(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記交差阻止アッセイがELISAアッセイであり、並びに、前記(i)の第1抗体若しくはそのフラグメントのみ又は前記(ii)の第2抗体のみの存在下で得られるスクレロスチン検出シグナルと比較して、前記(i)の第1抗体若しくはそのフラグメント及び前記(ii)の第2抗体の存在下のスクレロスチン検出シグナルの60%から100%の間の減少が、前記抗体又はそのフラグメントがスクレロスチンとの結合について前記第2抗体と競合することを示す、請求項1に記載の方法。
前記交差阻止アッセイが表面プラズモン共鳴アッセイであり、並びに、前記(ii)の第2抗体の存在下で前記(i)の第1抗体若しくはそのフラグメントとスクレロスチンとの理論上の最大結合の80%から4%の記録される結合が、前記抗体又はそのフラグメントがスクレロスチンとの結合について前記第2抗体と競合することを示す、請求項1に記載の方法。
前記第2抗体は、配列番号380のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号382のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
前記スクレロスチン中和アッセイが、(i)スクレロスチンの存在下で、骨芽細胞系細胞を前記抗体又はそのフラグメントと接触させる工程、並びに、(ii)石灰化を測定する工程を含み、該石灰化の増加が、前記抗体又はそのフラグメントがスクレロスチン活性を中和することを示す、請求項7に記載の方法。
前記スクレロスチン中和アッセイが、(i)前記抗体又はそのフラグメントを非ヒト哺乳動物に投与する工程、並びに、(ii)血清同化マーカー、骨形成の組織形態計測的マーカー、骨密度、骨塩量、骨量、骨質又は骨強度を測定する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明は、全長スクレロスチンにも結合する抗体によって認識されるエピトープを含有するヒトスクレロスチンタンパク質の領域、およびこうしたエピトープを作製および使用する方法に関する。本発明はまた、スクレロスチンまたはスクレロスチンの一部分に特異的に結合する結合作用物質(抗体など)、およびこのような結合作用物質を使用するための方法を提供する。この結合作用物質は、1種または複数のリガンドに対するヒトスクレロスチンの結合を遮断するまたは損なうのに有用である。
【0049】
組換えヒトスクレロスチン/SOSTがR&D Systems(米国ミネソタ州ミネアポリス、2006年カタログ番号1406-ST-025)から市販されている。さらに、組換えマウススクレロスチン/SOSTがR&D Systems(米国ミネソタ州ミネアポリス、2006年カタログ番号1589-ST-025)から市販されている。研究グレードのスクレロスチン結合性モノクローナル抗体がR&D Systems(米国ミネソタ州ミネアポリス、マウスモノクローナル:2006年カタログ番号MAB1406、ラットモノクローナル:2006年カタログ番号MAB1589)から市販されている。米国特許第6,395,511号および同第6,803,453号、および米国特許出願公開第20040009535号および同第20050106683号は概して、抗スクレロスチン抗体に言及している。
【0050】
本明細書では、ヒトスクレロスチンという用語は、配列番号1およびその対立遺伝子変異体のタンパク質を含むものとする。スクレロスチンは、スクレロスチンをコードしている遺伝子がトランスフェクトされた293T宿主細胞から、塩勾配を用いたヘパリンHPカラムを使用して宿主細胞培養液の濾過された上清を溶出することにより、精製することができる。調製および陽イオン交換クロマトグラフィーを使用したさらなる精製を実施例1および2に記載する。
【0051】
本発明の結合作用物質は、本明細書で定義される抗体であることが好ましい。「抗体」という用語は、無傷の抗体またはその結合性フラグメントを指す。抗体は、完全抗体分子(全長重鎖および/または軽鎖を有する、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、またはヒトの相当物を含む)を含んでもよく、またはその抗原結合性フラグメントを含んでもよい。抗体フラグメントには、F(ab')
2、Fab、Fab'、Fv、Fc、およびFdフラグメントが含まれ、これを、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、マキシ抗体(maxibody)、ミニ抗体(minibody)、細胞内抗体、二価抗体(diabody)、三価抗体(triabody)、四価抗体(tetrabody)、v-NAR、およびbis-scFvに組み込むこともできる(例えば、HollingerおよびHudson、2005、Nature Biotechnology, 23, 9, 1126〜1136頁を参照されたい)。また、フィブロネクチンポリペプチド一価抗体(monobody)を含めた抗体ポリペプチドは、米国特許第6,703,199号で開示されている。一本鎖ポリペプチドである別の抗体ポリペプチドは、米国特許出願公開第2005/0238646号で開示されている。
【0052】
抗体に由来する抗原結合性フラグメントは、例えば、抗体のタンパク質分解性加水分解、例えば、従来の方法による全抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。一例として、抗体フラグメントは、ペプシンによる抗体の酵素的切断によって作製され、F(ab')
2と称される5Sフラグメントを提供することができる。このフラグメントは、チオール還元剤を使用してさらに切断して、3.5SのFab'一価フラグメントを作製することができる。場合によっては、切断反応は、ジスルフィド結合の切断によって生じるスルフヒドリル基の保護基を使用して実施することができる。別の方法として、パパインを使用した酵素的切断により、2種の一価FabフラグメントおよびFcフラグメントが直接的に生じる。こうした方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,331,647号;Nisonoffら、Arch. Biochem. Biophys. 89:230、1960;Porter、Biochem. J. 73:119、1959;Edelmanら、Methods in Enzymology 1:422 (Academic Press 1967);およびAndrews, S.M.およびTitus, J.A. Current Protocols in Immunology (Coligan J.E.ら(編))、John Wiley & Sons、New York (2003)、2.8.1〜2.8.10および2.10A.1〜2.10A.5頁に記載されている。フラグメントが、無傷の抗体によって認識される抗原に結合する限り、重鎖を分離して一価の軽鎖重鎖フラグメント(Fd)を形成するなど抗体を切断するための他の方法、フラグメントのさらなる切断、または他の酵素的、化学的、もしくは遺伝的技法を使用してもよい。
【0053】
抗体フラグメントはまた、合成または遺伝子改変された任意のタンパク質であってもよい。例えば、抗体フラグメントには、軽鎖可変領域からなる単離されたフラグメント、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメント、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって結合している組換え一本鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)が含まれる。
【0054】
抗体フラグメントの別の型は、抗体の1種または複数の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドである。CDR(「最小認識単位」または「超可変領域」とも称される)は、対象のCDRをコードしているポリヌクレオチドを構築することによって得ることができる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として用い可変領域を合成することによって調製される(例えば、Larrickら、Methods: A Companion to Methods in Enzymology 2:106、1991;Courtenay-Luck、「Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies」、Monoclonal Antibodies: Production, Engineering and Clinical Application、Ritterら(編)、166頁(Cambridge University Press 1995);およびWardら、「Genetic Manipulation and Expression of Antibodies」、Monoclonal Antibodies: Principles and Applications、Birchら(編)、137頁(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照されたい)。
【0055】
したがって、一実施形態では、結合作用物質は、本明細書に記載の少なくとも1種のCDRを含む。結合作用物質は、本明細書に記載の少なくとも2、3、4、5、または6種のCDRを含んでもよい。結合作用物質は、本明細書に記載の抗体の少なくとも1種の可変領域ドメインをさらに含んでもよい。可変領域ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってよく、通常、ヒトスクレロスチンへの結合を司る少なくとも1種のCDR配列、例えば、本明細書に具体的に記載されているCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、および/または軽鎖CDRを含み、このCDRは、1種または複数のフレームワーク配列に隣接しているかまたはそれとインフレームにある。おおまかに言えば、可変(V)領域ドメインは、イムノグロブリン重(V
H)鎖および/または軽(V
L)鎖可変ドメインの任意の適切な配列であってよい。したがって、例えば、V領域ドメインは、単量体であってよく、以下に記載の通り、少なくとも1x10
-7Mに等しい、またはそれ以下の親和性でヒトスクレロスチンに独立に結合することができるV
HまたはV
Lドメインであってもよい。あるいは、V領域ドメインは、二量体であってよく、V
H-V
H、V
H-V
L、またはV
L-V
L二量体を含有してもよい。V領域二量体は、非共有結合していてよい少なくとも1種のV
H鎖および少なくとも1種のV
L鎖を含む(以下、F
Vと称される)。必要に応じて、これらの鎖は、直接的に、例えば、2つの可変ドメインの間のジスルフィド結合を介して、またはリンカー、例えばペプチドリンカーを介して共有結合して、一本鎖Fv(scF
V)を形成してもよい。
【0056】
可変領域ドメインは、自然に存在する任意の可変ドメインまたは改変されたその相当物であってよい。改変された相当物とは、組換えDNA工学的技法を使用して作製された可変領域ドメインを意味する。このような改変された相当物には、例えば、特異的な抗体のアミノ酸配列への挿入、その欠失、または変化によって特異的な抗体可変領域から作製されたものが含まれる。特定の例には、少なくとも1種のCDR、ならびに場合によっては第1の抗体からの1種または複数のフレームワークアミノ酸および第2の抗体からの可変領域ドメインの残りを含有する改変された可変領域ドメインが含まれる。
【0057】
可変領域ドメインは、C末端アミノ酸で少なくとも1種の他の抗体ドメインまたはそのフラグメントに共有結合していてもよい。したがって、例えば、可変領域ドメインに存在するVHドメインをイムノグロブリンCH1ドメインまたはそのフラグメントに連結してよい。同様に、V
LドメインをC
Kドメインまたはそのフラグメントに連結してもよい。このようにして、例えば、この抗体は、それぞれCH1およびC
KドメインにそのC末端で共有結合している会合したV
HおよびV
Lドメインを抗原結合性ドメインが含有するFabフラグメントであってよい。CH1ドメインは、例えば、Fab'フラグメントに存在するヒンジ領域またはヒンジ領域ドメインの一部分を提供するか、または抗体CH2およびCH3ドメインなどのさらなるドメインを提供するようにさらなるアミノ酸で延長してもよい。
【0058】
本明細書に記載の通り、結合作用物質は、こうしたCDRのうちの少なくとも1つを含む。例えば、1種または複数のCDRを、既知の抗体フレームワーク領域(IgG1、IgG2など)に組み込むか、またはその半減期を延長するために適切な媒体とコンジュゲートしてもよい。適当な媒体には、それだけには限定されないが、Fc、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、トランスフェリンなどが含まれる。こうした媒体および他の適当な媒体は、当技術分野で知られている。コンジュゲートしたこのようなCDRペプチドは、単量体、二量体、四量体、または他の型であってよい。一実施形態では、1種または複数の水溶性ポリマーが1つまたは複数の特異的位置、例えば、結合作用物質のアミノ末端に結合している。
【0059】
ある好ましい実施形態では、結合作用物質は、それだけには限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、またはポリプロピレングリコールを含めた1種または複数の水溶性ポリマー結合部を含む。例えば、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、および同第4,179,337号を参照されたい。ある実施形態では、誘導体結合作用物質は、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたは他の糖鎖に基づくポリマー、ポリ-(N-ビニルピロリドン)-ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、およびポリビニルアルコール、ならびにこのようなポリマーの混合物のうちの1つまたは複数を含む。ある実施形態では、1種または複数の水溶性ポリマーは、1つまたは複数の側鎖にランダムに結合している。ある実施形態では、PEGは、抗体などの結合作用物質の治療能力を改善するように作用することができる。このようないくつかの方法は、例えば、任意の目的で参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,133,426号で検討されている。
【0060】
本発明の結合作用物質は、結合作用物質が結合特異性を保持する限り、少なくとも1種のアミノ酸置換を有してよいことが理解されよう。したがって、結合作用物質構造に対する改変は、本発明の範囲内に包含される。これらは、結合作用物質のスクレロスチン結合可能性を損なわない、保存的または非保存的であってよいアミノ酸置換を含んでよい。保存的アミノ酸置換は、通常、生物系における合成によってではなく化学的ペプチド合成によって組み込まれた、自然に存在しないアミノ酸残基を包含してよい。これらには、ペプチド模倣体および他の反転型または逆方向型のアミノ酸部分が含まれる。保存的アミノ酸置換は、その位置でのアミノ酸残基の極性または電荷に対する影響がほとんどまたは全くないような、標準の残基による自然のアミノ酸残基の置換を含んでもよい。
【0061】
非保存的置換は、アミノ酸またはアミノ酸模倣体のあるクラスのメンバーを、異なる物理的性質(例えば、サイズ、極性、疎水性、電荷)を有する別のクラスのメンバーと交換することを含んでよい。このような置換される残基を、非ヒト抗体と相同であるヒト抗体の領域に、またはその分子の非相同領域に導入してよい。
【0062】
さらに、当業者であれば、所望の各アミノ酸残基に単一アミノ酸置換を含む試験変異体を作製することもできる。次いで、この変異体は、当業者に知られている活性アッセイを使用してスクリーニングすることができる。このような変異体は、適当な変異体についての情報を収集するのに使用できるはずである。例えば、特定のアミノ酸残基への変化により活性が損なわれ、望ましくなく低下し、または不適当となることが発見された場合、このような変化を有する変異体は回避してもよい。換言すれば、当業者であれば、このような常用の実験から収集された情報に基づき、単独のまたは他の突然変異と組み合わせたさらなる置換を回避すべきであるアミノ酸を容易に判定することができる。
【0063】
当業者であれば、周知の技法を使用して本明細書に記載されるポリペプチドの適当な変異体を判定できよう。ある実施形態では、当業者であれば、活性にとって重要ではないと考えられる領域を標的とすることにより活性を損なわずに変化し得る分子の適当な範囲を同定することもできる。ある実施形態では、類似のポリペプチドの間で保存されている分子の残基および一部分を同定することができる。ある実施形態では、生物活性にとってまたは構造にとって重要であり得る範囲でさえ、生物活性を損なわずに、またはポリペプチド構造に悪影響を及ぼさずに保存的アミノ酸置換に供してもよい。
【0064】
さらに、当業者であれば、活性または構造にとって重要である類似のポリペプチドにおける残基を同定する構造機能研究を検討することができる。このような比較を考慮して、類似のタンパク質における活性または構造にとって重要であるアミノ酸残基に相当する、タンパク質におけるアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者であれば、このような予測された重要なアミノ酸残基からの、化学的に類似したアミノ酸置換を選ぶこともできる。
【0065】
当業者であれば、三次元構造およびアミノ酸配列を類似のポリペプチドにおけるその構造に関して分析することもできる。当業者であれば、このような情報を考慮して、抗体のアミノ酸残基のアライメントをその三次元構造に関して予測することもできる。ある実施形態では、当業者であれば、タンパク質の表面上にあると予測されるアミノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用に関連し得るので、このような残基に対する根本的な変化を起こさないことを選ぶこともできる。
【0066】
いくつかの科学出版物で二次構造の予測に取り組んでいる。Moult J.、Curr. Op. in Biotech., 7(4):422〜427頁(1996); Chouら、Biochemistry, 13(2):222〜245頁(1974); Chouら、Biochemistry, 113(2):211〜222頁(1974); Chouら、Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47:45〜148頁(1978); Chouら、Ann. Rev. Biochem., 47:251〜276頁;およびChouら、Biophys. J., 26:367〜384頁(1979)を参照されたい。さらに、コンピュータプログラムが、二次構造を予測することを支援するのに現在利用可能である。二次構造を予測する一方法は、ホモロジーモデリングに基づく。例えば、30%を超える配列同一性または40%を超える類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、類似の構造トポロジーを有することが多い。タンパク質構造データベース(PDB)の最近の成長は、ポリペプチドまたはタンパク質の構造内の折り畳みの潜在的な数を含めた二次構造の予測可能性の増大をもたらしている。Holmら、Nucl. Acid. Res., 27(1):244〜247頁(1999)を参照されたい。所与のポリペプチドまたはタンパク質に折り畳みが限定された数存在し、決定的な数の構造が解明されると、構造予測が劇的により正確になることが示唆されている(Brennerら、Curr. Op. Struct. Biol., 7(3):369-376 (1997))。
【0067】
二次構造を予測する追加の方法には、「スレッディング」(Jones, D.、Curr. Opin. Struct. Biol., 7(3):377〜87頁(1997); Sipplら、Structure, 4(1):15〜19頁(1996))、「プロファイル解析」(Bowieら、Science, 253:164〜170頁(1991); Gribskovら、Meth. Enzym., 183:146〜159頁(1990); Gribskovら、Proc. Nat. Acad. Sci., 84(13):4355〜4358頁(1987))、および「進化的連関(evolutionary linkage)」(Holm、前掲(1999)およびBrenner、前掲(1997)を参照されたい)が含まれる。
【0068】
ある実施形態では、結合作用物質の変異体には、親ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して糖鎖付加部位の数および/または型が変更されている糖鎖付加変異体が含まれる。ある実施形態では、この変異体は、天然タンパク質よりも多いまたは少ない数のN結合型糖鎖付加部位を含む。N結合型糖鎖付加部位は、配列: Asn-X-SerまたはAsn-X-Thr(配列中、Xで示されるアミノ酸残基は、プロリンを除く任意のアミノ酸残基であってよい)によって特徴づけられる。この配列を作製するためのアミノ酸残基の置換により、N結合型糖鎖の付加のための新たな潜在的部位が得られる。あるいは、この配列を除去する置換により、既存のN結合型糖鎖が取り除かれる。1つまたは複数のN結合型糖鎖付加部位(通常、自然に存在するもの)が除去され、また1つまたは複数の新たなN結合型部位が作製される、N結合型糖鎖の再配列も提供される。好ましい追加の抗体変異体には、親アミノ酸配列と比較して、1つまたは複数のシステイン残基が欠失しているか、またはこの残基で別のアミノ酸(例えば、セリン)が置換されているシステイン変異体が含まれる。システイン変異体は、不溶性の封入体の単離後など、抗体を、生物活性を有する高次構造に再び折り畳まなければならない場合に有用であり得る。システイン変異体は通常、天然タンパク質よりもシステイン残基が少なく、通常、不対システインに起因する相互作用を最小限に抑える偶数を有する。
【0069】
所望のアミノ酸置換(保存的であれ、非保存的であれ)は、このような置換が望ましいときに当業者によって決定することができる。ある実施形態では、アミノ酸置換を使用して、スクレロスチンに対する抗体の重要な残基を同定するか、または本明細書に記載のスクレロスチンに対する抗体の親和性を増大または低下させることができる。
【0070】
ある実施形態によれば、好ましいアミノ酸置換は (1)タンパク質分解の受けやすさを低減する、(2)酸化の受けやすさを低減する、(3)形成するタンパク質複合体に対する結合親和性を変更する、(4)複数の結合親和性を変更する、および/または(4)他の生理化学的または機能的性質をこのようなポリペプチドに対して付与するか、またはこの性質を改変するものである。ある実施形態によれば、単一または多重アミノ酸置換(ある実施形態では、保存的アミノ酸置換)は、自然に存在する配列中で(ある実施形態では、分子間接触を形成する1種(複数)のドメインの外側にあるポリペプチドの一部分において)行ってよい。ある実施形態では、保存的アミノ酸置換は通常、親配列の構造的特徴を実質的に変化させることはできない(例えば、置換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを切断するか、または親配列を特徴づける他の型の二次構造を破壊する傾向にあるべきでない)。当技術分野で認められているポリペプチド二次構造および三次構造の例は、参照により本明細書に組み込まれる、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton編, W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. BrandenおよびJ. Tooze編, Garland Publishing, New York, N.Y. (1991));およびThorntonら Nature 354:105 (1991)に記載されている。
【0071】
ある実施形態では、本発明の結合作用物質は、ポリマー、脂質、または他の部分と化学的に結合していてよい。
【0072】
結合作用物質は、生体適合性フレームワーク構造に組み込まれた、本明細書に記載のCDRのうちの少なくとも1つを含んでよい。一例を挙げれば、生体適合性フレームワーク構造は、局所表面領域にある、抗原に結合するアミノ酸の1つまたは複数の配列(例えば、CDR、可変領域など)を表示することができる、高次構造的に安定である構造支持体またはフレームワークまたは骨組を形成するのに十分なポリペプチドまたはその一部分を含む。このような構造は、自然に存在するポリペプチドまたはポリペプチド「折り畳み」(構造モチーフ)とすることができ、または自然に存在するポリペプチドまたは折り畳みに関するアミノ酸の付加、欠失、または置換などの1つまたは複数の改変を有し得る。こうした骨組は、ヒト、他の哺乳動物、他の脊椎動物、無脊椎動物、植物、細菌、またはウイルスなど、任意の種の(または複数種の)ポリペプチドに由来し得る。
【0073】
通常、生体適合性フレームワーク構造は、イムノグロブリンドメイン以外のタンパク質骨組または骨格に基づく。例えば、フィブロネクチン、アンキリン、リポカリン、ネオカルチノスタチン、シトクロムb、CP1ジンクフィンガー、PST1、コイルドコイル、LACI-D1、Zドメイン、およびテンダミスタット(tendramistat)ドメインに基づくものを使用してもよい(例えば、NygrenおよびUhlen、1997、Current Opinion in Structural Biology, 7, 463〜469頁を参照されたい)。
【0074】
好ましい実施形態では、本発明の結合作用物質には、本明細書に記載のヒト化抗体が含まれることがわかるだろう。本明細書に記載のものなど、ヒト化抗体は、当業者に知られている技法を使用して作製することができる(Zhang, W.ら、Molecular Immunology. 42(12):1445〜1451頁、2005; Hwang Wら、Methods. 36(1):35〜42頁、2005; Dall'Acqua WFら、Methods 36(1):43〜60頁、2005;およびClark, M.、Immunology Today. 21(8):397〜402頁、2000)。
【0075】
さらに、当業者であれば、適当な結合作用物質には、本明細書で具体的に開示される、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの1つまたは複数など、こうした抗体の一部分が含まれることがわかるだろう。CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3の領域のうちの少なくとも1つは、結合作用物質が、置換されていないCDRの結合特異性を保持する限り、少なくとも1つのアミノ酸置換を有してよい。結合作用物質の非CDR部分は、非タンパク質分子であってよく、結合作用物質は、本明細書で開示される抗体がスクレロスチンに結合することを交差阻止し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。結合作用物質の非CDR部分は、非タンパク質分子であってよく、結合作用物質は、「ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ」で抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つによって示されるものと類似するヒトスクレロスチンペプチドへの結合パターンを示し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。結合作用物質の非CDR部分は、アミノ酸で構成されていてよく、結合作用物質は、組換え結合タンパク質または合成ペプチドであり、組換え結合タンパク質は、本明細書で開示される抗体がスクレロスチンに結合することを交差阻止し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。結合作用物質の非CDR部分は、アミノ酸で構成されていてよく、結合作用物質は、組換え結合タンパク質であり、組換え結合タンパク質は、ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ(以下に記載されている)で抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab
-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つによって示されるものと類似するヒトスクレロスチンペプチドへの結合パターンを示し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。
【0076】
抗体は、上記の通りCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3のうちの1つまたは複数を含む場合、こうした配列をコードしているDNAを含有する宿主細胞からの発現によって得ることができる。各CDR配列をコードしているDNAは、必要に応じて、オリゴヌクレオチド合成技法、部位特異的変異誘発、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を使用して、CDRのアミノ酸配列に基づいて決定し、任意の所望の抗体可変領域フレームワークおよび定常領域のDNA配列と一緒に合成してもよい。可変領域フレームワークおよび定常領域をコードしているDNAは、当業者にGenBank(登録商標)などの遺伝子配列データベースから広く利用可能である。上記CDRはそれぞれ通常、カバット付番方式によれば、可変領域フレームワークの重鎖の31〜35位(CDR-H1)、50〜65位(CDR-H2)、および95〜102位(CDR-H3)ならびに軽鎖の24〜34位(CDR-L1)、50〜56位(CDR-L2)、および89〜97位(CDR-L3)に位置する(Kabatら、1987 Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健社会福祉省、NIH、米国)。
【0077】
本発明の抗体またはその断片をコードしているDNAは、合成する場合は、いくつかの既知の発現ベクターを使用して、核酸の切り出し、ライゲーション、形質転換、およびトランスフェクションのための種々の周知の操作のいずれかに従って増殖および発現させることができる。したがって、ある実施形態では、抗体フラグメントの発現は、好ましくは、大腸菌(Escherichia coli)などの原核生物宿主中で行われる(例えば、Pluckthunら、1989 Methods Enzymol. 178:497〜515頁を参照されたい)。他のある実施形態では、抗体またはその断片の発現は、好ましくは、酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)、およびピキアパストリス(Pichia pastoris))、動物細胞(哺乳動物細胞を含む)、または植物細胞を含めた真核生物の宿主細胞中で行われる。適当な動物細胞の例には、それだけには限定されないが、骨髄腫(マウスNSO系統など)、COS、CHO、またはハイブリドーマ細胞が含まれる。植物細胞の例には、タバコ、トウモロコシ、ダイズ、およびイネ細胞が含まれる。
【0078】
抗体可変領域および/または定常領域をコードしているDNAを含有する1種または複数の複製可能な発現ベクターを調製し、使用して、抗体産生が起こると思われる、適切な細胞系、例えば、マウスNSO系統などの非産生性骨髄腫細胞系、または大腸菌などの細菌を形質転換することもできる。効率的な転写および翻訳を得るために、各ベクター中のDNA配列には、可変ドメイン配列に作動可能に連結した適切な調節配列、特にプロモーターおよびリーダー配列が含まれるべきである。このように抗体を産生するための特定の方法は通常、周知であり、常法に従って使用される。例えば、基本的な分子生物学的操作は、Maniatisらによって記載されている(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1989; Maniatisら、3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, New York, (2001)も参照されたい)。DNAシークエンシングは、Sangerら(PNAS 74:5463, (1977))およびAmersham International plcシークエンシングハンドブックに記載の通り実施することができ、部位特異的変異誘発は、当技術分野で知られている方法に従って実施することができる(Kramerら、Nucleic Acids Res. 12:9441, (1984); Kunkel、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488〜92頁(1985); Kunkelら、Methods in Enzymol. 154:367〜82頁(1987); Anglian Biotechnology Ltdハンドブック)。さらに、数多くの刊行物に、DNAの操作、発現ベクターの作製、および形質転換、および適切な細胞の培養による抗体の調製に適した技法を記載している(Mountain AおよびAdair, J R、Biotechnology and Genetic Engineering Reviews (Tombs, M P編, 10, Chapter 1, 1992, Intercept, Andover, UK) ;「Current Protocols in Molecular Biology」, 1999, F.M. Ausubel (編), Wiley Interscience, New York)。
【0079】
上記CDRのうちの1つまたは複数を含有する本発明による抗体の親和性を改善することは、望ましい場合、CDRを維持すること(Yangら、J. Mol. Biol., 254, 392〜403頁、1995)、鎖シャフリング(chain shuffling)(Marksら、Bio/Technology, 10, 779〜783頁、1992)、大腸菌の変異系統の使用(Lowら、J. Mol. Biol., 250, 350〜368頁、1996)、DNAシャフリング(Pattenら、Curr. Opin. Biotechnol., 8, 724〜733頁、1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J. Mol. Biol., 256, 7〜88頁、1996)、およびセクシャルPCR(sexual PCR)(Crameriら、Nature, 391, 288〜291頁、1998)を含めたいくつかのアフィニティーマチュレーションプロトコールによって得ることができる。アフィニティーマチュレーションのこうした方法はすべて、Vaughanら(Nature Biotechnology, 16、535〜539頁、1998)によって検討されている。
【0080】
本発明による他の抗体は、本明細書に記載され当技術分野で知られている従来の免疫化および細胞融合操作によって得ることができる。本発明のモノクローナル抗体は、種々の既知の技法を使用して作製してもよい。通常、特異的な抗原に結合するモノクローナル抗体は、当業者に知られている方法によって得ることができる(例えば、Kohlerら、Nature 256:495頁、1975; Coliganら(編)、Current Protocols in Immunology, 1:2.5.12.6.7 (John Wiley & Sons 1991);米国特許第RE32,011号、同第4,902,614号、同第4,543,439号、および同第4,411,993号; Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Plenum Press, Kennett, McKearn, and Bechtol (編) (1980);およびAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Lane (編), Cold Spring Harbor Laboratory Press (1988); Picksleyら、「Production of monoclonal antibodies against proteins expressed in E. coli」, DNA Cloning 2: Expression Systems, 2nd Edition, Gloverら(編), 93頁(Oxford University Press 1995)を参照されたい)。抗体フラグメントは、タンパク質分解性消化、または場合によっては、タンパク質分解性消化(例えば、パパインまたはペプシンを使用)、続いてジスルフィド結合の軽度の減少およびアルキル化など、任意の適当な標準的技法を使用して、その抗体から得てもよい。あるいは、このようなフラグメントは、本明細書に記載の組換え遺伝子工学技法によって作製してもよい。
【0081】
モノクローナル抗体は、当技術分野で知られており本明細書に記載されている方法に従って、動物、例えば、ラット、ハムスター、ウサギ、または好ましくは、例えば、当技術分野で知られているトランスジェニックまたはノックアウトを含めたマウスに、配列番号1のヒトスクレロスチンまたはその断片を含む免疫原を注射することによって得ることができる。特異的な抗体産物の存在は、最初の注射後および/または追加免疫の注射の後に、血清試料を得、当技術分野で知られており本明細書に記載されているいくつかの免疫検出方法のうちのいずれか1つを使用して、ヒトスクレロスチンまたはペプチドに結合する抗体の存在を検出することによってモニタリングしてよい。所望の抗体を産生する動物から、リンパ球、最も一般的には脾臓またはリンパ節由来の細胞を取り出してBリンパ球を得る。次いで、Bリンパ球を、薬物で感作された骨髄腫細胞融合パートナー、好ましくは、免疫された動物と同系であり、場合によっては、他の望ましい特性(例えば、内在性Ig遺伝子産物を発現できないこと、例えば、P3X63-Ag8.653(ATCC番号CRL1580); NSO、SP20)を有するパートナーと融合して、不死の真核細胞系統であるハイブリドーマを産生する。リンパ様(例えば、脾臓)細胞および骨髄腫細胞は、ポリエチレングリコールまたは非イオン性界面活性剤などの膜融合促進物質と数分間混合し、次いで、融合していない骨髄腫細胞ではなくハイブリドーマ細胞の増殖を支援する選択培地に低密度で播種して培養してもよい。好ましい選抜培地はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)である。十分な時間、通常約1〜2週間が経過してから細胞のコロニーを観察する。単一コロニーを単離し、当技術分野で知られており本明細書に記載されている種々のイムノアッセイのうちのいずれか1つを使用して、細胞によって産生された抗体をヒトスクレロスチンに対する結合活性について試験してよい。ハイブリドーマをクローニングし(例えば、限界希釈クローニングによって、または軟寒天プラーク単離によって)、スクレロスチンに特異的な抗体を産生する陽性クローンを選択し、培養する。ハイブリドーマ培養物由来のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養物の上清から単離してよい。マウスモノクローナル抗体を産生するための代替方法は、ハイブリドーマ細胞を同系のマウス、例えば、モノクローナル抗体を含有する腹水の形成を促進するように処置された(例えば、プリスタンで初回刺激を受けた)マウスの腹腔に注射することである。モノクローナル抗体は、種々の確立した技法によって単離し、精製することができる。このような単離技法には、Protein-Aセファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが含まれる(例えば、Coligan 2.7.1〜2.7.12頁および2.9.1〜2.9.3頁; Bainesら、「Purification of Immunoglobulin G (IgG)」, Methods in Molecular Biology, Vol. 10, 79〜104頁(The Humana Press, Inc. 1992)を参照されたい)。モノクローナル抗体は、抗体の特定の性質(例えば、重鎖または軽鎖アイソタイプ、結合特異性など)に基づいて選択された適切なリガンドを使用したアフィニティークロマトグラフィーによって精製してよい。固体支持体に固定化された適当なリガンドの例には、プロテインA、Gタンパク質、抗定常領域(軽鎖または重鎖)抗体、抗イディオタイプ抗体、およびTGF-β結合タンパク質、またはそのフラグメントもしくは変異体が含まれる。
【0082】
本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体であってもよい。ヒトモノクローナル抗体は、当業者であれば精通しているいくつかの技法によって作製してもよい。このような方法には、それだけには限定されないが、ヒト末梢血細胞(例えば、Bリンパ球を含有する)のエプスタイン・バーウイルス(EBV)による形質転換、ヒトB細胞のin vitroでの免疫化、挿入されたヒト免疫グロブリン遺伝子を運ぶ免疫トランスジェニックマウス由来の脾臓細胞の融合、ヒト免疫グロブリンV領域ファージライブラリーからの単離、または当技術分野で知られており本明細書での開示に基づく他の操作が含まれる。例えば、ヒトモノクローナル抗体は、抗原のチャレンジに応答して特異的なヒト抗体を産生するように改変されたトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、例えば、Greenら、Nature Genet. 7:13頁、1994; Lonbergら、Nature 368:856頁、1994; Taylorら、Int. Immun. 6:579頁、1994;米国特許第5,877,397号; Bruggemannら、1997 Curr. Opin. Biotechnol. 8:455〜58頁; Jakobovitsら、1995 Ann. N. Y. Acad. Sci. 764:525〜35頁に記載されている。この技法では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントは、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座の標的破壊を含む胚幹細胞系統に由来するマウスの系統に導入される(Bruggemannら、Curr. Opin. Biotechnol. 8:455〜58頁(1997)も参照されたい)。例えば、ヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、ミニ遺伝子構築物、または酵母人工染色体上の導入遺伝子座であってよく、これは、マウスリンパ組織におけるB細胞特異的なDNA再配列および超変異を起こす。ヒトモノクローナル抗体は、次いでスクレロスチンに特異的なヒト抗体を産生し得るトランスジェニックマウスを免疫することによって得ることができる。免疫されたトランスジェニックマウスのリンパ球を使用して、本明細書に記載の方法に従ってヒト抗体を分泌するハイブリドーマを産生することができる。ヒト抗体を含有するポリクローナル血清は、免疫された動物の血液から得ることもできる。
【0083】
本発明のヒト抗体を産生するための別の方法には、EBV形質転換によりヒト末梢血細胞を不死化することが含まれる。例えば、米国特許第4,464,456号を参照されたい。スクレロスチンに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するこのような不死化B細胞系統(またはリンパ芽球腫細胞系)は、本明細書で示される免疫検出法、例えばELISAによって同定し、次いで、標準的なクローニング技法によって単離することができる。抗スクレロスチン抗体を産生するリンパ芽球腫細胞系の安定性は、当技術分野で知られている方法に従って、形質転換細胞系をマウス骨髄腫と融合してマウスヒト雑種細胞系統を産生することによって改善され得る(例えば、Glaskyら、Hybridoma 8:377〜89頁(1989)を参照されたい)。ヒトモノクローナル抗体を作製するさらにまた別の方法は、ヒト脾臓B細胞をヒトスクレロスチンで初回刺激し、続いて初回刺激を受けたB細胞をヘテロ雑種融合パートナーと融合することを含むin vitroでの免疫化である。例えば、Boernerら、1991 J. Immunol. 147:86〜95頁を参照されたい。
【0084】
ある実施形態では、抗ヒトスクレロスチン抗体を産生しているB細胞を選択し、当技術分野で知られており(WO92/02551; 米国特許第5,627,052号; Babcookら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843〜48頁(1996))本明細書に記載されている分子生物学的技法に従って、軽鎖および重鎖可変部をB細胞からクローニングする。免疫された動物由来のB細胞は、スクレロスチンに特異的に結合する抗体を産生している細胞を選択することにより脾臓、リンパ節、または末梢血試料からによって単離してよい。B細胞は、ヒトから、例えば、末梢血試料から単離してもよい。所望の特異性を有する抗体を産生している単一B細胞を検出するための方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、プラーク形成、蛍光活性化細胞分取、in vitroでの刺激、続く特異的な抗体の検出などによるものである。特異的な抗体産生B細胞を選択するための方法には、例えば、ヒトスクレロスチンを含有する軟寒天におけるB細胞の単細胞懸濁液を調製することが含まれる。B細胞によって産生された特異的な抗体が抗原に結合した結果、免疫沈降物として見ることができる複合体が形成される。所望の抗体を産生するB細胞を選択した後、当技術分野で知られており本明細書に記載されている方法に従って特異的な抗体遺伝子をDNAまたはmRNAを単離し、増幅することによってクローニングすることもできる。
【0085】
本発明の抗体を得るための追加の方法は、ファージディスプレイによるものである。例えば、Winterら、1994 Annu. Rev. Immunol. 12:433〜55頁; Burtonら、1994 Adv. Immunol. 57:191〜280頁を参照されたい。ヒトまたはマウスイムノグロブリン可変領域遺伝子コンビナトリアルライブラリーは、TGF-β結合タンパク質またはその変異体もしくは断片に特異的に結合するIgフラグメント(Fab、Fv、sFv、またはその多量体)を選択するようにスクリーニングすることができるファージベクター中で作製することができる。例えば、米国特許第5,223,409号; Huseら、1989 Science 246:1275-81頁; Sastryら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5728〜32頁(1989); Alting-Meesら、Strategies in Molecular Biology 3:1〜9頁(1990); Kangら、1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:4363〜66頁; Hoogenboomら、1992 J. Molec. Biol. 227:381〜388頁; Schlebuschら、1997 Hybridoma 16:47〜52頁およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。例えば、Ig可変領域フラグメントをコードしている複数のポリヌクレオチド配列を含有するライブラリーを、M13などの繊維状バクテリオファージまたはその変異体のゲノム中に、ファージコートタンパク質をコードしている配列とインフレームで挿入してもよい。融合タンパク質は、コートタンパク質と軽鎖可変領域ドメインおよび/または重鎖可変領域ドメインとの融合物であってよい。ある実施形態によれば、イムノグロブリンFabフラグメントをファージ粒子上に提示することもできる(例えば、米国特許第5,698,426号を参照されたい)。
【0086】
重鎖および軽鎖イムノグロブリンcDNA発現ライブラリーは、例えば、λlmmunoZap(商標)(H)およびλImmunoZap(商標)(L)ベクター(Stratagene、La Jolla、カリフォルニア州)を使用してλファージ中で調製することもできる。簡潔に述べると、mRNAをB細胞集団から単離し、λImmunoZap(H)およびλImmunoZap(L)ベクター中で重鎖および軽鎖イムノグロブリンcDNA発現ライブラリーを作製するために使用する。こうしたベクターを個々にスクリーニングするかまたは共発現させて、Fabフラグメントまたは抗体を形成してもよい(前掲のHuseら参照;前掲のSastryらも参照)。続いて、陽性プラークを、モノクローナル抗体フラグメントの大腸菌からの高レベル発現を可能にする非溶菌性プラスミドに変換してもよい。
【0087】
一実施形態では、ハイブリドーマにおいて、対象のモノクローナル抗体を発現する遺伝子の可変領域はヌクレオチドプライマーを使用して増幅される。こうしたプライマーは、当業者によって合成してもよく、または市販の供給源から購入してもよい(例えば、中でもV
Ha、V
Hb、V
Hc、V
Hd、C
H1、V
L、およびC
L領域用のプライマーを含め、マウスおよびヒト可変領域用のプライマーを販売するStratagene(La Jolla、カリフォルニア州)参照されたい)。こうしたプライマーを使用して重鎖または軽鎖可変領域を増幅することができ、次いで、これらの領域をそれぞれImmunoZAP(商標)HまたはImmunoZAP(商標)L(Stratagene)などのベクター中に挿入することができる。次いで、こうしたベクターは、大腸菌、酵母、または哺乳動物に基づく系に導入して発現させることができる。V
HドメインとV
Lドメインの融合物を含有する大量の単鎖タンパク質は、こうした方法を使用して産生することができる(Birdら、Science 242:423-426、1988を参照されたい)。
【0088】
本発明による抗体を産生する細胞を上記の免疫化および他の技法のいずれかを使用して得た場合、本明細書に記載の標準的な手順に従って、その細胞からDNAまたはmRNAを単離し増幅することによって特異的な抗体遺伝子をクローニングしてよい。それにより産生された抗体をシークエンシングしてよく、同定されたCDRおよびCDRをコードしているDNAを前記の通り操作して本発明による他の抗体を作製してよい。
【0089】
結合作用物質は、スクレロスチンに特異的に結合することが好ましい。すべての結合作用物質および結合アッセイと同様に、当業者であれば、結合作用物質が治療上有効であり適当であるために検出可能な程度に結合すべきでない様々な部分については、列挙することは網羅的であり、非実際的であろうことを認識する。したがって、本明細書で開示される結合作用物質に関して、「特異的に結合する」という用語は、結合作用物質が、無関係の対照タンパク質に結合するよりも大きな親和性でスクレロスチン、好ましくはヒトスクレロスチンに結合できることを指す。対照タンパク質は、ニワトリ卵白リゾチームであることが好ましい。結合作用物質は、スクレロスチンに、対照タンパク質の親和性の少なくとも50、100、250、500、1000、または10,000倍を超える親和性で結合することが好ましい。結合作用物質は、ヒトスクレロスチンに対して1×10
-7M以下、1×10
-8M以下、1×10
-9M以下、1×10
-10M以下、1×10
-11M以下、または1×10
-12M以下の結合親和性を有してよい。
【0090】
親和性は、親和性ELISAアッセイによって決定できる。ある実施形態では、親和性は、BIAcoreアッセイによって決定できる。ある実施形態では、親和性は、速度論的方法によって決定できる。ある実施形態では、親和性は、平衡/溶液法によって決定できる。このような方法は、本明細書でさらに詳細に記載されているか、当技術分野で公知である。
【0091】
本発明のスクレロスチン結合作用物質は、本明細書に記載の細胞に基づくアッセイおよび/または本明細書に記載のin vivoアッセイでスクレロスチン機能を調節し、かつ/または本明細書に記載のエピトープのうちの1つまたは複数に結合し、かつ/または本願明細書に記載の抗体のうちの1つが結合することを交差阻止し、かつ/または本願明細書に記載の抗体のうちの1つによりスクレロスチンに結合することが交差阻止されることが好ましい。したがって、このような結合作用物質は、本明細書に記載のアッセイを使用して同定することができる。
【0092】
ある実施形態では、結合作用物質は、本明細書で示すエピトープのうちのもう1つに結合し、および/または本明細書に記載の細胞に基づくアッセイおよび/またはin vivoアッセイで中和し、かつ/または本願明細書に記載の抗体を交差阻止し、かつ/または本願明細書に記載の抗体のうちの1つによりスクレロスチンに結合することが交差阻止される抗体を最初に同定することによって作製される。次いで、こうした抗体からのCDR領域を使用し、適切な生体適合性フレームワーク中に挿入して、スクレロスチン結合作用物質を作製する。結合作用物質のCDR以外の部分は、アミノ酸で構成されていてもよく、または非タンパク質分子であってもよい。本明細書に記載のアッセイは、結合作用物質の特性決定を可能にする。本発明の結合作用物質は、本明細書で定義される抗体であることが好ましい。
【0093】
抗体などの一部のタンパク質は、種々の翻訳後修飾を受け得ることは、当業者であれば理解されよう。こうした修飾の種類および程度は、タンパク質を発現させるために使用される宿主細胞系統ならびに培養条件に依存することが多い。このような修飾には、糖鎖形成の変異、メチオニン酸化、ジケトピペリジン形成、アスパラギン酸異性化、およびアスパラギンアミド分解が含まれ得る。よくある修飾は、カルボキシペプチダーゼの作用によるカルボキシ末端の塩基性残基(リジンまたはアルギニンなど)の喪失である(Harris, RJ、Journal of Chromatography 705:129〜134頁、1995に記載されている)。
【0094】
Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、およびAb-1と称される抗体を以下に記載する。「HC」は重鎖を指し、「LC」は軽鎖を指す。以下のいくつかの抗体について、CDRは網掛けとし、定常(C)領域は太字のイタリックで示す。
【0095】
Ab-D
抗体D(本明細書ではAb-DおよびMab-Dとも称される)は、スクレロスチンとの高親和性結合を示すマウス抗体である。Ab-DのBIAcore結合パターンは
図18に示す。
【0096】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-D軽鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
【化1】
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【0097】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-D LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化2】
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【0098】
シグナルペプチドを含めたAb-D LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化3】
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【0099】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-D LCの核酸配列は以下の通りである:
【化4】
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【0100】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-D HC重鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
【化5】
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【0101】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-D HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化6】
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【0102】
シグナルペプチドを含めたAb-D HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化7】
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【0103】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-D HCの核酸配列は以下の通りである:
【化8】
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【0104】
Ab-Dの重鎖の可変領域にあるCDR(相補性決定領域)配列は以下の通りである:
CDR-H1:DHYMS(配列番号39)
CDR-H2:DINPYSGETTYNQKFKG(配列番号40)
CDR-H3:DDYDASPFAY(配列番号41)
【0105】
Ab-Dの軽鎖可変領域CDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:QASQGTSINLN(配列番号42)
CDR-L2:GSSNLED(配列番号43)
CDR-L3:LQHSYLPYT(配列番号44)
【0106】
Ab-C
抗体C(本明細書ではAb-CおよびMab-Cとも称される)は、スクレロスチンとの高親和性結合を示すマウス抗体である。Ab-CのBIAcore結合パターンは
図17に示す。T成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-C軽鎖のアミノ酸配列は以下の通りである:
【化9】
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【0107】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-C LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化10】
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【0108】
シグナルペプチドを含めたAb-C LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化11】
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【0109】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-C LCの核酸配列は以下の通りである:
【化12】
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【0110】
Ab-C重鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-C HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化13】
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【0111】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-C HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化14】
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【0112】
シグナルペプチドを含めたAb-C HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化15】
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【0113】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-C HCの核酸配列は以下の通りである:
【化16】
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【0114】
Ab-Cの重鎖の可変領域にあるCDR(相補性決定領域)配列は以下の通りである:
CDR-H1:DCYMN(配列番号45)
CDR-H2:DINPFNGGTTYNQKFKG(配列番号46)
CDR-H3:SHYYFDGRVPWDAMDY(配列番号47)
【0115】
Ab-Cの軽鎖可変領域CDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:KASQSVDYDGDSYMN(配列番号48)
CDR-L2:AASNLES(配列番号49)
CDR-L3:QQSNEDPWT(配列番号50)
【0116】
Ab-A
抗体A(本明細書ではAb-AおよびMab-Aとも称される)は、スクレロスチンとの高親和性結合を示すウサギマウスキメラ抗体。Ab-AのBIAcore結合パターンは
図15に示す。
【0117】
Ab-A軽鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-A LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化17】
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【0118】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-A LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化18】
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【0119】
シグナルペプチドを含めたAb-A LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化19】
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【0120】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-A LCの核酸配列は以下の通りである:
【化20】
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【0121】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-A HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化21】
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【0122】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-A HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化22】
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【0123】
シグナルペプチドを含めたAb-A HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化23】
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【0124】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-A HCの核酸配列は以下の通りである:
【化24】
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【0125】
Ab-Aの重鎖の可変領域にあるCDR(相補性決定領域)配列は以下の通りである:
CDR-H1:SYWMN(配列番号51)
CDR-H2:TIDSGGRTDYASWAKG(配列番号52)
CDR-H3:NWNL(配列番号53)
【0126】
Ab-Aの軽鎖可変領域CDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:QSSQSVYDNNWLA(配列番号54)
CDR-L2:DASDLAS(配列番号55)
CDR-L3:QGAYNDVIYA(配列番号56)
【0127】
Ab-Aをヒト化し、抗体1と称され(本明細書ではAb-1とも称される)、これは以下の配列を有する。
【0128】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-1 LC可変領域の核酸配列は以下の通りである:
【化25】
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【0129】
シグナルペプチドを含めたAb-1 LC可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである:
【化26】
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【0130】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-1 HC可変領域の核酸配列は以下の通りである:
【化27】
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【0131】
シグナルペプチドを含めたAb-1 HC可変領域のアミノ酸配列は以下の通りである:
【化28】
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【0132】
Ab-1の重鎖の可変領域にあるCDR(相補性決定領域)配列は以下の通りである:
CDR-H1:SYWMN(配列番号51)
CDR-H2:TIDSGGRTDYASWAKG(配列番号52)
CDR-H3:NWNL(配列番号53)
【0133】
Ab-1の軽鎖可変領域CDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:QSSQSVYDNNWLA(配列番号54)
CDR-L2:DASDLAS(配列番号55)
CDR-L3:QGAYNDVIYA(配列番号56)
【0134】
Ab-B
抗体B(本明細書ではAb-BおよびMab-Bとも称される)は、スクレロスチンとの高親和性結合を示すマウス抗体である。Ab-BのBIAcore 結合パターンは
図16に示す。
【0135】
Ab-B軽鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-B LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化29】
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【0136】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-B LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化30】
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【0137】
シグナルペプチドを含めたAb-B LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化31】
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【0138】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-B LCの核酸配列は以下の通りである:
【化32】
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【0139】
Ab-B重鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-B HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化33】
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【0140】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-B HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化34】
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【0141】
シグナルペプチドを含めたAb-B HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化35】
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【0142】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-B HCの核酸配列は以下の通りである:
【化36】
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【0143】
本明細書で開示される抗体は、ヒトスクレロスチンの領域に結合し、この領域は、そのタンパク質のin vivo活性にとって重要である。スクレロスチンに対する抗体の結合は、例えば、実施例5および9(マウス)ならびに実施例12(サル)に記載されているin vivoでの抗体の使用によって達成される、例えば骨密度の増大と関連し得る。骨形成、骨塩量、骨量、骨質、および骨強度のうちの少なくとも1つの増大も、例えば、実施例5および9(マウス)ならびに実施例12(サル)に記載されているin vivoでの抗体の使用によって達成することができる。スクレロスチンに対する抗体の結合はそのCDR配列によって主に決定されるので、本発明を実施するための抗体は、適切なフレームワーク中で開示したCDR配列のすべてまたは一部を用いて作製してよく、この抗体は、スクレロスチンに特異的に結合する能力を保持し、例えば骨密度の増大を達成することを期待することができる。このような抗体は、低骨形成、低骨密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、および低骨強度のうちの少なくとも1つによって引き起こされる、それに伴う、またはそれをもたらすヒトまたは動物の状態の治療に有用である。本発明のCDRを含む抗体およびそのフラグメントを構築し発現させる方は、当業者に知られている。
【0144】
したがって、本発明は、一実施形態では、スクレロスチンに特異的に結合するAb-Aを含めた単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関し、この重鎖の可変ドメインは、CDR-H1に関する配列番号51、CDR-H2に関する配列番号52、およびCDR-H3に関する配列番号53で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-H1に関する配列番号51、CDR-H2に関する配列番号52、およびCDR-H3に関する配列番号53のペプチドのうちの少なくとも1つからなる重鎖可変ドメインを含んでよい。
【0145】
本発明の抗体に軽鎖が存在する場合、この軽鎖は、任意の適当な相補鎖であってよく、特に、可変ドメインが、CDR-L1に関する配列番号54、CDR-L2に関する配列番号55、およびCDR-L3に関する配列番号56で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む軽鎖から選択してよい。この抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-L1に関する配列番号54、CDR-L2に関する配列番号55、およびCDR-L3に関する配列番号56のペプチドのうちの少なくとも1つからなる軽鎖可変ドメインを含んでよい。
【0146】
本発明はさらに、スクレロスチンに特異的に結合するAb-Bを含めた単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関し、この重鎖の可変ドメインは、CDR-H1に関する配列番号57、CDR-H2に関する配列番号58、およびCDR-H3に関する配列番号59で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-H1に関する配列番号57、CDR-H2に関する配列番号58、およびCDR-H3に関する配列番号59のペプチドのうちの少なくとも1つからなる重鎖可変ドメインを含んでよい。
【0147】
本発明の抗体に軽鎖が存在する場合、この軽鎖は、任意の適当な相補鎖であってよく、特に、可変ドメインが、CDR-L1に関する配列番号60、CDR-L2に関する配列番号61、およびCDR-L3に関する配列番号62で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む軽鎖から選択してよい。この抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-L1に関する配列番号60、CDR-L2に関する配列番号61、およびCDR-L3に関する配列番号62のペプチドのうちの少なくとも1つからなる軽鎖可変ドメインを含んでよい。
【0148】
本発明はさらに、スクレロスチンに特異的に結合するAb-Cを含めた単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関し、この重鎖の可変ドメインは、CDR-H1に関する配列番号45、CDR-H2に関する配列番号46、およびCDR-H3に関する配列番号47で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-H1に関する配列番号45、CDR-H2に関する配列番号46、およびCDR-H3に関する配列番号47のペプチドのうちの少なくとも1つからなる重鎖可変ドメインを含んでよい。
【0149】
本発明の抗体に軽鎖が存在する場合、この軽鎖は、任意の適当な相補鎖であってよく、特に、可変ドメインが、CDR-L1に関する配列番号48、CDR-L2に関する配列番号49、およびCDR-L3に関する配列番号50で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む軽鎖から選択してよい。この抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-L1に関する配列番号48、CDR-L2に関する配列番号49、およびCDR-L3に関する配列番号50のペプチドのうちの少なくとも1つからなる軽鎖可変ドメインを含んでよい。
【0150】
本発明はまた、スクレロスチンに特異的に結合するAb-Dを含めた単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関し、この重鎖の可変ドメインは、CDR-H1に関する配列番号39、CDR-H2に関する配列番号40、およびCDR-H3に関する配列番号41で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む。抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-H1に関する配列番号39、CDR-H2に関する配列番号40、およびCDR-H3に関する配列番号41のペプチドのうちの少なくとも1つからなる重鎖可変ドメインを含んでよい。
【0151】
本発明の抗体に軽鎖が存在する場合、この軽鎖は、任意の適当な相補鎖であってよく、特に、可変ドメインが、CDR-L1に関する配列番号42、CDR-L2に関する配列番号43、およびCDR-L3に関する配列番号44で示される配列を有する少なくとも1種のCDRを含む軽鎖から選択してよい。この抗体またはその抗原結合性フラグメントは、CDRが、CDR-L1に関する配列番号42、CDR-L2に関する配列番号43、およびCDR-L3に関する配列番号44のペプチドのうちの少なくとも1つからなる軽鎖可変ドメインを含んでよい。
【0152】
追加の抗スクレロスチン抗体を以下に記載する。アミノ酸配列の一部について、相補性決定領域(CDR)は網掛けとし、定常領域は太字のイタリックで示す。
【0153】
Ab-2
抗体2 (Ab-2とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである:
Ab-2 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-2 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化37】
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【0154】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-2 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化38】
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【0155】
シグナルペプチドを含めたAb-2 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化39】
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【0156】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-2 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化40】
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【0157】
Ab-2 重鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-2 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化41】
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【0158】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-2 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化42】
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【0159】
シグナルペプチドを含めたAb-2 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化43】
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【0160】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-2 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化44】
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【0161】
Ab-3
抗体3 (本明細書ではAb-3とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0162】
Ab-3 軽鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-3 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化45】
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【0163】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-3 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化46】
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【0164】
シグナルペプチドを含めたAb-3 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化47】
[この文献は図面を表示できません]
【0165】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-3 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化48】
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【0166】
Ab-3 重鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-3 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化49】
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【0167】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-3 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化50】
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【0168】
シグナルペプチドを含めたAb-3 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化51】
[この文献は図面を表示できません]
【0169】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-3 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化52】
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【化53】
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【0170】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-4 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化54】
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【0171】
シグナルペプチドを含めたAb-4 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化55】
[この文献は図面を表示できません]
【0172】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-4 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化56】
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【0173】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-4 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化57】
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【0174】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-4 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化58】
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【0175】
シグナルペプチドを含めたAb-4 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化59】
[この文献は図面を表示できません]
【0176】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-4 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化60】
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【0177】
Ab-4 をヒト化し、Ab-5を生成させた。
Ab-5
抗体5(本明細書ではAb-5とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0178】
Ab-5 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-5 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化61】
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【0179】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-5 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化62】
[この文献は図面を表示できません]
【0180】
シグナルペプチドを含めたAb-5 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化63】
[この文献は図面を表示できません]
【0181】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-5 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化64】
[この文献は図面を表示できません]
【0182】
Ab-5 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-5 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化65】
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【0183】
カルボキシ末端のリジンがない成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-5 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化66】
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【0184】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-5 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化67】
[この文献は図面を表示できません]
【0185】
シグナルペプチドを含めたAb-5 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化68】
[この文献は図面を表示できません]
【0186】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-5 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化69】
[この文献は図面を表示できません]
【0187】
Ab-5 可変ドメイン:
Ab-5軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列なし):
【化70】
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【0188】
Ab-5軽鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列なし):
【化71】
[この文献は図面を表示できません]
【0189】
Ab-5重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列なし):
【化72】
[この文献は図面を表示できません]
【0190】
Ab-5重鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列なし):
【化73】
[この文献は図面を表示できません]
【0191】
Ab-5の重鎖の可変領域にあるCDR(相補性決定領域)配列は以下の通りである:
CDR-H1:DYNMH (配列番号245)
CDR-H2:EINPNSGGAGYNQKFKG (配列番号246)
CDR-H3:LGYDDIYDDWYFDV (配列番号247)
【0192】
Ab-5の軽鎖可変領域CDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:RASQDISNYLN (配列番号78)
CDR-L2:YTSRLLS (配列番号79)
CDR-L3:QQGDTLPYT (配列番号80)
【0193】
Ab-6
抗体6 (本明細書ではAb-6とも称される) LCおよびHCの配列は以下の通りである:
Ab-6 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-6 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化74】
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【0194】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-6 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化75】
[この文献は図面を表示できません]
【0195】
シグナルペプチドを含めたAb-6 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化76】
[この文献は図面を表示できません]
【0196】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-6 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化77】
[この文献は図面を表示できません]
【0197】
Ab-6 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-6 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化78】
[この文献は図面を表示できません]
【0198】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-6 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化79】
[この文献は図面を表示できません]
【0199】
シグナルペプチドを含めたAb-6 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化80】
[この文献は図面を表示できません]
【0200】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-6 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化81】
[この文献は図面を表示できません]
【0201】
Ab-7
抗体7 (本明細書ではAb-7とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである:
Ab-7 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-7 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化82】
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【0202】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-7 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化83】
[この文献は図面を表示できません]
【0203】
シグナルペプチドを含めたAb-7 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化84】
[この文献は図面を表示できません]
【0204】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-7 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化85】
[この文献は図面を表示できません]
【0205】
Ab-7 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-7 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化86】
[この文献は図面を表示できません]
【0206】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-7 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化87】
[この文献は図面を表示できません]
【0207】
シグナルペプチドを含めたAb-7 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化88】
[この文献は図面を表示できません]
【0208】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-7 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化89】
[この文献は図面を表示できません]
【0209】
Ab-8
抗体8 (本明細書ではAb-8とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである:
Ab-8 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-8 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化90】
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【0210】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-8 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化91】
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【0211】
シグナルペプチドを含めたAb-8 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化92】
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【0212】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-8 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化93】
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【0213】
Ab-8 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-8 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化94】
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【0214】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-8 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化95】
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【0215】
シグナルペプチドを含めたAb-8 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化96】
[この文献は図面を表示できません]
【0216】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-8 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化97】
[この文献は図面を表示できません]
【0217】
Ab-9
抗体9 (本明細書ではAb-9とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである:
Ab-9 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-9 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化98】
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【0218】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-9 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化99】
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【0219】
シグナルペプチドを含めたAb-9 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化100】
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【0220】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-9 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化101】
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【0221】
Ab-9 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-9 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化102】
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【0222】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-9 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化103】
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【0223】
シグナルペプチドを含めたAb-9 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化104】
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【0224】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-9 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化105】
[この文献は図面を表示できません]
【0225】
Ab-10
抗体10 (本明細書ではAb-10とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである:
Ab-10 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-10 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化106】
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【0226】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-10 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化107】
[この文献は図面を表示できません]
【0227】
シグナルペプチドを含めたAb-10 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化108】
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【0228】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-10 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化109】
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【0229】
Ab-10 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-10 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化110】
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【0230】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-10 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化111】
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【0231】
シグナルペプチドを含めたAb-10 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化112】
[この文献は図面を表示できません]
【0232】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-10 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化113】
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【0233】
Ab-11
抗体11 (本明細書ではAb-11とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0234】
Ab-11 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-11 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化114】
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【0235】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-11 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化115】
[この文献は図面を表示できません]
【0236】
シグナルペプチドを含めたAb-11 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化116】
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【0237】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-11 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化117】
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【0238】
Ab-11 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-11 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化118】
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【0239】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-11 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化119】
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【0240】
シグナルペプチドを含めたAb-11 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化120】
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【0241】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-11 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化121】
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【0242】
Ab-12
抗体12 (本明細書ではAb-12とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0243】
Ab-12 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-12 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化122】
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【0244】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-12 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化123】
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【0245】
シグナルペプチドを含めたAb-12 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化124】
[この文献は図面を表示できません]
【0246】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-12 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化125】
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【0247】
Ab-12 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-12 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化126】
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【0248】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-12 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化127】
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【0249】
シグナルペプチドを含めたAb-12 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化128】
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【0250】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-12 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化129】
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【0251】
Ab-13
抗体13 (本明細書ではAb-13とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0252】
Ab-13 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-13 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化130】
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【0253】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-13 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化131】
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【0254】
シグナルペプチドを含めたAb-13 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化132】
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【0255】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-13 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化133】
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【0256】
Ab-13 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-13 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化134】
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【0257】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-13 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化135】
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【0258】
シグナルペプチドを含めたAb-13 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化136】
[この文献は図面を表示できません]
【0259】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-13 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化137】
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【0260】
Ab-13をヒト化して、Ab-14を生成させた。
抗体14 (本明細書ではAb-14とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0261】
Ab-14 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-14 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化138】
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【0262】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-14 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化139】
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【0263】
シグナルペプチドを含めたAb-14 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化140】
[この文献は図面を表示できません]
【0264】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-14 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化141】
[この文献は図面を表示できません]
【0265】
Ab-14 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-14 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化142】
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【0266】
カルボキシ末端のリジンがない成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-14 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化143】
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【0267】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-14 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化144】
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【0268】
シグナルペプチドを含めたAb-14 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化145】
[この文献は図面を表示できません]
【0269】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-14 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化146】
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【0270】
Ab-14の重鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-H1:DYYMN (配列番号296)
CDR-H2:DINPYNDDTTYNHKFKG (配列番号297)
CDR-H3:ETAVITTNAMD (配列番号298)
【0271】
Ab-14の軽鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:RASSSVTSSYLN (配列番号284)
CDR-L2:STSNLAS (配列番号285)
CDR-L3:QQYDFFPST (配列番号286)
【0272】
Ab-14 可変ドメイン:
Ab-14軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列 (シグナル配列ナシ):
【化147】
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【0273】
Ab-14軽鎖可変ドメインのDNA配列 (シグナル配列ナシ):
【化148】
[この文献は図面を表示できません]
【0274】
Ab-14重鎖可変ドメインのアミノ酸配列 (シグナル配列ナシ):
【化149】
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【0275】
Ab-14重鎖可変ドメインのDNA配列 (シグナル配列ナシ):
【化150】
[この文献は図面を表示できません]
【0276】
Ab-3をヒト化して、Ab-15を生成させた。
Ab-15
抗体15 (本明細書ではAb-15とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0277】
Ab-15 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-15 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化151】
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【0278】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-15 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化152】
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【0279】
シグナルペプチドを含めたAb-15 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化153】
[この文献は図面を表示できません]
【0280】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-15 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化154】
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【0281】
Ab-15 重鎖
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-15 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化155】
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【0282】
カルボキシ末端のリジンを含まない成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-15 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化156】
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【0283】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-15 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化157】
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【0284】
シグナルペプチドを含めたAb-15 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化158】
[この文献は図面を表示できません]
【0285】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-15 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化159】
[この文献は図面を表示できません]
【0286】
Ab-15の重鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-H1:DFYLH (配列番号290)
CDR-H2:RIDPENGDTLYDPKFQD (配列番号291)
CDR-H3:EADYFHDGTSYWYFDV (配列番号292)
【0287】
Ab-15の軽鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-L1:SVSSTISSNHLH (配列番号278)
CDR-L2:GTSNLAS (配列番号279)
CDR-L3:QQWSSYPLT (配列番号280)
【0288】
Ab-15 可変ドメイン:
Ab-15軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化160】
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【0289】
Ab-15軽鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化161】
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【0290】
Ab-15重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化162】
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【0291】
Ab-15重鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化163】
[この文献は図面を表示できません]
【0292】
Ab-11をヒト化して、Ab-16を生成させた。
Ab-16
抗体16(本明細書ではAb-16とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0293】
Ab-16 軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-16 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化164】
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【0294】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-16 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化165】
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【0295】
シグナルペプチドを含めたAb-16 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化166】
[この文献は図面を表示できません]
【0296】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-16 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化167】
[この文献は図面を表示できません]
【0297】
Ab-16 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-16 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化168】
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【0298】
カルボキシ末端のリジンを含まない成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-16 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化169】
[この文献は図面を表示できません]
【0299】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-16 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化170】
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【0300】
シグナルペプチドを含めたAb-16 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化171】
[この文献は図面を表示できません]
【0301】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-16 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化172】
[この文献は図面を表示できません]
【0302】
Ab-16の重鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-H1: DYYIH (配列番号293)
CDR-H2: RVDPDNGETEFAPKFPG (配列番号294)
CDR-H3: EDYDGTYTWFPY (配列番号295)
【0303】
Ab-16の軽鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-L1: RASSSISYIH (配列番号281)
CDR-L2: ATSNLAS (配列番号282)
CDR-L3: QQWSSDPLT (配列番号283)
【0304】
Ab-16 可変ドメイン:
Ab-16軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化173】
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【0305】
Ab-16軽鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化174】
[この文献は図面を表示できません]
【0306】
Ab-16重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化175】
[この文献は図面を表示できません]
【0307】
Ab-16重鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化176】
[この文献は図面を表示できません]
【0308】
さらなる抗体は本明細書では抗体17-22と称される(本明細書ではAb-17, Ab-18, Ab-19, Ab-20, Ab-21, およびAb-22とも称される)。Ab-17, Ab-19および Ab-21のすべてのVK領域であるκ定常領域は以下の通りである:
【化177】
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【0309】
抗体17, 19および21のすべてのVH領域である重鎖定常領域は以下の通りである:
【化178】
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【0310】
以下の抗体アミノ酸配列において、網掛けは相補性決定領域(CDRs)を示し、下線を付したアミノ酸はシグナルペプチドを示す。
Ab-17
シグナルペプチドを含むAb-17 LCのアミノ酸配列:
【化179】
[この文献は図面を表示できません]
【0311】
シグナルペプチドを含むAb-17 LCの核酸配列:
【化180】
[この文献は図面を表示できません]
【0312】
シグナルペプチドを含むAb-17 HCのアミノ酸配列:
【化181】
[この文献は図面を表示できません]
【0313】
シグナルペプチドを含むAb-17 HCの核酸配列:
【化182】
[この文献は図面を表示できません]
【0314】
Ab-17をヒト化して、Ab-18を生成させた。
Ab-18
シグナルペプチドを含むAb-18 LCのアミノ酸配列:
【化183】
[この文献は図面を表示できません]
【0315】
シグナルペプチドを含むAb-18 LCの核酸配列:
【化184】
[この文献は図面を表示できません]
【0316】
シグナルペプチドを含むAb-18 HCのアミノ酸配列:
【化185】
[この文献は図面を表示できません]
【0317】
シグナルペプチドを含むAb-18 HCの核酸配列:
【化186】
[この文献は図面を表示できません]
【0318】
Ab-18軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化187】
[この文献は図面を表示できません]
【0319】
Ab-18軽鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化188】
[この文献は図面を表示できません]
【0320】
Ab-18重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化189】
[この文献は図面を表示できません]
【0321】
Ab-18重鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化190】
[この文献は図面を表示できません]
【0322】
Ab-19
シグナルペプチドを含むAb-19 LCのアミノ酸配列:
【化191】
[この文献は図面を表示できません]
【0323】
シグナルペプチドを含むAb-19 LCの核酸配列:
【化192】
[この文献は図面を表示できません]
【0324】
シグナルペプチドを含むAb-19 HCのアミノ酸配列:
【化193】
[この文献は図面を表示できません]
【0325】
シグナルペプチドを含むAb-19 HCの核酸配列:
【化194】
[この文献は図面を表示できません]
【0326】
Ab-19をヒト化して、抗体20 (本明細書ではAb-20とも称される)と抗体23 (本明細書ではAb-23とも称される)を生成させた。
Ab-20
IgG4 バージョン
シグナルペプチドを含むAb-20 LCのアミノ酸配列:
【化195】
[この文献は図面を表示できません]
【0327】
シグナルペプチドを含むAb-20 LCの核酸配列:
【化196】
[この文献は図面を表示できません]
【0328】
シグナルペプチドを含むAb-20 HCのアミノ酸配列:
【化197】
[この文献は図面を表示できません]
【0329】
シグナルペプチドを含むAb-20 HCの核酸配列:
【化198】
[この文献は図面を表示できません]
【0330】
Ab-23
IgG2 バージョン
軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-23 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化199】
[この文献は図面を表示できません]
【0331】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-23 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化200】
[この文献は図面を表示できません]
【0332】
シグナルペプチドを含めたAb-23 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化201】
[この文献は図面を表示できません]
【0333】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-23 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化202】
[この文献は図面を表示できません]
【0334】
重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-23 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化203】
[この文献は図面を表示できません]
【0335】
カルボキシ末端のリジンを含まない成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-23 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化204】
[この文献は図面を表示できません]
【0336】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-23 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化205】
[この文献は図面を表示できません]
【0337】
シグナルペプチドを含めたAb-23 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化206】
[この文献は図面を表示できません]
【0338】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-23 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化207】
[この文献は図面を表示できません]
【0339】
Ab-23の重鎖の可変領域にあるCDR (相補性決定領域)配列 は以下の通りである:
CDR-H1:DYIMH (配列番号269)
CDR-H2:YINPYNDDTEYNEKFKG (配列番号270)
CDR-H3:SIYYYDAPFAY (配列番号271)
【0340】
Ab-23の軽鎖可変領域CDR配列は以下のとおりである:
CDR-L1:RASQDISSYLN (配列番号239)
CDR-L2:STSRLNS (配列番号240)
CDR-L3:QQDIKHPT (配列番号241)
【0341】
Ab-23 可変ドメイン:
Ab-23軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化208】
[この文献は図面を表示できません]
【0342】
Ab-23軽鎖の可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化209】
[この文献は図面を表示できません]
【0343】
Ab-23重鎖の可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化210】
[この文献は図面を表示できません]
【0344】
Ab-23重鎖の可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化211】
[この文献は図面を表示できません]
【0345】
Ab-21
シグナルペプチドを含むAb-21 LCのアミノ酸配列:
【化212】
[この文献は図面を表示できません]
【0346】
シグナルペプチドを含むAb-21 LCの核酸配列:
【化213】
[この文献は図面を表示できません]
【0347】
シグナルペプチドを含むAb-21 HCのアミノ酸配列:
【化214】
[この文献は図面を表示できません]
【0348】
シグナルペプチドを含むAb-21 HCの核酸配列:
【化215】
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【0349】
Ab-21をヒト化して、Ab-22を得た。
Ab-22
シグナルペプチドを含むAb-22 LCのアミノ酸配列:
【化216】
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【0350】
シグナルペプチドを含むAb-22 LCの核酸配列:
【化217】
[この文献は図面を表示できません]
【0351】
シグナルペプチドを含むAb-22 HCのアミノ酸配列:
【化218】
[この文献は図面を表示できません]
【0352】
シグナルペプチドを含むAb-22 HCの核酸配列:
【化219】
[この文献は図面を表示できません]
【0353】
Ab-22軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化220】
[この文献は図面を表示できません]
【0354】
Ab-22軽鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化221】
[この文献は図面を表示できません]
【0355】
Ab-22重鎖可変ドメインのアミノ酸配列(シグナル配列ナシ):
【化222】
[この文献は図面を表示できません]
【0356】
Ab-22重鎖可変ドメインのDNA配列(シグナル配列ナシ):
【化223】
[この文献は図面を表示できません]
【0357】
Ab-18, Ab-20およびAb-22について、軽鎖ヒトκ定常領域は以下の通りである:
【化224】
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【0358】
および重鎖ヒトγ-4定常領域は以下の通りである:
【化225】
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【0359】
ヒンジー領域はヒンジーの安定性を改善するためのSer-241-Pro 変異を含む(Angal S et al, (1993), Mol Immunol, 30(1), 105-108)。
【0360】
Ab-24
抗体24(本明細書ではAb-24とも称される)のLCおよびHCの配列は以下の通りである。
【0361】
軽鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-24 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化226】
[この文献は図面を表示できません]
【0362】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-24 LCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化227】
[この文献は図面を表示できません]
【0363】
シグナルペプチドを含めたAb-24 LCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化228】
[この文献は図面を表示できません]
【0364】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-24 LCの核酸配列は以下の通りである:
【化229】
[この文献は図面を表示できません]
【0365】
Ab-24 重鎖:
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-24 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化230】
[この文献は図面を表示できません]
【0366】
成熟型(シグナルペプチド除去)のAb-24 HCをコードしている核酸配列は以下の通りである:
【化231】
[この文献は図面を表示できません]
【0367】
シグナルペプチドを含めたAb-24 HCのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化232】
[この文献は図面を表示できません]
【0368】
シグナルペプチドコード配列を含めたAb-24 HCの核酸配列は以下の通りである:
【化233】
[この文献は図面を表示できません]
【0369】
Ab-24の軽鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-L1: KASQSVDYDGTSYMN (配列番号351)
CDR-L2: AASNLES (配列番号352)
CDR-L3: QQSNEDPFT (配列番号353)
【0370】
Ab-24の重鎖の可変領域にあるCDR配列は以下の通りである:
CDR-H1: TYWMN (配列番号358)
CDR-H2: MIHPSASEIRLDQKFKD (配列番号359)
CDR-H3: SGEWGSMDY (配列番号360)
【0371】
以下のTable 1に、配列番号とAb-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23およびAb-24のアミノ酸配列を示す。カバット付番方式(Kabat et al., 1987 in Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Department of Health and Human Services, NIH, USA)にしたがい、L1、L2およびL3は軽鎖CDR 1、2、および 3を示し、H1、H2およびH3 は重鎖CDR 1、2、および 3を示す。
【表1】
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【0374】
オリゴペプチドまたはポリペプチドは、上記の表1のCDRのうちの少なくとも1つ;および/または抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つがスクレロスチンに結合することを交差阻止し、かつ/または抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つによりスクレロスチンに結合することが交差阻止されるスクレロスチン結合作用物質のCDR;および/または細胞に基づく石灰化アッセイでスクレロスチンの抑制作用を遮断することができるスクレロスチン結合作用物質(すなわち、スクレロスチン中和結合作用物質)のCDR;および/またはループ2にエピトープに結合するスクレロスチン結合作用物質のCDR;および/またはT20.6エピトープに結合するスクレロスチン結合作用物質のCDR;および/または「T20.6誘導体(シスチンノット+アーム4本)」エピトープに結合するスクレロスチン結合作用物質のCDRと少なくとも75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有する場合は本発明の範囲内にある。
【0375】
スクレロスチン結合作用物質ポリペプチドおよび抗体は、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つの可変領域と少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有し、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つがスクレロスチンに結合することを交差阻止し、かつ/または抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つによりスクレロスチンに結合することが交差阻止され;かつ/または細胞に基づく石灰化アッセイでスクレロスチンの抑制作用を遮断することができ(すなわち、スクレロスチン中和結合作用物質);かつ/またはループ2エピトープに結合し;かつ/またはT20.6エピトープに結合し;かつ/または「T20.6誘導体(シスチンノット+アーム4本)」エピトープに結合する場合は本発明の範囲内にある。
【0376】
スクレロスチン結合作用物質をコードしているポリヌクレオチドは、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つの可変領域をコードしているポリヌクレオチドと少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるポリヌクレオチド配列を有し、およびコードされるこのスクレロスチン結合作用物質は、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つがスクレロスチンに結合することを交差阻止し、かつ/または抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24のうちの少なくとも1つによりスクレロスチンに結合することが交差阻止され;かつ/または細胞に基づく石灰化アッセイでスクレロスチンの抑制作用を遮断することができ(すなわち、スクレロスチン中和結合作用物質);かつ/またはループ2エピトープに結合し;かつ/またはT20.6エピトープに結合し;かつ/または「T20.6誘導体(シスチンノット+アーム4本)」エピトープに結合する場合は本発明の範囲内にある。
【0377】
本発明による抗体は、ヒトスクレロスチンに対して1×10
-7M以下、1×10
-8M以下、1×10
-9M以下、1×10
-10M以下、1×10
-11M以下、または1×10
-12M以下の結合親和性を有してよい。
【0378】
抗体または結合パートナーなどの結合作用物質の親和性、ならびに結合作用物質(抗体など)が結合を阻害する程度は、従来の技術、例えば、Scatchardら(Ann. N.Y. Acad. Sci. 51:660〜672頁(1949))によって記載されているものを使用して、または表面プラズモン共鳴(SPR;BIAcore、Biosensor、Piscataway社、ニュージャージー州)により当業者によって決定することができる。表面プラズモン共鳴については、標的分子が固相に固定化され、フローセルに流れる移動相中でリガンドに曝露される。固定化された標的に対するリガンド結合が起こると、局所屈折率が変化し、したがってSPR角度の変化がもたらされ、この変化は、反射した光の強度の変化を検出することによりリアルタイムでモニタリングすることができる。SPRシグナルの変化速度を分析して、結合反応の会合および解離段階についての見かけの速度定数を得ることができる。こうした値の比から見かけの平衡定数(親和性)が得られる(例えば、Wolffら、Cancer Res. 53:2560〜65頁(1993)を参照されたい)。
【0379】
本発明による抗体は、任意の免疫グロブリンクラス、例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、またはIgAに属するものであってよい 。この抗体は、動物、例えば、家禽(例えば、ニワトリ)および哺乳動物から得られるかまたはそれに由来するものであってよく、これには、それだけには限定されないが、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、もしくは他のげっ歯類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ヒト、または他の霊長類が含まれる。この抗体は、インターナライズ抗体であってよい。抗体の作製は概して米国特許出願公開第2004/0146888A1号で開示されている。
【0380】
(特性決定アッセイ)
特異的なAb-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、および抗体1〜24(Ab-1からAb-24)のCDRを、新規のフレームワークおよび/または定常領域中へと操作することを含めた、本発明に従って抗体を生成する上述の方法では、所望の抗体または結合作用物質を選択するのに、適切なアッセイが利用可能である(すなわち、スクレロスチンへの結合親和性を測定するアッセイ;交差阻止アッセイ;Biacoreに基づく「ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ」;MC3T3-E1細胞に基づくアッセイ;in vivoアッセイ)。
【0381】
(エピトープ結合アッセイ)
成熟型ヒトスクレロスチンは、シスチンノット構造を有する190アミノ酸糖タンパク質である(
図8および9)。このタンパク質は、シスチンノット構造に加えて、ループ1、ループ2、およびループ3と命名された3本のループを有することを特徴としている。断片を産生するために、ヒトスクレロスチンにタンパク質分解消化を施した。簡潔には、トリプシン、aspN、およびlysCを含めた様々なプロテアーゼを用いて、様々な切断部位およびサイズの断片を生成させた。様々なヒトスクレロスチンペプチドの配列および質量を測定した。タンパク質分解のための到達性に対する影響を決定するために、切断部位マスキング(clipped site masking)およびペプチドシフト法(peptide shifting)を含めた抗体防御を評価した。最後に、BIAcoreに基づく「ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合アッセイ」を行った。
【0382】
スクレロスチンをトリプシン切断に曝露することによって、
図13に概要が示されている、ペプチド断片のパターンがもたらされた。これらの断片はT19.2、T20、T20.6、およびT21-22と呼ばれる。
図19Bに模式的に示されているように、T20.6エピトープは、シスチンノット領域の3本のジスルフィド結合によって連結された4種の別々のペプチド配列の複合体である。これらのペプチドのうち2種が2本のジスルフィド結合によって連結されている。他の2種のペプチドが最初の2種のポリペプチドを模式的に二分する1本のジスルフィド結合によって連結されている。
【0383】
トリプシン消化によって生成されるT20.6エピトープは、天然ポリペプチドのシスチンノット構造を保持し、Ab-CおよびAb-D抗体によって認識される。エピトープT20.6の誘導体は、シスチンノット領域と、配列番号1を基準とした配列位置におけるアミノ酸58〜64位、73〜81位、112〜117位、および138〜141位とからなる。この誘導体エピトープを
図21に示す。シスチンノットの領域を含むエピトープは、T20.6エピトープ(
図19B)中に存在しているが上記T20.6誘導体エピトープ(
図21)中に存在しない1つまたは複数のアミノ酸を有してもよい。
【0384】
別のエピトープ含有領域は、ヒトスクレロスチンのループ2領域と同定され(
図19A)抗体Ab-AおよびAb-Bによって認識される。ループ2エピトープは、配列番号1のアミノ酸86〜111位(C4GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC5、配列番号6)を含む。ループ2含有構造は、立体的には、配列番号1の完全長スクレロスチンを基準にして、一端が86位(C4)のシステインと144位(C8)のシステインとの間におけるジスルフィド結合によって、もう一端が111位(C5)のシステインと57位(C1)のシステインとの間のジスルフィド結合によって定義されている。
【0385】
ヒトスクレロスチンのaspN切断によって生成されたペプチドを
図12に示す。図中、これらのペプチドは、AspN14.6、AspN18.6、およびAspN22.7-23.5と命名されており、また、本明細書ではそれぞれN14.6、N18.6、およびN22.7-23.5とも呼ばれる。
【0386】
1群の抗体は、Biacoreに基づく「ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ」によって証明される特定のエピトープへの、特定パターンの結合を示す。簡潔には、上記抗体を、抗体表面のエピトープ結合部位を飽和させる濃度の、試験されるエピトープと共にプレインキュベートする。その後、この抗体を、チップ表面に結合したスクレロスチンに曝露する。適切なインキュベーション手順および洗浄手順の後に、競合的結合のパターンを確定する。
図18に示す通り、例示的抗体であるAb-Dは、チップ表面に付着したスクレロスチン分子に結合した。抗体Ab-Dをスクレロスチンと共にプレインキュベーションすることによって、チップ上のスクレロスチンへの抗体の結合がほぼゼロにまで減少した。エピトープT19.2からなるペプチドとのプレインキュベーションは、T19.2が抗体結合に関してスクレロスチンと競合しなかったことを示した。しかし、T20、T20.6、T21-22、またはN22.7-23.5と命名されたエピトープのうちのいずれか1つとのプレインキュベーションによって、チップ上のスクレロスチンへの抗体結合の大部分が失われた。対照的に、T19.2、N14.6またはN18.6と命名されたエピトープのうちのいずれか1つとのプレインキュベーションによって、上記抗体がスクレロスチンに結合する能力は失われなかった。この結合プロフィール(
図17)を有する第2の例示的抗体がAb-Cである。
【0387】
したがって、抗体Ab-Dは、スクレロスチンに結合する抗体を阻止する能力によって測定した際、エピトープT20、T20.6、T21-22、およびN22.7-23.5に結合するが、エピトープT19.2、N14.6、およびN18.6への検出可能な結合が最小限である抗体の一群の典型および代表である。この独特の結合パターンを有する抗体は、抗体分子の1つまたは複数の領域でアミノ酸配列を共有している可能性もあれば、そうでない可能性もある。抗体の類似性は、上述のエピトープのそれぞれと共にプレインキュベーションした後における、スクレロスチンに結合する能力などによって、機能的に測定する。本発明は、抗体Ab-Dの結合パターンに類似または同一の結合パターンを示す抗体を包含する。「類似」とは、例えば、上記抗体は、ポリペプチドT20、T20.6、T21-22、およびN22.7-23.5のそれぞれへの結合を示し、それによって、この結合は、そうでなければスクレロスチンまたはスクレロスチンペプチドとのプレインキュベーションの非存在下で起こるであろう、スクレロスチンへの上記抗体の結合の少なくとも50%を競合によって特異的に排除するであろうことを意味する。また、上記抗体は、ポリペプチドT19.2、N14.6、およびN18.6に、検出可能な結合をほとんど示さないか、全く示さないであろう、その結果、スクレロスチンまたはスクレロスチンペプチドとのプレインキュベーションの非存在下で起こるであろう結合の減少が30%以下となる。
【0388】
例えば、特定の機構に拘泥するものではないが、
図18の抗体結合パターンは、抗体Ab-D、およびAb-Dのエピトープ結合パターンを有する他の抗体が結合するエピトープ空間が、スクレロスチンのシスチンノット領域を含むポリペプチドからなることを示している。
【0389】
したがって、本明細書において、そして
図19Bを参照して開示される通り、例示的T20.6エピトープは、3本の別々のジスルフィド結合を通して結合した4本のペプチド鎖を含む。ペプチド鎖SAKPVTELVC3SGQC4GPAR(配列番号3)は、ペプチド鎖LVASC7KC8KRLTR(配列番号5)に、C3からC7、およびC4からC8のジスルフィド結合によって結合している。ペプチド鎖DVSEYSC1RELHFTR(配列番号2)は、ペプチド鎖WWRPSGPDFRC5IPDRYR(配列番号4)に、C1からC5のジスルフィド結合によって結合している。
図19Bに図示する通り、配列番号3および5のポリペプチドは、立体的接触を介して配列番号2および4のポリペプチドとの会合を維持しており、C1-C5結合がC4-C8結合およびC3-C7結合の平面を横切り、それらの間に位置している。
【0390】
本明細書において、そして
図21を参照して開示される通り、T20.6の例示的誘導体エピトープは、3本の別々のジスルフィド結合を通して結合した4本のペプチド鎖を含む。ペプチド鎖SAKPVTELVC3SGQC4(配列番号70)は、ペプチド鎖LVASC7KC8(配列番号71)に、C3からC7およびC4からC8のジスルフィド結合によって結合している。ペプチド鎖C1RELHFTR(配列番号72)は、ペプチド鎖C5IPDRYR(配列番号73)に、C1からC5のジスルフィド結合によって結合している。
図21に図示する通り、配列番号70および71のポリペプチドは、立体的接触を介して配列番号72および73のポリペプチドとの会合を維持しており、C1-C5結合がC4-C8結合およびC3-C7結合の平面を横切り、それらの間に位置している。
【0391】
抗体Ab-Aは、ヒトスクレロスチンペプチドへの、抗体Ab-CおよびAb-Dに関して得られたものとは異なる独特の結合パターンを有する抗体の第2の群の典型および代表である。Ab-A、およびそれが代表する抗体の群は、スクレロスチンへの抗体結合を遮断する能力によって測定した際、N22.7-23.5エピトープに結合し、エピトープT19.2、T20、T20.6、T21-22、N14.6、またはN18.6への検出可能な結合が最小限である(
図15)。この結合プロフィール(
図16)を有する第2の例示的抗体がAb-Bである。この独特の結合パターンを有する抗体は、抗体分子の1つまたは複数の領域でアミノ酸配列を共有している可能性もあれば、そうでない可能性もある。抗体の類似性は、上述のエピトープのそれぞれと共にプレインキュベーションした後における、スクレロスチンに結合する能力などによって、機能的に測定する。本発明は、抗体Ab-Aの結合パターンに類似または同一の結合パターンを示す抗体を包含する。「類似」によって、例えば、上記抗体は、ポリペプチドN22.7-23.5への結合を示し、それによって、この結合は、そうでなければスクレロスチンまたはスクレロスチンペプチドとのプレインキュベーションの非存在下で起こるであろう、スクレロスチンへの上記抗体の結合の少なくとも50%を競合によって特異的に排除するであろう。また、上記抗体は、ポリペプチドT19.2、T20、T20.6、T21-22、N14.6、およびN18.6に、検出可能な結合をほとんど示さないか、全く示さないであろう、その結果、スクレロスチンまたはスクレロスチンペプチドとのプレインキュベーションの非存在下で起こるであろう結合の減少が30%以下となる。
【0392】
例えば、特定の機構に拘泥するものではないが、
図15の抗体結合パターンは、抗体Ab-A、およびAb-Aのエピトープ結合パターンを有する他の抗体が結合するエピトープ空間が、スクレロスチンのループ2領域を含むポリペプチドからなることを示している。したがって、本明細書において、そして
図19Aを参照して開示される通り、ループ2領域は、線形ペプチドとして記述できるが、それは、それが天然スクレロスチン、または天然のジスルフィド結合構造が維持されている、スクレロスチンのシスチンノット含有部分中に存在する場合には三次構造をとる。ループ2エピトープの線形または三次構造は、実施例で論じる通り、それへの抗体結合に影響を与え得る。ループ2領域は、以下のアミノ酸配列、すなわちC4GPARLLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC5(配列番号6)を含み得る。「C4」は、配列番号1を基準にして、位置86に位置するシステイン残基を示す。「C5」は、配列番号1を基準にして、位置111に位置するシステイン残基を示す。天然スクレロスチンタンパク質中では、C4は位置144(C8)のシステインにジスルフィド結合によって連結し、C5は位置57(C1)のシステインにジスルフィド結合によって連結している。ループ2領域に由来するエピトープにはCGPARLLPNAIGRGKWWRPS (配列番号63); GPARLLPNAIGRGKWWRPSG (配列番号64); PARLLPNAIGRGKWWRPSGP (配列番号65); ARLLPNAIGRGKWWRPSGPD (配列番号66); RLLPNAIGRGKWWRPSGPDF (配列番号67); LLPNAIGRGKWWRPSGPDFR (配列番号68);およびLPNAIGRGKWWRPSGPDFRC (配列番号69)が含まれる。
【0393】
(交差阻止アッセイ)
「交差阻止する」、「交差阻止した」、および「交差阻止」という用語は、本明細書では同義的に使用され、それによって、抗体または他の結合作用物質が、他の抗体または結合作用物質の、スクレロスチンへの結合を妨害することを意味する。
【0394】
抗体または他の結合作用物質が、別のものの、スクレロスチンへの結合を妨害できる程度、そして、したがってそれが、本発明に従って交差阻止すると言えるかどうかは、競合結合アッセイを用いて決定することができる。1つの特に適した定量的アッセイは、表面プラズモン共鳴技術を用いて相互作用の程度を測定できるBiacore器械を用いるものである。別の適した定量的交差阻止アッセイは、ELISAに基づくアプローチを用いて、抗体または他の結合作用物質相互の、スクレロスチンへのそれらの結合に関する競合を測定する。
【0395】
(BIACORE交差阻止アッセイ)
概ね、以下は、抗体または他の結合作用物質が交差阻止するかどうか、あるいは本発明に従った交差阻止が可能であるかどうかを決定するのに適したBiacoreアッセイについて説明する。便宜のために2種の抗体について言及するが、本明細書に記載のスクレロスチン結合作用物質のいずれのものを用いたアッセイも使用できることが理解されよう。Biacore器械(例えば、Biacore3000)は製造会社の推奨に従って操作する。
【0396】
したがって、ある交差阻止アッセイでは、標準的なアミンカップリング化学を用いて、スクレロスチンをCM5 Biacoreチップに結合させ、スクレロスチンコーティングされた表面を作製する。通常、200〜800共鳴単位のスクレロスチンがチップと結合されるであろう(容易に測定可能なレベルの結合を与えるが、使用される試験試薬の濃度によって容易に飽和できる量)。
【0397】
相互に交差阻止するそれらの能力を評価するべき2種の抗体(A*およびB*と呼ばれる)を、試験混合物を生成するのに適した緩衝剤中で、結合部位のモル比が1対1となるように混合する。結合部位ベースで濃度を計算する場合、抗体の分子量は、その抗体上のスクレロスチン結合部位の数で、抗体の総分子量を割ったものであると想定する。
【0398】
試験混合物中の各抗体は、Biacoreチップ上に捕捉されたスクレロスチン分子上にある、その抗体の結合部位を容易に飽和するのに十分に高い濃度であるべきである。混合物中の抗体は、相互に同じモル濃度(結合ベースで)であり、その濃度は通常、1.00〜1.5マイクロモーラー(結合部位ベースで)であろう。
【0399】
抗体A*のみを含有する溶液および抗体B*のみを含有する溶液も別々に調製する。これらの溶液中の抗体A*および抗体B*は、同じ緩衝剤中にあり、かつ試験混合物中と同じ濃度であるべきである。
【0400】
試験混合物に、スクレロスチンコーティングされたBiacoreチップ上を通過させ、結合した総量を記録する。その後、チップに結合したスクレロスチンがダメージを受けずに結合抗体が除去されるようにチップを処理する。通常これは、チップを30秒間、30mMのHClで処理することによって行う。
【0401】
その後、抗体A*のみの溶液に、スクレロスチンコーティングされた表面上を通過させ結合した総量を記録する。チップに結合したスクレロスチンがダメージを受けずにすべての結合抗体が除去されるように、再度チップを処理する。
【0402】
その後、抗体B*のみの溶液に、スクレロスチンコーティングされた表面上を通過させ、結合した総量を記録する。
【0403】
次に、抗体A*および抗体B*の混合物の理論上の最大の結合量を計算する。これが、スクレロスチン表面を単独で通過した場合における、各抗体結合の合計である。実際に記録された混合物の結合量が、この理論上の最大量より少ない場合上記2種の抗体は相互に交差阻止するものである。
【0404】
したがって、本発明による交差阻止抗体または他の結合作用物質は、上記Biacore交差阻止アッセイでスクレロスチンに結合しそれによってアッセイ中および本発明の第2の抗体または他の結合作用物質の存在下で記録される結合が、併せて、2種の抗体または結合作用物質の理論上の最大結合の80%と0.1%との間(例えば80%から4%)、詳細には理論上の最大結合の75%と0.1%との間(例えば75%から4%)、より詳細には理論上の最大結合の70%と0.1%との間(例えば70%から4%)(上記にちょうど定義した通り)となるものである。
【0405】
上述したBiacoreアッセイは、本発明に従って、抗体または他の結合作用物質が相互に交差阻止するかどうか決定するのに使用される主要アッセイである。まれにアミン化学を介してCM5 Biacoreチップに結合させたスクレロスチンに、特定の抗体または他の結合作用物質が結合しないことがある(これは通常、チップへのカップリングによって、スクレロスチン上の適切な結合部位がマスクされるか、破壊される場合に起こる)。そのような場合スクレロスチンのタグ付きバージョン、例えばN末端Hisタグ付きのスクレロスチン(R&D Systems社、米国ミネソタ州ミネアポリス;2005年カタログ番号1406-ST-025)を用いて交差阻止を測定することができる。この特定のフォーマットでは、抗His抗体をBiacoreチップ上に結合させる。そしてその後、Hisタグ付きのスクレロスチンにチップ表面上を通過させ、抗His抗体によって捕捉させる。この交差阻止分析は、各チップ再生サイクルの後に、新規のHisタグ付きスクレロスチンが抗His抗体コーティングされた表面に再添加されるであろうことを除いて本質的には上述の通りに実行される。N末端Hisタグ付きのスクレロスチンを用いる行われる例に加えて、代わりに、C末端Hisタグ付きのスクレロスチンを用いることもできよう。さらに、当技術分野で知られている他の様々なタグおよびタグ結合タンパク質の組合せ(例えば、HAタグと抗HA抗体;FLAGタグと抗FLAG抗体;ビオチンタグとストレプトアビジン)を、そのような交差阻止分析に用いることができよう。
【0406】
(ELISAに基づく交差阻止アッセイ)
概ね、以下は、抗スクレロスチン抗体または他のスクレロスチン結合作用物質が交差阻止するかどうか、あるいは本発明に従った交差阻止が可能であるかどうかを決定するのに適したELISAアッセイについて説明する。便宜のために、2種の抗体(Ab-XおよびAb-Y)について言及するが、本明細書に記載のスクレロスチン結合作用物質のいずれのものを用いたアッセイも使用できることが理解されよう。
【0407】
このアッセイの一般原理は、ELISAプレートのウェルを抗スクレロスチン抗体でコーティングすることである。潜在的に交差阻止する第2の抗スクレロスチン抗体を溶液中に過剰量添加する(すなわちELISAプレートに結合させない)。その後、限定量のスクレロスチンをウェルに添加する。コーティングされた抗体と、溶液中の抗体が限定された数のスクレロスチン分子の結合に関して競合する。コーティングされた抗体と結合していないスクレロスチンを除去するため、そして、第2の溶液相抗体および第2の溶液相抗体とスクレロスチンとの間で形成されたいかなる複合体も除去するためにプレートを洗浄する。その後、適当なスクレロスチン検出試薬を用いて、結合したスクレロスチンの量を測定する。コーティングされた抗体を交差阻止することができる溶液中の抗体は、コーティングされた抗体が第2の溶液相抗体の非存在下で結合できるスクレロスチン分子の数と比較して、コーティングされた抗体が結合できるスクレロスチン分子の数の減少を引き起こすことができよう。
【0408】
このアッセイは、Ab-XおよびAb-Yに関して、さらに後でより詳細に説明する。Ab-Xが固定抗体となるように選択されている場合、それをELISAプレートのウェルにコーティングし、その後、続いて添加される試薬の非特異的結合を最小にするために、適当なブロッキング溶液でプレートのブロッキングを行う。その後、1ウェルあたりのAb-Yスクレロスチン結合部位のモル数が、ELISAプレートのコーティング中に使用されたAb-Xスクレロスチン結合部位の1ウェルあたりのモル数より少なくとも10倍高くなるように、過剰量のAb-YをELISAプレートに添加する。その後、1ウェルあたりの、添加されたスクレロスチンのモル数が、各ウェルをコーティングするのに使用されたAb-Xスクレロスチン結合部位のモル数より少なくとも25倍低くなるようにスクレロスチンを添加する。適当なインキュベーション時間の後に、ELISAプレートを洗浄し、スクレロスチン検出試薬を添加して、コーティングされた抗スクレロスチン抗体(この場合Ab-X)が特異的に結合したスクレロスチンの量を測定する。アッセイのバックグランドシグナルは、コーティングされた抗体(この場合Ab-X)、第2の溶液相抗体(この場合Ab-Y)、スクレロスチン緩衝剤のみ(すなわちスクレロスチンなし)、およびスクレロスチン検出試薬を含有するウェルで得られたシグナルと定義する。アッセイの陽性対照シグナルは、コーティングされた抗体(この場合Ab-X)、第2の溶液相抗体緩衝剤のみ(すなわち第2の溶液相抗体なし)、スクレロスチン、およびスクレロスチン検出試薬を含有するウェルで得られたシグナルと定義する。ELISAアッセイは、陽性対照シグナルがバックグランドシグナルの少なくとも6倍となるような方法で行う必要がある。
【0409】
コーティング抗体としてどの抗体を用いるか、そして第2の(競合体)抗体としてどの抗体を用いるかに関する選択の結果として生じるいかなる人為的結果(例えば、Ab-XとAb-Yとの間で有意に異なる、スクレロスチンへの親和性)も回避するために、交差阻止アッセイは、以下の2通りのフォーマットで行う必要がある。
【0410】
1)フォーマット1は、Ab-Xが、ELISAプレートにコーティングされる抗体であり、Ab-Yが、溶液中にある競合体抗体である場合である
そして、
2)フォーマット2は、Ab-Yが、ELISAプレートにコーティングされる抗体であり、Ab-Xが、溶液中にある競合体抗体である場合である。
【0411】
Ab-XおよびAb-Yは、フォーマット1またはフォーマット2において、溶液相抗スクレロスチン抗体が、溶液相抗スクレロスチン抗体の非存在下で得られたスクレロスチン検出シグナル(すなわち陽性対照ウェル)と比較して、スクレロスチン検出シグナル(すなわちコーティングされた抗体が結合したスクレロスチンの量)の60%から100%、詳細には70%から100%の間、そしてより特異的には80%から100%の間の減少を引き起こすことができる場合、交差阻止すると定義する。
【0412】
そのようなELISAに基づく交差阻止アッセイの例は、実施例7(「ELISAに基づく交差阻止アッセイ」)に見出すことができる。
【0413】
(細胞に基づく中和アッセイ)
初代細胞でも株化細胞でも、培養中での骨芽細胞系細胞による石灰化が、骨形成のin vitroモデルとして使用されている。石灰化は、1つまたは複数の分化薬剤による骨芽細胞系細胞分化の誘導で始まり、起こるまでに約1〜6週間かかる。事象の全体的筋道には、細胞増殖、分化、細胞外マトリックス産生、マトリックス成熟、および最後にミネラルの沈着が含まれる、ミネラルの沈着は、リン酸カルシウムの結晶化および/または沈着を指す。細胞増殖および分化から始まり、ミネラルの沈着で終わる事象のこの筋道は、本明細書では石灰化という。カルシウム(ミネラル)の測定がこのアッセイの結果である。
【0414】
MC3T3-E1細胞(Sudo H, Kodama H-A, Amagai Y, Yamamoto S, Kasai S. 1983. In vitro differentiation and calcification in a new clonal osteogenic cell line derived from newborn mouse calvaria. J. Cell Biol. 96:191〜198頁)、およびオリジナルの細胞系のサブクローンは、分化薬剤の存在下における増殖の際、培養中でミネラルを形成することができる。そのようなサブクローンには、MC3T3-E1-BFが含まれる(Smith E, Redman R, Logg C, Coetzee G, Kasahara N, Frenkel B. 2000. Glucocorticoids inhibit developmental stage-specific osteoblast cell cycle. J. Biol. Chem. 275:19992〜20001頁)。オリジナルのMC3T3-E1細胞、およびMC3T3-E1-BFサブクローンの両方に関して、スクレロスチンは、ミネラル沈着に至るまで事象およびミネラル沈着を含めた事象のうちの1つまたは複数を阻害することができる(すなわちスクレロスチンは石灰化を阻害する)。スクレロスチンの阻害活性を中和できる抗スクレロスチン抗体は、スクレロスチン存在下での培養の石灰化を可能にしそのためスクレロスチンのみ(すなわち抗体なし)の処置群で測定されたカルシウム量と比較して、リン酸カルシウム(カルシウムとして測定)の沈着の統計的に有意な増大がある。
図22、23、および24に示す、細胞に基づく石灰化アッセイで使用される抗体は、約145Kdの分子量を有し、そして抗体分子あたり2カ所のスクレロスチン結合部位を有する。
【0415】
特定の抗スクレロスチン抗体または抗スクレロスチン結合作用物質がスクレロスチンを中和できるかどうか(すなわち、スクレロスチン中和抗体またはその誘導体であるかどうか、あるいはスクレロスチン中和結合作用物質であるかどうか)決定する目的で上記アッセイを行う場合、アッセイで使用されるスクレロスチンの量は、スクレロスチンなしの群で測定されたカルシウムの量と比較して、スクレロスチンのみの群におけるリン酸カルシウム(カルシウムとして測定される)の沈着の少なくとも70%の統計的に有意な減少を引き起こすスクレロスチンの最小量である必要がある。抗スクレロスチン中和抗体または抗スクレロスチン中和結合作用物質は、スクレロスチンのみ(すなわち抗体なし、結合作用物質なし)の処置群で測定されたカルシウムの量と比較して、リン酸カルシウム(カルシウムとして測定される)の沈着の統計的に有意な増大を引き起こすものとして定義する。抗スクレロスチン抗体または抗スクレロスチン結合作用物質が中和するか否かを決定するには、アッセイで使用される抗スクレロスチン抗体または抗スクレロスチン結合作用物質の量が、1ウェルあたりのスクレロスチンのモル数と比較して、1ウェルあたりのスクレロスチン結合部位が過剰なモル数となるような量である必要がある。抗体の力価に応じて、必要とされうる過剰倍数は、24、18、12、6、3、または1.5でありえ、当業者であれば、複数の濃度の結合作用物質を試験する日常的操作に精通している。例えば、非常に高力価な抗スクレロスチン中和抗体または抗スクレロスチン中和結合作用物質は、1ウェルあたりのスクレロスチンのモル数と比較して、1ウェルあたりのスクレロスチン結合部位のモル数が6倍過剰未満である場合さえスクレロスチンを中和することができるであろう。より力価の低い抗スクレロスチン中和抗体または抗スクレロスチン中和結合作用物質は、12、18、または24倍過剰でのみスクレロスチンを中和できるであろう。力価がこの全域内にあるスクレロスチン結合作用物質は、中和スクレロスチン結合作用物質として適している。例示的な細胞に基づく石灰化アッセイについは、実施例8で詳細に記述する。
【0416】
ヒトスクレロスチンを中和できる抗スクレロスチン抗体およびそれらの誘導体、ならびにヒトスクレロスチンを中和できるスクレロスチン結合作用物質低骨形成、低骨密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、および低骨強度のうち少なくとも1つによって引き起こされるか、これに関連するか、あるいはこれをもたらすヒトの状態/障害の治療に有用であり得る。
【0417】
(IN VIVO中和アッセイ)
スクレロスチンを中和でき、それによって新骨形成の刺激を引き起こすことができる結合作用物質を同定するために、新骨形成の刺激に関連する様々のパラメータの増大、またはその結果に生じる様々のパラメータの増大を、スクレロスチン結合作用物質のin vivo試験の結果として測定できる。そのようなパラメータには、様々な血清同化マーカー[例えば、オステオカルシン、P1NP(1型プロコラーゲンのn末端プロペプチド)]、骨形成の組織形態計測的マーカー(例えば、骨芽細胞表面/骨表面;骨形成速度/骨表面;小柱骨組織厚)、骨密度、骨塩量、骨質量、骨質、および骨強度が含まれる。スクレロスチン中和結合作用物質は、媒体で処置された動物との比較における、新骨形成の刺激と関連するか、あるいはそれから生じる任意のパラメータの統計的に有意な増大を引き起こすことができるものとして定義する。そのような試験は、任意の適した哺乳動物(例えば、マウス、ラット、サル)においても、in vivoで行うことができる。そのようなin vivo試験の例は、実施例5(「抗スクレロスチンモノクローナル抗体のin vivo試験」)に見出すことができる。
【0418】
スクレロスチンのアミノ酸配列は、哺乳動物諸種全体で100%同一ではない(例えば、マウススクレロスチンはヒトスクレロスチンと100%同一ではない)が、当業者であれば、特定の種(例えばマウス)のスクレロスチンをin vivoで中和でき、かつin vitroでヒトスクレロスチンにも結合できるスクレロスチン結合作用物質は、ヒトスクレロスチンin vivoを中和できる可能性が極めて高いことを理解するであろう。したがって、そのようなヒトスクレロスチン結合作用物質(例えば抗ヒトスクレロスチン抗体)は、低骨形成、低骨密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、および低骨強度のうち少なくとも1つによって引き起こされるか、これに関連するか、あるいはこれをもたらすヒトの状態/障害の治療に有用であり得る。相同組換えを用いて、マウススクレロスチン遺伝子が除去され、かつその場所にヒトスクレロスチン遺伝子が挿入されているマウス(すなわち、ヒトスクレロスチン遺伝子ノックインマウスまたはヒトSOSTノックインマウス)は、別のin vivoシステムの例であろう。
【0419】
ヒトスクレロスチンに対する抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、およびAb-1からAb-24のうちの少なくとも1つなど、上述した結合作用物質の1つを、薬学的または生理的に許容できる担体、賦形剤、または希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。医薬組成物および治療方法は、米国特許出願第60/478977号に基づく優先権を主張する、2004年6月16日出願、同時係属の米国特許出願第10/868497号に開示されているこれらの両開示を参照により本明細書に組み込む。
【0420】
例えば、皮下、経口、非経口、静脈、鼻腔内、筋肉内投与および処方を含めた、様々な治療計画で、本明細書に記載の特定の組成物を使用するのに適した投与計画および治療計画の開発は、当技術分野でよく知られており、それらの一部は、例示の一般的目的において以下に簡潔に論じられている。
【0421】
特定の適用では、本明細書に開示された医薬組成物を、動物への経口投与を介して送達することができる。したがって、これらの組成物は、不活性な希釈剤と共に、または同化できる可食担体と共に処方してもよく、あるいはそれらを硬殻または軟殻ゼラチンカプセル中に封入してもよく、あるいはそれらを錠剤に圧縮してもよく、あるいはそれらを食物と共に直接的に取り込んでもよい。
【0422】
特定の状況では本明細書に開示の医薬組成物を皮下送達、非経口送達、静脈内送達、筋肉内送達すること、または腹腔内送達することさえ望ましいであろう。そのようなアプローチは当業者に周知であり、それらの一部は、例えば、米国特許第5543158号、同第5641515号、および同第5399363号にさらに記載されている。特定の実施形態では、遊離塩基または薬理学的に許容できる塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性物質と適切に混合された水の中に調製することができる。分散剤は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物、ならびに油中に調製することもできる。貯蔵および使用の通常の条件下では、通常、これらの調製物は、微生物の成長を阻止する保存剤を含有するであろう。
【0423】
注入可能な使用に適した例示的製薬形態には、無菌注射剤または分散剤の即時調製用の無菌水溶液または分散媒および無菌粉末が含まれる(例えば米国特許第5466468号を参照)。すべての場合において、剤形は無菌でなければならず、注入容易な程度に流動的でなければならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の混入作用に対抗して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)を含有する溶媒もしくは分散媒、それらの適した混合物、および/または植物油であり得る。適当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要な粒径の維持によって、かつ/あるいは界面活性物質の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌薬および抗真菌薬によって容易にすることができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含有することが好ましいであろう。注入可能組成物の長時間にわたる吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物中での使用によってもたらすことができる。
【0424】
一実施形態では、水溶液中での非経口投与には、必要に応じて、溶液に適した緩衝作用を与えるべきであり、液体希釈剤は、最初に十分な食塩水またはグルコースで等張性を与えるべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して、利用可能な無菌水性媒体は、本開示に照らして、当業者には既知であろう。例えば、1用量を1mlの等張NaCl溶液中に溶解させ1000mlの皮下注入液中に添加するか注入が提案されている部位に注入することができる、(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., 1035〜1038頁および1570〜1580頁を参照)。ある程度の用量の変動は、治療されている対象の状態に応じて必ず起こるであろう。さらに、ヒト投与用には、調製物は当然、FDA生物製剤部の基準によって要求される無菌性基準、発熱原性基準、ならびに一般的安全性および純度基準を満たすものであろう。
【0425】
本発明の別の実施形態では、本明細書に開示の組成物は、中性または塩の形態で処方することができる。薬学的に許容される例示的な塩には、酸添加塩(タンパク質の遊離アミノ基で形成される)が含まれ、これには、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、あるいは酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基で形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、ならびにイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基からも得ることができる。処方の際には、製剤と適合した方法、および治療上有効となる量で溶液を投与するであろう。
【0426】
担体はさらに、溶媒、分散媒、媒体、コーティング剤、希釈剤、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイド、ならびに同様のもののうち任意のものおよびすべてを含むことができる。医薬品活性物質用のそのような媒体および薬剤の使用は当技術分野で周知である。従来のいかなる媒体もしくは薬剤も、活性成分と不適合でない限り、治療組成物中におけるその使用が企図されている。補足的活性成分も、組成物中に組み入れることができる。「薬学的に許容できる」という語句は、ヒトに投与された場合、アレルギー反応または類似の好ましくない反応を生み出さない分子実体および組成物を指す。
【0427】
特定の実施形態では、本発明の組成物を適した宿主細胞/生物内に導入するのに、リポソーム、ナノカプセル、マイクロ粒子、脂質粒子、ベシクルなどを用いる。詳細には、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、小胞、ナノスフェア、またはナノ粒子などの内部に封入して送達するために処方することができる。別法では、共有結合または非共有結合によって、本発明の組成物をそのような担体媒体の表面に結合させることができる。
【0428】
潜在的薬物担体としてのリポソームおよびリポソーム様調製物の形成および使用は、当業者には一般的に知られている(例えば、それぞれが参照により全体として本明細書に明白に組み込まれる、Lasic、Trends Biotechnol. 16(7):307〜21頁、1998;Takakura、Nippon Rinsho 56(3):691〜95頁、1998;Chandranら、Indian J. Exp. Biol. 35(8):801〜09頁、1997;Margalit、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 12(2-3):233〜61頁、1995;米国特許第5567434号;米国特許第5552157号;米国特許第5565213号;米国特許第5738868号および米国特許第5795587号を参照のこと)。リポソームの使用は、全身送達の後で、自己免疫応答または容認できない毒性を伴わないようである。特定の実施形態では、リポソームは、水溶媒中に分散したリン脂質から形成され、自然発生的に多重膜の同心的二重層小胞を形成する(多重膜小胞(MLV)とも呼ばれる)。
【0429】
あるいは、他の実施形態では、本発明は、本発明の組成物の薬学的に許容できるナノカプセル製剤を提供する。ナノカプセルは、通常、安定的かつ再現可能な方法で化合物を封入することができる(例えば、Quintanar-Guerreroら、Drug Dev. Ind. Pharm. 24(12):1113〜28頁、1998を参照)。細胞内の重合体過負荷による副作用を回避するために、そのような超微粒子(約0.1μmの大きさ)は、in vivoで分解可能な重合体を用いるように設計することができる。そのような粒子は、Couvreurら、Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 5(1):1〜20頁、1988;zur Muhlenら、Eur. J. Pharm. Biopharm. 45(2):149〜55頁、1998;Zambauxら、J. Controlled Release 50(1-3):31〜40頁、1998および米国特許第5145684号によって記載されている通りに作製することができる。
【0430】
加えて、本発明の医薬組成物は、そのような医薬組成物の使用に関する説明書を提供する包装材料と共に容器に入れることができる。通常、そのような説明書は、試薬濃度と、特定の実施形態の中では、医薬組成物を再構成するのに必要であり得る賦形剤成分または希釈剤(例えば、水、食塩水、またはPBS)の相対量とを記載する具体的な表現を含んでいるであろう。
【0431】
投与される用量は、0.01mg/kg体重から100mg/kg体重の範囲であり得る。当業者には明白であろうが、投与の量および頻度は当然ながら、治療される徴候の性質および重度、望ましい反応、患者の状態などの因子に依存するであろう。通常、上記組成物は、上述した様々な技法によって投与できる。
【0432】
骨塩量および/または骨密度の増大は、エックス線(例えば、二重エネルギーエックス線吸光分光分析すなわち「DEXA」)の使用を介して直接的に決定することも、1)限定されるものではないが、骨芽細胞特異的アルカリ性ホスファターゼ、オステオカルシン、1型プロコラーゲンC'プロペプチド(PICP)、総アルカリ性ホスファターゼ(Comier、Curr. Opin. in Rheu. 7:243(1995)を参照)、および血清プロコラーゲン1 N末端のプロペプチド(P1NP)などの骨形成および/または骨芽細胞活性のマーカーならびに/あるいは2)限定されるものではないが、ピリジノリン、デオキシピリジノリン、N-テロペプチド、尿中ヒドロキシプロリン、血漿酒石酸耐性酸性ホスファターゼ、およびガラクトシルヒドロキシリシン(Comier、同上を参照)、血清TRAP5b(酒石酸耐性酸性ホスファターゼアイソフォーム5b)、および血清架橋C-テロペプタイト(sCTXI)を含めた骨吸収および/または破骨細胞活性のマーカーの測定を通した推論によって決定することもできる。骨質量の量は、体重から計算しても、他の方法を用いることによって計算してもよい(Guinness-Hey、Metab. Bone Dis. Relat. Res. 5:177〜181頁、1984を参照)。例えば、骨粗鬆症および骨減少症などのヒト疾患の状態を模倣する骨量減少、骨吸収、骨形成、骨強度、または骨石灰化のパラメータへの、本発明の組成物および方法の影響を試験するために、当技術分野では、動物および特定の動物モデルを用いる。そのようなモデルの例には、卵巣切除ラットモデル(Kalu, D.N.、The ovariectomized rat model of postmenopausal bone loss. Bone and Mineral 15:175〜192頁(1991);Frost, H.M.およびJee, W.S.S. On the rat model of human osteopenias and osteoporosis. Bone and Mineral 18:227〜236頁(1992);およびJee, W.S.S.およびYao, W., Overview: animal models of osteopenia and osteoporosis. J. Musculoskel. Neuron. Interact. 1:193〜207頁(2001))が含まれる。
【0433】
本発明の組成物によって治療し得る特定の状態には、骨の成長または発生が異常である異形成、ならびに骨減少症、骨粗鬆症、および骨喪失の様々な原因が含まれる。そのような状態の代表例には、軟骨無形成症、鎖骨頭蓋異骨症、内軟骨腫症、線維性骨異形成症、ゴーシェ病、低リン血症性くる病、マルファン症候群、多発性遺伝性外骨症、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化性病変、偽関節、および化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性および二次性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性骨粗鬆症、閉経後骨量減少、骨関節炎、腎性骨異栄養症、骨浸潤性障害、口腔骨量減少、顎骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状赤血球貧血/鎌状赤血球症、臓器移植関連骨量減少、腎移植関連骨量減少、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎、サラセミア、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病、思春期特発性側弯症、乳児期発症多臓器性炎症性疾患、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(レッグ・カルベ・ペルテス病、局所性移動性骨粗鬆症など)、貧血状態、ステロイドによって引き起こされる状態、グルココルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏、突発性骨粗鬆症または骨粗鬆症、先天性骨減少症または骨減少症、アルコール症、慢性肝疾患、閉経後状態、慢性炎症性状態、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、真性糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、先端巨大症、性腺機能低下症、運動不足または非活動(immobilization or disuse)、反射性交感神経性ジストロフィー、局所性骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換に伴う骨量減少、HIVに伴う骨量減少、成長ホルモンの減少に伴う骨量減少、嚢胞性線維症に伴う骨量減少、線維性異形成化学療法に伴う骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌関連骨量減少、ホルモン遮断による骨量減少、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、神経性食欲不振症、疾患に伴う顔面骨量減少、疾患に伴う頭蓋骨量減少、疾患に伴う顎骨量減少、疾患に伴う頭骨量減少、および宇宙旅行に伴う骨量減少が含まれる。さらなる状態は、加齢に伴う顔面骨量減少、加齢に伴う頭蓋骨量減少、加齢に伴う顎骨量減少、および加齢に伴う頭骨量減少を含めた、加齢に伴う骨量減少に関する。
【0434】
本発明の組成物は、整形外科処置、歯科処置、インプラント手術、関節置換、骨移植、骨美容整形、ならびに骨折治癒、癒着不能治癒、遷延癒合、および顔の形成などの骨修復の結果を改善するのにも有用であり得る。上記の処置、置換、移植、手術、または修復の前または後に、1つまたは複数の組成物を投与することができる。
【0435】
本発明は、本発明に記載の少なくとも1つの抗スクレロスチン結合作用物質を含む診断キットも提供する。上記結合作用物質は抗体でよい。加えて、そのようなキットは、以下のもののうち1つまたは複数を任意選択で含み得る。
【0436】
(1)スクリーニング、診断、予後、治療モニタリング、またはこれらの適用の任意な組合せのために1つまたは複数の結合作用物質を使用するための説明書、
(2)抗スクレロスチン結合作用物質に対する標識された結合パートナー、
(3)上記抗スクレロスチン結合作用物質がそれに固定される固相(試薬ストリップなど)、および
(4)スクリーニング、診断、予後、もしくは治療使用、またはこれらの組合せに関する規制認可を示す標識または挿入物。
【0437】
上記結合作用物質に対する標識された結合パートナーが提供されない場合、結合作用物質それ自体を1つまたは複数の検出可能マーカー、例えば、化学発光、酵素、蛍光、または放射性部分で標識することができる。
【0438】
実施例
以下の実施例を、限定ではなく、例として提供する。
【実施例1】
【0439】
(スクレロスチンの組換体発現)
組換体ヒトスクレロスチン/SOSTは、R&D Systems社(米国ミネソタ州ミネアポリス;2006年カタログ番号1406-ST-025)から市販されている。加えて、組換体マウススクレロスチン/SOSTは、R&D Systems社(米国ミネソタ州ミネアポリス;2006年カタログ番号1589-ST-025)から市販されている。
【0440】
別法として、無血清懸濁液適応させた293Tまたは293EBNA細胞で、様々な種類のスクレロスチンを一時的に発現させることもできる。形質移入は、500mLまたは1L培養として実施できる。以下の試薬および物質は、Gibco BRL社(現在のInvitrogen社、米国カリフォルニア州カールズバッド)から入手できる。カタログ番号を括弧内に示す:無血清DMEM (21068-028);DMEM/F12(3:1)(21068/11765);1×インシュリントランスフェリンセレニウムサプリメント(51500-056);1×Pen Strep Glut(10378-016);2mM l-グルタミン(25030-081);20mM HEPES (15630-080);0.01%プルロニックF68 (24040-032)。簡潔には、細胞種菌(5.0〜10.0×10
5細胞/mL×培養容積)を、4℃、2500rpmで10分間遠心分離して、調整培地を除去する。
【0441】
細胞を無血清DMEM中に再懸濁し、4℃、2500rpmで10分間、再び遠心分離する。洗浄溶液を吸引した後に、細胞を1Lまたは3Lのスピナーフラスコ培養物中の増殖培地[DMEM/F12(3:1)+の1×インシュリントランスフェリンセレニウムサプリメント+1×Pen Strep Glut + 2mM L-グルタミン + 20mM HEPES + 0.01%プルロニックF68]中に再懸濁する。スピナーフラスコ培養を125rpmの磁気撹拌プレート上に維持しこれを37℃、5% CO
2に維持された加湿インキュベーター中に置いた。開始部位ATGのすぐ5'側にコーザックコンセンサス配列(例えばCCACC)を有するスクレロスチンの完全コード領域(および停止コドン)を含有する哺乳動物発現プラスミドDNA(例えば、pcDNA3.1、pCEP4、Invitrogen Life Technologies社、米国カリフォルニア州カールズバッド)を、50mL円錐管中の形質移入試薬と混合する。
【0442】
無血清DMEMかOPTI-MEMの最終培養容積の5〜10%でDNAトランスフェクション試薬複合体は調製されうる。この目的で使用できる形質移入試薬には、X-tremeGene RO-1539 (Roche Applied Science社、米国インディアナ州インディアナポリス)、FuGene6 (Roche Applied Science社、米国インディアナ州インディアナポリス)、Lipofectamine2000 (Invitrogen社、米国カリフォルニア州カールズバッド)、および293fectin (Invitrogen社、米国カリフォルニア州カールズバッド)が含まれる。無血清DMEM中に、最初に1〜5μgプラスミドDNA/mL培養物を添加し、その後1〜5μl形質移入試薬/mL培養物を添加する。この混合物は室温で約10〜30分間インキュベートすることができその後スピナーフラスコ中の細胞に添加する。形質移入/発現は、4〜7日間実施でき、その後4℃、4000rpm、60分間の遠心分離によって調整培地(CM)を採取する。
【実施例2】
【0443】
(組換え体スクレロスチンの精製)
組換体スクレロスチンは、以下の哺乳動物宿主細胞から精製した。すべての精製工程を室温で行った。マウスおよびヒトスクレロスチンを含めた様々な種類のスクレロスチンを精製するのに、1つの精製スキームを用いた。この精製スキームは、アフィニティークロマトグラフィーを使用し、その後、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いるものである。
【0444】
(ヘパリンクロマトグラフィー)
哺乳動物宿主細胞調整培地(CM)を、Beckman J6-M1遠心分離機で4000rpm、4℃、1時間遠心分離して、細胞破片を除去した。その後、CM上清を0.2μm無菌フィルターに通して濾過した。(この時点で無菌濾過されたCMは、任意選択で、精製まで冷凍状態で保存してもよい)。CMが冷凍されている場合、それを以下の温度、すなわち4℃、室温、もしくは温水、またはこれらの組合せで解凍した。解凍の後CMを0.2μm無菌フィルターに通して濾過し任意選択で、10kD分子量カットオフ膜を用いた接線流限外濾過(TFF)によって濃縮した。CM濃縮物を0.2μm無菌フィルターに通して濾過し、その後、PBSで平衡化したヘパリン高速(ヘパリンHP)カラム(GE Healthcare社、以前のAmersham Biosciences社)に添加した。別法として、PBSで平衡化したヘパリンHPカラムに、濾過されたCM上清を直接添加してもよい。
【0445】
添加の後、280nmにおけるフロースルーの吸光度がベースライン(すなわち、CM上清をロードする前の吸光度)に戻るまで、ヘパリンHPカラムをPBSで洗浄した。その後、PBS中における150mMから2Mまでの塩化ナトリウム直線勾配を用いて、スクレロスチンをカラムから溶出させた。280nmにおける溶出液の吸光度をモニターし、タンパク質含有画分を収集した。その画分をその後クーマシー染色のSDS-PAGEでアッセイしてグリコシル化スクレロスチンのサイズで移動したポリペプチドを含有している画分を同定した。カラムから得た適切な画分を併せて、ヘパリンHPプールを作製した。
【0446】
(陽イオン交換クロマトグラフィー)
SP高速(SPHP)クロマトグラフィー基質(GE Healthcare社、以前のAmersham Biosciences社)を用いた陽イオン交換クロマトグラフィーで、ヘパリンHPカラムから溶出されたスクレロスチンをさらに精製した。10,000 MWCO膜(Pierce社Slide-A-Lyzer)を用いた透析によって、ヘパリンHPプールの緩衝剤をPBSに交換した。その後、PBSで平衡化したSPHPカラムに、透析されたヘパリンHPプールを添加した。添加の後、280nmにおけるフロースルーの吸光度がベースラインに戻るまで、PBSでカラムを洗浄した。その後、PBS中における150mMから1Mまでの塩化ナトリウム直線勾配を用いて、SPHPカラムからスクレロスチンを溶出させた。280nmにおける溶出液の吸光度をモニターし、溶出されたスクレロスチンを画分中に収集した。その画分をその後クーマシー染色のSDS-PAGEでアッセイしてグリコシル化スクレロスチンのサイズで移動したポリペプチドを含有している画分を同定した。カラムから得た適切な画分を併せて、SPHPプールを作製した。
【0447】
(処方)
精製の後に、10,000 MWCO膜(Pierce社製Slide-A-Lyzer)を用いた透析によって、SPHPプールをPBS中に処方した。スクレロスチンの濃縮が必要な場合、10,000 MWCO膜を備えた遠心装置(Amicon社製CentriconまたはCentriprep)を用いた。処方の後に、スクレロスチンを0.2μm無菌フィルターに通して濾過し4℃または冷凍で保存した。
【実施例3】
【0448】
(ペプチド結合ELISA)
ラットスクレロスチン(配列番号98)の既知アミノ酸配列に基づいて、オーバーラップを有する一連のペプチド(各ペプチドは長さが約20〜25アミノ酸)を合成した。これらのペプチドは、それらがすべて、還元されたシステイン残基を含有するように設計した。各ペプチドのC末端には、その配列中には既に含有されていなかった追加のシステインが含まれていた。これによって、市販のスルフヒドリル基結合プレート(Costar社)を使用し、1mMのEDTAを含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS:pH6.5)中、1μg/mlの濃度で、ペプチドを共有結合によってアッセイプレートに結合させることが可能となった。室温で1時間のインキュベーション後、0.5%のTween20を含有するPBSで、プレートを3回洗浄した。0.5%の魚皮ゼラチン(Sigma社)を含有するPBS溶液中、室温で、30分間のインキュベーションによって、プレートのブロッキングを行い、その後0.5%のTween20を含有するPBS中で、プレートを3回洗浄した。
【0449】
試験するべき抗体を、0.5%の魚皮ゼラチンを含有するPBS溶液中に、1μg/mlに希釈しペプチドコーティングされたプレートと共に室温で1時間インキュベートした。0.5%Tween20、PBSで3回洗浄することによって、過剰な抗体を除去した。その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合しており、かつ対象とする抗体に結合できる適切な2次抗体(0.5%のTween20を含有するPBS中に適切に希釈されている)と共にプレートをインキュベートした。その後、このプレートを3回、すなわち0.5%のTween20を含有するPBSで1回、そしてPBSで2回洗浄した。最後に、ホースラディシュペルオキシダーゼ発色基質(TMB-Stable Stop、RDI社)と共に、プレートを室温で5分間インキュベートし、発色を酸で停止させ、プレートの光学濃度を450nmで測定した。
【0450】
(材料)
Costar社製スルフヒドリル結合プレート(VWR社#29442-278)
コーティング緩衝剤:1×PBS PH6.5+1mM EDTA
0.5%ブロッキング緩衝剤:1×PBS+魚皮ゼラチン(PBSはCS社製;FSGはSigma社#G7765)
洗浄緩衝剤:1×PBS+0.5%Tween20
ラットスクレロスチンペプチド
抗体試料:一過性Ab、精製組換体Ab、ウサギ血清など。
【0451】
適切なヤギ抗ウサギ/マウス-HRP2次Ab (Jackson Immuno Research社、115-036-072)
TMB-Stable Stop (RDI社#RDI-TMBSX-1L)
0.5M HCl
【0452】
(方法は以下の通り)
1. 1×PBS PH6.5+1mM EDTAの中に1μg/mlに希釈されたラットスクレロスチンペプチド100μl/ウェルでプレートをコーティングする。プレートを室温で1時間インキュベートする。(プレートは開始の30分以内に使用するべきである)。
2. プレートを洗浄緩衝剤で3×洗浄する。
3. 200μl/ウェルのブロッキング緩衝剤でプレートのブロッキングを行う。プレートを室温で30分間インキュベートする。
4. (2)に記載の洗浄を反復する。
5. ブロッキング緩衝剤中に希釈された試料50μl/ウェルと共にプレートをインキュベートする-血清力価は1:100で開始する。一過性組換え体Abは希釈せずに使用する;精製された組換体Abは1μg/mlで使用する(すべての試料をデュプリケートとする)。プレートを室温で1時間インキュベートする。
6. (2)に記載の通りにプレートを洗浄する。
7. ブロッキング緩衝剤中に1:1600に希釈された適切な2次抗体(HRP標識)50μl/ウェルと共にプレートをインキュベートする。1時間室温でプレートをインキュベートする。
8. プレートを洗浄緩衝剤で1×、PBSで2×洗浄する。
9. 50μl/ウェルのTMBと共にプレートを室温で5分間インキュベートする。
10. 50μl/ウェルの0.5M HClで反応を停止させる。
11. 450nmの波長でプレートを測定する。
【0453】
以下のペプチド配列を上述の通りスクリーニングした:
QGWQAFKNDATEIIPGLREYPEPP(配列番号:82)
TEIIPGLREYPEPPQELENN (配列番号:83)
PEPPQELENNQTMNRAENGG (配列番号:84)
ENGGRPPHHPYDTKDVSEYS (配列番号:85)
CRELHYTRFVTDGP (配列番号:86)
CRELHYTRFVTDGPSRSAKPVTELV (配列番号:87)
CRSAKPVTELVSSGQSGPRARLL (配列番号:88)
CGPARLLPNAIGRVKWWRPNGPDFR (配列番号:89)
RAQRVQLLCPGGAAPRSRKV (配列番号:90)
PGGAAPRSRKVRLVAS (配列番号:91)
KRLTRFHNQSELKDFGPETARPQ (配列番号:92)
IPDRYAQRVQLLSPGG (配列番号:93)
SELKDFGPETARPQKGRKPRPRAR (配列番号:94)
KGRKPRPRARGAKANQAELENAY (配列番号:95)
PNAIGRVKWWRPNGPDFR (配列番号:96)
KWWRPNGPDFRCIPDRYRAQRV (配列番号:97)
【0454】
1つの高親和性中和抗体(Ab-19)は、オーバーラップした2つのペプチド配列、すなわち、PNAIGRVKWWRPNGPDFR(配列番号96)およびKWWRPNGPDFRCIPDRYRAQRV(配列番号97)に結合した。
【0455】
この手順は、一見直鎖のエピトープと反応する抗体のエピトープの認識を可能にする。抗体結合部位の全体または一部を含有するペプチドが抗体に結合し、それによって検出されるであろう。
【実施例4】
【0456】
(ヒトスクレロスチンエピトープの同定)
(スクレロスチン構造)
成熟型(シグナルペプチドが除去されている)ヒトスクレロスチンは190アミノ酸のタンパク質である(
図8)。
図9は、N末端アーム(N末端のQからシステイン1まで)およびC末端アーム(システイン8から末端のYまで)を有するスクレロスチンの一般的な構造の概要を示す。これらの2本のアームの間にはさまれて、シスチンノット構造、ならびにループ1、ループ2、およびループ3と命名されている3本のループがある。スクレロスチンの中の4本のジスルフィド結合は、配列57位のCys1と配列111位のCys5との連結(C1-C5と呼ばれる)、配列71位のCys2と配列125位のCys6との連結(C2-C6と呼ばれる)、配列82位のCys3と配列142位のCys7との連結(C3-C7と呼ばれる)、配列86位のCys4と配列144位のCys8との連結(C4-C8と呼ばれる)である。C3-C7およびC4-C8のジスルフィド結合を介して、8員環構造が形成されている。この環構造が、この環を貫くC1-C5ジスルフィド結合と共に、典型的なシスチンノットを形成している。C2-C6は、シスチンノットの一部ではなく、2つの大きいループ構造、すなわちループ1(残基57〜82)およびループ3(残基111〜142)を相互に近接させている。ループ2は、C4(残基86)からC5(残基111)まで及ぶ。
【0457】
(実験)
抗スクレロスチンモノクローナル抗体が結合するエピトープを性質決定する一般的なアプローチは、様々なプロテアーゼを用いてヒトスクレロスチンをペプチドに断片化するステップと、これら様々なヒトスクレロスチンペプチドの配列を決定するステップと、これらのペプチドを単離するステップと、Biacoreに基づく「ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ」を用いて、それらのそれぞれを、特定のモノクローナル抗体に結合するそれらの能力に関して試験するステップとを含む。この結果得られたデータによって、結合エピトープの位置の決定が可能となった。
【0458】
ペプチド消化産物はHPLCペプチドマッピングにかけた。すなわち、個々のピークを収集し、マトリックス支援レーザー脱離質量分析(MALDI-MS)ならびにエレクトロスプレイイオン化LC-MS(ESI-LC-MS)分析および/またはN末端配列決定によって、ペプチドの同定およびマッピングを行った。これらの研究のためのすべてのHPLC分析は、逆相C8カラム(内径2.1mm×長さ15cm)を用いて行った。HPLCペプチドマッピングは、0.05%トリフルオロ酢酸の中における、0.05%トリフルオロ酢酸(移動相A)から90%アセトニトリルまでの線形勾配を用いて行った。カラムは、50分間超、流速0.2ml/分で展開させた。
【0459】
(トリプシンおよびAspNエンドプロテアーゼ消化)
トリプシンまたはAspNを用いて、成熟型ヒトスクレロスチンを消化させた。トリプシンは、アルギニンおよびリジンの後で切断を行う。0.5〜1.0mg/mlのスクレロスチン約200μgを、トリプシンまたはAspNのいずれか8μgと共に、PBS(pH7.2)中、37℃で20時間インキュベートした。
【0460】
(トリプシン消化)
トリプシン消化産物のHPLCクロマトグラフィーは、いくつかの大きなピークを生み出した(
図10A)。トリプシン消化の後のHPLCから回収したペプチドピークの配列分析を行った。HPLCによって分離されたペプチドの正確な質量を決定するために、ペプチド消化産物のオンラインESI LC-MS分析も行った。このようにして、ペプチドピーク中に存在するペプチドのアイデンティティーを決定した(
図11)。
図13は、スクレロスチン配列に沿った、様々なペプチド配列(T19.2、T20、T20.6、T21-22)のアラインメントを示す。それぞれのTの後にある数(例えばT19.2)は保持時間を示す。T19.2は、C2-C6ジスルフィド結合によって連結された2本のペプチド(ループ1からの1本とループ3からの1本)を含有している。T20は、シスチンノット構造によって一体にされた2本のペプチドを含有し、完全なループ1および3がC2-C6ジスルフィドによって一体化されているが、ループ2の大部分が欠失している。T20.6は、シスチンノット構造によって一体化された4つの配列を含有するが、ループ1および3の部分(T19.2部分)を欠失しており、かつループ2の大部分を欠失している。T21-22はT20にほとんど同一であるが、ループ2領域に3残基の追加アミノ酸を有する。
【0461】
(AspN消化)
AspN消化産物のHPLCクロマトグラフィーは、いくつかの大きなピークを生み出した(
図10B)。HPLCから回収したペプチドピークの配列分析を行った。HPLCによって分離されたペプチドの正確な質量を決定するために、ペプチド消化産物のオンラインESI LC-MS分析も行った。このようにして、AspN消化から生じたペプチドピーク中に存在するペプチドのアイデンティティーを決定した(
図12)。
図14は、スクレロスチン配列に沿った、様々なペプチド配列(AspN14.6、AspN18.6、AspN22.7-23.5)のアラインメントを示す。それぞれのAspNの後にある数(例えばAspN18.6)は保持時間を示す。AspN14.6は、スクレロスチンのN末端アームおよびC末端アームの両方から生じた3本の短いペプチドを含有し、一方AspN18.6は、スクレロスチンのN末端アームから生じた1本のより大きなペプチドである。AspN22.7-23.5は、8残基のシステイン(4本のジスルフィド結合)すべて、シスチンノット、ならびにループ1、2、および3のすべてを包含する、104アミノ酸の単一ペプチド断片を含有する。
【0462】
上記エピトープを性質決定するストラテジーは、これらの様々なトリプシンおよびAspN生成ヒトスクレロスチンペプチドを使用し、いずれのペプチドに、様々な抗体(Ab-A、Ab-B、Ab-CおよびAb-D)が依然として結合できたかを決定するものであった。詳細には、これはBiacoreに基づく「ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ」で試験した。このアッセイでは、単離された様々なトリプシンおよびAspN HPLCペプチド画分それぞれの存在下または非存在下における、Biacoreチップ上に固定されたヒトスクレロスチンへの特定のモノクローナル抗体の結合を測定した。いかなる競合ペプチドも存在しない場合、上記の特定のモノクローナル抗体は、チップ上のヒトスクレロスチンに結合することができ、共鳴単位、すなわちRUの反応を生み出した。溶液中の完全なヒトスクレロスチンと共に上記の特定のモノクローナル抗体をプレインキュベートし、その後、チップへの結合を試験したところ、溶液中のヒトスクレロスチンへのMabの結合によって、チップ上のヒトスクレロスチンへのMabの結合が阻止されることが実証された。したがって、これにより、この競合アッセイの一般原理が確認された。
【0463】
各ペプチドについて、この一般手順を個別に繰り返した。活発なRU反応は、試験された特定のペプチドが、溶液中のMabに結合できなかった(したがって、Mabは、チップ上に固定されたヒトスクレロスチンに自由に結合できた)ことを示すと解釈した。逆に、活発なRU反応の不在は、Mabが溶液中のスクレロスチンペプチドに結合できたことを示した。これらの結合パターンは、アイデンティティーが既知である様々なスクレロスチンペプチドと結びつき、抗スクレロスチン抗体Ab-A、Ab-B、Ab-CおよびAb-Dが結合するスクレロスチンエピトープの決定に用いられた。
【0464】
(BIAcoreに基づくヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ)
(ヒトスクレロスチン表面の調製)
BIAcoreセンサーチップ(CM5)表面への成熟型ヒトスクレロスチンの固定化は、メーカーの指示に従って行った。簡潔には、0.2M N-エチル-N'-(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および0.05M N-ヒドロキシスクシニミド(NHS)を含有する混合物60μLを注入することによって、センサーチップ表面のカルボキシル基を活性化させた。10mM酢酸ナトリウム、pH4.0で、ヒトスクレロスチンを濃度20μg/mLに希釈し、その後、活性化されたCM5の表面の上に注入した。表面の過剰な反応基は、1Mエタノールアミン60μLを注入することによって非活性化させた。ヒトスクレロスチン表面の最終固定レベルは、約5000共鳴単位(Ru)であった。ブランクのニセ結合(mock-coupled)参照表面もセンサーチップ上に調製した。
【0465】
(結合特異性分析)
塩化カルシウムも塩化マグネシウムも含まない1×リン酸緩衝食塩水は、Gibco/Invitrogen社(米国カリフォルニア州カールズバッド)より入手した。ウシ血清アルブミン画分V、無IgGは、Sigma-Aldrich社(米国ミズーリ州セントルイス)より入手した。固定化されたヒトスクレロスチン表面の上に注入する前に、試料緩衝液(1×PBS + 0.005% P-20 + 0.1 mg/mL BSA)中で、各Mab(2nM)を別々に、20nMヒトスクレロスチンまたは特定のヒトスクレロスチンペプチドと共にインキュベートした(注意:AspN14.6には3本の連結されていないペプチドが存在する)。試料注入の流速は5μL/分であった。その後、1M NaClを含有する8mMグリシン、pH2.0、30μL/分、30秒間を用いて表面再生を行った。データは、BIAevaluation 3.2を用いて分析した。これは、
図15(Ab-A)、
図16(Ab-B)、
図17(Ab-C)、および
図18(Ab-D)に示されている。
【0466】
(ループ2およびT20.6エピトープ)
2種の代表的抗体(Ab-AおよびAb-B)のスクレロスチンペプチド結合パターンは、事実上同一であり(
図15および
図16)、これらの抗体は両方とも、AspN22.7-23.5ペプチドのみに結合できたことを示した。AspN22.7-23.5と、他のすべてのスクレロスチンペプチドとの間にある特有な相違は、AspN22.7-23.5が完全なループ2を含有していることである。これは、Ab-AおよびAb-Bがスクレロスチンのループ2領域に結合することを示し、したがって、そのループ2エピトープを画定する(
図19A)。Ab-CおよびAb-Dのスクレロスチンペプチド結合パターンは、事実上相互に同一であるが(
図17および
図18)、Ab-AおよびAb-Bで見出されるものとは完全に異なる。この実施例で試験されたペプチドの中では、Ab-CおよびAb-Dが結合できた最も小さいペプチドはT20.6ペプチドであった。この結果はT20.6エピトープを画定する(
図19B)。
【0467】
(プロテアーゼ防御アッセイ)
このアッセイの一般的原理は、Mabがスクレロスチンに結合する結果として、特定の特異的プロテアーゼ切断部位の防御がもたらされることがあるというものであり、この情報は、Mabが結合するスクレロスチンの領域を決定するのに使用できる。
【0468】
(「T20.6誘導体1(シスチンノット+アーム4本)」エピトープ)
図20は、ヒトスクレロスチンAb-D複合体(
図20A:上述の通りトリプシンで消化する前に、ヒトスクレロスチンをAb-Dと共に1:1のモル比でプレインキュベートした)およびヒトスクレロスチンのみ(
図20B: ヒトスクレロスチンは上述の通りトリプシンで消化した)のHPLCペプチドマップを示す。
図20Bと比較して、
図20AにおけるT19.2およびT20.6のペプチドピークは、それらの各ピークの高さの明確な低下を示した。このピーク高の低下には、ペプチドT20およびT21-22のピーク高の増大が伴った。これらのデータは、Ab-Dの非存在下ではトリプシンによって切断されて、ペプチドT19.2およびT20.6を生成した、ループ1およびループ3における塩基性アミノ酸残基が、スクレロスチンにAb-Dが予め結合した場合、トリプシンによる切断に対して抵抗性であったことを示す。T20、T20.6、およびT21-22の存在は、スクレロスチンにAb-Dが予め結合した場合でも、依然として、ループ2が効率的に切断されたことを示す。これらのデータは、T20.6エピトープのループ1およびループ3側でAb-Dが結合したことを示し、したがって、
図21に示す通り、より小さな「T20.6誘導体1(シスチンノット+アーム4本)」エピトープを画定する。
【実施例5】
【0469】
(マウスにおける抗スクレロスチンモノクローナル抗体のin vivo試験)
週齢4週間のBDF1オスマウスをCharles River Laboratories社(米国ノースカロライナ州ローリー)から入手し、清潔なケージの中で、1ケージあたり5匹の動物を飼育した。室温は68から72°Fの間に維持し、相対湿度は34から73%での間に維持した。ケージを収容している実験室は、12時間の明暗サイクルを有し、すべてのAAALAC規定を満たしていた。試験している全マウスの臨床知見は毎日1回みた。
【0470】
精製された抗スクレロスチンモノクローナル抗体(Ab-A
図1;Ab-B
図2; Ab-C
図3; Ab-D
図4)を、無菌のダルベッコリン酸緩衝生理食塩水で希釈した。グラム体重あたり21μlの抗スクレロスチン抗体またはPBS媒体を、25mg/kg、1週間に2回(月曜日および木曜日)マウスに皮下注射した。ヒトPTH(1-34)を、PTH緩衝剤(0.001N HCl、0.15M NaCl、2% BSA)中に希釈し、陽性対照として、1週間に5回(月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日)、グラム体重あたり21μl、100μg/kg皮下投与した(
図5および6)。1群あたりのマウスの数は、
図5および6においてN=5、
図7においてN=6であった。
【0471】
(PIXImus in vivo骨密度測定)
骨密度(BMD)は、GE/Lunar Medical Systems社製(米国ウィスコンシン州マディソン)のPIXImus2システムを用いて、末梢二重エネルギーX線吸収測定法(pDEXA)によって、脛骨近位骨幹端部および腰椎で毎週測定した。25mm
2の、対象とする領域(ROI)の1つは、脛骨骨幹端の近位関節面、骨端、および近位端部を含む位置とした。対象とする領域(ROI)の1つは、腰椎(L1-L5)を含む位置とした。全骨密度を測定するために、近位脛骨および腰部を分析した。群平均は、±標準偏差で報告し、統計分析のために媒体治療群と比較した。
【0472】
(統計分析)
統計分析は、ダンネット(Dunnett)法およびターキー-クレーマー(Tukey-Kramer)法を用いて行った(BMDデータにはMS ExcelおよびJMP v. 5.0を用いた)。各データセットの群平均は、P値が0.05未満であった(P < 0.05)場合に、有意に異なるものとした。
【0473】
(抗体のスクレロスチン中和活性)
Ab-A(
図5)、Ab-B(
図5)、Ab-C(
図6)、およびAb-D(
図7)のそれぞれで見られた、媒体と比較して統計的に有意なBMDの増大によって、これら4種の抗体がスクレロスチン中和抗体であることが実証された。さらに、このデータは、マウススクレロスチンに結合する抗スクレロスチン抗体に関して、上述のマウス治療および分析を、スクレロスチン中和抗体を同定するのに使用できることを示す。
【実施例6】
【0474】
(抗体がヒトスクレロスチンに結合するのをブロックする抗体を得るためのスクリーニングアッセイ)
標準的なアミンカップリング化学を用いて、スクレロスチンをCM5 Biacoreチップに結合させ、スクレロスチンコーティングされた表面を作製した。300共鳴単位のスクレロスチンを表面に結合させた。
【0475】
試験混合物を生成させるために、試験するべき抗体を、HBS-EP緩衝剤(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% (v/v)界面活性物質P20)中に濃度200μg/mlに希釈し、次にモル比1対1(結合部位ベースで)で混合した。したがって、この試験混合物は、各抗体を濃度100μg/mlで含有していた(結合部位ベースで1.3μM)。試験混合物中の各抗体を単独で含有している別々の溶液も調製した。これらの溶液は、HBS-EP緩衝剤中に個々の抗体を濃度100μg/mlで含有した(結合部位ベースで1.3μM)。
【0476】
20μLの試験混合物に、流速10μL/分でスクレロスチンコーティングされたチップ上を通過させ、結合した量を記録した。その後、結合したすべての抗体を除去するために、30mM HClの60秒パルス2回でチップを処理した。その後、試験混合物と同じ方法で、試験混合物の抗体のうち1種のみを含有する溶液(試験混合物と同じ緩衝剤中に結合部位ベースで1.3μM)にチップ上を通過させ、結合した総量を記録した。結合したすべての抗体を除去するために、チップを再び処理し、最後に、試験混合物のもう一方の抗体を単独で含有する溶液(試験混合物と同じ緩衝剤中に結合部位ベースで1.3μM)にチップ上を通過させ、結合した総量を記録した。
【0477】
下記の表は、様々な異なった抗体の交差阻止アッセイの結果を示す。表の各四角中の値は、表の最上行に示す抗体(結合部位ベースで1.3μM)または緩衝剤を、表の第1列に示す抗体(結合部位ベースで1.3μM)または緩衝剤と混同した際に見られた結合量(RU)を表す。
【表2】
[この文献は図面を表示できません]
【0478】
上表中の抗体の組合せそれぞれの平均結合値(RUの値)を用いて(各組合せが2回現れるので)、抗体の組合せそれぞれが示した理論上の結合率を計算することが可能である。理論上の結合は、単独(すなわち抗体および緩衝剤)でアッセイした際の、各試験混合物成分の平均値の合計として計算する。
【表3】
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【0479】
上記データから、Ab-4、Ab-A、およびAb-19が相互に交差阻止することが明らかである。同様に、Ab-13およびAb-3も相互に交差阻止する。
【実施例7】
【0480】
(ELISAに基づく交差阻止アッセイ)
この実施例で使用される液体容積は、96ウェルプレートELISAで通常使用されるものであろう(例えば、50〜200 μl/ウェル)。この実施例におけるAb-XおよびAb-Yは、約145Kdの分子量を有し、かつ抗体分子あたり2カ所のスクレロスチン結合部位を有するものとする。96ウェルELISAプレート[例えば、Corning社96ウェルEIA/RIA平底マイクロプレート(製品番号3590)、Corning社(米国マサチューセッツ州アクトン)]に、少なくとも1時間抗スクレロスチン抗体(Ab-X)をコーティングする(例えば1μg/mlを50μl)。このコーティングステップ後、抗体溶液を除去し、洗浄溶液(例えばPBSおよび0.05% Tween20)で、プレートを1回または2回洗浄し、その後、適切なブロッキング溶液(例えば、PBS、1% BSA、1%ヤギ血清、および0.5% Tween20)および当技術分野で知られている手順を用いてブロッキングを行う。その後、ELISAプレートからブロッキング溶液を除去し、ELISAプレートの適切なウェルに、過剰量(例えば10μg/mlを50μl)の第2の抗スクレロスチン抗体(Ab-Y)を含むブロッキング溶液を添加する。Ab-Yは、コーティングされた抗体を交差阻止するその能力が試験される抗体である。この後に、適切なウェルに、限定された量のスクレロスチン(例えば10ng/mlを50μl)を含むブロッキング溶液を添加し、プレートを、振盪させながら、室温で少なくとも1時間インキュベートする。その後、洗浄溶液でプレートを2〜4回洗浄する。ELISAプレートに適切な量のスクレロスチン検出試薬[例えば適切な量のストレプトアビジン-ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)結合体と予め複合体形成させたビオチン化抗スクレロスチンポリクロナール抗体]を含むブロッキング溶液を添加し、室温で少なくとも1時間インキュベートする。その後、洗浄溶液でプレートを少なくとも4回洗浄し、適切な試薬で発色させる[例えば、TMB(比色分析)または様々なHRPルミネッセンス基質などのHRP基質]。アッセイのバックグランドシグナルは、コーティングされた抗体(この場合Ab-X)、第2の溶液相抗体(この場合Ab-Y)、スクレロスチン緩衝剤のみ(すなわちスクレロスチンなし)、およびスクレロスチン検出試薬を含有するウェルで得られたシグナルと定義する。アッセイの陽性対照シグナルは、コーティングされた抗体(この場合Ab-X)、第2の溶液相抗体緩衝剤のみ(すなわち第2の溶液相抗体なし)、スクレロスチン、およびスクレロスチン検出試薬を含有するウェルで得られたシグナルと定義する。ELISAアッセイは、陽性対照シグナルがバックグランドシグナルの少なくとも6倍となるような方法で行う必要がある。
【0481】
コーティング抗体としてどの抗体を用いるか、そして第2の(競合体)抗体としてどの抗体を用いるかに関する選択の結果として生じるいかなる人為的結果(例えば、Ab-XとAb-Yとの間で有意に異なる、スクレロスチンへの親和性)も回避するために、交差阻止アッセイは、以下の2通りのフォーマットで行う必要がある:
1)フォーマット1は、Ab-Xが、ELISAプレートにコーティングされる抗体であり、Ab-Yが、溶液中にある競合体抗体である場合である。
そして、
2)フォーマット2は、Ab-Yが、ELISAプレートにコーティングされる抗体であり、Ab-Xが、溶液中にある競合体抗体である場合である。
【0482】
Ab-XおよびAb-Yは、フォーマット1またはフォーマット2において、溶液相抗スクレロスチン抗体が、溶液相抗スクレロスチン抗体の非存在下で得られたスクレロスチン検出シグナル(すなわち陽性対照ウェル)と比較して、スクレロスチン検出シグナル(すなわちコーティングされた抗体が結合したスクレロスチンの量)の60%から100%、詳細には70%から100%の間、そしてより特異的には80%から100%の間の減少を引き起こすことができる場合、交差阻止すると定義する。
【0483】
N末端Hisタグ付きスクレロスチン(R&D Systems社、米国ミネソタ州ミネアポリス;2005年カタログ番号1406-ST-025)など、スクレロスチンのタグ付きバージョンをELISAで用いる場合、適切なタイプのスクレロスチン検出試薬は、抗His抗体で標識されたHRPを含むであろう。N末端Hisタグ付きスクレロスチンの使用に加えて、C末端Hisタグ付きスクレロスチンも使用できるであろう。さらに、当技術分野で知られている他の様々なタグおよびタグ結合タンパク質の組合せ(例えば、HAタグと抗HA抗体;FLAGタグと抗FLAG抗体;ビオチンタグとストレプトアビジン)を、このELISAに基づく交差阻止アッセイに用いることもできよう。
【実施例8】
【0484】
(スクレロスチン活性をアンタゴナイズできる薬剤を同定するための、細胞に基づく石灰化アッセイ)
(イントロダクション)
初代細胞でも株化細胞でも、培養中での骨芽細胞系細胞による石灰化が、骨形成のin vitroモデルとして使用されている。石灰化は、1つまたは複数の分化薬剤による骨芽細胞系細胞分化の誘導で始まり、起こるまでに約1〜6週間かかる。事象の全体的筋道には、細胞増殖、分化、細胞外マトリックス産生、マトリックス成熟、および最後にミネラルの沈着が含まれる。ミネラルの沈着は、リン酸カルシウムの結晶化および/または沈着を指す。細胞増殖および分化から始まり、ミネラルの沈着で終わる事象のこの筋道は、本明細書では石灰化という。カルシウム(ミネラル)の測定がこのアッセイの結果である。
【0485】
ミネラルの沈着は、ひとたびミネラル「種子(seed)」の形成が開始されれば、培養物全体で沈着されるであろうミネラルの総量の沈着が、時には、その後数日以内など、極めて迅速に起こりうるという強い生物物理学的特徴を有する。培養におけるミネラル沈着のタイミングおよび程度は、部分的に、使用される特定の骨芽細胞系細胞/培養細胞株、増殖状態、分化薬剤の選択、および細胞培養培地で使用された特定のロット番号の血清の影響を受ける。骨芽細胞系細胞/培養細胞株石灰化培養には、石灰化が起こるのを可能にする特定の血清ロットを特定するために、複数の供給業者からの少なくとも8からの15の血清ロットを試験するべきである。
【0486】
MC3T3-E1細胞(Sudo Hら、In vitro differentiation and calcification in a new clonal osteogenic cell line derived from newborn mouse calvaria. J. Cell Biol. 96:191〜198頁)およびオリジナルの細胞系のサブクローンは、分化薬剤の存在下における増殖の際、培養中でミネラルを形成することができる。そのようなサブクローンには、MC3T3-E1-BFが含まれる(Smith E, Redman R, Logg C, Coetzee G, Kasahara N, Frenkel B. 2000. Glucocorticoids inhibit developmental stage-specific osteoblast cell cycle. J Biol Chem 275:19992〜20001頁)。
【0487】
(スクレロスチン中和抗体の同定)
石灰化アッセイには、MC3T3-E1-BF細胞を用いた。ミネラル沈着へと導くMC3T3-E1-BF細胞分化を誘導するのに、アスコルビン酸およびB-グリセロリン酸を用いた。96ウェルフォーマットにおける、特定のスクリーニングプロトコールは、水曜日における細胞のプレーティングと、その後12日間にわたる7回の培地交換(さらに下に記載)とを含み、ミネラル沈着のほとんどは最後の約18時間(例えば日曜日の夜から月曜日まで)のうちに起こる。いずれの所与の処置にも、3ウェルが使用された(N=3)。ミネラル沈着の特定のタイミングおよび程度は、部分的に、使用される特定の血清ロット番号に応じて変動し得る。そのような可変性は、細胞培養実験分野一般でよく知られている通り、対照実験によって説明が可能となるであろう。
【0488】
このアッセイシステムにおいて、スクレロスチンは、ミネラル沈着に至るまで事象およびミネラル沈着を含めた事象のうちの1つまたは複数を阻害した(すなわちスクレロスチンは石灰化を阻害した)。スクレロスチンの阻害活性を中和できた抗スクレロスチン抗体は、スクレロスチン存在下での培養の石灰化を可能にし、そのため、スクレロスチンのみ(すなわち抗体なし)の処置群で測定されたカルシウム量と比較して、リン酸カルシウム(カルシウムとして測定)の沈着の統計的に有意な増大があった。統計分析(MS ExcelおよびJMPを使用)には、群相互の相違を判定するのに、一元配置分散分析と、それに続くダンネット(Dunnett)比較法とを用いた。各データセットの群平均は、P値が0.05未満であった(P<0.05)場合に、有意に異なるものとした。このアッセイ実施の代表的結果を
図22に示す。組換体マウススクレロスチンの非存在下では、ミネラル沈着を含めた、それへと至る事象の筋道が正常に進行した。各処置群におけるカルシウムレベルは、平均±標準誤差(SEM)として示されている。この例示的実験では、カルシウムアッセイで得たカルシウムレベルは約31μg/mlであった。しかし、組換体マウススクレロスチンの添加によって、石灰化の阻害が引き起こされ、カルシウムは約85%減少した。組換体スクレロスチンと共に組換体抗スクレロスチンモノクローナル抗体Ab-19またはAb-4を添加すると、いずれかの抗体によってスクレロスチンの阻害活性が中和されたため、スクレロスチンのみの群と比較して、ミネラル沈着の統計的に有意な増大がもたらされた。この実験からの結果は、Ab-19およびAb-4がスクレロスチン中和モノクローナル抗体(Mab)であることを示す。
【0489】
図23は、組換体ヒトスクレロスチンと、2種のヒト化抗スクレロスチンMabとを用いた極めて類似した結果を示す。
図24も、組換体ヒトスクレロスチンと、示したマウスおよびヒト化抗スクレロスチンMabとを用いた極めて類似した結果を示す。
【0490】
図22、23、および24に示した実験で使用した抗体は、約145Kdの分子量を有し、抗体分子あたり2カ所のスクレロスチン結合部位を有する。
【0491】
詳細なMC3T3-E1-BF細胞培養プロトコールを以下に記載する。
【表4】
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【0492】
α-MEMは、通常、1年間の有効期限で製造されている。細胞培養には、製造期日後6カ月より古くないα-MEMは用いた。
【0493】
増殖培地(α-MEM/10%FBS/PenStrepGlu)は以下の通りに調製した。
FBSの500mlボトルを解凍し、0.22ミクロンフィルターに通して濾過滅菌した。
このFBS100mlを1リットルのα-MEMに添加し、その後、100×PenStrepGlutamine 10mlを添加した。未使用のFBSは分注し、後の使用のために再冷凍した。
【0494】
分化培地(α-MEM/10% FBS/PenStrepGlu + 50μg/mlアスコルビン酸 + 10mM βグリセロリン酸)は、以下の通りに調製した。
100mlの分化培地は、100mlの増殖培地に、以下の通りのアスコルビン酸およびβグリセロリン酸を補足することによって調製した。
【表5】
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【0495】
分化培地は、分化培地を細胞培養に用いることになっている日にのみ増殖培地に補足することによって作製した。α-MEMには既に50μg/mlのアスコルビン酸が含有されているので、分化培地中のアスコルビン酸最終濃度は100μg/mlである。アスコルビン酸保存液(10mg/ml)を作製して、-80℃での冷凍用に分注した。各アリコートは、1回のみ使用した(すなわち再冷凍しない)。βグリセロリン酸保存液(1M)を作製し、-20℃での冷凍用に分注した。各アリコートは、最多で5回まで冷凍および解凍を行い、その後廃棄した。
【0496】
(MC3T3-E1-BF細胞を増殖させるための細胞培養)
細胞培養は、37℃、5% CO
2で行った。スクレロスチン中和抗体を得るためのスクリーニングを目的として、細胞バンクを作製した。細胞バンクは以下の通りに作製した。
【0497】
1バイアルの冷凍MC3T3-E1-BF細胞を37℃のウォーターバス中で撹拌することによって解凍した。解凍した細胞を、50ml管の中の増殖培地(α-MEM/10% FBS/PenStrepGlu) 10mlに入れ、穏やかに5分間、遠心分離した。その後、細胞を4mlのα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu中に再懸濁した。トリパンブルーおよび血球計算板を用いて細胞数を測定した後、T175フラスコ中のα-MEM/10% FBS/PenStrepGlu培地50ml中に1×10
6細胞を播種した。
【0498】
この継代培養物が集密状態になったとき(約7日目)、トリプシン/EDTA(0.05%トリプシン;0.53mM EDTA)を用いて、細胞にトリプシン処理を施し、穏やかに5分間、遠心沈殿させ、その後、5mlのα-MEM/10% FBS/PenStrepGlu中に再懸濁した。トリパンブルーおよび血球計算板を用いて細胞数を測定した後、T175フラスコ中のα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu培地50ml中に1×10
6細胞を播種した。この時点で播種に用いられたT175フラスコの数は、利用可能な総細胞数と、次の継代に進むことになっている所望のフラスコ数とに依存する。余分な細胞は、90% FBS/10% DMSO中に1〜2×10
6生細胞/mlで冷凍した。
【0499】
この継代培養物が集密状態になったとき(3〜4日目ごろ)、トリプシン/EDTA(0.05%トリプシン;0.53mM EDTA)を用いて、細胞にトリプシン処理を施し、穏やかに5分間、遠心沈殿させその後、5mlのα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu中に再懸濁した。トリパンブルーおよび血球計算板を用いて細胞数を測定した後、T175フラスコ中のα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu培地50ml中に1×10
6細胞を播種した。この時点で播種に用いられたT175フラスコの数は、利用可能な総細胞数と、次の継代に進むことになっている所望のフラスコ数とに依存する。余分な細胞は、90%FBS/10%DMSO中に1〜2×10
6生細胞/mlで冷凍した。
【0500】
この継代培養物が集密状態になったとき(3〜4日目ごろ)、トリプシン/EDTA(0.05%トリプシン;0.53mM EDTA)を用いて、細胞にトリプシン処理を施し、穏やかに5分間、遠心沈殿させその後、5mlのα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu中に再懸濁した。トリパンブルーおよび血球計算板を用いて細胞数を測定した後、T175フラスコ中のα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu培地50ml中に1×10
6細胞を播種した。この時点で播種に用いられたT175フラスコの数は、利用可能な総細胞数と、次の継代に進むことになっている所望のフラスコ数とに依存する。余分な細胞は、90%FBS/10%DMSO中に1〜2×10
6生細胞/mlで冷凍した。
【0501】
この継代培養物が集密状態になったとき(3〜4日目ごろ)、トリプシン/EDTA(0.05%トリプシン;0.53mM EDTA)を用いて、細胞にトリプシン処理を施し、穏やかに5分間、遠心沈殿させその後、5mlのα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu中に再懸濁した。トリパンブルーおよび血球計算板を用いて細胞数を測定した後、細胞を、90%FBS/10%DMSO中に1〜2×10
6生細胞/mlで冷凍した。この「最終継代培養物」の冷凍細胞が、スクリーニングアッセイに使用された継代培養物であった。
【0502】
(MC3T3-E1-BF細胞を石灰化させるための細胞培養)
細胞培養は、37℃、5%CO
2で行った。石灰化細胞培養手順中、温度および% CO
2の変動は最小限にすることが望ましい。これは、培地を与える間にプレートがインキュベーターの外にある時間を最小にすることによって、そして、石灰化細胞培養手順中にインキュベーターのドアを開閉する回数を最小限にすることによって実現できる。この点で、排他的に石灰化細胞培養専用に用いる組織培養インキュベーターを有する(そしてそれゆえ、必要以上に開閉しない)ことは有用でありうる。
【0503】
上述の通りに調製した適切な数の「最終継代培養物」バイアルを、37℃のウォーターバス中で撹拌しながら解凍した。解凍した細胞を、50ml管の中の増殖培地(α-MEM/10%FBS/PenStrepGlu)10mlに入れ、穏やかに5分間、遠心分離した。その後、細胞を4mlのα-MEM/10%FBS/PenStrepGlu中に再懸濁した。トリパンブルーおよび血球計算板によって細胞数を測定した後、2500の細胞を、コラーゲンIコーティングされた96ウェルプレート(Becton Dickinson Labware社、カタログ番号354407)上、1ウェルあたり200μlの増殖培地中に播種した。
【0504】
石灰化プレートのエッジ効果を回避するために、プレートの全周にわたって最も外側の行/列にはプレーティングしなかった。その代わり、これらのウェルには200μlのPBSを添加した。
【0505】
(例示的細胞培養手順)
以下の手順では、細胞を播種する開始日が水曜日であるものとして示してある。細胞を播種する開始日として週の異なった曜日を用いる場合には、その日を引き金として、以下に示す全過程中における培地の除去および添加の日程が計画されるであろう。例えば、細胞を火曜日に播種する場合には、最初の金曜日および土曜日にも、第2の金曜日および土曜日にも、培地の除去および添加をするべきではない。火曜開始の場合、カルシウムアッセイ用のプレートは最終日曜日に調製されるであろう。
【0506】
水曜日に、2500の細胞を200μlの増殖培地中に播種した。
木曜日に、すべての増殖培地を除去し、200μlの分化培地を添加した。
金曜日に、100μlの培地を除去し、100μlの新たな分化培地を添加した。
月曜日に、100μlの培地を除去し、100μlの新たな分化培地を添加した。
火曜日に、100μlの培地を除去し、100μlの新たな分化培地を添加した。
水曜日に、100μlの培地を除去し、100μlの新たな分化培地を添加した。
木曜日に、100μlの培地を除去し、100μlの新たな分化培地を添加した。
金曜日に、100μlの培地を除去し、100μlの新たな分化培地を添加した。
その後の月曜日に、カルシウムアッセイ用のプレートを以下の通りに調製した。
10mMトリス、HCl pH7-8でプレートを1回洗浄した。
ヒュームフードの下で作業し、ウェルあたり200μlの0.5N HClを添加した。その後、プレートを-80℃で冷凍した。
【0507】
カルシウムを測定する直前に、プレートを2回凍結解凍し、その後、プレートの内容物を分散させるために、マルチ-チャンネルピペットによる摩砕を用いた。その後、4℃に30分間、プレートの内容物が定着するままにした。この時点で、市販のカルシウムキットを用いたカルシウム測定用に、適切な量の上清を取り出した。限定的ではない例示的キットの1つがカルシウム(CPC) Liquicolor (カタログ番号0150-250、Stanbio Laboratory社、米国テキサス州ボルネ(Boerne))である。
【0508】
この細胞に基づくアッセイでは、ミネラル沈着に至るまで事象およびミネラル沈着を含めた事象のうちの1つまたは複数を、スクレロスチンが阻害する(すなわちスクレロスチンは石灰化を阻害する)。したがって、特定の細胞培養実験にスクレロスチンが含まれている実験では、最初の木曜日およびその後の培地添加日毎に開始する培地に組換体スクレロスチンを添加した。スクレロスチンを中和する能力に関して、抗スクレロスチンモノクローナル抗体(Mab)を試験する場合、すなわち、石灰化を阻害するスクレロスチンの能力を中和することによって、石灰化を可能にする場合には、最初の木曜日およびその後の培地添加日毎に開始する培地にMabを添加した。このプロトコールによれば、これは以下の通りに実現された。すなわち、分化培地中でMabを組換体スクレロスチンと共に45〜60分間、37℃でプレインキュベートし、その後、細胞を培養するのにこの培地を用いた。
【0509】
上述したものは、MC3T3-E1-BF細胞用の12日間石灰化プロトコールである。同じ試薬および培地添加プロトコールを用いて、オリジナルのMC3T3-E1細胞(Sudo H, Kodama H-A, Amagai Y, Yamamoto S, Kasai S. 1983. In vitro differentiation and calcification in a new clonal osteogenic cell line derived from newborn mouse calvaria. J Cell Biol 96:191〜198頁)は、石灰化に、MC3T3-E1-BF細胞より長期間(石灰化に合計20日間)を費やした。MC3T3-E1細胞は、理化学研究所細胞バンク(RCB1126、〒305-0074 茨城県つくば市高野台3-1-1、理化学研究所バイオリソースセンター)から発明者らが入手した。オリジナルのMC3T3-E1細胞の石灰化は、組換体スクレロスチンによって阻害され、この阻害は、スクレロスチン中和抗体を用いてブロックされた。
【実施例9】
【0510】
(抗スクレロスチン抗体は、SCIDマウスにおける大腸炎のCD4 CD45RB
HI移入モデルで、炎症で誘導される骨量減少から防御する)
(モデルの概要)
CD4+T細胞のCD45RB
highサブセットをC.B-17 scidマウスに注入すると、その結果、ヒト炎症性腸疾患(IBD)の特徴に類似した特徴を有する慢性腸炎が起こる。細胞移入の3〜5週間後に、上皮細胞過形成および肉芽腫形成を伴う大腸への重度の白血球浸潤と共に、下痢および消耗性疾患が見出される。相互的なサブセットのCD4+細胞、すなわちCD45RB
lowを発現するものを受容したC.B-17 scidマウスは、大腸炎を示さず、非注入のscidマウスから区別できない増量を有する。大腸炎の症候に加えて、大腸炎のCD4+CD45RB
high T細胞移入モデルには、骨密度(BMD)の低下が伴う。これは、飼料の消化不良ではなく、主として炎症機構を介したものであると考えられている(Byrne, F. R.ら、Gut 54:78〜86頁、2005)。
【0511】
(大腸炎の誘導および炎症で誘導される骨量減少)
メスのbalb/cマウスから脾臓を採取し、70μmの細胞濾過器に通して破砕した。その後、B220に対する抗体であるMAC-1、CD8、およびI-A
dを使用し、Dynabeadsを用いたネガティブ選択によって、CD4+集団を濃縮した。その後、濃縮された集団をFITC結合抗CD4およびPE結合抗CD45RBで染色し、Moflo (Dakocytomation社)における2色選別によって、CD4+CD45RB
high集団とCD4+CD45RB
low集団とに分画した。CD45RB
high集団およびCD45RB
low集団は、それぞれ最も明るい染色40%および最も暗い染色20%のCD4+細胞として定義した。その後、0日目に、5×10
5の細胞をC.B-17 scidマウスに腹腔内注射し、大腸炎の発症を、軟便または下痢および体重減の出現を通してモニターした。検査の終了時(88日目)に骨密度測定を行った。
【0512】
(大腸炎症候およびBMDへの抗スクレロスチン処置の影響)
CD4+CD45RB
high細胞移入の前日から、Ab-A IgGを10mg/kg皮下投与し、陰性対照抗体101.4を受容したマウスと比較した。陰性対照抗体も10mg/kgで皮下投与した。抗体は、その後、毎週投与した。非病原性のCD4+CD45RB
low細胞を受容し、かつ10mg/kgの101.4を投与された1群のマウスを対照として検査した。検査の終了時(88日目)に骨密度を測定し、細胞浸潤の分析および組織学的損傷の評価のために、大腸の切片を採取した。
【0513】
a)大腸炎症候には無影響
体重減および大腸への炎症細胞の浸潤など、典型的な大腸炎症候は、Ab-Aを用いた処置の影響を受けなかった。同様に、Ab-Aで処置した後に、大腸への組織学的な損傷の改善はなかった。
【0514】
b)炎症で誘導される骨密度低下の阻害
C.B-17 scidマウスへの細胞移入後88日目に、骨密度を測定した(全BMD、脊椎骨BMD、および大腿骨BMD)。
図25に示す通り、CD4+CD45RB
low非病原性細胞を受容した対照マウスと比較して、CD4+CD45RB
high T細胞および陰性対照抗体101.4を受容したマウスでは、骨密度が低下した。対照的に、Ab-Aで処置した後には、BMDの低下が見出されなかった。CD4+CD45RB
high T細胞を受容し、かつAb-Aで処置されたマウスにおける全体、脊椎骨、および大腿骨BMDの測定値は、CD4+CD45RB
high T細胞を受容し、かつ101.4で処置されたマウスより有意に高かった(ボンフェローニ多重比較検定によるとP<0.001)。
【実施例10】
【0515】
(ヒトスクレロスチンに対する抗スクレロスチン抗体の親和性(K
D)のKINEXAに基づく測定) ヒトスクレロスチンに対するいくつかの抗スクレロスチン抗体の親和性を、KinExA(登録商標)3000(Sapidyne Instruments社、米国アイダホ州ボイシ)を用いた溶液平衡結合分析によって評価した。これらの測定には、Reacti-Gel 6xビーズ(Pierce社、米国イリノイ州ロックフォード)を、40μg/mlのヒトスクレロスチンを含む50mM Na
2CO
3 pH9.6で、4℃で終夜プレコーティングした。その後、1mg/ml BSAを含む1Mトリス塩酸pH7.5で、4℃で2時間、ビーズのブロッキングを行った。10pM、30pM、または100pMの抗体を、濃度0.1pMから1nMまで及ぶ様々な濃度のヒトスクレロスチンと混同し、0.1mg/ml BSAおよび0.005% P20を含むPBS中で、8時間超の間、室温で平衡化させた。その後、この混合物に、ヒトスクレロスチンコーティングされたビーズ上を通過させた。ビーズ結合の抗スクレロスチン抗体の量を、それぞれマウスまたはヒト抗体試料用に蛍光Cy5標識のヤギ抗マウスIgGまたは蛍光Cy5標識のヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson Immuno Research社、米国ペンシルベニア州ウェストグローブ(West Grove))を用いて定量化した。測定された蛍光シグナルの量は、平衡にある各反応混合物中の遊離抗スクレロスチン抗体の濃度に比例していた。解離平衡定数(K
D)は、KinExA Proソフトウェア中に提供されているn曲線1部位均質結合モデルを用いて、競合曲線の非線形回帰から得た。選択された抗体のKinExAアッセイの結果を以下の表に要約する。
【表6】
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【実施例11】
【0516】
(ヒトスクレロスチンに対するヒト化抗スクレロスチン抗体の親和性を測定するBIAcore法)
BIAcore技術は、生物分子間の結合を、実時間で、かつ標識化の必要なしにモニターする。相互作用物の一方は、リガンドと呼ばれ、直接固定化されるか、もしくは固定化された表面に捕捉され、もう一方は、分析物と呼ばれ、溶液中で、補足された表面上を流れる。センサーは、分析物がリガンドに結合して上記表面で複合体を形成する際に、センサー表面における質量の変化を検出する。これが会合過程に対応している。解離過程は、分析物が緩衝剤によって置換除去される際にモニターされる。上記親和性BIAcoreアッセイでは、リガンドが抗スクレロスチン抗体であり、分析物がスクレロスチンである。
【0517】
(測定器)
Biacore (登録商標)3000、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。
【0518】
(センサーチップ)
CM5(研究グレード)、カタログ番号BR-1001-14、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。チップは4℃で保存した。
【0519】
(BIAnormalising溶液)
70% (w/w)グリセロール。BIAmaintenanceキット、カタログ番号BR-1002-51の一部。Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。BIAmaintenanceキットは4℃で保存した。
【0520】
(アミンカップリングキット)
カタログ番号: BR-1000-50、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。
塩酸エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)。蒸留水で75mg/mLにし、200μLアリコートで-70℃に保存した。
N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)。蒸留水で11.5mg/mLにし、200μLアリコートで-70℃に保存した。
【0521】
1M塩酸エタノールアミン-NaOH pH8.5。200μLアリコートで-70℃に保存した。
【0522】
(緩衝剤)
捕捉抗体を固定化するための作業緩衝剤:HBS-EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性物質P20)。カタログ番号: BR-1001-88、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。緩衝剤は4℃で保存した。
固定化緩衝剤:アセテート5.0(10mM 酢酸ナトリウムpH5.0)。カタログ番号: BR-1003-51、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。緩衝剤は4℃で保存した。
結合アッセイのための作業緩衝剤:HBS-EP(0.01M HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性物質P20、カタログ番号:BR-1001-88、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ)に、CMデキストラン(カタログ番号27560、Fluka BioChemika社、スイス国ブックス(Buchs))を1mg/mL添加した。緩衝剤は4℃で保存した。
【0523】
(リガンド捕捉)
Affinipure F(ab')
2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fc断片特異的。Jackson ImmunoResearch社(米国ペンシルバニア)カタログ番号:109-006-098。試薬は4℃で保存した。
【0524】
(リガンド)
ヒト化抗ヒトスクレロスチン抗体Ab5、Ab14、およびAb20。
【0525】
(分析物)
組換体ヒトスクレロスチン。アリコートを-70℃で保存し、各アッセイ用に1回解凍した。
【0526】
(再生溶液)
40mM HClを、11.6M保存液(BDH社、英国プール(Poole)、カタログ番号:101254H)から蒸留水で希釈することによって調製した。
5mM NaOHを50mM保存液から蒸留水で希釈することによって調製した。カタログ番号: BR-1003-58、Biacore AB社、スウェーデン国ウプサラ。
【0527】
(アッセイ法)
アッセイフォーマットは、固定化された抗ヒトIgG-Fcによって抗スクレロスチン抗体を捕捉し、その後、補足された表面でスクレロスチンの力価測定を行うものであった。
手順の一例を以下に示す。
【0528】
BIA(生体分子相互作用分析)は、BIAcore3000(BIAcore AB社)を用いて行った。アミンカップリング化学を介して、Affinipure F(ab')
2断片ヤギ抗ヒトIgG、Fc断片特異的(Jackson ImmunoResearch社)を、約4000反応単位(RU)の捕捉レベルまでCM5センサーチップ上に固定化した。1mg/mLのCMデキストランを含有するHBS-EP緩衝剤(10mM HEPES pH7.4、0.15M NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性物質P20、BIAcore AB社)を作業緩衝剤として、10ml/分の流速で用いた。固定化された抗ヒトIgG-Fcによる捕捉のために、約5μg/mLの抗スクレロスチン抗体10μlの注入を用いた。抗体捕捉レベルは、通常、100〜200RUであった。スクレロスチンの力価決定を、様々な濃度の捕捉抗スクレロスチン抗体上で、流速30μL/分で行った。流速10μL/分で、10μLの40mM HClを2回注入し、その後、5μLの5mM NaOHを注入することによって表面を再生させた。
【0529】
標準的手順に従ってBIAevaluationソフトウェア(バージョン3.2)を使用して、バックグラウンドを減算した結合曲線を分析した。動態パラメータは適当なアルゴリズムから決定した。
【0530】
動態データおよび計算された解離定数をTable 2に示す。
【表7】
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【実施例12】
【0531】
(カニクイザルにおける抗スクレロスチンモノクローナル抗体のin vivo試験)
この2カ月間の試験には、約3〜5歳、メスのカニクイザル(Macaca fascicularis)33頭を用いた。この試験は以下の11群を含有した。
群1: 媒体(N=4)
群2: Ab-23(N=2、用量3mg/kg)
群3: Ab-23(N=3、用量10mg/kg)
群4: Ab-23(N=3、用量30mg/kg)
群5: Ab-5(N=3、用量3mg/kg)
群6: Ab-5(N=3、用量10mg/kg)
群7: Ab-5(N=3、用量30mg/kg)
群8: Ab-14(N=3、用量3mg/kg)
群9: Ab-14(N=3、用量10mg/kg)
群10: Ab-14(N=3、用量30mg/kg)
群11:副甲状腺ホルモン(1-34)[PTH(1-34)] (N=3、用量10μg/kg)
【0532】
すべての投与は皮下に行った。PTH(1-34)は毎日投与し、モノクローナル抗体(Mab)は2回投与した(試験の開始時に最初の投与、1カ月の時点で2回目の投与)。骨パラメータ(例えば骨密度)の評価には、試験開始の前(ベースライン値を得る)、1カ月後(Mabの2回目の投与の前)、そして最後に試験の終了時(2カ月目の時点)に、pQCT(末梢定量コンピュータ断層撮影法)およびDXA(二重エネルギーX線吸収測定法)スキャンを行った。試験終了時には、さらに分析する(例えば組織形態計測的分析)ためにサルを死体解剖した。動的組織形態計測用に、動物を蛍光色素で標識した(14、24、47、および57日目)。試験中の様々な時点[1日目の投与前(最初のMab投与の日)、1日目の投与12時間後、2日目、3日目、5日目、7日目、14日目、21日目、28日目、29日目の投与12時間後(29日目は2回目かつ最後のMab投与の日であった)、30日目、31日目、33日目、35日目、42日目、49日目および56日目]に血清を収集した。
【0533】
3種の骨に関連した血清生物マーカーを、以下の市販キットを用いて測定した。
オステオカルシン(OC) (DSLオステオカルシンラジオイムノアッセイキット;Diagnostic Systems Laboratories社、米国テキサス州ウェブスター)
I型プロコラーゲンのN末端プロペプチド(P1NP)(P1NPラジオイムノアッセイキット; Orion Diagnostica社、フィンランド国エスポー)
コラーゲンのC-テロペプチド断片I型a1鎖(sCTXI)(血清CrossLaps(登録商標) ELISA;Nordic Bioscience Diagnostics A/S社、デンマーク国ハーレフ(Herlev))。
【0534】
pQCTおよびDXAスキャンは、多数の骨格部位全体にわたって(脛骨骨幹端および骨体部、橈骨骨幹端および骨体部、大腿骨首、腰椎を含む)、様々な骨パラメータ(骨密度(BMD)および骨塩量を含む)のデータを生み出した。この骨データの分析(各動物におけるベースラインからのパーセント変化)および同化(OC、P1NP)血清生物マーカーデータ(各動物におけるベースラインからのパーセント変化)は、媒体群に対して、上記の時点および各Mabの用量のいくつかにおける、いくつかのパラメータの統計的に有意な増大を明らかにした。この骨パラメータデータ、血清生物マーカーデータ、および組織形態計測的データは、上記3種のMab(Ab-23、Ab-5、およびAb-14)がカニクイザルにおいてスクレロスチンを中和できたことを示す。この活性は、Ab-23およびAb-5、特に最も高い用量(30mg/kg)で最も活発であり、骨形成の明確な増大(同化効果)と、骨の純増加(例えばBMD)とを伴った。骨パラメータおよび同化の組織形態計測的パラメータの統計的に有意な増大は、陽性対照群(PTH(1-34))でも見られた。
【0535】
様々な時点および用量で、しかし特に、Ab-23およびAb-5に関して30mg/kgで、血清骨形成マーカー(P1NP、オステオカルシン)が増大した(媒体(VEH)に対してp<0.05)。組織形態計測的な分析は、より高用量のAb-23およびAb-5で、腰椎および近位脛骨の海綿骨中(最大5倍までの増大)、ならびに大腿骨骨幹中部の皮質内表面(最大10倍までの増大)で、骨形成率の急激な増大を明らかにした(VEHに対してp<0.05)。小柱骨組織厚は、腰椎において、高用量のAb-23およびAb-5で増大した(>60%、VEHに対してp<0.05)。試験終了時(2カ月目)までに、大腿骨頸、橈骨遠位端(Ab-23、30mg/kg)、および腰椎(Ab-5、30mg/kg)で、ベースラインからのパーセント変化として、面BMDが増大した(VEHに対してp<0.05)。腰椎における面BMDの増大には、脊椎強度の増大(Ab-23では脊椎最大負荷が97%増大、30mg/kg; VEHに対してp<0.05)が伴い、Mab投与の前における腰の面BMDのベースライン値は、すべての群にわたって統計的に同様であった。要約すると、カニクイザルにおけるスクレロスチン中和Mabの短期投与は、部分的に、骨形成、BMD、および脊椎骨強度の増大をもたらした。
【0536】
本明細書では、例示を目的として本発明の特定の実施形態を記載したが、以上から、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、様々な変更を行うことができる。したがって、本発明は、添付した特許請求の範囲による以外は限定されない。本明細書で開示したすべての出版物、公開された特許出願、および特許文献を参照により本明細書に組み込む。