(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158342
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】基板の厚さ制御
(51)【国際特許分類】
C03B 17/06 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
C03B17/06
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-540781(P2015-540781)
(86)(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公表番号】特表2015-536895(P2015-536895A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】US2013067714
(87)【国際公開番号】WO2014074384
(87)【国際公開日】20140515
【審査請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】13/669,994
(32)【優先日】2012年11月6日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ルブラン,フィリップ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウスタニク,コーリー ロバート
【審査官】
増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−528264(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/066064(WO,A2)
【文献】
国際公開第2007/132590(WO,A1)
【文献】
特表2011−513177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 7/00 − 7/22
C03B 9/00 −17/06
C03B 19/00 −19/10
C03B 21/00 −21/06
B29C 35/00 −37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の第1主表面と第2主表面との間の厚さを制御する方法において、
溶融ガラスを供給するステップと、
前記溶融ガラスをリボンに形成するステップであって、前記リボンの端部に張力を印加するステップを備える前記形成するステップと、
前記リボンの厚さを計測するステップと、
前記リボンの少なくとも一部の厚さ不均一性を識別するステップと、
前記識別した厚さ不均一性に対応する粘性状態の前記リボンの少なくとも一部を事前選択するステップであって、該粘性状態の前記リボンの前記少なくとも1つの事前選択部分の厚さが固定されていないステップと、
前記粘性状態の前記リボンの前記少なくとも一つの事前選択部分を、前記事前選択部分に当たるように向けたレーザビームで加熱するステップと、を備え、
前記加熱するステップは、前記リボンの前記少なくとも一つの事前選択部分に所定の厚さを得させしめ、前記加熱するステップは、前記計測された厚さに応じて、前記事前選択部分に当てる前記レーザビームのパワーと滞留時間と波長の少なくとも1つを制御するステップを備える、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加熱するステップが、前記レーザビームを生成するレーザビーム生成器から、前記粘性状態の前記リボンの前記少なくとも1つの事前選択部分に前記レーザビームを反射する反射表面へと、前記レーザビームを向けるステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記レーザビームが、前記粘性状態の前記リボンの複数の事前選択部分の方へ向けられることを特徴とする請求項1又は2項記載の方法。
【請求項4】
前記粘性状態の前記リボンの前記複数の事前選択部分が前記リボンの全幅に亘って配置されることを特徴とする請求項3項記載の方法。
【請求項5】
前記粘性状態の前記リボンの前記複数の事前選択部分の夫々での前記レーザビームの前記パワーと前記滞留時間と前記波長の少なくとも1つを選択的に制御するステップを含む請求項3項記載の方法。
【請求項6】
前記レーザビームが、前記リボンに吸収されて前記リボンを通過しないことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記形成するステップは、成形ウェッジの底部から前記リボンを延伸するステップを有し、
前記少なくとも1つの事前選択部分は前記リボンの延伸方向において前記成形ウェッジの底部に隣接して位置することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御する方法において、
ある量のガラスから前記ガラスリボンを延伸するステップであって、該ガラスリボンが少なくとも2つのガラス層を備えるステップと、
前記ガラスリボンの厚さ不均一性を識別するステップと、
前記識別した厚さ不均一性に対応する粘性状態の前記ガラスリボンの少なくとも一部を事前選択するステップであって、前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分は前記少なくとも2つのガラス層のうちの少なくとも2つ夫々に存在するステップと、
レーザビームを生成するステップと、
前記レーザビームを前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分に向けるステップであって、前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分の厚さが固定されておらず、前記レーザビームの波長は、前記少なくとも2つのガラス層の前記少なくとも2つ夫々に存在している前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分で吸収される夫々のエネルギーの量が、前記少なくとも2つのガラス層の前記少なくとも2つ夫々に存在している前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分で温度を上昇させかつ粘度を低下させて前記少なくとも2つのガラス層の前記少なくとも2つ夫々に存在している前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分で夫々所望の厚さを十分に得るのに適切なものとなるような、波長であるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項9】
前記延伸するステップが、成形ウェッジの底部から前記ガラスリボンを延伸するステップを含むことを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記粘性状態の前記ガラスリボンの前記少なくとも1つの事前選択部分は、前記ガラスリボンの延伸方向において前記成形ウェッジの前記底部に隣接して位置することを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビームが、前記ガラスリボンに吸収されて前記ガラスリボンを通過しないことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照することにより本書に組み込まれる、2012年11月6日に出願された米国特許出願第13/669,994号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、基板の厚さ制御に関連する方法および装置に関し、より具体的には、ガラス製造プロセスにおけるガラス基板の事前選択部分の厚さ制御に関連する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な用途にとって製造される基板の厚さの厳密な制御は、重大とは言わないまでも重要になり得る。例えば、ガラスリボンの厚さに変動をもたらすフュージョンダウンドロー法によって製造された液晶ディスプレイ(LCD)ガラスに生じ得る厚さ変動を制御するために、多様な手順が実施および提案されてきた。熱機械的条件およびガラス流動条件は、ガラスリボンがフュージョンダウンドロー法で成形されているときガラスリボンの幅の全体またはいくつかの部分に亘って不均等になり得る。典型的には、ガラスリボンが成形されているときのガラスリボンの表面張力は、ガラスリボンの厚さに生じ得る変動を完全に取り除くには不十分である。この変動のサイズはほんの数μmにすぎないかもしれないが、このような変動による影響は、例えばLCDガラスに関しては重大になり得る。厚さの変動を制御するための1つの技術は、Steven R. Burdetteへの特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第8,196,431号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御する方法が提供される。この方法は、レーザビームを生成するステップ、および、厚さが固定されていない、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へレーザビームを向けるステップであって、このレーザビームは、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させて基板のこの少なくとも1つの事前選択部分の厚さを十分に変化させる適切なエネルギーを保有しているものであり、それにより基板の少なくとも1つの事前選択部分が所望の厚さを得る、ステップ、を含む。
【0006】
第1の態様の第1の実施形態において、基板はガラス基板を含む。
【0007】
第1の態様の第2の実施形態において、基板はダウンドローガラス成形プロセスで製造されたガラスリボンを含む。
【0008】
第1の態様の第2の実施形態の第1の例において、粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の方へレーザビームを向けるステップは、レーザビームを生成するレーザビーム発生器から、粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分にレーザビームを反射する反射表面へと、レーザビームを向けるステップを含む。この第1の例の1つの表現によれば、レーザビームを粘性状態にあるガラスリボンの複数の事前選択部分の方へ反射してもよく、かつガラスリボンの複数の事前選択部分はガラスリボンの実質的に全幅に亘って配置され得る。粘性状態にあるガラスリボンの複数の事前選択部分の方へレーザビームを向ける事例では、粘性状態にあるガラスリボンの複数の事前選択部分夫々でのレーザビームの各滞留時間を選択的に制御してもよい。
【0009】
第1の態様の第2の実施形態の第2の例において、ガラス基板は少なくとも2つのガラス層を備え、この2つのガラス層のうちの少なくとも1つが、粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分を含む。この第2の例の1つの表現によれば、ガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分は、少なくとも2つのガラス層のうちの少なくとも2つ夫々に存在し得る。レーザビームの波長は、少なくとも2つのガラス層夫々に存在している粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分で吸収される夫々のエネルギーの量が、少なくとも2つのガラス層夫々に存在している粘性状態にあるガラスリボンのこの少なくとも1つの事前選択部分で温度を上昇させかつ粘度を低下させて少なくとも2つのガラス層夫々に存在している粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分で夫々所望の厚さを十分に得るのに適切なものとなるように、採用され得る。
【0010】
第1の態様は、単独で、または上述した第1の態様の実施形態および例の、任意の1つまたは任意の組合せと組み合わせて提供され得る。
【0011】
第2の態様によれば、制御装置が、基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御するように構成される。この制御装置はレーザ発生器を含み、このレーザ発生器は、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へ向けられたときに粘性状態にある基板のこの少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させてそれにより基板のこの少なくとも1つの事前選択部分の厚さを変化させる適切なエネルギーを有するレーザビームを、生成および放射するように構成されている。この制御装置はさらに、反射表面を含む反射装置を備え、この反射表面は、レーザ発生器により生成および放射されたレーザビームを、レーザ発生器から受けかつ粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へ反射するように構成されている。レーザ発生器および反射装置は、レーザ発生器により生成および放射されて反射装置の反射表面によって反射されたレーザビームが、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へ反射されるように、基板に対して配置される。
【0012】
第2の態様の第1の実施形態において、制御装置は、基板を構成するガラスリボンを製造するように構成された、ダウンドローガラス成形装置に作動的に関連付けられている。
【0013】
第2の態様の第1の実施形態の第1の例において、反射装置は、レーザビームの受信と粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の位置とに関連して反射装置の反射表面の姿勢を調節するように構成された、調整機構を含み、それによりレーザビームは反射表面から粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の方へ反射され得る。この第1の例の1つの表現によれば、調整機構はガルバノメータを含み得る。この第1の例の第2の表現によれば、調整機構は反射装置の反射表面を、レーザビームの受信と反射装置の反射表面でのレーザビームの反射とに関連して複数の様々な姿勢で事前選択期間の間、調節するように構成され得る。結果として、レーザビームを粘性状態にあるガラスリボンの複数の事前選択部分の方へ夫々の事前選択期間の間向けて、ガラスリボンの複数の事前選択部分の夫々でガラスリボンの厚さを制御することができる。
【0014】
第2の態様の第1の実施形態の第2の例において、制御装置は、レーザビームを反射装置の反射表面から、ダウンドローガラス成形装置のガラス成形ウェッジの底部に隣接する、粘性状態にあるガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の方へ向けることができるように、ダウンドローガラス成形装置に対して位置付けられる。
【0015】
第2の態様は、単独で、または上述した第2の態様の実施形態および例の、任意の1つまたは任意の組合せと組み合わせて提供され得る。
【0016】
前述および他の態様、実施形態、および例は、以下の詳細な説明を添付の図面を参照して読むとより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御するように構成された装置の概略斜視図
【
図2】ガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御する方法および装置に適用される、装置の一態様を示したブロック図
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで、態様、実施形態、および例を、いくつかの態様、実施形態、および例を示した添付の図面を参照して以下でより十分に説明する。可能な限り図面を通じて同じまたは同様の部分の参照に同じ参照番号を使用する。態様、実施形態、および例は多くの異なる形で表すことができ、本書に明記される特定の態様、実施形態、および例に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0019】
例えばプラスチックまたはガラス基板などの基板の製造では、製造される基板の厚さが不均一になる可能性がある。この不均一性は局所的であり得、この場合不均一性は基板の幅を横切って見たときに、基板のいくらか孤立した部分のみに存在することになる。一方、複数箇所に不均一性が存在することもあり、場合によっては基板の全幅に亘って存在することさえあり得る。
【0020】
例えばプラスチックまたはガラス基板などの基板の製造において、基板の特定の厚さ不均一性は、修正されなかった場合、基板を製造し続けると通常発現し続ける。本発明の一態様によれば、続いて製造される基板の不均一性を本質的に排除することができるよう、注目するためにこれらの厚さ不均一性を識別および事前選択する。厚さ不均一性の修正は、基板が粘性状態にある間に、基板の不均一性が存在している部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させることによって成し遂げられる。その結果、基板の各不均一部分の夫々の厚さは、以下でより詳細に説明するように、続いて製造される基板において均一になる。
【0021】
基板は、応力の印加に対する基板の反応が純粋液体と弾性個体との中間の挙動であるような粘度である限り、粘性状態にあるとみなされる。基板の反応が弾性固体の反応である場合はいつでも、基板の厚さが「固定」されたとみなされ、この用語は本書で使用および適用される。
【0022】
本書に含まれる開示は、例えばプラスチックおよびガラス基板などの種々の基板に適用可能であり、これらの基板の厚さは、基板が粘性状態にあるときに基板に是正措置を適用することによって制御される。図面は、ガラス基板に対するこのような厚さ制御のために採用することができる、装置および方法の一態様を示している。図面の
図1を参照すると、基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御するように構成された、概して10で示した制御装置の実施形態が概略的に示されている。
図1の態様において図示の制御装置10は、ガラスリボン44を製造するように構成された概して20で示したダウンドローガラス成形装置の実施形態に、作動的に関連付けられている。ガラスリボン44などのガラス基板を製造しかつダウンドローガラス成形装置20などの設備を採用する、ダウンドローガラス成形プロセスは、フュージョンプロセス、オーバーフロープロセス、またはオーバーフローダウンドロープロセスと称されることもある。制御装置10およびダウンドローガラス成形装置20のこれらの概略図は、例えばガラスリボン44などのガラス基板の厚さ制御に関係する方法および装置の以下の態様、実施形態、および例の説明に関連して本書で参照される。
【0023】
図1に示したダウンドローガラス成形装置20の実施形態は成形用ウェッジ22を含み、成形用ウェッジ22は、その長手方向側が壁25および26に囲まれている開口溝24を含む。壁25および26は、その最上方で、長手方向に延在した対向するオーバーフロー堰27および28で夫々終端する。オーバーフロー堰27および28は一対の対向する実質的に鉛直の成形面30に一体化され、成形面30はさらに、一対の対向する下向きに傾斜した合流成形面32に一体化されている。一対の下向きに傾斜した合流面32は、成形用ウェッジ22の底部34を含む実質的に水平な下方先端で終端する。溶融ガラスは、開口溝24に流体連通している送出通路38を利用して開口溝24内に送出される。開口溝24の各端部に隣接して一対のダム40がオーバーフロー堰27および28の上に提供され、溢れ出た溶融ガラスの自由表面42をオーバーフロー堰27および28上に溶融ガラスの分離流として誘導する。開口溝24の送出通路38に隣接する端部に位置しているダム40の対のみが
図1に示されている。溶融ガラスの分離流は、対向する実質的に鉛直の成形面30の対および対向する下向きに傾斜した合流成形面32の対の表面を底部34へと流れ落ち、底部34で溶融ガラスの分離流は、
図1に破線で示されているが、合流してガラスリボン44を形成する。おおよそこの地点でガラスリボンは粘性状態にあり、ガラスリボン44の厚さは固定されておらず、その結果本書で説明する態様に従ってガラスリボンの厚さを変化させることができる。
【0024】
牽引ロール46が成形用ウェッジ22の底部34の下流に位置し、ガラスリボンに張力を印加するようガラスリボン44の両側でサイドエッジ48に係合する。牽引ロール46は、ガラスリボン44の厚さがその位置で本質的に固定される、底部34の十分下方に位置決めされる。牽引ロール46は、ガラスリボンが底部34で形成されるときのその厚さを確立する規定の速度で、ガラスリボン44を下向きに延伸する。
【0025】
図1に示した態様において、制御装置10は、レーザビーム13を生成および放射するように構成されたレーザ発生器12を含む。レーザビーム13は、例えば粘性状態のガラスリボン44などの粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へ向けられたときに、この粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させてそれによりガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを変化させるのに適切なものである。
図1の態様に示されているように、レーザビーム13は、成形用ウェッジ22の底部34に隣接したガラスリボンが粘性状態にある位置で、ガラスリボン44に向けられる。ただしレーザビーム13を、ガラスリボンが粘性状態にある他の位置でガラスリボン44に向けてもよい。
【0026】
一態様ではガラス基板の特性次第で、粘性状態にあるガラス基板の粘度はおよそ100,000ポアズを超えるであろうが、基板の厚さが固定されることになるほど高くはない。およそ100,000ポアズを超えるものの厚さが固定されるときのガラス基板の粘度よりも低い粘度のガラス基板に熱を適用すると、熱が適用された地点でガラス基板の粘度が効果的に低下し、さらに基板の粘度がより低い場合に起こり得るようにガラス基板内で熱が消散することはない。
【0027】
ガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させる目的のレーザビームの適性は、主に、粘性状態にあるガラスリボンの特性、レーザビームの波長とパワーレベル、および目的がガラス基板の限定数または多数の事前選択部分の厚さを変えることであるか否かの関数である。例えば一態様によれば、ガラス基板が単一層を含む場合、レーザビームの波長は、レーザビームがガラス基板に実質的に吸収されてガラス基板を容易に通過しないように選択される。別の態様によれば、例えば、ガラス基板の単一層の数ミリメートルの単一部分のみの厚さを制御するものでありかつレーザビームが粘性状態にあるガラス基板のこの単一部分に比較的安定して固定される場合には、レーザビームのパワーは、ガラス基板の複数の部分の厚さが制御される、レーザビームを連続的かつ迅速に複数の部分に亘って動かさなければならない場合に使用されるパワーよりも、低くてもよい。さらに、レーザのサイクル速度がおよそ50Hz程度よりも大きい場合には、レーザはパルスでもよいし連続的なものでもよい。
【0028】
一例としてレーザ発生器12は、多くの商業的供給源から入手可能なタイプの炭酸ガス(CO
2)レーザ発生器など、高強度の赤外レーザ発生器を含み得る。生成される光の波長およびCO
2レーザ発生器により生成されるパワーは、可変であり、かつ生成されるレーザビームがガラスリボン44などの粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させてガラス基板に存在する厚さ変動を十分に修正するのに適切なものとなるように、選択され得る。例えば、約9.4μmから約10.6μmの間の波長と数千ワットのパワー出力とを有するレーザビームは、ガラスリボン44などの粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させるのに適し得る。しかしながら、様々なガラス基板が異なる波長のレーザビームを異なる程度まで吸収するため、約9.4μmから約10.6μmの範囲外の波長を採用してもよい。
【0029】
図1に示されている態様の制御装置10は、概して14で示した反射装置をさらに含んでもよく、この反射装置は、レーザ発生器12によって生成および放射されたレーザビーム13をレーザ発生器12から受けて例えばガラスリボン44などのガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へ反射するように構成された、反射表面15を含む。従って反射装置は、ビーム操縦および/または走査機器として機能し得る。
図1では、以下でより詳細に説明するが、反射表面15によるレーザビーム13の受信と粘性状態にあるガラスリボン44の事前選択部分の位置とに関連して反射表面15の姿勢を漸進的に調節した結果として、レーザビーム13を、粘性状態にあるガラスリボン44の複数の事前選択部分に反射レーザビーム17として進ませるように図示されている。しかしながら、LCDガラスとして使用するのに適したガラス基板などのガラス基板に対して起こり得る厚さ変動は、極小さいエリアのみに存在し得るものであり、従って局所的であることにここで留意されたい。ガラス基板に当たるレーザビームのスポットも非常に小さいため、ガラス基板のすぐ隣接する部分に影響を及ぼすことなく局所的な厚さ変動に対処することができる。従って、レーザビームは高空間分解能で局所的な加熱を提供することができる。
【0030】
一例の反射表面15は金コーティングミラーを含み得るが、他の例では他のタイプのミラーを使用してもよい。金コーティングミラーは、赤外レーザに対して優れた一貫性のある反射性を提供する目的の特定の用途で望ましいであろう。さらに、金コーティングミラーの反射性は事実上入射の角度と無関係であり、従って金コーティングミラーは、走査用ミラーまたはレーザビーム操縦用ミラーとして特に有用である。
【0031】
図1に示した実施形態における反射装置14は、反射装置14の反射表面15の姿勢を、レーザビーム13の受信と例えばガラスリボン44などの粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の位置とに関連して調節するように構成された、調整機構16をさらに含む。それにより、レーザビーム13を反射レーザビーム17として、反射表面15からガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へ反射することができる。一例によれば調整機構16は、反射表面15に作動的に関連付けられたガルバノメータを、反射表面15がこのガルバノメータによってガラスリボン44に対して軸に沿って回転され得るように含み得る。例えば反射表面15を、ガルバノメータのモータによって駆動されて両矢印19で示したように軸18aに関して回転する、回転シャフト18に据え付けてもよい。
【0032】
図1の実施形態に示されているように、ガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分の厚さが固定される前に反射装置14の反射表面15から粘性状態にあるガラスリボン44の少なくとも1つの事前選択部分の方へレーザビーム13を向けることができるように、反射装置14はダウンドローガラス成形装置20に対して位置付けられる。
図1の実施形態において反射レーザビーム17は、ガラス基板の、成形用ウェッジ22の底部34に実質的に隣接した位置に向けられる。この位置で、溶融ガラスの分離流は合流して粘性状態のガラスリボン44を形成したが、ガラスリボンの厚さはこの位置で未だ固定されていなかった。しかしながら反射レーザビーム17は、必ずしもガラスリボン44の底部34に実質的に隣接した位置に向ける必要はなく、ガラスリボンが粘性状態にあるガラスリボンの任意の位置に向けてもよい。ガラス基板の事前選択部分が粘性状態にありかつその厚さが未だ固定されていない位置で、ガラス基板のこの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させることによって、ガラス基板の事前選択部分はガラス基板のこの事前選択部分に存在している例えば熱機械的力および他の力の影響で流動する傾向にあり、その結果ガラス基板の事前選択部分の厚さはガラス基板の事前選択部分で実質的に均一になる。
【0033】
通常の当業者には理解されるであろうが、
図1に示したダウンドローガラス成形装置20は、ガラスリボン44の熱環境を制御するために、図示されていないエンクロージャ内に典型的には収容される。さらにガラスリボンの熱環境を制御するために、牽引ロール46の位置にも図示されていないエンクロージャが提供される。ただし制御装置10は、ダウンドローガラス成形装置20用エンクロージャのすぐ下であり、かつ牽引ロール46用エンクロージャの上方の位置に位置付けられ得る。いずれにしてもレーザ発生器12および反射装置14は、レーザ発生器12により生成および放射されかつ反射装置14の反射表面15で反射されたレーザビーム13が、ガラスリボンが粘性状態にある位置でガラスリボン44の少なくとも1つの事前選択部分の方へ反射されるように、基板またはガラスリボン44に対して配置される。
【0034】
一態様によれば、例えばガラスリボン44などの基板の少なくとも1つの事前選択部分の厚さを制御する方法が提供されることが、前述の説明に基づいて理解されるであろう。この方法は、レーザビームを生成するステップと、その厚さが固定されていない、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へレーザビームを向けるステップとを含み得る。このレーザビームは、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の温度を上昇させかつ粘度を低下させて、基板のこの少なくとも1つの事前選択部分の厚さを十分に変化させる適切なエネルギーを保有することになる。結果として、基板の少なくとも1つの事前選択部分が所望の厚さを得るようにすることができる。
【0035】
別の態様によれば、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分の方へレーザビームを向けるステップは、レーザビームを生成するレーザビーム発生器から、粘性状態にある基板の少なくとも1つの事前選択部分にレーザビームを反射する反射表面へと、レーザビームを向けるステップを含む。これらの両方の態様では、粘性状態にある基板の複数の事前選択部分の方へレーザビームを向けてもよく、基板のこの複数の事前選択部分は、例えば
図1においてガラスリボン44に対して示されているように、基板の全幅に亘って配置され得る。さらに以下でより詳細に説明するように、ある実施形態例において、粘性状態にある基板の複数の事前選択部分夫々でのレーザビームの滞留時間は選択的に制御することができる。これら全ての態様の例において、基板は、ガラスリボン44などのダウンドローガラス成形プロセスで製造されたガラスリボンを含み得る。
【0036】
図2は、制御装置10と協働して機能する運転装置の一態様を示したブロック図を含み、ここで矢印付きの実線はレーザビームを表し、また点線は電気制御信号を表す。レーザパワー制御ユニット50は、レーザ発生器12で生成されるレーザビーム13の波長およびパワーが事前に選択された値を含むように、レーザ発生器12の動作を制御する。さらにレーザパワー制御ユニット50は、レーザ発生器12がレーザビーム13を生成する時間間隔を制御することができる。さらに、制御コンピュータ52を提供してレーザパワー制御ユニット50の動作を適切に制御し、それによりレーザパワー制御ユニット50によってレーザ発生器12は、事前に選択された波長およびパワー特性を有するレーザビーム13を事前に選択された時間間隔の間に生成する。同時に制御コンピュータ52は、調整機構16の機能と、またガルバノメータが採用される特定の例ではガルバノメータのモータを制御するように、反射装置14に作動的に関連付けられる。従って制御コンピュータ52は、反射表面によるレーザビーム13の受信と厚さが制御される粘性状態にあるガラス基板の事前選択部分の位置とに関連して、反射表面15の姿勢および位置決めを調節することができる。
【0037】
一実施形態例によれば、調整機構16は反射装置14の反射表面15を、レーザビーム13の受信と反射装置14の反射表面15でのレーザビームの反射とに関連して複数の様々な姿勢に事前選択期間の間、調節するように構成され得ることが、
図1および
図2を参照して上で説明した態様、実施形態、および例に基づいて理解されるであろう。結果としてレーザビーム13を、例えば
図1に反射レーザビーム17で示されているように、粘性状態にあるガラスリボン44の複数の事前選択部分の方へ、このガラス基板の幅に亘って夫々の事前選択期間の間向けて、それにより事前選択部分の夫々でガラス基板の厚さを制御することができる。より具体的には、
図2に示した態様を参照すると、反射レーザビーム17をガラスリボン44の事前選択部分に事前選択期間の間向けるようなやり方で調整機構16が反射表面15の姿勢を制御するように、制御コンピュータ52はプログラムされ得、この事前選択期間は、例えばこれが経験に基づいて決定されたものである場合、または他にガラスリボンの事前選択部分の厚さを様々な程度まで制御する必要がある場合に、変わり得る。
【0038】
例えばガラスリボン44などの基板の製造に関連して現れ得る厚さ不均一性は、種々の背景で生じ得る。例えば、不均一性は基板の単一の局所的部分に存在し得るが、その不均一性は、基板の隣接する複数の部分の厚さに関連して、あるいは基板の単一の局所的部分自体に関連して、存在し得る。いずれにしても、最終的に製造される基板において基板のこの単一の部分の厚さが所望の厚さを得るために、適切なエネルギーレベルおよび波長のレーザビーム13を粘性状態にある基板のその単一の部分に連続的に反射する、反射装置14を提供することが単に必要である。これは、調整機構16に関連する反射表面15の姿勢および位置決めを反射装置14の調整機構16が制御するように、またレーザ発生器12によって生成されるレーザビーム13のエネルギーレベルおよび波長をパワー制御ユニット50が制御するように、コンピュータ52をプログラムすることによって達成される。さらなる例として、厚さ不均一性が存在する2以上の別個の部分が基板に存在することがある。この事例では、反射装置14の調整機構16が、不均一性が存在している基板の2以上の部分に反射ビーム17を連続的に接触させるよう反射表面15の姿勢および位置決めを制御するように、コンピュータ52はプログラムされ得る。さらに、これらの2以上の部分で厚さを変化させることによって最終的に製造される基板において夫々の所望の厚さが得られるように、レーザ発生器12により生成されるレーザビーム13のエネルギーレベルおよび波長をパワー制御ユニット50が制御するよう、コンピュータはプログラムされる。さらに、調整機構16の動作を通じて反射ビーム17を基板の2以上の不均一部分の夫々の位置に必要な期間の間存在させて、これらの各部分の粘度を適切に低下させ、その結果不均一部分の厚さを適切に変化させることができるようコンピュータ52をプログラムしてもよい。また例として、基板に存在する厚さ不均一性は、ガラスリボン44のサイドエッジ48に存在する任意のビードを含め、基板全体に亘って分布し得る。重ねて、レーザ発生器12がパワー制御ユニット50の制御を通じて適切な強度および波長のレーザビーム13を提供するように、また、レーザビーム13が反射装置14の手段を通じて基板を横切って前後に連続的に素早く動かされる際、厚さの修正が施される基板のこれらの部分に、基板製造時に基板のこれらの部分で夫々所望の厚さが得られるレベルまで基板のこれらの部分で粘度を低下させるのに必要な期間の間、レーザビーム13を存在させるように、コンピュータ52は適切にプログラムされ得る。
【0039】
コンピュータ52を適切にプログラムするのに必要な情報およびデータの開発は、種々の手法で成し遂げることができる。例えば、基板に存在している厚さ不均一性を識別する目的で作り出された厚さの計測追跡を基板で実行してもよい。次いでコンピュータ52を、この計測追跡に基づいて適切にプログラムすることができる。また例として、基板が製造されるときに基板の厚さプロファイルをリアルタイムで監視してもよく、さらに厚さ不均一性を呈している基板の部分が所望の厚さを得るようコンピュータが適切な閉ループ制御アルゴリズムに従って反射装置14およびレーザパワー制御ユニット50を調節することができるように、この監視によって開発された情報をコンピュータ52にフィードバックしてもよい。
【0040】
さらなる態様によれば、ガラスリボン44などのガラス基板は少なくとも2つのガラス層を備えてもよく、これらのガラス層のうちの少なくとも1つが、粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分を含む。この少なくとも2つのガラス層のうち少なくとも2つ夫々に少なくとも1つの事前選択部分が存在している場合には、採用されるレーザビームの波長は、少なくとも2つのガラス層夫々に存在している粘性状態にあるガラス基板の少なくとも1つの事前選択部分で吸収される夫々のエネルギーの量が、これらの少なくとも2つのガラス層夫々に存在しているガラス基板のこの少なくとも1つの事前選択部分で温度を上昇させかつ粘度を低下させて少なくとも2つのガラス層夫々に存在しているガラスリボンの少なくとも1つの事前選択部分で夫々所望の厚さを十分に得るのに適切なものとなるような波長である。レーザビームがガラス層の夫々で吸収および透過される程度、およびその結果として粘性状態にあるガラス基板の事前選択部分が加熱されてその粘度が低下する程度は、ガラス層の特性だけではなくレーザビームの波長にも依存する。従って、厚さを変化させる2以上のガラス層の全ての事前選択部分にレーザビームを到達させることができるレーザビームの波長が、ガラス層の特性次第で選択され得る。その結果、基板のこれらの事前選択部分を必要に応じて差別的に加熱して、ガラス基板のこれらの事前選択部分の粘度を低下させて事前選択部分の厚さを十分に変化させ、それにより所望の厚さを得る。
【0041】
以下に明記する請求項の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変および変形が作製可能であることは当業者には明らかであろう。例えば本書で説明される種々の態様、実施形態、および例は、例えばスロットドロー、アップドロー、およびフロートプロセスなどの他のガラス成形プロセスにより製造されるガラス基板に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 制御装置
12 レーザ発生器
13 レーザビーム
14 反射装置
15 反射表面
16 調整機構
17 反射レーザビーム
20 ダウンドローガラス成形装置
44 ガラスリボン