(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記添加剤分配装置が、燃料入口オリフィス(13)と、燃料出口オリフィス(14)と、添加剤分配オリフィス(17)と、前記燃料入口オリフィス(13)または前記燃料出口オリフィス(14)と前記添加剤分配オリフィス(17)との間の圧力差をもたらす手段(21、25)とを備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
前記ろ過要素(25)を前記燃料が横切り、前記ろ過要素(25)が、未ろ過燃料が循環する、前記燃料タンク(2)と前記ろ過要素(25)との間に位置する上流側(28)と、ろ過済み燃料が循環する、前記ろ過要素(25)と前記内燃機関との間に配置された下流側(29)との境界を定め、前記添加剤が前記上流側(28)から分散されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載のシステム。
前記ろ過要素(25)を前記燃料が横切り、前記ろ過要素(25)が、未ろ過燃料が循環する、前記燃料タンク(2)と前記ろ過要素(25)との間に位置する上流側(28)と、ろ過済み燃料が循環する、前記ろ過要素(25)と前記内燃機関との間に配置された下流側(29)との境界を定め、前記添加剤が前記下流側(29)から分散されることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載のシステム。
前記添加剤分配装置が、前記添加剤が、噴射系の下流かつ前記燃料タンク(2)に向かう、前記内燃機関の燃料戻りライン(6)内に拡散されるように位置していることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
前記添加剤分配装置が、一方で、前記燃料循環回路(1)に永久的に取り付けられるように意図されかつ前記燃料循環回路(1)内に添加剤を分配するチャネル(17)を備える拡散頭部(10)、他方で、前記ろ過要素(25)、前記添加剤タンク(12)および前記可動かつ漏れ止め壁(32)を備えるカートリッジ(11)を備え、前記カートリッジ(11)が、前記拡散頭部(10)に取外し可能に取り付けられていることを特徴とする、請求項11〜16のいずれか一項に記載のシステム。
前記添加剤が、希土類元素金属、および/または周期表の第IIA族、第IVA族、第VIIA族、第VIII族、第IB族、第IIB族、第IIIB族および第IVB族から選択された金属をベースとする、粒子フィルタの再生用の添加剤であることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシステム。
前記添加剤が、前記内燃機関における前記燃料の分配を促進し、かつ/または前記内燃機関の運転の性能を向上させ、かつ/または前記内燃機関の運転の安定性を向上させるのを可能にする添加剤であることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
コモンレールシステムを有し非常に高圧の燃料噴射を有するディーゼルエンジン、または直噴ガソリンエンジン等、新しいエンジン技術は、非常に有効であるが、燃料の品質に対して非常に影響されやすい。
【0003】
したがって、燃料の品質を向上させる添加剤、特にエンジンにおける燃料の分配を促進する添加剤、エンジンの運転の性能を向上させる添加剤、およびエンジンの動作の安定性を向上させる添加剤を含む燃料を使用することに利益がある。それらは、たとえば、洗浄剤、潤滑添加剤または腐食抑制剤である。
【0004】
しかしながら、入手可能な市販の燃料の品質は、常に、エンジンに十分な添加剤を含む燃料を供給するのを可能にするとは限らない。さらに、燃料は、国際的に、ある程度の厳しい規格を満たし、そのため品質が可変である。したがって、エンジンの最適な運転のために、燃料に存在する添加剤の濃度を調整することが有利である。
【0005】
さらに、車両、特にディーゼル車両に対する新しい排ガス規制基準を満たすために、車両には、粒子フィルタ(PF)タイプの汚染防止手段が装備されるようになっている。こうしたことは、欧州では、Euro 5基準が施行されたため、すでに起きている。大部分の場合、定期的にすすを焼却し、したがってPFを再生するのを促進するために、触媒が使用される。エンジンに供給する燃料によって担持される、PFを再生するための添加剤、または燃料添加触媒(Fuel Borne Catalyst)(FBC)を使用することが、触媒スートフィルタ(Catalysed Soot Filter)(CSF)として知られる競合技術より迅速にかつ低温でPFを再生することが可能であるため、多くの基準を満たすことが分かった。
【0006】
したがって、燃料に、PFの再生に役立つ添加剤、および/または燃料の品質および/またはエンジンの運転および/またはその耐久性を向上させる燃料添加剤を導入するのを可能にする装置を、車両に装備することが有利である。
【0007】
こうした添加剤、特に粒子フィルタの再生に役立つFBC触媒添加剤を燃料に導入するのを可能にするシステムがあることが知られている。これらのシステムは、一般に、最小容積が1リットル〜3リットルであり、添加剤供給源を含み、燃料タンクに近い場所に設置される必要がある、大型のタンクに基づく。
【0008】
次いで、添加剤の計量は、一般に、追加の電子中央処理装置(ECU)によって制御される高精度定量ポンプを使用して行われる。この計量装置は、燃料における添加剤含有量が、PFの優れた再生を可能にするために十分高いが、PF内に閉じ込められたままであるPF再生からの無機残留物によるPFの早期のファウリングをもたらすほど高くないことを確実にするために、非常に正確に管理される。
【0009】
従来、燃料の追加に続いてタンク内の燃料のレベルが増大すると、コンピュータが、燃料内の添加剤濃度を常に一定に維持するために、どれくらいの添加剤がタンク内に注入されるべきかをポンプに通知する。
【0010】
これらの装置(ポンプ/タンク)の集まりは、装置の誤動作を単純な方法で検出するいかなる手段も用意していない。「誤動作」という用語は、装置が添加剤を、その添加剤に必要な所望の量に反して、たとえば添加剤添加がこのパラメータの制御下にある場合に燃料の追加に続いて供給しないという事実を意味するものと理解することができる。「誤動作」という用語はまた、添加剤が添加される量が注入されるべき理論的な量と著しく異なっているという事実を意味するものとしても理解することができる。「誤動作」という用語はまた、添加剤が添加される量が、時間の経過により、理論的な量から(過剰にまたは不足して)逸脱する可能性があるという事実を意味するものとしても理解することができる。
【0011】
誤動作には、製造機器(ポンプ、ECU等)における故障または装置のアセンブリの不十分な接続または分岐等、複数の原因がある可能性がある。これらの場合、誤動作は、添加剤添加に対する最初の要求から現れる。それはまた、たとえば配管系のファウリングまたは閉塞、添加剤の変化または部品の摩耗に続く、経時的なドリフトである可能性もある。この場合、理論的な量に対する注入された量の差は、一般に、経時的に、急速にまたは徐々に変化する。装置の誤動作源である可能性がある他のあり得る原因も存在する。
【0012】
誤動作時、目下実施されている装置は、一般に、添加剤添加システムの障害を直接特定しない。車両のECUは、たとえばFBCの場合、特にPFの不十分な再生において汚染防止システムの障害を、障害の真の原因、すなわち不十分な添加剤添加または添加剤添加の欠如を特定することなく、検出する。
【0013】
さらに、検出は、欠陥のある添加剤添加の後のある程度長い期間の後に発生する可能性があり、通常、PFの再生に対して与えられる例では、誤動作は、PFの再生の後、したがって、通常、添加剤添加の500km〜700km超の後、すなわち数時間後に、実際にはさらにはPFの再生に対する何回かの要求の後にのみ、特定されることになる。
【0014】
この例では、この添加剤添加の故障では、PFの破壊等、深刻な結果となる可能性があり、適合状態に戻るために主なコストがかかることになる可能性がある。
【0015】
一方、過剰なFBC添加剤は、PFの再生中には検出されず、それは、PFは、容易に再生されるためである。PFが、FBCから発生する過剰な灰によって早期に遮断される場合、車両が数万キロメートル走行した後にのみ、欠陥は明らかとなる。
【0016】
他の燃料添加剤の場合も同じであり、この場合、他の多くのパラメータがエンジンの運転に影響を与える可能性があるため、検出にはさらに問題がある。それにも関らず、たとえば高圧ポンプまたは高圧噴射装置に対する損傷に関する結果は、これらの構成要素を交換しなければならない場合、依然として非常に重大でありかつ費用がかかる。
【0017】
したがって、車両の添加剤添加システムの故障を迅速に検出することができることが必要であり、「迅速に」という用語は、添加剤を添加する命令および/または添加剤添加の終了に続き、1時間以内、実際にはさらには数分以内で障害を確定することができるという事実を意味するものと理解される。
【0018】
したがって、誤動作は、注入なしに対応するか、または注入された量と理論的に注入される量との差に対応するかを判断することも有利である。これにより、障害を診断する中央システム(車載診断(On Board Diagnostic)(OBD))に故障を即座に通知し、注入システムが関与していることを特定することにより、障害の原因を診断するのに役立ち、たとえば車両の縮小された使用モードのみを可能にする(たとえば出力の制限)により、車両またはいくつかの構成要素を保護するためにとられるべきあり得る迅速な作用を定義することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の方法は、燃料が、その添加剤の含有量の変動を測定する目的で分析される第1段階を含む。
【0026】
後に分かるように、分析は、燃料における添加剤の含有量の直接測定ではなく間接的測定に、すなわち、この含有量に相関する燃料の特性またはパラメータ、たとえば燃料の吸光度の測定に基づくことができる。
【0027】
本発明の特定の実施形態によれば、燃料における添加剤の含有量の変動の測定を、添加剤添加の後に燃料の分析によって得られる値から、添加剤添加の前に燃料の分析によって得られる値を現在することによって、行うことができる。
【0028】
第2段階では、先行する段階で行われた測定の結果が理論的な値と比較され、測定された値と理論的な値との間のあり得る差が論証される。こうした差が検出される場合、かつこの差が事前に決められた値を超える場合、本発明の方法は、データを送信する段階を含む。
【0029】
この一定値は、超えると誤動作していると考えられる値であり、当業者が確定することができ、すなわち、それは特に、使用される添加剤のタイプ、選択された検出装置の感度、車両および/またはエンジンのタイプ、エンジン技術のタイプ、車両によって使用される燃料のタイプ、特に車両が使用される地理的場所における現行の基準、汚染防止技術、特にPFのタイプ等によって決まる。
【0030】
この値に対応する差が測定されると、データ、たとえば警告信号を、車両の1つまたは複数の構成要素に、特に、
− 添加剤注入装置に、特にこれが注入される量を自動的に再調整することができる場合、
− 車両のECUシステムに、
− 車両の故障を診断する中央システムに
送信することができる。
【0031】
本方法を、定義された頻度で、かつ/または事象に応じて適用することができる。好ましい実施形態によれば、この方法は、添加剤の各添加の後に、添加剤添加の前に燃料の分析を注意深く行って、適用される。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、この方法は、車両に対する燃料の各添加の後に適用される。
【0033】
本方法を、連続的に行うことも可能である。
【0034】
燃料における添加剤の存在、量および/またはこの量の変動を検出するのを可能にするあらゆる分析技法も使用することができる。この技法の選択は、添加剤および燃料によって決まる。
【0035】
本発明の方法は、特に、燃料としてガソリンまたはディーゼルを使用するエンジンを有する車両に適用されることが留意されるべきである。
【0036】
さらに、車両は、現場機器等の路上外走行車両、または自動車等の路上走行車両であり得る。
【0037】
本発明の方法を、より具体的には、添加剤がFBCタイプの粒子フィルタの再生用の添加剤である場合に使用することができる。
【0038】
ここで、本発明の方法を実施するシステムについて説明する。
【0039】
上述したように、このシステムは、車両のエンジンの燃料循環回路における添加剤分配装置と、燃料における添加剤の含有量を測定するための燃料用の分析装置と、前記分析装置によって取得される燃料の分析の結果に応じてデータを送信する手段とを備えている。
【0040】
分析装置を、添加剤添加された燃料が循環する回路のあらゆる箇所に、特に燃料タンク内、ゲージ/ポンプモジュール内、1つまたは複数の燃料フィルタ内、エンジンに燃料を供給する回路および/または燃料をタンクに戻す回路内に、配置することができる。この装置を、特に、添加剤を燃料に注入する場所に近接して配置することができる。
【0041】
特定の実施形態によれば、燃料分析装置は、分光装置である。
【0042】
より具体的には、それは、燃料における添加剤の検出および添加剤の量の測定が、赤外線技術、すなわち近赤外線(通常、780nm〜1400nm)、中赤外線(通常、1400nm〜3000nm)、実際にはさらには遠赤外線(通常、3000nm〜1000000nm)、可視光(通常、780nm〜380nm)、近紫外線(380nm〜200nm)または極紫外線(200nm〜100nm)を使用する分光法に基づく。好ましくは、190nm〜2500nmの波長範囲で、近赤外線(すなわちNIR)、可視光または近紫外線分光法が使用される。これは、これらのタイプの分光法が、燃料の分析によく適しており、それらを、燃料の組成の変化に対して高感度の分析方法に採用することができるためである。
【0043】
このタイプの装置は、概して、
− 選択された波長範囲をカバーする光ビームを生成するために構成された照明装置と、
− 照明装置からもたらされる光ビームが、分析される燃料と相互作用するために構成されたプローブと、
− 分析される燃料と相互作用した後に光ビームを受け取るために、かつ異なる波長範囲に対して受け取られた光の量に応じて測定値を提供するために構成されたスペクトル解析装置と、
を備えている。
【0044】
好ましい実施形態によれば、解析装置は、所定の波長、すなわち添加剤のタイプおよび燃料のタイプ(特にガソリンまたはディーゼル)の観点から選択された波長で動作し、添加剤が添加された燃料と添加剤が添加されていない燃料との信号の最大差を生成するのを可能にするために設計されている。
【0045】
こうした装置は、たとえば、国際公開第2009/047605号パンフレット、同第2009/047607号パンフレットまたは同第2009/047608号パンフレットに記載されている。
【0046】
これらの技術により、以下のタイプ、すなわち分散回折格子、フーリエ変換、発光ダイオード等の非可動部品分光計使用が可能になる。それらを小型化することも可能であり、発光系および検出系を、光ファイバを介して互いに接続することができる。したがって、これらの技術を、エンジンまたは車両に容易に組み込むことができる。それらはまた、頑強かつ安価である。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、燃料の添加剤添加および診断システムは、所定の添加剤の分配装置を備えている。
【0048】
この実施形態によれば、添加剤分配装置は、
− 添加剤を収容するタンクと、
− 燃料循環回路と連通し、添加剤を収容するタンクが内部に挿入されるチャンバであって、前記チャンバと前記タンクとの間の少なくとも1つの可動かつ漏れ止め壁が、一方では漏れ止め分離を提供し、他方ではタンク内の添加剤とチャンバ内の燃料との間で同じ圧力を維持する、チャンバと、
− タンクにかつ燃料循環回路に接続され、燃料循環回路に添加剤を分配するのを可能にする、添加剤を注入する手段であって、タンクと燃料循環回路とを接続する分配チャネルを備える手段と、
を備えている。
【0049】
本発明による添加剤分配装置の1つの特徴によれば、添加剤タンクは、可撓性バッグの形態で提供され、前記可撓性バッグが可動かつ漏れ止め壁を構成している。
【0050】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、可動かつ漏れ止め壁は、膜から構成されている。
【0051】
本発明による添加剤分配装置のさらに別の特徴によれば、可動かつ漏れ止め壁は、ピストンから構成されている。
【0052】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、本装置は、燃料入口オリフィスと、燃料出口オリフィスと、添加剤分配オリフィスと、燃料入口オリフィスまたは燃料出口オリフィスと添加剤分配オリフィスとの間の圧力差をもたらす手段とを備えている。
【0053】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、圧力差をもたらす手段は、ダイアフラムまたはベンチュリの形態で提供されている。
【0054】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、圧力差をもたらす手段は、ろ過要素の形態で提供されている。
【0055】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、本装置は、添加剤を分配するチャネルと、添加剤を分配するチャネルを全体的にまたは部分的に封止する手段を備えている。
【0056】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、添加剤を分配するチャネルを封止する手段は、電気機械的手段である。
【0057】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、添加剤分配手段は、少なくとも1つのろ過要素を備える燃料のろ過装置を備えている。
【0058】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、ろ過要素は、形状が環状であり、添加剤タンクは、前記ろ過要素の内側に同心状に配置されている。
【0059】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、ろ過要素は、形状が環状であり、添加剤タンクは、ろ過要素の外側に同心状に配置されている。
【0060】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、ろ過要素および添加剤タンクは軸方向に重なっている。
【0061】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、ろ過要素を燃料が横切り、ろ過要素は、未ろ過燃料が循環する、燃料タンクとろ過要素との間に位置する上流側と、ろ過済み燃料が循環する、ろ過要素と内燃機関との間に配置された下流側との境界を定め、添加剤は上流側から分散される。
【0062】
本発明による添加剤分配装置の別の特徴によれば、ろ過要素を燃料が横切り、ろ過要素は、未ろ過燃料が循環する、燃料タンクとろ過要素との間に位置する上流側と、ろ過済み燃料が循環する、ろ過要素と内燃機関との間に配置された下流側との境界を定め、添加剤は下流側から分散される。
【0063】
本発明の別の特徴によれば、添加剤は、噴射系の下流かつ燃料タンクに向かう、内燃機関の燃料戻りライン内に拡散される。
【0064】
本発明の別の特徴によれば、可動壁は、添加剤タンクと上流側との間に配置されている。
【0065】
本発明の別の特徴によれば、可動壁は、添加剤タンクと下流側との間に配置されている。
【0066】
本発明はまた、添加剤添加および診断システムであって、液体添加剤分配装置が、分配チャネルによって燃料循環回路内に添加剤を拡散させるのを可能にする液体添加剤タンクと、燃料循環回路と連通する添加剤チャンバと、一方で漏れ止め分離を提供し、他方で添加剤タンク内の添加剤と添加剤チャンバ内の燃料との間で同じ圧力を維持する、前記添加剤チャンバと前記添加剤タンクとの間の少なくとも1つの可動かつ漏れ止め壁と、少なくとも1つのろ過要素とを備え、分散装置は、燃料循環回路に永久的に取り付けられるように意図されかつ燃料循環回路内に添加剤を分配するチャネルを備える拡散頭部、他方で、ろ過要素、添加剤タンクおよび可動かつ漏れ止め壁を備えるカートリッジを備え、前記カートリッジが、拡散頭部に取外し可能に取り付けられていることを特徴とする、システムに関する。
【0067】
本発明の分配装置の1つの利点は、新たなエンジンの設計中にかつ既存のエンジンに添加剤拡散器を組み込むことを可能にするという事実にある。
【0068】
本発明の別の利点は、定義された量の添加剤を正確に拡散することができる可能性にある。
【0069】
本発明の別の利点は、複数のタイプの添加剤を、それらの組成を問わずかつ/またはそれらの物理化学的特性を問わず拡散させることができるという可能性にある。
【0070】
本発明の別の利点は、添加剤分配装置が小型であることにある。
【0071】
ここで、燃料添加剤添加および診断システム、特に上述した好ましい実施形態に対応するシステムについて、添付の図を参照してより詳細に説明する。
【0072】
図1は、内燃機関用の燃料循環回路1を概略的に表す。従来、燃料循環回路1は、燃料タンク2と高圧有孔分配管4(コモンレールとしても知られる)との間に配置され、タンクと高圧有孔分配管との間の燃料の循環を提供する。供給回路は、燃料をろ過するように意図されたフィルタ9と高圧ポンプ7とを備えている。高圧ポンプ7および高圧有孔分配管4は、燃料噴射系を構成している。「供給ライン」としても知られる第1管5は、タンク2から高圧有孔分配管4に向かう燃料の循環を提供し、「戻りライン」としても知られる第2管6は、噴射系からタンク2に向かう燃料の循環を提供する。したがって、燃料は、タンク2内に圧送され、その後、フィルタ9でろ過され、圧力下でポンプ7を介して高圧有孔分配管4内に送出され、その後、一部がエンジンの噴射装置3に向けられ、別の部分が、戻りライン6によってタンク2に戻される。燃料の一部を、高圧ポンプ7から戻りライン6に向かって送ることも可能である。燃料循環回路1はまた、本発明による液体添加剤分配装置8も備えており、その動作については後に説明する。例としてかつ暗示的な限定なしに、添加剤分配装置8は、供給ライン5にあるように表されているが、後に説明するように、前記添加剤分配装置8を、燃料戻りライン6に配置することも可能である。
【0073】
代替形態では、
図2に表すように、添加剤分配装置8を、燃料タンク2内に配置することも可能である。
【0074】
この実施形態では、燃料循環回路1は、燃料タンク2の内側とエンジンとの間の燃料の循環と、任意選択的にタンク2に向かう燃料の戻りとを提供する。したがって、分配装置8を支持する燃料循環回路1の部分は、燃料タンク2内側に延在している。
【0075】
図3は、添加剤分配装置の第1実施形態を断面図で表す。この実施の例では、添加剤分配装置8は、頭部10と、液体添加剤タンク12が配置される添加剤チャンバ22を形成する交換可能カートリッジ11とを備えている。頭部10は、燃料入口オリフィス13と、燃料用の出口オリフィス14と、燃料用の入口オリフィスと出口オリフィスとの間に位置するベンチュリ21と、燃料用の入口オリフィスと交換可能カートリッジ11内部の添加剤チャンバ22との間の燃料の通路を提供する管18と、添加剤をベンチュリ21内に拡散させるためのタンク12からオリフィス17に向かう液体添加剤の通路を提供する添加剤分配チャネル16とを備えている。この実施の例では、添加剤分配チャネル16は、第1部分16aとそれより断面が小さい第2部分16bとを示している。指部20とコイル23とから構成されたアクチュエータ15が、添加剤分配チャネルの部分16aと部分16bとの間の通路を封止するのを可能にする。この実施の例において(
図4から
図8においても)、添加剤タンク12は、添加剤チャンバ22内に存在する燃料とタンク12の内部の添加剤との間の可動かつ漏れ止め壁を構成する可撓性バッグ32の形態で提供される。
【0077】
添加剤分配装置8は、燃料供給ラインにまたは燃料戻りラインに接続される。したがって、燃料は、燃料用の入口オリフィス13と出口オリフィス14との間で連続的に循環する。
【0078】
圧力差をもたらす既知の手段を構成するベンチュリ21は、添加剤分配オリフィス17と燃料入口オリフィス13との間に低圧をもたらす。
【0079】
管18を介して燃料入口オリフィス13と連通する添加剤チャンバ22は、燃料入口オリフィス13において循環する燃料と同じ圧力で燃料が充填され、添加剤タンクの可動かつ漏れ止め壁を構成する可撓性バッグ32は、添加剤タンク12内の添加剤とチャンバ22内の燃料との間で同じ圧力を維持する。
【0080】
したがって、添加剤タンク12内の圧力は、添加剤拡散オリフィス17において主流である圧力より大きく、それにより、強制的に、添加剤は、タンク12から添加剤拡散オリフィス17に向かって移動し、その後、ベンチュリ21内で循環している燃料内に、したがって燃料循環回路内に拡散する。アクチュエータ15により、添加剤の循環が完全にまたは部分的に阻止することが可能になる。
【0081】
この実施の例では、アクチュエータ15は、添加剤分配チャネルを完全にまたは部分的に封止する電気機械的手段を例示している。しかしながら、こうした手段の使用は任意選択的であり、本発明を、明らかに、添加剤分配チャネルを封止することなく、または添加剤分配チャネルを封止する他の手段、たとえばサーマルバルブ、「アンブレラ」バルブ、逆止めバルブまたは液圧制御バルブを使用して、実施することができる。
【0082】
図4〜
図11は、少なくとも1つのろ過要素を備える本発明による添加剤分配装置を示す。
【0083】
図4は、本発明の第1代替実施形態を示す。この代替実施形態では、頭部10は、
図3に表すものと同じであり、添加剤タンク12はまた可撓性バッグ32によって構成されている。カートリッジ11は漏れ止め壁30を備え、それは、カートリッジの複数の壁と相互作用して、一方では、液体添加剤タンク12が配置される添加剤チャンバ22、他方では、ろ過要素25が配置されるろ過チャンバ24の境界を定めている。したがって、添加剤タンク12およびろ過要素25は、横に並んで配置されているが、漏れ止め壁30によって分離されている。ろ過要素25は環状形状であり、それを燃料が横切る。ろ過要素25は、ろ過チャンバ24内で、一方では、未ろ過燃料が循環する、燃料タンク2(この図には示さず)とろ過要素25との間に位置する未ろ過燃料の領域、すなわち「上流側28」と、ろ過済み燃料が循環する、ろ過要素25と燃焼機関(この図には示さず)との間に配置されたろ過済み燃料の領域、すなわち「下流側29」との境界を定めている。こうした実施形態では、有利には、燃料のろ過および液体添加剤の分配の機能を独立して提供することが可能になる。したがって、燃料フィルタは供給ライン5に接続され、添加剤分配を、供給ライン5および戻りライン6の両方で行うことができる。
【0084】
図5は、本発明の第2代替実施形態を示す。この代替実施形態では、添加剤タンク12およびろ過要素25は、横に並べて配置され、壁30によって分離されているが、連通チャネル18により、燃料が、ろ過要素の下流側29と液体添加剤タンク12が配置される添加剤チャンバ22との間を直接循環することが可能になる。頭部10の燃料入口オリフィス13は、ろ過要素の下流側29に直接接続されている。添加剤拡散オリフィス17は、燃料供給ラインにおいて、ろ過要素の下流側29と内燃機関(図示せず)との間に配置されている。したがって、可動壁32は、添加剤タンク12とろ過要素の下流側29との間に配置され、添加剤は、ろ過要素の下流側29において拡散される。
【0085】
図6は、本発明の別の代替実施形態を示す。この代替実施形態では、添加剤タンク12およびろ過要素25は、カートリッジ11内で軸方向に重なっており、連通チャネルが、燃料がろ過要素の上流側と液体添加剤タンク12が配置される添加剤チャンバ22との間で循環するのを可能にする。添加剤タンク12は、導管31によって添加剤分配チャネル16に接続されており、導管31の上端は、添加剤分配チャネル16の第1部16aの下端と相互作用する。導管31は、ここでは、環状ろ過要素25と同軸であり、漏れ止め式に環状ろ過要素25の中心を貫通している。この実施の例では、導管31は添加剤タンク12と一体化している。添加剤拡散オリフィス17は、燃料供給ラインにおいてろ過要素の上流側28と燃料タンク(図示せず)との間に配置されている。したがって、可動壁32は、添加剤タンク12とろ過要素の上流側28との間に配置され、添加剤は、ろ過要素の上流側28において拡散される。
【0086】
図7は、本発明のさらに別の代替実施形態を示す。この代替実施形態では、ろ過要素25は形状が環状であり、添加剤タンク12は、前記ろ過要素25の内部で同心状に配置されている。燃料は、この例では、ろ過要素25の外側から内側に向かって迅速に循環し、添加剤拡散オリフィス17は、燃料供給ラインにおいてろ過要素の下流側29と内燃機関(図示せず)との間に配置されている。したがって、可動壁32は、添加剤タンク12とろ過要素の下流側29との間に配置され、添加剤は、ろ過要素の下流側29において拡散される。
【0087】
図8は、本発明の別の代替実施形態を示す。この代替実施形態では、添加剤タンク12およびろ過要素25は、軸方向に重なり、壁によって分離されているが、連通チャネル18が、燃料がろ過要素25の上流側28と液体添加剤タンク12が配置される添加剤チャンバ22との間を循環するのを可能にする。添加剤拡散オリフィス17は、供給ラインにおいて、ろ過要素の下流側29と内燃機関(図示せず)との間に配置されている。したがって、可動壁32は、添加剤タンク12とろ過要素25の上流側28との間に配置されており、添加剤は、ろ過要素の下流側29において拡散される。この実施形態では、圧力差をもたらす手段は、ろ過要素25によって形成されている。
【0088】
図9は、可動かつ漏れ止め壁が膜33によって形成される、
図8に示す装置の代替形態である。
【0089】
図10は、可動かつ漏れ止め壁がピストン34によって形成される、
図8に示す装置の代替形態である。
【0090】
これらの実施形態は、例示として述べられており、決して限定するものではない。本発明は、他の代替形態で実施することができる。たとえば、圧力差をもたらす手段を、ダイアフラムの形態で提供することができ、または添加剤タンクを、ろ過要素の外側に同心状に配置することができる。
【0091】
図11は、本発明のさらに別の代替実施形態を示す。この代替実施形態では、添加剤は、噴射系の下流にかつ燃料タンク2(図示せず)に向かって、内燃機関の燃料戻りライン6内に拡散される。このように示される液体添加剤分配装置は、一方では、燃料循環回路に永久的に取り付けられるように意図されかつ添加剤を燃料回路内に分配するチャネル16を備える拡散頭部10、他方では、ろ過要素25、添加剤タンク12および可動かつ漏れ止め壁32を備えるカートリッジ11を備えており、前記カートリッジ11は、拡散頭部10に取外し可能に取り付けられている。この実施の例では、添加剤が添加剤タンク12から分配チャネル16に向かって循環するのを可能にする導管31は、頭部10と一体化しており、カートリッジ11が頭部10と一体となった時に可撓性バッグ32を貫通するために傾斜端を備えている。
【0092】
図に示す実施の例は、暗に示すためのものであり決して限定するものではない。当業者は、本発明が、本明細書には表されていないが上述したいくつかの実施形態の組合せからまたは1つの図の1つまたは複数の特徴を別の図の特徴と置き換えることからもたらされる実施形態にも関連することを理解するであろう。
【0093】
本発明による分配装置によって使用することができる種々の添加剤について、この観点からより詳細に説明するが、これらの添加剤は、本明細書に関連する技術分野において周知である。
【0094】
これらの添加剤を、2つのカテゴリに分類することができ、すなわち、一方は、粒子フィルタの再生に役立つ触媒機能を有する添加剤であり、他方は、エンジンの燃料の分配を促進する添加剤、エンジンの運転の性能を向上させる添加剤、またはエンジンの運転の安定性を向上させる添加剤等、触媒機能以外の機能を有する添加剤である。
【0095】
使用される添加剤は、概して液体形態で提供され、液体あるいは液体の混合物、液体ベースのコロイド懸濁液、またはゲル形態(ゲルの粘度により添加剤が流れることができる)から構成され得る。
【0096】
しかしながら、必要な量の添加剤を燃料内に放出するために徐々に溶解するかまたは解凝集する(deagglomerate)固体添加剤を使用することも可能である。
【0097】
再生に役立つ添加剤
これらの添加剤は、概して20℃〜45℃の動作温度範囲では理想的には液体であるが、ゲルまたは固体等、別の物理的形態でもあり得る。
【0098】
これらの添加剤は、すすの燃焼に触媒作用を及ぼすのに有効なあらゆるタイプの触媒、特に白金、ストロンチウム、ナトリウム、マンガン、セリウム、鉄および/またはそれらの組合せを含むことができる。
【0099】
燃料に必要な添加剤の量は、概して、少なくともおよそ1ppm、最大およそ100ppmであり、この量は、燃料の重量に対する添加剤金属元素の量によって表される。
【0100】
これらの添加剤を、燃料に溶けるかまたは分散する有機金属塩または有機金属塩の混合物で提供することができる。これらの塩は、少なくとも金属成分と、概して酸を起源とする錯体形成する有機成分とを含み、この組合せが溶剤において懸濁していることを特徴とする。
【0101】
FBC添加剤を、燃料に溶けるかまたは分散する有機金属錯体または有機金属錯体の混合物の形態で提供することができる。これらの錯体は、少なくとも金属成分と少なくとも2つの錯体形成する有機成分とを含むことを特徴とする。こうした生成物は、たとえば独国特許第2254610号明細書に記載されている。
【0102】
同様に、FBC添加剤を、たとえば非晶質または結晶質金属酸化物またはオキシ水酸化物のナノ粒子のコロイド分散体または懸濁液の形態で提供することも可能である。
【0103】
「コロイド分散体」という表現は、本明細書では、液相中に懸濁した、添加剤をベースとするコロイド次元の微細な固体粒子からなる系を示し、前記粒子は、さらに、たとえば硝酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、アンモニウムまたは塩化物等、残留量の結合イオンまたは吸収イオンを任意選択的に含むことができる。「コロイド次元」という用語は、およそ1nm〜およそ500nmの寸法を意味するものと理解される。これらの粒子は、より詳細には、最大100nm、より詳細にはさらに最大20nmの平均サイズを示す。
【0104】
コロイド分散形態でのFBC添加剤の場合、粒子は、希土類元素金属、および/または周期表の第IIA族、第IVA族、第VIIA族、第VIII族、第IB族、第IIB族、第IIIB族および第IVB族から選択された金属をベースとすることができる。
【0105】
「希土類元素金属」という用語は、イットリウムと周期表の57番と71番との間(それらも含む)の原子番号の元素とからなる群の元素を意味するものと理解される。
【0106】
参照する元素の周期表は、Supplement to the Bulletin de la Societe Chimique de France,No.1(1966年1月)で発行されたものである。
【0107】
コロイド分散体の形態で使用することができるこれらの添加剤に対して、希土類元素金属を、より詳細には、セリウム、ランタン、イットリウム、ネオジウム、ガドリニウムおよびプラセオジウムから選択することができる。特に、セリウムを選択することができる。金属を、ジルコニウム、鉄、銅、ガリウム、パラジウムおよびマンガンから選択することができる。特に、鉄を選択することができる。鉄は、非晶質化合物または結晶化合物の形態であり得る。
【0108】
より詳細には、セリウムおよび鉄の組合せをベースとするコロイド分散体も言及することができる。
【0109】
コロイド分散体は、より詳細には、
− 有機相、
− 有機相中に懸濁した、上述したタイプ(特に、希土類元素金属および/または第IIA族、第IVA族、第VIIA族、第VIII族、第IB族、第IIB族、第IIIB族および第IVB族から選択された金属)の添加剤の粒子、
− 少なくとも1つの両親媒性物質
を含むことができる。
【0110】
これらのコロイド分散体は、特に、鉄または鉄化合物をベースとする添加剤を含むことができる。
【0111】
コロイド分散体を、特に以下の特許出願に記載されている種々の実施形態に従って提供することができる。すなわち、欧州特許第671 205号明細書、国際公開第97/19022号パンフレット、同第01/10545号パンフレット、同第03/053560号パンフレット、同第2008/116550号パンフレットである。
【0112】
他の添加剤
FBCとは異なり触媒機能以外の機能を有する他のタイプの既知の添加剤もまた、循環回路に注入することができる。これらの添加剤により、エンジンにおける燃料の分配を促進することができかつ/またはエンジンの運転の性能を向上させることができかつ/またはエンジンの運転の安定性を向上させることもできる。
【0113】
エンジンにおける燃料の分配を促進する添加剤としては、たとえば、有機シリコーン等の発泡防止剤と、低分子量のアルコールまたはグリコール等の凍結防止添加剤が挙げられる。
【0114】
他の添加剤は、冷間条件下でのエンジンの運転を促進する添加剤である。燃料が濁るかまたは固化する温度を低下させるポリマー添加剤、流体における乱流を低減し流量を20%〜40%増大させることができる、高分子量のポリマー等、流れを促進する添加剤を言及することができる。
【0115】
腐食防止剤もまた使用することができる。
【0116】
セタン価向上剤、オクタン化向上剤、煙抑制剤、FM(摩擦調整剤(Friction Modifier))添加剤として知られる摩擦による損失を低減する添加剤、または「極圧」添加剤等、エンジンの運転性能を向上させる添加剤もまた使用することができる。
【0117】
噴射装置におけるいかなる沈殿物も制限するように意図された洗浄添加剤も使用することができる。これは、燃料が、特に高圧燃料噴射装置において特に噴射装置の穴において、燃料回路に沈殿物を形成する可能性があるためである。沈殿物の形成の程度は、エンジンの設計、特に噴射装置の特性、燃料の組成、エンジンを潤滑するために使用される油の組成によって変化する。さらに、これらの洗浄剤は、たとえば燃料分配システムの汚染から発生する可能性があるか、または脂肪酸エステルの合成プロセスから発生する化合物の痕跡でもある可能性がある、ZnまたはCu等、燃料における金属化合物の存在の悪影響を低減するのにも有効である。
【0118】
過剰な沈殿物は、たとえば、噴射装置からもたらされる燃料の噴流の空気力学を変更する可能性があり、それがさらに、空気/燃料混合を妨げる可能性がある。場合によっては、これにより、過剰な燃料が消費され、エンジンの出力が損失し、汚染物質の放出が増大することになる。
【0119】
洗浄添加剤は、すでに形成された沈殿物を溶解し、新たな沈殿物の形成を防止するために、沈殿物前駆物質の形成を低減するという際立った特徴を示す。洗浄添加剤の例は、たとえば国際公開第2010/150040号パンフレットに記載されている。
【0120】
特に高圧ポンプおよび噴射装置の摩耗または焼付きを防止するために、潤滑力を向上させる添加剤も使用することができ、燃料の潤滑力自体は並みである。それら潤滑剤は、金属表面に保護膜を形成するために金属表面によって吸引される極性基を含む。
【0121】
エンジンの動作安定性を向上させる添加剤を想定することができる。これは、燃料の不安定性により、噴射装置のファウリング、燃料フィルタの閉塞、ならびにポンプおよび噴射系のファウリングに関与するガムが形成されることになるためである。
【0122】
以下の添加剤も使用することができる。
− 酸化防止剤タイプの添加剤、
− 安定剤、
− 所定の金属の触媒効果を中和することを目的とする金属不活性剤、
− 形成された粒子を分散させ極めて大きい粒子の凝集を防止することを目的とする分散剤。
【0123】
特定の実施形態によれば、添加剤は、洗浄添加剤と潤滑添加剤と、任意選択的に腐食抑制剤の組合せである。
【0124】
PFを装備する車両の場合、FBCタイプの添加剤に、特許出願、国際公開第2010/150040号に記載されているような洗浄剤タイプの少なくとも1つの燃料性能添加剤を組み合わせることが有利となる。
【0125】
PFを装備する車両の場合、特に、車両が、燃料の品質が可変かつ/または並みである地理的場所で販売される場合、FBCタイプの添加剤にいくつかの燃料性能添加剤を組み合わせることも有利となる。
【0126】
PFを装備していない車両の場合、1つまたは複数の洗浄剤を潤滑添加剤および腐食抑制剤と組み合わせるもの等、種々のタイプの添加剤の組合せを想定することができる。
【実施例】
【0128】
実施例1
この実施例では、ディーゼル燃料におけるFBCタイプの添加剤の存在を検出するために固定波数(500nm)の可視分光法を使用する装置の採用について説明する。この例で使用するFBC添加剤は、特許出願、国際公開WO2010/150040号パンフレットの実施例3の分散体C等、鉄をベースとする粒子のコロイド懸濁液から構成される。この触媒コロイド懸濁液は、通常、シリンダ容量が2lであるEuro 5エンジンを装備した車両等、所定の車両のPFを再生するために、燃料における鉄(金属)が7ppm重量である鉄濃度で燃料に添加剤を添加することを可能にする、濃度範囲で使用される。
【0129】
この実施例では、4つの異なる燃料を試験した。
− 欧州規格EN590に対応する市販のディーゼル燃料、
− 90%のEN590ディーゼル燃料と、10%の規格EN14214に対応する脂肪酸メチルエステル(FAME)をベースとするバイオディーゼルとを含むディーゼルバイオ燃料B10、
− 70%のEN590ディーゼル燃料と、30%の規格EN14214に対応する脂肪酸メチルエステル(FAME)をベースとするバイオディーゼルとを含むディーゼルバイオ燃料B30、
− 石油会社TotalのNATO RF63燃料に対応する灯油留分燃料。
【0130】
これらの燃料に、厳密な量のFBC添加剤を添加し、5ppm重量、6ppm重量または10ppm重量に対応する燃料のFBC含有量をもたらした。
【0131】
添加剤添加の前および後の各燃料を、500nmの波長の分光計によって分析し、燃料による光の吸光度を記録する。これらの吸光度を以下の表1に示す。
【0132】
添加剤のない燃料は、吸光度が0.042〜0.141で変化する可能性があることが分かる。それらの場合の各々において、非常にわずかな量であっても、FBC添加剤の添加により、吸光度が増大し(A2、A3またはA4)、増大は、添加されたFBCの量が増大するにしたがって比例して増大する。これは、実際に、添加剤添加の前および後の500nmでの燃料の吸光度の比較により、添加剤添加があった(増大する)かまたはなかった(増大しない)かを検出することが可能になることを示す。
【0133】
表はまた、添加剤が添加された燃料と添加剤が添加されていない燃料との吸光度の差は、一定の添加剤の含有量の場合、いずれの燃料であっても同じであることも示す。すなわち、典型的には、5ppmの鉄に対して0.015〜0.016および10ppmの鉄に対して0.031〜0.035であり、6ppmの鉄によって中間の相対的な吸光度(0.023)がもたらされる。この差は、燃料における添加剤の含有量に比例する。したがって、吸光度の差の値により、添加剤添加の過剰(または不足)を検出することが明らかに可能である。これは、この装置によってシステムのドリフトを検出することができることを示す。
【0134】
【0135】
実施例2
この実施例は、実施例1のものと同じ液体添加剤の、
図3で説明したような装置と、燃料タンクにおいて測定を行う分光計と、燃料回路の戻りラインに添加剤を注入する分配装置との組合せにおいて、固定波数(500nm)での可視分光法を使用する装置の採用を示す。
【0136】
注入装置は、6mmの燃料ライン13の入口断面を示し、直径が5.06mmのベンチュリ21を備え、それは、160l/hの燃料の循環流量に対し、燃料の圧力に対して16mbarの圧力の差を添加剤に与える。添加剤を、長さが21mmであり直径が0.6mmである添加剤分配チャネル16bによって燃料内に分配する。
【0137】
注入装置を、燃料における鉄の4ppmの変化しない濃度を達成するように、タンクへの燃料の各追加の後に、ある量の添加剤を注入するために調整する。
【0138】
添加剤の各注入の開始前に、かつ添加剤の各注入の終了後に、車両に搭載された可視分光計によって、燃料の分析(規格EN590に対応する市販のディーゼル)を行う。
【0139】
車両における誤動作をシミュレートするために、車両の燃料タンクの4回目の充填の前に、添加剤注入装置を燃料回路から切断した。
【0140】
【0141】
最初の3回の注入の間、吸光度信号は、添加剤の添加中に増大する(A2>A1)ことが分かる(表2)。添加剤の添加に続く吸光度の差は、最初の3回の添加にわたって非常に類似している(A2−A1)。
【0142】
一方、添加剤注入装置が4回目の注入を飛ばした場合、理論的な添加剤添加後の燃料の吸光度は増大せず、吸光度の差A2−A1は実質的にゼロであり、それは、システムの添加剤注入システムの誤動作を検出する能力を論証することが分かる。