または密に焼結し、次いで、機械加工または熱プレス加工によってさらに処理し、歯修復物を形成した。
【0083】
第2の変形例では、プレス加工補助剤を用いてか、または用いずに、得られた粉末をプレス加工して粉末圧粉体を得て、次いで、これを機械加工によって、または熱プレス加工によってさらに処理し、歯修復物を形成した。特に、次いで、機械加工の後に得られた歯修復物を900〜1100℃の温度で密に焼結した。
【0084】
両変形例では、特に、クラウン、キャップ、部分的なクラウン、およびインレー、ならびに歯科用セラミックおよび歯科用ガラスセラミックのコーティングを調製した。
【0085】
(実施例16−核を含むガラスの熱プレス加工)
酸化物またはカーボネートの形態で対応する原材料をTurbulaミキサーで30分間混合し、次いで、白金るつぼでこの混合物を1450℃で120分溶融することによって、実施例7の組成物を含むガラスを調製した。微粒子顆粒ガラス材料を得るために、溶融物を水にそそいだ。特に高い均質性を有するガラス溶融物を得るために、この顆粒ガラス材料を1530℃で150分かけて再び溶融した。温度を30分かけて1500℃まで下げ、次いで、直径が12.5mmの円柱形ガラスブランクを、あらかじめ加熱しておいた分離可能な鋼鉄型またはグラファイト型にそそいだ。次いで、得られたガラス円柱形を500℃で核化し、応力を緩和した。
【0086】
核化したガラス円柱形を、EP600プレス炉(Ivoclar Vivadent AG)を用い、プレス加工温度970℃、およびプレス加工時間6分で熱プレス加工することによって処理し、歯修復物、例えば、インレー、オンレー、ベニア、部分的なクラウン、クラウン、積層材料および積層体を形成した。それぞれの場合に、二ケイ酸リチウムを主結晶相として検出した。
【0087】
【表1-1】
【0088】
【表1-2】