(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のトランジスタのドレインは、前記第2のトランジスタのソースに電気的に接続され、前記第1及び第2のトランジスタは、共に前記第1の金属層の第1の部分の上にある請求項1又は2記載の電子モジュール。
前記第1の金属層の第1の部分は、前記第1の金属層の第1の部分をDCグラウンド又は第1のDC電圧に電気的に接続する手段を含み、前記第1の金属層の第2の部分は、前記第1の金属層の第2の部分を第2のDC電圧に電気的に接続する手段を含む請求項1又は2記載の電子モジュール。
【背景技術】
【0002】
パワースイッチング回路、例えば、ブリッジ回路は、様々な用途で一般的に使用されている。モータを駆動するように構成された従来の3相ブリッジ回路10の概略的な回路図を
図1に示す。回路10内の3つのハーフブリッジ15、25、35は、それぞれ2つのトランジスタ(41〜46)を含み、これらによって、第1の方向の電圧を阻止することができ、及びこの第1の方向又は両方向に電流を流すことができる。ブリッジ回路10内でトランジスタを使用する用途では、一方向のみに電流を流すことができ、例えば、シリコンIGBTを使用する場合、各トランジスタ41〜46に逆並列ダイオード(図示せず)を接続してもよい。トランジスタ41〜46は、それぞれ、オフ状態にバイアスされている場合、少なくとも回路10の高電圧(HV)源11の電圧と同程度の電圧を阻止する。すなわち、何れのトランジスタ41〜46においても、ゲート−ソース電圧V
GSがトランジスタ閾値電圧V
thより低ければ、ドレイン−ソース電圧V
DS(すなわち、ソースに対するドレインの電圧)が0V〜HVの間である場合、トランジスタには、実質的に電流が流れない。トランジスタ41〜46は、オン状態にバイアスされると(すなわち、V
GSがトランジスタ閾値電圧より高くなると)、使用される用途に応じて十分に大きな電流を流すことができる。トランジスタ41〜46は、エンハンスメントモード又はEモードトランジスタ(ノーマリーオフ、V
th>0)であってもよく、デプリーションモード又はDモードトランジスタ(ノーマリーオン、V
th<0)であってもよい。パワー回路では、トランジスタが偶発的にオンになると、デバイス又は他の回路部品を損傷するおそれがあるため、これを回避するために、通常、エンハンスモードデバイスが使用される。ノード17、18、19は、全て、誘導負荷、すなわち、誘導成分、例えば、モータコイル(
図1には示していない。)を介して、互いに接続されている。
【0003】
図2aは、
図1の完全な3相モータ駆動回路の従来のハーフブリッジ15と共に、モータ電流が供給されるノード17及びノード18の間のモータのコイル(誘導成分21)及びトランジスタ44を示している。このパワーの位相ではトランジスタ44は、常にオン(V
gs44>V
th)であり、トランジスタ42は、常にオフ(エンハンスメントモードトランジスタが使用されている場合、V
gs42<V
th、すなわち、V
gs42=0V)であり、トランジスタ41は、パルス幅変調(PWM)信号によって変調されて、所望のモータ電流が流される。
図2bは、トランジスタ41がオンにバイアスされている間の電流27の経路を示している。このバイアスでは、モータ電流は、トランジスタ41、44を流れ、一方、トランジスタ42は、オフにバイアスされるため、トランジスタ42には、電流が流れず、ノード17の電圧は、HVに近く、したがって、トランジスタ42は、HVに近い電圧を阻止する。
【0004】
ここで言う「電圧を阻止する」とは、トランジスタ、デバイス又は部品に亘って電圧が印加されたときに、有意の電流、例えば、通常のオン状態の導通の間の平均動作電流の0.001倍より大きい電流が、トランジスタ、デバイス又は部品を流れることを防ぐことができるトランジスタ、デバイス又は部品の能力を意味する。換言すれば、トランジスタ、デバイス又は部品が、そこに印加されている電圧を阻止している間、トランジスタ、デバイス又は部品を流れる総電流は、通常のオン状態の導通の間の平均の0.001倍を超えない。
【0005】
図2cに示すように、トランジスタ41がオフに切換えられると、トランジスタ41には、電流が流れなくなり、したがって、モータ電流は、トランジスタ42がオンにバイアスされているか、オフにバイアスされているかにかかわらず、トランジスタ42を介して、逆方向に流れる。これに代えて、トランジスタ42に逆並列環流ダイオード(図示せず)を接続してもよく、この場合、逆方向電流は、環流ダイオードを流れる。このような動作の間、誘導成分21によって、ノード17の電圧は、トランジスタ42に逆導通を引き起こすために十分な負の値になり、トランジスタ41は、HVに近い電圧を阻止する。
【0006】
多くの高電圧用途において、回路部品は、基板に取り付けられ、基板は、例えば、AlN又はAl
2O
3等のセラミック又は他の電気的絶縁性及び高い熱伝導性を有する材料を含む。電気的絶縁性及び高い熱伝導性を有する材料の少なくとも一方の側(通常、両側)は、熱容量が大きな金属、例えば、銅によってコーティングされ、これによって、回路部品から発生した熱が消散される。特に、高温溶融及び拡散プロセスによって、AlN又はAl
2O
3等のセラミックアイソレータに純銅を直接的に接合することによって形成される直接接合銅(direct bonded copper:DBC)基板は、好適な基板である。
図3に示す例示的な従来のDBC基板は、セラミック層60の両面に接合された銅層61、62を備える。熱伝導率が低いプリント回路板(printed circuit board:PCB)基板は、互いに積層された複数の絶縁層の間に各導電性金属層を挟み込んで形成できるが、これとは異なり、DBC基板は、現在、単層基板としてしか利用できない。高電圧用途のために十分高い熱伝導率を確実に有するDBC基板を形成するために用いられる現在のプロセスでは、単一の絶縁/セラミック層の両側に純銅層を直接的に接合したDBC基板を形成することしかできない。したがって、DBC基板を組み込むレイアウトは、金属−セラミック−金属DBC材料の単層に制約されている。PCB基板は、それぞれが金属層によって分離された複数の絶縁層から形成でき、柔軟性が高い回路レイアウトを実現しているが、このような基板の熱伝導率及び/又は熱容量は、DBC基板の熱伝導率及び/又は熱容量より小さく、多くの高電圧回路、例えば、パワー変換のために用いられるブリッジ回路にとって十分な大きさではない。
【0007】
図2a〜
図2cに戻って説明すると、
図2a〜
図2cに示す従来のスイッチングモードは、ハードスイッチング(hard-switching)と呼ばれている。ハードスイッチング回路は、スイッチングトランジスタがオンになると、これらに直ちに大きな電流が流れ、スイッチングトランジスタがオフになると、これらに直ちに高い電圧が印加されるように構成される。詳しくは、ハードスイッチング回路構成では、スイッチングトランジスタは、トランジスタに高いドレイン−ソース電圧が印加されている状態でオフからオンに切換えられ、トランジスタがオンになると、直ちにトランジスタに大きな電流が流れる。このような条件で切換えられるトランジスタは、「ハードスイッチング」と呼ばれる。ハードスイッチング回路は、比較的単純であり、様々な出力負荷電力で動作できる傾向を有する。しかしながら、ハードスイッチング回路は、電圧オーバーシュートが大きくなりやすく、したがって、電磁干渉(electro-magnetic interference:EMI)のレベルが高くなりやすい。これに代わる回路構成では、受動及び/又は能動部品を利用し、又は代替となる信号タイミング技術を用いて、トランジスタを「ソフトスイッチング」する。ソフトスイッチング回路構成では、スイッチングトランジスタは、ゼロ電流(又は略々ゼロ電流)の条件下又はゼロ電圧(又は略々ゼロ電圧)の条件下でオンになるように構成される。ソフトスイッチング方法及び構成は、スイッチング損失を低減し、特に大電流及び/又は高電圧用途におけるハードスイッチング回路で観測される高レベルの電磁干渉(EMI)及びこれに関連するリンギングの問題を解決するために開発された。ソフトスイッチングは、多くの場合、これらの問題を軽減できるが、ソフトスイッチングに必要な回路は、通常、多くの追加的な部品を含み、この結果、全体的なコスト及び複雑性が高くなる。また、ソフトスイッチングでは、通常、ゼロ電流又はゼロ電圧条件が満たされた特定のタイミングで回路を切換えるように構成する必要があるため、適用できる制御信号に制約があり、多くの場合、回路性能が低下する。更に、ソフトスイッチング動作には、共振条件が要求されるため、各ソフトスイッチング回路の出力負荷が所定の範囲内の値である必要があり、したがって、回路の動作範囲に制約がある。そこで、これらに代えて、過度な高電圧オーバーシュートを防止し、EMIを十分低いレベルに維持しながら、様々なアウトプット負荷に対応できるハードスイッチング型パワースイッチング回路の構成及び方法が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面として、電子モジュールを開示する。電子モジュールは、コンデンサと、第1のトランジスタを含む第1のスイッチングデバイス及び第2のトランジスタを含む第2のスイッチングデバイスとを備える。電子モジュールは、更に、第1の金属層と第2の金属層との間の絶縁層を含む基板を備え、第1の金属層は、第1の部分及び第2の部分を含み、第2の部分は、第1の部分と第2の部分との間の第1の金属層に形成されたトレンチによって、第1の部分から電気的に分離されている。第1及び第2のスイッチングデバイスは、第1の金属層の上にあり、コンデンサの第1の端子は、第1の金属層の第1の部分に電気的に接続され、コンデンサの第2の端子は、第1の金属層の第2の部分に電気的に接続され、コンデンサは、トレンチ上を横断するように形成されている。
【0009】
本発明の第2の側面として、電子モジュールを開示する。電子モジュールは、第1の絶縁層の上に第1の部分及び第2の部分を含む第1の金属層を有する第1の基板と、第2の金属層と第3の金属層との間に第2の絶縁層を有する第2の基板とを備え、第2の基板は、第2の表面と、第2の表面に対して第2の基板の反対側にある第3の表面とを有し、第2の絶縁層は、第1の絶縁層より小さい面積を有する。電子モジュールは、更に、第1の半導体デバイスを備える。第2の基板は、第1の金属層の第2の部分の上に重ならないように第1の金属層の第1の部分の上に取り付けられ、第2の基板の第2の表面は、第1の金属層と直接的に接触し、第1の半導体デバイスは、第2の基板の第3の表面に取り付けられている。
【0010】
本発明の第3の側面として、電子モジュールを開示する。電子モジュールは、第1の金属層と第2の金属層との間の第1の絶縁層を含む第1の基板と、第3の金属層と第4の金属層との間の第2の絶縁層を含む第2の基板とを備える。第2の基板は、第1の基板より面積が小さく、第3の金属層を第2の金属層に隣接又は接触させて、第1の基板の第1の部分に取り付けられている。電子モジュールは、更に、第1のゲート及び第1のソースを有する第1のスイッチングデバイスと、第2のゲート及び第2のソースを有する第2のスイッチングデバイスとを備える。第1のスイッチングデバイスは、第1の基板の第2の金属層に取り付けられ、第2の基板は、第2のスイッチングデバイスと第1の基板との間にある。
【0011】
ここに開示する電子モジュールは、以下の1つ以上の特徴を有することができる。第1のトランジスタのドレインは、第2のトランジスタのソースに電気的に接続してもよく、第1及び第2のトランジスタは、共に第1の金属層の第1の部分の上にあってもよい。第1の金属層の第1の部分は、第1の金属層の第1の部分をDCグラウンド又は第1のDC電圧に電気的に接続する手段を含んでいてもよく、第1の金属層の第2の部分は、第1の金属層の第2の部分を第2のDC電圧に電気的に接続する手段を含んでいてもよい。コンデンサは、第1の金属層の第1の部分と第2の部分との間の電位差を安定させるように構成してもよい。第1のトランジスタ又は第2のトランジスタは、III族窒化物トランジスタであってもよい。基板は、直接接合銅(direct bonded copper:DBC)基板であってもよい。電子モジュールは、第3の金属層と第4の金属層との間に第2の絶縁層を含む第2の基板を更に備えていてもよく、第2の基板は、第1の金属層の第3の部分の上にあるが、第1の金属層の第1及び第2の部分の上になく、第2の基板は、第2のトランジスタと、第1の基板との間にあり、第1のトランジスタは、第1の金属層の第1又は第2の部分の上にある。
【0012】
第1の基板及び第2の基板は、直接接合銅基板を含んでいてもよい。電子モジュールは、第1の金属層の第2の部分に取り付けられた第2の半導体デバイスを更に備えていてもよい。第1の半導体デバイスは、第1のトランジスタを含んでいてもよく、第2の半導体デバイスは、第2のトランジスタを含んでいてもよく、第1のトランジスタのソース及び第2のトランジスタのドレインは、第3の金属層に電気的に接続してもよい。第1のトランジスタ又は第2のトランジスタは、III族窒化物トランジスタであってもよい。第1の金属層は、第3の部分を更に有していてもよく、第3の部分は、第3の部分と第2の部分との間で第1の金属層を介して形成されたトレンチによって、第2の部分から電気的に分離されている。電子モジュールは、コンデンサを更に備えていてもよく、コンデンサの第1の端子は、第1の金属層の第3の部分に電気的に接続され、コンデンサの第2の端子は、第1の金属層の第2の部分に電気的に接続され、コンデンサは、トレンチ上を横断するように形成されている。第1のトランジスタのドレインは、第1の金属層の第3の部分に電気的に接続してもよい。第1の半導体デバイスは、第3のトランジスタを更に有していてもよく、第3のトランジスタのソースは、第1のトランジスタのドレインに電気的に接続してもよく、第1のトランジスタのドレインは、第1の金属層の第3の部分に電気的に接続してもよい。
【0013】
電子モジュールは、第4の金属層と第5の金属層との間の第3の絶縁層を有する第3の基板を更に備えていてもよく、第3の絶縁層は、第2の絶縁層より小さい面積を有し、第3の基板は、第2の基板の第3の表面の上に直接的に取り付けられている。第1の半導体デバイスは、第1のトランジスタを含んでもよく、第2の半導体デバイスは、第2のトランジスタを含んでもよく、第1のトランジスタのソース及び第2のトランジスタのドレインは、第3の金属層に電気的に接続してもよい。第1の金属層は、第3の部分を更に有していてもよく、第3の部分は、第3の部分と第2の部分との間で第1の金属層を介して形成されたトレンチによって、第2の部分から電気的に分離されている。電子モジュールは、コンデンサを更に備えていてもよく、コンデンサの第1の端子は、第1の金属層の第3の部分に電気的に接続され、コンデンサの第2の端子は、第1の金属層の第2の部分に電気的に接続され、コンデンサは、トレンチ上を横断するように形成されている。第1のトランジスタのドレインは、第1の金属層の第3の部分に電気的に接続してもよい。第1の半導体デバイスは、第3のトランジスタを更に有していてもよく、第3のトランジスタのソースは、第1のトランジスタのドレインに電気的に接続され、第1のトランジスタのドレインは、第1の金属層の第3の部分に電気的に接続されている。
【0014】
第1及び第2の半導体デバイスは、トランジスタを含んでいてもよく、トランジスタは、ハーフブリッジの一部である。第1のソースは、第1のソースリードに電気的に接続してもよく、第1のゲートは、第1のゲートリードに電気的に接続してもよく、第2のソースは、第2のソースリードに電気的に接続してもよく、第2のゲートは、第2のゲートリードに電気的に接続してもよい。第1のソースリード及び第1のゲートリードは、第1の基板の第2の金属層に取り付けてもよく、第2のソースリード及び第2のゲートリードは、第2の基板の第4の金属層に取り付けてもよい。第1のソースリードは、第1の基板の表面から延び出していてもよく、第2のゲートリードは、第2の基板の表面から延び出していてもよく、第1のソースリードは、第2のスイッチングデバイスから離れる方向への屈曲を有していてもよく、第2のゲートリードは、第1のスイッチングデバイスから離れる方向への屈曲を有していてもよい。
【0015】
本発明の第4の側面として、電子モジュールを製造する方法を開示する。方法は、第1の絶縁層の上に第1の金属層を有する第1の基板であって、第1の表面を有し、第1の部分及び第2の部分を含む第1の基板を準備するステップを有する。方法は、第2の金属層と第3の金属層との間に第2の絶縁層を有する第2の基板であって、第2の表面と、第2の表面に対して第2の基板の反対側にある第3の表面とを有する第2の基板を準備するステップを更に有する。方法は、第2の表面を第3の表面と第1の表面との間にして、第1の基板の第1の部分において、第1の表面の上に第2の基板を取り付けるステップを更に有する。
【0016】
ここに開示する電子モジュールを製造する方法は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。方法は、第1の基板の第2の部分において、第1の基板の第1の表面の上に第2の半導体デバイスを取り付けるステップを更に有していてもよい。第2の半導体デバイスは、トランジスタであってもよい。トランジスタは、ソース電極、ゲート電極及びドレイン電極を有していてもよく、電極のそれぞれは、トランジスタの第1の側にある。トランジスタは、III族窒化物トランジスタであってもよい。第1の半導体デバイス又は第2の半導体デバイスは、ハードスイッチング型として構成されたスイッチングトランジスタであってもよい。スイッチングトランジスタのスイッチング期間は、約3ナノ秒以下であってもよい。第1の半導体デバイスを第2の基板に取り付けるステップ又は第2の半導体デバイスを第1の基板に取り付けるステップは、第1の基板の第1の部分において、第1の表面の上に第2の基板を取り付けるステップの前に実行してもよい。第2の基板の第2の表面は、第1の基板の第1の部分において、第1の基板の第1の表面に直接的に取り付けてもよい。第1の基板の第1の表面は、第1の金属層の表面を含んでいてもよく、第2の基板の第2の表面は、第2の金属層の表面を含んでいてもよく、第2の基板の第3の表面は、第3の金属層の表面を含んでいてもよい。
【0017】
方法は、第1の金属層を部分的に取り除くステップを更に有していてもよい。第1の金属層を部分的に取り除くステップは、第1の金属層を介して分離トレンチを形成するステップを含んでいてもよい。第1の金属層を部分的に取り除くステップは、第1の基板の第1の部分において、第2の基板を第1の表面の上に取り付ける前に実行してもよい。第1の基板の第1の部分の上に第2の基板を取り付けるステップは、第2の基板の第2の表面を第1の基板の第1の表面の第1の部分にはんだ付けするステップを含んでいてもよい。第1の絶縁層又は第2の絶縁層は、セラミック材料を含んでいてもよい。第1、第2又は第3の金属層の1つ以上は、銅を含んでいてもよい。第1の基板又は第2の基板は、直接接合銅(direct bonded copper:DBC)基板であってもよい。
【0018】
第1の基板の第1の表面の面積は、第2の基板の第2の表面の面積より広くてもよい。電子モジュールは、ハーフブリッジを含んでいてもよい。電子モジュールは、パワーインバータ又はパワーコンバータを含んでいてもよい。方法は、電子モジュールの上に、第1の端子及び第2の端子を有するコンデンサを取り付けるステップを更に有していてもよい。第1の基板の第2の部分において、第1の金属層を介してトレンチを形成するステップを更に有していてもよい。コンデンサを電子モジュールに取り付けるステップは、トレンチの第1の側において、第1の端子を第1の金属層に接続するステップと、トレンチの第2の側において、第2の端子を第1の金属層に接続するステップとを含んでいてもよい。第1の基板は、第1の金属層に対して第1の絶縁層の反対側にある第4の金属層を更に備えていてもよい。
【0019】
本発明の第5の側面として、電子デバイスを開示する。電子デバイスは、第1のソース電極、第1のゲート電極、第1のドレイン電極及び第1の半導体層を有するエンハンスメントモードトランジスタを備える。第1のソース電極及び第1のゲート電極は、第1のゲート電極に対して第1の半導体層の反対側にある。電子デバイスは、更に、第2のソース電極及び第2のゲート電極を含み、第2のソース電極が第2の半導体層の上にあるデプリーションモードトランジスタを備える。エンハンスメントモードトランジスタは、第1のドレイン電極を第2のソース電極に電気的に接触させて、第2のソース電極の頂部に直接的に又は第2のソース電極の上に取り付けられている。
【0020】
ここに開示する電子デバイス及び部品は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。デプリーションモードトランジスタは、第2のドレイン電極を更に有していてもよく、第2のソース電極及び第2のドレイン電極は、共に第2の半導体層の第1の側にあってもよい。デプリーションモードトランジスタは、横型デバイスであってもよい。エンハンスメントモードトランジスタは、シリコンベースのトランジスタであってもよい。デプリーションモードトランジスタは、III族窒化物トランジスタであってもよい。第1のソース電極は、第2のゲート電極に電気的に接続してもよい。デプリーションモードトランジスタは、半導体層上に絶縁体層を有していてもよく、第2のソース電極は、絶縁体層の上にあってもよい。デプリーションモードトランジスタは、デバイスアクティブ領域及び非アクティブ領域を含んでいてもよく、デバイスチャネルは、デバイスアクティブ領域内の半導体層にあるが、非アクティブ領域内の半導体層にはなく、絶縁体層は、デバイスアクティブ領域及び非アクティブ領域の両方の上にある。エンハンスメントモードトランジスタは、絶縁層上にあり、デバイスアクティブ領域の一部及び非アクティブ領域の一部の直接上にあってもよい。デプリーションモードトランジスタは、エンハンスメントモードトランジスタより高い降伏電圧を有していてもよい。
【0021】
本発明の第6の側面として、電子デバイスを製造する方法を開示する。方法は、第1のソース電極、第1のゲート電極、第1のドレイン電極及び第1の半導体層を有し、第1のソース電極及び第1のゲート電極は、第1のゲート電極に対して第1の半導体層の反対側にあるエンハンスメントモードトランジスタを準備するステップを有する。方法は、更に、第2のソース電極及び第2のゲート電極を含み、第2のソース電極が第2の半導体層の上にあるデプリーションモードトランジスタを準備するステップを有する。方法は、更に、第1のドレイン電極を第2のソース電極に電気的に接触させて、エンハンスメントモードトランジスタを第2のソース電極の頂部に直接的に又は第2のソース電極の上に取り付けるステップを有する。
【0022】
ここに開示する電子デバイス及びモジュールを製造する方法は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。デプリーションモードトランジスタは、横型デバイスであってもよい。方法は、第2のゲート電極を第1のソース電極にワイヤ接続するステップを更に有していてもよい。
【0023】
本発明の第7の側面として、パワーインバータを動作させる方法を開示する。方法は、パワーインバータを、少なくとも500Vの電圧を供給する高電圧源に接続するステップと、スイッチングデバイスをオフ状態からオン状態に、又はオフ状態からオン状態にスイッチングするステップとを有する。オン状態において、スイッチングデバイスは、40〜50Aの電流を流し、オフ状態において、スイッチングデバイスは、高電圧源が供給する電圧を阻止し、スイッチングのスイッチング期間は、10ナノ秒未満であり、スイッチングデバイスに印加される電圧は、高電圧源が供給する電圧の1.35倍を超えない。
【0024】
ここに開示するパワーインバータを動作させる方法は、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。スイッチング期間は、5ナノ秒未満であってもよい。スイッチングデバイスに印加される電圧は、700Vを超えない。
【0025】
本明細書に開示されている主題の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の記述において説明される。本発明の主題のこの他の特徴、側面及び利点は、以下の説明、図面及び特許請求の範囲によって明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
複数の図面において、同様の要素には、同様の符号を付している。
【0028】
電子パワースイッチング回路におけるEMIを低レベルに維持し、これによって、回路安定性が高められ、性能が向上した電子部品及び方法を開示する。また、電子部品は、従来の部品と比べてサイズが縮小され、これにより、製造コストが低減される。
【0029】
ここに説明する回路内のトランジスタ又は他のスイッチングデバイスは、通常、上述したような、スイッチングレートが非常に高い(すなわち、スイッチング期間が非常に短い)ハードスイッチング型として構成される。ここに説明する回路の1つに含まれるトランジスタがオフ状態である場合、トランジスタには実質的な電流が流れず、トランジスタは、ドレイン端子とソース端子の間で、回路高電圧に近い電圧を阻止する。ここに説明する回路の1つに含まれるトランジスタがオン状態である場合、トランジスタには、実質的なドレイン−ソース電流が流れ、デバイスに印加される電圧は僅かなもののみとなる。ハードスイッチング条件下でスイッチングされるスイッチングトランジスタのスイッチング期間は、以下のように定義される。トランジスタが上述したオフ状態から上述したオン状態に切換えられるとき、デバイスを流れる電流は、スイッチングが開始した時点から増加し始め、この増加の速度は、デバイスに印加されている電圧を略々同じに保ったまま、制御回路の条件を調整することによって調整できる。デバイスに印加されるドレイン−ソースソース電圧は、実質的に全ての負荷電流がトランジスタを流れる時点まで、実質的に低下しない。スイッチングの開始からデバイスに印加される電圧の低下までに経過する時間は、トランジスタをオンにするための「スイッチング期間」と呼ばれる。より具体的には、トランジスタをオンにするための「スイッチング期間」は、ドレイン−ソース電圧が阻止電圧の90%に等しい時点からドレイン−ソース電圧が阻止電圧の10%に等しい時点までに経過する時間と定義することができる。デバイスに印加される切換えられた総電圧をスイッチング期間で除算した値(dV/dt)は、「電圧スイッチングレート」又は単に「スイッチングレート」と呼ばれる。
【0030】
トランジスタをオン状態からオフ状態に切換える場合、デバイスに印加される電圧は、概ねスイッチングの開始の時点のオフ状態電圧まで上昇し、一方、オン状態値からオフ状態値への電流の減少は、より長い時間がかかり、この減少のレートも、制御回路の条件を調整することによって調整することができる。スイッチングの開始からデバイスを流れる電流がゼロになるまでに経過する時間は、トランジスタをオフにするための「スイッチング期間」と呼ばれる。より具体的には、トランジスタをオフにするための「スイッチング期間」は、ドレイン−ソース電圧が阻止電圧の10%に等しい時点からドレイン−ソース電圧が阻止電圧の90%に等しい時点までに経過する時間と定義することができる。デバイスに流れる切換えられた総電流をスイッチング期間で除算した値(dI/dt)は、「電流スイッチングレート」又は単に「スイッチングレート」と呼ばれる。一般的に、スイッチング期間が短い程(したがって、スイッチングレートが高い程)、スイッチング損失が小さくなる傾向があるが、同時に、EMIのレベルが高くなりやすく、このために、回路部品が劣化又は損傷し、動作不能になることもある。
【0031】
図1及び
図2等に示すような回路レイアウトを有する回路を確実に適切に動作させるためには、DC高電圧ノード11をACグラウンドとして維持する必要がある。すなわち、
図4aに示すように、コンデンサ51の一方の端子を高電圧ノード11に接続し、コンデンサの他方の端子をグラウンド12に接続することによって、ノード11をDCグラウンド12に容量結合することが好ましい。これによって、トランジスタ41又はトランジスタ42の何れかがオン又はオフに切換えられると、コンデンサ51は、必要に応じて充電又は放電を行い、回路の高電圧側及び低電圧側において実質的な定電圧を維持するために必要な電流を提供する。より高いスイッチングレートでは、EMIが生じるので、コンデンサ51は、通常、回路を安定させるために、より短い期間により高い電流レベルを提供する必要がある。多くの場合、コンデンサ51と回路との間の導電性コネクタは、
図4bにおいて、インダクタ52、53として表されている大きな寄生インダクタンスを有する。この寄生インダクタンスによって、コンデンサ51に流れる電流が十分に速やかに切換えられなくなり、この結果、コンデンサ51は、トランジスタがオン又はオフに切換えられた後に、トランジスタ41又はトランジスタ42に印加される電圧の変化を防ぐために十分速いレートで電流を提供することができなくなる。この結果、電圧振動(すなわち、リンギング)及び過大なEMI等の悪影響が生じる。特に、回路内の何れかのトランジスタに印加される過大な電圧振動によって、トランジスタが故障して動作不能になることもある。
【0032】
図5〜
図7は、電子部品、すなわち、ブリッジ回路の概略的レイアウトを示している。
図5〜
図7に示す各電子部品の回路は、
図5〜
図7の電子部品が高電圧側とグラウンド側との間にコンデンサ71/91を含む点を除き、
図1に示す回路と同様である。
図5〜
図7の電子部品は、回路内の寄生インダクタンスを実質的に低減する特徴を含み、これによって、回路は、より小さい損失で、より速いスイッチング速度で動作できる。
【0033】
図5に示すブリッジ回路の概略的レイアウトでは、ブリッジ回路の部品は、全て、絶縁材料又はセラミック材料に接合された金属層75を有する単一の共通のDBC基板74上に取り付けられている。ハーフブリッジ121は、トランジスタ81、82を含み、ハーフブリッジ122は、トランジスタ83、84を含み、ハーフブリッジ123は、トランジスタ85、86を含む。トランジスタ81〜86は、それぞれ、トランジスタのドレイン電極の反対側にソース電極及びゲート電極を有し、ドレイン電極が金属層75に接触するように基板に取り付けられている縦型トランジスタ(vertical transistor)である。これに代えて、トランジスタ81〜86として、それぞれ、デバイスの同じ側にソース、ゲート及びドレインが設けられた横型トランジスタ(lateral transistor)を用いてもよく、この場合、ドレインは、例えば、ワイア接続によって金属層75に接続できる。使用できる横型トランジスタの具体例としては、III族窒化物高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)等のIII族窒化物トランジスタが含まれる。ここで使用するIII族窒化物又はIII−N材料、層、デバイス、構造等の用語は、化学量論式Al
xIn
yGa
zNで表される化合物半導体材料を含む材料、層、デバイス又は構造を意味し、x+y+zは、約1である。III族窒化物又はIII−Nデバイス、例えば、トランジスタ又はHEMTでは、導電チャネルは、部分的又は完全にIII−N材料層内に含まれる。
【0034】
金属層には、トレンチ76が形成され、トレンチ領域では、セラミック材料が露出し、トレンチ76は、トランジスタ82、84、86のそれぞれの周囲の金属層75を残りの金属層75から電気的に分離している。基板の下部37(すなわち、トレンチ76の下の部分)で金属層75に電気的に接続されているリード77は、DCグラウンドに接続されるように構成され、これによって、下部37の金属層75は、DCグラウンド電位に維持される。基板の上部38(すなわち、トレンチ76の上の部分)で金属層75に電気的に接続されているリード78は、DC高電圧源(図示せず)に接続されるように構成され、これによって、上部38の金属層75は、DC高電圧に維持される。ここで言う2つ以上のコンタクト又は他のアイテム、例えば、導電層又は部品が「電気的に接続される」とは、これらが十分な導電性を有する材料によって接続され、各コンタクト又は他のアイテムの電位がバイアス条件によらず、実質的に同じ又は略々同じになることを意味する。ゲートリード87及びソースリード88は、例えば、図に示すように、ワイヤ接続39によって、トランジスタ81〜86のそれぞれのゲート及びソースに電気的に接続される(図を明瞭にするため、
図5では、1つのワイヤ接続のみに符号39を付している)。ゲートリード87及びソースリード88は、金属層75の厚さの全体に亘って形成され、各ゲートリード87及びソースリード88を取り囲むトレンチ56によって、それぞれのトランジスタのドレインから電気的に分離されている。誘導負荷(図示せず)に接続されるように構成された出力リード79は、それぞれ、各トランジスタ82、84、86を囲む領域において、金属層75に電気的に接続されている。
【0035】
図5に示すように、部分37、38の間には、比較的大きい空間的な分離が存在し、したがって、部分37のグラウンド面を部分38の高電圧面に容量的に接続するコンデンサ71は、コンデンサを部分37、38内の金属層75にそれぞれ接続する導電性コネクタ72、73によって、外部に取り付けられる。部分37、38の間の空間的な分離のために、コネクタ72、73は、比較的長いので、これらは、大きな寄生インダクタンスを有する傾向があり、これは、
図4bに示すインダクタ52、53のインダクタンスの値が大きいことを意味する。したがって、
図5の電子部品は、トランジスタが低いスイッチングレートで切換えられる場合、及び/又は十分長いスイッチング期間で十分低いスイッチング電流及び電圧レベルで切換えられる場合は、動作できるが、より高いスイッチングレート及び/又はより高いスイッチング電圧又は電流では、回路の寄生インダクタンスによって、許容できない高いレベルのEMI及び電圧フリッカ/発振が生じることがある。具体的には、トランジスタ切換の間にトランジスタに印加される電圧の変化率(dV/dt)又はトランジスタを流れる電流の変化率(dI/dt)が大きすぎると、電圧フリッカ/発振及びEMIによって、回路の効率及び性能が低下し又は回路部品の1つ以上が故障することがある。
【0036】
図6は、電子部品、すなわち、ブリッジ回路の他の概略的レイアウトを示している。
図6の電子部品は、単一のDBC基板74上の高電圧面と接地面との間にカップリングコンデンサ91を含むようにレイアウトが変更され、これによって、カップリングコンデンサの両側に長いコネクタを設ける必要性を排除し、回路内の寄生インダクタンスを低減している点を除いて
図5の電子部品と同様である。具体的には、部分38が、トランジスタ82、84の間及びトランジスタ84、86の間の領域92を含むように、DBC基板の金属層75を介して形成されるトレンチ76の形状が変更されている。領域92の金属層75は、部分37の金属層75に向かって延びているが、トレンチ76の幅によって部分37の金属層75から分離されており、この幅は、2cm未満、例えば、約1cm以下であってもよい。図に示すように、コンデンサ91は、トレンチ76の直接上に取り付けられ、コンデンサ91の第1の端子は、トレンチの一方の側で金属層75に接続され、コンデンサ91の第2の端子は、トレンチの他方の側で金属層75に接続されている。コンデンサの2つの端子のそれぞれが接続される金属層75上の点は、トレンチから2cm未満及び/又はお互いから4cm未満の位置にあり、これによって、寄生インダクタンスが低いコンパクト設計が実現されている。
【0037】
図6のレイアウトは、
図5のレイアウトに比べて、回路内の寄生インダクタンスを実質的に減少させることができるが、コンデンサ91及びトランジスタ81、83、85の何れかを流れる全ての電流は、比較的狭い領域92を流れる必要があり、これによって、回路内に寄生インダクタンスが生じ、幾つかの用途、例えば、トランジスタに印加される電圧及び/又はトランジスタを流れる電流のスイッチングレートが非常に高い用途では、この寄生インダクタンスが高くなりすぎることがある。領域92の幅を広くすれば、寄生インダクタンスを低減できるが、これによって電子部品の全体的なサイズが大きくなり、コストが上昇する。ここで、フットプリント及び材料コストを最小化しながら、同時に回路の速度及び性能を向上させるためには、カップリングコンデンサとトランジスタとの間を流れる電流が、大きな幅の導電材料に亘って拡散するコンパクトなレイアウトが望ましい。
【0038】
図7は、
図5及び
図6のレイアウトと比べて、寄生インダクタンスを更に低減できるブリッジ回路のためのコンパクトなレイアウトを示している。コンパクト設計は、以下で更に説明するように、DBC基板74上に追加的なDBC基板94〜96を積層することによって達成され、コンデンサ91の何れかを流れる電流は、高電圧側デバイス(high-side devices)101、103、105の何れかの下を流れることができ、したがって、比較的狭いチャネルに閉じ込められない。
【0039】
図7に示すブリッジ回路は、DBC基板74上に形成され、横型トランジスタであるトランジスタ101〜106を含み、トランジスタ101〜106は、全て同じ側に又はデバイスの共通の半導体層上に形成されたソース、ゲート及びドレインを有する。横型トランジスタ101〜106は、ソース、ゲート、ドレインのそれぞれが1つ以上のデバイス半導体層上に形成され、1つ以上のデバイス半導体層は、DBC基板74と、ソース、ゲート、ドレインのそれぞれとの間に存在する。
図7の電子部品は、更に、DBC基板74上に積層され、高電圧側トランジスタ(high-side transistor)101、103、105が設けられた追加的DBC基板94〜96を含み、ハーフブリッジ121”、122”、123”は、それぞれ、基板94、95、96上にある。
図7の電子部品の破線100に沿った断面図である
図8Aに示すように、絶縁/セラミックの層97の両側に設けられた金属層98、99を含むDBC基板95は、DBC基板74の下部37(すなわち、
図7に符号を付している金属層75がグラウンドに接続されている部分)の一部の上に取り付けられている。DBC基板95の金属層99は、DBC基板74の金属層75に電気的に接続でき、例えば、導電性接着剤又はエポキシによって、金属層75上に取り付けることができる。横型パワートランジスタ103は、金属層98上に形成され、ソース電極は、ソースリード88(
図7に示しているが
図8Aでは示していない。)と、DBC基板95の金属層98との両方にワイヤ接続され、ゲート電極は、ゲートリード87(
図7に示しているが
図8Aでは示していない。)にワイヤ接続され、ドレイン電極は、DBC層74の部分38内の金属層75にワイヤ接続されている。
【0040】
図7に戻って説明すると、出力リード79は、それぞれ、DBC基板94〜96の上側の金属層(
図8Aの層98)に電気的に接続される。DBC基板の一部であって、追加的DBC基板を含まない部分37に取り付けられた低電圧側トランジスタ102、104、106は、以下のように構成される。図に示すように、ソース電極は、部分37内の金属層75及びソースリード88にワイヤ接続され、ゲート電極は、ゲートリード87にワイヤ接続され、ドレイン電極は、DBC基板94〜96の上側の金属層(すなわち、DBC基板74から最も遠い金属層)にワイヤ接続される。
【0041】
図7の電子部品において、コンデンサ91の何れかからトランジスタ102、104、106の何れかのソースに流れる電流、又は反対の方向に流れる電流は、金属層75を流れ、したがって、金属層75がトランジスタ101、103、105の下側に広がっているため、トランジスタ101、103、105の少なくとも1つの下側を流れる。このように、
図6の場合と異なり、電流は、横方向に比較的狭いチャネルに閉じ込められることはない。この結果、この電子部品の寄生インダクタンスは、
図6の電子部品の寄生インダクタンスに比べて低減される。更に、
図6の電子部品に含まれている狭い領域92は、
図7の電子部品では不要であるので、
図7の電子部品は、
図6の電子部品に比べて、よりコンパクトに製造でき、フットプリントを小さくすることができる。
【0042】
図8Bは、
図7の電子部品の破線90に沿った断面図であり、トランジスタ103、104のそれぞれのソースリード88及びゲートリード87の構成を示している。
図7の電子部品のコンパクト設計のため、特に、トランジスタ103、104の間の間隔が小さいために、リード87、88は、互いのデバイスの偶然のショートを防止するために曲げられている。すなわち、トランジスタ103のリード87、88は、トランジスタ104から離れる方向への屈曲を有し、トランジスタ104のリード87、88は、トランジスタ103から離れる方向への屈曲を有し、隣接するデバイスのリードの間の最小の間隔57を増加させている。
【0043】
図7の電子部品を製造する手順の具体例を
図9A〜9Eに示す。まず、
図9Aに示すように、第1のDBC基板74と共に、DBC基板94〜96を準備する。DBC基板94〜96の断面積は、DBC基板74の断面積より小さい。具体的には、
図9Eに示すように、各DBC基板94〜96は、互いに重なり合うことなく、DBC基板74の領域内に納められるため、DBC基板94〜96の断面積は、それぞれ、DBC基板74の断面積の1/3より小さくする必要がある。更に、部分38及びトランジスタ102、104、106を設けるための十分な面積を確保する必要があるため、DBC基板94〜96の断面積は、それぞれ、DBC基板74の断面積の1/3より小さくする必要がある。
【0044】
続いて、
図9Bに示すように、DBC基板74の金属層75にトレンチ76を形成し、各DBC基板75、94〜96の上側の金属層にトレンチ56を形成する。次に、
図9Cに示すように、各トランジスタ101、103、105をDBC基板94、95、96の上側の金属表面にそれぞれ取り付け、及びDBC基板74の部分37(すなわち、トレンチ76よりリード77と同じ側にあるDBC基板74の部分)において、トランジスタ102、104、106を金属層75に取り付ける。トレンチ76上には、コンデンサ91を取り付け、コンデンサ91の一方の端子は、部分37において、金属層75に接触し、他方の端子は、部分38(すなわち、トレンチ76よりリード78と同じ側にあるDBC基板74の部分)において、金属層75に接触する。グラウンドリード77は、部分37において、金属層75に取り付けられ、電気的に接続され、高電圧リード78は、部分38において、金属層75に取り付けられ、電気的に接続され、出力リード79は、各DBC基板94〜96の上側の金属表面にそれぞれ取り付けられ、電気的に接続される。図に示すように、ソースリード88及びゲートリード87は、各トランジスタ101〜106の近傍に取り付ける。
【0045】
次に、
図9Dに示すように、DBC基板74の上にDBC基板94〜96を取り付け、DBC基板74の金属層75をDBC基板94〜96の各底面金属層に接触させる。そして、ワイヤ接続39を形成し、
図7と同様の
図9Eに示す電子部品を完成させる(図を明瞭にするため、
図7及び
図9Eでは、1つのワイヤ接続のみに符号39を付している)。
【0046】
トランジスタ101〜106は、正の閾値電圧を有するエンハンスメントモード(Eモード)トランジスタであってもよく、負の閾値電圧を有するデプリーション(Dモード)トランジスタであってもよい。多くの高電圧又はパワースイッチング用途では、トランジスタ101〜106の何れかが誤動作した場合の回路へのダメージを防止するために、トランジスタは、エンハンスメントモードデバイスであることが望ましい。また、デバイスの一部をDBC基板から電気的に分離するために、トランジスタ101〜106は、一部又は全てのデバイス半導体層と、デバイス半導体層が取り付けられているDBC基板との間に絶縁層又は半絶縁層、例えば、Al
2O
3、シリコン又は炭化シリコン等の半絶縁基板を含んでいてもよい。
【0047】
図7では、トランジスタ101〜106を単一の横型トランジスタとして示しているが、これに代えて、他のデバイスを用いることもできる。例えば、スイッチングトランジスタ101〜106の何れか又は全ての代わりに
図10A及び
図10Bに示すハイブリッドデバイス107のようなスイッチングデバイスを用いてもよい。高電圧エンハンスメントモードトランジスタから構成されるスイッチングデバイスは、高い信頼度で製造することが困難な場合があるので、
図10A及び
図10Bの構成のように、単一の高電圧Eモードトランジスタに代えて、高電圧Dモードトランジスタ108を低電圧Eモードトランジスタ109と組み合わせてハイブリッドデバイス107を形成することもできる。ハイブリッドデバイス107は、単一の高電圧Eモードトランジスタと同様に動作でき、多くの場合、単一の高電圧Eモードトランジスタと同じ又は同様の出力特性を実現できる。
図10Aは、ハイブリッドデバイス107の概略的平面図を示しており、
図10Bは、ハイブリッドデバイス107の回路の概要を示している。ハイブリッドデバイス107は、高電圧Dモードトランジスタ108及び低電圧Eモードトランジスタ109を含む。
図10A及び
図10Bに示す構成では、Eモードトランジスタ109は、ソース電極111及びゲート電極112に対して、ドレイン電極113がデバイスの半導体層の反対側に設けられている縦型トランジスタであり、Dモードトランジスタ108は、ソース電極114、ゲート電極115及びドレイン電極116が全てデバイスの半導体層の同じ側に設けられている横型トランジスタである。但し、各トランジスタ108、109は、この他の構成を有していてもよい。幾つかの具体例では、Dモードトランジスタ108は、III族窒化物トランジスタである。幾つかの具体例では、Eモードトランジスタ109は、シリコンベースのトランジスタであり、他の具体例では、III族窒化物トランジスタである。
【0048】
低電圧Eモードトランジスタ109のソース電極111及び高電圧Dモードトランジスタ108のゲート電極115は、例えば、ワイヤ接続39(
図10Aに示す。)によって互いに電気的に接続され、ハイブリッドデバイス107のソース121(
図10Bに示す。)を共に構成する。低電圧Eモードトランジスタ109のゲート電極112は、ハイブリッドデバイス107のゲート122(
図10Bに示す。)を構成する。高電圧Dモードトランジスタ108のドレイン電極116は、ハイブリッドデバイス107のドレイン123(
図10Bに示す。)を構成する。高電圧Dモードトランジスタ108のソース電極114は、低電圧Eモードトランジスタ109のドレイン電極113に電気的に接続される。
図10Aに示すようにソース及びドレイン電極111、112に対してEモードトランジスタ109の反対側にあるドレイン電極113は、例えば、導電性はんだ又は樹脂を用いて、ソース電極又はソース電極114の直接上に低電圧Eモードトランジスタ109を取り付け、ドレイン電極113(Eモードトランジスタ109の底面にあり、
図10Bに示す。)と、ソース電極114とを直接的に接触させることによってソース電極114に電気的に接続できる。このため、低電圧Eモードトランジスタ109のフットプリント(したがって、断面積)は、高電圧Dモードトランジスタ108のフットプリントより小さく、具体的には、低電圧Eモードトランジスタ109のフットプリントは、高電圧Dモードトランジスタ108のソース電極114より小さい。
【0049】
図10Aに示すハイブリッドデバイス107を製造する手順を
図11A〜
図11Fに示す。まず、
図11A〜
図11Eに示すように、高電圧Dモードトランジスタ108を形成する。
図11Aでは、基板130上にIII族窒化物層131、132を含むIII族窒化物材料構造が形成されている。層131、132の間の組成の違いの結果、III族窒化物材料構造内に2次元電子ガス(two-dimensional electron gas:2DEG)チャネル133が誘起されている。次に、デバイスのアクティブ領域140及び非アクティブ領域141が以下のようにして画定される。2DEGチャネル133を非アクティブ領域141から除去し、アクティブ領域に残すことによって非アクティブ領域141を処理する。このような処理は、
図11Aに示すように、領域134にイオンを注入する処理を含んでいてもよい。これに代えて、処理は、非アクティブ領域141内のIII族窒化物材料層131及び/又は132の一部又は全てをエッチングによって除去する処理を含んでいてもよい。例えば、2DEGチャネル133の深さより深くエッチングを行い、非アクティブ領域141内の2DEGチャネル133を含む材料を取り除いてもよい。
図11Bは、11Aの構造の平面図(上面図)である。
【0050】
次に、
図11Cに示すように、デバイスのアクティブ領域140内のIII族窒化物層上にソースフィンガ114’、ゲートフィンガ115’及びドレインフィンガ116’を形成する。ソースフィンガ114’及びドレインフィンガ116’は、それぞれ、2DEGチャネル133とオーミックコンタクトを形成し、ゲートフィンガ115’は、ゲートフィンガ115’の直下の2DEGチャネル133の荷電密度を変調する。
図11Dに示すように、デバイスアクティブ領域140の全体の上、及びオプションとして、非アクティブ領域141の全体の上に絶縁体層135を形成する。
図11Dでは、デバイスアクティブ領域の周辺、並びにソースフィンガ、ゲートフィンガ及びドレインフィンガは、破線によって表され、この破線は、絶縁体層135の下のそれらの位置を示している。次に、ソースフィンガ114’の部分の上の絶縁体層135の厚さ全体に亘ってビア143をエッチングし、ドレインフィンガ116’の部分の上の絶縁体層135の厚さ全体に亘って、ビア144をエッチングする。
図11Dには示していないが、ゲートフィンガ115’の上の絶縁体層135の厚さ全体に亘ってもビアを形成する。
【0051】
次に、
図11Eに示すように絶縁体層135上にソース電極114及びドレイン電極116をそれぞれ形成する。ソース電極114は、ビア143(
図11Dに示す)の上に形成され、これらのビアにおいてソースフィンガ114’(
図11C)に接触し、ドレイン電極116は、ビア144(
図11Dに示す)の上に形成され、これらのビアにおいてドレインフィンガ116’(
図11C)に接触し、これによって、Dモードトランジスタ108が完成する。また、図には示していないが、ゲート電極も絶縁体層135の上に形成され、ゲートフィンガ115’(
図11Cに示す)と接触する。
【0052】
そして、
図11Fに示すように、Eモードトランジスタ109をDモードトランジスタ108に接続することによってハイブリッドデバイス107が形成される。Eモードトランジスタ109は、Dモードトランジスタ108のソース電極114の直接上に配置され、Eモードトランジスタ109のドレイン電極は、Dモードトランジスタ108のソース電極114に直接的に接触する。
図11Fに示すように、Dモードトランジスタ108のアクティブデバイス領域140の直接上にEモードトランジスタ109の上部があり、Dモードトランジスタ108の非アクティブデバイス領域141の直接上にEモードトランジスタ109の下部がある。
図11Fには示していないが、Eモードトランジスタ109のソース電極111は、例えば、
図10Aに示したようなワイヤ接続によって、Dモードトランジスタ108のゲート電極115に接続される。
【0053】
図11E〜
図11Fには示していないが、非アクティブ領域141の上にソース電極114を拡張し、Eモードトランジスタ109の全体がDモードトランジスタ108の非アクティブデバイス領域141の上にあるようにしてもよい。これは、Dモードトランジスタ108のアクティブデバイス領域140の平均温度が非アクティブ領域141の平均温度より高いために、動作の間、Eモードトランジスタ109からより効果的に熱を消散させることができるという点で、望ましい場合がある。Eモードトランジスタ109の動作の間に発生した熱が十分に消散されない場合、Eモードトランジスタ109の温度が上昇し、効率の低下又はデバイスの動作不良が生じることがある。但し、Eモードトランジスタ109の少なくとも一部をアクティブデバイス領域140の上にすることによって、材料コストが削減され、デバイスの全体的なフットプリントが縮小される。
【0054】
Eモードトランジスタ109の少なくとも一部がDモードトランジスタ108のアクティブデバイス領域140の上にある構造において、動作の間にEモードトランジスタ109から熱を効率的に消散させるために、Eモードトランジスタ109とDモードトランジスタ108との間の熱抵抗をできるだけ小さくすることができる。これは、ソース電極114の下にある全てのビア143の面積の和である総面積を増加させ、ビアの総面積に対するソース電極114の総面積の比を可能な限り大きくすることによって実現できる。例えば、ビアの総面積は、ソース電極114の総面積の少なくとも10%とすることができる。
【0055】
ここで用いる「ハイブリッドエンハンスメントモード電子デバイス又は部品」又は単に「ハイブリッドデバイス又は部品」という用語は、デプリーションモードトランジスタ及びエンハンスメントモードトランジスタによって構成された電子デバイス又は部品を意味し、ここで、デプリーションモードトランジスタは、エンハンスメントモードトランジスタと比べてより高い動作電圧及び/又は降伏電圧を有し、ハイブリッドデバイス又は部品は、デプリーションモードトランジスタの降伏電圧及び/又は動作電圧と同じくらい高い降伏電圧及び/又は動作電圧で単一のエンハンスメントモードトランジスタと同様に動作するように構成される。すなわち、ハイブリッドエンハンスメントモードデバイス又は部品は、以下の特性を有する少なくとも3つのノードを含む。第1のノード(ソースノード)及び第2のノード(ゲートノード)が同じ電圧に保持されると、ハイブリッドエンハンスメントモードデバイス又は部品は、ソースノードに対して第3のノード(ドレインノード)に印加される正の高電圧(すなわち、エンハンスメントモードトランジスタが阻止できる最大電圧より大きい電圧)を阻止することができる。ゲートノードがソースノードに対して十分な正電圧(すなわち、エンハンスメントモードトランジスタの閾値電圧より高い電圧)に保持されると、ソースノードからドレインノードに電流が流れ、ソースノードに対してドレインノードに十分な正電圧が印加されると、ドレインノードからソースノードに電流が流れる。エンハンスメントモードトランジスタが低電圧デバイスであり、デプリーションモードトランジスタが高電圧デバイスである場合、ハイブリッド部品は、単一の高電圧のエンハンスメントモードトランジスタと同様に動作することができる。デプリーションモードトランジスタは、エンハンスメントモードトランジスタの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍又は少なくとも20倍の降伏電圧及び/又は最大動作電圧を有することができる。
【0056】
ここで言う高電圧トランジスタ等の「高電圧デバイス」とは、高電圧スイッチング用途に最適化された電子デバイスである。すなわち、トランジスタがオフになると、トランジスタは、約300V以上、約600V以上、約1200V以上又は約1700V以上といった高電圧を阻止でき、トランジスタがオンになると、トランジスタが使用される用途にとって十分低いオン抵抗(R
ON)を有し、すなわち、実質的な電流がデバイスを通過する際の導電損失が十分小さい。高電圧デバイスは、少なくとも高電圧源又はデバイスが使用されている回路の最大電圧に等しい電圧を阻止できる。高電圧デバイスは、300V、600V、1200V、1700V又は用途によって必要とされる他の適切な電圧を阻止してもよい。換言すれば、高電圧デバイスは、0Vから少なくともV
maxの間のあらゆる電圧を阻止でき、ここで、V
maxは、回路又は電源が供給できる最大電圧である。幾つかの具体例では、高電圧デバイスは、0Vから少なくとも2*V
maxの間のあらゆる電圧を阻止する。ここで言う低電圧トランジスタ等の「低電圧デバイス」とは、0VからV
low(V
lowは、V
maxより小さい。)の間の低電圧は阻止できるが、V
lowより高い電圧は阻止できない電子デバイスを意味する。幾つかの具体例では、V
lowは、約|V
th|、|V
th|より大、2*|V
th|、約3*|V
th|又は約|V
th|と3*|V
th|の間であり、ここで、|V
th|は、低電圧トランジスタが使用されているハイブリッド部品内に含まれている高電圧デプリーションモードトランジスタ等の高電圧トランジスタの閾値電圧の絶対値である。他の具体例では、V
lowは、約10V、約20V、約30V、約40V又は約5Vから50Vの間、例えば、約10Vから40Vの間である。更に他の具体例では、V
lowは、約0.5*V
max未満、約0.3*V
max未満、約0.1*V
max未満、約0.05*V
max未満又は約0.02*V
max未満である。
【0057】
高電圧スイッチングトランジスタが使用される典型的なパワースイッチング用途では、トランジスタは、大部分の状況下で2つの状態のうちの1つである。一般的に「オン状態」と呼ばれる第1の状態では、ソース電極に対するゲート電極の電圧は、トランジスタ閾値電圧より高く、トランジスタを介して実質的な電流が流れる。この状態では、ソースとドレインとの間の電位差は、一般的に低く、通常、数ボルトを超えず、例えば、約0.1〜5Vである。一般的に「オフ状態」と呼ばれる第2の状態では、ソース電極に対するゲート電極の電圧は、トランジスタ閾値電圧より低く、オフ状態漏れ電流を除いて、トランジスタを介して実質的な電流は流れない。この第2の状態では、ソースとドレインとの間の電圧は、0Vから、幾つかの場合、100V、300V、600V、1200V、1700V又はこれ以上の高さの回路高電圧源までの範囲内のどこかにあるが、トランジスタの降伏電圧より小さい。幾つかの応用例では、回路の誘導素子によって、ソースとドレインとの間の電圧が回路高電圧源よりも高くなることもある。更に、ゲートがオン又はオフに切換えられた直後の短時間、トランジスタが上述した2つの状態の間の遷移モードとなることがある。トランジスタがオフ状態にある場合、ソースとドレインとの間で「電圧が阻止されている」と表現される。ここで言う「電圧を阻止する」とは、トランジスタ、デバイス又は部品に亘って電圧が印加されたときに、有意の電流、例えば、通常のオン状態の導通の間の平均動作電流の0.001倍より大きい電流が、トランジスタ、デバイス又は部品を流れることを防ぐことができるトランジスタ、デバイス又は部品の能力を意味する。換言すれば、トランジスタ、デバイス又は部品が、印加されている電圧を阻止している間、トランジスタ、デバイス又は部品を流れる総電流は、通常のオン状態の導通の間の平均の0.001倍を超えない。
【0058】
幾つかの場合、ハーフブリッジのトランジスタ、例えば、
図7の121”〜123”等は、特定の回路用途のための大きな電流を十分に流す能力がないことがある。これらの場合、ハーフブリッジ121”〜123”を変更し、これらの高電圧側トランジスタ及び低電圧側トランジスタをそれぞれ並列に接続された2つのトランジスタに置き換えてもよい。このようなハーフブリッジ構成のためのレイアウトを
図12に示す。
図12のレイアウトは、並列に接続されたトランジスタ間の寄生インダクタンスを最小にするように最適化される。
【0059】
図12のハーフブリッジでは、高電圧側トランジスタ105’、105”は、並列に接続され、それぞれのソース及びドレインは、低電圧側トランジスタ106’、106”と同じように電気的に接続されている。トランジスタ105’、105”のソースは、コモンソースリードに接続され、トランジスタ105’、105”のゲートは、コモンゲートリードに接続されている。トランジスタ106’、106”のソースは、コモンソースリードに接続され、トランジスタ106’、106”のゲートは、コモンゲートリードに接続されている。トランジスタ105’/105”のソースリード88及びゲートリード87は、それぞれ第3のDBC基板126上にある。リード88、87を互いに電気的に分離し、及びDBC基板126の上側の金属層の残りの部分から分離するために、DBC基板126の上側の金属層を介してトレンチがエッチングされている。
図12に示すように一方のトレンチは、ソースリード88を囲み、他方のトレンチは、ゲートリード87を囲んでいる。DBC基板126は、DBC基板96’の直接上に取り付けられており、DBC基板96’の上側の金属層は、DBC基板126の下で連続している。DBC基板96’の上側の金属層を連続させることによって、トランジスタ105’、105”のソース間及びトランジスタ106’、106”のドレイン間の寄生インダクタンス低減させることができ、これによって、スイッチングの間の性能を向上させることができる。
【0060】
ここに説明した回路は、回路を不安定にさせ、又は回路部品に動作不良を引き起こすことなく、高いスイッチングレートでトランジスタを切換えることができるように設計される。例えば、トランジスタ105’/105”、106’/106”として、通常、高いスイッチングレートの能力を有するIII−N HEMT等のトランジスタを使用した場合、V
highを回路高電圧として、スイッチングの間に、何れかのトランジスタに印加される電圧が2×V
highを超えることなく、40V/ナノ秒より高い電圧スイッチングレートdV/dt及び5A/ナノ秒より高い電流スイッチングレートdI/dtを実現できる。幾つかの場合、スイッチングの間に、トランジスタに印加される電圧が2×V
high又は1.5×V
highを超えることなく、90V/ナノ秒より高い電圧スイッチングレートdV/dt及び10A/ナノ秒より高い電流スイッチングレートdI/dtが可能である。
【0061】
図13A及び
図13Bは、負荷(すなわち、インダクタ)電流を0Aから50Aに増加させるようにハーフブリッジの高電圧側デバイス(
図13A)及び低電圧側デバイス(
図13B)をスイッチングするためのスイッチングシーケンスの間のデバイスの電流特性及び電圧特性を示しており、ここで、ハーフブリッジパワーインバータは、520V高電圧源(すなわち、500Vより高い電圧を供給する電源)によって動作させた。ハーフブリッジは、トランジスタ105’/105”、106’/106”に代えて、
図10A〜
図10B又は
図11に示すようなハイブリッドスイッチングデバイスを使用している点を除いて、
図12と同様に設計されている。高電圧側デバイスは、高電圧源に接続されるデバイス、例えば、
図12のトランジスタ105’/105”を意味する。低電圧側デバイスは、DCグラウンドに接続されるデバイス、例えば、
図12の例示的デバイス106’/106”を意味する。トランジスタのスイッチング期間は、3ナノ秒に設定され、これは、5ナノ秒未満であり、より高い寄生インダクタンスを有する回路が要求する10ナノ秒のスイッチング期間に比べて、実質的に短い。このように、高電圧側デバイスが、50A以下、例えば、40〜50Aの電流を流すオン状態から高電圧の全てが高電圧側デバイスによって阻止されるオフ状態に切換えられる場合、高電圧側デバイスに印加される電圧は、回路高電圧の1.35である700Vを超えない。高電圧側デバイスで切換えられる電流が30A未満、例えば、20〜30Aである場合、高電圧側デバイスに印加される側の電圧は、回路高電圧の1.21倍である630Vを超えない。低電圧側デバイスが50A以下、例えば、40〜50Aの電流を流すオン状態から高電圧の全てが低電圧側デバイスによって阻止されるオフ状態に切換えられる場合、低電圧側デバイスに印加される電圧は、回路高電圧の1.35である700Vを超えない。低電圧側デバイスで切換えられる電流が30A未満、例えば、20〜30Aである場合、低電圧側デバイスに印加される側の電圧は、回路高電圧の1.17倍である610Vを超えない。高電圧側及び低電圧側のトランジスタに印加される高電圧源を超える電圧は、従来のパワーコンバータで生じる可能性がある電圧より低い。
【0062】
多くの具体例について説明した。但し、ここに説明した技術及びデバイスの思想及び範囲から逸脱することなく、様々な変形を行えることは明らかである。したがって、他の具体例も以下の特許請求の範囲に含まれる。