特許第6158196号(P6158196)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158196
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】組織支持デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20170626BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20170626BHJP
   A61F 2/20 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A61F5/56
   A61B17/24
   A61F2/20
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-538901(P2014-538901)
(86)(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公表番号】特表2014-530743(P2014-530743A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】US2012061569
(87)【国際公開番号】WO2013063028
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年9月30日
(31)【優先権主張番号】13/279,384
(32)【優先日】2011年10月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ルソー・ロバート・エイ
(72)【発明者】
【氏名】リンド・エスアール・デイビッド・シー
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/051195(WO,A1)
【文献】 特表2006−507038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/56,2/20
A61B 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織支持デバイスであって、
プレート状要素と、前記プレート状要素から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁と、を有する、アンカー要素であって、前記プレート状要素が、前縁及び後縁と、第1の側縁及び第2の側縁とにより画定され、前記後縁の長さが前記前縁の長さよりも長く、前記第1の側壁及び第2の側壁が、前記プレート状要素の前側における前記第1の側壁と第2の側壁との間の距離が、前記プレート状要素の後側における前記第1の側壁と第2の側壁との間の距離よりも短いように、前記プレート状要素の前記第1の側縁及び第2の側縁の少なくとも一部分に実質的に沿って整合されている、アンカー要素と、
軟組織に係合し、前記軟組織を支持するように適合されている軟組織支持要素であって、前記プレート状要素に結合され、前記アンカー要素から外方向に延びる、軟組織支持要素と、を含む、組織支持デバイス。
【請求項2】
前記軟組織支持要素が、ループ状のフィラメント状要素である、請求項1に記載の組織支持デバイス。
【請求項3】
前記プレート状要素が、前記プレート状要素を貫通する1つ又は2つ以上の開口部を含み、前記フィラメント状要素が、前記1つ又は2つ以上の開口部を通過することにより前記プレート状要素に結合されている、請求項2に記載の組織支持デバイス。
【請求項4】
前記アンカー要素に結合されて、前記フィラメント状要素を前記アンカー要素に定着的に固定するクランプ要素を更に含む、請求項3に記載の組織支持デバイス。
【請求項5】
前記クランプ要素が前記アンカー要素に取り外し可能に結合されている、請求項4に記載の組織支持デバイス。
【請求項6】
前記フィラメント状要素が、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類からなる群から選択される材料から構成される、請求項3に記載の組織支持デバイス。
【請求項7】
前記アンカー要素が、患者の下顎骨の前方部分の下部縁に係合する寸法及び形状を有し、そのように係合した場合、前記アンカー要素が前記下顎骨の前/下縁にまたがり、前記前縁は前記下顎骨の前縁に実質的に沿って配置され、前記後縁は前記下顎骨上にてより後方に配置され、前記第1の側壁及び第2の側壁は、前記下顎骨の側方外縁に係合する、請求項1に記載の組織支持デバイス。
【請求項8】
前記軟組織支持要素が、患者の舌内に植え込まれて、前記アンカー要素から前記舌を支持するように適合されている、請求項7に記載の組織支持デバイス。
【請求項9】
前記アンカー要素が、前記アンカー要素の前側から上方に突出する前方突出部要素を更に含む、請求項8に記載の組織支持デバイス。
【請求項10】
前記第1の側壁及び第2の側壁の位置を前記プレート状要素に対して調整するための調整メカニズムを更に含む、請求項1に記載の組織支持デバイス。
【請求項11】
下顎骨及び舌を有するヒト患者における閉塞型睡眠時無呼吸を処置するためのデバイスであって、
前記下顎骨の前下縁の下部縁にまたがる寸法及び形状を有するプレート状要素と、前記プレート状要素から上方に延び、かつ、前記プレート状要素が前記下顎骨の前記下部縁にまたがった際、前記下顎骨の少なくともオトガイ孔の外縁に係合する寸法及び形状を有する少なくとも1つの側壁と、を有するアンカー要素と、
前記アンカー要素に結合され、かつ前記アンカー要素から外方向に延び、前記舌内に植え込まれるように適合されている組織支持要素と、を含み、
前記アンカー要素が前記下顎骨と係合し、前記組織支持要素が前記舌内に植え込まれた際、前記アンカー要素を前記下顎骨に機械的に定着させることなく前記舌の後方移動が抵抗される、デバイス。
【請求項12】
前記組織支持要素がループ状のフィラメント状要素である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記ループ状のフィラメント状要素が、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類からなる群から選択される材料から構成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記アンカー要素に結合され、かつ前記フィラメント状要素を前記アンカー要素に定着的に固定するように適合されているクランプ要素を更に含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記クランプ要素が前記アンカー要素に取り外し可能に結合されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記アンカー要素が更に、前記プレート状要素から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁を含み、前記第1の側壁が、前記下顎骨の一方の側方外縁と係合する寸法及び形状を有し、前記第2の側壁が、前記下顎骨の反対側の側方外縁と係合する寸法及び形状を有する、請求項11に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1の側壁及び第2の側壁の位置を前記プレート状要素に対して調整するための調整メカニズムを更に含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
下顎骨及び舌を有するヒト患者における閉塞型睡眠時無呼吸を処置するためのデバイスであって、
前記患者内に植え込まれた際に前記下顎骨の少なくとも2つの異なる非同一面表面に当接する寸法及び形状を有するアンカー要素と、前記アンカー要素に結合され、かつ前記アンカー要素から外方向に延び、前記舌内に植え込まれるように適合されている組織支持要素と、を含み、
前記デバイスが前記患者内に植え込まれた際、前記アンカー要素が、前記当接位置に対立する前記の力のみを介して前記下顎骨と係合した状態で保持される、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して医療デバイスの分野に関し、より詳細には、下顎骨から舌を支持し、又は舌を懸垂して睡眠時無呼吸症を処置するための特定の用途を有する、軟組織の支持に適合されている医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
閉塞型睡眠時無呼吸(OSA)は、気道の閉塞によって引き起こされる内科的疾患であり、通常は、睡眠中に喉の軟組織が倒壊及び閉鎖したときに発生する。National Institutes of Healthによれば、OSAは1200万人を越える米国人を侵している。それぞれの無呼吸事象の間、脳はこの病人を一時覚醒させて呼吸の再開を開始させる。しかしながら、この種の睡眠は、極めて断片化されており、質が低い。処置しないでおくと、OSAは、高血圧、心臓血管疾患、体重増加、性交不能症、頭痛、記憶障害、仕事への支障、及び自動車事故を引き起こす場合がある。OSAの重篤性にも関わらず、公衆及び医療専門家の間での一般的な認識の欠如により、大多数のOSA患者が未診断及び未処置のままとなっている。
【0003】
人体において、鼻腔と喉頭との間の空気で満たされた空隙は、上気道と呼ばれる。睡眠障害を伴う上気道の最も重要な部分は咽頭である。咽頭は3つの異なる解剖学的レベルを有する。上咽頭は、鼻腔の後部に位置する咽頭の上部部分である。中咽頭は、軟口蓋、喉頭蓋、及び舌の後部の曲線を含む、咽頭の中間部分である。下咽頭は、中咽頭の軟組織の下に位置する咽頭の下部である。中咽頭は、空気流のための空隙が少なくなる軟組織構造体の高率発生に起因して倒壊する可能性が最も高い咽頭部分である。下咽頭は、喉頭の開口の下方かつ喉頭の後方に位置し、食道まで延びる。
【0004】
当業者に周知のように、軟口蓋及び舌は共に、柔軟性のある構造体である。軟口蓋は、鼻腔と口との間に障壁を提供する。多くの場合、軟口蓋は必要以上に長く、舌の後部と後咽頭壁との間において相当の距離にわたって延在する。
【0005】
睡眠中は体全体の筋肉が弛緩するが、呼吸器系の筋肉のほとんどは活性状態を維持する。吸入時に、横隔膜は収縮し、陰圧を引き起こして空気を鼻腔及び口の中まで引き込ませる。次に、空気は、咽頭を越え、気管を通って肺の中まで流れる。陰圧は、上気道の組織を僅かに変形させ、これにより気道経路が狭くなる。無呼吸の患者では、軟口蓋、舌、及び/又は喉頭蓋は、咽頭後壁にぶつかって倒壊して、気管の中への空気流を遮断する。気道が狭くなると、咽頭を通る空気流は乱流となり、これが軟口蓋を振動させる原因となり、一般にいびきとして知られる音を生成する。
【0006】
睡眠中、ヒトは、典型的には、空気流の短時間の閉塞及び/又は気管及び肺の中に入る空気流の量の僅かな低下を経験する。10秒を超える空気流の閉塞は、無呼吸と見なされる。50%を超える空気流の減少は、呼吸低下と見なされる。睡眠障害の重症度は、睡眠1時間の間に発生する無呼吸及び呼吸低下の回数で判断される。無呼吸又は呼吸低下が1時間に5回を超えて発生する場合、ほとんどの医療関係者は、その個人が上気道の抵抗問題を有していると診断する。これらの患者の多くは、日中の眠気、抑うつ症、及び集中力の欠如などの睡眠障害に関連した症状を呈する。
【0007】
睡眠1時間の間に10回以上の無呼吸又は呼吸低下の症状を発現する個人は、閉塞型睡眠時無呼吸症候群を有すると正式に分類される。気道が閉塞すると、個人は、無理に吸入するための試みを繰り返し行う。これらの症状の発現の多くは無音であり、個人が無理に空気を肺の中に引き込むときの腹部及び胸壁の動きによって特徴付けられる。典型的には、無呼吸の症状の発現は1分以上続く可能性がある。この間、血中の酸素濃度は低下する。最終的に、閉塞は、個人が大きな音のいびきを引き起こすことによって、又は息苦しい感覚によって目覚めることによって、克服され得る。
【0008】
個人が起きている場合、舌の後部及び軟口蓋は、舌の後部及び軟口蓋のそれぞれの内部筋肉のために、それらの形状及び緊張を維持している。その結果、咽頭を通る気道は開いたままであり、かつ遮るものはない。しかしながら、睡眠中、筋肉の緊張が低下し、舌後面及び軟口蓋がより柔軟かつ膨張性となる。舌後面及び軟口蓋の形状を維持し、単独で又は群としてそれらを定位置に維持する正常な筋肉の緊張がなくなり、舌の後面、喉頭蓋及び軟口蓋は容易に倒壊して気道を遮断する傾向がある。
【0009】
通常、持続性気道陽圧(CPAP)と称される既知の処置の1つは、現在、OSA処置の「ゴールドスタンダード(判断基準)」であり、特別に設計した鼻マスク又は枕を介して患者の気道内に空気を送達することにより操作される。患者が吸い込むときに空気の流れが正圧を形成して、気道を開いたままに維持する。CPAPは、いびき及び閉塞型睡眠時無呼吸を緩和するために有効な非外科的処置であると多くの人々によって考えられているが、患者は、腫脹、鼻の乾燥、及びドライアイなど、マスク及びホースにより生じる不快感についての不満を訴えている。その結果、CPAPに関する患者のコンプライアンスは約40%のみである。
【0010】
OSAの処置には、外科的処置も使用されている。そのような処置の1つは口蓋垂口蓋咽頭形成術と呼ばれ、舌と咽頭壁との間を粗動させる軟口蓋の能力を低減するために、軟口蓋の後縁を約2cm除去するものである。別の手技では、手術用レーザーを使用して軟口蓋の表面上に瘢痕組織を形成し、この瘢痕組織は軟口蓋の柔軟性を低下させて、いびき及び/又は気道の閉鎖を低減する。一般に焼灼器支援による口蓋硬化手術(CAPSO)と呼ばれる更なる別の手技は、局所麻酔下で行う診療所ベースの手技であり、軟口蓋粘膜の正中細長片を除去し、この創傷が治癒されて弛緩性の口蓋が剛化する。
【0011】
上述されたものなどの外科的手技は、引き続き問題を有している。より詳細には、外科的に処置される組織範囲(即ち、口蓋組織の除去、又は口蓋組織の瘢痕)は、患者の状態の処置に必要とするよりも大きい場合が多い。加えて、上述した外科的手技は、多くの場合苦痛を与え、長い不快な治癒期間を有する。例えば、軟口蓋の瘢痕組織は、患者に持続的な刺激を与える場合がある。その上、上記の手技は、副作用の事象において元に戻すことができない。
【0012】
OSAの処置には、外科的インプラントも使用されている。名称AIRvanceでMinneapolis,MNのMedtronic,Inc.により販売されている1つのそのようなインプラントシステムでは、チタンネジが使用され、前記ネジは口腔底にて下顎骨の後面内に挿入される。縫合糸のループを舌根に通し、下顎骨ネジに取り付ける。この手技は、舌根の懸吊又はハンモックの状態を達成して、睡眠中に舌根が脱出しないようにする。ネジ型骨アンカーの使用は、歯及び又は歯の神経根若しくは血管に対する損傷の危険性を増大させる。
【0013】
他の既知の舌懸垂デバイスは、同様に下顎骨内にて骨ネジを使用するが、調整可能であるという利点を有する。このデバイスは、舌内にて可撓性の形状記憶アンカーを使用し、前記アンカーは、引っ掛けフックと類似した形状を有して舌根内の組織と係合する。このデバイスは、オトガイ下領域内の小切開部を通して配置され、下顎骨に取り付けられたスプール状構成要素に縫合糸が取り付けられる。治癒から2〜4週間後、顎先の下部に小切開部を形成し、ネジを回転させて縫合糸を締めることによって、デバイスを前方に牽引する。このデバイスは、無菌空間内からの簡易化した据付け技術を提供するが、このアンカーは、舌筋肉組織内の負荷に起因する高い割合のデバイス破壊及び破損の欠点を有する。加えて、歯又は歯の神経根に対する損傷の危険性は、両方のデバイスで同様である。
【0014】
米国特許第7367340号は、下顎骨にアンカーされ、舌内に力を付与して、睡眠中の舌の倒壊を防止することが可能な要素の使用を記載している。記載されている実施形態では、デバイスは、下顎骨の穿孔により下顎骨に取り付けられて、固定された定着地点を提供する要素からなる。この取り付け方法は、基本的に、歯の解剖学的形態及び下顎骨内の神経構造に対して同じ危険性を生じる。
【0015】
この上述したデバイスによる危険性は、懸垂繊維を有する骨ネジの典型的な下顎骨配置を示す図1により示されている。図示されるように、ネジが下顎骨内に延びるにつれて、ネジは、その配置に応じて潜在的に神経、血管又は歯に突き当たる可能性がある。
【0016】
骨又は神経に対する損傷の危険性を避けるために、可撓性軟組織アンカーを使用する代替的手法が図2に示されている。この実施形態では、懸垂ループのためのアンカーは、オトガイ下領域の軟組織内に配置され、懸垂要素は、軟性の可撓性アンカーに定着されている。この方法は、下顎骨内に骨アンカー又はネジを配置することに関連した問題を回避するが、懸垂ループの定着の鉛直角θがより大きくなる。前述の図と比較した場合、軟組織アンカーシステムの場合の角度θは、骨アンカーデバイスの場合の角度θよりも大きいことが理解できる。アンカーは、下顎骨の下縁のかなり後方に配置された場合、舌の前方移動に代わって、舌根の垂直圧迫をもたらし得ることが可能である。したがって、結果として得られる懸垂角度を、より密接に近似するアンカーシステムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した欠点を前提として、嚥下及び会話中の舌の筋肉組織の負荷に起因する動作に効果的に抵抗でき、かつ、下顎骨の骨構造又は神経を損傷しない、下顎骨に関連した定着地点を提供する舌懸垂デバイスが尚必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
プレート状要素と、前記プレート状要素から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁と、を有するアンカー要素を有する組織支持デバイスを提供する。プレート状要素は、前縁及び後縁と、第1の側縁及び第2の側縁とにより画定され、後縁の長さは、前縁の長さよりも長い。第1の側壁及び第2の側壁は、プレート状要素の前側における第1の側壁と第2の側壁との間の距離が、プレート状要素の後側における第1の側壁と第2の側壁との間の距離よりも短いように、プレート状要素の第1の側縁及び第2の側縁の少なくとも一部分に実質的に沿って整合されている。組織支持デバイスは、軟組織に係合し、該軟組織を支持するように適合されている軟組織支持要素を更に含み、前記軟組織支持要素は、平坦なプレートに結合され、アンカー要素から外方向に延びる。
【0019】
軟組織支持要素はフィラメント状要素であってもよく、プレート状要素は、該要素を貫通する1つ又は2つ以上の開口部を含んでもよく、フィラメント状要素は前記1つ又は2つ以上の開口部を通過することによりプレート状要素に結合されている。
【0020】
別の実施形態では、組織支持デバイスは、アンカー要素に結合されて、フィラメント状要素をアンカー要素に定着的に固定するクランプ要素を更に含み、クランプ要素は更に、アンカー要素に取り外し可能に結合されていてもよい。
【0021】
更なる別の実施形態では、フィラメント状要素は、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類からなる群から選択される材料で形成されている。
【0022】
更なる別の実施形態では、アンカー要素は、患者の下顎骨の前方部分の下部縁に係合する寸法及び形状を有し、したがって、そのように係合した場合、アンカー要素は下顎骨の前/下縁にまたがり、前縁は下顎骨の前縁に実質的に沿って配置され、後縁は下顎骨上にてより後方に配置され、第1の側壁及び第2の側壁は、下顎骨の側方外縁に係合する。
【0023】
軟組織支持デバイスは更に、患者の舌内に植え込まれて、アンカー要素から舌を支持するように適合されてもよい。
【0024】
更なる別の実施形態では、アンカー要素は、アンカー要素の前側から上方に突出する前方突出部要素を更に含み、更なる別の実施形態では、組織支持デバイスは、第1の側壁及び第2の側壁の位置をプレート状要素に関連して調整するための調整メカニズムを更に含む。
【0025】
下顎骨及び舌を有するヒト患者における閉塞型睡眠時無呼吸を処置するためのデバイスも提供し、前記デバイスは、下顎骨の前下縁の下部縁にまたがる寸法及び形状を有するプレート状要素と、平坦なプレートから上方に延び、かつ、平坦なプレートが下顎骨の下部縁にまたがった際、下顎骨の少なくともオトガイ孔の外縁に係合する寸法及び形状を有する少なくとも1つの側壁と、を有するアンカー要素を含む。デバイスは、アンカー要素に結合され、かつアンカー要素から外方向に延び、舌内に植え込まれるように適合されている組織支持要素を更に含む。アンカー要素が下顎骨と係合し、組織支持要素が舌内に植え込まれた際、アンカー要素を下顎骨に機械的に定着させることなく舌の後方移動が抵抗される。
【0026】
組織支持要素はループ状のフィラメント状要素であってもよく、更に、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類からなる群から選択される材料で形成されてもよい。
【0027】
デバイスは、アンカー要素に結合され、かつフィラメント状要素をアンカー要素に定着的に固定するように適合されているランプ要素を更に含んでもよく、前記クランプ要素は、更にアンカー要素に取り外し可能に結合されてもよい。
【0028】
更なる別の実施形態では、アンカー要素は、プレート状要素から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁を更に含み、第1の側壁は、下顎骨の一方の側方外縁と係合する寸法及び形状を有し、第2の側壁は、下顎骨の反対側の側方外縁と係合する寸法及び形状を有する。
【0029】
更なる別の実施形態では、デバイスは、第1の側壁及び第2の側壁の位置をプレート状要素に関連して調整するための調整メカニズムを更に含む。
【0030】
下顎骨及び舌を有するヒト患者における閉塞型睡眠時無呼吸を処置するためのデバイスも提供し、前記デバイスは、患者内に植え込まれた際に下顎骨の少なくとも2つの異なる非同一面表面に当接する寸法及び形状を有するアンカー要素と、アンカー要素に結合され、かつアンカー要素から外方向に延び、舌内に植え込まれるように適合されている組織支持要素と、を含む。デバイスが患者内に植え込まれた際、アンカー要素が、当接位置に対立する軟組織の力のみを介して下顎骨と係合した状態で保持される。
【0031】
本開示は、閉塞型睡眠時無呼吸の処置方法も提供し、前記方法は、プレート状要素と、プレート状要素の第1の側及び第2の側から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁と、を含む、アンカー要素と、アンカー要素に結合され、かつアンカー要素から外方向に延びる軟組織支持要素と、を有する、植え込み可能な組織支持デバイスを獲得する工程と、アンカー要素が下顎骨の前下縁にまたがりかつ係合し、軟組織支持要素が患者の舌内に植え込まれて、アンカー要素を下顎骨に機械的に取り付けることなく、舌の後方移動を防止するように、植え込み可能な組織支持デバイスを患者内に植え込む工程と、を含む。
【0032】
軟組織支持要素は、ループ状のフィラメント状要素であってもよい。
【0033】
本方法は、組織支持要素の位置をアンカー要素に関連して調整した後、組織支持要素をアンカー要素に定着的に固定する工程を更に含んでもよい。
【0034】
最後に、閉塞型睡眠時無呼吸の処置のための別の方法を提供し、前記方法は、アンカー要素と、アンカー要素に結合され、かつアンカー要素から外方向に延びる軟組織支持要素と、を含む、植え込み可能な組織支持デバイスを獲得する工程と、アンカー要素が患者の下顎骨の少なくとも2つの異なる非同一面表面に実質的に当接し、前記下顎骨に対する更なる取り付けを有さないようにアンカー要素を植え込む工程と、軟組織支持要素を患者の舌内に植え込んで、アンカー要素と下顎骨との係合を介して舌の後方動作に抵抗する工程と、を含む。
【0035】
本発明のこれら及び他の目的、特徴並びに利点は、添付の図面と関連づけて解釈される、その例示的実施形態に関する以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来技術による舌懸垂デバイスを示す。
図2】従来技術による舌懸垂デバイスを示す。
図3】本発明による組織支持デバイスの斜視図である。
図4図3の実施形態のアンカー要素の斜視図である。
図5】ヒト下顎骨との関連での図4のアンカー要素を示す。
図6】それぞれ、ヒト解剖学的形態に関連した本発明の組織支持デバイスの下面図、矢状図及び側方図である。
図7】それぞれ、ヒト解剖学的形態に関連した本発明の組織支持デバイスの下面図、矢状図及び側方図である。
図8】それぞれ、ヒト解剖学的形態に関連した本発明の組織支持デバイスの下面図、矢状図及び側方図である。
図9】追加のクランプを含む、本発明による組織支持デバイスを示す。
図10】本発明の組織支持デバイスのアンカー要素の代替的な実施形態を示す。
図11a】調整可能な機構を含む、本発明による組織支持デバイスを示す。
図11b】調整可能な機構を含む、本発明による組織支持デバイスを示す。
図12a】締め付け機構を含む、組織支持デバイスの代替的な実施形態を示す。
図12b】締め付け機構を含む、組織支持デバイスの代替的な実施形態を示す。
図13】組織支持要素を植え込むための例示的な植え込み技術を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
組織支持デバイスを、下顎骨から舌を支持し、又は舌を懸垂して閉塞型睡眠時無呼吸を処置する特定の参照を用いて記載するが、本発明はそのように限定されず、他の骨構造からの軟組織の支持若しくは懸垂、及び/又は、他の医療的状態の処置に用途を有し得ることを理解するべきである。
【0038】
図3は、本発明による組織支持デバイスの一実施形態を示す。組織支持デバイス100は、アンカー要素102と、アンカー要素102に結合された軟組織支持要素104と、を含む。アンカー要素102の一実施形態は図4において詳細に示され、前側109における前縁108と、後側111における後縁110と、第1の側縁112及び第2の側縁114とにより画定されているプレート状要素106を含む。前縁108は、後縁110の長さlよりも短い長さlを有する。特定の実施形態は、実質的に平坦なプレート状要素106を開示しているが、プレート状要素は、下顎骨下腔内に適合する、段がある又は凹凸がある表面を有して製造されてもよく、それによって顎二腹筋及び顎舌骨筋の遠位表面をより密接に近似する。このように製作された場合、懸垂ループアンカー地点の最終的な位置は、下顎骨の舌面上のオトガイ結節における挿入地点を、より密接にシミュレートし得る。段があるアンカーの使用により、オトガイ舌骨筋及びオトガイ舌筋組織により提供される懸垂の自然の角度がより密接に近似される。明確さのために、本明細書で使用される用語「プレート状要素」は、任意のそのような実施形態を包含する。アンカー要素102は、少なくとも1つの側壁、好ましくは第1の側壁116及び第2の側壁118も含む。第1の側壁116及び第2の側壁118は、プレート状要素106から上方に延び、プレート状要素の第1の側縁112及び第2の側縁114に実質的に沿って整合されている。第1の側壁要素及び第2の側壁要素は、遠方収束点から外方向に延びる、2つの異なる非接続面に沿って延びる。図示した実施形態では、第1の側壁及び第2の側壁は、実質的にプレート状要素の第1の側縁及び第2の側縁の全長に沿って延びるが、側壁は、該第1の側縁及び第2の側縁の長さの任意の部分に沿って延びてもよい。加えて、第1の側壁及び第2の側壁は、平坦な平面状構造として示されているが、側壁は、受容する下顎骨表面の外観に合わせられた3次元の非平面状形態を有し得ることが想定され、本明細書で使用される用語「側壁」は、任意のそのような実施形態を含むものとする。第1の側壁と第2の側壁との間の距離は、プレート状要素の前側109から後側111へ増大して、図4に示すようにV字形状を形成し、このことの重要性は、以下に更に記載される。
【0039】
図示した実施形態では、プレート状要素は、該要素を貫通する1つ又は2つ以上の開口部120を更に含み、好ましい実施形態では、軟組織支持要素104は、非吸収性外科的縫合糸などのフィラメント状又は繊維状要素であり、この1つ又は2つ以上の開口部を通すことによってアンカー要素に結合される。軟組織支持要素として使用するのに好適な材料には、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類が挙げられる。
【0040】
図5〜8は、閉塞型睡眠時無呼吸の処置のための、本発明のデバイスの使用を示す。図5は、患者の下顎骨128を示し、アンカー要素102は、アンカー要素の前縁108が下顎骨の前縁130に最も接近するように、下顎骨の前下縁に対して配置されている。デバイスの形状は、下顎骨の幾分平面状の形態に近似していることに留意するべきである。下顎骨128は、基本的に、対称の中心線に沿って様々な角度で収束する3つの主な平面状要素からなる。下顎骨の表面テクスチャ及び輪郭は、幾分不規則又は非平面状であるが、広い下顎骨表面は、一般形ではおよそ平面状であると考慮することができる。第1の垂直面は下顎骨の前面に沿って位置し、下顎骨の外面上の切歯窩の付近のオトガイ筋113の近似位置に延びる。第1の垂直面は、下顎骨の側面を形成する2つの垂直面に対して斜角で接続している。第1の垂直面は、およそオトガイ筋113の右側から右枝125に延びるとして大体定義され、右枝125は右関節突起123及び右筋突起121の水準まで上方に延びる。第2の垂直面は、およそオトガイ筋113の左側から左枝115に延びるとして大体定義され、左枝115は左関節突起117及び左筋突起119の水準まで上方に延びる。このように、基本的に2つの異なる収束側壁面要素により形成されるアンカー要素のV字形状と、対応する下顎骨の収束平面形状とにより、アンカー要素は、以下に更に記載するように、骨に対する任意の機械的定着を必要とすることなく、同様の形状の下顎骨の非同一平面表面に近接し又は当接することによって下顎骨にまたがり及び係合して、軟組織支持要素のための安定なアンカーを提供する。組織支持デバイス100のアンカー要素102はモノリシックな構成要素として開示されているが、この構造体をモジュラー型構造から形成して、分割された連結構成要素などを使用することによって、より良好なあつらえ適合のためにプレート状要素に対する側壁の位置決めを調整可能とし得ることが想定されることに留意するべきである。例えば、図11a及び11bは、第1の側壁116a及び第2の側壁118aがプレート状要素102aに取り外し可能に結合されている一実施形態を示す。それぞれ第1の側壁及び第2の側壁から外方向に延びるリブ状又はラチェット状突出部301a、301bは、プレート状要素102a内の対応する細長孔303a、303b内に受容され、かつ細長孔303a、303bと係合している。この細長孔及びリブ状配置は、有限数の連結位置を可能にする一連の歯止め位置を有して製造されている。このデバイスは、側壁及びプレート状要素を、最適な配置を確実にする最終的なロック位置に到達するまで互いに圧迫することによって該デバイスの幅を調整して、特定の下顎骨の幅に適合させることを除いて、モノリシックに形成されたデバイスと同様に配置される。代替的な実施形態(図示せず)では、プレートは2つの半体に分割されてもよく、各半体は、側壁要素と、部分的な下部プレートとにより形成される「L」形プロファイルを有する。下部プレート部分は、2つの半体を互いに圧迫することを可能にする、類似した水平スロット及びリブを含む。
【0041】
以下図7〜8を参照すると、軟組織支持要素104は、舌に係合し及び張力要素を提供し、又は舌をアンカー要素から懸垂して、上気道を閉塞又は部分的に閉塞するであろう舌の後方移動を防止するように適合されている。図示した実施形態では、軟組織支持要素は、舌134内に植え込まれ、図1に示す既知の骨アンカータイプの懸垂デバイスに実質的に一致し、かつアンカー要素上に該要素を下顎骨と更に係合させる張力ベクトルを配置する角度θにて、アンカー要素102から、およそ有郭乳頭の位置に位置する粘膜下組織まで外方向に延び、舌の正中溝部分からおよそ1cm側方に位置する側方に、舌を横切って2cmの距離通過する。一旦係合されると、後方動作はアンカー要素の側壁の収束によって抵抗され、上昇力は、下顎骨の下面の存在によって抵抗され、アンカーと下顎骨との接触面における圧迫力がもたらされる。その結果、アンカー要素は、軟組織支持要素の負荷に抵抗するであろうが、先行技術による骨アンカーデバイスのような下顎骨に対する機械的定着を必要としない方法で、下顎骨にしっかりと係合する。
【0042】
組織支持デバイスは、アンカー要素に軟組織支持要素を係合させ又は締め付けるクランプ、カバーなどを更に含んでもよい。図9は、軟組織支持要素104の末端部がクランプ要素とアンカー要素との間に締め付けられ、又は別様に定着的に固定される方法で、アンカー要素102に係合するように設計されている、1つのそのようなクランプ要素140を示す。図示した実施形態では、クランプ要素140は第1の突出部142を含み、第1の突出部142は、クランプ要素140から外方向に延び、アンカー要素を貫通する対応する開口146を通過し、かつプレート状要素の上面148とも係合する寸法及び形状を有する。クランプ要素140は更に第2の突出部150を含み、第2の突出部150は、一旦第1の突出部が係合されると、クランプとアンカー要素との間でクランプの基部152が軟組織支持要素にしっかりと係合するように、アンカー要素の後縁110と係合することによって、要素間のスナップフィットを形成する寸法及び形状を有する。
【0043】
図12a及び12bは、互いにパチンと閉まり、それらの間に組織支持要素104を定着的に固定する第1のプレート状要素307及び第2のプレート状要素309を有する代替的な実施形態を示す。第1のプレート状要素307と第2のプレート状要素309とは、任意の好適な蝶番メカニズム310によって前側において一緒に結合されている。後側は1つ又は2つ以上の突出部311を含み、突出部311は、第1のプレート状要素が図12bの矢印で示すように下方に枢動された際、第1のプレート状要素307と第2のプレート状要素309とを一緒に定着的に係合させるスナップロックフィットを提供する寸法及び形状を有する。本明細書には特定の実施形態が記載されているが、当業者は、本発明に関連して使用し得る様々な他の締め付けメカニズムを容易に認識するであろう。更に、クランプとアンカーとの連結機構は、一連のスナップロックとして製造されてもよい。多数のスナップロックの使用により、繊維に付与される締め付け力の段階的な増大が可能となる。段階的な張力により、クランプ構成要素がその第1の位置に閉鎖することにより形成される低摩擦力の付与によって繊維の初期配置が可能となる。軟組織支持デバイスを正確に配置した後、軟組織支持要素の最終的なロック力を提供する第2の位置内にクランプをパチンと留める。代替的に、図示されるアンカーデバイスは単純な連結クランプ機構を開示しているが、デバイスは代替的にネジ駆動スライド、ラチェット、及びくさびクランプなどの調整可能な張力デバイスを用いて製造されてもよい。
【0044】
追加のクランプ要素によって、更にクランプ要素に接近し、該クランプ要素を外し、軟組織支持要素上を引き寄せてより大きい支持又は懸垂を提供し、クランプを再び係合させ又は再び締め付けて軟組織支持要素をアンカー要素に増大された懸垂状態にて定着的に固定することにより術後調整が可能となり得る。
【0045】
デバイスを植え込むために、下顎骨の下領域内にてオトガイ隆起の僅かに後方に切開部を形成する。下顎骨の下面から離れるように組織を切開することによってポケットを形成して、アンカー要素を受容する。軟組織支持要素は、その全容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2010/0137905号に記載されているものと同様のトロカール及びスネア状要素を使用することによって、舌内に配置されてもよい。1つの技術によれば、繊維は、予め取り付けられた針を使用することによって、又は湾曲した穴付き針若しくはスネア要素を使用することによって、舌を通して横方向に配置される。針は、有郭乳頭の位置において、正中溝からおよそ1cm離れた箇所から、正中溝の反対側へおよそ1cm側方の箇所へ、側方に通される。繊維は、舌粘膜の表面のおよそ1〜2mm下方にて通される。初期の繊維配置が完了した後、軟組織支持要素の自由末端部のおよそ10〜12cmが口腔内にて舌の表面から延びる。次いで、スネアタイプの針202をオトガイ下領域内の下切開部から舌内を通し、図13に示されるように、軟組織支持要素の自由末端部と同一の孔を通して退出させる。軟組織支持要素104のそれぞれの自由末端部204は、スネアデバイス202内に配置され、舌の組織を通して出口地点へ、そしてアンカーデバイス102内の孔120を通して牽引される。軟組織支持要素の自由末端部を僅かに引っ張り、互いに結び、又はクランプ要素140を使用して組織支持要素の自由末端部を定位置にロックする。次いで、標準的な技術によって切開部を閉鎖する。
【0046】
アンカー要素の保持強度の増大が所望される場合、アンカー要素は、アンカー要素102の平坦なプレート106の前側109から上方に突出する前方突出部要素160を更に含んで、図10に示されるように、下顎骨の前部に対して、確実に停止させることもできる。これは、非常に細い下顎骨を有する患者に特に有用であり得る。
【0047】
アンカー要素は、中実の生体適合性材料からなってもよく、又は、組織組み込み若しくは一体化及びデバイスの適合性を増大させ得る複合材料構造体であってもよい。例えば、メッシュ材料などの材料、発泡体、多孔質表面処理又は穿孔を中実の剛性構造体に追加して、組織成長を改善してもよい。代替的に、軟組織支持要素の結び位置を提供する単純な設計のアンカーデバイスは、PGA、ポリジオキサノン、マグネシウムなどの吸収性高分子又は金属材料を、ポリプロピレン、PVDF、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ePTFE、ステンレス鋼又はチタンなどの金属性織物、又はこれらの組み合わせなどの非吸収性織物材料と組み合わせた積層構造として製造されてもよい。この特定の実施形態では、デバイスは定着なしでの配置を確実にするために、植え込む時に剛性である。時間とともに材料が除去されるにつれて、織物構造体が周囲の組織と一体化し、インプラントが可撓性となって、軟組織支持要素の自由な動作の程度が幾分追加され得る。
【0048】
本発明の例示的実施形態を、添付図面を参照して本明細書で説明したが、当然のことながら、本発明はこれらと同じ実施形態に限定されず、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者によって本明細書において様々なその他変更及び修正が達成できる。
【0049】
〔実施の態様〕
(1) 組織支持デバイスであって、
プレート状要素と、前記プレート状要素から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁と、を有する、アンカー要素であって、前記プレート状要素が、前縁及び後縁と、第1の側縁及び第2の側縁とにより画定され、前記後縁の長さが前記前縁の長さよりも長く、前記第1の側壁及び第2の側壁が、前記プレート状要素の前側における前記第1の側壁と第2の側壁との間の距離が、前記プレート状要素の後側における前記第1の側壁と第2の側壁との間の距離よりも短いように、前記プレート状要素の前記第1の側縁及び第2の側縁の少なくとも一部分に実質的に沿って整合されている、アンカー要素と、
軟組織に係合し、前記軟組織を支持するように適合されている軟組織支持要素であって、前記平坦なプレートに結合され、前記アンカー要素から外方向に延びる、軟組織支持要素と、を含む、組織支持デバイス。
(2) 前記軟組織支持要素が、ループ状のフィラメント状要素である、実施態様1に記載の組織支持デバイス。
(3) 前記プレート状要素が、前記プレート状要素を貫通する1つ又は2つ以上の開口部を含み、前記フィラメント状要素が、前記1つ又は2つ以上の開口部を通過することにより前記プレート状要素に結合されている、実施態様2に記載の組織支持デバイス。
(4) 前記アンカー要素に結合されて、前記フィラメント状要素を前記アンカー要素に定着的に固定するクランプ要素を更に含む、実施態様3に記載の組織支持デバイス。
(5) 前記クランプ要素が前記アンカー要素に取り外し可能に結合されている、実施態様4に記載の組織支持デバイス。
【0050】
(6) 前記フィラメント状要素が、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類からなる群から選択される材料から構成される、実施態様3に記載の組織支持デバイス。
(7) 前記アンカー要素が、患者の下顎骨の前方部分の下部縁に係合する寸法及び形状を有し、そのように係合した場合、前記アンカー要素が前記下顎骨の前/下縁にまたがり、前記前縁は前記下顎骨の前縁に実質的に沿って配置され、前記後縁は前記下顎骨上にてより後方に配置され、前記第1の側壁及び第2の側壁は、前記下顎骨の側方外縁に係合する、実施態様1に記載の組織支持デバイス。
(8) 前記軟組織支持デバイスが、患者の舌内に植え込まれて、前記アンカー要素から前記舌を支持するように適合されている、実施態様7に記載の組織支持デバイス。
(9) 前記アンカー要素が、前記アンカー要素の前側から上方に突出する前方突出部要素を更に含む、実施態様8に記載の組織支持デバイス。
(10) 前記第1の側壁及び第2の側壁の位置を前記プレート状要素に対して調整するための調整メカニズムを更に含む、実施態様1に記載の組織支持デバイス。
【0051】
(11) 下顎骨及び舌を有するヒト患者における閉塞型睡眠時無呼吸を処置するためのデバイスであって、
前記下顎骨の前下縁の下部縁にまたがる寸法及び形状を有するプレート状要素と、前記平坦なプレートから上方に延び、かつ、前記平坦なプレートが前記下顎骨の前記下部縁にまたがった際、前記下顎骨の少なくともオトガイ孔の外縁に係合する寸法及び形状を有する少なくとも1つの側壁と、を有するアンカー要素と、
前記アンカー要素に結合され、かつ前記アンカー要素から外方向に延び、前記舌内に植え込まれるように適合されている組織支持要素と、を含み、
前記アンカー要素が前記下顎骨と係合し、前記組織支持要素が前記舌内に植え込まれた際、前記アンカー要素を前記下顎骨に機械的に定着させることなく前記舌の後方移動が抵抗される、デバイス。
(12) 前記組織支持要素がループ状のフィラメント状要素である、実施態様11に記載のデバイス。
(13) 前記ループ状のフィラメント状要素が、ポリプロピレン、ePTFE、ポリアミド、フルオロポリマー類から生成される繊維、ポリエステル類、ポリオレフィン類、ウレタン類、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン−VDF)及びポリアリールエーテルケトン類からなる群から選択される材料から構成される、実施態様12に記載のデバイス。
(14) 前記アンカー要素に結合され、かつ前記フィラメント状要素を前記アンカー要素に定着的に固定するように適合されているクランプ要素を更に含む、実施態様12に記載のデバイス。
(15) 前記クランプ要素が前記アンカー要素に取り外し可能に結合されている、実施態様14に記載のデバイス。
【0052】
(16) 前記アンカー要素が更に、前記プレート状要素から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁を含み、前記第1の側壁が、前記下顎骨の一方の側方外縁と係合する寸法及び形状を有し、前記第2の側壁が、前記下顎骨の反対側の側方外縁と係合する寸法及び形状を有する、実施態様11に記載のデバイス。
(17) 前記第1の側壁及び第2の側壁の位置を前記プレート状要素に対して調整するための調整メカニズムを更に含む、実施態様11に記載のデバイス。
(18) 下顎骨及び舌を有するヒト患者における閉塞型睡眠時無呼吸を処置するためのデバイスであって、
前記患者内に植え込まれた際に前記下顎骨の少なくとも2つの異なる非同一面表面に当接する寸法及び形状を有するアンカー要素と、前記アンカー要素に結合され、かつ前記アンカー要素から外方向に延び、前記舌内に植え込まれるように適合されている組織支持要素と、を含み、
前記デバイスが前記患者内に植え込まれた際、前記アンカー要素が、前記当接位置に対立する前記軟組織の力のみを介して前記下顎骨と係合した状態で保持される、デバイス。
(19) 閉塞型睡眠時無呼吸の処置方法であって、
プレート状要素と、前記プレート状要素の第1の側及び第2の側から上方に延びる第1の側壁及び第2の側壁と、を含む、アンカー要素と、前記アンカー要素に結合され、かつ前記アンカー要素から外方向に延びる軟組織支持要素と、を有する、植え込み可能な組織支持デバイスを獲得する工程と、
前記アンカー要素が前記下顎骨の前記前下縁にまたがりかつ係合し、前記軟組織支持要素が患者の舌内に植え込まれて、前記アンカー要素を前記下顎骨に機械的に取り付けることなく前記舌の後方移動を防止するように、前記植え込み可能な組織支持デバイスを前記患者内に植え込む工程と、を含む、方法。
(20) 軟組織支持要素がループ状のフィラメント状要素である、実施態様19に記載の方法。
【0053】
(21) 前記組織支持要素の位置を前記アンカー要素に対して調整した後、前記組織支持要素を前記アンカー要素に定着的に固定する工程を更に含む、実施態様19に記載の方法。
(22) 閉塞型睡眠時無呼吸の処置方法であって、
アンカー要素と、前記アンカー要素に結合され、かつ前記アンカー要素から外方向に延びる軟組織支持要素と、を含む、植え込み可能な組織支持デバイスを獲得する工程と、
前記アンカー要素が患者の下顎骨の少なくとも2つの異なる非同一平面表面に実質的に当接し、前記下顎骨に対する更なる取り付けを有さないように、前記アンカー要素を植え込む工程と、
前記軟組織支持要素を前記患者の舌内に植え込んで、前記アンカー要素と前記下顎骨との係合を介して前記舌の後方動作に抵抗する工程と、を含む、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図13