(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直径1.5mmの円形の通音領域を有する前記防水通音膜について測定された1kHzでの挿入損失が13dB以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の防水通音膜。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0014】
図1に示すように、本実施形態の防水通音部材10(以下、単に「通音部材」ともいう)は、通音膜12及び接着層14を備えている。通音部材10及び通音膜12は、平面視で円形の形状を有する。通音膜12の一方の表面の外周部分にリング状の接着層14が配置されている。接着層14の内側の領域(接着層14が設けられていない領域)が通音膜12の通音領域(有効領域)である。通音部材10の形状は円形に限定されず、楕円形、矩形などの他の形状であってもよい。
【0015】
通音膜12は、PTFE、ポリエステル(PET)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリイミドなどの樹脂で作られた膜である。これらの中でも、PTFEを通音膜12の材料として好適に使用できる。PTFEで形成された通音膜12は、質量と強度とのバランスが良好であるとともに、耐熱性に優れている。通音膜12が十分な耐熱性を有している場合、通音部材10を筐体に取り付けた後に熱処理(例えば、半田リフロー工程)を実施することが可能である。
【0016】
本実施形態において、通音膜12は、単層の樹脂膜である。ただし、通音膜12は、複数の膜を積層することによって得られた積層膜であってもよい。
【0017】
本実施形態において、通音膜12の通気度は、ガーレー数で表示して20秒/100mL以上である。すなわち、通音膜12は、無孔膜又は微多孔膜でありうる。「無孔」とは、膜の一方の主面と他方の主面とを連通する細孔が存在しない、又は、細孔の数が極めて少ないことを意味する。例えば、ガーレー数で表示される通気度が1万秒/100mLより大きい膜を無孔膜と判断することができる。また、通気度が20〜1万秒/100mLの範囲にある膜を微多孔膜と判断することができる。微多孔膜の通気度は、20〜5000秒/100mLの範囲にあってもよく、20〜1000秒/100mLの範囲にあってもよく、20〜300秒/100mLの範囲にあってもよい。通気度の下限値は40秒/100mLであってもよい。本明細書において、「ガーレー数」は、日本工業規格(JIS)L1096(2010)に規定されている通気性測定法のB法(ガーレー形法)によって与えられる値を意味する。
【0018】
音声は、通音膜12の振動によって伝播しうるので、通音膜12が通気性を有していることは必須ではない。通音膜12が無孔膜である場合、通音膜12が取り付けられた筐体の内部に通気膜12を通じて水蒸気が入ることを防止できる。また、無孔膜の耐水性は、通常、多孔膜の耐水性よりも優れている。ただし、通音膜12が適度な通気性を有していることが望ましい場合もある。例えば、筐体の内部の温度変化が比較的大きい場合、適度な通気性は、筐体内部における結露を防止する効果を発揮しうる。この場合、通音膜12が微多孔膜であることが望ましい。
【0019】
通音膜12の耐水圧(限界耐水圧)は、例えば、500kPa以上である。500kPaの耐水圧は、5気圧の防水仕様に相当する。通音膜12が500kPa以上の耐水圧を有している場合、水に触れる機会の多い作業、水上スポーツなどのシチュエーションで電子機器を使用することが可能になる。耐水圧の上限値は特に限定されず、例えば、1000kPaである。耐水圧は、JIS L1092(2009)に規定されている耐水度試験のB法(高水圧法)に従って測定されうる。なお、膜の変形が大きすぎる場合には、ステンレスメッシュを膜の加圧面の反対側に配置して測定を行ってもよい。
【0020】
また、通音膜12の耐水性の指標として、水圧保持試験をクリアできるかどうかが挙げられる。水圧保持試験は、所定の水圧を所定時間にわたって膜に加え続けたときに、膜が破裂したり水漏れが生じたりしないかどうかを調べるための試験である。水圧保持試験は、耐水圧と同じくJIS L1092(2009)に記載された耐水度試験装置を用いて行うことができる。本実施形態において、通音膜12は、500kPaの水圧を10分間にわたって加え続けたとしても、破裂したり水漏れが生じたりしない。
【0021】
本実施形態の通音膜12は、強度の異方性が小さいPTFE膜でありうる。具体的には、MD方向(Machine Direction)に関する通音膜12の引張破断強度をT1(MPa)、MD方向に直交するTD方向(Transverse Direction)に関する通音膜12の引張破断強度をT2(MPa)と定義したとき、比率(T1/T2)が0.5〜2.0の範囲にある。MD方向及びTD方向は、通音膜12の表面の走査電子顕微鏡像から判断することができる。本実施形態において、「MD方向」は、PTFE膜の圧延方向に平行な方向であり、「縦方向」又は「機械流れ方向」ともいう。「TD方向」は、MD方向に直交する方向であり、「幅方向」ともいう。
【0022】
通音膜の強度に顕著な異方性があると、水圧が通音膜に加わったときの変形方向にも偏りが生じると考えられる。この場合、水圧から解放されたとしても、通音膜は、元の形状からかけ離れた形状になると予測される。そして、その音響特性も大幅に劣化したものとなることが予測される。
【0023】
本実施形態の通音膜12は、ガーレー数で表示して20秒/100mL以上の通気性を有し、500kPa以上の耐水圧を有する。さらに、引張破断強度の比率(T1/T2)が0.5〜2.0の範囲にある。比率(T1/T2)は、望ましくは、0.7〜1.5の範囲にある。このような構成によれば、耐水試験後の通音膜12の形状、構造などが耐水試験前の通音膜12の形状、構造などから大きく乖離することを抑制できる。その結果、耐水試験による通音性の低下(音響特性の劣化)も抑制されうる。
【0024】
引張破断強度は、JIS K6251(2010)に基づいて測定することができる。具体的には、通音膜12の原反からJIS K6251に規定されたダンベル状試験片(ダンベル状3号形)を準備する。引張試験機によって、引張速度300mm/分、25℃の条件で試験片の引張破断強度を測定する。縦方向(MD方向)の引張破断強度及び幅方向(TD方向)の引張破断強度をそれぞれ測定できるように、通音膜12の原反から2種類の試験片を作製することができる。
【0025】
通音膜12の原反が入手できる場合には、上記の測定によって通音膜12のMD方向の引張破断強度及びTD方向の引張破断強度を正確に測定することができる。通音膜12のMD方向の引張破断強度及びTD方向の引張破断強度の少なくとも1つが、例えば、30MPa以上である。通音膜12の引張破断強度の上限値は特に限定されず、例えば、150MPaである。
【0026】
一方、通音膜12が非常に小さい場合、所定のダンベル状試験片を準備できない。そのため、測定される引張破断強度は、通音膜12の原反の引張破断強度と乖離している可能性がある。しかし、引張破断強度の比率(T1/T2)を算出することは可能である。例えば、複数の通音膜12(例えば5個)を準備し、MD方向の引張破断強度を各通音膜12について測定し、測定結果の平均値を算出する。同様に、複数の通音膜12の準備し、TD方向の引張破断強度を各通音膜12について測定し、測定結果の平均値を算出する。これらの平均値から、比率(T1/T2)を算出することができる。
【0027】
本実施形態において、通音膜12は、配向したPTFEから構成されうる。言い換えれば、通音膜12は、MD方向及びTD方向の両方向に配向した構造を有する。この構造は、引張破断強度の異方性を低減することに寄与していると考えられる。「配向」とは、ポリマーの分野で一般的である分子鎖(ここではPTFE鎖)の配向を意味する。PTFEが配向しているかどうかは、例えば、X線回折測定(XRD測定)によって確認できる。具体的には、通音膜12の広角X線回折測定(WAXD測定)を実施し、得られたX線回折像(WAXDプロファイル)から、通音膜12においてPTFEが配向しているかどうかを調べることができる。例えば、広角X線回折測定で得られた回折像の円周方向強度プロファイルにおいて、ピークの存在を確認できる場合、通音膜12においてPTFEが配向していると判断することができる。また、通音膜12におけるPTFEの結晶配向度を求めることもできる。
【0028】
通音膜12の通音性は、例えば、1kHzでの挿入損失(周波数1kHzの音に対する挿入損失)によって評価することができる。本実施形態において、直径1.5mmの円形の通音領域を有する通音膜12について測定された1kHzでの挿入損失が13dB以下である。
【0029】
耐水試験による通音膜12の通音性の劣化は比較的小さい。例えば、直径1.5mmの円形の通音領域を有する通音膜12の1kHzでの挿入損失を測定する。次に、先に説明した方法に従って、水圧保持試験を実施する。その後、1kHzでの挿入損失を再度測定する。水圧保持試験の後の挿入損失と水圧保持試験の前の挿入損失との差は、例えば6dB以下であり、望ましくは5dB以下である。
【0030】
通音膜12の挿入損失(音響特性)は、携帯電話の筐体を模した模擬筐体を用い、後述する方法によって測定することができる。
【0031】
通音膜12の面密度は、例えば、1〜30g/m
2の範囲にあり、1〜25g/m
2の範囲にあってもよい。通音膜12の厚さは、例えば、1〜25μmの範囲にあり、1〜20μmの範囲にあってもよい。面密度及び厚さが適切な範囲に調整されていると、通音膜12の耐水性と通音性とを両立させやすい。面密度は、単位面積あたりの膜の質量を意味し、膜の質量をその膜の面積(主面の面積)で除することによって算出される。
【0032】
通音膜12が微多孔膜である場合において、通音膜12の平均孔径は、例えば、0.01μm〜1μmの範囲にある。通音膜12の気孔率は、例えば、5〜50%の範囲にある。平均孔径及び気孔率が適切な範囲に調整されていると、通音膜12の通音性と耐水性とを両立させやすい。平均孔径は、ASTM(米国試験材料協会)F316−86に準拠した方法によって測定することができる。気孔率は、通音膜12の質量、体積及び真密度を下記式に代入することによって算出されうる。例えば、通音膜12の材料がPTFEであるとき、真密度は2.18g/cm
3である。
【0033】
気孔率(%)={1−(質量[g]/(厚さ[cm]×面積[cm
2]×真密度[2.18g/cm
3]))}×100
【0034】
接着層14は、例えば、両面接着(粘着)テープで形成されている。両面接着テープは、例えば、基材と、基材の一方の面に塗布された接着剤層(粘着剤層)と、基材の他方の面に塗布された接着剤層とを含む。両面接着テープに使用される接着剤としては、エポキシ接着剤、アクリル接着剤、シリコーン接着剤などが挙げられる。また、接着層14は、これらの接着剤のみで形成されていてもよい。接着層14は、通音膜12の一方の表面と他方の表面とのそれぞれに配置されていてもよい。
【0035】
また、接着層14を使用せず、通音膜12を筐体に直接取り付けることも可能である。例えば、通音膜12は、熱溶着、レーザー溶着などの溶着方法によって筐体に直接溶着される。
【0036】
通音膜12は、無孔膜又は微多孔膜に積層された通気性支持材を含んでいてもよい。通気性支持材は、無孔膜又は微多孔膜を支持する機能を有する。通気性支持材は、典型的には、金属、樹脂又はこれらの複合材料で形成された、織布、不織布、メッシュ、ネット、スポンジ、フォーム又は多孔体である。樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、フッ素樹脂、超高分子量ポリエチレンなどが挙げられる。通気性支持材は、熱ラミネート、加熱溶着、超音波溶着などの接合方法によって無孔膜又は微多孔膜に積層されうる。通気性支持材は、平面視で通音膜12と同じ形状を有していてもよいし、接着層14と同じ形状(リング状の形状)を有していてもよい。
【0037】
通音膜12には、着色処理が施されていてもよい。言い換えれば、通音膜12には、カーボンブラックなどの着色剤が含まれていてもよい。例えば、カーボンブラックが含まれているとき、通音膜12は、グレー又は黒色の色合いを有する。「グレー又は黒色の色合いを有する」とは、黒色に着色するための着色剤を含んでいることを意味する。一般的には、JIS Z8721(1993)に規定された黒色度で、1〜4を「黒」、5〜8を「グレー」、9以上を「白」と判断する。
【0038】
次に、通音膜12の製造方法の一例を説明する。
【0039】
まず、PTFE粉末の分散液(PTFEディスパージョン)を基板に塗布して塗布膜を形成する。分散液には、着色剤が含まれていてもよい。基板は、耐熱性プラスチック(ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトンなど)、金属、セラミックなどの耐熱性材料で形成されうる。基板の形状は特に限定されず、例えば、シート状、管状又は棒状である。基板を分散液に浸漬して引き上げる方法、基板に分散液をスプレーする方法、基板に分散液を刷毛塗りする方法などにより、分散液を基板に塗布できる。分散液の基板表面への濡れ性を改善するために、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの界面活性剤が分散液に含まれていてもよい。
【0040】
次に、塗布膜を加熱する。これにより、塗布膜に含まれた分散媒を除去するとともに、PTFE粒子を相互に結着させる。加熱後には、基板の片面又は両面に無孔のPTFE膜が形成される。例えば、分散媒を蒸発させることができる温度で塗布膜を加熱して分散媒を除去し、その後、PTFEの融点以上の温度で塗布膜を加熱して塗布膜を焼成する。分散媒が水のとき、第1段階において90〜150℃で塗布膜を加熱し、第2段階において350〜400℃で塗布膜を加熱する。ただし、PTFEの融点以上の温度で塗布膜を所定時間加熱する一段加熱法を採用してもよい。
【0041】
また、分散液を基板に塗布して塗布膜を形成する工程と、塗布膜を加熱する工程とを繰り返すことによって、所望の厚さのPTFE膜を形成してもよい。これらの工程を一回ずつ実施してもよい。
【0042】
次に、基板からPTFE膜(樹脂薄膜)を剥離させる。さらに、PTFE膜をMD方向(長手方向)に圧延する工程と、PTFE膜をTD方向(幅方向)に延伸する工程とをこの順番で実施する。これにより、微多孔膜である通音膜12が得られる。PTFE膜をTD方向に延伸する工程と、PTFE膜をMD方向に圧延する工程とをこの順番に実施してもよい。延伸工程の後で圧延工程を実施する場合、TD方向への延伸によって形成された細孔が圧延によって潰れ、無孔膜である通音膜12が得られる。さらに、無孔膜又は微多孔膜を形成する過程において、PTFE膜をMD方向に延伸してもよい。圧延倍率及び延伸倍率は、防水性と通音性とのバランスを考慮して適切に設定される。MD方向への圧延倍率は、例えば、1.25〜3.5倍である。TD方向への延伸倍率は、例えば、1.25〜3.5倍である。さらに、PTFE膜をTD方向に延伸する工程に代えて、PTFE膜をTD方向に圧延する工程を実施してもよい。
【0043】
PTFE膜を圧延する方法は、例えば、プレス圧延又はロール圧延である。プレス圧延は、PTFE膜を一対の加熱板によって挟み込むことでPTFE膜を加熱しながら圧延する熱板式圧延である。ロール圧延では、例えば、一対のロール(一方又は双方が加熱されている)の間にPTFE膜を通すことでPTFE膜を加熱しながら圧延する。この2つの圧延方法の中では、PTFEの配向方向の制御が容易であるとともに、帯状のPTFE膜に対して連続的に圧延を実施可能であることから、ロール圧延が望ましい。圧延は、必要に応じて2回以上実施してもよく、その際の圧延方向は、各回において同一であっても異なっていてもよい。
【0044】
PTFE膜を圧延する際の加熱温度は、例えば、80〜200℃である。PTFE膜を延伸する工程においても、PTFE膜を加熱しながら延伸することができる。PTFE膜を延伸する際の加熱温度は、例えば、100〜400℃である。上記の温度は、圧延装置又は延伸装置におけるPTFE膜の周囲温度でありうる。
【0045】
また、PTFE膜を基板から剥離した後、PTFE膜の表面の少なくとも一部を改質するための処理を実施してもよい。このような処理を実施すれば、通音膜12と他の材料(例えば接着剤)との接着性が向上する。表面改質処理は、例えば、化学処理、スパッタエッチング処理などのPTFE改質処理である。表面改質処理は、圧延工程及び延伸工程の前に実施してもよいし、これらの工程の後に実施してもよい。
【0046】
化学処理は、例えば、ナトリウムなどのアルカリ金属を用いた処理(アルカリ金属処理)である。アルカリ金属処理では、例えば、金属ナトリウムを含むエッチング液とPTFE膜とを接触させることにより、PTFE膜における当該エッチング液が接触した部分においてフッ素原子が引き抜かれて官能基が形成され、これにより接着性が向上する。エッチング液とPTFE膜とを接触させるために、エッチング液にPTFE膜を浸漬してもよい。
【0047】
エッチング液は、例えば、金属ナトリウムを液体アンモニアに溶解させた金属ナトリウム/液体アンモニア溶液、又は、金属ナトリウムをナフタレン溶液に溶解させた金属ナトリウム/ナフタレン溶液である。この2つの溶液のなかでは、制御及び取扱が容易であるとともに処理の実施に−50℃程度の低温を必要としないことから、金属ナトリウム/ナフタレン溶液が望ましい。
【0048】
スパッタエッチング処理では、ガスに由来するエネルギー粒子をPTFE膜の表面に衝突させる。PTFE膜における当該粒子が衝突した部分において、PTFE膜の表面に存在する原子又は分子が放出されて官能基が形成され、これにより接着性が向上する。スパッタエッチング処理は、例えば、PTFE膜をチャンバーに収容し、次いでチャンバー内を減圧した後、雰囲気ガスを導入しながら高周波電圧を印加することによって実施できる。
【0049】
雰囲気ガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンなどの希ガス、窒素ガス及び酸素ガスからなる群より選ばれる少なくとも1種である。印加する高周波電圧の周波数は、例えば1〜100MHz、望ましくは5〜50MHzである。高周波電圧を印加する際のチャンバー内の圧力は、例えば0.05〜200Pa、望ましくは1〜100Paである。スパッタエッチングのエネルギー(処理時間と印加した電力との積)は、例えば1〜1000J/cm
2、望ましくは2〜200J/cm
2である。
【0050】
上記の方法によって通音膜12を作製した後、両面接着テープを用いて通音膜12の表面上に接着層14を形成すれば、
図1に示す通音部材10が得られる。
【0051】
図2は、通音部材10が使用された電子機器の一例を示している。
図2に示す電子機器は、スマートフォン20である。スマートフォン20の筐体22の内部には、電気信号と音声との変換を行う音声変換部として音声変換器が配置されている。音声変換器としては、スピーカー、マイクロフォンなどが挙げられる。筐体22には開口23,24が設けられている。開口23,24は、音声変換器と外部との間に位置している。開口23,24を塞ぐように、通音部材10が筐体22の内側から筐体22に取り付けられている。これにより、筐体22の内部への水、埃などの異物の侵入が阻止され、音声変換器が保護される。音声変換器への音、及び/又は音声変換器からの音は、通音部材10及び通音膜12を透過する。通音部材10に代えて、熱溶着、超音波溶着などの方法によって通音膜12が筐体22に直接取り付けられていてもよい。
【0052】
電子機器の例はスマートフォン20に限定されない。本実施形態の通音部材10及び通音膜12は、ノートパソコン、電子手帳、デジタルカメラ、ゲーム機器、携帯用オーディオ、ウェアラブル端末などの様々な電子機器に適用されうる。通音部材10及び通音膜12が取り付けられるべき筐体には、マイクロフォンが配置されたパッケージ、電子部品が実装された回路基板などが広く含まれる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0054】
最初に、通音膜(サンプル1〜12)の評価方法を示す。
【0055】
[厚さ]
通音膜の厚さは、直径48mmの円形に打ち抜いた膜を10枚重ね合わせてその厚さをマイクロメーターによって測定し、測定値を10で割ることによって求めた。
【0056】
[面密度]
通音膜の面密度は、直径48mmの円形に打ち抜いた通音膜の質量を測定し、主面の面積1m
2あたりの質量に換算して求めた。
【0057】
[引張破断強度]
通音膜の引張破断強度は、JIS K6251(2010)に基づいて測定した。具体的には、JIS K6251に規定されたダンベル状試験片(ダンベル状3号形)の形状に打ち抜いた通音膜の引張破断強度を測定した。長手方向(MD)の引張破断強度及び幅方向(TD)の引張破断強度をそれぞれ測定できるように、2種類の試験片を作製した。測定は、卓上型精密万能試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS−X)を使用し、25℃、引張速度300mm/分の条件で実施した。
【0058】
[耐水圧]
直径2.0mmの円形の通音領域を有する通音膜の耐水圧(限界耐水圧)は、JIS L1092の耐水度試験B法(高水圧法)の規定に準拠して測定した。水圧保持試験は、先に説明した方法によって実施した。水圧保持試験においては、通音膜が破裂したり、水漏れが生じたりしなかった場合に「良(〇)」と判断し、そうでない場合を「不可(×)」と判断した。
【0059】
[挿入損失]
水圧保持試験の実施前及び水圧保持試験の実施後において、直径1.5mmの円形の通音領域を有する通音膜の挿入損失を測定した。具体的には、携帯電話の筐体を模した模擬筐体を用い、以下の方法で通音膜の挿入損失を測定した。
【0060】
図3の(a)及び(b)に示すように、模擬筐体の中に収容するスピーカーユニット65を作製した。具体的には、次の通りである。音源であるスピーカー61(スター精密社製、SCC-16A)と、ウレタンスポンジからなり、スピーカー61を収容するとともにスピーカーからの音声を不必要に拡散させない(通音膜を透過することなく評価用マイクロフォンに入力する音声を発生させない)ための充填材63A,63B,63Cと、を準備した。充填材63Aには、直径5mmの円形の断面を有する通音孔64がその厚さ方向に設けられており、充填材63Bには、スピーカー61を収容する、スピーカー61の形状に対応する切り欠きと、スピーカーケーブル62を収容するとともにユニット65外へケーブル62を導出するための切り欠きとが設けられている。次に、充填材63C及び63Bを重ね、充填材63Bの切り欠きにスピーカー61及びケーブル62を収容した後、音声が通音孔64を介してスピーカー61からユニット65の外部に伝達されるように、充填材63Aを重ねてスピーカーユニット65を得た(
図3(b))。
【0061】
次に、
図3の(c)に示すように、携帯電話の筐体を模した模擬筐体51(ポリスチレン製、外形60mm×50mm×28mm)の内部に、上記作製したスピーカーユニット65を収容した。具体的には、次の通りである。準備した模擬筐体51は、2つの部分51A,51Bからなり、部分51A,51Bは互いに嵌め合わせることができる。部分51Aには、内部に収容したスピーカーユニット65から発せられた音声を筐体51の外部に伝達する通音孔52(直径2mmの円形の断面を有する)と、スピーカーケーブル62を筐体51の外部に導出する導通孔53とが設けられている。部分51A,51Bを互いに嵌め合わせることによって、筐体51内に、通音孔52及び導通孔53以外に開口がない空間が形成される。作製したスピーカーユニット65を部分51B上に配置した後、さらに部分51Aを上から配置して部分51Bと嵌め合わせて、筐体51内にユニット65を収容した。このとき、ユニット65の通音孔64と部分51Aの通音孔52とを重ね合わせて、音声が双方の通音孔64,52を介してスピーカー61から筐体51の外部に伝達されるようにした。スピーカーケーブル62は導通孔53から筐体51の外部に引き出し、導通孔53はパテによって塞いだ。
【0062】
これとは別に、作製した通音膜を、トムソン型を用いて直径5.8mmの円形に打ち抜いて試験片83とした。次に、試験片83の一方の主面の周縁部に外形5.8mm、内径1.5mmのリング状に打ち抜いた両面接着テープ82(日東電工社製No.5603、厚さ0.03mm、基材がポリエチレンテレフタレート(PET))を、他方の主面の周縁部に外径5.8mm、内径1.5mmのリング状に打ち抜いた両面接着テープ84(日東電工社製No.57120B、厚さ0.20mm、基材がポリエチレン系発泡体)を、それぞれ外径を揃えて接合した。次に、両面接着テープ82における試験片83とは反対側の面に、上記外径及び内径のリング状に打ち抜いたPETシート81(厚さ0.1mm)を、外径を揃えて接合して、積層体8を得た(
図4参照)。積層体8では、リング状のPETシート81、両面接着テープ82及び84におけるリング内側の領域を通音孔として、音声が試験片83を透過する。
【0063】
次に、
図3の(d)及び
図4に示すように、試験片83を有する積層体8を、両面接着テープ84を介して、筐体51の通音孔52に固定した。このとき、試験片83が通音孔52の全体を覆うとともに、積層体8を構成する各部材間及び両面接着テープ84と筐体51との間に隙間が生じないようにした。また、両面テープ84が通音孔52にかからないようにした。
【0064】
次に、
図3の(e)に示すように、試験片83を有する積層体8を覆うようにマイクロフォン71(Knowles Acoustics社製、Spm0405Hd4H-W8)を配置した。マイクロフォン71を配置したときのスピーカー61とマイクロフォン71との距離は21mmであった。次に、スピーカー61及びマイクロフォン71を音響評価装置(B&K社製、Multi-analyzerSystem 3560-B-030)に接続し、評価方式としてSSR(Solid State Response)モード(試験信号20Hz〜20kHz、sweep up)を選択して実行し、試験片83の挿入損失を評価した。挿入損失は、音響評価装置からスピーカー61に入力された試験信号と、マイクロフォン71で受信された信号とから自動的に求められる。なお、試験片83の挿入損失を評価するにあたっては、試験片83を取り除いた場合の挿入損失の値(ブランク値)を予め求めた。ブランク値は、周波数1000Hzにおいて−21dBであった。通音膜の挿入損失は、音響評価装置での測定値からこのブランク値を引いた値である。また、通音膜の挿入損失は、周波数1000Hzの音に対する値とした。挿入損失の値が小さいほど、スピーカー61から出力された音声のレベル(音量)が維持されていることになる。
【0065】
[結晶配向度]
結晶配向度は、通音膜に対する広角X線回折(XRD)測定の結果から算出した。XRD測定には、X線回折装置(Bruker社製、 D8 DISCOVER with GADDS Super Speed)を使用した。具体的には、試料(通音膜)を、そのMD方向が把握できる状態でホルダーに固定し、試料の膜厚方向に透過するX線による当該膜の透過X線回折像(WAXD像;逆空間の二次元像)を取得した。取得したWAXD像により、通音膜においてPTFEが配向しているか否かを判断するとともに、下記式(1)に基づき、PTFEの配向度を求めた。
配向度(%)=(1−ΣFWHM/360)×100(%)・・・(1)
【0066】
式(1)のΣFWHMは、得られたWAXD像に示されているPTFEの結晶構造に対応する回折角2θ=18°付近のピーク像について、その円周方向のピークの半値幅(単位:度)である。PTFEが配向していない場合、得られたWAXD像上で上記ピーク像は2θ=18°に対応する半径を有するリングとなる。この場合、リングの全周にわたってピークが存在することからΣFWHMは360°であり、式(1)の配向度は0%となる。PTFEの配向が進むに従って、WAXD像に現れる上記ピーク像は上記リングの一部、配向方向に対応する位置に集合し、これによりΣFWHMの値が減少する。すなわち、式(1)の配向度が増加する。また、ピークの集合の状態から、通音膜における配向の方向を把握することができる。
【0067】
測定条件は以下の通りであった。
・入射側光学系
X線:CuKα線(λ=0.1542nm)、モノクロメーターとして多層膜ミラーを使用、コリメーター300μm
Cuターゲットへの印加電圧:50kV
Cuターゲットへの印加電流:100mA
・受光側光学系
カウンタ:2次元/位置敏感型比例検出器(PSPC);(Bruker製、Hi−STAR)
カメラ距離:9cm
・測定時間:10分
【0068】
(サンプル1)
PTFEディスパージョン(PTFE粉末の濃度40質量%、PTFE粉末の平均粒径0.2μm、ノニオン性界面活性剤をPTFE100質量部に対して6質量部含有)に、フッ素系界面活性剤(DIC社製、メガファックF−142D)をPTFE100質量部に対して1質量部添加した。次に、PTFEディスパージョンに長尺のポリイミドフィルム(厚さ125μm)を浸漬して引き上げ、当該フィルム上にPTFEディスパージョンの塗布膜を形成した。このとき、計量バーにより、塗布膜の厚さを20μmとした。次に、塗布膜を100℃で1分間、続いて390℃で1分間加熱することにより、ディスパージョンに含まれる水を蒸発させて除去するとともに、残るPTFE粒子同士を互いに結着させてPTFE膜を得た。上記浸漬及び加熱をさらに2回繰り返した後、ポリイミドフィルムからPTFE膜(厚さ25μm)を剥離させた。
【0069】
次に、得られたPTFE膜をテンターによってTD方向に2倍の延伸倍率で延伸した。さらに、MD方向に2.5倍の圧延倍率でPTFE膜を圧延した。これにより、サンプル1の通音膜を得た。ロール圧延装置におけるロールの設定温度は170℃であった。延伸温度は170℃であった。
【0070】
(サンプル2)
サンプル1と同じ方法でPTFE膜を作製した。次に、MD方向に2.5倍の圧延倍率でPTFE膜を圧延した。圧延されたPTFE膜をテンターによってTD方向に1.5倍の延伸倍率で延伸した。これにより、サンプル2の通音膜を得た。
【0071】
(サンプル3)
TD方向の延伸倍率を2.0倍に変更したことを除き、サンプル2と同じ方法でサンプル3の通音膜を得た。
【0072】
(サンプル4)
TD方向の延伸倍率を2.5倍に変更したことを除き、サンプル2と同じ方法でサンプル4の通音膜を得た。
【0073】
(サンプル5)
TD方向の延伸倍率を3.0倍に変更したことを除き、サンプル2と同じ方法でサンプル5の通音膜を得た。
【0074】
(サンプル6)
PTFEモールディングパウダー(ダイキン工業社製、TFEM-12)100質量部を、高さ800mm、内径200mmの円筒状の金型(ただし、円筒の下端は閉鎖されている)に導入し、280kg/cm
2の圧力で1時間予備成形した。次に、得られたPTFEの予備成形品を金型から取り出した後、温度360℃で48時間焼成して、高さ約500mm、直径約200mmの円柱状であるPTFEブロックを得た。次に、このブロックを、高さ700mm、内径200mmのステンレス容器に収容し、容器内を窒素で置換した後、温度340℃で20時間さらに焼成して、円柱状である切削用のPTFEブロックを得た。
【0075】
次に、得られた切削用PTFEブロックを切削旋盤により切削して、厚さ25μmのPTFEフィルム(スカイブフィルム)を得た。サンプル1と同じ方法でスカイブフィルムの圧延を実施し、サンプル6の通音膜を得た。
【0076】
(サンプル7)
厚さ2μmのPETフィルム(SKC社製、SC75)をサンプル7の通音膜として準備した。
【0077】
(サンプル8)
TD方向への延伸を省略したことを除き、サンプル1と同じ方法でサンプル8の通音膜を得た。ただし、厚さが10μmとなるように圧延倍率を調整した。
【0078】
(サンプル9)
MD方向への圧延を省略したことを除き、サンプル1と同じ方法でサンプル9の通音膜を得た。ただし、厚さが11μmとなるように延伸倍率を調整した。
【0079】
(サンプル10)
TD方向への延伸を省略したことを除き、サンプル1と同じ方法でサンプル10の通音膜を得た。ただし、厚さが13μmとなるように圧延倍率を調整した。
【0080】
(サンプル11)
TD方向の延伸倍率を4.0倍に変更し、MD方向の圧延倍率を3.0倍に変更したことを除き、サンプル1と同じ方法でサンプル11の通音膜を得た。
【0081】
(サンプル12)
PTFEディスパージョン(PTFE粉末の濃度40質量%、PTFE粉末の平均粒径0.2μm、ノニオン性界面活性剤をPTFE100質量部に対して6質量部含有)に、フッ素系界面活性剤(DIC社製、メガファックF−142D)をPTFE100質量部に対して1質量部添加した。次に、PTFEディスパージョンに長尺のポリイミドフィルム(厚さ125μm)を浸漬して引き上げ、当該フィルム上にPTFEディスパージョンの塗布膜を形成した。このとき、計量バーにより、塗布膜の厚さを13μmとした。次に、塗布膜を100℃で1分間、続いて390℃で1分間加熱することにより、ディスパージョンに含まれる水を蒸発させて除去するとともに、残るPTFE粒子同士を互いに結着させてPTFE膜を得た。上記浸漬及び加熱をさらに3回繰り返した後、ポリイミドフィルムからPTFE膜(厚さ14μm)を剥離させた。
【0082】
次に、得られたPTFE膜をMD方向に2.0倍の延伸倍率で延伸した。これにより、サンプル12の通音膜を得た。延伸温度は150℃であった。
【0083】
サンプル1〜12の通音膜の通気度、限界耐水圧、面密度、厚さ及び引張破断強度を測定した。また、サンプル1〜12の通音膜(φ2.0mm)の水圧保持試験を実施した。さらに、サンプル1〜12の通音膜(φ1.5mm)の水圧保持試験を実施するとともに、水圧保持試験前の通音性及び水圧保持試験後の通音性を測定した。水圧保持試験後の通音性は、通音膜を試験終了から10分間放置した後の通音性を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように、サンプル1,6〜12の通音膜の通気度は、ガーレー数で表示して1万秒を超えていた。つまり、これらは無孔膜であった。他方、サンプル2〜5の通音膜の通気度は、ガーレー数で表示して20〜185秒であった。つまり、サンプル2〜5の通音膜は、微多孔膜であった。
【0086】
サンプル6,7の通音膜の限界耐水圧は500kPa未満であった。また、サンプル6,7の通音膜は、水圧保持試験をクリアできなかった。他方、サンプル1〜5,9〜11の通音膜の限界耐水圧は500kPa以上であった。サンプル1〜4,9〜10の通音膜の限界耐水圧は700kPa以上であった。サンプル1〜5,9〜11の通音膜は、水圧保持試験をクリアできた。
【0087】
水圧保持試験前において、サンプル1〜5,9〜11の通音膜は、良好な通音性を示した(12.7dB以下)。水圧保持試験後において、サンプル1〜5,9〜11の通音膜の通音性は、20dB未満であった。サンプル1〜5,9〜11の通音膜において、通音性の変化量は5.2dB以下であった。なかでも、サンプル1〜5,10,11の通音膜において、通音性の変化量は5.0dB以下であり、詳細には、4.9dB以下であった。特に、サンプル1〜5,11の通音膜において通音性の変化量は4.8dB以下であった。一方、サンプル8,12の通音膜において通音性の変化量は5.3dB以上となり、特に、サンプル8の通音膜の通音性は、水圧保持試験を経て大幅に低下した。サンプル6,7の通音膜は水圧保持試験をクリアできなかったため、試験後の通音性を測定できなかった。
【0088】
TD方向の引張破断強度に対するMD方向の引張破断強度の比(MD/TD)は、サンプル1〜5,9〜11において、全て0.5〜2.0(詳細には、0.58〜1.92)の範囲にあった。また、サンプル1〜5,11において、当該比は、0.77〜1.25の範囲にあった。これに対し、サンプル6,8,12において、引張破断強度の比(MD/TD)は、2.0を超えていた。サンプル7(PETフィルム)のMD方向及びTD方向は不明であったため、サンプル7の引張破断強度は測定できなかった。
【0089】
図5は、サンプル2の通音膜の表面のSEM像である。
図6は、サンプル3の通音膜の表面のSEM像である。
【0090】
図5及び
図6に示すように、サンプル3の通音膜もサンプル2の通音膜に類似する構造を有していた。サンプル3のTD方向の延伸倍率は、サンプル2のTD方向の延伸倍率よりも高かった。そのため、サンプル3の通音膜の気孔率は、サンプル2の通音膜の気孔率を上回ったと考えられる。
【0091】
図7A及び
図8Aは、それぞれ、サンプル3(微多孔膜)及びサンプル8(無孔膜)の透過X線回折像である。
図7B及び
図8Bは、それぞれ、サンプル3(微多孔膜)及びサンプル8(無孔膜)の回折像の円周方向強度プロファイルである。
図7B及び
図8Bにおいて、縦軸は回折強度(単位:cps)であり、横軸は角度(リング上の角度;単位は度)である。角度0°および180°が、測定試料のMD方向に対応する。
図7A及び
図7Bに示すように、サンプル3の回折像(
図7A)においては、90°及び270°方向が明るかった。さらに、
図7Bにおける分離されたピークから理解できるように、サンプル3の回折像は、0°及び180°方向にもピークを持っていた。このことから、サンプル3の通音膜は、MD方向及びTD方向の両方向に配向していると判断できる。これに対し、サンプル8の回折像(
図8A)においては、90°及び270°方向のみが明るかった。
図8Bから理解できるように、サンプル8の回折像は、90°及び270°方向にのみピークを持っていた。つまり、サンプル8の通音膜は、これと直交する0°及び180°方向(MD方向)にのみ強く配向していると判断できる。MD方向の配向度を算出したところ、サンプル3では79%、サンプル8では89%であった。なお、分子鎖が特定の方向に配向していない膜(無配向フィルム)は、明確な回折ピークを示さない。