特許第6158365号(P6158365)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158365
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】X線CT装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   A61B6/03 360G
   A61B6/03 360P
   A61B6/03 377
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-3954(P2016-3954)
(22)【出願日】2016年1月12日
(62)【分割の表示】特願2012-48773(P2012-48773)の分割
【原出願日】2012年3月6日
(65)【公開番号】特開2016-47479(P2016-47479A)
(43)【公開日】2016年4月7日
【審査請求日】2016年1月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】椋本 豪
(72)【発明者】
【氏名】石田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 直樹
(72)【発明者】
【氏名】深野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 達也
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−325787(JP,A)
【文献】 特開2012−029767(JP,A)
【文献】 米国特許第06891963(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体をX線でスキャンした結果に基づき、ボリュームデータを作成するX線CT装置であって、
前記ボリュームデータに対する所定方向の断面を示す第1MPR画像及び前記所定方向とは異なる方向の断面を示す第2MPR画像を作成するMPR画像作成部と、
前記第1MPR画像に基づいて、前記被検体に対する穿刺針の挿入経路を設定するための設定部と、
前記第1MPR画像及び前記第2MPR画像それぞれにおいて、前記挿入経路に対応する画像領域を特定する特定部と、
前記画像領域が特定された前記第1MPR画像及び前記第2MPR画像のそれぞれについて、当該MPR画像の断面に直交し、且つ前記画像領域に沿う断面の断面画像を作成する断面画像作成部と、
表示部に前記断面画像を表示させる表示制御部と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記断面画像を切り換えて前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、特定された前記画像領域が重畳された前記第1MPR画像及び前記第2MPR画像を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1又は2記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、ボリュームデータを模擬的に表現した直方体の図形を前記表示部に表示させ、且つ前記断面画像の切り換えに応じて、当該断面画像の断面位置を前記図形に切り換えて表示させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記断面画像と、前記断面画像の元となったMPR画像とを関連付けて表示させることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、ボリュームデータを模擬的に表現した直方体の図形を前記表示部に表示させ、前記図形における前記断面画像の断面位置と、当該断面画像の元となったMPR画像が表示される表示領域の少なくとも一部とを同じ色で表示させることを特徴とする請求項5記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、ボリュームデータを模擬的に表現した直方体の図形を前記表示部に表示させ、前記断面画像が表示される表示領域の少なくとも一部と、前記図形に表示される当該断面画像の元となったMPR画像の断面位置とを同じ色で表示させることを特徴とする請求項5記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記MPR画像作成部は、前記第1MPR画像として、前記被検体のアキシャル像、サジタル像、コロナル像及びオブリーク像のいずれか一種類を作成することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記設定部において用いられる前記第1MPR画像は、複数枚からなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のX線CT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置は、X線を利用して被検体をスキャンし、収集されたデータをコンピュータにより処理することで、被検体の内部を画像化する装置である。
【0003】
具体的には、X線CT装置は、被検体を中心とする円軌道に沿って、当該被検体に対しX線を異なる方向から複数回曝射する。X線CT装置は、被検体を透過したX線をX線検出器にて検出して複数の検出データを収集する。収集された検出データはデータ収集部によりA/D変換された後、コンソール装置に送信される。コンソール装置は、当該検出データに前処理等を施し投影データを作成する。そして、コンソール装置は、投影データに基づく再構成処理を行い、断層画像データ、或いは複数の断層画像データに基づくボリュームデータを作成する。ボリュームデータは、被検体の三次元領域に対応するCT値の三次元分布を表すデータセットである。
【0004】
X線CT装置は、上記ボリュームデータを任意の方向にレンダリングすることによりMPR(Multi Planar Reconstruction)表示を行うことができる。以下、ボリュームデータをレンダリングすることによりMPR表示された断面画像を「MPR画像」という場合がある。MPR画像には、たとえば、体軸に対する直交断面を示すアキシャル像、体軸に沿って被検体を縦切りした断面を示すサジタル像、及び体軸に沿って被検体を横切りした断面を示すコロナル像がある。更には、ボリュームデータにおける任意断面の画像(オブリーク像)もMPR画像に含まれる。作成された複数のMPR画像は、表示部等に同時に表示することができる。
【0005】
X線CT装置を用いて行うCT透視(CTF:Computed Tomography Fluoroscopy)という撮影方法がある。CT透視とは、被検体にX線を連続的に照射することにより、被検体の関心部位に関する画像をリアルタイムに得る撮影方法である。CT透視では、検出データの収集レートを短くし、再構成処理に要する時間を短縮することで、画像をリアルタイムに作成している。CT透視は、たとえば、生検中に穿刺針の先端と検体を採取する部位との位置関係を確認する場合や、ドレナージ法を行うときのチューブの位置確認等に用いられる。なお、ドレナージ法とは、体腔内に貯まった体液をチューブ等により廃出する方法である。
【0006】
CT透視で得られたボリュームデータに基づくMPR画像を参照しながら被検体に対して生検を行う場合、たとえば、スキャンと穿刺とを交互に行うことがある。具体的には、まず、CT透視により被検体のMPR画像を取得する。医師等は、MPR画像を参照しながら穿刺を行う。この際、たとえば、穿刺針の先端と検体を採取する部位との位置関係を確認するため、ある程度、穿刺を行った段階で再度のCT透視を行う。再度のCT透視で得られたMPR画像を参照しながら、医師等は更に穿刺を進める。この動作を生検が完了するまで繰り返し行うことで、確実に生検を行うことが可能となる。
【0007】
また、CT透視により生検を行う場合、予め穿刺計画を作成する場合がある。穿刺計画は、被検体に対する穿刺針の挿入経路を含む情報である。穿刺計画は、たとえば、CT透視を行う前に予め取得されたCT画像において、マウス等の指示入力により挿入経路を描くことにより設定される。医師等は、挿入経路が示されたCT画像と、X線スキャンにより都度得られるボリュームデータに基づくMPR画像とを参照しながら被検体に対して穿刺を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−112998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、被検体に対する穿刺を確実に行うために、術者は、設定された挿入経路を様々な方向から確認したいという要望がある。
【0010】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたものであり、穿刺針の挿入経路を容易に確認できる画像を表示することが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のX線CT装置は、被検体をX線でスキャンした結果に基づき、ボリュームデータを作成する。X線CT装置は、MPR画像作成部と、設定部と、特定部と、断面画像作成部と、表示制御部とを有する。MPR画像作成部は、ボリュームデータに対する所定方向の断面を示す第1MPR画像及び所定方向とは異なる方向の断面を示す第2MPR画像を作成する。設定部は、第1MPR画像に基づいて、被検体に対する穿刺針の挿入経路を設定するために用いられる。特定部は、第1MPR画像及び第2MPR画像それぞれにおいて、挿入経路に対応する画像領域を特定する。断面画像作成部は、画像領域が特定された第1MPR画像及び第2MPR画像のそれぞれについて、当該MPR画像の断面に直交し、且つ画像領域に沿う断面の断面画像を作成する。表示制御部は、表示部に断面画像を表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
図2A】第1実施形態に係る設定部の説明を補足する図である。
図2B】第1実施形態に係る設定部の説明を補足する図である。
図2C】第1実施形態に係る設定部の説明を補足する図である。
図3】第1実施形態に係る特定部の説明を補足する図である。
図4】第1実施形態に係る表示制御部の説明を補足する図である。
図5】第1実施形態に係るX線CT装置の動作の概要を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係るX線CT装置のブロック図である。
図7A】第2実施形態に係る作成部の説明を補足する図である。
図7B】第2実施形態に係る作成部の説明を補足する図である。
図8】第2実施形態に係る表示制御部の説明を補足する図である。
図9】第2実施形態に係る表示制御部の説明を補足する図である。
図10】第2実施形態に係るX線CT装置の動作の概要を示すフローチャートである。
図11】変形例1に係る表示制御部の説明を補足する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1図5を参照して、第1実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。なお、「画像」と「画像データ」は一対一に対応するので、本実施形態においては、これらを同一視する場合がある。また、本実施形態では、被検体Eの体軸方向をZ方向(スライス方向)とし、体軸方向に直交する横方向をX方向(チャンネル方向)、縦方向をY方向として述べる。
【0014】
<装置構成>
図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを含んで構成されている。
【0015】
[架台装置]
架台装置10は、被検体Eに対してX線を曝射し、被検体Eを透過した当該X線の検出データを収集する装置である。架台装置10は、X線発生部11と、X線検出部12と、回転体13と、高電圧発生部14と、架台駆動部15と、X線絞り部16と、絞り駆動部17と、データ収集部18とを有する。
【0016】
X線発生部11は、X線を発生させるX線管球(たとえば、円錐状や角錐状のX線ビームを発生する真空管。図示なし)を含んで構成されている。X線発生部11は、発生したX線を被検体Eに対して曝射する。
【0017】
X線検出部12は、複数のX線検出素子(図示なし)を含んで構成されている。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出する。具体的には、X線検出部12は、被検体Eを透過したX線の強度分布を示すX線強度分布データ(以下、「検出データ」という場合がある)をX線検出素子で検出し、その検出データを電流信号として出力する。X線検出部12は、たとえば、検出素子が互いに直交する2方向(スライス方向とチャンネル方向)にそれぞれ複数配置された2次元のX線検出器(面検出器)が用いられる。複数のX線検出素子は、たとえば、スライス方向に沿って320列設けられている。このように多列のX線検出器を用いることにより、1回転のスキャンでスライス方向に幅を有する3次元の撮影領域を撮影することができる(ボリュームスキャン)。なお、スライス方向は被検体Eの体軸方向に相当し、チャンネル方向はX線発生部11の回転方向に相当する。
【0018】
回転体13は、X線発生部11とX線検出部12とを被検体Eを挟んで対向するよう支持する部材である。回転体13は、スライス方向に貫通した開口部13aを有する。架台装置10内において、回転体13は、被検体Eを中心とした円軌道で回転するよう配置されている。すなわち、X線発生部11及びX線検出部12は、被検体Eを中心とする円軌道に沿って回転可能に設けられている。
【0019】
高電圧発生部14は、X線発生部11に対して高電圧を印加する(以下、「電圧」とは、X線管球におけるアノード−カソード間の電圧を意味する)。X線発生部11は、当該高電圧に基づいてX線を発生させる。
【0020】
架台駆動部15は、回転体13を回転駆動させる。X線絞り部16は、所定幅のスリット(開口)を有し、スリットの幅を変えることで、X線発生部11から曝射されたX線のファン角(チャンネル方向の広がり角)とX線のコーン角(スライス方向の広がり角)とを調整する。絞り駆動部17は、X線発生部11で発生したX線が所定の形状となるようX線絞り部16を駆動させる。
【0021】
データ収集部18(DAS:Data Acquisition System)は、X線検出部12(各X線検出素子)からの検出データを収集する。また、データ収集部18は、収集した検出データ(電流信号)を電圧信号に変換し、この電圧信号を周期的に積分して増幅し、デジタル信号に変換する。そして、データ収集部18は、デジタル信号に変換された検出データをコンソール装置40に送信する。なお、CT透視を行う場合、データ収集部18で収集された検出データに基づき、再構成処理部41b(後述)が短時間で再構成処理を行い、リアルタイムにCT画像を取得することが望ましい。従って、データ収集部18は、検出データの収集レートを短くする。
【0022】
[寝台装置]
寝台装置30は、撮影対象の被検体Eを載置・移動させる装置である。寝台装置30は、寝台31と寝台駆動部32とを備えている。寝台31は、被検体Eを載置するための寝台天板33と、寝台天板33を支持する基台34とを備えている。寝台天板33は、寝台駆動部32によって被検体Eの体軸方向及び体軸方向に直交する方向に移動することが可能となっている。すなわち、寝台駆動部32は、被検体Eが載置された寝台天板33を、回転体13の開口部13aに対して挿抜させることができる。基台34は、寝台駆動部32によって寝台天板33を上下方向(被検体Eの体軸方向と直交する方向)に移動させることが可能となっている。
【0023】
[コンソール装置]
コンソール装置40は、X線CT装置1に対する操作入力に用いられる。また、コンソール装置40は、架台装置10によって収集された検出データから被検体Eの内部形態を表すCT画像データ(断層画像データやボリュームデータ)を再構成する機能等を有している。コンソール装置40は、処理部41と、設定部42と、特定部43と、表示制御部44と、記憶部45と、表示部46と、スキャン制御部47と、制御部48とを含んで構成されている。
【0024】
処理部41は、架台装置10(データ収集部18)から送信された検出データに対して各種処理を実行する。処理部41は、前処理部41aと、再構成処理部41bと、レンダリング処理部41cとを含んで構成されている。
【0025】
前処理部41aは、架台装置10(X線検出部12)で検出された検出データに対して対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを作成する。
【0026】
再構成処理部41bは、前処理部41aで作成された投影データに基づいて、CT画像データ(断層画像データや三次元のボリュームデータ)を作成する。断層画像データの再構成には、たとえば、2次元フーリエ変換法、コンボリューション・バックプロジェクション法等、任意の方法を採用することができる。ボリュームデータは、再構成された複数の断層画像データを補間処理することにより作成される。ボリュームデータの再構成には、たとえば、コーンビーム再構成法、マルチスライス再構成法、拡大再構成法等、任意の方法を採用することができる。上述のように多列のX線検出器を用いたボリュームスキャンにより、広範囲のボリュームデータを再構成することができる。また、CT透視を行う場合には、検出データの収集レートを短くしているため、再構成処理部41bによる再構成時間が短縮される。従って、スキャンに対応したリアルタイムのCT画像データを作成することができる。
【0027】
レンダリング処理部41cは、再構成処理部41bで作成された三次元のボリュームデータに対してレンダリング処理を行い、疑似三次元画像やMPR画像を作成する。「疑似三次元画像」とは、被検体Eの三次元的な構造を二次元的に表示させるための画像である。「MPR画像」とは、被検体Eの所望の断面を示す画像である。MPR画像としては、直交三断面であるアキシャル像、サジタル像、コロナル像や、任意断面であるオブリーク像等がある。
【0028】
本実施形態において、レンダリング処理部41cは、MPR画像作成部411cと、断面画像作成部412cとを含む。
【0029】
MPR画像作成部411cは、ボリュームデータに対する所定方向の断面を示すMPR画像を作成する。たとえば、320列(Z方向)のX線検出素子による検出データに基づいて、再構成処理部41bが一のボリュームデータを作成したとする。この場合、MPR画像作成部411cは、当該ボリュームデータに対してレンダリング処理を施し、所定方向の断面を示すMPR画像として複数のアキシャル像Ax(k=1〜320)を作成することができる。また、MPR画像作成部411cは、所定方向とは異なる方向の断面を示すMPR画像としてサジタル像Sg(k=1〜320)及びコロナル像Co(k=1〜320)を作成することも可能である。
【0030】
断面画像作成部412cは、MPR画像作成部411cで作成されたMPR画像について、その断面に直交し、且つ任意の方向に沿った断面の断面画像(オブリーク像)を作成する。断面画像作成部412cの詳細については後述する。
【0031】
設定部42は、MPR画像に基づいて、被検体Eに対する穿刺針の挿入経路を設定するために用いられる。設定される挿入経路は、被検体Eに対してどのようなルートで穿刺針を挿入していくかを示す経路である。
【0032】
設定部42の具体例として、ボリュームデータVから作成されたアキシャル像Ax(k=1〜320)に基づいて、挿入経路Lを設定する場合について述べる。図2A及び図2Bは、表示部46に表示されたアキシャル像Axを示す。なお、アキシャル像Axは三次元のボリュームデータVに基づく画像である。従って、アキシャル像Axに基づいて設定された挿入経路L(挿入経路の位置)は、三次元の座標値で特定することができる。
【0033】
まず、術者は、表示部46に表示された任意のアキシャル像(ここでは、アキシャル像Axとする)に対し、X線CT装置1等に設けられた入力デバイス(キーボード、マウス等)を用いて体表面における穿刺針の挿入位置Pを指定する(図2A参照)。
【0034】
次に、術者は、入力デバイスを用いて表示部46に表示されたアキシャル像を順番に切り換え、生検を行う対象部位(病変部等)が表示されているアキシャル像(ここでは、アキシャル像Ax250とする)を探す。画像の切換は、たとえば、表示部46の表示画面に表示されたスライドバーSL(図2A等参照)を入力デバイスによりスライドさせて行う。
【0035】
対象部位が表示されているアキシャル像Ax250が特定できると、術者は、入力デバイスを用いて対象部位の位置Sを指定する(図2B参照)。挿入位置P及び対象部位の位置Sは、ボリュームデータVにおける位置である。従って、挿入位置P及び対象部位の位置Sは、三次元座標で特定することができる。設定部42は、その2点の最短距離を算出し、その最短距離を結ぶ線分を挿入経路Lとして設定する(図2C参照。図2Cは、ボリュームデータVにおける挿入経路Lを示した模式図である)。挿入経路Lの三次元的な位置(座標値)は、記憶部45に記憶される。
【0036】
ここでは、挿入位置Pを先に指定する例について述べたが、対象部位の位置Sを先に指定することも可能である。すなわち、術者は、アキシャル像上で対象部位の位置Sを指定する。そして、術者は、穿刺を避けるべき部位(たとえば、血管、骨)の位置を確認しながら、アキシャル像を切り換え、挿入位置Pを指定することも可能である。この場合にも、設定部42は、指定された2点の最短距離を結ぶ線分を挿入経路Lとして設定する。
【0037】
なお、設定部42は、MPR画像に対してリージョングローイング法等の画像処理を施し、対象部位の位置Sを算出する。そして、設定部42は、MPR画像を含むボリュームデータにおいて、対象部位から最も近い体表面の位置を挿入位置Pとして算出し、位置Sと挿入位置Pの最短距離を結ぶ線分を挿入経路Lとして設定することも可能である。
【0038】
また、設定部42は、アキシャル像ではなく、サジタル像、コロナル像又はオブリーク像に基づいて挿入経路Lを設定することも可能である。
【0039】
更に、上述の具体例では、複数のアキシャル像Axに基づいて挿入経路Lを設定する例について述べたが、穿刺針を断面の平行方向から挿入する場合、一のMPR画像上で挿入経路Lを設定することも可能である。MPR画像は、ボリュームデータに基づく画像である。よって一のMPR画像であっても、設定部42は、指定された挿入位置P及び対象部位の位置Sを三次元の座標値として特定することができる。設定部42は、特定された2点の最短距離を結ぶ線分を挿入経路Lとして設定する。
【0040】
本実施形態において、挿入経路Lの設定に用いる所定方向の断面を示すMPR画像(一または複数のMPR画像)が「第1MPR画像」であり、当該所定方向とは異なる方向の断面を示すMPR画像(一または複数のMPR画像)が「第2MPR画像」である。
【0041】
特定部43は、MPR画像(第1MPR画像及び第2MPR画像)において、挿入経路に対応する画像領域を特定する。ここでは、一のアキシャル像Ax、サジタル像Sg及びコロナル像Coに対して、挿入経路Lに対応する画像領域を特定する例について述べる。図3は、表示部46の表示画面の一例を示す。アキシャル像Axは、表示画面46aに表示されている。サジタル像Sgは、表示画面46bに表示されている。コロナル像Coは、表示画面46cに表示されている。なお、アキシャル像Ax、サジタル像Sg、コロナル像Coと、挿入経路Lを設定する際に用いたアキシャル像Axとは、同じボリュームデータに基づくMPR画像であるとする。すなわち、ここでのアキシャル像Axは、アキシャル像Axのいずれかに該当する。
【0042】
上述の通り、挿入経路は、三次元の座標値で特定することができる。従って、特定部43は、アキシャル像Ax、サジタル像Sg、コロナル像Coそれぞれにおいて、挿入経路Lの座標値に対応する画像上の位置をそれぞれ画像領域LAx、LSg、LCoとして特定する。表示制御部44は、特定された画像領域を各画像の上に重畳表示させる(図3参照)。
【0043】
ここで、アキシャル像Axで特定された画像領域LAxは、設定された挿入経路LのXY方向の位置(座標値)のみを示している。同様に、サジタル像Sgで特定された画像領域LSgは、設定された挿入経路LのXZ方向の位置(座標値)のみを示している。コロナル像Coで特定された画像領域LCoは、設定された挿入経路LのYZ方向の位置(座標値)のみを示している。すなわち、各MPR画像に表示されている画像領域は、設定された挿入経路Lを疑似的に示すものである。
【0044】
そこで、断面画像作成部412cは、画像領域LAxが特定されたアキシャル像Ax、画像領域LSgが特定されたサジタル像Sg及び画像領域LCoが特定されたコロナル像Coのそれぞれについて、当該MPR画像の断面に直交し、且つ画像領域に沿う断面の断面画像を作成する。
【0045】
具体的には、断面画像作成部412cは、アキシャル像Axに直交し、且つアキシャル像Ax上の画像領域LAxに沿う断面の方向にボリュームデータをレンダリング処理することで、断面画像OAxを作成する。同様に、断面画像作成部412cは、サジタル像Sgに直交し、且つサジタル像Sg上の画像領域LSgに沿う断面の方向にボリュームデータをレンダリング処理することで、断面画像OSgを作成する。また、断面画像作成部412cは、コロナル像Coに直交し、且つコロナル像Co上の画像領域LCoに沿う断面の方向にボリュームデータをレンダリング処理することで、断面画像OCoを作成する。作成された断面画像は、設定された挿入経路Lを含む画像である。作成された断面画像及び断面画像の位置(3次元の座標値)は、記憶部45に記憶される。
【0046】
なお、たとえば、1枚のアキシャル像上で挿入経路Lが設定された場合、特定部43で特定されるアキシャル像における画像領域は、挿入経路L自体を示すものである。すなわち、当該アキシャル像は、挿入経路Lを含む画像として表示される。よって、断面画像作成部412cは、当該アキシャル像に対しては断面画像の作成を行わなくともよい。
【0047】
表示制御部44は、画像表示に関する各種制御を行う。たとえば、表示制御部44は、レンダリング処理部41cにより作成されたMPR画像等を表示部46に表示させる制御を行う(図3図4参照)。
【0048】
また、本実施形態において、表示制御部44は、術者の要求に応じて(入力デバイス等からの入力に基づいて)、断面画像作成部412cで作成された複数の断面画像を表示部46に切り換えて表示させる。図4は、表示部46(表示画面46d)に断面画像が切り換え表示される例を示す模式図である。
【0049】
上述のように断面画像作成部412cで断面画像OAx、断面画像OSg、断面画像OCoが作成されたとする。この場合、表示制御部44は、表示部46の表示画面46dに断面画像OAx、断面画像OSg、断面画像OCoを順次切り換えて表示させる(図4参照)。たとえば、入力デバイスの一例であるマウスで表示画面46d(或いは、表示部46に表示されたアイコン等)をクリックする。表示制御部44は、その入力信号に基づいて、断面画像を順次切り換えて表示させる。
【0050】
これらの断面画像は、設定された挿入経路Lを含む断面の画像である。従って、術者は、それらの断面画像を参照することにより、挿入経路Lを様々な断面(様々な方向)で確認することができる。つまり、本実施形態におけるX線CT装置1は、設定された挿入経路Lを術者にとって分かりやすく表示させることができる。
【0051】
ここでは、断面画像OAx、断面画像OSg、断面画像OCoの順番で切り換える例について説明したが、断面画像を切り換える順番は任意に設定することができる。或いは、切り換えは、順次でなくともよい。たとえば、切り換えが断面画像OAx、断面画像OSg、断面画像OCoの順番で設定されている場合に、断面画像OSgを表示させた後で、再度、断面画像OAxの確認を行うことがある。この場合、たとえば、入力デバイスの一例であるキーボードの「Back space」キーを押下する。表示制御部44は、キーボードからの入力信号に基づいて、断面画像OAxを再度、表示させる。
【0052】
また、本実施形態では、断面画像の切り換えについて述べたが、断面画像及びMPR画像の表示は任意の設定が可能である。たとえば、表示制御部44は、入力デバイスからの入力信号に基づいて、MPR画像と断面画像とを切り換え、いずれか一方の種類(MPR画像又は断面画像)のみを表示部46に表示させることも可能である。
【0053】
記憶部45は、RAMやROM等の半導体記憶装置によって構成される。記憶部45は、挿入経路の位置の他、検出データや投影データ、或いは再構成処理後のCT画像データ等を記憶する。
【0054】
表示部46は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等の任意の表示デバイスによって構成される。たとえば、表示部46には、ボリュームデータをレンダリング処理して得られるMPR画像が表示される。
【0055】
スキャン制御部47は、X線スキャンに関する各種動作を制御する。たとえば、スキャン制御部47は、X線発生部11に対して高電圧を印加させるよう高電圧発生部14を制御する。スキャン制御部47は、回転体13を回転駆動させるよう架台駆動部15を制御する。スキャン制御部47は、X線絞り部16を動作させるよう絞り駆動部17を制御する。スキャン制御部47は、寝台31を移動させるよう寝台駆動部32を制御する。
【0056】
制御部48は、架台装置10、寝台装置30およびコンソール装置40の動作を制御することによって、X線CT装置1の全体制御を行う。たとえば、制御部48は、スキャン制御部47を制御することで、架台装置10に対して予備スキャン及びメインスキャンを実行させ、検出データを収集させる。また、制御部48は、処理部41を制御することで、検出データに対する各種処理(前処理、再構成処理等)を行わせる。或いは、制御部48は、表示制御部44を制御することで、記憶部45に記憶されたCT画像データ等に基づく画像を表示部46に表示させる。
【0057】
<動作>
次に、図5を参照して、本実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。ここでは、CT透視を用いて生検を行う前に、挿入経路の計画を作成する場合の動作について述べる。
【0058】
生検を開始する前に、まずX線CT装置1は、被検体Eに対してX線スキャン(予備スキャン)を行い、ボリュームデータVを作成する。
【0059】
具体的には、X線発生部11は、被検体Eに対してX線を曝射する。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出し、その検出データを取得する(S10)。X線検出部12で検出された検出データは、データ収集部18で収集され、処理部41(前処理部41a)に送られる。
【0060】
前処理部41aは、S10で取得された検出データに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを作成する(S11)。作成された投影データは、制御部48の制御に基づき、再構成処理部41bに送られる。
【0061】
再構成処理部41bは、S11で作成された投影データに基づいて、複数の断層画像データを作成する。また、再構成処理部41bは、複数の断層画像データを補間処理することによりボリュームデータVを作成する(S12)。
【0062】
MPR画像作成部411cは、S12で作成されたボリュームデータVをレンダリング処理することによりMPR画像(アキシャル像、サジタル像、コロナル像)を作成する(S13)。
【0063】
S13で作成されたアキシャル像に基づいて、設定部42は、挿入経路Lを設定する(S14)。
【0064】
S14で設定された挿入経路Lに基づき、特定部43は、任意のアキシャル像Ax、サジタル像Sg、コロナル像Coそれぞれにおいて、挿入経路Lに対応する画像領域(画像領域LAx、LSg、LCo)を特定する(S15)。表示制御部44は、アキシャル像Axに対してS15で特定された画像領域LAxを重畳させる。表示制御部44は、サジタル像Sgに対してS15で特定された画像領域LSgを重畳させる。表示制御部44は、コロナル像Coに対してS15で特定された画像領域LCoを重畳させる。表示制御部44は、画像領域が重畳されたアキシャル像Ax、サジタル像Sg及びコロナル像Coを表示部46に表示させる(図4参照)。
【0065】
断面画像作成部412cは、S15で画像領域が特定されたMPR画像の断面に直交し、且つ特定された画像領域に沿う断面の断面画像(断面画像OAx、OSg、OCo)を作成する(S16)。
【0066】
表示制御部44は、S16で作成された断面画像のいずれか一つを表示部46の表示画面46dに表示させる。表示制御部44は、入力デバイス等からの指示入力を受けて、断面画像を切り換えて表示させる(S17。図4参照)。
【0067】
なお、処理部41、設定部42、特定部43、表示制御部44、スキャン制御部47及び制御部48は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの図示しない処理装置と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)や、又はHDD(Hard Disc Drive)などの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、処理部41の機能を実行するための処理プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、設定部42の機能を実行するための設定部処理用プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、特定部43の機能を実行するための特定部処理用プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、表示制御部44の機能を実行するための表示制御プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、スキャン制御部47の機能を実行するためのスキャン制御プログラムが記憶されている。また、記憶装置には、制御部48の機能を実行するための制御プログラムが記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶装置に記憶されている各プログラムを実行することで各部の機能を実行する。
【0068】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0069】
本実施形態のX線CT装置1は、被検体EをX線でスキャンした結果に基づき、ボリュームデータを作成する。X線CT装置1は、MPR画像作成部411cと、設定部42と、特定部43と、断面画像作成部412cと、表示制御部44とを有する。MPR画像作成部411cは、ボリュームデータに対する所定方向の断面を示す第1MPR画像(アキシャル像Ax)及び所定方向とは異なる方向の断面を示す第2MPR画像(サジタル像Sg、コロナル像Co)を作成する。設定部42は、第1MPR画像に基づいて、被検体Eに対する穿刺針の挿入経路を設定するために用いられる。特定部43は、第1MPR画像及び第2MPR画像それぞれにおいて、挿入経路に対応する画像領域(画像領域LAx、画像領域LSg、画像領域LCo)を特定する。断面画像作成部412cは、画像領域が特定された第1MPR画像及び第2MPR画像のそれぞれについて、当該MPR画像の断面に直交し、且つ画像領域に沿う断面の断面画像(断面画像OAx、断面画像OSg、断面画像OCo)を作成する。表示制御部44は、表示部46に断面画像を切り換えて表示させる。
【0070】
このように、特定部43は、設定された挿入経路に基づく画像領域を特定する。断面画像作成部412cは、画像領域が特定された第1MPR画像及び第2MPR画像のそれぞれについて、当該MPR画像の断面に直交し、且つ画像領域に沿う断面の断面画像を作成する。表示制御部44は、表示部46に断面画像を切り換えて表示させる。断面画像は、設定された挿入経路を含む断面の画像である。従って、術者は、断面画像を参照することにより、挿入経路を様々な方向(断面)から確認することができる。すなわち、本実施形態におけるX線CT装置1によれば、穿刺針の挿入経路を容易に確認できる画像を表示することが可能となる。
【0071】
(第2実施形態)
図6図10を参照して、第2実施形態に係るX線CT装置1の構成について説明する。本実施形態では、図形を表示部46に表示させ、断面画像の切り換えに応じて、断面画像の断面位置を図形に切り換えて表示させる構成について述べる。第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0072】
図6に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1は、作成部49を有する。
【0073】
作成部49は、ボリュームデータを模擬的に表現した直方体の図形(以下、「ビューイングボックス」という場合がある)を作成する。なお、作成部49により作成されるビューイングボックスと、表示制御部44により表示部46に表示されるビューイングボックスの疑似三次元画像は一対一に対応するので、本実施形態においてはこれらを同一視する場合がある。
【0074】
作成部49の具体例として、ボリュームデータVに基づいてビューイングボックスBを作成する場合について述べる。ここでは、ボリュームデータVを、各辺の長さが等しい直方体である立方体として示す。また、ビューイングボックスBとボリュームデータVは同じ座標系であるとする。まず、作成部49は、エッジ検出等の手法により、ボリュームデータVの輪郭部分Rを抽出する(図7A参照)。次に、作成部49は、抽出した輪郭部分Rを所定の縮尺で変換することにより、ビューイングボックスBを作成する(図7B参照)。縮尺は、たとえば、表示部46におけるビューイングボックスBの表示領域等に基づいて予め設定される値である。
【0075】
本実施形態では、作成部49は、ボリュームデータVの各辺の縮尺が同じになるようにビューイングボックスBを作成する。たとえば、縮尺が1/10と設定されている場合について述べる。図7Aに示すように、ボリュームデータV(輪郭部分R)の一辺の長さが100mmとすると、作成部49は、縮尺1/10に基づいて、一辺の長さが10mmの立方体形状のビューイングボックスBを作成する(図7B参照)。
【0076】
表示制御部44は、図形(ビューイングボックスB)を表示部46に表示させる。具体的には、表示制御部44は、作成部49により作成されたビューイングボックスBを疑似三次元画像として表示部46に表示する。本実施形態では、表示制御部44は、表示画面46a〜46d対し、ビューイングボックスBa〜Bdを表示させる(図8参照)。なお、ビューイングボックスBa〜Bdは、同じボリュームデータ(ボリュームデータV)に基づいて作成されたものである。
【0077】
表示制御部44は、ビューイングボックスに表示部46に表示されている画像の断面位置(表示されている画像がボリュームデータのどの断面に該当するか)を表示させる。
【0078】
たとえば、表示制御部44は、記憶部45に記憶された断面画像OAxの位置(座標値)について、ビューイングボックスBdを作成する際の縮尺と同じ縮尺で変換する。そして、表示制御部44は、変換された値に対応するビューイングボックスBd内の位置を断面位置OAx´として特定する。表示制御部44は、断面位置OAx´をビューイングボックスBd内に表示させる(図8参照)。同様の手法により、表示制御部44は、アキシャル像Axに対応する断面位置Ax´をビューイングボックスBaに表示させる。また、表示制御部44は、サジタル像Sgに対応する断面位置Sg´をビューイングボックスBbに表示させる。また、表示制御部44は、コロナル像Coに対応する断面位置Co´をビューイングボックスBcに表示させる。
【0079】
本実施形態において、表示制御部44は、上記と同様の手法により、記憶部45に記憶された断面画像OSg及び断面画像OCoの位置(座標値)それぞれについて、ビューイングボックスを作成する際の縮尺と同じ縮尺で変換する。そして、表示制御部44は、変換された値に対応するビューイングボックス内の位置を断面位置OSg´及び断面位置OCo´として特定する。特定された断面位置は、記憶部45に記憶される。
【0080】
ビューイングボックスBa〜BdとボリュームデータVとは同じ座標系である。従って、ビューイングボックスBa〜Bd内に表示される断面位置と、ボリュームデータVにおける画像の位置とは対応関係にある。つまり、術者は、表示部46に表示されたビューイングボックスを参照することで、表示された画像の位置を容易に把握することができる。
【0081】
更に、本実施形態において、表示制御部44は、表示部46に表示される断面画像の切り換えに応じて、当該断面画像の断面位置をビューイングボックスBdに切り換えて表示させる。図9は、表示部46(表示画面46d)に表示されたビューイングボックスBdに断面画像の断面位置が切り換え表示される例を示す模式図である。ここでは、表示画面46dに断面画像OAxが表示されているとする。また、断面画像を切り換える順番は、「断面画像OAx→断面画像OSg→断面画像OCo→断面画像OAx・・・・」であるとする。
【0082】
たとえば、入力デバイスの一例であるマウスでビューイングボックスBdをクリックする。表示制御部44は、その入力信号に基づいて、断面画像OSgを記憶部45から読み出し、断面画像OAxに換えて表示部46に表示させる。このとき、表示制御部44は、表示される断面画像OSgに対応する断面位置OSg´を記憶部45から読み出し、ビューイングボックスBdに表示させる。
【0083】
なお、表示制御部44は、断面画像に対応する断面位置、及び当該断面画像の元となったMPR画像の断面位置をビューイングボックスに表示させることも可能である。
【0084】
<動作>
次に、図10を参照して、本実施形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。ここでは、CT透視を用いて生検を行う前に、挿入経路の計画を作成する場合の動作について述べる。
【0085】
生検を開始する前に、まずX線CT装置1は、被検体Eに対してX線スキャン(予備スキャン)を行い、ボリュームデータVを作成する。
【0086】
具体的には、X線発生部11は、被検体Eに対してX線を曝射する。X線検出部12は、被検体Eを透過したX線を検出し、その検出データを取得する(S20)。
【0087】
前処理部41aは、S20で取得された検出データに対して、対数変換処理、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを作成する(S21)。
【0088】
再構成処理部41bは、S21で作成された投影データに基づいて、複数の断層画像データを作成する。また、再構成処理部41bは、複数の断層画像データを補間処理することによりボリュームデータVを作成する(S22)。
【0089】
MPR画像作成部411cは、S22で作成されたボリュームデータVをレンダリング処理することによりMPR画像(アキシャル像、サジタル像、コロナル像)を作成する(S23)。
【0090】
S23で作成されたアキシャル像に基づいて、設定部42は、挿入経路Lを設定する(S24)。
【0091】
S24で設定された挿入経路Lに基づき、特定部43は、任意のアキシャル像Ax、サジタル像Sg、コロナル像Coそれぞれにおいて、挿入経路Lに対応する画像領域(画像領域LAx、LSg、LCo)を特定する(S25)。
【0092】
断面画像作成部412cは、S25で画像領域が特定されたMPR画像の断面に直交し、且つ特定された画像領域に沿う断面の断面画像(断面画像OAx、OSg、OCo)を作成する(S26)。
【0093】
作成部49は、S22で作成されたボリュームデータVに基づいて、ビューイングボックス(ビューイングボックスBa〜Bd)を作成する(S27)。
【0094】
表示制御部44は、S26で作成された断面画像(たとえば、断面画像OAx)を表示部46の表示画面46dに表示させる。また、表示制御部44は、表示された断面画像に対応する断面位置をビューイングボックスBdに表示させる(S28)。たとえば、表示制御部44は、断面画像OAxに対応する断面位置OAx´をビューイングボックスBdに表示させる。
【0095】
表示制御部44は、入力デバイス等からの指示入力を受けて、断面画像を切り換えて表示させる(S29)。たとえば、表示制御部44は、断面画像OAxから断面画像OSgに切り換えて表示させる。
【0096】
表示制御部44は、断面画像の切り換えに応じて、ビューイングボックスBd内の断面位置を対応する断面位置に切り換えて表示させる(S30)。たとえば、表示制御部44は、断面位置OAx´から断面位置OSg´に切り換えて表示させる。
【0097】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0098】
本実施形態のX線CT装置1における表示制御部44は、ボリュームデータを模擬的に表現した直方体の図形(ビューイングボックス)を表示部46に表示させ、且つ断面画像の切り換えに応じて、当該断面画像の断面位置を図形に切り換えて表示させる。
【0099】
このように、ビューイングボックスに断面画像の断面位置を表示させ、断面画像の切り換えに応じて、断面位置を切り換えることで、現在表示されている断面画像がボリュームデータにおけるどの方向の断面であるかを容易に把握することができる。すなわち、本実施形態におけるX線CT装置1によれば、穿刺針の挿入経路を容易に確認できる画像を表示でき、且つその画像の断面位置を容易に把握することが可能となる。
【0100】
(変形例1)
表示制御部44は、断面画像と断面画像の元となったMPR画像とを関連付けて表示させることも可能である。この場合、断面画像とその元となったMPR画像の対応関係を容易に把握することができる。
【0101】
たとえば、表示画面46dに断面画像OAxが表示されている場合、表示制御部44は、表示画面46aの枠(或いは表示領域)と表示画面46dの枠(或いは表示領域)とを同じ色で表示させることができる(図11参照。図11では、同じ色で表示させる表示画面46aの枠と表示画面46dの枠とを太線で示している)。
【0102】
或いは、表示制御部44は、ビューイングボックスを表示部46に表示させ、ビューイングボックスにおける断面画像の断面位置と、当該断面画像の元となったMPR画像が表示される表示領域の少なくとも一部とを同じ色で表示させることも可能である。たとえば、ビューイングボックスBdにおける断面位置OAx´とアキシャル像Axが表示された表示画面46aの枠とを同じ色で表示させることも可能である。
【0103】
逆に、表示制御部44は、ビューイングボックスを表示部46に表示させ、断面画像が表示される表示領域の少なくとも一部と、ビューイングボックスに表示される当該断面画像の元となったMPR画像の断面位置とを同じ色で表示させることも可能である。たとえば、アキシャル像Axに基づく断面画像OAxが表示された表示画面46dの枠と、ビューイングボックスBaにおけるアキシャル像Axの断面位置Ax´とを同じ色で表示することも可能である。
【0104】
(変形例2)
また、記憶部45は、作成された断面画像の断面位置(座標値)を記憶しておく。そして、異なるタイミングで得られたボリュームデータに対し、断面画像作成部412cは、記憶された断面位置に基づく断面画像を作成することができる。すなわち、断面画像作成部412cは、異なるタイミングで得られたボリュームデータそれぞれにおいて、常に同じ断面位置で断面画像を作成することが可能である。なお、この場合、ボリュームデータ同士は、その元となる断層画像データの枚数や画像のピクセル数は等しいものとする。また、撮影条件(撮影位置、回転体13のローテーションスピード等)も等しいものとする。つまり、ボリュームデータは同じ座標体系にあるものとする。
【0105】
ここで、たとえば、あるボリュームデータ(ボリュームデータに基づくMPR画像)に基づいて設定された挿入経路Lに沿って穿刺針が進んでいない場合、異なるタイミングで得られたボリュームデータに基づく断面画像には、穿刺針が表示されない。従って、本変形例の構成によれば、術者は穿刺針のずれ(計画経路からのずれ)を容易に把握することができる。
【0106】
<実施形態に共通の効果>
以上述べた少なくともひとつの実施形態のX線CT装置によれば、表示部に断面画像を切り換えて表示させることができる。従って、術者は、断面画像を参照することにより、挿入経路を様々な方向(断面)から確認することができる。すなわち、実施形態のX線CT装置によれば、穿刺針の挿入経路を容易に確認できる画像を表示することが可能となる。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0108】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線発生部
12 X線検出部
13 回転体
13a 開口部
14 高電圧発生部
15 架台駆動部
16 X線絞り部
17 絞り駆動部
18 データ収集部
30 寝台装置
32 寝台駆動部
33 寝台天板
34 基台
40 コンソール装置
41 処理部
41a 前処理部
41b 再構成処理部
41c レンダリング処理部
411c MPR画像作成部
412c 断面画像作成部
42 設定部
43 特定部
44 表示制御部
45 記憶部
46 表示部
47 スキャン制御部
48 制御部
E 被検体
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11