(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158209
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】減圧ドレッシングおよび関連の弁を有する減圧組織治療システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20170626BHJP
A61M 1/00 20060101ALI20170626BHJP
A61M 39/24 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
A61M27/00
A61M1/00 130
A61M1/00 135
A61M39/24
【請求項の数】28
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-543511(P2014-543511)
(86)(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-533579(P2014-533579A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012065631
(87)【国際公開番号】WO2013078095
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】61/563,529
(32)【優先日】2011年11月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
【審査官】
安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0130712(US,A1)
【文献】
国際公開第2010/102146(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0144599(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0281509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61M 1/00
A61M 39/24
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位の第1の組織部位に位置決めされるように適合された第1のドレッシング充填材と;
前記組織部位の第2の組織部位に位置決めされるように適合された第2のドレッシング充填材と;
前記第1のドレッシング充填材および前記第2のドレッシング充填材に流体的に接続されるように適合された減圧源と;
前記第1の組織部位に関連付けられて、前記第1の組織部位からの流体の流れを可能にしかつ前記第1の組織部位に向かう流体の流れを実質的に排除するように適合された第1の弁と;
前記第2の組織部位に関連付けられて、前記第2の組織部位からの流体の流れを可能にしかつ前記第2の組織部位に向かう流体の流れを実質的に排除するように適合された第2の弁と
を含み、
前記第1の弁および前記第2の弁が、各々、入口および出口と、前記入口と前記出口との間を流体連通させるように位置決めされた弁フラップおよびシールリングとを有し、前記弁フラップは、閉鎖位置と開放位置との間を可動であり、および前記閉鎖位置では、前記弁フラップは前記シールリングに接触して、前記入口と前記出口との間の流体連通を実質的に排除し、および開放位置では、前記弁フラップは前記シールリングから離れており、前記入口と前記出口との間の流体連通を可能にすることを特徴とする、システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記第1のドレッシング充填材との流体連通が前記第1の弁によってもたらされ、および前記第2のドレッシング充填材との流体連通が前記第2の弁によってもたらされることを特徴とする、システム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムにおいて、前記第1の弁および前記第2の弁が、各々、前記入口から前記出口への流体連通をもたらしかつ前記出口から前記入口への流体連通を実質的に排除するように適合されており、前記第1の弁の前記入口が、前記第1のドレッシング充填材の方に位置決めされており、および前記第2の弁の前記入口が、前記第2のドレッシング充填材の方に位置決めされていることを特徴とする、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記第1のドレッシング充填材と前記第2のドレッシング充填材との間に流体連通をもたらすように適合された橋絡用マニホールドを含み、前記減圧源は、前記橋絡用マニホールドによって前記第1のドレッシング充填材および前記第2のドレッシング充填材に流体的に結合されるように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムにおいて、前記第1の弁は、前記橋絡用マニホールドと前記第1のドレッシング充填材との間を流体連通させるように位置決めされており、および前記第2の弁は、前記橋絡用マニホールドと前記第2のドレッシング充填材との間を流体連通させるように位置決めされていることを特徴とする、システム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、第1のカバーおよび第2のカバーを含み、前記第1のカバーは、前記第1のドレッシング充填材に隣接して位置決めされて、前記第1のカバーと前記第1の組織部位との間に実質的な密閉空間をもたらすように適合されており、前記第2のカバーは、前記第2のドレッシング充填材に隣接して位置決めされて、前記第2のカバーと前記第2の組織部位との間に実質的な密閉空間をもたらすように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記第1の弁が、前記第1のカバーに封止式に取り付けられており、および前記第2の弁が、前記第2のカバーに封止式に取り付けられていることを特徴とする、システム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムにおいて、さらに、前記第1のカバーに導管を流体的に結合するように適合されたアダプタを含み、前記第1の弁は、前記アダプタに収容され、かつ前記導管と前記第1のカバーとの間を流体連通させるように位置決めされるように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムにおいて、さらに、前記第1のドレッシング充填材と前記第2のドレッシング充填材との間に流体連通をもたらすように適合された導管を含み、前記減圧源が、前記導管によって、前記第1のドレッシング充填材および前記第2のドレッシング充填材に流体的に結合されるように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムにおいて、前記第1の弁および前記第2の弁が、前記導管と関連付けられていることを特徴とする、システム。
【請求項11】
請求項9に記載のシステムにおいて、さらに、前記導管の第1の分岐導管と前記導管の第2の分岐導管との間に流体的に結合されたコネクタを含み、前記第1の弁が、前記コネクタに収容され、かつ前記第1の分岐導管と前記第2の分岐導管との間を流体連通させるように位置決めされるように適合されていることを特徴とする、システム。
【請求項12】
請求項9に記載のシステムにおいて、さらに、第1の分岐ポート、第2の分岐ポート、および供給ポートを有するマルチパスコネクタを含み、前記第1の分岐ポートは、前記第1のドレッシング充填材と流体連通して結合されており、前記第2の分岐ポートは、前記第2のドレッシング充填材と流体連通して結合されており、および前記供給ポートは、前記減圧源と流体連通して結合されて、前記減圧源と前記第1の分岐ポートおよび前記第2の分岐ポートとの間を流体連通させ、前記第1の弁は前記第1の分岐ポートに収容され、および前記第2の弁は前記第2の分岐ポートに収容されることを特徴とする、システム。
【請求項13】
組織部位における流体の流れを調整する治療弁において、
内室を有する弁本体と;
前記内室と流体連通している入口と;
前記内室と流体連通している出口と;
前記内室の壁に配置されかつ前記入口の周囲を囲むシールリングと;
閉鎖位置と開放位置との間を可動な弁フラップであって、前記閉鎖位置では、前記弁フラップが前記シールリングと接触して、前記出口と前記入口との間の流体連通を実質的に防止し、および前記開放位置では、前記弁フラップは前記シールリングから離れており、前記入口と前記出口との間の流体連通を可能にする、弁フラップと
を含むことを特徴とする、弁。
【請求項14】
請求項13に記載の治療弁において、前記閉鎖位置では、前記弁フラップが、バネによって前記シールリングに対して付勢されていることを特徴とする、治療弁。
【請求項15】
請求項13に記載の治療弁において、さらに、調整可能なシャフトおよびバネを含み、前記バネが、前記シャフトの周りに配置され、かつ前記シャフトに固定された第1の端部と、前記弁フラップと接触する第2の端部とを有し、前記閉鎖位置では、前記弁フラップは、前記バネによって前記シールリングに対して付勢されていることを特徴とする、治療弁。
【請求項16】
請求項13に記載の治療弁において、前記弁フラップが外周領域および中心領域を有し、前記外周領域は、前記弁フラップが前記閉鎖位置にあるときには前記シールリングに接触しており、および前記弁フラップが前記開放位置にあるときには前記シールリングから離れていることを特徴とする、治療弁。
【請求項17】
請求項16に記載の治療弁において、前記弁フラップが前記閉鎖位置および前記開放位置にあるときには、前記弁フラップの前記中心領域が、前記内室の前記壁の一部分と接触しており、および前記入口が、前記弁フラップの前記中心領域と前記シールリングとの間に位置決めされていることを特徴とする、治療弁。
【請求項18】
請求項16に記載の治療弁において、前記弁フラップの前記外周領域が、前記弁フラップが前記閉鎖位置にあるときには、前記シールリングと接触するように弾性的に付勢されることを特徴とする、治療弁。
【請求項19】
請求項16に記載の治療弁において、前記弁フラップの前記中心領域が、前記内室の前記壁の一部分に結合されていることを特徴とする、治療弁。
【請求項20】
請求項16に記載の治療弁において、前記弁フラップの前記中心領域が、前記弁本体の前記内室を横切って延出する突出部によって前記内室の前記壁の一部分に対して付勢されていることを特徴とする、治療弁。
【請求項21】
組織部位を治療するための治療システムにおいて、
前記組織部位に位置決めされるように適合されたドレッシング充填材と;
前記ドレッシング充填材および前記組織部位に隣接して位置決めされるように適合されたカバーであって、前記カバーと前記組織部位との間に実質的な密閉空間を形成する、カバーと;
前記実質的な密閉空間と流体連通し、前記実質的な密閉空間に減圧をもたらすように適合された減圧源と;
前記ドレッシング充填材と前記減圧源との間を流体連通させて、前記組織部位からの流体の流れを可能にしかつ前記組織部位に向かう流体の流れを実質的に防止するように適合された弁と
を含み、
前記弁が、前記弁の入口と出口との間を流体連通させるように位置決めされた弁フラップおよびシールリングを有し、前記弁フラップは、閉鎖位置と開放位置との間を可動であり、および前記閉鎖位置では、前記弁フラップは前記シールリングに接触して、前記入口と前記出口との間の流体連通を実質的に排除し、および開放位置では、前記弁フラップは前記シールリングから離れており、前記入口と前記出口との間の流体連通を可能にすることを特徴とする、治療システム。
【請求項22】
請求項21に記載の治療システムにおいて、前記弁が、前記実質的な密閉空間と前記減圧源とを流体連通させるように位置決めされており、それにより、前記弁を通して前記実質的な密閉空間との流体連通がもたらされることを特徴とする、治療システム。
【請求項23】
請求項22に記載の治療システムにおいて、前記弁が、前記弁の入口から前記弁の出口への流体連通をもたらすように適合され、かつ前記弁の前記出口から前記弁の前記入口への流体連通を実質的に排除するように適合されており、および前記入口が、前記実質的な密閉空間の方に位置決めされていることを特徴とする、治療システム。
【請求項24】
請求項21に記載の治療システムにおいて、さらに、前記実質的な密閉空間と前記減圧源とを流体連通させる導管を含み、前記弁は、前記導管に関連付けられていることを特徴とする、治療システム。
【請求項25】
請求項24に記載の治療システムにおいて、さらに、前記導管の第1の分岐導管と前記導管の第2の分岐導管との間に流体的に結合されたコネクタを含み、前記弁は、前記コネクタに収容され、かつ前記第1の分岐導管と前記第2の分岐導管との間を流体連通させるように位置決めされるように適合されていることを特徴とする、治療システム。
【請求項26】
請求項21に記載の治療システムにおいて、前記弁が、前記カバーに封止式に取り付けられることを特徴とする、治療システム。
【請求項27】
請求項21に記載の治療システムにおいて、さらに、前記カバーに導管を流体的に結合するように適合されたアダプタを含み、前記弁は、前記アダプタに収容され、かつ前記導管と前記カバーとの間を流体連通させるように位置決めされるように適合されていることを特徴とする、治療システム。
【請求項28】
複数の組織部位を治療するシステムにおいて、
前記組織部位の第1の組織部位に位置決めされるように適合された第1のドレッシング充填材と;
前記組織部位の第2の組織部位に位置決めされるように適合された第2のドレッシング充填材と;
前記第1のドレッシング充填材と前記第2のドレッシング充填材との間に流体連通をもたらすように適合された橋絡用マニホールドと;
前記橋絡用マニホールドによって前記第1のドレッシング充填材および前記第2のドレッシング充填材に流体的に接続されるように適合された減圧源と;
前記橋絡用マニホールドと前記第1のドレッシング充填材との間を流体連通させる第1の弁であって、前記第1のドレッシング充填材との流体連通が前記第1の弁によってもたらされる、第1の弁と;
前記橋絡用マニホールドと前記第2のドレッシング充填材との間を流体連通させる第2の弁であって、前記第2のドレッシング充填材との流体連通が前記第2の弁によってもたらされ、および前記第1の弁および前記第2の弁が、各々、入口および出口を有し、前記第1および前記第2の弁が、各々、前記入口から前記出口への流体連通をもたらしかつ前記出口から前記入口への流体連通を実質的に排除するように適合されており、および前記第1の弁の前記入口が、前記第1のドレッシング充填材の方に位置決めされ、および前記第2の弁の前記入口が、前記第2のドレッシング充填材の方に位置決めされている、第2の弁と
を含み、
前記第1の弁および前記第2の弁が、各々、前記入口と前記出口との間を流体連通させるように位置決めされた弁フラップおよびシールリングを有し、前記弁フラップは、閉鎖位置と開放位置との間を可動であり、および前記閉鎖位置では、前記弁フラップは前記シールリングに接触して、前記入口と前記出口との間の流体連通を実質的に排除し、および開放位置では、前記弁フラップは前記シールリングから離れており、前記入口と前記出口との間の流体連通を可能にすることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年11月23日出願の米国仮特許出願第61/563,529号明細書(REDUCED PRESSURE TISSUE TREATMENT SYSTEMS AND METHODS HAVING A REDUCED PRESSURE DRESSING AND ASSOCIATED VALVE)の優先権を主張し、この開示全体を、参照することにより本明細書に援用する。
【0002】
本明細書に開示する主題は、概して、組織治療システムに関し、より詳細には、限定されるものではないが、減圧ドレッシングおよび関連の弁を有する減圧組織治療システムに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験および実習から、組織部位に近接して減圧をもたらすことによって、組織部位における新しい組織の成長を増強および加速することが示されている。この現象の適用は多数あるが、減圧を行うことの特定の1つに、創傷の治療を含む。この治療(医学界では「陰圧閉鎖療法」、「減圧療法」、または「真空療法」と呼ばれることが多い)はいくつもの利点を提供し、それら利点には、上皮組織および皮下組織の移動、血流の改善、および創傷部位における組織の微小変形が含まれる。これらの利点と共に、肉芽組織の形成加速化や治癒時間の短縮が生じる。一般に、減圧は、減圧源によって、多孔質パッドまたは他のマニホールド装置を通して組織に行われる。多孔質パッドは、減圧を組織に分配しかつ組織から引き出された流体を運ぶことができる気泡または細孔を含む。多孔質パッドは、治療を促す他の構成要素を有するドレッシングに組み込まれていることが多い。
【0004】
時には、複数の組織部位に対して治療を必要としている患者を治療する必要があることもある。これは、熱傷、戦争、または他の外傷によって負傷した患者に特に当てはまる。さらに、複数の組織部位は、現場で、または病院または他の医療施設への搬送中に治療する必要がある場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、例示的実施形態による、患者の複数の組織部位への治療を行う減圧治療システムの側面断面図を示す。
【
図2】
図2は、例示的実施形態による減圧治療で使用するための弁の正面断面図を示し、弁は、閉鎖位置において示す。
【
図3】
図3は、
図2の弁の正面断面図をし、弁は、開放位置において示す。
【
図4】
図4は、例示的実施形態による減圧治療において使用するための弁の正面断面図を示し、弁は、閉鎖位置において示す。
【
図5】
図5は、例示的実施形態による減圧治療において使用するための弁の正面断面図を示し、弁は、閉鎖位置において示す。
【
図6】
図6は、例示的実施形態による減圧治療において使用するための弁の正面断面図を示し、弁は、開放位置において示す。
【
図7】
図7は、例示的実施形態による減圧治療システムの正面断面図を示し、減圧治療システムは、減圧治療システムのドレッシングに動作可能に関連付けられた弁を有する。
【
図8】
図8は、例示的実施形態による、減圧源を多孔質パッドに接続するための、流体の流れを制御する弁を有する減圧アダプタの正面断面図を示す。
【
図9】
図9は、例示的実施形態による、患者の複数の組織部位への治療を行う減圧治療システムの正面図を示す。
【
図10】
図10は、流体の流れを制御する弁を有するマルチパスコネクタを有する、例示的実施形態による患者の複数の組織部位への治療を行う減圧治療システムの正面断面図を示す。
【
図11】
図11は、流体の流れを制御する弁に動作可能に関連付けられた減圧チューブを有する、例示的実施形態による患者の組織部位に治療を行う減圧治療システムの正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部をなし、かつ本明細書で開示される主題を実施し得る特定の実施形態を説明するために示される添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるようにするのに十分な程度、詳細に説明し、および詳細な説明の範囲から逸脱せずに、他の実施形態を使用し得ること、および論理的な構造上の、機械的な、電気的な、および化学的な変更がなされ得ることが理解される。当業者が、本明細書で説明する実施形態を実施できるようにするのに必要ではない詳細に関する説明を避けるために、当業者に公知の特定の情報に関する詳細な説明を省略し得る。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定的ととられるべきではなく、例示的実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。他に指定のない限り、本明細書では、「または」は相互排他性である必要はない。
【0007】
用語「減圧」は、一般的に、治療が施されている組織部位における周囲圧力を下回る圧力を指す。ほとんどの場合、この減圧は、患者がいる場所の気圧を下回る。あるいは、減圧は、組織部位の組織に関連する静水圧を下回り得る。用語「真空」および「負圧」を、組織部位に適用される圧力を説明するために使用し得るが、組織部位で行われる実際の減圧は、通常完全な真空に関連付けられる減圧を著しく下回り得る。減圧は、初めに、組織部位の領域に流体の流れを生成し得る。組織部位の周囲の静水圧が所望の減圧に達すると、流れは弱まる可能性があるため、減圧が維持される。他に指定のない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。同様に、減圧の上昇は、一般に、絶対圧の低下を指すが、減圧の低下は、一般に絶対圧の上昇を指す。
【0008】
本明細書で説明する組織治療システムおよび方法は、組織部位に対する流体(すなわち液体および気体)の流れを制御することによって、組織部位の治療を改善する。より具体的には、システムおよび方法は、組織部位への流体の逆流を防止する弁または他の流れ制御装置を含む。そのようなシステムは、単一の組織部位の治療だけでなく、複数の組織部位の治療にも有用とし得る。患者が、同時に治療する必要のある複数の組織部位または創傷を有するとき、例えば、複数の組織部位を単一の減圧源に接続することが好都合である場合がある。これは、(1)個々の組織部位の間に送られるマニホールドによって組織部位を「橋絡」し、かつ橋絡された組織部位の1つに減圧源を流体的に接続すること、または(2)別個の減圧チューブまたは他の導管を個々の組織部位それぞれに送ってから、マルチパスコネクタを使用してそれらチューブを減圧源に接続することによって達成され得る。これらのいずれの場合でも、組織部位は、共通のマニホールドまたは供給導管にそれぞれ流体的に接続され、これは、組織部位の1つから引き出された流体が別の組織部位に入る可能性を高める。特に組織部位の1つまたは複数に感染性物質が含まれる場合に、組織部位間の流体の交差汚染の問題をはらむ。これらの感染性物質が非感染組織部位に広がる場合があり、それにより、患者を悪化させ、かつ治癒にかかる時間を長期化させる。
【0009】
本明細書で説明するシステムおよび方法の構成要素である弁は、複数の組織部位間の交差汚染を防止し、かつ流体が組織部位に流れないようにする。下記でより詳細に示すように、いくつもの異なる弁のタイプを使用してもよく、および弁の位置決めは、特定の治療システムに依存して変化し得る。弁または他の流れ制御装置が存在することは、特に、複数の組織部位に関わる治療に有利であり、弁は、単一の組織部位の治療計画と同様に使用され得る。
【0010】
ここで図面、および主に
図1を参照すると、患者104の複数の組織部位102を同時に治療するためのシステム100の例示的実施形態が示されている。各組織部位102は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、または任意の他の組織を含む、任意のヒト、動物、または他の生物の体の組織とし得る。組織部位102の治療は、流体、例えば滲出液や腹水の除去を含み得る。システム100を用いて、多数の部位、サイズ、および深さの組織を治療し得るが、システム100は、例えば、創傷(図示せず)を治療するために使用され得る。創傷は、表皮108、真皮110を通って、皮下組織112まで延在し得る。創傷の他の深さまたはタイプ、またはより一般的には、組織部位が治療され得る。説明のために3つの組織部位102を示すが、システム100を用いて任意の数の組織部位を治療し得ることを理解されたい。
【0011】
システム100は、複数の組織部位102に展開された複数の減圧ドレッシング114を含む。複数の減圧ドレッシング114の各々は、減圧を組織部位102に送達できかつ組織部位102から流体を除去するように動作可能な任意の種類のドレッシングとし得る。例示的一実施形態では、各減圧ドレッシング114は、ドレッシング充填材すなわちマニホールド116、およびカバーまたはシール部材118を含む。シール部材118は、取付装置122を使用して患者104に剥離可能に結合されている。取付装置122は多数の形態をとり得る。例えば、取付装置122は、シール部材118全体の周囲または一部分に延在する医学的に容認できる感圧接着剤、両面ドレープテープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、または他のシール装置または要素とし得る。各減圧ドレッシング114に関し、シール部材118は、マニホールド116と、治療される組織部位102とを含む実質的な密閉空間124を形成し得る。
【0012】
各減圧ドレッシング114に関し、マニホールド116は、関連の組織部位102に対して減圧を行ったり、流体を送達したり、または組織部位102から流体を除去したりするのを支援するために設けられる物体または構造である。マニホールド116は、マニホールド116の周りの組織部位102に提供されかつそこから除去される流体を分配することができる複数の流路または流れ経路を含む。例示的一実施形態では、流路または流れ経路は相互に接続されて、組織部位102に提供されるかまたはそこから除去される流体の分配を改善し得る。マニホールド116は、以下のうちの1つまたは複数を含む:組織部位102と接触して配置されかつ組織部位102に減圧を分配することができる生体適合性材料;例えば、気泡質の発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、液体、ゲル、および流路を含むまたは硬化して流路を含む発泡体などの、流路を形成するように配置された構造要素を有する装置;多孔質材、例えば発泡体、ガーゼ、フェルトのマット、または特定の生物学的適用に好適な任意の他の材料;または流路の機能を果たす複数の連続気泡または細孔を含む多孔質発泡体、例えば、Kinetic Concepts,Incorporated(San Antonio、Texas)製のGranuFoam(登録商標)材などのポリウレタン製の連続気泡の網状発泡体;生体再吸収性材料;または足場材料。場合によっては、マニホールド116はまた、薬剤、抗菌薬、成長因子、および様々な溶液などの流体を組織部位102に分配するためにも使用し得る。マニホールド116にまたはマニホールド116上に、吸収材料、ウィッキング材料、疎水性材料、および親水性材料などの他の層も含まれ得る。
【0013】
例示的非限定的な一実施形態では、マニホールド116は、減圧ドレッシング114の使用後に患者の体に留まってもよい生体再吸収性材料から構成し得る。好適な生体再吸収性材料は、限定はされないが、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのポリマーブレンドを含み得る。ポリマーブレンドはまた、限定はされないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、およびカプララクトンを含み得る。マニホールド116は、新しい細胞増殖のための足場としての機能をさらに果たしても、細胞増殖を促進するためにマニホールド116と足場材料が一緒に使用されてもよい。足場は、細胞増殖または組織形成を増進させるまたは促進するのに使用される物体または構造体であり、例えば、細胞増殖のテンプレートを提供する三次元の多孔質構造体である。足場材料の実例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト(coral hydroxy apatite)、カーボネート、または加工された同種移植片材料を含む。
【0014】
シール部材118は、流体シールをもたらす任意に材料とし得る。流体シールは、特定の減圧源または関連のサブシステムから与えられた減圧を所望の部位で維持するのに適切なシールである。シール部材118は、例えば、不透過性または半透過性のエラストマー材料とし得る。半透過性材料に関し、透過性は、所与の減圧源に対して、所望の減圧を維持し得る程度に十分に低い必要がある。シール部材118は、各減圧ドレッシング114用の別個の部片としても、複数の減圧ドレッシング114の全てに使用される1つの連続的なシートとしてもよい。
【0015】
図1に図示する実施形態では、シール部材118の各々はアパーチャ128を含む。システム100は、さらに、アパーチャを覆って配置された弁132と、3つの弁132およびドレッシング114を覆って位置決めされた橋絡用マニホールド136とを含む。各弁132(
図2〜6を参照して下記で実施形態をより詳細に説明する)は、対応するシール部材118に封止式に取り付けられて、組織部位102とのいずれの流体連通も弁132を通って送られ得るようにし得る。橋絡用マニホールド136の機能は、先に説明したマニホールド116と同様であり、橋絡用マニホールド136は、多岐に分配する(manifolding)能力を提供する。実際に、橋絡用マニホールド136は、マニホールド116に対して先に挙げた材料のいずれかから作製し得る。各組織部位102と流体連通させて橋絡用マニホールド136を配置することによって、橋絡用マニホールド136に供給される減圧は、組織部位102の各々に分配され、それにより、各組織部位102から流体を除去し、かつ組織部位102を減圧にさらすことができ得る。
【0016】
橋絡用マニホールド126を覆って橋絡用カバー144が位置決めされ、かつ橋絡用カバー144の周囲に沿って、シール部材118、患者の表皮108のいずれか、または場合によってはそれら双方に対して封止される。橋絡用カバー144は実質的な密閉空間146を提供し、その内部に橋絡用マニホールド136がある。橋絡用カバー144が存在することによって、橋絡用マニホールド136は、流体および圧力を適切に分配できる。橋絡用カバー144にはアパーチャ148が位置決めされて、密閉空間146との流体連通をもたらす。
図1では、アパーチャ148を、最も右側の組織部位102の上側に位置決めされているとして示すが、その代わりに、アパーチャ148は、任意の特定の組織部位102の上側に位置決めしても、代替的に、2つの組織部位の中間に位置決めしてもよい。
【0017】
橋絡用カバー144の上に減圧アダプタ152が位置決めされ、かつアパーチャ148を通って密閉空間146に流体的に接続されている。減圧アダプタ152と密閉空間146との間の流体接続部を封止するために別個のカバー154が設けられ得る。減圧アダプタ152は、密閉空間148に減圧を送達するための任意の装置とし得る。例えば、減圧アダプタ152は、以下のうちの1つを含み得る:KCI(San Antonio、Texas)から入手可能なT.R.A.C.(登録商標)PadまたはSensa T.R.A.C.(登録商標)Pad;または別の装置またはチューブ。減圧アダプタ152にマルチルーメン減圧送達チューブ156または導管が流体的に結合される。マルチルーメン減圧送達チューブ156は、第1の端部157および第2の端部159を有する。マルチルーメン減圧送達チューブ156の第1の端部157は、治療ユニット158に流体的に結合される。マルチルーメン減圧送達チューブ156は、少なくとも1つの圧力サンプリングルーメンおよび少なくとも1つの減圧供給ルーメンを含む。圧力サンプリングルーメンは、各組織部位102の圧力に近似し得る、密閉空間148内の近似圧力を判断するための圧力をもたらす。減圧供給ルーメンは、減圧ドレッシング114に減圧を送達し、かつそこから流体を受け取る。マルチルーメン減圧送達チューブ156の第2の端部159は、減圧アダプタ152に流体的に結合される。
【0018】
一実施形態では、治療ユニット158は、減圧源164と流体連通する流体閉じ込め部材162を含む。
図1に示す実施形態では、流体閉じ込め部材162は、組織部位102からの流体を収集するためのチャンバを含む収集キャニスターである。あるいは、流体閉じ込め部材162は、吸収材料、または流体を収集できる任意の他の容器、装置、または材料とし得る。
【0019】
引き続き
図1を参照して説明すると、減圧源164は電動真空ポンプとし得る。別の実装例では、その代わりに、減圧源164は、電力を必要としない、手動で作動できるまたは手動で充電できるポンプとし得る。一実施形態では、減圧源164は、ドレッシング114から離れて、またはドレッシング114に隣接して位置決めされ得る1つまたは複数の圧電作動型マイクロポンプとし得る。その代わりに、減圧源164は、病院および他の医療施設で利用可能なものなどの、任意の他のタイプのポンプ、あるいは、壁面吸い込みポートまたは空気送達ポートとし得る。減圧源164は、治療ユニット158内に収容されても、それと共に使用されてもよく、治療ユニットはまた、センサ、処理装置、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、およびユーザインターフェース166を含み、組織部位102へ減圧治療を行うのをさらに容易にする。一例では、減圧源164にまたはその付近に圧力検出センサ(図示せず)を配置し得る。圧力検出センサは、マルチルーメン減圧送達チューブ156の圧力サンプリングルーメンを経由して、減圧アダプタ152から圧力データを受信し得る。圧力検出センサは、減圧源164によって送達された減圧を監視および制御する処理装置と通信し得る。
【0020】
組織部位に行われる減圧の量および性質は、一般に、用いられる特定の治療計画に依存して変動するが、減圧は、一般に、約−5mm Hg(−667Pa)〜約−500mm Hg(−66.7kPa)、より典型的には、約−75mm Hg(−9.9kPa)〜約−300mm Hg(−39.9kPa)とし得る。一部の実施形態では、減圧源164は、Kinetic Concepts,Inc.(San Antonio、Texas)から入手可能なV.A.C.Freedom、V.A.C.ATS、InfoVAC、ActiVAC、AbTheraまたはV.A.C.Ulta治療ユニットとし得る。
【0021】
図2および
図3を参照すると、弁210の例示的実施形態が示されている。弁210は、弁本体214および弁蓋218を含み、これらは、好ましくは、耐久性のあるハウジングを弁に提供できるポリマー材料、金属、または任意の他の材料から形成される。弁本体214および弁蓋218は、一緒に結合して、内室222を形成できる。内室222は、入口壁226および出口壁230によって画成されている。弁本体214は少なくとも1つの入口ポート238を含み、および弁蓋218は少なくとも1つの出口ポート242を含む。入口壁226にはシールリング250が配置され、好ましくは入口ポート238を取り囲む。シールリング250は、入口壁226の一体部分とし、かつ入口壁226と同じ材料で作製し得るが、その代わりに、シールリング250は、異なる材料から作製してもよく、入口壁226にオーバーモールドされるかまたは他の方法でそこに結合される。一実施形態では、シールリング250は、エラストマー性材料としても、または他の可撓性材料としてもよく、入口壁226に接合されるかまたは他の方法でそこに結合される。
【0022】
弁210は、さらに、外周領域264および中心領域268を有する弁フラップ260を含む。弁フラップ260は、ポリマーまたは金属材料、または任意の材料から作製され、シールリング250と協働して、弁210を通る流体の流れを制御し得る。弁フラップ260は内室222内に位置決めされ、弁フラップ260の外周領域264がシールリング250と接触する。弁フラップ260の中心領域268は、入口壁226に接合されるかまたは他の方法でそこに結合される。弁フラップ260は、
図2および
図3に示すように湾曲した構成で予め形成され得るが、入口壁226への弁フラップ260の結合には、好ましくは、弁フラップ260が弾性変形することを必要とする。弁フラップ260のこの弾性変形は、弁フラップ260にプレストレスを与え、これにより、弁フラップ260とシールリング250との間のシールをより良好にする。
【0023】
図2では、弁フラップ260、それゆえ弁210が閉鎖位置にある状態で示す。閉鎖位置では、弁フラップ260は、シールリング250に接触したままであり、この接触により、実質的に、流体が弁210を通って流れないようにする。
図3では、弁フラップ260、それゆえ弁210が開放位置にある状態で示す。開放位置では、弁フラップ260は、弾性的に変形しており、もはやシールリング250と接触していない。弁フラップ260が開放している間、流体は、弁210を通って流れることができる。
【0024】
一実施形態では、開放位置への弁フラップ260の移動は、入口ポート238における流体の圧力が、出口ポート242における流体の圧力を上回ると、発生する。この好都合な圧力差によって、弁フラップ260を、シールリング250から離れるように動かすことができ、流体を入口ポート238から出口ポート242へ流すことができる。反対に、出口ポート242における流体の圧力が、入口ポート238における流体の圧力を上回ると、流体は、弁フラップ260に付勢力を加えて、シールリング250との接触を維持する。このシールリング250との接触は、実質的に、出口ポート242から入口ポート238への流体の流れを防止する。継続的に弁フラップ260を開閉させる能力は、弁フラップ260が弾性的に変形する能力によってもたらされる。この弾性変形は、弁フラップ260の材料特性および物理的寸法(すなわち厚さ)によってもたらされ得る。
【0025】
シールリング250は、好ましくは、少なくとも1つの入口ポート238の周りに継続的に配置されるが、用語「リング」は、シールリング250が円形に限定されることを暗示することを意味しない。シールリング250は、弁フラップ260がシールリング250と接触すると、出口ポート242から入口ポート238を流体的に隔離できる任意の特定の形状とし得る。
【0026】
弁210は、
図1のシステム100、または任意の他の減圧治療システムと共に使用して、組織部位への流体の流れを防止し得る。このようにして、弁210は、複数の組織部位が共通の減圧源に連続して接続されるときに、組織部位間の交差汚染の防止を支援する。同様に、圧力変化によって一瞬、流体を組織部位に押し返そうとする差圧を生じ得るときに、弁210は、単一の組織部位から除去された流体の逆流を防止できる。弁210は、ドレッシング114(
図1参照)に対する弁132の配置と同様に、ドレッシングに隣接して配置され得るか、または代替的に、本明細書で説明するように、弁210は、他のシステム構成要素に対して動作可能に位置決めされ得る。弁210は、一般に、入口ポート238が組織部位の近く、かつ出口ポート242が減圧源の近くになるような向きにされる。
【0027】
図2および
図3に示すように、弁フラップ260の移動は、弁フラップ260の表裏間での差圧に依存する。一実施形態では、弁210は、単に、逆止弁と同様に、流れの方向制御をもたらすように構成し得る。そのような構成では、閉鎖位置から開放位置へ弁フラップ260を動かすために必要な力は、比較的小さい。より具体的には、流れを出口ポート242へ向かわせるのに好都合である、弁フラップ260の表裏間での比較的小さい圧力差が、弁フラップ260を開放位置に移動させることができる。この同じ構成では、流れを入口ポート238へ向かわせるのに好都合である、弁フラップ260の表裏間での比較的小さい圧力差が、弁フラップ260を閉鎖位置に保持できる。別の実施形態では、弁フラップ260は、開放位置へ動かすために、より大きい差圧を必要とするように構成し得る。弁フラップ260を開放させるために必要な差圧を大きくすることによって、弁210は、本質的に、弁を開放するために「クラッキング圧」を必要とする調整弁になる。このクラッキング圧は、弁を開放するために、減圧が特定のレベル(すなわち絶対圧が十分に低い)に確実に達するようにする。
【0028】
図4を参照すると、弁410の例示的実施形態が示されている。弁410は、弁本体414および弁蓋418を含み、これらは、好ましくは、耐久性のあるハウジングを弁に提供できるポリマー材料、金属、または任意の他の材料から形成される。弁本体414および弁蓋418は、一緒に結合して、内室422を形成できる。内室422は、入口壁426および出口壁430によって画成されている。弁本体414は、少なくとも1つの入口ポート438を含み、および弁蓋418は少なくとも1つの出口ポート442を含む。入口壁426にはシールリング450が配置され、かつ好ましくは入口ポート438を取り囲む。シールリング450は入口壁426の一体部分とし、かつ入口壁426と同じ材料から作製し得るが、その代わりに、シールリング450は、異なる材料から作製して、入口壁426にオーバーモールドされるかまたは他の方法で結合される。一実施形態では、シールリング450はエラストマー性材料としても、または他の可撓性材料としてもよく、入口壁426に接合されるかまたは他の方法でそこに結合される。
【0029】
弁410は、さらに、外周領域464および中心領域468を有する弁フラップ460を含む。弁フラップ460と、弁410の動作とは、本質的に、
図2および
図3に示す弁210と同様である。弁フラップ260と同様に、弁フラップ460は内室422内に位置決めされ、弁フラップ460の外周領域464がシールリング450に接触する。弁フラップ460の中心領域468は入口壁426に接触するが、弁210とは異なり、弁フラップ460は、入口壁426に接合または結合されない。その代わり、少なくとも1つの突出部470が弁蓋418から延出する。弁蓋418および弁本体414が組立てられると、突出部470は弁フラップ460に力を加えて、弁フラップ460を、入口壁426と接触するように付勢する。ここでも、弁フラップ460のこの弾性変形によって弁フラップ460にプレストレスを与え、これにより、弁フラップ460とシールリング450との間に良好なシールを形成する。
【0030】
図4では、弁フラップ460、それゆえ弁410が閉鎖位置にある状態で示す。弁410は、弁210に関して説明したものと同様に動作し、および弁410は、
図1のシステム100、または任意の他の減圧治療システムと共に使用して、組織部位への流体の流れを防止する。このように、弁410は、複数の組織部位が共通の減圧源に連続して接続されるときに、組織部位間の交差汚染の防止を支援する。同様に、弁410は、圧力変化によって一瞬、流体を組織部位に押し返そうとする差圧を生じ得るときに、単一の組織部位から除去された流体の逆流を防止できる。弁410は、ドレッシング114に対する弁132の配置(
図1参照)と同様に、ドレッシングに隣接して配置され得るか、または代替的に、本明細書で説明するように、弁410は、他のシステム構成要素に対して動作可能に位置決めされ得る。弁410は、一般に、入口ポート438が組織部位の近く、および出口ポート442が減圧源の近くになるような向きにされる。
【0031】
弁フラップ460の移動は、弁フラップ460の表裏間での差圧に依存する。一実施形態では、弁410は、単に、逆止弁と同様に、流れの方向制御をもたらすように構成し得る。そのような構成では、弁フラップ460を閉鎖位置から開放位置へ移動させるために必要な力は、比較的小さい。より具体的には、流れを出口ポート442に向かわせるのに好都合である、弁フラップ460の表裏間での比較的小さい圧力差が、弁フラップ460を開放位置に移動させることができる。この同じ構成では、流れを入口ポート438に向かわせるのに好都合である、弁フラップ460の表裏間での比較的小さい圧力差が、弁フラップ460を閉鎖位置に保持する。別の実施形態では、弁フラップ460は、開放位置に移動させるために、より高い差圧を必要とするように構成され得る。弁フラップ460を開放させるために必要な差圧を高くすることによって、弁410は、本質的に、弁を開放するために「クラッキング圧」を必要とする調整弁になる。このクラッキング圧は、弁410を開放するために、減圧が特定のレベル(すなわち絶対圧が十分に低い)に確実に達するようにする。
【0032】
図5を参照すると、弁510の例示的実施形態が示されている。弁510は、弁本体514および弁蓋518を含み、これらは、好ましくは、耐久性のあるハウジングを弁に提供できるポリマー材料、金属、または任意の他の材料から形成される。弁本体514および弁蓋518は一緒に結合して、内室522を形成できる。内室522は、入口壁526および出口壁530によって画成されている。弁本体514は少なくとも1つの入口ポート538を含み、および弁蓋518は少なくとも1つの出口ポート542を含む。入口壁526にはシール部材550が配置され、好ましくは入口ポート538を取り囲む。シール部材550は、好ましくはダックビル弁または制御装置の形状に構成され、かつ一対のフラッパー560を含み、これらフラッパーは、弁510が閉鎖位置(
図5参照)にあるときに一緒にされる。フラッパー560は、フラッパー560の形状および弾性特性によって、一緒にされ得る。あるいは、フラッパー560は、シール部材550の内部または外部に配置された付勢部材またはバネ装置によって一緒にされ得る。
【0033】
フラッパー560と、弁510の動作とは、
図2〜4に示す弁210および410の動作と同様である。弁510は、
図1のシステム100、または任意の他の減圧治療システムと共に使用して、組織部位への流体の流れを防止し得る。このようにして、弁510は、複数の組織部位が共通の減圧源に連続して接続されるときに、組織部位間の交差汚染の防止を支援する。同様に、弁510は、圧力変化によって一瞬、流体を組織部位に押し返そうとする差圧を生じ得るときに、単一の組織部位から除去された流体の逆流を防止できる。弁510は、ドレッシング114に対する弁132の配置(
図1参照)と同様に、ドレッシングに隣接して配置され得るか、または代替的に、本明細書で説明するように、弁510は、他のシステム構成要素に対して動作可能に位置決めされ得る。弁510は、一般に、入口ポート538が組織部位の近くおよび出口ポート542が減圧源の近くになるような向きにされる。
【0034】
フラッパー560の移動は、シール部材550の表裏間での差圧に依存する。一実施形態では、弁510は、単に、逆止弁と同様に流れの方向制御をもたらすように構成し得る。そのような構成では、フラッパー560を離す(すなわちフラッパー560を開放位置に移動させる)ために必要な力は、比較的小さい。より具体的には、流れを出口ポート542に向かわせるのに好都合である、シール部材550の表裏間での比較的小さい圧力差が、フラッパー560を開放位置に移動させることができる。この同じ構成では、流れを入口ポート538に向かわせるのに好都合である、シール部材550の表裏間での比較的小さい圧力差が、フラッパー560を閉鎖位置に保持する。別の実施形態では、フラッパー560は、開放位置に移動させるために、より高い差圧を必要とするように構成され得る。フラッパー560を開放させるために必要な差圧を高くすることによって、弁510は、本質的に、弁を開放するために「クラッキング圧」を必要とする調整弁になる。このクラッキング圧は、弁510を開放するために、減圧が特定のレベル(すなわち絶対圧が十分に低い)に確実に達するようにする。
【0035】
図6を参照すると、弁610の例示的実施形態が示されている。弁610は、弁本体614および弁蓋618を含み、これらは、好ましくは、耐久性のあるハウジングを弁に提供できるポリマー材料、金属、または任意の他の材料から形成される。弁本体614および弁蓋618は一緒に結合でき、内室622を形成する。内室622は、入口壁626および出口壁630によって画成されている。弁本体614は少なくとも1つの入口ポート638を含み、および弁蓋618は少なくとも1つの出口ポート642を含む。入口壁626にはシールリング650が配置され、好ましくは、入口ポート638を取り囲む。シールリング650は、入口壁626の一体部分とし、かつ入口壁626と同じ材料から作製し得るが、その代わりに、シールリング650は、異なる材料から作製して、入口壁626にオーバーモールドされても、または他の方法でそこに結合されてもよい。一実施形態では、シールリング650は、エラストマー性材料としても、または他の可撓性材料としてもよく、入口壁626に接合されるかまたは他の方法でそこに結合される。
【0036】
弁610は、さらに、外周領域664および中心領域668を有する弁フラップ660を含む。弁フラップ660と、弁610の動作とは、
図2および
図3に示す弁210の動作とある程度似ている。弁フラップ260と同様に、弁フラップ660は内室622内に位置決めされて、弁フラップ660の外周領域664がシールリング650に接触する。しかしながら、弁フラップ260とは異なり、弁フラップ660は、湾曲した形状に弾性的に変形しないため、弁フラップ660の中心領域668が入口壁626に接触する。その代わりに、弁フラップ660は、より剛体の材料から作製されており、実質的に平面的な構成のままである。弁フラップ660は、バネ672によって、閉鎖位置にあるシールリング650(図示せず)と接触するように付勢される。バネ672によって弁フラップ660に加えられる力は、距離Dを変更することによって調整され、そのバネは、予め圧縮されている。シャフト676および調整部材682によって距離Dを調整できるようにし、それにより、弁フラップ660を開放位置(
図6参照)に移動させるために必要な力の調整機能を生じる。
【0037】
弁610は、弁210の説明と同様に動作し、および弁610は、
図1のシステム100、または任意の他の減圧治療システムと共に使用して、組織部位への流体の流れを防止する。このようにして、弁610は、複数の組織部位が共通の減圧源に連続して接続されるときに、組織部位間の交差汚染の防止を支援する。同様に、弁610は、圧力変化によって一瞬、流体を組織部位に押し返そうとする差圧を生じ得るときに、単一の組織部位から除去された流体の逆流を防止できる。弁610は、ドレッシング114に対する弁132の配置(
図1参照)と同様に、ドレッシングに隣接して配置され得るか、または代替的に、弁610は、本明細書で説明するように、他のシステム構成要素に対して動作可能に位置決めされ得る。弁610は、一般に、入口ポート638が組織部位の近く、および出口ポート642が減圧源の近くになるような向きにされる。
【0038】
弁フラップ660の移動は、弁フラップ660の表裏間での差圧に依存する。一実施形態では、弁610は、単に、逆止弁と同様に、流れの方向制御をもたらすように構成し得る。そのような構成では、閉鎖位置から開放位置へ弁フラップ660を移動させるために必要な力は、比較的小さい。より具体的には、流れを出口ポート642に向かわせるのに好都合である、弁フラップ660の表裏間での比較的小さい圧力差が、弁フラップ660を開放位置に移動させることができる。この同じ構成では、流れを入口ポート638に向かわせるのに好都合である、弁フラップ660の表裏間での比較的小さい圧力差が、弁フラップ660を閉鎖位置に保持する。別の実施形態では、弁フラップ660は、開放位置に移動させるために、より高い差圧を必要とするように構成され得る。弁フラップ660を開放させるために必要な差圧を高くすることによって、弁610は、本質的に、弁を開放するために「クラッキング圧」を必要とする調整弁になる。このクラッキング圧は、弁610を開放させるために、減圧が特定のレベル(すなわち絶対圧が十分に低い)に確実に達するようにする。
【0039】
圧力を調整するまたは流体の流れの方向を制御するための複数の弁の構成を説明したが、本明細書で説明する減圧治療システムと共に他の弁の構成を使用し得ることを認識されたい。他の弁の構成は、限定されるものではない、ボール弁、ポペット弁、ゲート弁、またはバタフライ弁を含み得る。
【0040】
システム100または任意の他の減圧治療システムにおける、本明細書で説明する弁(例えば、弁210、410、510、610)の位置決めは、様々とし得る。
図7を参照して説明すると、減圧治療システム700は、組織部位702に位置決めされた減圧ドレッシング714に近接して位置決めされた弁710を含む。減圧ドレッシング714は、マニホールド716およびシール部材またはカバー718を含む。カバー718は、接着剤または他の結合手段を使用して、患者704に剥離可能に結合される。カバー718はアパーチャ728を含み、およびカバー718の上方に弁710が位置決めされて、弁710がアパーチャ728を覆うようにする。一実施形態では、弁710は、カバー718に接合されて、溶接されて、または他の方法で封止式に取り付けられて、カバー718の下側にある空間から出る流体が、弁710を通過する必要があるようにする。弁710は、
図7ではカバー718の上方に示すが、その代わりに、弁710は、取付手段が弁710とカバー718との間に所望のシールをもたらす限り、カバー718の下側に設置されてもよい。一実施形態では、弁710は、弁710の表面の一方に配置された接着剤または他の接合剤を含み、弁710をカバー718に取り付けるようにし得る。別の実施形態では、接着剤または接合剤はカバー718に配置され得る。
【0041】
弁710の上方には、システム100の橋絡用マニホールド136と同様の橋絡用マニホールド736が位置決めされる。橋絡用マニホールド736は、複数の組織部位間に共通の流体連通手段を提供するか、または状況次第では、離れた位置から減圧を多岐的に分配する能力を提供する。弁710を、カバー718と封止式に接触させかつ橋絡用マニホールド736の下方へ配置することにより、弁710は、橋絡用マニホールド736にある流体が、カバー718の下側の密閉空間に入るのを実質的に防止できる。減圧ドレッシングに隣接させて、本明細書で説明する弁710、またはいずれかの弁を配置することにより、流体の方向制御をできるようにし、かつ一部の実施形態では、減圧治療を受けている組織部位に関連する圧力を制御できるようにする。
【0042】
図8を参照すると、弁810の代替的な位置決めが示されている。
図8では、システム100の減圧アダプタ152と同様の減圧アダプタ852が導管ハウジング874を含み、この導管ハウジングは、入口面878を画成する凹部領域876を有する。導管ハウジング874内に主導管880が位置決めされる。減圧アダプタ852は、さらに、導管ハウジング874に取り付けられたベース884を含み、ベース884のアパーチャが凹部領域876を取り囲む。前述の通り、減圧アダプタ852は、減圧源と減圧ドレッシングとの間のインターフェースを提供する。
【0043】
図8に示す実施形態では、弁810は、主導管880と凹部領域876との間に配置されて、弁810の入口が凹部領域876の方へ向けられ、かつ弁810の出口が主導管880の方へ向けられる。減圧アダプタ852の様々な構成要素に対する弁810の配置は様々とし得る;しかしながら、減圧アダプタ852を通過するいずれの流体も弁810を通過して弁810によって制御される必要があるように、弁810を配置することが望ましい。弁810は、減圧アダプタ852に対して永久的にまたは取り外し可能に設置され得る。
【0044】
図9を参照すると、患者904の複数の組織部位902を同時に治療するシステム900の例示的実施形態が示されている。各組織部位902は、骨組織、脂肪組織、筋組織、皮膚組織、脈管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯、または任意の他の組織を含む、任意のヒト、動物、または他の生物の体の組織とし得る。組織部位902の治療は、流体、例えば滲出液や腹水の除去を含み得る。システム900を用いて多数の部位、サイズ、および深さの組織を治療し得るが、システム900は、例えば、創傷(図示せず)の治療に使用し得る。創傷は、例えば、表皮908、真皮990を通って、皮下組織912まで延在する。創傷の他の深さまたはタイプ、またはより一般的に、組織部位を治療し得る。説明のために3つの組織部位902を示すが、システム900を用いて任意の数の組織部位を治療し得ることを理解されたい。
【0045】
システム900は、複数の組織部位902に展開された複数の減圧ドレッシング914を含む。複数の減圧ドレッシング914の各々は、減圧を組織部位902に送達できかつ組織部位902から流体を除去するように動作可能な任意の種類のドレッシングとし得る。例示的一実施形態では、各減圧ドレッシング914は、ドレッシング充填材すなわちマニホールド916、およびシール部材918を含む。シール部材918は、取付装置922を使用して患者904に剥離可能に結合される。取付装置922は多数の形態を取り得る。例えば、取付装置922は、シール部材918全体の周囲または一部分に延在する、医学的に容認できる感圧接着剤、両面ドレープテープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、または他のシール装置または要素とし得る。各減圧ドレッシング914に関し、シール部材918は、マニホールド916と、治療される組織部位902とを含む実質的な密閉空間924を形成する。
【0046】
各減圧ドレッシング914に関し、マニホールド916は、関連の組織部位902に対して減圧を行ったり、流体を送達したり、または関連の組織部位902から流体を除去したりするのを支援するために設けられる物体または構造である。マニホールド916は、マニホールド916の周囲の組織部位902に提供されるまたはそこから除去される流体を分配できる複数の流路または流れ経路を含む。例示的一実施形態では、流路または流れ経路は相互に接続されて、組織部位902に提供されるかまたはそこから除去される流体の分配を改善し得る。マニホールド916は、以下のうちの1つまたは複数を含む:組織部位902と接触して配置されかつ組織部位902に減圧を分配することができる生体適合性材料;例えば気泡質の発泡体、連続気泡発泡体、多孔性組織集合体、および液体、ゲル、および流路を含むまたは硬化して流路を含む発泡体などの、流路を形成するように配置された構造要素を有する装置;多孔質材、例えば発泡体、ガーゼ、フェルトのマット、または特定の生物学的適用に好適な任意の他の材料;または流路の機能を果たす複数の連続気泡または細孔を含む多孔質発泡体、例えば、Kinetic Concepts,Incorporated(San Antonio、Texas)製のGranuFoam(登録商標)材などのポリウレタン製の連続気泡の網状発泡体;生体再吸収性材料;または足場材料。場合によっては、マニホールド916はまた、薬剤、抗菌薬、成長因子、および様々な溶液などの流体を組織部位902に分配するためにも使用し得る。マニホールド916にまたはマニホールド916上に、吸収材料、ウィッキング材料、疎水性材料、および親水性材料などの他の層も含まれ得る。
【0047】
例示的非限定的な一実施形態では、マニホールド916は、減圧ドレッシング914の使用後に患者の体に留まってもよい生体再吸収性材料から構成し得る。好適な生体再吸収性材料は、限定はされないが、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのポリマーブレンドを含み得る。ポリマーブレンドはまた、限定はされないが、ポリカーボネート、ポリフマレート、およびカプララクトンを含み得る。マニホールド916は、新しい細胞増殖のための足場としての機能をさらに果たしても、細胞増殖を促進するためにマニホールド916と足場材料が一緒に使用されてもよい。足場は、細胞増殖または組織形成を増進させるまたは促進するのに使用される物体または構造体であり、例えば、細胞増殖のテンプレートを提供する三次元の多孔質構造体である。足場材料の実例は、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、コーラルヒドロキシアパタイト、カーボネート、または加工された同種移植片材料を含む。
【0048】
シール部材918は、流体シールをもたらす任意の材料とし得る。流体シールは、特定の減圧源または関連のサブシステムから与えられた減圧を所望の部位に維持するのに適切なシールである。シール部材918は、例えば、不透過性または半透過性のエラストマー材料とし得る。半透過性材料に関し、透過性は、所与の減圧源に対して、所望の減圧を維持し得るように十分に低い必要がある。シール部材918は、各減圧ドレッシング914に対し別個の部片としても、複数の減圧ドレッシング914の全てに使用される1つの連続的なシートとしてもよい。
【0049】
図9に示す実施形態では、減圧アダプタ952が各シール部材918に結合されて、減圧アダプタ952が、各シール部材918の下側にある密閉空間924との流体連通を可能にする。減圧アダプタ952は、密閉空間924に減圧を送達する任意の装置とし得る。例えば、減圧アダプタ952は、以下のうちの1つを含み得る:KCI(San Antonio、Texas)から入手可能なT.R.A.C.(登録商標)PadまたはSensa T.R.A.C.(登録商標)Pad;または別の装置またはチューブ。マルチルーメン減圧送達チューブ956または導管が、各減圧アダプタ952に流体的に結合される。マルチルーメン減圧送達チューブ956は、第1の端部957および第2の端部959を有する。マルチルーメン減圧送達チューブ956の第1の端部957は、マルチパスコネクタ961に流体的に結合される。
図9に示すマルチパスコネクタ961は、4つの接続ポートを含み、1つは減圧送達チューブ956の各々を受け入れ、かつ1つは、マルチパスコネクタ961と治療ユニット958との間を流体的に接続する供給チューブ963を受け入れる。
【0050】
各マルチルーメン減圧送達チューブ956は、少なくとも1つの圧力サンプリングルーメンおよび少なくとも1つの減圧供給ルーメンを含み得る。圧力サンプリングルーメンは密閉空間924内の近似圧力を判断するための圧力を提供し、これは、各組織部位902における圧力に近似し得る。減圧供給ルーメンは、減圧ドレッシング914に減圧を送達し、かつそこから流体を受け取る。マルチルーメン減圧送達チューブ956の第2の端部959は、減圧アダプタ952に流体的に結合される。
【0051】
一実施形態では、治療ユニット958は、減圧源964と流体連通する流体閉じ込め部材962を含む。
図9に示す実施形態では、流体閉じ込め部材962は、組織部位902からの流体を収集するチャンバを含む収集キャニスターである。あるいは、流体閉じ込め部材962は、吸収材料、または流体を収集できる任意の他の容器、装置、または材料とし得る。
【0052】
引き続き
図9を参照して説明すると、減圧源964は電動真空ポンプとし得る。別の実装例では、その代わりに、減圧源964は、電力を必要としない、手動で作動できるまたは手動で充電できるポンプとし得る。一実施形態では、減圧源964は、ドレッシング914から離れて、またはドレッシング914に隣接して位置決めされ得る1つまたは複数の圧電作動型マイクロポンプとし得る。その代わりに、減圧源964は、病院および他の医療施設で利用可能なものなどの、任意の他のタイプのポンプ、あるいは、壁面吸い込みポートまたは空気送達ポートとし得る。減圧源964は、治療ユニット958内に収容されても、それと共に使用されてもよく、治療ユニットはまた、センサ、処理装置、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、およびユーザインターフェース966を含み、組織部位902へ減圧治療を行うのをさらに容易にする。一例では、減圧源964にまたはその付近に圧力検出センサ(図示せず)を配置し得る。圧力検出センサは、マルチルーメン減圧送達チューブ956の圧力サンプリングルーメンを経由して、減圧アダプタ952から圧力データを受信し得る。圧力検出センサは、減圧源964によって送達された減圧を監視および制御する処理装置と通信し得る。
【0053】
組織部位に行われる減圧の量および性質は、一般に、用いられる特定の治療計画に応じて変動するが、減圧は、一般に、約−5mm Hg(−667Pa)〜約−500mm Hg(−66.7kPa)、より典型的には、約−75mm Hg(−9.9kPa)〜約−300mm Hg(−39.9kPa)とし得る。一部の実施形態では、減圧源964は、Kinetic Concepts,Inc.(Antonio、Texas)から入手可能なV.A.C.Freedom、V.A.C.ATS、InfoVAC、ActiVAC、AbTheraまたはV.A.C.Ulta治療ユニットとし得る。
【0054】
システム900は、さらに、各組織部位902と減圧源964との間の流体連通路に関連した弁910を含む。組織部位902の1つに対して、弁910(より具体的には910aを付す)を、減圧送達チューブ956と一致させて位置決めする。残りの組織部位902に対して、弁910(より具体的には910bを付す)を、マルチパスコネクタ957内に位置決めする。各弁910は、本明細書で説明する他の弁のように、流体の方向制御をもたらし、流体が組織部位902に流入しないようにし得る。一部の実施形態では、弁910は、組織部位902にもたらされる減圧の量を調整するために設けられる。
【0055】
図10を参照すると、マルチパスコネクタ1061の例示的実施形態が示されている。マルチパスコネクタ1061は、マルチパスコネクタ961と同様であり、かつ第1の分岐ポート1065、第2の分岐ポート1067、第3の分岐ポート1069、および供給ポート1071を含む。分岐ポート1065、1067、1069の各々は減圧チューブに結合されるように適合されており、減圧チューブは、減圧ドレッシングに流体的に接続されている。供給ポート1071は、減圧源に流体的に接続されている供給チューブに結合されるように適合されている。マルチパスコネクタ1061は、複数のチューブまたは導管を接続する手段を提供し、流体および圧力の分配を生じ得る。
図10に示すマルチパスコネクタ1061は、4つの導管またはチューブを流体的に接続できるが、その代わりに、より少数のチューブまたはより多数のチューブを接続するコネクタを設け得る。
【0056】
図10に示す実施形態では、分岐ポート1065、1067、1069の各々の内部に弁1010が配置される。マルチパスコネクタ1061の様々なポートに対する弁1010の配置は、様々とし得る;しかしながら、マルチパスコネクタ1061を通過するいずれの流体も、弁1010を通過して弁1010による制御を受ける必要があるように、弁1010を配置することが望ましい。弁1010は、マルチパスコネクタ1061に永久的にまたは取り外し可能に設置し得る。
【0057】
図11を参照すると、減圧送達チューブ1126の例示的実施形態が示されている。減圧送達チューブ1126は、減圧送達チューブ956と同様であり、かつ好ましくは、減圧源と減圧ドレッシングとの間に流体連通をもたらす。
図11に示す実施形態では、弁1110は、減圧送達チューブ1126に動作可能に関連付けられる。チューブ内へのまたは単にそこに接続される弁1110の特定の配置は、様々とし得る;しかしながら、減圧送達チューブ1126を通るいずれの流体も、弁1110を通過して弁1110による制御を受ける必要があるように、弁1110を配置することが望ましい。弁1110は、減圧送達チューブ1126に永久的にまたは取り外し可能に設置し得る。
【0058】
いくつもの別々の実施形態を説明したが、各実施形態の態様は、その実施形態にのみ特有のものではなく、および実施形態の特徴を他の実施形態の特徴と組み合わせ得ることを具体的に考慮する。