(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1次側変換回路であって、1次側正極母線と1次側負極母線の間に左アームと右アームを備え、前記左アーム及び前記右アームはそれぞれ直列接続された2つのスイッチングトランジスタからなり、前記左アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点と前記右アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点の間にトランスの1次側巻線が接続される1次側変換回路と、
2次側変換回路であって、2次側正極母線と2次側負極母線の間に左アームと右アームを備え、前記左アーム及び前記右アームはそれぞれ直列接続された2つのスイッチングトランジスタからなり、前記左アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点と前記右アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点の間に前記トランスの2次側巻線が接続される2次側変換回路と、
前記1次側変換回路及び前記2次側変換回路の前記スイッチングトランジスタのスイッチングを制御する制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、出力電圧が相対的に小さい軽負荷時に、前記1次側変換回路と前記2次側変換回路のうちの送電側の時比率を変更制御するとともに、前記1次側変換回路及び前記2次側変換回路の前記左アームと前記右アームの相間位相差を変更制御し、前記送電側の時比率を前記1次側変換回路と前記2次側変換回路の位相差φに対して反比例するように変更制御し、かつ、前記1次側変換回路の前記相間位相差を前記2次側変換回路の時比率を用いて変更制御し、前記2次側変換回路の前記相間位相差を前記1次側変換回路の時比率を用いて変更制御する
ことを特徴とする電力変換回路システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マルチポート回路では、軽負荷時においてトランスのコア損失が支配的となり、これを抑制することがハイブリッド自動車のさらなる燃費改善に必要となる。トランスのコア損失の抑制には最大磁束密度の低減が有効であるが、単に時比率(デューティ)を変調するだけでは循環電流が生じてしまい、トランス以外での損失増大が生じてしまう。
【0007】
本発明の目的は、特に軽負荷時においてトランスのコア損失を低減し、これにより軽負荷時の変換効率を向上させることができる電力変換回路システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1次側変換回路であって、1次側正極母線と1次側負極母線の間に左アームと右アームを備え、前記左アーム及び前記右アームはそれぞれ直列接続された2つのスイッチングトランジスタからなり、前記左アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点と前記右アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点の間にトランスの1次側巻線が接続される1次側変換回路と、2次側変換回路であって、2次側正極母線と2次側負極母線の間に左アームと右アームを備え、前記左アーム及び前記右アームはそれぞれ直列接続された2つのスイッチングトランジスタからなり、前記左アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点と前記右アームの2つのスイッチングトランジスタの接続点の間に前記トランスの2次側巻線が接続される2次側変換回路と、前記1次側変換回路及び前記2次側変換回路の前記スイッチングトランジスタのスイッチングを制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、出力電圧が相対的に小さい軽負荷時に、前記1次側変換回路と前記2次側変換回路のうちの送電側の時比率を変更制御するとともに、前記1次側変換回路及び前記2次側変換回路の前記左アームと前記右アームの相間位相差を変更制御
し、前記送電側の時比率を前記1次側変換回路と前記2次側変換回路の位相差φに対して反比例するように変更制御し、かつ、前記1次側変換回路の前記相間位相差を前記2次側変換回路の時比率を用いて変更制御し、前記2次側変換回路の前記相間位相差を前記1次側変換回路の時比率を用いて変更制御する。
【0009】
出力電圧が相対的に小さい軽負荷時(例えば出力電圧が50〜150W程度)では、トランスのコア損が損失の支配要因であり、コア損を低減するためにはトランスの最大磁束を低減することが有効である。トランスの最大磁束を低減するためには、1次側変換回路と2次側変換回路のうちの送電側の励磁期間の短縮が必要である。しかしながら、単に送電側の励磁期間を短縮するために送電側の時比率(デューティ)を変更制御すると、送電側と受電側のパルス幅に相違が生じるため循環電流が増大してしまう。この循環電流は電力伝送に寄与しないため、循環電流の増大は伝送効率の低下を生じてしまう。
【0010】
そこで、本発明では、単に送電側の時比率を変更制御するのではなく、送電側の時比率を変更制御するとともに、これと合わせて1次側変換回路及び前記2次側変換回路の左アームと右アームの相間位相差を変更制御することで、送電側と受電側のパルス幅が等しくなるように制御し、循環電流を抑制する。
【0012】
本発明の
1つの実施形態では、前記制御回路は、前記送電側の時比率δを前記1次側変換回路と前記2次側変換回路の位相差φに対して、
δ=K/φ
但し、Kは係数
となるように変更制御し、かつ、前記1次側変換回路の前記相間位相差γ1を前記2次側変換回路の時比率δ2を用いて
γ1=2π−δ2
となるように変更制御し、前記2次側変換回路の前記相間位相差γ2を前記1次側変換回路の時比率δ1を用いて
γ2=2π−δ1
となるように変更制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特に軽負荷時において、循環電流を抑制しつつトランスのコア損失を低減して変換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における電力変換回路システムの回路構成図である。電力変換回路システムは、制御回路10と電力変換回路12からなる。電力変換回路12は、磁気結合リアクトルを利用し、3つの直流電源間において双方向の電力伝送が可能な3ポートのマルチポート回路である。
【0017】
マルチポート回路は、1次側変換回路にポートA及びポートCを備え、2次側変換回路にポートBを備える。
【0018】
1次側変換回路の正極母線と1次側変換回路の負極母線の間に、互いに直列に接続されるスイッチングトランジスタS1及びS2からなる左アームと、互いに直列に接続されるスイッチングトランジスタS3及びS4からなる右アームが設けられ、これら左アームと右アームは互いに並列に接続されフルブリッジ回路を構成する。ポートAは、1次側変換回路の正極母線と負極母線の間に配置される。ポートAの入出力電圧をVAとする。ポートCは、1次側変換回路の負極母線とトランスの間に配置される。ポートCの入出力電圧をVCとする。
【0019】
左側アームを構成するスイッチングトランジスタS1及びS2の接続点と、右側アームを構成するスイッチングトランジスタS3及びS4の接続点の間に、互いに直列に接続される磁気結合リアクトルが接続されるとともに、トランスの1次側巻線が接続される。すなわち、磁気結合リアクトルとトランスの1次側巻線は、2つの双方向チョッパ回路の中間点に接続される。
【0020】
他方、2次側変換回路の正極母線と負極母線の間に、互いに直列に接続されるスイッチングトランジスタS5及びS6からなる左アームと、互いに直列に接続されるスイッチングトランジスタS7及びS8からなる右アームが設けられ、これら左アームと右アームは互いに並列に接続されフルブリッジ回路を構成する。ポートBは、2次側変換回路の正極母線と負極母線の間に配置される。ポートBの入出力電圧をVBとする。
【0021】
トランスの2次側巻線は、左アームを構成するスイッチングトランジスタS5及びS6の接続点と、右アームを構成するスイッチングトランジスタS7及びS8の接続点の間に接続される。
【0022】
制御回路10は、電力変換回路12を制御する各種パラメータを設定し、1次側変換回路と2次側変換回路のスイッチングトランジスタS1〜S8のスイッチング制御を行う。制御回路10は、外部からのモード信号に基づき1次側変換回路の2つのポート間で電力変換を行うモードと、1次側と2次側間での絶縁型電力伝送を行うモードを切り替える。ポートでいえば、ポートAとポートB間では双方向絶縁型コンバータとして回路を動作させ、ポートAとポートC間では双方向非絶縁型コンバータとして回路を動作させる。このとき、磁気結合リアクトルは、双方向絶縁型コンバータ動作では磁束を弱め合うため漏れインダクタンス成分を用い、双方向非絶縁型コンバータ動作では磁束を強め合うため励磁インダクタンス成分と漏れインダクタンス成分の和の成分を用いて電力伝送を行う。
【0023】
1次側変換回路と2次側変換回路の間の絶縁型電力伝送は、1次側変換回路と2次側変換回路のスイッチングトランジスタS1〜S8のスイッチング周期の位相差φで制御する。
1次側変換回路から2次側変換回路に電力を伝送する場合、1次側が2次側に対して進み位相となるように位相差φを決定する。また、2次側変換回路から1次側変換回路に電力を伝送する場合、これとは逆に1次側が2次側に対して遅れ位相となるように位相差φを決定する。例えば、2次側変換回路から1次側変換回路に電力を伝送する場合、1次側変換回路ではスイッチングトランジスタS1及びS4をオンし、S2及びS3をオフする。また、2次側変換回路ではスイッチングトランジスタS5及びS8をオンし、S6及びS7をオフする。2次側変換回路では、
S5→トランス2次側巻線→S8
と電流が流れる。1次側変換回路では、
S4→トランス1次側巻線→S1
と電流が流れる。
【0024】
次の期間では、スイッチングトランジスタS1、S4、S8をオンし、それ以外はオフとする。前の期間と比べてスイッチングトランジスタS5がオンからオフに遷移するが、2次側変換回路のスイッチングトランジスタS5がオフすると、スイッチングトランジスタS6に並列に接続されたダイオードを介して電流が流れ続け、2次側の両端電圧はゼロに降下する。従って、2次側の両端電圧を決めるのは、スイッチングトランジスタS5のオンオフとなる。
【0025】
さらに次の期間では、スイッチングトランジスタS1、S4、S6、S8をオンし、それ以外をオフとする。
【0026】
さらに次の期間では、スイッチングトランジスタS4、S6、S8をオンし、それ以外をオフとする。1次側変換回路のスイッチングトランジスタS1がオンからオフに遷移すると、スイッチングトランジスタS1に並列に接続されたダイオードを介して電流が流れ続け、スイッチングトランジスタS2がオンしない限り1次側の両端電圧はゼロにならない。従って、1次側の両端電圧を決めるのは、スイッチングトランジスタS2のオンオフとなる。
【0027】
上下のスイッチングトランジスタが短絡しないように、数百ナノ秒〜数マイクロ秒程度のデッドタイムを設けてもよい。すなわち、スイッチングトランジスタS1とS2、S3とS4、S5とS6、S7とS8がともにオフとなるような期間を設けてもよい。
【0028】
図1のマルチポート回路を例えばハイブリッジ自動車等に搭載する場合、ポートAに48V補機を接続し、ポートCに14V補機を接続し、ポートBに主機バッテリ等を接続することができる。
【0029】
図2は、本実施形態の前提となる、制御回路10の基本構成ブロック図である。1次側変換回路を受電側、2次側変換回路を送電側とし、電圧値VBの電源が設置されたポートBからポートA及びポートCに電力を伝送する場合、ポートA及びポートCのそれぞれの電圧参照値VA、VCの値を検出すれば制御できる。
【0030】
制御回路10は、機能ブロックとして、位相差指令値φ
*生成部及び時比率(デューティ)指令値δ
*生成部を備える。
【0031】
位相差指令値φ
*生成部は、差分器とPI(比例積分)制御器を備える。差分器は、ポートAの電圧指令値VA
*と参照値VAとの差分を算出する。PI制御器は、算出された差分値をPI制御して1次側変換回路及び2次側変換回路の位相差指令値φ
*を生成する。生成された位相差指令値φ
*で1次側変換回路と2次側変換回路の位相差φを制御することで、ポートAの出力電圧値を一定に維持することができる。
【0032】
また、時比率指令値δ
*生成部は、差分器とPI制御器と加算器を備える。差分器は、ポートCの電圧指令値VC
*と参照値VCとの差分を算出する。PI制御器は、算出された差分値をPI制御する。加算器は、PI制御値にフィードフォワード項δFFを加算して1次側変換回路及び2次側変換回路時比率(デューティ)指令値δ
*を生成する。図において、δ1
*は1次側変換回路の時比率であり、これは2次側変換回路の時比率δ2
*に等しい。生成された時比率指令値δ
*で時比率を制御することで、ポートCの出力電圧値を一定に維持することができる。なお、フィードフォワード項δFFは制御を安定化させるために付加しているもので、例えば
δFF=2π(1−VC/VA)
で決定されるが、本実施形態では必ずしも必須でない。
【0033】
ハイブリッド自動車等の実際の走行では、出力電圧が50〜150W程度の軽負荷が最も良く使用されるため、この軽負荷における効率増大が燃費向上のために必要となる。出力電圧が50〜150W程度の軽負荷時では、回路に流れる負荷電流は小さいため、素子損失や巻線銅損に比べるとトランスのコア損失が支配的となる。トランスのコア損失は、動作周波数、コア体積及び最大磁束に依存するが、周波数やコア体積は、回路設計の際に決定されるパラメータのため変更できない。そこで、軽負荷時には最大磁束Bmの低減を図ることが有効となる。
【0034】
トランスの最大磁束は、以下の式で与えられる。
Bm=T・VB/(2N・A
T)
ここで、Nは巻数、A
Tは断面積、Tは励磁期間である。NやA
Tは設計値であるため制御により変更することはできない。従って、制御できるパラメータは励磁期間Tのみである。励磁期間Tは、トランスの送電側巻線に電圧VBが印加される期間であり、動作周波数ω
swから以下の式で与えられる。
T=(|δ2−π|+π)/ω
sw
ここで、δ2は送電側である2次側変換回路の時比率のラジアン表示で、0<δ2<2πである。この式より、送電側である2次側変換回路の時比率δ2をπの値から離すことで励磁期間Tを短くし、最大磁束を低減できることがわかる。
【0035】
しかしながら、2次側変換回路の時比率のみを変更すると、1次側変換回路と2次側変換回路の時比率に相違が生じるためトランス巻線両側に印加される電圧波形に差が生じ、循環電流が生じてしまう。
【0036】
図3は、1次側変換回路と2次側変換回路の時比率が異なる場合の、トランス電圧とトランス電流の波形図である。
図3(a)はトランス電圧の波形であり、1次側変換回路の電圧6×V1及び2次側変換回路の電圧V2を示す。
図3(b)はトランス電流の波形図であり、1次側変換回路の時比率δ1を0.75とし、2次側変換回路の時比率δ2を0.6とした場合である。
図3(a)に示すように、1次側変換回路と2次側変換回路の時比率が異なるとパルス幅に差異が生じる。このため、
図3(b)に示すように、非伝送期間において本来であればトランス電流はゼロでなければならないところ、非伝送期間においてもトランス電流、つまり循環電流が流れてしまう。循環電流は、例えばスイッチングトランジスタS2がオンのときにS2→S4→リアクトル→トランス1次側巻線→リアクトル→S2と流れ、電力伝送には寄与せず閉回路を循環するため、変換効率を著しく悪化させる要因となる。
【0037】
このため、本実施形態では、トランスの最大磁束を低減すべく励磁期間Tを短縮するとともに、循環電流の発生を抑制するために、2次側変換回路の時比率の変更に合わせて、1次側変換回路と2次側変換回路のそれぞれの相間位相差γ1、γ2を変更する。
【0038】
相間位相差は、1次側変換回路及び2次側変換回路それぞれにおける、左アーム(U相)と右アーム(V相)の間の位相差である。1次側変換回路のU相、V相をそれぞれU1相、V1相、2次側変換回路のU相、V相をそれぞれU2相、V2相とすると、相間位相差γ1はU1相とV1相の位相差であり、γ2はU2相とV2相の位相差である。相間位相差γ1、γ2は、基本的には同一であるが、本実施形態ではδ1とδ2が相違することを考慮して、相間位相差γ1、γ2を異なる値とすることで、1次側変換回路と2次側変換回路の電圧V1、V2のパルス幅を等しくする。
【0039】
図4は、本実施形態における制御回路10の機能ブロック図である。
図2に示す前提となる基本的な機能ブロック図と対比して、1次側変換回路及び2次側変換回路の相間位相差指令値γ1
*、γ2
*を、互いに逆側のブリッジ回路の時比率から生成する。すなわち、1次側変換回路の相間位相差指令値γ1
*を2次側変換回路の時比率指令値δ2
*から生成し、2次側変換回路の相間位相差指令値γ2
*を1次側変換回路の時比率指令値δ1
*から生成する。
【0040】
より詳細には、位相差指令値φ
*を
図2の場合と同様にポートAの電圧指令値VA
*と参照値VAから生成し、1次側変換回路の時比率指令値δ1
*を
図2の場合と同様にポートCの電圧指令値VC
*と参照値VC及びフィードフォワード項δFF(但し、これは必須ではない)から生成する。
【0041】
他方、軽負荷時には、2次側変換回路の時比率指令値δ2
*を上記のようにπの値から離すようにδ1
*から変更することで励磁期間Tを短くするとともに、1次側変換回路の相間位相差指令値γ1
*を
γ1
*=2π−δ2
*
により2次側変換回路の時比率指令値δ2
*から生成し、かつ、2次側変換回路の相間位相差指令値γ2
*を
γ2
*=2π−δ1
*
により1次側変換回路の時比率指令値δ1
*から生成する。具体的には、送電側である2次側変換回路の時比率指令値δ2
*は、
δ2
*=K/φ
*
により生成する。
【0042】
このことは、2次側変換回路の時比率指令値δ2
*を位相差φに反比例するように変更制御することを意味する。但し、Kは係数であり、δ2
*>δ1
*である。
【0043】
軽負荷時において、伝送電力の低下、つまり位相差φの低下に伴い2次側変換回路の時比率指令値δ2
*が増大し、励磁期間Tが小さくなって最大磁束が低減することになる。
【0044】
図5は、制御回路10の構成が
図2の場合のトランス電圧、トランス電流、トランス磁束の波形図である。
図5(a)はトランス電圧、
図5(b)はトランス電流、
図5(c)はトランス磁束である。
【0045】
また、
図6は、制御回路10の構成が
図4の場合のトランス電圧、トランス電流、トランス磁束の波形図である。
図6(a)はトランス電圧、
図6(b)はトランス電流、
図6(c)はトランス磁束である。いずれも回路シミュレーション結果である。
【0046】
図5と
図6のトランス電流及びトランス磁束に着目すると、
図6では
図5に比べてトランス磁束が200mTから160mTと低減し、かつ、循環電流がゼロ近傍まで抑制されている。
【0047】
図7は、制御回路10の構成が
図2の場合と
図4の場合の出力電力に対する効率の回路シミュレーション結果を示す。図において符号100は
図2の場合、つまり2次側変換回路の時比率を変更制御せず、相間位相差γ1、γ2も変更制御しない場合の効率であり、符号200は
図4の場合、つまり2次側変換回路の時比率、及び相間位相差γ1、γ2を変更制御した場合の効率である。本実施形態では循環電流を抑制できるため、その分だけ効率が増大し、特に出力電力が50〜150Wと小さい場合においてその効果が顕著である。
【0048】
以上のように、本実施形態では、ハイブリッド自動車等において軽負荷(50〜150W)での効率改善が必要であるところ、時比率と相間位相差をともに制御することで循環電流を抑制しつつトランスのコア損失を低減でき、効率を向上させることが可能である。
【0049】
本実施形態では、送電側である2次側変換回路の時比率を変更するとともに1次側変換回路の相間位相差γ1を変更することで最大磁束を低減しつつ循環電流を抑制しているが、高負荷時(150W以上)及び軽負荷時(50〜150W)のいずれにおいても
図4に示す本実施形態の制御ブロックで制御する他に、高負荷時には
図2に示す基本的な制御ブロックで制御し、軽負荷時には
図4に示す本実施形態の制御ブロックで制御する等、負荷に応じて制御を切り替えてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、2次側変換回路から1次側変換回路に電力伝送する場合について説明したが、1次側変換回路から2次側変換回路に電力伝送する場合も同様に適用し得ることは言うまでもない。この場合、送電側である1次側変換回路の時比率δ1を位相差φに反比例するように設定し、かつ、相間位相差γ1を2次側変換回路の時比率δ2から設定し、γ2を1次側変換回路の時比率δ1から設定すればよい。すなわち、送電側を1次側変換回路、受電側を2次側変換回路とすると、
γ1
*=2π−δ2
*
γ2
*=2π−δ1
*
δ1
*=K/φ
*
により時比率指令値δ1
*、相間位相差指令値γ1
*、γ2
*を生成すればよい。