(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周囲条件は周囲の光の強さと色を含み、エンハンスメントレイヤは光の強さと色の異なる組み合わせの下でグレーディングされたエンハンスメントレイヤを含む、請求項1に記載のディスプレイ装置。
周囲条件は周囲光の強さと色を含み、エンハンスメントレイヤは、光の強さと色の異なる組み合わせの下でグレーディングされたエンハンスメントレイヤを含み、エンハンスメントレイヤがグレーディングされたディスプレイの色域能力を超えて拡張された色域の画像を生成するのに用いられる、請求項1に記載のディスプレイ装置。
周囲条件は周囲の光の強さと色を含み、エンハンスメントレイヤは光の強さと色の異なる組み合わせの下でグレーディングされたエンハンスメントレイヤを含む、請求項7に記載の作動方法。
周囲条件は周囲光の強さと色を含み、エンハンスメントレイヤは、光の強さと色の異なる組み合わせの下でグレーディングされたエンハンスメントレイヤを含み、エンハンスメントレイヤがグレーディングされたディスプレイの色域能力を超えて拡張された色域の画像を生成するのに用いられる、請求項7に記載の作動方法。
周囲条件は周囲光の強さと色を含み、エンハンスメントレイヤは、光の強さと色の異なる組み合わせの下でグレーディングされたエンハンスメントレイヤを含み、エンハンスメントレイヤがグレーディングされたディスプレイの色域能力を超えて拡張された色域の画像を生成するのに用いられる、請求項13に記載のカラーグレーディングステーション。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明では、本発明をよく理解してもらうために、具体的な詳細を記載する。しかし、本発明はこれらの具体的な事項がなくても実施することができる。他の例では、本発明を不必要に分かりにくくしないよう、周知の要素は図示せず、または詳細に説明しない。したがって、明細書と図面は例示であって限定ではないと考えるべきである。
【0020】
この発明の一態様は、ビデオデータの配信に関する。フォーマットはベースレイヤと複数のエンハンスメントレイヤとを提供する。各エンハンスメントレイヤは、例えば、次のもの(1つ又は複数)を提供する:
−広い色域;
−相違する周辺条件への最適化(例えば、照度100ルクス以下の周辺光で見るようにベースレイヤが最適化されている場合、照度1000ルクス又はその他の照度の周辺光で見るように最適化されたバージョンを一エンハンスメントレイヤが提供する);
−高いフレームレート;
−大きいダイナミックレンジ;
−大きいビット深度;
−3次元情報(1つ以上の追加的視点など);
−大きい空間解像度。
実施形態によっては、ベースレイヤは、Rec.709準拠ビデオ信号などの低機能のビデオ信号に対応する。実施形態によっては、エンハンスメントレイヤは、人間の視覚系により知覚可能なすべての色を含む色域の色を指定するのに十分な色の範囲を含むフォーマットのビデオ信号など、高機能のビデオ信号に対応する。
【0021】
異なる複数のエンハンスメントレイヤを設けて、多様な看者の必要性を満たしても良い。
図1は、ビデオデータ10がビデオソース12から複数のユーザロケーション15へ伝送網14により搬送される一実施形態を示す。この実施形態では、ビデオデータ10は、ベースレイヤ20と、第1及び第2のエンハンスメントレイヤ22A及び22Bとを含むフォーマットである。
【0022】
伝送網14は、例えば、インターネットと、ケーブルテレビジョンシステムと、無線放送システムと、DVDなどの配布されるメディアと、ビデオデータを含むその他のデータ記憶デバイスと、その他の、ビデオデータ10をユーザロケーション15に配信できる任意のデータ通信システムとを含み得る。
【0023】
ユーザロケーション15にはいろいろなディスプレイ16がある。図示した実施形態では、ユーザロケーション15Aはディスプレイ16Aを有し、ユーザロケーション15Bはディスプレイ16B−1と16B−2を有し、ユーザロケーション15Cはディスプレイ16Cを有する。
【0024】
ベースレイヤ20は、最小公倍数のディスプレイと互換性がある。例えば、ベースレイヤは、(Rec.709としても知られた)ITU−RリコメンデーションBT.709その他の広く受け入れられたフォーマットにより指定されたフォーマットであり、またはそのフォーマットに容易に変換できる。
【0025】
この実施形態では、第1のエンハンスメントレイヤ22Aは、ベースレイヤの色域外の色を再生できるディスプレイに表示するのに適した拡張色域を有し、薄暗い周辺状態下での表示に最適化されたビデオデータのバージョンを提供する。第2のエンハンスメントレイヤ22Bは、エンハンスメントレイヤ22Aと似ているが、明るい周辺状態下での表示に最適化されている。
【0026】
ビデオデータ10は、表示される前に、データ処理ステージ18を通る。図示された実施形態に示したように、データ処理ステージ18は、(ディスプレイ16Aの場合のように)ディスプレイ16中にあってもよいし、(ユーザロケーション15Bの場合のように)ユーザロケーション15の上流デバイス19中にあってもよいし、(ユーザロケーション15Cの場合のように)ユーザロケーションの外の上流デバイス21中にあってもよい。上流デバイス21は、例えば、伝送網14中にあってもよいし、ビデオソース12にあってもよい。
【0027】
非限定的例として、上流デバイス19は、トランスコーダ、ケーブルモデム、セットトップボックスその他を含む。上流デバイス21は、トランスコーダ、ビデオ配信システムヘッドエンド、ビデオサーバその他を含む。
【0028】
データ処理ステージ18は、ビデオデータ10から、具体的なディスプレイ16上に表示するのに最適化されたビデオストリーム23を生成するのに必要なデータを取り出す(extract)。実施形態によっては、データ処理ステージ18は、ディスプレイ16が見られている周辺状態に対して選択されたビデオストリーム23を取り出す。実施形態によっては、ディスプレイ16に付随する光センサ26が、周辺光(強さ及び/又は色)を検出し、その周辺光に関する周辺光情報27を、データ処理ステージ18に送る。データ処理ステージ18は、周辺光情報27を用いて、ディスプレイ16に適切なビデオストリーム23を配信するように、自機を設定する。
【0029】
他の実施形態では、データ処理ステージ18は、前に記憶されたアカウント情報又はユーザ嗜好情報(図示せず)にアクセスし、ディスプレイ16に適切なビデオストリーム23を配信するように、自機を設定する。前に記憶された情報は、例えば、暗いシアターにおいて、あるディスプレイを用いることを示す。他の実施形態では、データ処理ステージ18は、ディスプレイの場所における周囲状態に関するユーザ入力を受け取り、そのユーザ入力を用いて、ディスプレイ16に適切なビデオストリーム23を配信するように自機を設定する。ユーザ入力は、例えば、コンピュータ、ディスプレイ、リモートコントローラ、ポータブルデジタルデバイス、スマートホンなどで受け取られ、任意の好適なデータ通信経路により、データ処理ステージ18に送られる。
【0030】
データ処理ステージ18は、例えば、好適なソフトウェア及び/又はファームウェアを実行するプログラム式プロセッサ、好適な構成されたフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの構成可能ハードウェア、ハードウェア論理回路(例えば、集積回路に設けられているもの)、またはこれらの好適な組合せである。データ処理ステージ18は、コンピュータ、トランスコーダなどのビデオ処理デバイス、セットトップボックス、デジタルビデオレコーダなどに収容され、またはテレビジョンなどのディスプレイ、ホームシアターディスプレイ、デジタルカメラプロジェクタ、コンピュータビデオシステムなどに収容され、またはケーブルテレビジョンヘッドエンドなどのデータ伝送網のコンポーネント、ネットワークアクセスポイントなどに収容されてもよい。実施形態は、ここに説明するデータ処理ステージ18を収容した装置を提供する。
【0031】
実施形態によっては、データ処理ステージ18は、必要に応じて、ビデオデータ10を復号し、意図された表示先ディスプレイ16(intended destination display)に対して適切な1つ又は複数のベースレイヤ20、及び/又は1つ又は複数のエンハンスメントレイヤ22を選択する。他の実施形態では、データ処理ステージ18は、ベースレイヤ20及びエンハンスメントレイヤ22に基づき、しかしこれらとは異なるビデオデータを生成する。データ処理ステージ18は、新しいデータをビデオストリーム23として配信し、又は新しいデータを表示先ディスプレイ16に後で表示するためにファイルとして記憶する。
【0032】
ビデオデータ10は、
図1に示したようにストリーミングされるか、又はファイル構造になっていてもよい。
図2に示すように、ユーザはビデオデータ10を含むファイル31を、様々な視聴デバイスでアクセスできるデータ記憶部30に保持できる。例えば、ユーザは、スマートホン32A、タブレットコンピュータ32B、通常のテレビジョン32C、ハイエンドホームシアタシステム32Dを有し、これらはすべてビデオコンテンツを表示できる。これらのデバイスはそれぞれビデオ表示用の機能が異なる。
【0033】
データ処理ステージ18は、デバイス32のひとつに対して適切なベースレイヤ20及び/又はエンハンスメントレイヤ22を選択することにより、選択されたデバイス32で再生するビデオデータ10のビデオコンテンツを準備し、そのデバイスでの再生のためのビデオファイル24又はストリーム23を生成する。ファイル24及び/又はストリーム23の生成は、データ処理ステージ18により、次の時点で行われる:
−事前に(例えば、ユーザがビデオデータ10をダウンロード又は取得した時に、データ処理ステージ18は、ユーザのデバイスで表示するのに最適なファイル24を自動的に生成及び記憶できる)。
−あるデバイスで再生するため、ビデオデータがダウンロードされた時に。
−あるデバイスがビデオデータ10を含むメディアコレクションに同期された時に。
−あるデバイスにビデオデータがストリーミングされている時に。
【0034】
図3に示したように、異なるディスプレイにおいて、及び/又は異なる視聴条件下で、ビデオコンテンツを表示するのに最適化されたバージョンを含むビデオデータ10を提供することにより、ユーザに対するビデオコンテンツの見え方の創作的な制御の維持が容易になる。ビデオのプロデューサは、あるシーンにおいて使われる色のパレット、シーンのコントラスト、シーンの最大輝度などの要因によりユーザに伝えることを意図された創作意図を有することがある。これらの要因及び似た要因は、そのシーンがどのように見る者に知覚されるかに影響を与える。創作意図はコンテンツやプロデューサに依存し、分析的に判断するのは非常に困難である。
【0035】
例えば、次の質問に答えるようにコンピュータをプログラムすることは難しいか、不可能である:「あるビデオコンテンツのあるプロデューサは、そのビデオコンテンツを、指定された周囲の視聴条件下において、指定された機能を有するあるディスプレイで見ることを意図した場合、いかにしてそのコンテンツを異ならせたか?」
図3に示すように、ビデオデータ10はビデオコンテンツの複数のバージョンを含む。プロデューサPは、その複数のバージョンのそれぞれを、別々に最適化して承認してもよい。
【0036】
図示した実施形態では、プロデューサPは、複数の参照ディスプレイ26にアクセスできる。参照ディスプレイ26Aは、暗い環境において見る標準参照ディスプレイである。プロデューサは、ディスプレイ26Aにおいてベースレイヤ20のビデオコンテンツを見て、カラーグレーディングステーション28を用いて、プロデューサの創作意図に応じて、ディスプレイ26Aにおけるビデオコンテンツの見え方を最適化する。カラーグレーディングステーション28は、高画質ビデオデータ29を入力とする。ビデオデータ29は、例えば、高いダイナミックレンジ、広い色域、及び大きいビット深度を有する。
【0037】
図示された実施形態では、プロデューサも、色域が広くダイナミックレンジが広いディスプレイ26Bにアクセスできる。プロデューサは、暗い周囲条件下でディスプレイ26Bにおいてエンハンスメントレイヤ22Aのビデオコンテンツを見て、カラーグレーディングステーション28を用いて、プロデューサの創作意図に応じて、ディスプレイ26Bにおけるエンハンスメントレイヤ22Aのビデオコンテンツの見え方を最適化する。
【0038】
また、プロデューサは、明るい周囲条件下でディスプレイ26Bにおいてエンハンスメントレイヤ22Bのビデオコンテンツを見て、カラーグレーディングステーション28を用いて、プロデューサの創作意図に応じて、ディスプレイ26Bにおけるエンハンスメントレイヤ22Bのビデオコンテンツの見え方を最適化する。カラーグレーディングステーション28は、プロデューサが、異なる周辺条件下で異なるディスプレイにおいて表示するためにビデオコンテンツの複数のバージョンを効率的に生成するのを支援する自動ツールまたは半自動ツールを有する。
【0039】
プロデューサがベースレイヤとエンハンスメントレイヤのビデオコンテンツのバージョンを承認すると、エンコーダ25は承認されたビデオコンテンツのバージョンをビデオデータ10に書き込む。
【0040】
このように、ビデオデータ10は、プロデューサPの創作意図に応じて、異なるディスプレイ及び/又は異なる視聴条件においての利用に最適化された、同じビデオコンテンツの異なる複数のバージョンを含む。これにより、ユーザは、プロデューサの創作意図にほぼ一致した見え方で、ビデオコンテンツを楽しむことができる。
【0041】
ビデオデータ10のベースレイヤ又はエンハンスメントレイヤが、表示するディスプレイ(destination display)に好適な方法ですでに最適化されている場合、そのレイヤに基づくビデオ信号を、表示するディスプレイに送る。実施形態によっては、データ処理ステージ18は、表示するディスプレイの機能と周辺条件が、ベースレイヤ20及びエンハンスメントレイヤ22の一方が最適化された機能と周辺条件に(厳密に又はあす閾値範囲内で)一致しているか判断するように構成されている。一致していれば、レイヤのうち一致しているものから得られるビデオ信号を、修正無しに出力する。
【0042】
ビデオデータ10は、どんな視聴条件においてもあらゆるディスプレイに対して最適化された複数のエンハンスメントレイヤ22を含む必要はない。上記の通り、データ処理ステージ18は、ベースレイヤとエンハンスメントレイヤに基づき、しかしそれとは異なる、あるディスプレイのためのビデオデータを生成できる。実施形態によっては、これはベースレイヤとエンハンスメントレイヤの間の補間及び/又は外挿、及び/又は2つのエンハンスメントレイヤの間の補間及び/又は外挿を含む。補間又は外挿は、2つのレイヤに関連する機能に対する、目標ディスプレイの機能に基づく。
【0043】
データ処理ステージ18は、目標ディスプレイの機能、及び/又はその目標ディスプレイにおける周辺照明状態に関する情報を、何らかの方法で受け取る。例えば:
−データ処理ステージ18は、ある目標ディスプレイの機能に対してハードワイヤードであってもハードコーディッドであってもよい。これは、例えば、データ処理ステージ18がディスプレイに組み込まれているか、及び/又はあるディスプレイ専用である実施形態に最も適している。
−データ処理ステージ18は、ある目標ディスプレイの機能を記述する情報を含むメモリやレジスタセットなどを含む、又はそれにアクセスするように接続されている。これは、例えば、データ処理ステージ18が、1つ又は複数のディスプレイに対して専用であるセットトップボックスその他の装置に組み込まれている実施形態において最も適切である。
−データ処理ステージ18は、通信経路により目標ディスプレイと通信でき、その通信経路がビデオ信号も目標ディスプレイに搬送する。
−データ処理ステージ18は、インターネットその他のデータ通信経路により、相互にデータ通信しており、目標ディスプレイの機能に関する情報を含む情報を交換できる。
−目標ディスプレイは、サーバにドックされ、さもなければ定期的に接続される一デバイス中にあっても、その一デバイスに付随しており、データアップロードを受け取れる。デバイスは、サーバへの接続している間に、サーバ又はデータ処理ステージ18に目標ディスプレイの機能に関する情報を転送できる。
【0044】
データ処理ステージ18は、2つ以上のベースレイヤ20とエンハンスメントレイヤ22に対応するビデオストリームから、補間及び/又は外挿により、ビデオストリーム23又はファイル24を求める。ビデオデータ10のビデオコンテンツのバージョンがすべて、創作意図を保つように(例えば、好適なカラータイミングにより)個別に最適化されている場合、補間又は外挿される値は、その創作意図を保つものであることが期待される。
【0045】
図4Aは、ビデオデータ10からの2つ以上のビデオコンテンツのバージョンに基づき最適化されたビデオデータを生成するように構成されたデータ処理ステージ18の一例のコンポーネントを示すブロック図である。
図4Bは、入力された2つ以上のビデオコンテンツのバージョンに基づき最適化されたビデオデータを生成する方法70を示すフローチャートである。データ処理ステージ18は、ビデオデータ10から、ベースレイヤ20及び/又はエンハンスメントレイヤ22を取り出すデコーダ45を有する。図示した実施形態では、ビデオデータ10は、ベースレイヤ20と2つのエンハンスメントレイヤ22A、22Bを含む。実施形態によっては、デコーダ45は、あるディスプレイに対して最適化されたビデオコンテンツを生成するのに使われるベースレイヤ20とエンハンスメントレイヤ22のみを取り出す。デコーダ45は、補間/外挿ブロック48に2つの入力信号47A、47Bを供給する。
【0046】
各入力信号47は画素値を含む。画素値は、例えば、色空間における色調座標及び/又は色座標の値を有する。実施形態によっては、色空間は知覚的に線形な色空間である。
【0047】
補間/外挿ブロック48は、入力信号47の対応画素値間の補間又は外挿をする(ステップ73)ことにより、出力値49を生成するように構成されている。補間/外挿ブロック48は、出力50として、修正ビデオ信号で出力値49を供給する(ステップ74)。補間/外挿ブロック48の制御入力52は、補間/外挿ブロック48の動作を制御する制御値を受け取る。単純な一実施形態では、補間/外挿ブロック48において、制御値に、第1と第2のビデオ信号47Aと47Bの対応する値の間の差分をかける。ブロック48により行われる補間/外挿は、制御入力52で受け取る値に基づく。制御入力52に与えられる値は、表示するディスプレイの機能の尺度に基づき、及び/又は表示するディスプレイにおける周辺条件の尺度に基づき決定される。
【0048】
図4Cは、補間/外挿を行う一方法を示す。
図4Cにおいて、第1のビデオ信号の値はy
1であり、第2のビデオ信号の対応する値はy
2である。
図4Cの水平軸は、表示するディスプレイの機能又は周辺条件の尺度を示す。例えば、水平軸は、表示するディスプレイのダイナミックレンジを示し、または何らかのインデックスに応じた表示するディスプレイの最大照度の対数を示す。第1のビデオ信号47Aは、機能Aを有するディスプレイによる表示に最適化されたビデオコンテンツのバージョンを含み、第2のビデオ信号47Bは、機能Bを有するディスプレイによる表示に最適化されたビデオコンテンツのバージョンを含む。そのビデオ信号を表示するディスプレイ(destination display)が機能Cを有する場合、出力値は、例えば
【数1】
により決定される。(C−A)は正または負である。|C−A|は|B−A|より大きくても小さくてもよい。
【0049】
式(1)によると、y
1=y
2であれば、V
OUTはy
1およびy
2に等しい。よって、クリエータが、第1と第2のビデオ信号により表されるビデオコンテンツの第1と第2のバージョンにおいて、意図的にy
1とy
2を等しく設定した場合、式(1)を用いる実施形態では、及びこれと同じ特徴を有するその他の実施形態でも、出力ビデオ信号においてこの値は保たれる。一方、y
1≠y
2である場合、V
OUTはy
1ともy
2とも異なる。
【0050】
実施形態によっては、データ処理ステージ18は、知覚曲線に沿って補間/外挿するように構成されている。例えば、データ処理ステージ18は、照度の対数で補間/外挿をするように構成されてもよい。実施形態によっては、ビデオデータは、補間/外挿する前に、知覚的に一様な色空間(例えば、IPTやLogYuv)で与えられ、またはそれに変換される。
【0051】
実施形態によっては、ビデオデータ間の補間は、
【数2】
により行われる。ここで、YはLogYxyやLogYuv鋳などの色空間における照度座標であり、(Y
VDRなどの)添字VDRはより高い機能(例えばより高いダイナミックレンジ及び/又はより広い色域)を有するビデオ信号からのデータを識別し、添字LDRはより低い機能を有するビデオ信号からのデータを識別し、添字MDRは出力又は目標ビデオ信号を識別し、αとβは補間定数であり、xとyは色座標である(例えば、LogYxy色空間中のxとyや、LogYu’v’色空間中のu’とv’)。ここで、αは例えば
【数3】
により与えられる。ここで、max(Y
VDR)は(高機能の)VDRビデオ信号で指定できるYの最大値であり、max(Y
LDR)は(低機能の)LDRビデオ信号で指定できるYの最大値であり、max(Y
TARGET)は目標ディスプレイで再生できるYの最大値であり、βはβ=1−αにより与えられる。
【0052】
例1:
一実施形態では、暗い周辺条件で見るために最適化されたビデオコンテンツの一バージョンと、明るい周辺条件で見るために最適化されたビデオコンテンツの他の一バージョンとをそれぞれ含む2つのエンハンスメントレイヤ間で、補間を行う。補間は固定でもよい。代替的な実施形態では、補間は、表示するディスプレイにおける周辺照明に依存して可変であってもよい。実施形態によっては、補間/外挿エンジン48の入力52に、周辺照明情報27が供給される。かかる実施形態では、周辺照明情報27は、2つの入力信号47Aと47Bに与えられる相対的な重みを制御する。
【0053】
例2:
他の一実施形態では、表示するディスプレイ16又はデバイス32は、ベースレイヤ20で仮定された閾値より広い色域を有する。かかる実施形態では、広い色域のディスプレイに対して最適化されたベースレイヤ20とエンハンスメントレイヤ22との間で補間を行う。補間においてベースレイヤとエンハンスメントレイヤとに与えられる相対的な重みは、ベースレイヤ20とエンハンスメントレイヤ22で仮定された閾値と比較して表示するディスプレイの色域がどれだけ広いかの尺度に基づく。
【0054】
例3:
ある実施形態では、表示するディスプレイのために作成されたビデオ信号は、ビデオデータ10の3つ以上のビデオコンテンツのバージョンに基づく。例えば、表示するディスプレイは、ベースレイヤと、その表示ディスプレイにおける周辺照明とで仮定された色域より、ある点で広い色域の色を再生できる。データ処理ステージ18は、最初に、上記の「例1」で説明したように、表示するディスプレイにおける周辺条件に基づき2つのエンハンスメントレイヤ間を補間し、次に、上記の「例2」で説明したように、表示するディスプレイの相対的に機能に基づき、結果の信号とベースレイヤとの間の補間をする。
【0055】
ビデオデータ10は、異なるディスプレイ及び/又は視聴条件に対して最適化された2つ以上のビデオコンテンツのバージョンを含むことができる幅広い構成を有する。異なるビデオコンテンツのバージョンは、ビデオデータ10に個別に表し得るが、エンハンスメントレイヤをベースレイヤとの差分でエンコードする、又はその逆をする方がずっと効率的である。一例では、ビデオデータ10は、選択的に復号できる複数のレイヤを含むビットストリームを含む。例えば、「Scalable Video Coding」または「SVC」と呼ばれることもあるH.264/MPEG−4AVCビデオ圧縮標準のAnnexGにより規定された符号化方式と同様なスケーラブルなビデオコーデックを用いて、異なるレイヤを配信できる。
【0056】
図5Aと5Bは、実施形態によるビデオ配信システムを示す。
図5Aにおいて、表示するディスプレイでの視聴に最適化されたビデオコンテンツのバージョンを含むビデオ信号がデコーダで生成される。デコーダは表示するディスプレイに対してローカルなものであってもよい。
図5Bにおいて、表示するディスプレイにおける視聴に対して最適化されたビデオコンテンツのバージョンを含むビデオ信号は、最適化されたビデオ信号を受信するデコーダの上流にあるトランスコーダで生成される。各場合において、プロデューサPによりビデオコンテンツのバージョンに込められた創作意図が、システムにより配信されるビデオコンテンツを視聴するコンシューマに配信される。
【0057】
本発明のある実施態様は、プロセッサに本発明の方法を実行させるソフトウェア命令を実行するコンピュータプロセッサを含む。例えば、データ処理ステージのプロセッサは、アクセスできるプログラムメモリ中のソフトウェア命令を実行することにより、
図4Bの方法を実施する。また、本発明は、プログラム製品の形体でも提供できる。プログラム製品は、データプロセッサにより実行されると、そのデータプロセッサに本発明の方法を実行させる命令を含む一組のコンピュータ読み取り可能信号を担う任意の媒体を含む。本発明によるプログラム製品は、どんな形体のものでもよい。プログラム製品には、例えば、フロッピーディスケット、ハードディスクドライブなどの磁気的データ記憶媒体、CD−ROM、DVDを含む光学的データ記憶媒体、ROM、フラッシュRAMを含む電子的データ記憶媒体などの持続的または物理的メディアを含む。プログラム製品上のコンピュータ読み取り可能信号は、任意的に圧縮され、暗号化されていてもよい。
【0058】
上でコンポーネント(例えば、ソフトウェアモジュール、プロセッサ、アセンブリ、デバイス、回路など)と言った場合、別段の記載が無ければ、そのコンポーネント(「手段」と言った場合も含む)は、そのコンポーネントの等価物として、説明したコンポーネントの機能を実行する(すなわち、機能的に等価な)任意のコンポーネントを含み、本発明の例示した実施形態の機能を実行する開示された構成と構造的に等価でないコンポーネントも含むものと解すべきである。
【0059】
したがって、本発明は、現在存在する、及び/又は将来開発される、ここに説明した、任意の要素(本発明の様々な部分又は特徴)及びその等価物を含み、またはこれらにより構成され、又はこれらにより基本的に構成されている。さらに、ここに例示的に開示した本発明は、ここには具体的に開示していなくても、任意の要素無しに実施できる。明らかに、上記の教示を考慮して、本発明の修正や変更が可能である。それゆえ、言うまでもなく、添付した請求項の範囲内において、ここで具体的に説明していなければ本発明を実施できる。
【0060】
したがって、本発明はここに説明したいかなる形体でも実施でき、本発明のある部分の構成、特徴、及び機能を記載した以下の付記(Enumerated Example Embodiments)には限定されない。
(付記1) 目標ディスプレイにおける表示のために最適化されたビデオコンテンツを配信する方法であって、
前記ビデオコンテンツの異なる少なくとも第1と第2のバージョンを含むビデオデータを供給するステップと、
前記ビデオコンテンツの第1と第2のバージョンの間を補間又は外挿して、前記ビデオコンテンツの第3のバージョンを生成するステップと、を有する方法。
(付記2) 前記第1のバージョンは周辺光の第1のレベルに対して最適化され、前記第2のバージョンは周辺光の第2のレベルに対して最適化され、前記補間又は外挿は前記目標ディスプレイにおける周辺光のレベルに基づく、付記1に記載の方法。
(付記3) 光センサが前記目標ディスプレイにおける周辺光のレベルをモニタし、前記方法は、前記光センサにより検出された前記目標ディスプレイにおける周辺光のレベルに基づき、前記ビデオコンテンツの第1と第2のバージョンに相対的な重みを適用するステップを有する、付記2に記載の方法。
(付記4) 前記目標ディスプレイは、前記ビデオコンテンツの第1のバージョンで仮定された第1の色域と、前記ビデオコンテンツの第2のバージョンで仮定された第2の色域との間の表示色域を有し、前記方法は、前記第1と第2の色域の対応する尺度に対する前記表示色域の尺度に基づき、前記ビデオコンテンツの第1と第2のバージョンに相対的な重みを適用するステップを有する、付記1に記載の方法。
(付記5) 各バージョンは画像の画素の画素値を含み、補間は前記第1と第2のバージョンの対応する画素の画素値の間の補間を含む、付記1に記載の方法。
(付記6) 前記画素値は知覚的に線形な色空間における座標の値を含む、付記5に記載の方法。
(付記7) トランスコーダで実行され、前記方法は、前記ビデオコンテンツの第3のバージョンを符号化して、符号化した第3のバージョンを前記トランスコーダから目標ディスプレイに送るステップを有する、付記1に記載の方法。
(付記8) 前記ビデオコンテンツの第3のバージョンが表示されるデバイスの識別情報を受け取るステップと、
前記ビデオコンテンツの第1と第2のバージョンに関連する表示機能に対する前記デバイスの対応する表示機能に少なくとも部分的に基づき、前記補間又は外挿を制御するステップとを有する、付記1に記載の方法。
(付記9) 前記デバイスが前記ビデオコンテンツのダウンロードを受け取るように接続されたことに応じて、前記デバイスの表示機能を決定するステップを有する、付記8に記載の方法。
(付記10) 目標ディスプレイにおける表示のために最適化されたビデオコンテンツを配信する方法であって、
前記ビデオコンテンツの異なる複数のバージョンを含むビデオデータを1つのデータエンティティ中に設けるステップであって、前記異なるバージョンは異なる色域、異なるフレームレート、異なるビット深度、及び異なる空間的解像度のうち1つ以上を有するバージョンを含むステップと、
目標ディスプレイの機能を決定するステップと、
前記目標ディスプレイに表示する前記異なるバージョンのうちの一バージョンを選択して復号するステップと、を有する方法。
(付記11) 前記選択された、異なるバージョンのうちの一バージョンを復号するステップは、ベースレイヤとエンハンスメントレイヤを復号し、前記エンハンスメントレイヤに応じて前記ベースレイヤを修正するステップを有する、付記10に記載の方法。
(付記12) ビデオ処理装置であって、
データ処理ステージを有し、前記データ処理ステージは:
ビデオコンテンツの異なる複数のバージョンであって、異なる色域、異なるフレームレート、及び異なるビット深度にうち1つ以上を有する複数のバージョンを符号化したビデオデータを読み取り、
前記バージョンのうちの一バージョンが目標ディスプレイにおける表示に最適化されているか決定し、
前記バージョンのうちの一バージョンが目標ディスプレイにおける表示に最適化されているとの決定に応じて、前記バージョンのうちの一バージョンを前記目標ディスプレイにおける表示のために供給するように構成された、ビデオ処理装置。
(付記13) 前記異なるバージョンのうちの少なくとも二バージョンを結合して、前記異なるバージョンのうちの少なくとも二バージョンの補間である出力信号とする補間部を有する、付記12に記載のビデオ処理装置。
(付記14) 前記補間部は、制御入力を有し、前記第1と第2の入力ビデオ信号における対応する値間の差分に、前記制御入力で受け取った値に基づく量をかけるように構成された、付記13に記載のビデオ処理装置。
(付記15) 前記制御入力は、前記目標ディスプレイにおける周辺照明状態を示す信号を受け取るように接続された、付記14に記載のビデオ処理装置。
(付記16) 前記目標ディスプレイに組み込まれた、付記12に記載のビデオ処理装置。
(付記17) トランスコーダに組み込まれた、付記12に記載のビデオ処理装置。
(付記18) 前記データ処理ステージは、前記目標ディスプレイにおける周辺照明状態に関する情報を受け取り、前記バージョンのうちの一バージョンが前記周辺照明状態下において前記目標ディスプレイにおける表示のために最適化されているか決定するように構成された、付記12に記載のビデオ処理装置。
(付記19) ビデオ処理装置であって、
ビデオ信号からベースレイヤと1つ又は複数のエンハンスメントレイヤを取り出し、それぞれが異なるビデオコンテンツのバージョンを符号化した複数の入力信号を生成するように構成されたデコーダと、
前記複数の入力信号を受け取り、前記入力信号に対応する前記異なるバージョンの補間である出力信号を出力するように接続された補間部と、を有するビデオ処理装置。
(付記20) 目標ディスプレイにおける周辺照明状態を検出するように配置された光センサから周辺照明信号を受け取り、前記周辺照明信号の値に少なくとも部分的に基づき前記補間部を制御するように接続された、付記19に記載のビデオ処理装置。
(付記21) 前記補間部は、前記入力信号に関連する機能に対する前記目標ディスプレイの機能に基づき補間を実行するように構成された、付記19に記載のビデオ処理装置。
(付記22) 前記補間部は、制御入力を有し、前記第1と第2の入力ビデオ信号における対応する値間の差分に、前記制御入力で受け取った値に基づく量をかけるように構成された、付記19に記載のビデオ処理装置。
(付記23) 前記補間部は、知覚曲線に沿って補間または外挿を行うように構成された、付記19に記載のビデオ処理装置。
(付記24) 前記補間部は、照度の対数により補間または外挿を行うように構成された、付記19に記載のビデオ処理装置。
(付記25) 異なる複数のビデオコンテンツのバージョンであって、異なる色域を有し、異なるフレームレートを有し、異なるビット深度を有し、または異なる周辺光のレベル下での視聴のために最適化された異なるバージョンを符号化したコンピュータ読み取り可能ビデオデータを有する持続的媒体。
(付記26) 前記ビデオデータは、ベースレイヤと複数のエンハンスメントレイヤとを有し、前記異なるバージョンは、前記ベースレイヤと、前記エンハンスメントレイヤと組み合わせた前記ベースレイヤとを有する、付記25に記載の媒体。
(付記27) 前記ビデオデータは、ベースレイヤと複数のエンハンスメントレイヤとを有し、少なくとも一エンハンスメントレイヤは3次元情報を有する、付記25に記載の媒体。
(付記28) カラーグレーディングステーションであって、
ビデオコンテンツを含むデータ記憶部と、
複数のディスプレイと、
コントローラであって、前記コントローラは、
前記ビデオコンテンツを前記複数のディスプレイの各ディスプレイに表示し、
前記複数のディスプレイの各ディスプレイに表示するため前記ビデオコンテンツの最適化を含む対応するユーザ入力を受け取り、
それぞれが前記複数のディスプレイの一ディスプレイに関連した最適化を含む前記ビデオコンテンツの複数のバージョンを記憶し、
前記異なる複数のビデオコンテンツのバージョンを符号化したコンピュータ読み取り可能ビデオデータに前記複数のバージョンを結合するコントローラと、を有するカラーグレーディングステーション。
(付記29) 前記ビデオコンテンツはベースレイヤと複数のエンハンスメントレイヤとを有する、付記28に記載のカラーグレーディングステーション。
(付記30) メディアサーバであって、同じビデオコンテンツの複数のバージョンを含むデータ記憶部を有し、目標ディスプレイにおける表示のために最適化された前記ビデオコンテンツのバージョンの一バージョンの選択と、前記ビデオコンテンツの異なる複数のバージョンから前記最適化されたビデオコンテンツの生成の一方又は両方により、目標ディスプレイにおける表示のために最適化されたビデオコンテンツを生成するように構成された、メディアサーバ。
(付記31) ここに説明するか又は図面に示した新規で有用な発明的特徴、又は特徴の組合せ、又は特徴の部分的な組合せを有する装置。
(付記32) ここに説明するか又は図面に示した新規で有用な発明的ステップ及び/又は動作、又はステップ及び/又は動作の組合せ、又はステップ及び/又は動作の部分的な組合せを有する方法。
【0061】
上記開示を考慮して当業者には明らかなように、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、本発明を実施するにあたり多くの変更と修正が可能である。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲により画定される。