(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の具体的な実施形態について、添付の図面を参照することによって詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に適用されうる上りリンク・ランクアダプテーション用の例示的な複数アンテナシステム100(例えば、MIMOシステム)を図示するブロック図である。複数アンテナシステム100は、例えば、HSPA、CDMA2000及びLTE等の無線アクセスシステムに適用されうる。
図1に示すように、複数アンテナシステム100は、ノードB101(即ち、基地局)と、ノードBと無線通信するユーザ装置(UE)102とを備え、ノードB101は、N個のアンテナを有する一方、UE102は、M個のアンテナを有し、それによりN×M MIMOシステムを構成する。HSPAシステムでは、例えば、2×2 MIMOシステムを構成してもよく、この場合、2に等しいN及びMは、MIMOシステムが単一ストリーム送信またはデュアル・ストリーム送信(即ち、必要に応じて1または2をとりうるランクの値)をサポートしていることを示す。
【0019】
図示した複数アンテナシステム100では、ノードB101は、UE102から受信された関連情報によって、上りリンク送信におけるUE102のサポート可能な最大データレート及びチャネル情報を推定し、当該サポート可能な最大データレートと(対応するランクに関連付けられた)1つ以上の予め定められた閾値とを比較し、当該比較の結果及びチャネル情報に基づいて、上りリンク送信におけるUE102のランクを決定しうる。ノードB101の上記の動作は、
図5を参照して以下で詳細に説明する、
図5に示すような装置500の推定器501、比較器502及び決定器503によってそれぞれ実行されてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態では、UE102から受信される関連情報は、UE102の、上りリンク電力ヘッドルーム、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラント等の情報を含んでいてもよい一方、チャネル情報は、パイロット及びプリコーディング行列に基づいて基地局によって推定されうるチャネル行列によって表現されてもよい。本発明の他の実施形態では、UE102が、ノードB101によって決定または知らされたランクの変更を指示または許可された場合、UE102は、例えば、予め定められた条件が満たされたときに、上りリンク送信用のランクのサイズを変更してもよい。以下では、
図2及び
図4を参照することによって、例示的な複数アンテナシステム100において、ノードB101が、上りリンク送信でUE102によって使用されるのに適したランクをどのようにして迅速に決定するのかについて詳細に説明する。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る、上りリンク・ランクアダプテーションのための方法200を図示するフローチャートである。
図2に示すように、方法200は、ステップS201で始まり、ステップS202で、方法200は、上りリンク送信における、ユーザ装置(例えば、UE102)のサポート可能な最大データレート及びチャネル情報を推定し、サポート可能な最大データレートを推定する一例には、ユーザ装置の上りリンク電力ヘッドルーム、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラントの推定に基づいて、サポート可能な最大データレートを推定することが含まれていてもよく(推定方法については、
図3及び
図4を参照することによって以下で詳細に説明する。)、サポート可能な高い最大データレートは、高いUPH、より多いバッファリングされたデータ、及び高い送信グラントを必要とする。
【0022】
チャネル情報は、例えば、基準信号を利用することによって得られるチャネル行列Hであってもよい。2×2複数アンテナシステムを一例とすると、チャネル行列は、次式によって表現されうる。
【0023】
ここで、h
ijは、送信アンテナi(i=1,2)と受信アンテナj(j=1,2)との間の無線チャネルを表す。現在の無線チャネルのサポート可能な独立したチャネルの数(即ち、サポート可能なストリームの数)は、チャネル行列のランクのサイズを計算することによって決定できる。
チャネル行列の推定及び決定に関しては、当業者は、それらを実行するための手段を適宜採用しうる。更なる説明については、本発明を不必要に分かりにくくすることを避けるために本明細書では行わない。
【0024】
次に、方法200はステップS203に進む。ステップS203で、方法200は、サポート可能な最大データレートと、対応するランクに関連付けられている1つ以上の予め定められた閾値とを比較する。例えば、対応するランクが、ランク1、2、3または4に対してそれぞれ設定されており、推定されたサポート可能な最大データレートが、対応するある閾値を超えた場合、当該閾値に対応するランクが選択される。
【0025】
ステップS204で、方法200は、比較の結果及び推定されたチャネル情報に基づいて、上りリンク送信においてユーザ装置によって使用されるランクを決定する。予め定められた閾値を用いて決定されたランクが、チャネル行列を用いて決定されたランクと異なる場合、上りリンクMIMO送信用に、2つのうちの小さい方のランクを選択する。例えば、比較を通じて、ユーザ装置のサポート可能な最大データレートが、ランク1に対して予め定められた閾値より高いものの、ランク2に対して定められた閾値より低いと判定され、かつ、推定されたチャネル行列のランクが2である場合、ユーザ装置にとって、上りリンクMIMO送信における送信用にランク1を使用することが適していることを決定でき、即ち、ユーザ装置は、送信用に単一ストリームを使用することになる。また、比較を通じて、ユーザ装置のサポート可能な最大データレートが、ランク2に対して予め定められた閾値より高いと判定され、かつ、推定されたチャネル行列のランクも2である場合、ユーザ装置にとって、上りリンクMIMO送信における送信用にランク2を使用することが適していることを決定でき、即ち、ユーザ装置は、送信用にデュアル・ストリームを使用することになる。最後に、方法200はステップS205で終わる。
【0026】
本発明の上記の実施形態における方法200によって、ランクを推定する処理が比較的簡易になり、その結果、ランクの推定についての計算複雑度が低減される。
また、上りリンクMIMO送信用のランクを決定するため、基地局は、いくつかのランクの候補にそれぞれ対応するコードブックから望ましいプリコーディング・ベクトルを選択することを不必要に試みることになるが、決定されたランクに対応するコードブックから、ペイロードサイズを最大化する望ましいプリコーディング・ベクトルを直接選択することになり、その結果、プリコーディング・ベクトルの決定についての計算態様の複雑度及びオーバヘッドが省かれる。例えば、ランクを1として決定または推定する上記の場合には、基地局は、ランク2または3の検討後に適切なランク及び対応するプリコーディング・ベクトルを決定するために、コードブック内の各プリコーディング・ベクトルのそれぞれについて、対応するランク2または3をそれぞれ用いる上りリンク送信をもはや試みることはない。
【0027】
図2には示されていないものの、一実施形態では、方法200は、ランクを変更する権限をユーザ装置が有することを、基地局が動的に知らせることを更に含み、その通知は、例えば、無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)シグナリング、メディアアクセス制御(MAC:Media Access Control)層ヘッダ、及び高速共有制御チャネル(HS−SCCH:High Speed Shared Control Channel)のうちの1つを用いて、ランクを変更する権限をユーザ装置が有することを知らせるシグナリングを用いて行われてもよい。他の実施形態では、方法200は、ランクを変更するか否かを決定するための1つ以上の閾値を、無線リソース制御シグナリング、メディアアクセス制御層ヘッダ、及び高速共有制御チャネルのうちの1つを用いてユーザ装置に通知してもよく、当該1つ以上の閾値は、例えば、送信バッファにバッファリングされたデータ、利用可能な上りリンク電力ヘッドルームまたは上りリンク送信グラントについての1つ以上の閾値を含んでいてもよい。上記のステップによって、ユーザ装置は、上りリンク送信用のランクを変更する権限を有し、1つ以上の予め定められた閾値に基づいてランクを変更してもよく、その結果、ランクの選択についての精度とそれによってもたらされるリンク送信ゲインとが更に改善される。
【0028】
ここで、ランク1または2を例として用いて、ランクを変更する権限をユーザ装置が有する場合について説明する。上りリンク送信用のランクが1であることを基地局がユーザ装置に対して知らせた場合、いかなる場合にも、ランクを変更する権限をユーザ装置が有することが許可されることも通知されることもない。これは、チャネル情報及び正確なプリコーディング・ベクトルの選択が欠如している場合に、ユーザ装置がランクを1(即ち、単一ストリーム送信)から2(デュアル・ストリーム送信)に変更すると、上りリンクチャネルのランクが、選択されたランクによる送信をサポートするのには十分でないため、ストリーム間の大きな干渉に起因して受信データの信号対雑音比を明らかに減少させることになる。このため、ユーザ装置は、ユーザによって選択されたランク以上のチャネルのランクと、信頼性のある上りリンク送信とを確保するために、送信用に基地局によって知らされた値よりは高くない値のランクを使用することのみ許可される。
【0029】
基地局が、上りリンク送信用のランクが2であることをユーザ装置に知らせる場合、ユーザ装置は、ネットワークの設定に基づいて、ランクを1に変更してもよい。例えば、ユーザ装置の送信バッファにバッファリングされているデータが、ランク2に対して予め定められている閾値よりも少ないことに基づいて、または、デュアル・ストリーム送信(ランクが2)のために利用可能な電力ヘッドルームが、ランク2に対して予め定められている閾値よりも少ないことに基づいて、または、送信グラントが、ランク2に対して予め定められている閾値よりも少ないことに基づいて、ユーザ装置は、ランクを2から1に変更してもよく、即ち、デュアル・ストリーム送信から単一ストリーム送信に変更してもよい。
【0030】
また、ランクが変更された後にユーザ装置によって使用されるプリコーディング・ベクトルは、予め定められていてもよい。例えば、データストリーム(例えば、デュアル・ストリーム)は、基地局によって知らされたプリコーディング行列内のプリコーディング・ベクトルを順次使用してもよく、即ち、第1のデータストリームは、プリコーディング行列からの第1のプリコーディング・ベクトルを使用し続けることができる一方、第2のデータストリームは、当該プリコーディング行列からの第2のプリコーディング・ベクトルを使用できる。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態に係る、サポート可能な最大データレートを推定するための方法300を図示するフローチャートである。
図3に示すように、方法300は、ステップS301で始まり、ステップS302で、ユーザ装置のUPHを推定する。
【0032】
一実施形態において、ユーザ装置のUPHの推定は、サービング・ユーザ装置の基地局(即ち、ノードB)による、以下の式(2)に基づく推定を含む。
availableUPH = referenceUPH+StepSize×accumulatedTPC+Δ (2)
【0033】
ここで、availableUPHは、推定されたUPH、referenceUPHは、UPHがユーザ装置によってノードBに報告される際、またはUPHがサービング・ノードBによって測定される際に生成される基準UPH、StepSizeは、インナーループ電力制御ステップサイズ、accumulatedTPCは、送信電力制御コマンドの累積値、Δは、UPHの推定誤差を補償するためのマージンである。
【0034】
上式について、送信電力の増加の制御は+1によって表されてもよく、一方で、送信電力の減少の制御は、−1によって表されてもよく、累積演算は、基準UPHが更新された(即ち、リセットされた)際の時間から開始してもよく、accumulatedTPCは、基準UPHが更新されるごとにゼロにリセットされる。言い換えれば、accumulatedTPCは、基準UPHの更新に応じてリセットされる。
【0035】
上式における基準UPHについては、UPHの推定誤差を最小化するために、種々の場合において可能な限り頻繁に更新されるべきである。基準UPHの更新については、以下の少なくとも1つを用いて更新されてもよい。即ち、ユーザ装置が新たなUPHをノードBに報告したことに応じて、基準UPHを、当該報告の新たなUPHに更新すること、及び、ユーザ装置のUPHを測定したことに応じて、基準UPHを、測定されたUPHに更新すること、である。例えば、ユーザ装置が電力制限されている場合、ノードBは、全ての物理チャネルの受信電力に基づいて、ユーザ装置のUPHを測定でき、それにより、基準UPHを、当該ノードBの、測定されたUPHに更新できる。
【0036】
基準UPHは、以下の式(3)に基づいて更新されてもよい。
【0037】
ここで、TPO(Transmission Power Offset)は、ユーザ装置の送信電力オフセット、Nは、上りリンクの物理チャネル数、rxPower
PCH,cは、第c番目の物理チャネルの受信電力、rxPower
R-DPCCHは、UPHの基準個別物理制御チャネル(DPCCH:Dedicated Physical Control Channel)の受信電力であり、当該受信電力は、単一のDPCCHの受信電力であってもよいし、または特定の複数のDPCCHの受信電力の特定の組み合わせであってもよい。ユーザ装置が電力制限されていることが検出された場合、測定されたTPOはUPHと等しい。ユーザ装置が電力制限されていないことが検出された場合であっても、基準UPHは、上記の式(3)によって条件付きで更新され続けてもよい。例えば、式(3)に従って測定されたユーザ装置の送信電力オフセットが、式(2)に従って得られた現在の推定UPHよりも大きい場合、基準UPHは、ユーザ装置の送信電力オフセットに更新されてもよく、accumulatedTPCは、0にリセットされてもよい。
【0038】
ユーザ装置の推定に続いて、方法300は、ステップS303に進む。ステップS303で、方法300は、ユーザ装置の送信バッファ状態を推定する。現在、ユーザ装置の正確な上りリンク・バッファ状態がノードBに報告されることはないものの、以下の少なくとも1つによる、本発明の実施形態を利用することによって、送信バッファ状態を推定可能である。即ち、ユーザ装置から受信されるハッピービット、ユーザ装置から受信される拡張トランスポート・フォーマット組み合わせインジケータ(E−TFCI:Enhanced Transport Format Combination Indicator)、及びユーザ装置の現在のサービスタイプ、である。
【0039】
ユーザ装置からハッピービットを受信する場合に関しては、ユーザ装置が否定ハッピービットをノードBに送信する場合、それは、ユーザ装置の送信バッファにバッファリングされているビットの数が、予め定められた閾値を超えていることを示している。即ち、ユーザ装置は、上りリンクにおいてより高い送信データレートをサポートするのに十分な、バッファリングされたビットを有している。その際、予め定められた閾値は、現在のユーザ装置の送信バッファ状態を反映している。
【0040】
ユーザ装置からE−TFCIを受信する場合に関しては、ノードBは、ユーザ装置から送信されるE−TFCIをモニタリングできる。対応するトランスポート・ブロックサイズの統計的な特性によって、ノードBは、ユーザ装置が、高いデータレートの送信をサポートするのに十分なバッファリングされたビットを有するかを予測できる。例えば、ノードBは、ユーザ装置の最近の上りリンク送信データレートを測定でき、ユーザ装置のバッファリングされたデータは、当該送信データレート以上のレートでの上りリンクデータ送信を少なくともサポートできるものと考えられる。他の例では、ユーザ装置が、十分に高い絶対送信グラントによって特定される、許可された最大の拡張トランスポート・フォーマット組み合わせ(E−TFC:Enhanced Transport Format Combination)で常に送信する場合、基地局は同様に、ユーザ装置の送信バッファにバッファリングされたデータが、少なくとも、絶対送信グラント以上の送信レートでの上りリンクデータ送信をサポート可能であると考えることができる。このように、ノードBは、測定されたデータレート以上のレートでの上りリンク送信を、バッファ内のデータがサポートすることを判定することによって、ユーザ装置の送信バッファ状態を推定できる。
【0041】
ユーザ装置の現在のサービスタイプの場合に関しては、異なるサービスは異なるサービス品質(QoS)を要求するため、サービスタイプも、ユーザ装置の送信バッファ状態を予測するための有益なファクタである。例えば、リアルタイムサービスのビットレートは迅速に変化し、かつ、厳しい遅延制約が存在し、このことは、バッファ状態の予測が、直前の瞬時情報に基づきうることを意味する。リアルタイム・ビデオ送信を一例とすると、ユーザ装置の送信バッファ内のデータによってサポート可能な上りリンクデータ送信レートは、特定のTTIの、直前のE−TFCサイズに基づいて推定可能であり、例えば、スライディング平均によって、または以下の式(4)に示されるようなフィルタを利用することによって、推定可能である。
Rate(n) = Rate(n−1)×(1−α)+α×TBsize/TTI_length (4)
【0042】
ここで、Rateは、サポート可能な上りリンクデータレート、nは、現在のTTIのシーケンス番号、TBsizeは、現在のトランスポート・ブロックサイズ、TTI_lengthは、TTIの長さ、αは、忘却係数である。
【0043】
次に、ノードBは、バッファ内のデータが、測定されたデータレート以上のレートでの上りリンク送信をサポートすることを判定することによって、ユーザ装置の送信バッファ状態を推定する。
【0044】
他の例としてファイル転送プロトコル(FTP:File Transfer Protocol)サービスでは、ユーザ装置は、通常、サービスされている期間中の上りリンク送信において高データレートの送信をサポートするのに十分な、バッファリングされたビットを有しており、即ち、複数ストリーム送信を実行可能である。FTPサービスの上りリンク送信バッファ内のデータによってサポート可能な上りリンクデータ送信レートも、上記の式(4)を用いて推定可能である。同様に、それに対応して、ノードBは、バッファ内のデータが、推定されたデータレート以上のレートでの上りリンク送信をサポートすることを判定することによって、ユーザ装置の送信バッファ状態を推定する。
【0045】
ユーザ装置の送信バッファ状態を推定することに応じて、方法300は、ステップS304に進む。ステップS304で、方法300は、上りリンク送信グラントを推定する。
【0046】
上りリンク送信グラントは、ユーザ装置のサポート可能な最大データレートを制限する他のファクタである。ソフト/ソフター・ハンドオーバ中ではないユーザ装置については、当該ユーザ装置にサービング中のノードBは、ユーザ装置の送信グラントを正確に知っている。しかし、ソフト・ハンドオーバ中のユーザ装置については、送信グラントは、非サービング・ノードBによって変更される場合もある。この場合、サービング・ノードBは、ユーザ装置の送信グラントを知らない可能性がある。本発明の実施形態によれば、特に、ユーザ装置がソフト/ソフター・ハンドオーバ中である場合に、サービング・ノードBが、以下のうちの1つに基づいてユーザ装置の送信グラントを推定できる。
【0047】
ユーザ装置が電力制限されておらず、かつ、サービング・ノードBに対して否定ハッピービットを送信する場合には、直前の最大トランスポート・ブロックサイズによって上りリンク送信グラントが特定され、その結果として、ユーザ装置の上りリンク送信グラントを可能であり、または、ユーザ装置が電力制限されている場合には、ユーザ装置の最大トランスポート・ブロックサイズによって特定される。例えば、ユーザ装置が電力制限されている場合、上りリンク送信グラントの、対応するトランスポート・ブロックサイズが、最大トランスポート・ブロックサイズよりも大きいものとして特定されうる。
【0048】
単一ストリーム送信(1に等しいランク)及び複数ストリーム送信(2以上のランク)における各ストリームが、特別なまたは個別の送信グラントを提供する場合、上りリンク送信グラントの推定は、単一ストリーム送信または複数ストリーム送信についての上りリンク送信グラントを個別に推定することを更に含みうる。
【0049】
送信グラントは、UPH及び上りリンク送信バッファ状態ほど頻繁には変化しないため、ソフト・ハンドオーバ中のユーザ装置についての上りリンク送信グラントの測定頻度は、UPH及び上りリンク送信バッファ状態ほど高い必要はない。
【0050】
方法300は、ステップS302、S303及びS304のそれぞれにおける、ユーザ装置のUPH、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラントの推定後、ランクが1に等しい場合(即ち、単一ストリーム送信)及びランクがNに等しい場合(即ち、Nストリーム送信)について、それぞれステップS305及びS306で、ユーザ装置の、上りリンクのサポート可能な最大データレートを推定する。
【0051】
ランクが1に等しい単一ストリーム送信の場合、送信時間間隔(TTI:Transmission Time Interval)におけるサポート可能な最大データレートの推定は、以下の式(5)による推定を含む。
maxDataRate
SS=f(availableUPH,NrofBufferedBits,SG
SS)/TTI_length (5)
【0052】
ここで、maxDataRate
SSは、単一ストリーム送信におけるサポート可能な最大データレート、availableUPHは、推定されたUPH、NrofBufferedBitsは、(例えば、サポート可能なデータレートで表される)送信バッファにバッファリングされているビット数の推定値、SG
SSは、単一ストリーム送信について推定された上りリンク送信グラント、TTI_lengthは、TTIの長さ、f()は、availableUPH、NrofBufferedBits及びSG
SSを、それぞれのサポート可能な最大データレートにそれぞれマッピングし、かつ、最小値を取る関数である。
【0053】
ランクがNに等しい単一ストリーム送信の場合、TTIにおけるサポート可能な最大データレートの推定は、以下の式(6)による推定を含む。
【0054】
ここで、maxDataRate
MSは、複数ストリーム送信におけるサポート可能な最大データレート、sは、ストリームのシリアル番号、Nは、ストリーム数、UPH
sは、第s番目のストリームについて推定された上りリンク電力ヘッドルーム、NrofBufferedBits
sは、(例えば、サポート可能なデータレートで表される)第s番目のストリームについて推定された、送信バッファにバッファリングされているビット数、SG
Sは、第s番目のストリームについて推定された上りリンク送信グラント、TTI_lengthは、TTIの長さ、f()は、UPH
s、NrofBufferedBits
s及びSG
sを、それぞれのサポート可能な最大データレートにそれぞれマッピングし、かつ、最小値を取る関数である。
【0055】
N=2を例とすると、即ち、デュアル・ストリーム送信の場合、UPH及びバッファリングされたデータは、2つのストリーム間で共有される。送信グラントは、2つのストリームに対してそれぞれ規定された個別の送信グラントが送信しない場合には、2つのストリーム間で共有されうる。このため、上式では、UPH
s=UPH
1+UPH
2=availableUPHであり、NrofBufferedBit
s=NrofBufferedBit
1+NrofBufferedBit
2であり、ここで、下付き文字1及び2は、それぞれストリーム1及びストリーム2を示す。
【0056】
1に等しいランク及びNに等しいランクについて、それぞれステップS305及びS306で、ユーザ装置の、上りリンクのサポート可能な最大データレートを推定した後、方法300は、ステップS307で終了する。
【0057】
図3に図示されるような本方法のステップによって、1に等しいランク及びNに等しいランク(Nは2以上)についての、ユーザ装置のサポート可能な最大データレートを推定可能であり、それにより、方法200のステップS202で、サポート可能な最大データレートの推定動作が実現される。
図3ではステップS302〜S304の順に示されているものの、これは、上記のステップが
図3に示されるような順でのみ実行されうることを意味せず、それらのステップは、並行して、または他の順序で実行されてもよい。また、
図3には示されていないが、方法300は、通信上位レイヤからの制限を参照することで、ユーザ装置のサポート可能な最大データレートを推定するステップを更に含んでいてもよく、当該制限は、例えば、高データレート送信の場合にはIuB帯域制限であってもよい。例えば、通信上位レイヤが提供可能な帯域幅(即ち、サポート可能な最大データレート)が、単一ストリームまたは複数ストリームのサポート可能な最大データレート以下の場合、上りリンク単一ストリーム送信または複数ストリーム送信の、サポート可能な最大データレートは、通信上位レイヤが提供可能な帯域幅と等しい。
【0058】
図4は、本発明の他の実施形態に係る、サポート可能な最大データレートを推定するための方法400を図示するフローチャートである。方法400は、ステップS401で始まり、ステップS402で、最大の信号対干渉及び雑音比(SINR:Signal to Interference plus Noise Ratio)が、推定されたチャネル情報(即ち、チャネル行列)及び上りリンク電力ヘッドルームに基づいて推定され、即ち、利用可能な最大の、等価的な信号対干渉及び雑音比が推定される。次に、ステップS403で、方法400は、最大の信号対干渉及び雑音比を利用することによって、サポート可能なデータレートを推定する。
【0059】
ステップS404で、方法400は、サポート可能なデータレート、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラントに基づいて、サポート可能な最大データレートを推定する。具体的には、得られたサポート可能なデータレートに対応するデータレートと、送信バッファ状態と、上りリンク送信グラントとが比較され、それぞれの値が異なる場合、最小値を、本発明の本実施形態における、推定されたサポート可能な最大データレートとして選択する。最後に、方法400は、ステップS405で終了する。方法400の上記のステップによって、方法200のステップS202におけるサポート可能な最大データレートの推定動作が実現されうる。
【0060】
上記の方法400において、チャネル情報、上りリンク電力ヘッドルーム、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラントは、例えば、
図3を参照して説明したような種々の方法を用いることによって実装されうるとともに、最大の信号対干渉及び雑音比の推定は、例えば、以下の式(7)によって計算されうる。
【0061】
ここで、sは、ストリームのシリアル番号、Pu
sは、(上りリンク電力ヘッドルームを用いて取得可能である)ストリームsの送信電力、Ruは、雑音及び干渉の共分散行列、h~ は、等価チャネル行列、番号1及び2は、受信アンテナのシリアル番号、Wは、受信機によって推定される重み付けされた重みである。
【0062】
ここで、雑音及び干渉の共分散行列Ru
sは、以下の式(8)によって計算されうる。
【0063】
ここで、s及びs'はストリームのシリアル番号、SFは拡散率、Rは受信信号の自己相関行列である。
【0064】
最大の信号対干渉及び雑音比を使用してサポート可能なデータレートを推定することに関して、一実施形態では、サポート可能なデータレートは、信号対干渉及び雑音比とシャノンの公式とによって推定可能である。他の実施形態では、サポート可能なデータレートは、信号対干渉及び雑音比とE−TFC選択ルックアップテーブルとによって推定可能である。例えば、E−TFCテーブルで各トランスポート・フォーマットによって要求される信号対干渉及び雑音比は、予め定められたブロック誤り率(BLER:Block Error Rate)ターゲットによって予め推定可能であり、それにより、現在の利用可能な最大の信号対干渉及び雑音比が、式(7)に基づいて推定される。選択されうる送信ランクごとに、信号対干渉及び雑音比が、特定の規則に従って(例えば等分割で)各ストリームに割り当てられ、その後、各ストリームの最大トランスポート・フォーマットを、テーブルを探索することによって得ることができ、更に、データ送信用にランクを使用する場合に、サポート可能なデータレートを得ることができる。
【0065】
図5は、本発明の実施形態に係る、上りリンク・ランクアダプテーションのための装置500を図示するブロック図である。
図5に図示するように、装置500は、推定器501、比較器502及び決定器503を備え、推定器501は、上りリンク送信における、ユーザ装置の、サポート可能な最大データレート及びチャネル情報を推定するよう構成されている。比較器502は、サポート可能な最大データレートと1つ以上の予め定められた閾値とを比較するよう構成されており、当該予め定められた閾値は、対応するランクに関連付けられている。決定器503は、当該比較の結果及び推定されたチャネル情報に基づいて、上りリンク送信においてユーザ装置によって使用されるランクを決定するよう構成されている。一実施形態では、装置500は、基地局として実装されうるか、基地局(例えば、
図1に示すような複数アンテナシステムのノードB101)に実装されうる。
【0066】
本発明の一実施形態では、推定器501は、ユーザ装置の上りリンク電力ヘッドルーム、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラントの推定に基づいて、サポート可能な最大データレートを推定するよう構成される。
【0067】
本発明の他の実施形態では、推定器501は、単一ストリーム送信について、サポート可能な最大データレートを式(5)によって推定するよう構成される。追加の実施形態では、推定器501は、複数ストリーム送信について、サポート可能な最大データレートを式(6)によって推定するよう構成される。
【0068】
本発明の一実施形態では、推定器501は、推定されたチャネル情報及び上りリンク電力ヘッドルームに基づいて、最大の信号対干渉及び雑音比を推定し、最大の信号対干渉及び雑音比を利用して、サポート可能なデータレートを推定し、かつ、サポート可能なデータレート、送信バッファ状態及び上りリンク送信グラントに基づいて、サポート可能な最大データレートを推定するよう構成される。即ち、推定器501は、方法400の各ステップを実行するために使用されうる。
【0069】
本発明の実施形態について、添付の図面を参照して上記で説明してきた。当該説明は、本発明の理解を容易にするためのものであることに留意すべきであり、当業者に既知であり、また、本発明を実装するために必要となりうるより具体的な何等かの技術的詳細は、上述の説明では省略されている。
【0070】
本発明は、完全なハードウェアの実施形態の形式、完全なソフトウェアの実施形態の形式、またはその両方の形式を採用しうる。好適な実施形態では、本発明は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を、それらに限定することなく含むソフトウェアとして実装される。
【0071】
本発明の明細書は、開示された形式に本発明を使い果たすまたは限定するのではなく、説明及び記述の目的のために提供されている。当業者にとっては、多くの変更及び変形が利用可能である。
【0072】
したがって、実施形態を選択または記述することは、本発明の本質からから逸脱することなく、本発明の原理及び実際の応用をより良く説明するため、及び、当業者がそれを理解するためであり、あらゆる変更及び変形は、特許請求の範囲によって規定される本発明の保護範囲に含まれる。