特許第6158275号(P6158275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158275
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】エレベータの遠隔監視システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20170626BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B66B5/00 G
   B66B3/00 T
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-230351(P2015-230351)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2017-95252(P2017-95252A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠介
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−151255(JP,A)
【文献】 特開2014−172666(JP,A)
【文献】 特開2003−134256(JP,A)
【文献】 特開2000−351541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に連結された少なくとも2つの乗りかごを有するエレベータと、上記各乗りかごに共通に用いられる通信用の端末装置と、この端末装置に通信回線を介して接続される監視センタとを備えたエレベータの遠隔監視システムにおいて、
上記端末装置は、
上記各乗りかご内で非常呼びボタンが押下された際に、少なくとも上記エレベータの号機番号を含んだコール情報を非常呼びの信号と共に上記監視センタに送って上記各乗りかごと上記監視センタとの間の電話回線を接続し、
上記監視センタは、
上記各乗りかごから非常呼びが個別に発信された場合に、上記コール情報に含まれる号機番号に基づいて当該エレベータにおける上記各乗りかごの中の1つの乗りかごの電話回線を上記監視センタ内のオペレータ端末に繋いで通話可能状態とし、当該乗りかご内の乗客の通話が終了するまでの間、他の乗りかご内の乗客との通話を保留状態にする回線制御手段と、
この回線制御手段によって通話保留された乗りかご内の乗客に対し、上記エレベータの別の乗りかご内の乗客と通話中である旨を通知する通知制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの遠隔監視システム。
【請求項2】
上記端末装置は、
上記エレベータの異常発生時に、その異常に関する情報を含んだ動作状態情報を上記監視センタに発報し、
上記監視センタは、
上記動作状態情報に基づいて上記エレベータの異常を検出する異常検出手段を備え、
上記回線制御手段は、
上記各乗りかごからほぼ同時に非常呼びが発信された場合に、上記異常検出手段によって検出された異常の重要度をかご別に判定し、上記各乗りかごの中で重要度の高い乗りかごを優先し、その乗りかごの電話回線を上記監視センタ内のオペレータ端末に繋ぐことを特徴とする請求項1記載のエレベータの遠隔監視システム。
【請求項3】
上記回線制御手段は、
上記各乗りかごの中で通話状態にある乗りかご内の乗客の通話が終了した時点で通話保留状態にある乗りかごの電話回線を上記監視センタ内の同じオペレータ端末に繋げることを特徴とする請求項1または2記載のエレベータの遠隔監視システム。
【請求項4】
上記回線制御手段は、
上記各乗りかごの中で通話状態にある乗りかご内の乗客の通話時間を監視し、予め設定された通話制限時間を経過した時点で当該乗りかご内の乗客の通話を遮断し、通話保留状態にある乗りかごの電話回線を上記監視センタ内の同じオペレータ端末に繋げることを特徴とする請求項1または2記載のエレベータの遠隔監視システム。
【請求項5】
上記回線制御手段は、
上記各乗りかごの中で通話状態にある乗りかごの上記通話制限時間までの残り時間を算出し、
上記通知制御手段は、
上記各乗りかごの中で通話保留状態にある乗りかご内の乗客に対し、上記残り時間を最大待ち時間として通知することを特徴とする請求項4記載のエレベータの遠隔監視システム。
【請求項6】
上記通知制御手段は、
上記各乗りかごの中で通話状態にある乗りかご内の乗客に対し、上記通話制限時間の経過によって通話保留状態にある乗りかご内の乗客との通話に切り替える旨を通知することを特徴とする請求項4記載のエレベータの遠隔監視システム。
【請求項7】
上記監視センタは、
上記監視センタ内のオペレータ端末に対し、上記各乗りかごの中で通話状態にある乗りかごの上記通話制限時間までの残り時間を表示する表示制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項4記載のエレベータの遠隔監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗りかご内の乗客と監視センタのオペレータとの間の通話を可能とするエレベータの遠隔監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、エレベータの乗りかご内には非常呼びボタンが設置されており、非常時に非常呼びボタンを押下することで外部と通話することができる。外部とは、エレベータの動作状態を常時監視している監視センタである。監視センタ内には複数のオペレータが常駐しており、乗りかご内の乗客から非常呼びの電話がかかってきたときに対応する。
【0003】
ここで、超高層ビル等では、ビルのスペース効率を向上させるために、ビル内の縦の交通手段として、かご室を上下2段に構成した大量輸送可能なエレベータが用いられる。このようなエレベータを「ダブルデッキエレベータ」と呼んでいる。
【0004】
このダブルデッキエレベータでは、上下かごの一方のかご内にしか非常呼びボタンが設置されていないことが多い。このため、何らかの異常があった場合に一方のかご内からしか外部へ連絡できず、他方のかごに対する安全性が要求されていた。そこで、近年、上下かごの両方に非常呼びボタンを設置しておき、上下のどちらのかご内からでも外部へ連絡可能とした構成が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−159452号公報
【特許文献2】特許第4777239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上下かごの両方に非常呼びボタンを設置した場合、異常時に両方のかごで非常呼びボタンが押される可能性がある。このような場合、監視センタでは、上下かごの両方からの非常呼びに対して、2人のオペレータが対応することになる。監視センタ内のオペレータの人数は限られているため、同じエレベータからの非常呼びに対して2人のオペレータが対応していることは効率が悪い。特に、地震等の広域災害が発生した場合には、各物件のエレベータからの非常呼びが集中するため、できるだけ効率的に応答することが要求される。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数のかごを有するエレベータからかご別に発信される非常呼びを監視センタ側で効率良く応答してオペレータの負担を軽減するエレベータの遠隔監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムは、上下に連結された少なくとも2つの乗りかごを有するエレベータと、上記各乗りかごに共通に用いられる通信用の端末装置と、この端末装置に通信回線を介して接続される監視センタとを備える。
【0009】
上記端末装置は、上記各乗りかご内で非常呼びボタンが押下された際に、少なくとも上記エレベータの号機番号を含んだコール情報を非常呼びの信号と共に上記監視センタに送って上記各乗りかごと上記監視センタとの間の電話回線を接続する。
上記監視センタは、上記各乗りかごから非常呼びが個別に発信された場合に、上記コール情報に含まれる号機番号に基づいて当該エレベータにおける上記各乗りかごの中の1つの乗りかごの電話回線を上記監視センタ内のオペレータ端末に繋いで通話可能状態とし、当該乗りかご内の乗客の通話が終了するまでの間、他の乗りかご内の乗客との通話を保留状態にする回線制御手段と、この回線制御手段によって通話保留された乗りかご内の乗客に対し、上記エレベータの別の乗りかご内の乗客と通話中である旨を通知する通知制御手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は第1の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は同実施形態におけるエレベータの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は同実施形態における監視センタの機能構成を示すブロック図である。
図4図4は同実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図5図5は同実施形態における保留通知用のメッセージの一例を示す図である。
図6図6は第2の実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図7図7は同実施形態における異常重要度テーブルの一例を示す図である。
図8図8は第3の実施形態におけるエレベータの機能構成を示すブロック図である。
図9図9は同実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図10図10は同実施形態における保留通知用のメッセージの一例を示す図である。
図11図11は同実施形態における最大待ち時間の表示例を示す図である。
図12図12は同実施形態における通話遮断メッセージの一例を示す図である。
図13図13は第4の実施形態における監視センタの機能構成を示すブロック図である。
図14図14は同実施形態における残り時間の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの遠隔監視システムの構成を示すブロック図である。
【0013】
エレベータ11は、エレベータ制御装置12と遠隔監視装置13とを備える。エレベータ制御装置12は、コンピュータからなり、乗りかごを駆動するモータの制御やドアの開閉制御などを含むエレベータ(乗りかご)の運転制御を行う。
【0014】
遠隔監視装置13は、監視センタ15との間の通信機能を備えた端末装置である。通信ネットワーク14には電話回線が含まれる。
【0015】
監視センタ15は、遠隔地に存在し、通信ネットワーク14を介してエレベータ11の状態を常時監視している。なお、図1の例では、エレベータ11が1台しか通信ネットワーク14に接続されていないが、実際には各地に点在する多数のエレベータ11が通信ネットワーク14に接続されている。監視センタ15は、これらのエレベータから送られてくる各種信号(動作状態情報)を監視画面に表示するなどして、何らかの異常を検出した場合に保守員を現場に派遣するなどして対応する。
【0016】
また、監視センタ15では、常時数人のオペレータが待機しており、顧客からのエレベータ故障・事故に関する問い合わせの電話、さらに、後述するエレベータのかご内の非常呼びボタンの押下による乗客からの電話に対応している。
【0017】
図2はエレベータ11の機能構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態では、エレベータ11としてダブルデッキエレベータを想定している。エレベータ11は、かご枠20内に上下に連結された2つの乗りかご21a,21bを有する。以下では、かご枠20内の上に配置された乗りかご21aを「上かご」、かご枠20内の下に配置された乗りかご21bを「下かご」と称する。
【0019】
上かご21a内には、非常呼びボタン22a、通話部23a、アナウンス部24a、表示部25aが設けられている。
【0020】
非常呼びボタン22aは、非常時に外部と通話するための操作ボタンである。外部とは、具体的には監視センタ15のことである。すなわち、非常呼びボタン22aを押下すると、非常呼びが遠隔監視装置13を介して監視センタ15に発信される。これにより、上かご21aと監視センタ15との間の電話回線が接続され、上かご21a内の乗客は非常呼びボタン22aの近くに設置された通話部23aを通じて監視センタ15内のオペレータと通話することができる。通話部23aは、図示せぬマイク(送話器)とスピーカ(受話器)で構成される。
【0021】
アナウンス部24aは、エレベータ運転中に各種ガイダンス情報を音声出力する。また、アナウンス部24aは、非常呼び時に監視センタ15から送られて来る通話に関するメッセージを音声出力する。表示部25aは、例えば小型のLCD(Liquid Crystal Display)からなり、上かご21aの現在位置や運転方向などの運転状態などを表示する。また、表示部25aは、非常呼び時に監視センタ15から送られて来る通話に関するメッセージを表示する。
【0022】
下かご21bについても上記上かご21aと同様の構成である。すなわち、下かご21b内には非常呼びボタン22b、通話部23b、アナウンス部24b、表示部25bが設けられており、上かご21aとは個別に監視センタ15内のオペレータと通話可能な構成になっている。
【0023】
エレベータ制御装置12は、コンピュータからなり、かご枠20(上かご21aと下かご21b)を駆動するモータの制御やドアの開閉制御などを含むエレベータ11の運転制御を行う。
【0024】
遠隔監視装置13は、エレベータ制御装置12とは独立して設けられている。遠隔監視装置13には、通信部31、情報取得部32、通話制御部33、アナウンス・表示制御部34が備えられている。
【0025】
通信部31は、通信ネットワーク14に接続して監視センタ15との間の通信処理を行う。情報取得部32は、エレベータ制御装置12からエレベータ11の動作状態情報を取得する。この動作状態情報には、かご別に発生する異常(例えば照明異常、ドア異常、着床異常等)を示す情報が含まれる。
【0026】
通話制御部33は、かご枠20内の上かご21aと下かご21bと監視センタ15との間の通話処理を制御する。アナウンス・表示制御部34は、かご枠20内の上かご21aと下かご21bに対する通話に関するメッセージの音声アナウンスと表示の制御を行う。
【0027】
図3は監視センタ15の機能構成を示すブロック図である。
【0028】
監視センタ15には、通信部41、異常検出部42、回線制御部43、通知制御部44、オペレータ端末45a,45b,45c…などが備えられている。なお、異常検出部42、回線制御部43、通知制御部44は、監視センタ15に設けられたコンピュータ(制御装置)によって実現される。
【0029】
通信部41は、通信ネットワーク14に接続してエレベータ11との間の通信処理を行う。
【0030】
異常検出部42は、エレベータ11の遠隔監視装置13から送られて来る動作状態情報に基づいて異常の有無を検出し、その異常内容に応じた所定の処理を行う。
【0031】
回線制御部43は、エレベータ11の上かご21aと下かご21bから個別に非常呼びが発信された場合に、一方のかごの電話回線を監視センタ15内のオペレータ端末45a,45b,45c…のいずれかに繋いで通話可能状態とし、当該かご内の乗客の通話が終了するまでの間、他方のかごを通話保留状態にする。
【0032】
通知制御部44は、回線制御部43によって通話保留されたかご内の乗客に対し、エレベータ11の別のかご内の乗客と通話中である旨を通知する。
【0033】
オペレータ端末45a,45b,45c…は、監視センタ15内のオペレータが使用する端末装置であり、入力装置や表示装置などを含む一般的なコンピュータシステムからなる。また、これらのオペレータ端末45a,45b,45c…には、図示せぬ音声通話用のスピーカとマイクが設けられている。
【0034】
次に、第1の実施形態の動作について説明する。
【0035】
図4は第1の実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を説明するためのフローチャートであり、左側はエレベータ11側の処理、右側は監視センタ15側の処理を示している。
【0036】
エレベータ11に設けられた遠隔監視装置13の情報取得部32は、エレベータ制御装置12からエレベータ11の動作状態情報を取得して監視センタ15に送信する。ここで、エレベータ11に何らかの異常が発生すると、その異常に関する情報を含んだ動作状態情報が監視センタ15に発報される(ステップA11)。
【0037】
監視センタ15に設けられた異常検出部42は、この動作状態情報に基づいてエレベータ11の異常の有無を検出し、その異常内容に応じた所定の処理を行う(ステップB11)。具体的には、異常発生場所(物件位置)を特定して、オペレータ端末45a,45b,45c…に異常発生場所を表示すると共に、近隣の保守員が持つ保守端末に電子メールを自動送信して現場に向かわせるなどの処理を行う。
【0038】
ここで、エレベータ11の上かご21a内の乗客が非常呼びボタン22aを押下したとする(ステップA12のYes)。非常呼びボタン22aが押下されると、遠隔監視装置13の通話制御部33は、予めエレベータ11に設定された号機番号と上かご21aの識別番号を含んだコール情報を非常呼びの信号と共に監視センタ15に送って、上かご21aと監視センタ15の電話回線を接続する(ステップA13)。例えば、エレベータ11の号機番号が「1000」であり、上かご21aの識別番号が「A」であれば、「1000A」といったコール情報CAが監視センタ15に送信されることになる。
【0039】
また、下かご21b内の乗客が非常呼びボタン22bを押下した場合には(ステップA14のYes)、遠隔監視装置13の通話制御部33は、予めエレベータ11に設定された号機番号と下かご21bの識別番号を含んだコール情報を非常呼びの信号と共に監視センタ15に送って、下かご21bと監視センタ15の電話回線を接続する(ステップA15)。例えば、エレベータ11の号機番号が「1000」であり、下かご21bの識別番号が「B」であれば、「1000B」といったコール情報CBが監視センタ15に送信されることになる。
【0040】
通話制御部33から監視センタ15に対して送られた上かご21aのコール情報CAまたは下かご21bのコール情報CBは、通信部41を介して回線制御部43に与えられる。回線制御部43は、コール情報CAまたはコール情報CBを受信すると、以下のような着信処理を実行する(ステップB12)。
【0041】
すなわち、回線制御部43は、コール情報CAまたはコール情報CBに基づいて既に同じエレベータ11の他のかご内の乗客が監視センタ15内のオペレータと通話中であるか否かを判断する。
【0042】
具体的に説明すると、いま、エレベータ11の上かご21a内の非常呼びボタン22aが押下され、遠隔監視装置13の通話制御部33からコール情報CAが監視センタ15に送られてきたとする。
【0043】
監視センタ15の回線制御部43は、まず、コール情報CA「1000A」に含まれる号機番号「1000」とかご識別番号「A」に基づいて、非常呼びの発信元がエレベータ11の上かご21aであることを認識する。そこで、回線制御部43は、同じエレベータ11の下かご21b内の乗客がオペレータと通話中であるか否かを判断する(ステップB13)。
【0044】
なお、エレベータ11がダブルデッキエレベータであり、上下に連結された上かご21a,下かご21bを有することは、監視センタ15内に設けられた図示せぬ物件データベース(各物件のエレベータ構成に関するデータを記憶したデータベース)を参照することで把握できる。
【0045】
下かご21b内の乗客がオペレータと通話中でなかった場合には(ステップB13のNo)、回線制御部43は、上かご21aの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…の中の空いている端末に繋げて通話可能な状態にする(ステップB14)。
【0046】
ここで、上かご21a内の乗客がオペレータと通話中に、他方の下かご21b内の非常呼びボタン22bの押下により非常呼びが発信され、遠隔監視装置13の通話制御部33からコール情報CBが監視センタ15に送られてきたとする。
【0047】
上かご21aの場合と同様に、監視センタ15の回線制御部43は、まず、コール情報CB「1000B」に含まれる号機番号「1000」とかご識別番号「B」に基づいて、非常呼びの発信元がエレベータ11の下かご21bであることを認識し、同じエレベータ11の上かご21a内の乗客がオペレータと通話中であるか否かを判断する(ステップB13)。
【0048】
上かご21aの乗客がオペレータと通話中であった場合(ステップB13のYes)、回線制御部43は、下かご21bの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…に繋げずに通話保留状態にする(ステップB15)。その際、回線制御部43は、通知制御部44を通じて下かご21bに対して保留通知用のメッセージを送信する(ステップB16)。
【0049】
エレベータ11の遠隔監視装置13は、この保留通知用のメッセージを受信すると、アナウンス・表示制御部34を通じて当該メッセージを下かご21bのアナウンス部24bと表示部25bに出力する(ステップA17)。
【0050】
図5に保留通知用のメッセージの一例を示す。
上かご21a内の乗客がオペレータと通話中のときに、他方の下かご21b内の非常呼びボタン22bが押下された場合に、例えば「本エレベータの上かごと通話中です。このまま、しばらくお待ち下さい。」といったメッセージが下かご21bの表示部25bに表示される。また、下かご21bのアナウンス部24bから同様のメッセージが音声にてアナウンスされる。なお、ここでは表示と音声で通知する構成としたが、どちらか一方であっても良い。
【0051】
上かご21a内の乗客の通話が終了し、オペレータが所定の操作により上かご21aの電話回線を遮断すると(ステップB17のYes)、回線制御部43は、通話保留状態にある下かご21bの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…の中で直前まで上かご21aと繋がっていたオペレータ端末に繋ぐ(ステップB18)。
【0052】
例えば、直前まで上かご21aの電話回線がオペレータ端末45aに繋がっていたのであれば、下かご21bの電話回線も同じオペレータ端末45aに繋ぐものとする。これは、異常発生時には同じ理由で上かご21aと下かご21bの乗客が監視センタ15に連絡する可能性が高いため、同じオペレータが対応した方が効率的だからである。
【0053】
下かご21b内の乗客が先にオペレータと通話している場合も同様である。
すなわち、下かご21b内の乗客の通話中に上かご21a内の非常呼びボタン22aの押下により非常呼びが発信された場合、下かご21b内の乗客の通話が終了するまでの間、上かご21a内の乗客の通話が保留される。この場合、例えば「本エレベータの下かごと通話中です。このまま、しばらくお待ち下さい。」といったメッセージが上かご21aの表示部25aに表示される。また、上かご21aのアナウンス部24aから同様のメッセージが音声にてアナウンスされる。
【0054】
このように第1の実施形態によれば、エレベータ11の上かご21aと下かご21bから個別に非常呼びが発信された場合に、監視センタ15側では、上かご21aおよび下かご21bのうちの一方のかご内の乗客の通話が終了するまでの間、他方のかごを通話保留状態とする。これにより、同じエレベータ11から発信された2つの非常呼びに対して1人のオペレータで対応することができ、例えば夜間などでオペレータ人数が少ない場合や地震等の広域災害の発生により各物件からの非常呼びが集中する場合でも効率的に応答してオペレータの負担を軽減することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0056】
上記第1の実施形態では、エレベータ11の上かご21aと下かご21bの非常呼びが時間的に少しずれて発信された場合を想定して説明した。第2の実施形態では、エレベータ11の上かご21aと下かご21bからほぼ同時に非常呼びが発信された場合を想定して説明する。
【0057】
「上かご21aと下かご21bからほぼ同時に非常呼びが発信された場合」とは、上かご21a内の非常呼びボタン22aと下かご21b内の非常呼びボタン22bがほぼ同時に押下された場合のことである。地震等の災害発生時には上かご21aと下かご21bで同じタイミングで非常呼びが発信される可能性が高い。
【0058】
エレベータ11および監視センタ15の基本的な構成は上記第1の実施形態と同様であるため、ここでは図6を参照して監視センタ15側の処理について説明する。
【0059】
図6は第2の実施形態におけるエレベータの遠隔監視システムの動作を説明するためのフローチャートであり、監視センタ15側の処理を示している。
【0060】
上述したように、エレベータ11に何らかの異常が発生すると、その異常に関する情報を含んだ動作状態情報が監視センタ15に発報される。監視センタ15に設けられた異常検出部42は、この動作状態情報に基づいてエレベータ11の異常の有無を検出し、その異常内容に応じた所定の処理を行う(ステップC11)。
【0061】
ここで、エレベータ11の上かご21a内の非常呼びボタン22aと下かご21b内の非常呼びボタン22bがほぼ同時に押下され、両方の非常呼びの信号と共にコール情報CAとコール情報CBが監視センタ15に送られてきたとする。監視センタ15に設けられた回線制御部43は、コール情報CA,CBの両方を受信すると、以下のような着信処理を実行する(ステップC12)。
【0062】
すなわち、回線制御部43は、まず、コール情報CAに含まれる号機番号とコール情報CBに含まれる号機番号とを比較して同じエレベータ11から発信された非常呼びであるか否かを判断する(ステップC13)。同じエレベータ11から発信され非常呼びであった場合(ステップC13のYes)、回線制御部43は、上記ステップC11で受信された異常信号に基づいてかご別に異常の重要度を判定する(ステップC14)。
【0063】
詳しくは、回線制御部43は、図7に示すような異常重要度テーブル43aを参照してかご別に異常の重要度を判定する。この異常重要度テーブル43aには、予め異常信号の種類毎に重要度が設定されている。異常信号の種類としては、例えば「かご内閉じ込め」,「位置ずれ」,「照明機器の故障」,「操作ボタンの故障」などがある。「かご内閉じ込め」は、ドアが開かずにかご内に乗客が閉じ込められていることを示す。「位置ずれ」は、かごの着床位置がずれていることを示す。これは、例えばダブルデッキエレベータの階間調整機構(上かごと下かごの間隔を各階の階間長に合わせる機構)の異常やロープスリップ等によって生じる。「照明機器の故障」は、かご内に設置された照明機器に何らかの故障が生じていることを示す。「操作ボタンの故障」は、かご内に設置された操作盤の各ボタンに何らかの故障が生じていることを示す。
【0064】
これらの異常信号はエレベータ制御装置12からかご別に発報され、それぞれに重要度が設定されている。図7の例では、重要度がL1〜L5の5段階で設定されており、L5が最も重要度が高く、最優先で対処すべき異常種類として設定されている(L5>L4>L3>L2>L1)。
【0065】
ここで、例えば上かご21aで「かご内閉じ込め」が発生し、下かご21bで「位置ずれ」が発生していたとする。上かご21aの「かご内閉じ込め」の方が下かご21bの「位置ずれ」よりも異常の重要度が高い。この場合、回線制御部43は、上かご21aの電話回線を優先してオペレータ端末45a,45b,45c…のいずれかに繋ぎ、下かご21b内の電話回線を通話保留状態とする(ステップC15)。
【0066】
なお、上かご21aと下かご21bで同じ重要度であれば、予め設定された順で電話回線を繋ぐものとする。また、一方のかごだけに異常が発生していれば、当該かごの電話回線を優先的に繋ぐものとする。
【0067】
以後の処理は上記第1の実施形態と同様であり、通話保留状態にあるかごに対して通知制御部44から保留通知用のメッセージが送信される(ステップC16)。例えば下かご21bが通話保留状態にあるとすると、通知制御部44から下かご21bに対して保留通知用のメッセージが送信される。エレベータ11の遠隔監視装置13は、この保留通知用のメッセージを受信すると、アナウンス・表示制御部34を通じて当該メッセージを下かご21bのアナウンス部24bと表示部25bに出力する。これにより、アナウンス部24bから保留通知用のメッセージが音声でアナウンスされると共に、表示部25bには保留通知用のメッセージが表示される。
【0068】
上かご21a内の乗客の通話が終了し、オペレータが所定の操作により上かご21aの電話回線を遮断すると(ステップC17のYes)、回線制御部43は、通話保留状態にある下かご21bの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…の中で直前まで上かご21aと繋がっていたオペレータ端末に繋ぐ(ステップC18)。
【0069】
このように第2の実施形態によれば、エレベータ11の上かご21aと下かご21bからほぼ同時に非常呼びが発信された場合に、監視センタ15側では、異常の優先度の高いかごを選択して、そのかごの電話回線をオペレータ端末に繋げ、当該かご内の乗客の通話が終了するまでの間、他方のかごを通話保留状態とする。これにより、緊急性を有するかご内の乗客の話を先に聞いて迅速に対応することができる。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
【0071】
上記第1の実施形態では、エレベータ11の上かご21aと下かご21bの一方のかご内の乗客の通話が終了するまでの間、他方のかごを通話保留状態とした。しかし、一方のかご内の乗客の通話が終了しないと、他方のかご内の乗客が通話できない不都合があり、乗客に不安を与えてしまう。そこで、第3の実施形態では、通話制限時間(例えば5分)を設け、その通話制限時間が経過したときに通話状態にあるかご内の乗客の通話を遮断して、通話保留状態にあるかごとの通話に切り替える構成としている。
【0072】
図8は第3の実施形態におけるエレベータ11の機能構成を示すブロック図である。なお、上記第1の実施形態における図2の構成と同じ部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略するものとする。
【0073】
第3の実施形態において、遠隔監視装置13の通話制御部33に通話タイマ33aが設けられている。通話タイマ33aは、監視センタ15からの指示によって起動され、監視センタ15のオペレータ端末と繋がっている上かご21aまたは下かご21b内の乗客の通話時間を計時する。
【0074】
次に、第3の実施形態の動作について説明する。
【0075】
図9はエレベータの遠隔監視システムの動作を説明するためのフローチャートであり、監視センタ15側の処理を示している。
【0076】
上述したように、エレベータ11に何らかの異常が発生すると、その異常に関する情報を含んだ動作状態情報が監視センタ15に発報される。監視センタ15に設けられた異常検出部42は、この動作状態情報に基づいてエレベータ11の異常の有無を検出し、その異常内容に応じた所定の処理を行う(ステップD11)。
【0077】
ここで、エレベータ11の上かご21a内の非常呼びボタン22aまたは下かご21b内の非常呼びボタン22bが押下されると、非常呼びの信号と共にコール情報CAまたはコール情報CBが監視センタ15に送信される。回線制御部43は、コール情報CAまたはコール情報CBを受信すると、以下のような着信処理を実行する(ステップD12)。
【0078】
すなわち、回線制御部43は、コール情報CAまたはコール情報CBに基づいて既に同じエレベータ11の他のかご内の乗客が監視センタ15内のオペレータと通話中であるか否かを判断する。
【0079】
具体的に説明すると、いま、エレベータ11の上かご21a内の非常呼びボタン22aが押下され、遠隔監視装置13の通話制御部33からコール情報CAが監視センタ15に送られてきたとする。
【0080】
監視センタ15の回線制御部43は、まず、コール情報CA「1000A」に含まれる号機番号「1000」とかご識別番号「A」に基づいて、非常呼びの発信元がエレベータ11の上かご21aであることを認識する。そこで、回線制御部43は、同じエレベータ11の下かご21b内の乗客がオペレータと通話中であるか否かを判断する(ステップD13)。下かご21b内の乗客がオペレータと通話中でなかった場合(ステップD13のNo)、回線制御部43は、上かご21aの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…の中の空いている端末に繋げて通話可能な状態にする(ステップD14)。
【0081】
ここで、第3の実施形態では、上かご21aが通話可能な状態になったときに、監視センタ15の回線制御部43からエレベータ11の遠隔監視装置13に対してタイマ起動命令がされる(ステップD15)。遠隔監視装置13では、このタイマ起動命令を受信することにより、通話制御部33に設けられた通話タイマ33aを起動し、上かご21a内の乗客の通話時間を計時する。監視センタ15の回線制御部43は、この通話タイマ33aによって計時されている通話時間を通信ネットワーク14を介して監視している。
【0082】
後述するように、上かご21aが通話状態にあるときに同じエレベータ11の下かご21bから非常呼びが発信された場合には、回線制御部43は、予め設定された通話制限時間内で下かご21bに通話を切り替える。
【0083】
なお、下かご21bから非常呼びがなければ、通話制限時間経過後も上かご21a内の乗客はオペレータと通話可能である。また、通話制限時間経過後に下かご21bから非常呼びがあった場合には、上かご21a内の乗客に通話切り替えを通知してから直ちに下かご21bに通話を切り替えるものとする。
【0084】
ここで、上かご21a内の乗客がオペレータと通話中に、他方の下かご21b内の非常呼びボタン22bの押下により非常呼びが発信され、遠隔監視装置13の通話制御部33からコール情報CBが監視センタ15に送られてきたとする。
【0085】
上かご21aの場合と同様に、監視センタ15の回線制御部43は、まず、コール情報CB「1000B」に含まれる号機番号「1000」とかご識別番号「B」に基づいて、非常呼びの発信元がエレベータ11の下かご21bであることを認識し、同じエレベータ11の上かご21a内の乗客がオペレータと通話中であるか否かを判断する(ステップD13)。
【0086】
上かご21aの乗客がオペレータと通話中であった場合(ステップD13のYes)、回線制御部43は、下かご21bの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…に繋げずに通話保留状態にする(ステップD16)。その際、回線制御部43は、現在通話状態にある上かご21aの通話時間(通話タイマ33aの計時時間)を確認し、予め設定された通話制限時間(例えば5分)が経過したか否かを判断する(ステップD17)。
【0087】
通話制限時間が経過していなければ(ステップD17のYes)、回線制御部43は、通知制御部44を通じて下かご21bに対して保留通知用のメッセージをエレベータ11に送信する(ステップD18)。また、回線制御部43は、上かご21aの通話時間と通話制限時間に基づいて、現在から通話制限時間までの残りの時間を算出する。通知制御部44は、この残り時間を通話保留状態にある下かご21bの最大待ち時間としてエレベータ11に送信する(ステップD19)。
【0088】
エレベータ11の遠隔監視装置13は、この保留通知用のメッセージと最大待ち時間を受信すると、アナウンス・表示制御部34を通じて下かご21bのアナウンス部24bと表示部25bに出力する。
【0089】
図10に保留通知用のメッセージの一例を示す。
上かご21a内の乗客がオペレータと通話中のときに、他方の下かご21b内の非常呼びボタン22bが押下された場合に、例えば「本エレベータの上かごと通話中です。最大でタイマ表示されている時間、お待ち下さい。」といったメッセージが下かご21bの表示部25bに表示される。また、下かご21bのアナウンス部24bから同様のメッセージが音声にてアナウンスされる。なお、ここでは表示と音声で通知する構成としたが、どちらか一方であっても良い。
【0090】
図11に最大待ち時間の表示例を示す。
上記保留通知用のメッセージに加え、現在から通話制限時間までの残りの時間が最大待ち時間として下かご21bの表示部25bに表示される。この最大待ち時間は、時間経過と共に定期的(例えば10秒間隔)あるいは連続的に更新表示されるものとする。
【0091】
ここで、上かご21aの通話制限時間が経過すると(ステップD20のYes)、回線制御部43は、通知制御部44を通じて上かご21a内の乗客に対して通話遮断メッセージを送信すると共に現在通話中のオペレータに対しても送信する(ステップD21)。
【0092】
エレベータ11の遠隔監視装置13は、この通話遮断メッセージを受信すると、アナウンス・表示制御部34を通じて当該メッセージを上かご21aの表示部25aに出力する。
【0093】
図12に通話遮断メッセージの一例を示す。
下かご21b内の乗客の通話が保留されている状態で、上かご21aの通話制限時間が経過すると、例えば「通話制限時間になりました。本エレベータの下かごとの通話に切り替えます。」といったメッセージが上かご21aの表示部25aに表示される。なお、音声にてアナウンスすることでも良いが、乗客はオペレータと通話中であるため、表示のみで通話遮断を通知することが好ましい。
【0094】
現在通話中のオペレータに対しても同様の通知がなれる。例えば、上かご21aの電話回線がオペレータ端末45aに繋がっていたのであれば、オペレータ端末45aの表示画面に図11のようなメッセージが表示される。なお、音声にてアナウンスすることでも良いが、オペレータも通話中であるため、表示のみで通話遮断を通知することが好ましい。
【0095】
なお、通話制限時間があることを事前に乗客に知らせておく必要があり、例えば非常呼びボタン22a,22bの近くに、その旨の注意書きをしておくことが好ましい。
【0096】
また、上記ステップD14において、オペレータが乗客と通話を開始する際に、例えば「本エレベータの他のかごから非常呼びがあった場合には最大5分で通話が切り替えられますのでご注意下さい。」といったことを告げても良い。
【0097】
通話遮断メッセージの送信後、回線制御部43は、現在通話状態にある上かご21a内の乗客の通話を遮断して(ステップD22)、通話保留状態にある下かご21bとの通話に切り替える(ステップD23)。詳しくは、回線制御部43は、通話保留状態の下かご21bの電話回線をオペレータ端末45a,45b,45c…の中で直前まで上かご21aと繋がっていたオペレータ端末に繋ぐ。
【0098】
以後、下かご21b内の乗客とオペレータが通話することになるが、このときも上記同様に通話タイマ33aが起動され、通話制限時間内での通話となる。この間に、例えば上かご21a内の乗客が再度非常呼びボタン22aを押下した場合には、図10のような保留通知用のメッセージと待ち時間が通知され、通話制限時間経過後に通話が切り替えられることになる。
【0099】
また、通話制限時間前に上かご21a内の乗客の通話が終了した場合には、上記ステップD21,D22の処理はなく、上記ステップD23にて下かご21bに通話が切り替えられる。
【0100】
下かご21b内の乗客が先にオペレータと通話している場合も同様である。
すなわち、下かご21b内の乗客の通話中に上かご21a内の非常呼びボタン22aが押下された場合、上かご21a内の乗客の通話が保留される。その際、例えば「本エレベータの下かごと通話中です。最大でタイマ表示されている時間、お持ち下さい。」といったメッセージと最大待ち時間が通話保留状態にある上かご21a内の乗客に通知され、予め設定された通話制限時間が経過したときに上かご21aに通話が切り替えられる。
【0101】
このように第3の実施形態によれば、通話制限時間を設けておき、その通話制限時間が経過したときに現在通話中の一方のかご内の乗客の通話を遮断して、通話保留状態にあった他方のかごに通話を切り替える。これにより、同じエレベータ11からの2つの非常呼びに対して1人のオペレータで対応する場合に、他方のかご内の乗客が通話できない不都合を解消できる。
【0102】
なお、図8の例では、遠隔監視装置13の通話制御部33に通話タイマ33aを設けたが、例えば監視センタ15の回線制御部43に同様の通話タイマを設けておき、回線制御部43が一方のかごの電話回線をオペレータ端末に繋げたときに上記通話タイマを起動して通話時間を監視する構成としても良い。
【0103】
また、上記第2の実施形態において、異常の重要度に応じて上かご21a内の乗客の通話または下かご21b内の乗客の通話を優先する場合でも、予め設定された通話制限時間内で通話を切り替えることで、他方のかご内の乗客が通話できない不都合を解消できる。
【0104】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
【0105】
第4の実施形態では、上記第3の実施形態の構成に加えて、監視センタ15のオペレータに通話中の乗りかごに設定された通話制限時間を把握させるようにしたものである。
【0106】
図13は第4の実施形態における監視センタ15の機能構成を示すブロック図である。なお、上記第1の実施形態における図3の構成と同じ部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略するものとする。
【0107】
エレベータ11の構成は、上記第3の実施形態における図8と同じである。すなわち、遠隔監視装置13の通話制御部33に通話タイマ33aが設けられている。通話タイマ33aは、監視センタ15からの指示によって起動され、監視センタ15のオペレータ端末と繋がっている上かご21aまたは下かご21b内の乗客の通話時間を計時する。
【0108】
ここで、第4の実施形態において、監視センタ15には、表示制御部46が設けられている。この表示制御部46は、異常検出部42、回線制御部43、通知制御部44と共に監視センタ15に設けられたコンピュータ(制御装置)によって実現される。表示制御部46は、監視センタ15内のオペレータ端末に対し、通話状態にあるかごの通話制限時間までの残り時間を表示する。
【0109】
このような構成において、基本的な処理の流れは上記第3の実施形態と同様である。すなわち、例えば上かご21a内の乗客が先にオペレータと通話中に下かご21b内の非常呼びボタン22bが押下された場合に下かご21b内の乗客の通話が保留される。その際、例えば「本エレベータの上かごと通話中です。最大でタイマ表示されている時間下さい。」といったメッセージと最大待ち時間が通話保留状態にある下かご21b内の乗客に通知される。
【0110】
ここで、第4の実施形態では、通話保留状態の下かご21bに対する通知に加えて、上かご21a内の乗客と通話中のオペレータに対して残り時間の通知がなされる。具体的には、図9のステップD18−D19の前または後に以下のような残り時間の表示処理が実行される。
【0111】
すなわち、回線制御部43は、現在通話中にある上かご21aの通話時間と通話制限時間に基づいて、現在から通話制限時間までの残りの時間を算出する。表示制御部46は、この残り時間を上かご21a内の乗客と通話中のオペレータの端末に表示する。
【0112】
図14に残り時間の表示例を示す。
例えば、上かご21aの電話回線がオペレータ端末45aに繋がっていたのであれば、オペレータ端末45aの表示画面に図14のように通話の残り時間が表示される。この残り時間は、通話保留状態にある下かご21b内の乗客に通知した最大待ち時間と同じであり、時間経過と共に定期的(例えば10秒間隔)あるいは連続的に更新表示されるものとする。
【0113】
なお、音声にてアナウンスすることでも良いが、オペレータも通話中であるため、表示のみで残り時間を通知することが好ましい。
【0114】
下かご21b内の乗客が先にオペレータと通話している場合も同様であり、通話保留状態の上かご21a内の乗客に対する通知に加えて、下かご21b内の乗客と通話中のオペレータに対して残り時間の通知がなされる。
【0115】
このように第4の実施形態によれば、通話制限時間が経過したときに現在通話中の一方のかご内の乗客の通話を遮断する場合において、オペレータに通話の残り時間を通知することにより、オペレータに通話制限時間を意識させて通話させることができる。つまり、限られた時間内で一方の乗客と要領良く通話して他方の乗客との通話にスムーズに切り替えることができるようになる。
【0116】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、複数のかごを有するエレベータからかご別に発信される非常呼びを監視センタ側で効率良く応答してオペレータの負担を軽減するエレベータの遠隔監視システムを提供することができる。
【0117】
なお、上記各実施形態では、2つの乗りかごを有するエレベータ(ダブルデッキエレベータ)を例にして説明したが、例えば3つの乗りかごを有するエレベータであっても同様に適用可能である。この場合、1つの乗りかごaが通話中に他の2つの乗りかごb,cの通話を保留とし、乗りかごaの通話終了後に2つの乗りかごb,cの中で上記同様の手法にて通話を切り替えていけば良い。
【0118】
要するに、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0119】
11…エレベータ、12…エレベータ制御装置、13…遠隔監視装置、14…通信ネットワーク、15…監視センタ、20…かご枠、21a…上かご、21b…下かご、22a,22b…非常呼びボタン、23a,23b…通話部、24a,24b…アナウンス部、25a,25b…表示部、31…通信部、32…情報取得部、33…通話制御部、33a…通話タイマ、34…アナウンス・表示制御部、41…通信部、42…異常検出部、43…回線制御部、43a…異常重要度テーブル、44…通知制御部、45a,45b,45c…オペレータ端末、46…表示制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14