(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこうした中継コネクタでは、挿抜方向の振動が繰り返し加えられることで、端子同士の摺動部分に摩耗が生じる場合がある。特に、端子の表面には導電性を高めるためにメッキ加工が施されており、接続対象物との摺動によってメッキがはがれる場合もある。こうした事態は中継コネクタと接続対象物との接続信頼性を低下させるおそれがある。
【0005】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明であり、その目的は、端子と接続対象物の挿抜方向に沿う振動等が生じる場合であっても高い接続信頼性を維持する中継コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0007】
すなわち、第1の接続対象物が挿入される第1のハウジングと、第2の接続対象物が挿入される第2のハウジングと、前記第1のハウジングに保持されて第1の接続対象物と導通接触する第1の接触部と、前記第2のハウジングに保持されて第2の接続対象物と導通接触する第2の接触部とを有する端子とを備える中継コネクタにおいて、前記端子は、前記第1のハウジングと第2のハウジングとを弾性的に支持し、第1の接続対象物及び第2の接続対象物の挿入方向又は抜去方向の少なくとも何れか一方に弾性変形する可動部を有しており、前記第1のハウジングと第2のハウジングの間には第1の可動間隙が設けられており、前記可動部が弾性変形することで、第1のハウジング又は第2のハウジングが第1の可動間隙の中で変位することを特徴とする中継コネクタを提供することができる。
【0008】
第1のハウジングと第2のハウジングとの間に可動間隙を設け、端子に可動部を設けることで、振動が生じたり接続対象物が第1のハウジングや第2のハウジングに対して変位したりした場合であっても、可動部が弾性変形することでそうした変位を吸収することができる。よって、端子の第1の接触部と第1の接続対象物とを正規の接触位置で導通接触させた状態を容易に維持することができるとともに、第2の接触部と第2の接続対象物とを正規の接触位置で導通接触させた状態を容易に維持することもできる。よって、位置ずれが生じることによりめっきが剥がれるといった事態を生じ難くすることができる。
【0009】
前記本発明の第1のハウジングが、第2のハウジングに係止する係止部を有する係止片を有しており、前記第2のハウジングが、前記係止部に係止する被係止部を有しており前記係止部を挿入係止する係止穴を有するものとすることができる。
【0010】
係止穴に第1のハウジングの係止部が挿入されて係止することで、係止片を係止穴から容易には抜け難くすることができる。よって、係止部が被係止部に単に引っ掛かるように係止する場合と比較して、係止部と被係止部との係止状態を維持しやすくすることができる。なお、こうした係止穴としては、貫通孔とすることもできるが、貫通しない凹状の構造として設けることもできる。
【0011】
前記本発明の第2のハウジングが、前記接続対象物の挿抜方向に沿って伸長する突出部を有しており、前記第1のハウジングが前記突出部の外周面に沿って配置されている壁部を有しており、該壁部と前記突出部との間には、少なくとも前記接続対象物の挿抜方向に対する交差方向に沿う第2の可動間隙が設けられているものとすることができる。
【0012】
これにより、突出部が可動間隙の内側で前記挿抜方向に対する交差方向に沿って変位することができる。よって、可動部がそうした交差方向に弾性変形する際に第1のハウジングが第2のハウジングに対して同じ方向に変位することができるため、挿抜方向以外の振動や変位を吸収可能な中継コネクタとすることができる。
【0013】
前記本発明の突出部と前記被係止部が、前記接続対象物の挿抜方向に沿って並列に配置されているものとすることができる。
【0014】
これにより、接続対象物の挿抜方向に対する交差方向で中継コネクタ全体を小型化することができる。
【0015】
前記本発明の可動部は、前記挿入方向又は抜去方向の少なくとも何れか一方に弾性変形する荷重が、前記第1の接触部と前記第1の接続対象物の少なくとも何れか一方が正規の接触位置から挿抜方向に位置ずれする荷重、又は前記第2の接触部と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が正規の接触位置から前記挿抜方向に位置ずれする荷重の何れか一方より小さいものとすることができる。
【0016】
また、前記本発明の可動部は、前記挿入方向又は抜去方向の少なくとも何れか一方に弾性変形する荷重が、前記第1の接触部と前記第1の接続対象物の少なくとも何れか一方が正規の接触位置から挿抜方向に位置ずれする荷重、及び前記第2の接触部と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が正規の接触位置から前記挿抜方向に位置ずれする荷重より小さいものとすることができる。
【0017】
可動部について、前記挿入方向又は抜去方向の少なくとも何れか一方に弾性変形する荷重が、前記第1の接触部と前記第1の接続対象物の少なくとも何れか一方が正規の接触位置から挿抜方向に位置ずれする荷重よりも小さいものとすることで、第1の接触部が第1の接続対象物に対して前記挿抜方向に沿って位置ずれする前に可動部が弾性変形することができる。よって挿抜方向の振動等が生じても第1の接触部と第1の接続対象物との位置ずれの発生を抑制し、正規の接触位置で接触し続けることができる。
【0018】
また、可動部について、前記挿入方向又は抜去方向の少なくとも何れか一方に弾性変形する荷重が、前記第2の接触部と前記第2の接続対象物の少なくとも何れか一方が正規の接触位置から挿抜方向に位置ずれする荷重より小さい場合も同様に、第2の接触部が第2の接続対象物に対して前記挿抜方向に沿って位置ずれする前に可動部が弾性変形することができる。よって挿抜方向の振動等が生じても第2の接触部と第2の接続対象物との位置ずれを抑制し、正規の接触位置で接触し続けることができる。
【0019】
第1の接続対象物と第1の接触部の位置ずれと、第2の接続対象物と第2の接触部の位置ずれの両方を抑制することで、第1の接続対象物と第2の接続対象物とを安定して導通接続する中継コネクタとすることができる。
【0020】
前記本発明の壁部が断面凹状でなる内周面を有しており、前記突出部が前記壁部の内周面の内側に配置されており、前記壁部の内周面と前記突出部の外周面とが一定の間隔を維持して配置されることで前記第2の可動間隙が設けられているものとすることができる。
【0021】
本発明では、断面凹状でなる内周面を有する壁部の内側に突出部が配置される。換言すると壁部の内周面は、一定の間隔をおいた状態で外周面に沿って突出部を覆うように設けられる。そのため、壁部の内周面と突出部の外周面との間には、一方向だけではなく放射方向に沿う間隔が形成される。こうした間隔は、変位前の状態である初期位置にある突出部から壁部の内周面に向かう何れの方向についても一定の長さで設けられる。そのため、突出部が初期位置から内周面に近接する方向に向けて変位する場合には、前記放射方向に沿う何れの方向についても同じ距離だけ変位することができる。よって、突出部が何れかの方向にだけ長く変位するといった事態が生じないため、可動部が何れかの方向に向けて過剰に弾性変形して負荷が掛かり、塑性変形したり破断したりするといった事態を生じ難くすることができる。
【0022】
前記本発明の壁部が断面略円弧状又は断面略円形状でなる内周面を有しており、前記突出部が、断面略円弧状又は断面略円形状でなる外周面を有し、前記壁部の内周面の内側に配置されており、前記壁部の内周面と前記突出部の外周面とが一定の間隔を維持して配置されることで前記第2の可動間隙が設けられているものとすることができる。
【0023】
壁部の内周面の内側に突出部が配置されるため、壁部の内周面と突出部の外周面との間には一方向だけではなく放射方向に沿う間隔が形成される。ここで仮に壁部が複数の平板構造と、平板構造同士の間に形成される角部とを有する箱型であって、その内部に突出部が配置されるものとする。この場合、突出部の初期位置と平板構造との間隔よりも、突出部の初期位置と角部の内角側との間隔の方が長くなる。そのため、平板構造側よりも角部の内角側へ向けて変位する距離の方が長くなり、突出部がこうした変位をする際に可動部により大きな負荷が掛かってしまう。
【0024】
これに対して本発明の壁部の内周面と突出部の外周面は、共に断面略円弧状又は断面略円形状でなる。よって、前記のような角部を有さないため、容易に壁部の内周面と突出部の外周面の全面に渡って一定の間隔を形成することができる。こうすることで、突出部は壁部の内周面に近接する何れの方向にも同じ距離だけ変位することができるため、突出部が何れかの方向にだけ長く変位するといった事態が生じない。よって、可動部が何れかの方向に向けて過剰に弾性変形して負荷が掛かり、塑性変形したり破断したりするといった事態を生じ難くすることができる。なお、特にこうした作用は、突出部の外周面の断面半径が壁部の内周面の断面半径よりも小さく、互いに同心円状に配置されることでより確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、挿抜方向の振動等が生じても、接点部が摩耗することなく接続対象物との導通接触を維持できる中継コネクタとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の中継コネクタの好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本明細書中では、端子4の配列方向に沿う幅方向をX方向、中継コネクタ1の前後方向をY方向、中継コネクタ1の高さ方向をZ方向として説明する。高さ方向Zにおいて、第1のハウジング2の側を「上側」とし、第2のハウジング3の側を「下側」として明細書中に記載する。また、前後方向Yにおいて、端子4の可動部4cが露出する窓部2a1が形成される側を「前側」とし、治具挿入孔2b1が形成される側を「後側」として明細書中に記載する。しかし、これらの記載によって中継コネクタ1の使用方法を限定するものではない。
【0028】
実施形態〔図1〜図22〕:
本実施形態の中継コネクタ1は、
図1〜
図7で示すように第1のハウジング2と、第2のハウジング3と、端子4とを備える。端子4はピン状端子である第1の接続対象物5及び第2の接続対象物6と導通接触することで、それらを導通接続する。また、特に本実施形態では第1の接続対象物5はハウジング5Aに保持されており、第2の接続対象物6はハウジング6Aに保持されている。
【0029】
〔第1のハウジング〕
第1のハウジング2は、絶縁性樹脂の成形体であり、
図8,
図9で示すように略楕円柱形状でなる。また第1のハウジング2は前壁部2aと、後壁部2bと、それらを連結する側壁部2cと、天壁部2dとを有する。第1のハウジング2の内部には、端子4と第1の接続対象物5とが導通接触する嵌合室2eと、端子4の可動部4cを収容する可動部収容室2hとを有する。
【0030】
天壁部2dは、嵌合室2eに第1の接続対象物5を挿入する挿入口2d1を有する。
【0031】
前壁部2aは、幅方向Xに沿う板面部を有する。また、前壁部2aは、幅方向Xに沿って設けられる複数の窓部2a1を有する。窓部2a1からは、後述する端子4の可動部4cが露出している。可動部4cの前端側は窓部2a1の内側に入り込んでいるため、第1のハウジング2が可動部4cを全て内部の可動部収容室2hに収容する場合と比較して、第1のハウジング2を前後方向Yで小型化することができる(
図18参照)。また、導通時に可動部4cが発熱しても、こうした窓部2a1によって放熱することができる。
【0032】
後壁部2bは、幅方向Xに沿う板面を有しており、前壁部2aとは可動部収容室2hを介して対向配置されている。この後壁部2bには、幅方向Xに沿う複数の治具挿入孔2b1が形成されている。隣接し合う治具挿入孔2b1の間には、板片部2b2が形成されている。板片部2b2は幅方向Xで可動部4cと同じ位置に配置されており、背面視で可動部4cが板片部2b2と重なって隠れるため可動部4cを視認することができない(
図3,
図15参照)。
【0033】
側壁部2cは、第1のハウジング2の幅方向Xにおける両端側に1つずつ設けられており、前壁部2aと後壁部2bとを連結する。また、さらに側壁部2cの幅方向Xにおける末端側には、外向きに突出する断面略半円形状でなる壁部2gが設けられる。側壁部2cと壁部2gとの間には、内部に後述する第2のハウジング3の突出部3cを収容する可動室2fが形成されている。
【0034】
側壁部2cの幅方向Xにおける両端側であって、可動室2fの下側には、下方に向けて伸長する係止片2c1が形成される。係止片2c1の下端には、幅方向Xにおける外側に向けて突出する係止部2c2が形成される。また、側壁部2cには、第1の接続対象物5のハウジング5Aに固定される固定部2c4が設けられている。
【0035】
〔第2のハウジング〕
第2のハウジング3は、第1のハウジング2と同様に絶縁性樹脂の成形体でなる。また、第2のハウジング3は
図10,
図11で示すように第1のハウジング2と同様に楕円柱形状でなり、
図1で示すように幅方向Xで第1のハウジング2よりも大きく形成されている。
【0036】
第2のハウジング3は、複数の嵌合室3aと、挿入口3bと、突出部3cと、係止穴3dとを有する。
【0037】
嵌合室3aには端子4の第2の接触部4bが挿入される。嵌合室3aは第2のハウジング3の天壁部3eに、高さ方向Zに沿って設けられる凹状構造として形成される。また、第2のハウジング3の下端には、嵌合室3aと連通する第2の接続対象物6の挿入口3bが形成されている。
【0038】
突出部3cは、天壁部3eの幅方向Xにおける両端側には、上側に向けて柱状に突出して形成されている。また、突出部3cのX−Y平面に沿う断面は半円形状でなり、可動室2fに挿入された状態で、可動室2fを形成する壁部2gの内周面2g1と変位前の初期位置R1にある突出部3cとの間にはX方向及びY方向に沿って半円形状に設けられる「第2の可動間隙」としての可動間隙S1が形成される。
【0039】
係止穴3dは、突出部3cと隣接する位置に開口し、第2のハウジング3を高さ方向Zに沿って貫通する貫通孔でなる。係止穴3dの上端側の孔縁には、係止穴3dの内側に向けて突出する被係止部3d1が形成されている。また、この被係止部3d1は突出部3cの真下に設けられているため、中継コネクタ1を幅方向Xや前後方向Yで小型化することができる。
【0040】
〔端子〕
端子4は、
図12で示すように導電性金属板を折り曲げ加工して形成されている。第1のハウジング2に保持されて第1の接続対象物5と導通接触する第1の接触部4aと、第2のハウジング3に保持されて第2の接続対象物6と導通接触する第2の接触部4bと、第1の接触部4aと第2の接触部4bの間に配置される可動部4cとを有する。
【0041】
第1の接触部4aは、基端部4a1と、弾性腕4a2と、弾性腕4a2によって弾性支持される第1の接点部4a3とを有する。
【0042】
基端部4a1は、断面コ字状に形成されており、第1のハウジング2の嵌合室2eの内壁(図示略)に噛み込む突部4a4を有する。
【0043】
弾性腕4a2は、基端部4a1の上縁において、前後方向Yにおける両端側から伸長する。また、弾性腕4a2は先端側で弾性変形しやすいように、基端側から先端側に向けて先細り形状で形成される。
【0044】
各弾性腕4a2の先端側には第1の接点部4a3が1つずつ設けられており、第1の接点部4a3同士が第1の接続対象物5を前後方向Yにおける両側から挟み込むように押圧接触する。
【0045】
可動部4cは、基端部4a1の下端から下側に向けて伸長する。可動部4cは第1の伸長部4c1と、第1の屈曲部4c2と、略コ字状のばね部4c3と、第2の屈曲部4c4と、第2の伸長部4c5とを有する。略コ字状のばね部4c3は短手方向X、長手方向Y、高さ方向Zの何れの方向にも弾性変形することができる。
【0046】
第2の接触部4bは可動部4cが有する第2の伸長部4c5の下端に繋がり、第1の接触部4aとは同一形状でなる。また、端子4は全体として、可動部4cの中心を中心とする対称形状にて形成されている。こうした第2の接触部4bは、基端部4b1と、弾性腕4b2と、弾性腕4b2によって弾性支持される第2の接点部4b3とを有する。
【0047】
基端部4b1は、第1の接触部4aの基端部4a1と同様に断面コ字状に形成されており、第2のハウジング3の嵌合室3aの内壁(図示略)に噛み込む突部4b4を有する。
【0048】
弾性腕4b2は、基端部4b1の下縁において、前後方向Yにおける両端側から伸長する。また、弾性腕4b2は第1の接触部4aの弾性腕4a2と同様に、先端側で弾性変形しやすいように、基端側から先端側に向けて先細り形状で形成される。
【0049】
各弾性腕4b2の先端側には第2の接点部4b3が1つずつ設けられており、第2の接点部4b3同士が第2の接続対象物6を前後方向Yに沿う両側から挟み込むように押圧接触する。
【0050】
〔組立方法の説明〕
まず、端子4を第2のハウジング3に固定する(
図13参照)。具体的には端子4の基端部4b1が有する当接縁4b5を押圧することで、第2のハウジング3の嵌合室3aの内部に第2の接触部4bを押し込む。突部4b4を嵌合室3aの内壁に噛み込ませることで、端子4の第2のハウジング3への固定作業が完了する。
【0051】
続けて第1のハウジング2に端子4を固定する(
図13,
図14参照)。その際には、まず、幅方向Xにおいて各窓部2a1と同じ位置に端子4の可動部4cが来るように位置決めして、可動部収容室2hの内部に第1の接触部4aを挿入する。そして、治具挿入孔2b1から治具7を可動部収容室2hに挿入し、基端部4a1の当接縁4a5に当接させる。その後、治具7によって各端子4の第1の接触部4aを第1のハウジング2の嵌合室2eの内部に向けて押し込む。基端部4a1に設けられる突部4a4が嵌合室2eの内壁(図示略)に噛み込むことで、第1の接触部4aが第1のハウジング2に対して固定される。こうした治具7を用いることで、弾性変形しやすい可動部4cを押圧することなく、端子4を第1のハウジング2に対して容易に固定することができる。
【0052】
なお、治具挿入孔2b1は幅方向Xにおいて隣接し合う端子4の可動部4c,4cの間の位置に設けられている。また、1つの治具挿入孔2b1からは2つの端子4の基端部4a1の当接縁4a5が露出するため、1つの治具7によって2つの端子4を同時に第1のハウジング2に固定する作業を行うことができる(
図15参照)。よって、1つの治具7が端子4を1つずつ押圧して第1のハウジング2に固定する場合と比較して、作業効率を高めることができる。
【0053】
その後、第1のハウジング2と第2のハウジング3とを互いに係止する。すなわち、第1のハウジング2の係止片2c1を第2のハウジング3の係止穴3dに挿入し、係止穴3dの内部で係止部2c2を被係止部3d1に係止する。こうして中継コネクタ1の組み立てが完了する(
図15参照)。こうして係止部2c2を係止穴3dの内部で被係止部3d1に係止させることで、係止部2c2が被係止部3d1からより脱離し難くなり、係止部2c2と被係止部3d1との係止状態を維持しやすくすることができる。なお、端子4の第1のハウジング2への固定は、第1のハウジング2と第2のハウジング3とを互いに係止した後で行っても良い。
【0054】
〔使用方法の説明〕
図18で示すように端子4の第1の接点部4a3と第1の接続対象物5とを正規の接触位置P1で導通接触させ、第2の接点部4b3と第2の接続対象物6とを正規の接触位置P2で導通接触させる。その際、第1のハウジング2が有する固定部2c4が第1の接続対象物5のハウジング5Aに対して噛み込むことで、第1のハウジング2が第1の接続対象物5に対して保持される。こうして第1の接続対象物5と第2の接続対象物6とが端子4を介して導通接続する。
【0055】
〔Z方向の可動について〕
可動部4cにおいて、第1の接続対象物5の挿抜方向(本実施形態では高さ方向Z)に弾性変形する荷重は、第1の接点部4a3と第1の接続対象物5が正規の接触位置P1から挿抜方向に位置ずれする荷重より小さく設定されている。また、同様に可動部4cにおいて、第2の接続対象物6の挿抜方向(やはり本実施形態では高さ方向Z)に弾性変形する荷重は、第2の接点部4b3と第2の接続対象物6が正規の接触位置P2から挿抜方向に位置ずれする荷重より小さく設定されている。そのため、2つの接続対象物5,6と導通接触している状態の中継コネクタ1に振動が加えられたり、第1の接続対象物5や第2の接続対象物6が端子4に対して挿抜方向に沿って変位したりすると、可動部4cが弾性変形することで、そうした振動や変位を吸収することができる。こうして第1の接点部4a3が第1の接続対象物5と正規の接触位置P1で導通接触した状態を維持することができるとともに、第2の接点部4b3が第2の接続対象物6と正規の接触位置P2での導通接触を維持することもできる(
図18,
図19参照)。
【0056】
また、振動等が生じておらず可動部4cに荷重がかけられていない状態で、第1のハウジング2と第2のハウジング3との間には、高さ方向Zに沿う「第1の可動間隙」としての可動間隙S2が形成されている(
図14,
図20参照)。そのため、可動部4cが高さ方向Zで収縮するように弾性変形すると、第1の接触部4aが固定されている第1のハウジング2や第2の接触部4bが固定されている第2のハウジング3は、その可動間隙S2の内部で互いに相対変位する。よって、そうした高さ方向Zに沿う振動等を吸収し、端子4と接続対象物5,6との正規の接触位置P1,P2での導通接触を維持することができる。また、こうして可動間隙S2が狭くなる方向に第1のハウジング2と第2のハウジング3とが相対変位した状態で、第1のハウジング2の係止片2c1が有する係止部2c2と、第2のハウジング3の被係止部3d1との間には高さ方向Zに沿う可動間隙S3が形成される(
図21参照)。
【0057】
〔X方向及びY方向の可動について〕
突出部3cは初期位置R1に配置されている状態で、
図22(a)で示すように、第1のハウジング2の壁部2gの内周面2g1との間に幅方向Xで長さM1、前後方向Yで長さM2の間隔をおいて可動室2fの内部に配置される。こうした位置決めは、端子4の可動部4cに負荷が掛かっておらず弾性変形していない位置、又は可動部4cの弾性力や復元力が最も小さくなる位置で第1のハウジング2に対する第2のハウジング3の相対的な位置関係が決まることによってなされる。
【0058】
また、第2のハウジング3の突出部3cの外周面3c3は断面略半円形状でなる。そして、壁部2gにおいて突出部3cの外周面3c3と対向配置される内周面2g1も断面略半円形状でなる。上述のように、突出部3cの外周面3c3と、壁部2gの内周面2g1の間には、幅方向Xに沿って突出する略半円形状の可動間隙S1が形成される(
図16参照)。突出部3cが可動間隙S1の内部をX−Y平面上を変位することで、第1のハウジング2が第2のハウジング3に対して同様にX−Y平面上を変位することができる。
【0059】
ところで突出部3cは、初期位置R1から壁部2gの内周面2g1に近接する方向に、X−Y平面上のどの方向についても変位距離の上限が等しくなるようにして、それ以上の変位を制限することが好ましい。これは、X−Y平面上の何れかの方向についてのみ突出部3cが過剰に変位可能であるとすると、端子4の可動部4cが過剰に弾性変形して、塑性変形したり破断したりするといった事態を生じるおそれがあるためである。
【0060】
以下、こうした突出部3cの過剰な変位を制限する方法について、具体例を挙げて詳細に説明する。仮に第1のハウジング2が、断面矩形でなる内周面2g1’を有する壁部2g’を有するものとする(
図22(b)参照)。この場合、壁部2g’が有する幅方向Xに沿う横壁部2g3’と、前後方向Yに沿う縦壁部2g2’の長さを調整することで、幅方向Xに沿う変位可能長さM1’と前後方向Yに沿う突出部3cの変位可能長さM2’とを同じ長さにすることは可能である。しかし、幅方向Xと前後方向Yの間の方向への突出部3cの変位可能長さは、幅方向Xに沿う長さM1’及び前後方向Yに沿う長さM2’よりも長くなる。
【0061】
特に、
図22(b)で示す長さM3’は、壁部2g’の内周面2g1’の角部2g4’方向への突出部3cの変位可能長さを示すが、この長さM3’は長さM1’,M2’よりも顕著に長くなる(
図22(b)で示す突出部3cは断面略半円形状でなるため、突出部3cの変位は横壁部2g3’と縦壁部2g2’によって規制されて角部2g4’には接触しない。点線で示す変位位置R2が突出部3cの最大変位位置である)。よって、突出部3cがこうした角部2g4’の方向へ変位する際は、幅方向X及び前後方向Yに沿って変位する際と比較して、端子4の可動部4cがより大きく弾性変形するため、可動部4cに過剰な負荷が掛かってしまう。
【0062】
これに対して本実施形態の第2のハウジング3の突出部3cの外周面3c3は上述のように断面略半円形状でなり、壁部2gの内周面2g1は断面略半円形状でなる。さらに、突出部3cの外周面3c3の断面半径は壁部2gの内周面2g1の断面半径よりも小さく形成され、突出部3cと壁部2gの間には可動間隙S1が設けられている。こうした初期位置R1にある突出部3cの外周面3c3と壁部2gの内周面2g1は、断面が略同心円状になるように形成されている。そのため、壁部2gの内周面2g1と、突出部の初期位置R1にある突出部3cの外周面3d1との距離は、幅方向X、前後方向Y及び幅方向Xと前後方向Yの間の方向を含む、突出部3cを中心とする放射方向の何れの方向についても等しい。よって、突出部3cは可動間隙S1の内部を、こうした幅方向X、前後方向Y及び幅方向Xと前後方向Yの間の何れの方向についても等距離だけ変位できる。これにより、突出部3cが何れかの方向にだけ過剰に変位するといった事態が生じないため、可動部4cが過度に弾性変形して負荷が掛かり、塑性変形したり破断したりといった事態を生じ難くすることができる。
【0063】
なお、突出部3cの幅方向Xにおける端部3c1と第1のハウジング2の可動室2fを形成する壁部2gの内周面2g1の間隙長さL2(
図16,
図20参照)は、係止部2c2の幅方向Xにおける突出端2c3と第2のハウジング3の係止穴3dの内壁3d2の間隙長さL1(
図17,
図20参照)よりも短く設定されている。よって、突出部3cが可動室2fの内部で幅方向Xで変位した際に、係止部2c2が係止穴3dの内壁3d2に接触する前に突出部3cが可動室2fを形成する壁部2gの内周面2g1に接触する。
【0064】
また、同様に突出部3cの前後方向Yにおける端部3c2と第1のハウジング2の可動室2fを形成する壁部2gの内周面2g1の間隙長さL4(
図16参照)は、係止部2c2の前後方向Yにおける端部と第2のハウジング3の係止穴3dの内壁3d2の間隙長さL3(
図17参照)よりも短く設定されている。こうすることで、突出部3cが可動室2fの内部で前後方向Yで変位した際に、係止部2c2が係止穴3dの内壁3d2に接触する前に突出部3cが可動室2fを形成する壁部2gの内周面2g1に接触する。
【0065】
仮に係止片2c1によって高さ方向Zだけではなく、幅方向X、前後方向Yの可動をも規制することとすると、係止片2c1に過剰な負荷が掛かって損傷を生じるおそれがある。しかし、本実施形態では、以上のように、第1のハウジング2の第2のハウジング3に対する可動域を突出部3cによって規制することができる。よって、係止片2c1に係る負荷を軽減することができるため、そうした係止片2c1の損傷等の発生を抑制することができる。
【0066】
上記のように、本実施形態の中継コネクタ1によれば、接続対象物5,6の挿入方向に沿う振動等が生じた場合であっても、可動部4cが弾性変形することで第1の接点部4a3と第1の接続対象物5が正規の接触位置P1で導通接触し続けることができる。また、同様に第2の接点部4b3と第2の接続対象物6が正規の接触位置P2で導通接触し続けることができる。よって、接点部4a3,4b3と接続対象物5,6のめっき剥がれ等の発生を抑制できる。
【0067】
変形例:
前記本実施形態では、中継コネクタ1として第1のハウジング2と第2のハウジング3の2つのハウジングを備える例を示した。これに対して、3つ以上のハウジングを備えるものとしても良い。こうした場合には、それらの複数のハウジングの間に高さ方向Zに沿う可動間隙を設けることで、前記中継コネクタ1と同様に、可動部4cが高さ方向Zに沿う振動や変位を吸収することができる。
【0068】
前記本実施形態では、第1のハウジング2が治具挿入孔2b1を有する例を示した。これに対して上記の治具7を使用することなく端子4を各ハウジング2,3に固定することができるものであれば、治具挿入孔2b1を設けない中継コネクタとしても良い。
【0069】
前記本実施形態では、第1のハウジング2が第2のハウジング3に対して幅方向X及び前後方向Yの両方に変位可能な可動間隙S1を有する例を示した。これに対して、前後方向Yや幅方向Xに沿って可動部4cを弾性変形させる必要が無い場合には、こうした可動間隙S1を有さないこととしても良い。
【0070】
前記本実施形態では、中継コネクタ1が第1のハウジング2の係止片2c1が係止穴3dに挿入されて、その内部で係止部2c2が被係止部3d1に係止する例を示した。これに対して、係止部2c2が第2のハウジング3に対して外側から引っ掛かるように係止するものとしても良い。こうすることで、ハウジング2,3同士の組み立てを容易に行える中継コネクタとすることができる。
【0071】
前記実施形態の中継コネクタ1の第1のハウジング2が、断面略半円形状でなる内周面2g1を有する壁部2gを有しており、第2のハウジング3が、断面略半円形状でなる外周面3c3を有する突出部3cを備える例を示した。これに対して、壁部2gの内周面2g1及び突出部3cの外周面3c3が、断面略円形状や半円形以外の断面略円弧状でなるものとしても良い。これらによっても、可動間隙S1の内側における突出部の変位可能距離を幅方向X、前後方向Y、幅方向Xと前後方向Yの間の方向の何れの方向についても同じ長さに制限することができる。
【0072】
また、突出部3cが有する外周面3c3は、断面略半円形状や断面略円弧状に限られず、多角形状としても良い。この場合には、対向する壁部の内周面の断面形状を、突出部3cの断面形状に合わせて設けることで、突出部が可動間隙S1の内側を幅方向X、前後方向Y、幅方向Xと前後方向Yの間の方向の何れの方向についても等距離だけ変位することができる。具体的には、
図23で示すように、例えば突出部8の外周面8aを断面略矩形とする場合には、壁部9の内周面9aを断面略矩形とし、内角にRを付けることで、幅方向Xの長さM1’’、前後方向Yの長さM2’’、幅方向Xと前後方向Yの間の方向の長さM3’’の何れの方向の長さも等しくすることができる。よって、それらの何れの方向に付いても突出部8の変位可能距離を等距離に制限することができる。なおこの場合、初期位置R1にある突出部8の断面矩形状の角部8bを中心点とする円形に沿わせて壁部9の内周面9aの内角にRを付けることで、そうした突出部8の変位可能距離を等距離に制限する効果を確実に得ることができる。
【解決手段】第1のハウジング2と、第2のハウジング3と、第1のハウジング2に保持されて第1の接続対象物5と導通接触する第1の接触部4aと、第2のハウジング3に保持されて第2の接続対象物6と導通接触する第2の接触部4bとを有する端子4とを備える中継コネクタ1について、端子4に可動部4cを設け、第1のハウジング2と第2のハウジング3の間に第1の可動間隙S1を設けた。高さ方向Zに沿う振動等が生じた場合には、可動部4cがその方向に弾性変形することで第1のハウジング2又は第2のハウジング3が第1の可動間隙S1の中で変位し、端子4と各接続対象物5,6との導通接触を維持することができる。