【実施例1】
【0011】
図2は本実施例の補給容器に関わるインクジェット記録装置100を示す全体図である。インクジェット記録装置100には、外部に操作表示部3が備えられた本体1とインク吐出ヘッド2が備えられており、本体1とインク吐出ヘッド2は導管4で接続されている。また本体1には状態表示灯5が備えられており、インクジェット記録装置100の運転状態、例えば電源通電状態、印字可能状態、警報状態、異常状態などを点灯により表示可能である。インクジェット記録装置100にはメンテナンス扉6が備えられ、ユーザーはメンテナンス扉6を開いてインクの補給などのメンテナンスを行うことができる。
【0012】
図3はインクジェット記録装置100の実使用状態の一例を示すものである。インクジェット記録装置100は、例えば、食品や飲料などが生産される工場内の生産ラインに据え付けられ、本体1は使用者が操作できる位置に設置され、インク吐出ヘッド2はベルトコンベア15などの生産ライン上を搬送される印字対象物13に近接できる位置に設置される。
【0013】
ベルトコンベア15などの生産ライン上には搬送速度に係わらず同じ幅で印字するために、搬送速度に応じた信号をインクジェット記録装置100に出力するエンコーダ16や、印字対象物13を検出してインクジェット記録装置100に印字を指示する信号を出力する印字センサ17が設置されていて、それぞれは本体1内の図示しない制御部200に接続されている。
【0014】
エンコーダ16や印字センサ17からの信号に応じて制御部200がノズル8から吐出されるインク粒子10への帯電量や帯電タイミングを制御し、印字対象物13がインク吐出ヘッド2近傍を通過する間に帯電、偏向されたインク粒子10を印字対象物13へ付着させて印字を行うようになっている。
【0015】
図4はインクジェット記録装置100の制御構成を示すものである。制御構成としては、演算機能を有しインクジェット記録装置全体を制御するMPU101が、バス120によりMPUが動作するために必要なプログラムやデータを記憶するROM102、プログラム実行中に必要なデータを一時的に記憶するRAM103、印字内容や設定値などを入力する入力装置104、入力装置104で入力された内容や状態などを表示する表示装置105を有する。
【0016】
また、インク吐出ヘッド2内のノズル151に取り付けられた励振素子152に与える励振電圧を発生させる励振電圧発生回路111、ノズル151から吐出されたインク粒子161に電荷を与えるための帯電電極153に与える帯電電圧を発生させる帯電電圧発生回路112、帯電したインク粒子161を印字内容に合わせて偏向するための偏向電極154に与える偏向電圧を発生させる偏向電圧発生回路113、インクや溶剤の流れの開閉を行う電磁弁の制御を行う電磁弁制御回路114、インクに圧力を与えるポンプの制御を行うポンプ制御回路115、インク容器201、インクサブ容器202、溶剤サブ容器203の液面を検出する液面検出回路116に接続されている。
【0017】
インク容器、インクサブ容器、溶剤サブ容器については後で説明する。
図5はインクジェット記録装置100のインク循環システムの系統図を示すものである。本体1内には、ノズル151へ供給するインクを貯留し、またノズルへ供給したインクのうち印字に使用されなかったインクを回収し再び貯留するインク容器201、インク容器201に補給するインクを貯留するインクサブ容器202、インクの希釈や経路の洗浄に使用する溶剤を貯留する溶剤サブ容器203、インクまたは溶剤に圧力を与えるポンプ211から214、インクや溶剤の経路を開閉する電磁弁221から228、インク中のごみを捕集するフィルター231、ポンプ211により高められたインクの圧力を低減し必要な圧力に調整する減圧弁232、インクの圧力を測定する圧力計233、インクの粘度を測定する粘度計234が備えられている。インク吐出ヘッド2にはノズル151、IN側の2つの経路のうちどちらかを閉じどちらかを開きOUT側の経路と連通させる三方電磁弁229、ノズルから吐出されたインクのうち印字に使用されないインクを捕らえるガター241が備えられている。
【0018】
インクサブ容器202にはインク補給容器301が、溶剤サブ容器203には溶剤補給容器302がそれぞれ接続されている。インクサブ容器202および溶剤サブ容器203の内部のインクはそれぞれポンプ211、ポンプ214によって吸引、圧送され、インクや溶剤の経路を経てインク容器201に補給される。図は省略するが、インク容器201に接続されているポンプ212、ポンプ213、粘度計234とつながる経路をインクサブ容器202につなぎ、インク容器201から電磁弁222、および本体1の外部につながる経路を廃止して、インク容器201とインクサブ容器202を一体化とすることもできる。
【0019】
図7に、インクジェット記録装置100のインク循環エリア251の概観を示す。インク循環エリア251はメンテナンス扉6を開くことでアクセスが可能である。インク循環エリア251には、ポンプ211から214や電磁弁221から228をユニット化したインク循環ユニット261やインクサブ容器202、溶剤サブ容器203が備えられており、それらの図示は省略するが、ねじなどにより固定されている。
【0020】
前述したように、インクサブ容器202にはインク補給容器301が、溶剤サブ容器203には溶剤補給容器302がそれぞれ接続されており、これらのインク補給容器301、溶剤補給容器302はユーザーにより着脱、交換が可能である。
【0021】
図1に本実施例であるインク補給容器301の構造を示す。なお、インク補給容器及び溶剤補給容器は同様の構造であり、以下ではインク補給容器についてのみ説明し、溶剤補給容器についての説明は省略する。
【0022】
図1(a)は全体構造を、
図1(b)はインク補給容器301の先端部を拡大して示したものである。
図1(a)に示すように、インク補給容器301は、貯蔵部材311と栓部材312と第1の蓋部材313とシール部材314と液体吸収材315と第2の蓋部材316を備えている。
【0023】
インク補給容器301の材質の例としては、貯蔵部材311、第1の蓋部材313、第2の蓋部材316には、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)や低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)やポリプロピレン樹脂(PP)が用いられ、栓部材312には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)が用いられる。
【0024】
また、シール部材314には弾性体であるブチルゴムあるいはエチレンプロピレンゴムが用いられ、液体吸収材315には連続気泡のポリオレフィン系発泡体あるいはポリオレフィン不織布が用いられる。なお、上記材質は本実施例における好適なものであり、他のものを用いてもよい。
【0025】
インク補給容器301の詳細構造を説明すれば、貯蔵部材311は直方体形状の貯蔵室321を有し、貯蔵室301の一端部から延出した壁面の先端部322は円筒形状をしており、その端面は開口している。
【0026】
また先端部322の外周縁にはねじが形成されており、先端部322と貯蔵室301をつなぐ壁面は貯蔵部材311内部に向かって傾斜している。
【0027】
そして、この先端部322の開口部には、貯蔵部材311内部に挿入されるように栓部材312が取り付けられている。栓部材312は円筒部331、鍔部332、底部333を備え、円筒部331の端部に鍔部332が形成され、この鍔部332が貯蔵部材311の先端部322の開口端部に掛止されて栓部材312が取り付けられる。
【0028】
この構成によって、円筒部331の外側面は貯蔵部材の先端部322の内側面と円周に沿って連続的に密接しシール性を確保し、また鍔部332は貯蔵部材の先端部322の端面と円周に沿って連続的に密接し、シール性を確保し、二重シール構造とすることで、液漏れを防ぐ構造となっている。
【0029】
栓部材312の底部333には環状にその周囲より肉厚の小さい薄肉部341を有している。本実施例では、インク補給容器301と本体機側のサブインク容器202とを接続する際に、サブインク容器202に設けられた接続部突起によって、インク補給容器301の栓部材312の底部333の一部が突き破られる構成となっており、この薄肉部341はインクを補給する際に小さい操作力で突き破るためのものであり、薄肉部の肉厚は0.2から0.5mm程度が望ましい。
図8に栓部材312の形状の例を示しており、
図8(a)は環状に連続的に薄肉部341が形成され、
図8(b)は環状に断続的に薄肉部341が形成されている。
【0030】
続いて、
図1(b)で示すように、第1の蓋部材313は円筒部351、底部352を有し、円筒部351の内側面にはねじが形成され、貯蔵部材311の先端部322に形成されたねじと係合し固定されている。
【0031】
第1の蓋部材の端面部352には貫通穴353を有しており、蓋部材の貫通穴353は栓部材312の環状薄肉部341と同心状に配置されている。
図9に蓋部材313の形状の例を示しており、
図9(a)は貫通穴353が円形に形成され、
図9(b)は貫通穴353が円354に沿った部分355とその周囲に凹である部分356で形成されている。
【0032】
さらに、栓部材312の底面部333には、底面部333の周縁に沿ってシール部材314が設けられている。シール部材314は貫通穴361を有した円筒状であり、シール部材314の貫通穴361の内側面には2個の環状突起362、363が備えられ、環状突起362、363は貫通穴361と同心状に形成されており、また第1の蓋部材313の貫通穴353と同心状に配置されている。
【0033】
ここでシール部材314の内側面の環状突起は、例えば環状突起と同心状に軸方向に移動する円筒状部材が当該部分に密接しシール部材314を圧縮ながら移動するとき、環状突起部にて局所的に高まるシール部材314の面圧によりシール性を確保し、環状突起部以外では不要に高い面圧が生じないようにし、生じる摩擦力を軽減する効果がある。なお、環状突起の数は2個に限定されるものではなく1個あるいは3個以上でもよく、突起を有していなくてもシール性が確保されていれば。
【0034】
シール部材314の外側面には2個の環状突起364、365が形成されており、環状突起364、365は栓部材の円筒部331の内側面と円周に沿って連続的に密接しシール性を確保している。
【0035】
ここで外側面の環状突起の数は2個に限定されるものではなく1個あるいは3個以上でもよく、また突起がなくシール部材の外側面が栓部材の内側面と円周に沿って連続的に密接する形でもよい。また、インク補給容器301とインク補給容器301に接続されるアダプタとが非接続のときには、シール部材の外側面の環状突起364、365と栓部材の円筒部331の内側面との間にシール性は不要であり、当該部分は密接していなくてもよく、インク補給容器301がアダプタに接続されているときにシール部材314が変形して密接する形態でもよい。
【0036】
シール部材314の内側面の環状突起362、363の内径372、373は蓋部材の貫通穴353の内径371より小さくなっている。これにより蓋部材の貫通穴353の内径より小さいがほとんど同一寸法の外径である本体側インクサブ容器のカートリッジ接続部が蓋部材の貫通穴353より同軸状に挿入されたときに、シール部材314の内側面の環状突起362、363と前記円筒状部材の外側面が円周上に連続的に密接し、当該部分にシール性を確保することができる。
【0037】
前記円筒状部材はインク補給容器301と接続されるアダプタに備えられた形状であり、アダプタについては後で説明する。
図10にシール部材314の一例を示すが、シール部材はリング状であってもよく、例えばOリングでもよい。
【0038】
次ぎに吸収剤315について説明する。吸収材315の材質の例として、前述のように連続気泡のポリオレフィン発泡体やポリオレフィン不織布が用いられる。いずれにしても吸収材315の外面から内部に連続的に隙間を有しており、その隙間部に液体を吸収することができる。
【0039】
また、吸収材315は貫通穴381を有しており、吸収材の貫通穴381は蓋部材の貫通穴353と同心状に配置されている。吸収材315の固定方法としては、例えば吸収材315とシール部材314とを両面粘着テープあるいは粘着剤で接着固定する。
【0040】
図11に吸収材315の形状の例を示しており、
図11(a)は貫通穴381が円形に形成され、
図11(b)は貫通穴381が円382に沿った部分383とその周囲に凹である部分384で形成されている。
【0041】
次に第2の蓋部材316について説明する。
図1に示すように第2の蓋部材316は、その一例として円筒部391と底部392を有した形状であり、蓋部材313の貫通穴353を覆うように配置され、インク補給容器301を取り扱う際や保管中に栓部材312、シール部材314、吸収材315を誤って傷つけたり、ごみが外部から侵入して付着したりすることを防いでいる。
【0042】
第2の蓋部材の円筒部391の開口部周縁の内側面には環状突起393が備えられ、蓋部材313と係合し固定される。この係合は、ユーザーが手作業で第2の蓋部材を抜け方向に引っ張ると外れるものであり、インク補給容器301とアダプタとの接続は、第2の蓋部材316は取り外して行われる。
【0043】
また、第2の蓋部材316は、ユーザーが手作業で蓋部材313と係合させることができ、使用済みのインク補給容器に第2の蓋部材316を係合させることできる。
この第2の蓋部材316を設けることで、使用済みインク補給容器の内部に少量残留したインクが取り扱い時の衝撃などで外部に飛散したり、内部のインクの臭いが外部に漏れ出すことを抑止している。
【0044】
第2の蓋部材のその他の例としては、図示は省略するが、第2の蓋部材はラベルであり、蓋部材313の貫通穴353を覆って貼り付けられたものでもよい。なお、
図1に示す構造と
図1に関し前述した内容は、溶剤補給容器302にも適用できる。
【0045】
以上のように本実施例のインクあるいは溶剤補給容器によれば、インクあるいは溶剤補給時等にインクあるいは溶剤による汚れを低減可能な補給容器を提供することができる。
【0046】
次ぎに
図12を用いて、本実施例のインク補給容器が接続されるインクジェット記録装置100のインクサブ容器202の構造を示す。インクサブ容器の貯蔵部材501は貯蔵部511、補給口512、センサ口513を有し、補給口512にはアダプタ502がねじ503で固定されている。補給口512とアダプタ502の間にはシール部材504が備えられ当該部分のシール性を確保している。
【0047】
貯蔵部材501のセンサ口513には、液面センサ505、吸引パイプ506、大気開放パイプ507が取り付けられたブロック508が蓋509のねじ嵌合により固定されて いる。
【0048】
液面センサ505は、2本の金属棒から成り、導電性を有するインクの液面が2本の金属棒に触れる位置ではその2本が導通し、インク液面が2本の金属棒に触れない位置ではその2本は導通せず、この原理によりある1点の検出レベル521において液面が到達しているか否かを検出可能である。
【0049】
ここで2本の金属棒の上部には、図は省略するが導線が嵌合された端子などが固定され導線は液面検出回路116へとつながる。
【0050】
図6に、インクジェット記録装置100においてインクサブ容器202の液面制御フローの一例を示す。ステップ401において、インクサブ容器202に設けられた液面センサ505が検出レベル521において液面を検出しているかどうか確認する。
【0051】
液面を検出していない場合、インクサブ容器内のインクが少なくなっていることを意味し、ステップ402において警報を表示する。またこのときインクサブ容器に接続されたインク補給容器は、その内部に貯留されていたインクをほとんど全てインクサブ容器内へ排出し、空の状態である。
【0052】
図12においてはインク補給容器の図は省略している。インク補給容器とインクサブ容器との接続状態の一例についてはあとで説明する。ステップ402における警報表示の例としては、状態表示灯5の警報ランプを点灯し、操作表示部3に警報マークおよびインク補給容器を規定時間T以内に新しいものに交換する必要がある内容のメッセージを表示する。
【0053】
通常、警報が解除されるまでの間は、前記警報ランプと警報マークは常時表示し、メッセージについてはユーザーが操作により消去可能である。警報が表示されたとしてもインクジェット記録装置100は通常通り印字や操作などを実行可能である。
【0054】
ステップ401において液面を検出している場合は、インクサブ容器内のインクは十分残っているため警報の表示は行わない。
【0055】
ステップ403では液面を非検出となってから規定時間Tが経過したかどうかを確認する。規定時間Tが経過した場合、使用環境や印字頻度によってはインクサブ容器内のインクがほとんど残っていないことが想定され、仮にその後も印字を継続するとインク経路にインクの代わりに空気を吸い込み、印字乱れが発生する恐れがあるため、ステップ406にて異常状態を表示し、インクジェット記録装置100の運転を停止させる。
【0056】
規定時間Tが経過していない場合は、ステップ404において液面をいまだ検出していないかどうか確認する。ステップ404においても液面を検出していない場合はステップ403に戻る。
【0057】
インク補給容器が新しいものに交換されると、インク補給容器内のインクはインクサブ容器内に排出され、インクサブ容器内の液面が上昇し液面センサが検出レベル521において液面を検出し、ステップ405に移行する。
【0058】
ステップ405ではステップ402において表示した警報を解除する。
図6に示す液面制御フローは溶剤サブ容器についても同様であり、溶剤サブ容器の液面センサが液面を検出しない場合の、ステップ402における警報表示の例としては、溶剤補給容器を規定時間T以内に新しいものに交換する必要がある内容のメッセージを表示する。
【0059】
検出レベル521は吸引パイプ506の吸引口522より上方にある一定距離隔てた位置に設けられる。これにより、インクジェット記録装置100の運転中に印字などによりインクサブ容器202内のインクが減少し、液面が検出レベル521より低下し警報が発せられてから、吸引不可能になるまでに一定時間の間隔が開き、ユーザーが警報の発生を認知しインク補給容器301を交換するまでの猶予時間を設けることができる。
【0060】
吸引パイプ506の上部にはフッ素樹脂チューブが嵌合により接続されインク循環ユニット261へ接続され、その経路は電磁弁221を介してポンプ211へとつながる。大気開放パイプ507の上部にはフッ素樹脂チューブが嵌合により接続されその経路はインクジェット記録装置100の外部の大気へとつながり、インクサブ容器内のインクが吸引パイプ506より吸引されると大気開放パイプから空気がインクサブ容器内へ流入する。
溶剤サブ容器203は、内部に貯蔵する溶剤が通常導電性を有さないためインクサブ容器とは異なる方式の液面センサを用いるが、
図6に示す液面制御フローは同様であり、液面センサを除けば
図12に示す構造は同様である。溶剤サブ容器の液面センサとしては、フロートセンサなどが用いられる。溶剤サブ容器の構造図については省略する。
【0061】
アダプタ502はインク補給容器301と接続するものであり、接続状態については後で説明する。アダプタ502には、その上部が鋭角形状532を形成する円筒部531と外壁部533が備えられる。アダプタ502の材質としては、ポリプロピレン樹脂やポリブチレンテレフタレート樹脂などが用いられる。
【0062】
図13は、インク補給容器301とインクサブ容器202との接続状態の一例を示す図である。
図13(a)は全体図、
図13(b)は接続部の詳細図である。インク補給容器301は貯蔵部材311の先端部322を下方に向けた状態でインクサブ容器202に挿入され接続される。
【0063】
その接続は、インク補給容器301のシール部材314の貫通穴の内側面の環状突起362、363とインクサブ容器のアダプタ502の円筒部531の外側面の嵌合によるものであり、また、接続時にアダプタの円筒部の上部の鋭角形状532によって、栓部材312の薄肉部341は一部のつなぎ部541を残して環状に突き破られる。
【0064】
このとき、栓部材の薄肉部の内側であって環状に突き破られた部分542は、アダプタの円筒部531であって栓部材の底部333より上方に突き出た部分により押し上げられ、流路となるアダプタの円筒部531の内側を塞がない状態を維持する。
【0065】
接続させる操作としては、ユーザーがインク補給容器301から第2の蓋部材316を取り外した後、インク補給容器301の蓋部材313の円筒部351が、インクサブ容器202のアダプタの外壁部533の中に納まるように挿入後、インク補給容器301を下方に押し込む操作である。
【0066】
このとき、インクサブ容器301のアダプタの外壁部533は、その内径がインク補給容器301の蓋部材313の円筒部351の外径より大きいがその差が0.1〜0.6mm程度の近い寸法であり、またアダプタの円筒部531の外径は、蓋部材313の貫通穴353の内径より小さいがその差が0.1〜0.6mm程度の近い寸法であり、それぞれがインク補給容器301をアダプタに挿入する際の案内の役割をする。
【0067】
インク補給容器301を押し込む際、インクサブ容器202のアダプタの円筒部531とインク補給容器301のシール部材314との間の摩擦力によって、またアダプタの円筒部531の鋭角部531が栓部材314を突き破るために要する力によって、ある程度の押し込み力が必要となるが、前記の操作でも押し込むことができる。
【0068】
アダプタ502の円筒部531の外径は、インク補給容器の蓋部材313の貫通穴353の内径より小さいがほとんど同一寸法であり、またシール部材314の内側面の環状突起362、363の内径は、蓋部材の貫通穴353およびアダプタの円筒部531の外径より小さく、それにより前述したように当該部分のシール性が確保される。
【0069】
これはすなわちインク補給容器301をインクサブ容器202に接続しインクを補給する際に、インクはインク補給容器の内部の環状突起362または363の部分でシールされてとどまり、インク補給容器の外面、例えば特に蓋部材313の底部352の外面545がインクで汚れないことを意味し、これによりユーザが使用済みのインク補給容器を取り扱う際に手がインク補給容器の任意の外面に触れても手をインクで汚さず作業することができる。
【0070】
ここで、アダプタの円筒部531の外側面と栓部材312が突き破られてできた穴とは嵌合状態にあるが、円周の全周にわたって密接するとは限らず、当該部分のシール性は安定して確保できるものではない。接続時、アダプタの円筒部531の内側は流路となり、インク補給容器からインクサブ容器へインクをその自重で流し、同時に空気をインクサブ容器からインク補給容器へ流し、インク補給容器内部のインク流出により減少する分の体積を補う。その際、アダプタの円筒部531の内径が小さいと、インクが表面張力などの作用により流れ落ちない場合があり、アダプタの内径は約8mm以上が望ましい。
【0071】
また、本実施例においてはインク補給容器301の貯蔵部材311はある程度の剛性を有しており、インク補給容器301の容積はほとんど変わらないものであるが、その他の例としてインク補給容器の貯蔵部材311は剛性が小さく、内部のインクが自重で流出しようとする際発生する負圧や貯蔵部材311を加圧圧縮する外力によって容易に変形し容積が小さくなるものでもよい。
【0072】
インク補給容器301は、インクサブ容器202と接続しその内部のほとんど全てのインクを流出させた後、ユーザによって引き上げられ新しいインクサブ容器と交換される。インク補給容器引き上げの際には、例えば栓部材312の上部スペース544やシール部材314の環状突起362の上部スペース545に残留していた少量のインクがシール部材314の貫通穴の内面を伝ってインク補給容器の外面に流れ出る恐れがあるが、それに対して吸収材をシール部材314と蓋部材313の間に配置したことによって、残留インクが流れ出ることを抑止している。
【0073】
図14は、インク補給容器301とインクサブ容器202との接続途中の状態の一例を示す図である。アダプタの円筒部531の鋭角形状532は栓部材312の底部333と当接しておらず、またアダプタの円筒部531の外側面はシール部材314の環状突起363と円周に沿って連続的に密接している。これによってインク補給容器301とインクサブ容器202との接続途中であっても当該部分のシール性を確保している。