(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、溶液をミスト化する霧化装置に関するものである。
【0017】
本発明では、溶液が収容される容器と、当該溶液をミスト化するミスト化器とを備えている。さらに、本発明に係る霧化装置は、容器内に挿通されるように当該容器内に配設されており、内部が空洞である内部空洞構造体を備える。当該内部空洞構造体が容器内に配設されることにより、当該容器内は、二つの空間が形成される。
【0018】
つまり、当該内部空洞構造体の空洞(ミスト化空間)と、容器の内面と内部空洞構造体の外面とにより囲まれた空間(ガス供給空間)とによって、容器内は区分される。ここで、当該二つの空間(ミスト化空間およびガス供給空間)は、狭い通路である接続部を介して接続されている。
【0019】
また、本発明に係る霧化装置は、容器に配設されるガス供給部を備えている。当該ガス供給部は、上記ガス供給空間にガスを供給する。
【0020】
なお、当該霧化装置により霧化されたミストは、霧化装置外へと出力され、他の装置内において、電子デバイス(FPD、太陽電池、LED、タッチパネル等)の成膜処理における原料等に利用される。
【0021】
以下、本発明に係る霧化装置を、具体例である実施の形態を示す図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る霧化装置100の断面構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、霧化装置100は、容器1、ミスト化器2、内部空洞構造体3およびガス供給部4を備えている。さらに、
図1に例示する霧化装置100は、セパレータ8、液面位置検知センサー10および溶液供給部11を備えている。
【0024】
容器1は、内部に空間が形成される容器であれば、どのような形状であっても良い。
図1に例示する霧化装置100では、容器1は略円筒形状であり、容器1内には、内円周側面に囲まれた空間が形成されている。なお、後述するように、当該容器1内には、溶液が収容される。
【0025】
また、本実施の形態では、ミスト化器2は、容器1内の溶液に対して超音波を印加することにより、当該溶液をミスト化(霧化)する超音波振動子2である。当該超音波振動子2は、容器1の底面に配設されている。また、超音波振動子2は、一つでも二つ以上であってもよいが、
図1の構成例では、容器1の底面に複数の超音波振動子2が配設されている。
【0026】
内部空洞構造体3は、内部に空洞を有する構造体である。容器1の上面部には、開口部が形成されており、
図1に示すように、当該開口部を介して、内部空洞構造体3が容器1内に挿通されるように配設されている。ここで、開口部に内部空洞構造体3が挿通されている状態において、内部空洞構造体3と容器1との間は密閉されている。つまり、内部空洞構造体3と容器1の上記開口部との間は、シールされている。
【0027】
内部空洞構造体3の形状は、内部に空洞が形成される形状のものであれば、どのような形状を採用しても良い。
図1の構成例では、内部空洞構造体3は、底面を有さない、フラスコ形状を有している。より具体的に、
図1に示す内部空洞構造体3では、管部3Aと、円錐台部3Bと、円筒部3Cとから構成されている。
【0028】
管部3Aは、円筒形状の管路部であり、当該管部3Aは、容器1の上面から挿通されるように、当該容器1外から当該容器1内へと至っている。より具体的には、管部3Aは、容器1の外側に配設される上管部と、容器1に内に配設される下管部とに区分される。そして、上管部は、容器1の上面外側から取り付けられ、下管部は、容器1の上面内側から取り付られており、これらが取り付けられている状態において、上管部と下管部とは、容器1の上面に配設された開口部を通じて、連通している。管部3Aの一方端は、容器1の外に存する、たとえば薄膜成膜装置内へと接続される。他方、管部3Aの他方端は、容器1内において、上記円錐台部3Bの上端側に接続される。
【0029】
当該円錐台部3Bは、外観(側壁面)が円錐台形状であり、内部には空洞が形成されている。上記円錐台部3Bは、上面および底面が開放されている(つまり、内部に形成されている空洞を閉じる、上面および底面を有さない)。円錐台部3Bは、容器1内に存しており、当該円錐台部3Bの上端側は、上記の通り、管部3Aの他方端と接続(連通)されており、当該円錐台部3Bの下端部側は、円筒部3Cの上端側と接続されている。
【0030】
ここで、円錐台部3Bは、上端側から下端側に向けて、末広がりの断面形状を有する。つまり、円錐台部3Bの上端側の側壁の径が最も小さく(管部3Aの径と同じ)、円錐台部3Bの下端側の側壁の径が最も大きく(円筒部3Cの径と同じ)、円錐台部3Bの側壁の径は、上端側から下端側に向けて、滑らかに大きくなる。
【0031】
円筒部3Cは、円筒形状を有する部分であり、当該円筒部3Cの高さは、円錐台部3Bの高さと比較して小さい。当該円筒部3Cの上端側は、上記の通り、円錐台部3Bの下端側と接続(連通)されており、円筒部3Cの下端側は、容器1の底面に面している。ここで、
図1の構成例では、円筒部3Cの下端側は、解放されている(つまり、底面を有さない)。
【0032】
ここで、
図1の構成例では、内部空洞構造体3における、管部3Aから円錐台部3Bを経て円筒部3Cへと延びる方向の中心軸は、容器1の円筒形状の中心軸と略一致している。なお、内部空洞構造体3は一体構造であっても、
図1に示すように、管部3Aの一部を構成する上管部、管部3Aの他部を構成する下管部、円錐台部3Bおよび円筒部3Cの各部材を組み合わせて構成されても良い。
図1の構成例では、容器1の外上面に上管部の下端部が接続され、容器1の内上面に下管部の上端部が接続され、当該下管部の下端部に、円錐台部3Bおよび円筒部3Cから成る部材が接続されることにより、複数の部材から成る内部空洞構造体3が構成されている。
【0033】
上記形状の内部空洞構造体3が容器1の内部に挿通されるように配設されることにより、容器1内は、二つの空間に区分される。つまり、内部空洞構造体3の内部に形成される空洞部(つまり、内部空洞構造体3の内側面により囲まれた空間であり、以下、ミスト化空間3Hと称する)と、容器1の内面と内部空洞構造体3の外側面とにより形成される空間(以下、ガス供給空間1Hと称する)とに、容器1内は区画される。
【0034】
また、ミスト化空間3Hとガス供給空間1Hとを接続する、隙間である接続部5が形成されている。
図1の構成例では、当該接続部5は、内部空洞構造体3の下端側に配設されている。つまり、
図1の構成例では、接続部5は、内部空洞構造体3の下端部と、後述するセパレータ8の上面の一部とにより、構成されている。ここで、当該接続部5の開口寸法は、0.1mm〜10mm程度である。
【0035】
ここで、ミスト化空間3Hとガス供給空間1Hとを接続する接続部5として、様々構成を採用することができる(側面図である
図2〜5参照)。たとえば、内部空洞構造体3の側面に、小さな(開口寸法が0.1mm〜10mm)孔3fを穿設することにより、上記接続部5を形成することもできる(
図2)。この場合、
図2の構成例とは異なるが、内部空洞構造体3の底面を形成し、当該底面を後述するセパレータ8として機能させても良い。また、当該孔3fを内部空洞構造体3の側面に設ける場合には、容器1の底面に近い側に設ける方が好ましい。また、当該孔3fは、点在して均等に、内部空洞構造体3の側面に穿設しても良く、内部空洞構造体3の側面に、環状のスリットを穿設させることにより、接続部5を形成しても良い。
【0036】
図1の構成例では、
図3の側面図に示すように、接続部5は、内部空洞構造体3の下端部とセパレータ8の上端部との間に形成されており、環状のスリットである。また、
図4,5に示すように、内部空洞構造体3の下端部側面に、小さな(開口寸法が0.1mm〜10mm)切り欠き3gを穿設することにより、上記接続部5を形成することもできる。ここで、
図4の構成では、内部空洞構造体3の下端部は、液面15Aよりも上側に存している。他方、
図5の構成では、内部空洞構造体3の下端部は、溶液15内に浸っており、切り欠き3gの一部は溶液15内に存しており、切り欠き3gの他部は液面15Aより上に存している(当該切り欠き部3gの他部が、接続部5として機能する)。また、
図4,5における切り欠き3gは、点在して均等に、内部空洞構造体3の下端部側面に形成されている。
【0037】
接続部5の形状、配設位置は任意に選択できるが、当該接続部5は、溶液15の液面15Aより上方に位置しており、当該液面15Aの近い位置に配設されていることが、好ましい。
【0038】
また、
図1の構成例では、上記内部空洞構造体3の形状と容器1の形状とから分かるように、ガス供給空間1Hは、容器1の上部側が最も広く、容器1の下側に進むに連れて、狭くなっている。つまり、管部3Aの外側面と容器1の内側面とにより囲まれる部分のガス供給空間1Hが最も広く、円筒部3Cの外側面と容器1の内側面とに囲まれる部分のガス供給空間1Hが最も狭くなっている。
【0039】
ガス供給部4は、容器1の上面に配設されている。ガス供給部4からは、超音波振動子2によりミスト化された溶液を、内部空洞構造体3の管部3Aを介して外部へと搬送する搬送ガスが供給される。当該搬送ガスは、たとえば高濃度の不活性ガスを採用することができる。また、
図1に示すように、ガス供給部4には、供給口4aが設けられており、容器1内に存する供給口4aから、搬送ガスが容器1のガス供給空間1H内に供給される。
【0040】
ガス供給部4から供給された搬送ガスは、ガス供給空間1H内に供給され、当該ガス供給空間1H内に充満した後、上記接続部5を介して、ミスト化空間3Hへと導入される。ここで、搬送ガスは、ガス供給空間1H内で充満した後、狭い接続部5を介して、ミスト化空間3Hへと供給されるので、供給口4aから出力される搬送ガスのガス速度よりも、接続部5から出力される搬送ガスのガス速度の方が高くなる。換言すれば、供給口4aから搬送ガスを緩やかに出力したとしても、接続部5からミスト化空間3Hへと勢いよく搬送ガスが供給される。当該搬送ガスの流れをより際立たせるためには、以下の構成を採用することが望ましい。
【0041】
たとえば、接続部5の開口部の開口面積は、ガス供給部4の供給口4aの開口面積よりも小さいことが望ましい。または、接続部5近傍のガス供給空間1Hにおける、容器1の内壁面と内部空洞構造体3の外壁面との間の寸法が、ガス供給部4(供給口4a)近傍のガス供給空間1Hにおける、容器1の内壁面と内部空洞構造体3の外壁面との間の寸法よりも小さいことが望ましい。または、ガス供給部4の供給口4aが、接続部5に面しているガス供給空間1H側に、直接的に面していないことが望ましい。たとえば、
図1の構成例では、ガス供給部4の供給口4aは、
図1の紙面表裏方向に向いており、接続部5に面しているガス供給空間1H側(つまり、容器1の内壁と内部空洞構造体3の円筒部3Cの外壁とに囲まれた領域の、ガス供給空間1H側)には、向いていない。
【0042】
また、本実施の形態に係る霧化装置100では、容器1の底面と内部空洞構造体3の下端部側との間に、セパレータ8が配設されている。
図1に示すように、当該セパレータ8は、カップ状である。つまり、セパレータ8は、凹部8Aと、当該凹部8Aの上端部に接続される平縁部8Bとを有する。
【0043】
図1に示すように、セパレータ8の平縁部8Bは、上記凹部8Aの上端部から容器1の内壁側に向かって延びる、環状の縁部であり、当該平縁部8Bの下面は、容器1内に配設される容器1の突起部1Dに固定されている。
図1に示す構成例では、当該平縁部8Bと内部空洞構造体3の下端部との間において、接続部5が構成されている。
【0044】
また、
図1に示すように、セパレータ8の凹部8Aの底面は、凹部8Aの側面部から中央に向かって、緩やかに傾斜している。より具体的には、凹部8Aの底面と容器1の底面との間の寸法は、凹部8Aの側面から凹部8Aの中央部に進むに連れて、徐々に小さくなる。
【0045】
また、容器1の底面とセパレータ8の底面との間に形成される空間には、超音波伝達媒体9が充填されている。超音波伝達媒体9は、容器1の底面に配設された超音波振動子2から発生した超音波振動を、セパレータ8へと伝達する機能を有する。つまり、超音波伝達媒体9は、セパレータ8へと振動エネルギーを伝達できるように、容器1の底面とセパレータ8の底面との間に形成される空間内に、収容されている。セパレータ8へと効率的に超音波振動を伝達するために、超音波伝達媒体9として液体を採用することが好ましく、たとえば水を採用することができる。
【0046】
また、セパレータ8の凹部8Aの底面上には、ミスト化される溶液15が収容されている。ここで、当該溶液15の液面15Aは、接続部5の配設位置よりも下側に位置している(
図1参照)。
【0047】
ここで、
図1に示す構成例において、セパレータ8および超音波伝達媒体9を省略した構成を採用することができる。この場合には、溶液15は直接、容器1の底面上に収容される。なお、当該場合においても、当該溶液15の液面15Aは、接続部5の配設位置よりも下側に位置している。
【0048】
一方で、ミスト化される溶液15が、例えばアルカリ性・酸性の強い液体であり、容器1の底面に配設される超音波振動子2に対する影響が懸念される場合には、
図1に示すように、セパレータ8および超音波伝達媒体9を含む構成を採用することが望ましい。当該場合には、セパレータ8として、アルカリ性・酸性の強い溶液15の影響を受けない(受けにくい)素材を採用する。
【0049】
また、本実施の形態に係る霧化装置100では、液面位置検知センサー10および溶液供給部11を備えている。
【0050】
溶液供給部11は、容器1および内部空洞構造体3を貫通して、溶液供給口は、容器1の底面側に配設されている。霧化装置100の外側には、溶液15が充填されているタンクが用意されており、溶液供給部11は、溶液15を、当該タンクから、セパレータ8へと(セパレータ8が無い構成では、容器1の底面へと)供給する。
【0051】
ところで、超音波振動子2による溶液15のミスト化を行う場合、ミスト化の効率が最も良い、液面15Aの位置(溶液15の深さ)が存在する。そこで、当該液面15Aの位置が、ミスト化効率が最も良い位置で保持されるように、
図1の構成例では、溶液供給部11に加えて、液面位置検知センサー10が配設されている。
【0052】
当該液面位置検知センサー10は、溶液15の液面高さ位置を検知することができるセンサーである。液面位置検知センサー10は、容器1および内部空洞構造体3を貫通しており、当該センサー10の一部は、溶液15に浸っている。液面位置検知センサー10は、溶液15の液面15Aの位置を検出している。溶液15がミスト化され、霧化装置100の外側へと搬送されると、溶液15の液面15Aは低下する。そこで、液面位置検知センサー10の検出結果が、溶液15の上記ミスト化効率が最も良い位置となるように、溶液供給部11は、容器1内に溶液15を補充(供給)する。
【0053】
つまり、液面位置検知センサー10および溶液供給部11の配設により、溶液15の液面15Aの位置が、ミスト化効率が最も良い高さ位置となるように保持される。ここで、ミスト化効率が最も良い液面15Aの位置は、実験等により予め既知であり、霧化装置100において、設定値として予めに設定されている。霧化装置100は、当該設定値と液面位置検知センサー10の検出結果とに基づいて、溶液供給部11による溶液15の供給を調整する。
【0054】
なお、溶液15を霧化する動作において、液面15から液柱6が立ち、液面15Aが揺れ、正確な液面位置検知が困難となる場合もある。そこで、液面位置検知センサー10の周囲にカバーを配設し、液面位置検知センサー10周囲における液面15Aの揺らぎを防止することが望ましい。
【0055】
容器1内の溶液15は、超音波振動子2により微細に霧化され、ミスト状の溶液7は、内部空洞構造体3の内のミスト化空間3Hに充満する。そして、ミスト状の溶液7は、接続部5から出力される搬送ガスに乗って、内部空洞構造体3の管部3Aを通って、霧化装置100の外部へと出力される。
【0056】
図1の構成例において、超音波伝達媒体9およびセパレータ8を介して、超音波振動子2が溶液15に対して超音波振動を印加する。すると、
図1に示すように、液面15Aから液柱6が立上り、溶液15は、液粒およびミストへと移行する。ここで、液柱6が液面に対して垂直に立ちあがり、立ち上がった液柱6が超音波振動子2上に落ちると、ミスト化効率が低下する。
【0057】
そこで、超音波振動子2の振動面(圧電素子)は、傾いて配設されている(
図6の断面図参照)。
図6は、超音波振動子2の概略構成を示しているが、当該
図6に示すように、振動面(振動板)2pは、傾いて配設されている。つまり、液面15Aと当該振動面(振動板)2pとは、平行でない。換言すると、超音波振動子2で発生した振動エネルギーの伝搬方向は、液面15に対して垂直とならないように、超音波振動子2を容器1に配設する。
【0058】
また、超音波振動子2の数を増やすと、ミスト化効率も向上する。ここで、複数の超音波振動子2を容器1の底面に配設する場合には、ミスト化効率の低下を抑制するため、次のように配置させることが望ましい。
【0059】
つまり、上記の通り、液柱6が液面15Aに対して垂直立ち上がらないように、各超音波振動子2の振動面は、溶液15の液面15Aに対して傾いている。さらに、各超音波振動子2を、他の超音波振動子2により形成された溶液15の液柱6からの液滴が、落下する下方位置には、配置させないようにする、ことが望ましい。これにより、各液柱6からの液滴等は、何れの超音波振動子2の上方に落下することがなく、ミスト化効率の低下を抑制できる。
【0060】
複数の超音波振動子2を配設する場合には、ミスト化効率低下抑制の観点から、たとえば、各超音波振動子2を次のように配置させれば良い。つまり、溶液15の下方において、各超音波振動子2を環状に、均等に、容器1の底面に配設する。ここで、当該環状の径は、極力大きい方が好ましい。たとえば、超音波振動子2の配設の様子を示す
図7の平面図に示すように、セパレータ8の凹部8Aの外周に沿って、各超音波振動子2を環状に点在して配設することが望ましい。さらに、各超音波振動子2の振動面2pは、当該環状の中心側(つまり、容器1の中心側)に向いて傾いている。ここで、
図7において、図示している矢印は、液柱6を示している。
【0061】
なお、容器1には、幾つかの部材が組み合わされることにより構成されており、当該容器1には、幾つかの部材が貫通・配設されている。当該構成の容器1は、容器1内の気密性が担保されるようにシール等がなされている。
【0062】
次に、本実施の形態に係る霧化装置100の動作について説明する。
【0063】
まず、液面位置検知センサー10による検出結果が、予め設定されている所定の液面位置となるように、溶液供給部11は、外部からセパレータ8内に、溶液15を供給する。そして、液面位置検知センサー10による検出結果が上記所定の液面位置となった後、霧化装置100は、超音波振動子2に対して高周波電源を供給する。これにより、超音波振動子2の振動面が振動する。
【0064】
当該振動面の振動により発生した振動エネルギーは、超音波伝達水9およびセパレータ8を介して、溶液15に伝播される。そして、当該振動エネルギーが溶液15の液面15Aに到達する。超音波は、気体中において伝播しにくい。したがって、液面15Aに到達した振動エネルギーは、溶液15の液面15Aを持ち上げて、液柱6が形成される。さらに、液柱6の先端部は、細かく引き千切られ、多数の微細なミストが生成される(
図1における、ミスト状の溶液7参照)。
【0065】
一方で、ミスト化空間3H内にミスト状の溶液7が充満している状態において、ガス供給部4は、外部からガス供給空間1H内に、搬送ガスを供給する。供給口4aから供給された搬送ガスは、当該ガス供給空間1H内に充満した後、狭い開口部の接続部5を介して、ミスト化空間3Hへと移動する。
【0066】
ここで、搬送ガスは、ガス供給空間1H内で充満した後、狭い接続部5を介して、ミスト化空間3Hへと出力される。したがって、供給口4aから比較的緩やかに搬送ガスが出力されたとしても、接続部5からは、勢いの強い搬送ガスが出力される。
【0067】
ミスト化空間3H内に充満しているミスト状の溶液7を、接続部5から出力された搬送ガスが、
図1の下から上方向に向かって持ち上げる。そして、ミスト状の溶液7は、搬送ガスに乗って、内部空洞構造体3の管部3Aを通って、霧化装置100外へと出力される。
【0068】
以上のように、本実施の形態に係る霧化装置100では、内部空洞構造体が容器1内に挿通されるように配設されている。そして、これにより、容器1内に、ガス供給空間1Hおよびミスト化空間3Hが形成され、ガス供給空間1Hとミスト化空間3Hとは、狭い接続部5を介して接続されている。
【0069】
したがって、ガス供給空間1H内に供給された搬送ガスは、当該ガス供給空間1H内に充満した後、狭い接続部5を介して、ミスト化空間3H内へと移動する。よって、供給口4aから比較的緩やかに搬送ガスが出力されたとしても、接続部5からは、勢いの強い搬送ガスが出力される。つまり、本実施の形態に係る霧化装置100では、より少ない搬送ガスの容器1内の供給により、大量のミスト状の溶液7(高濃度のミスト)を、霧化装置100外へと搬送することができる。
【0070】
このように、従来では、少ない搬送ガスで大量のミストを外部に出力できなかったが、本実施の形態に係る霧化装置100では、ミスト状の溶液7を効率的に、霧化装置100外部に出力することができる。
【0071】
なお、本実施の形態に係る霧化装置100の効果を確認する実験を行った。当該実験結果を、
図8に示す。
【0072】
図8は、搬送ガス流量とミスト状の溶液7(以下、ミストと称する)量との関係を示す、実験結果である。
図8の縦軸は、平均霧化量(g(グラム)/min(分))であり、
図8の横軸は、搬送ガス流量(L(リットル)/min(分))である。また、
図8において、「◆印」は、霧化装置100に対する結果であり、「■印」は、比較対象霧化装置200に対する結果である。
【0073】
図9は、比較対象霧化装置200の構成を示す断面図である。当該比較対象霧化装置200は、霧化装置100が備える内部空洞構造体3を、有さない。一方、比較対象霧化装置200は、ミスト状の溶液7を外部へと搬送するための管部30を有する。管部30は、比較対象霧化装置200の容器1の内部と接続されるように、容器1の上部に配設されている(
図9参照)。
【0074】
なお、上記構成の相違以外、霧化装置100および比較対象霧化装置200は、同じ構成であり、同様の動作を行う。
【0075】
図8に示す実験では、搬送ガスの流量を変化させて、搬送ガスの流量毎に、所定時間内における外部溶液タンクの重量の変化(減少量)を計測した。霧化装置100,200では、液面位置検知センサー10により、溶液15の液面位置が一定に保持されているので、当該外部溶液タンクの重量変化が、霧化量であると把握できる。なお、当該外部溶液タンクの重量変化を、上記所定の時間で割った値が、
図8の縦軸に示す平均霧化量(g/min)である。
【0076】
図8に示す実験結果から分かるように、比較対象霧化装置200と比較して、本実施の形態に係る霧化装置100は、2割以上、ミスト状の溶液7を効率的に外部に搬送することができる。
【0077】
また、本実施の形態に係る霧化装置100では、接続部5の一部は、内部空洞構造体3の端部により構成されても良い。当該構成の場合、
図1に示すように、接続部5は、内部空洞構造体3の下端部とセパレータ8の平縁部8Bとの間の隙間である。
【0078】
したがって、当該接続部5の構成を採用する場合には、接続部5を通った搬送ガスは、ミスト状の溶液7のより下方向位置から、ミスト化空間3H内へと出力される。よって、霧化装置100は、より効率良く、ミスト状の溶液7を外部へと搬送させることができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る霧化装置100では、接続部5の開口部の開口面積を、ガス供給部4の供給口4aの開口面積よりも小さくしても良い。または、霧化装置100は、接続部5近傍のガス供給空間1Hにおける、容器1の内壁面と内部空洞構造体3の外壁面との間の寸法を、ガス供給部4近傍のガス供給空間1Hにおける、容器1の内壁面と内部空洞構造体3の外壁面との間の寸法よりも小さいくしても良い。または、ガス供給部4の供給口4aは、接続部5に面しているガス供給空間1Hに、直接的に面していないようにしても良い。または、これらの各構成を任意に組み合わせても良い。
【0080】
上記構成を採用することにより、霧化装置100は、供給口4aから搬送ガスを緩やかに出力したとしても、接続部5からミスト化空間3Hへと、より勢いよく搬送ガスを供給することができる。つまり、より少ない搬送ガスの量で、より多くのミスト状の溶液7を、外部へと出力することができる。
【0081】
また、本実施の形態に係る霧化装置100では、超音波振動子2は、容器1の底面に配設されている。そして、容器1の底面と内部空洞構造体3の端部側との間に、セパレータ8を配設されても良い。そして、当該セパレータ8を有する構成の場合には、容器1とセパレータ8との間に超音波伝達媒体9を満たし、ミスト化の対象となる溶液15を、セパレータ8の上面に供給する。
【0082】
このように、セパレータ8および超音波伝達媒体9を設ける構成を採用することにより、たとえ溶液15が強酸性(または強アルカリ性)であったとしても、超音波振動子2に直接、当該溶液15が晒されることが防止でき、効率良く、セパレータ8内の溶液15へと振動エネルギーを伝搬することができる。
【0083】
また、本実施の形態に係る霧化装置100では、複数の超音波振動子2を配設させても良い。当該構成を採用した場合には、より効率良く、溶液15をミスト化させることができる。
【0084】
なお、複数の超音波振動子2を配設した場合の効果を確認する実験を行った。当該実験結果を、
図10に示す。
【0085】
図10は、超音波振動子2の数とミスト状の溶液7(以下、ミストと称する)量との関係を示す、実験結果である。
図10の縦軸は、平均霧化量(g(グラム)/min(分))であり、
図10の横軸は、配設される超音波振動子2の数(個)である。また、
図10において、「◆印」は、
図1に示した本発明に係る霧化装置100に対する結果であり、「■印」は、
図9に示した比較対象霧化装置200に対する結果である。なお、
図9を用いて説明した構成の相違はあるものの、
図10に示す実験データを実施するに際して、両装置100,200の動作条件等は同じである。
【0086】
図10に示す実験では、霧化装置100,200に配設する超音波振動子2の数を変化させて、
図8を用い説明したように、平均霧化量を測定した。
【0087】
図10に示す実験結果から分かるように、超音波振動子2の数を増加させるに連れて、本実施の形態に係る霧化装置100は、比較対象霧化装置200と比較して、ミスト状の溶液7をより効率的に生成することができる。したがって、霧化装置100において複数の超音波振動子2を配設させことにより、霧化装置100は、予期せぬ、顕著なミスト化効率の向上を奏することができる。
【0088】
また、複数の超音波振動子2を容器1の底面に配設する場合、超音波振動子2の振動面は、溶液15の液面に対して傾いており(
図6参照)、各超音波振動子2は、他の超音波振動子2により形成された溶液15の液柱6からの液滴が、落下する下方位置には、配設されていないことが望ましい。たとえば、複数の前記超音波振動子2を、容器1の底面において環状に配設し、各超音波振動子2の振動面を、当該環状の中心側に傾かせる(
図7参照)。
【0089】
上記構成を採用することにより、霧化装置100は、複数の超音波振動子2を配設させたとしても、より効率良く溶液15をミスト化させることができる。
【0090】
また、本実施の形態に係る霧化装置100は、液面位置検知センサー10および溶液供給部11を有し、液面位置検知センサー10により検出される液面15Aの高さが、予め定められた所定位置(ミスト化が最も効率的に行える液面15Aの高さ)となるように、溶液供給部11は、溶液15を容器1内に供給させても良い。
【0091】
当該構成を採用することにより、本実施の形態に係る霧化装置100は、容器1内に収容される溶液15の量(液面15Aの高さ)を、最もミスト化が効率良く行える位置に維持することができる。よって、霧化装置100は、長時間に渡り継続的に、ミスト化効率が良い状況で、ミスト化を実施することが可能となる。
【0092】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。