特許第6158498号(P6158498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158498
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】トルク断続装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 11/00 20060101AFI20170626BHJP
   F16D 11/10 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   F16D11/00 A
   F16D11/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-251136(P2012-251136)
(22)【出願日】2012年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-98456(P2014-98456A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 拓人
(72)【発明者】
【氏名】北岡 慎治
(72)【発明者】
【氏名】小島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】翠 高宏
(72)【発明者】
【氏名】森 匡輔
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第04224271(DE,A1)
【文献】 特開2011−017362(JP,A)
【文献】 実開昭62−110632(JP,U)
【文献】 西独国特許出願公開第03904158(DE,A)
【文献】 特開2005−308142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00
F16D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転可能な第1回転体と第2回転体との相互の回転連動遮断を噛み合いクラッチの対向する突歯の係脱により行うトルク断続装置であって、
前記第1及び第2回転体はともに前記突歯を備え、前記突歯はその歯厚が歯先側である歯先部より歯元側である歯元部の方が歯厚が大きくなるように略2段階になる階段状に形成された階段状突歯であり、
前記第1及び第2回転体の前記突歯は前記歯先部に回転方向に対して傾斜した先端部チャンファ面を有し、
前記階段状突歯はその歯先部と歯元部との間が歯元側に向けて歯厚が大きくなり、前記先端部チャンファ面の傾斜角に対応した傾斜面を有する噛み合い部チャンファ面をもち、
前記第1及び第2回転体のそれぞれの突歯の歯先側の歯厚が、それぞれ対向する突歯の歯元側の間に挿入可能な大きさであり、
前記第1及び第2回転体の前記階段状突歯は、前記先端部チャンファ面と前記噛み合い部チャンファ面との間に、軸線方向に対して傾斜した前記歯先部の側面を有し、且つ前記噛み合い部チャンファ面よりも歯元側に前記軸線方向に対して傾斜した前記歯元部の側面を有し、前記歯先部の側面と前記歯元部の側面とは略平行となるように延びるトルク断続装置。
【請求項2】
前記第1及び第2回転体のそれぞれの突歯は噛み合ったときに相補的な形状である請求項1に記載のトルク断続装置。
【請求項3】
前記階段状突歯は周方向の一面側でのみ階段状になっている請求項1に記載のトルク断続装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルク断続装置に関し、特に噛み合いクラッチによるトルク断続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドグクラッチなどの噛み合いクラッチに設けられている噛み合い歯(突歯)を有するギヤは、噛み合い歯の入り込みやすさ(飛び込みやすさ)を重視する場合に、各噛み合い歯の隙間を大きくとり、相対回転下での噛み合い歯の入りやすさの向上をはかっている。しかし、噛み合い歯の隙間を大きくすると、噛み合い時のバックラッシュ(周方向の隙間)が増加するため、音やショックの原因になる。その解決方法として、例えば特許文献1に記載されている発明の例が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ドグクラッチを入り易くすると共に外れ難くし、且つ強度低下を抑制することを可能とすると共にバックラッシュ増を抑制することを目的として、相対回転可能な回転軸(3)及び歯車(5),(7)相互の回転連動遮断をドグクラッチ(11),(13)の対向する突歯(15),(17)の係脱により行うトルク断続装置(1)において、ドグクラッチ(11),(13)の突歯(15),(17)を、周方向所定間隔毎に高低を有するように形成し、突歯(15),(17)の噛み合い面に、歯先側から歯元側の肉厚方向内側へ傾斜する傾斜面(31),(33)を設けたことを特徴とするトルク断続装置が開示される(括弧内の符号は特許文献1の図3中の符号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−308142号公報(特許請求の範囲、0012〜0018段落、図3など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のトルク断続装置では充分なバックラッシュの抑制が実現できなかった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、バックラッシュが抑制され、噛み合いクラッチの係合を容易にするトルク断続装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
相対回転可能な第1回転体と第2回転体との相互の回転連動遮断を噛み合いクラッチの対向する突歯の係脱により行うトルク断続装置であって、
前記第1及び第2回転体はともに前記突歯を備え、前記突歯はその歯厚が歯先側である歯先部より歯元側である歯元部の方が歯厚が大きくなるように略2段階になる階段状に形成された階段状突歯であり、
前記第1及び第2回転体の前記突歯は前記歯先部に回転方向に対して傾斜した先端部チャンファ面を有し、
前記階段状突歯はその歯先部と歯元部との間が歯元側に向けて歯厚が大きくなり、前記先端部チャンファ面の傾斜角に対応した傾斜面を有する噛み合い部チャンファ面をもち、
前記第1及び第2回転体のそれぞれの突歯の歯先側の歯厚が、それぞれ対向する突歯の歯元側の間に挿入可能な大きさであり、
前記第1及び第2回転体の前記階段状突歯は、前記先端部チャンファ面と前記噛み合い部チャンファ面との間に、軸線方向に対して傾斜した前記歯先部の側面を有し、且つ前記噛み合い部チャンファ面よりも歯元側に前記軸線方向に対して傾斜した前記歯元部の側面を有し、前記歯先部の側面と前記歯元部の側面とは略平行となるように延びることである。
【0008】
上記(1)の発明は以下に記す(2)及び)の構成のうちの1つを任意に加えて採用できる。
【0009】
(2)の発明の特徴は、前記第1及び第2回転体のそれぞれの突歯が噛み合ったときに相補的な形状であることである。
【0010】
(3)の発明の特徴は、前記階段状突歯が周方向の一面側でのみ階段状になっていることである。
【発明の効果】
【0013】
(1)の発明においては、第1及び第2回転体の少なくとも一方の回転体の突歯が歯元の歯厚が大きくなるように略2段階になる階段状に形成された階段状突歯である。歯先部が歯元部分よりも歯厚が小さいことで、隣接する歯との隙間が歯先部は歯元部より広くなる。そのため、歯先部に対向する突歯が進入し(飛び込み)やすい。そして、階段状突歯は歯先部と歯元部との間の歯元側に向けて歯厚が大きくなるような噛み合い部チャンファ面を、その階段状突歯に係脱する突歯は先端部に先端部チャンファ面を、少なくとも噛み合うどちらかの歯が有する。そのため、歯先部に対向する突歯の先端部が進入後、チャンファ面によって進入した突歯の歯先部が階段状突歯の歯元部へと導かれやすい。よって(1)の発明によれば、噛み合いクラッチが相対回転下でも突歯が進入しやすく、進入後は先端部が歯元部に向かって導きかれやすいため、容易に係合することができる。そのために本願発明の構成を採用しない場合と比べて、歯元部と歯元部との隙間が小さくても(例えば、先端部チャンファ面や噛み合い部チャンファ面の傾斜角度によっては、進入する突歯の先端部の歯厚に対してかなり余裕のある大きさでなく、ほぼ同じであっても容易に噛み合うことができる場合がある)、上記したように突歯の先端部が容易に歯元部と歯元部との間に進入することができので、階段状突歯の歯元部と、係合する突歯の先端部との隙間(バックラッシュ)が抑制できる。
【0014】
(2)の発明によれば、第1及び第2回転体のそれぞれの突歯が噛み合ったときに相補的な形状であるため、ガタ無く係合でき、バックラッシュが抑制される。
【0015】
(3)の発明によれば、回転方向が一方向で係合する面が周方向の一面側である場合、階段状突歯が周方向の一面側でのみ階段状になっていれば、噛み合いクラッチが相対回転下で容易に係合することができ、バックラッシュが抑制される。また、(3)の発明によれば、加工が一面側でよいため、加工の時間や費用を抑制できる。
【0016】
更に)の発明によれば、第1及び第2回転体の突歯が双方共に階段状突歯であるため、噛み合いクラッチが相対回転下でより容易に係合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1の1つの階段状突歯3の断面図である。
図2】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1の隣接している階段状突歯3の断面図である。
図3】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体2の一部展開断面図である。
図4】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体2が噛み合う途中の一部展開断面図である。
図5】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体2が噛み合う途中の一部展開断面図である。
図6】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体2が噛み合う途中の一部展開断面図である。
図7】実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体2が噛み合っている一部展開断面図である。
図8】実施形態2のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体2の一部展開断面図である。
図9】実施形態3のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体4の一部展開断面図である。
図10】実施形態3のトルク断続装置の第1回転体1及び第2回転体4が噛み合っている一部展開断面図である。
図11】実施形態4のトルク断続装置の第1及び/又は第2回転体の1つの階段状突歯5の断面図である。
図12】実施形態5のトルク断続装置の第1及び/又は第2回転体の1つの階段状突歯6の断面図である。
図13】実施形態6のトルク断続装置の第1回転体7及び第2回転体8が噛み合う途中の一部展開断面図である。
図14】実施形態7のトルク断続装置の第1回転体9及び第2回転体8が噛み合う途中の一部展開断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の代表的な実施形態を図1図14を参照して説明する。
【0020】
(実施形態1)
本実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1の階段状突歯3は、図1に示すように、歯厚が歯先側である飛び込み部(歯先部)31より歯元側である噛み合い部(歯元部)32の方が相対的に大きく、2段の階段状に形成されている。飛び込み部31は、歯先側から歯元側に向けて歯厚が小さくなるように先太に形成された側面31aをもち、歯厚が対向する突歯の歯元側の間に挿入可能な大きさである。噛み合い部32は、歯先側から歯元側に向けて歯厚が小さくなるように先太に形成された側面32bをもつ。更に、階段状突歯3は、噛み合い部チャンファ面33と先端部チャンファ面34とを有する。噛み合い部チャンファ面33は飛び込み部31と噛み合い部32との間が歯元側に向けて歯厚が大きくなるような面である。先端部チャンファ面34は最先端から歯元に向かう方向に歯厚が大きくなるような面である。
【0021】
本実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1は、図2に示すように、階段状突歯3の隣接する間隔が、飛び込み部31間と噛み合い部32間とで異なる。飛び込み部31の飛び込み部間隔c1は、噛み合い部32の噛み合い部間隔c2より広い。なお、飛び込み部間隔c1及び噛み合い部間隔c2は、歯厚の一番大きなところ、つまり間隔が一番狭いところを基準としている。
【0022】
本実施形態1のトルク断続装置は、図3に示すように、上記した階段状突歯3の第1回転体1と、階段状ではない突歯21の第2回転体2と、を有する。第1回転体1と第2回転体2とはそれらの軸線方向に相対的に移動して近接することにより両者が噛み合い、トルクの伝達が可能になる。第1回転体1と第2回転体2とは両者共に軸線方向に移動する構成であっても良いし、何れか一方のみが移動する構成であっても良い。
【0023】
第2回転体2としては、例えば車両の変速機で用いられるスリーブなどであり、歯元部212の歯厚が歯先部211の歯厚w1より大きくない(図面ではほぼ同じである)。そして、第2回転体2は、歯先部211に、最先端から歯元側に向けて歯厚が大きくなるように形成された先端部チャンファ面213を有する。第1回転体1は、隣接している階段状突歯3の飛び込み部31の飛び込み部間隔c1が噛み合い部32の噛み合い部間隔c2より広い。本明細書では、第1回転体1の噛み合い部間隔c2と、第2回転体2の歯先部211の歯厚w1との関係が、w1がc2・x(xは0.5以上、更には、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上が例示できる)以上であることを、ほぼ隙間なく係合できるとする。なお、xは大きいほどバックラッシュを抑制するのに好ましく、小さいほど容易に係合できるため進入をしやすくするのに好ましい。
【0024】
第1回転体1及び第2回転体2は、それぞれ同回転方向Aで相対回転している。そして、第2回転体2は第1回転体1に係合するために、接近するように軸線方向Bで移動する。第2回転体2は図4に示すように、その突歯21の歯先部211が第1回転体1の階段状突歯3の飛び込み部31と飛び込み部31との間に進入する(飛び込む)。突歯21が飛び込み部31と飛び込み部31との間に進入後、第2回転体2の歯先部211の側面211cが、図5に示すように、回転体1の飛び込み部31の側面31aに当接する。当接した第1回転体1と第2回転体2とは、先太形状である歯先の側面で当接しているので、第2回転体2が軸線方向Bに更に移動する。そして図6に示すように、第2回転体2の歯先部211の先端部チャンファ面213が第1回転体1の噛み合い部チャンファ面33に当接し、第2回転体2は面に沿って更に軸線方向Bに移動する。結果、図7に示すように、第2回転体2の突歯21の歯先部211は、第1回転体1の階段状突歯3の噛み合い部32と噛み合い部32との間に進入する。そして、歯先部211の側面211cが第1回転体1の噛み合い部32の側面32bに当接し、第1回転体1と第2回転体2とが係合する。第2回転体2の歯先部211は、図7において回転方向Aの後方側の側面211cが第1回転体2の階段状突歯3の歯元部32の側面32bに当接し、回転方向Aの前方側の側面211cは、当接しているのとは別の階段状突歯3の噛み合い部32の側面32bとの間に隙間、バックラッシュdがある。
【0025】
本実施形態1のトルク断続装置は、第1回転体1が歯元の歯厚が大きくなるように2段階の階段状に形成された階段状突歯3である。飛び込み部31が噛み合い部32よりも歯厚が小さいことで、隣接する歯との飛び込み部31の飛び込み部間隔c1が、隣接する歯との噛み合い部32の噛み合い間隔c2より広い。そのため、飛び込み部31に対向する第2回転体2の突歯21が進入し(飛び込み)やすい。
【0026】
そして、第1回転体1の階段状突歯3は飛び込み部31と噛み合い部32との間の歯元側に向けて歯厚が大きくなるような噛み合い部チャンファ面33を、第2回転体2の突歯21は歯先部211に先端部チャンファ面213を有する。そのため、第1回転体1の階段状突歯3の飛び込み部31に、第2回転体2の突歯21の歯先部211が進入後、チャンファ面(33、213)によって、第2回転体2の突歯21の歯先部211が階段状突歯3の飛び込み部31へと導かれやすい。
【0027】
よって本実施形態1のトルク断続装置によれば、噛み合う第1回転体1と第2回転体2とが相対回転下でも突歯21が進入しやすく、進入後は先端部211が第1回転体1の噛み合い部32に向かって導きかれやすいため、容易に係合することができる。更に、噛み合い部32と噛み合い部32との隙間である噛み合い部間隔c2が、進入する突歯の先端部の歯厚に対してほぼ同じであっても、突歯21の先端部211が容易に噛み合い部32と噛み合い部32との間に進入することができるため、階段状突歯3の飛び込み部31と、係合する突歯21の先端部211との隙間(バックラッシュd)が抑制できる。
【0028】
また、本実施形態1のトルク断続装置は、階段状突歯3の噛み合い部32の側面32bと、当接する突歯21の先端部211の側面211cとが、噛み合った時に相補的な形状であるため、ガタが少なく係合できるため、バックラッシュが抑制できる。
【0029】
(実施形態2)
本実施形態2のトルク断続装置は、図8に示すように、第1回転体1と第2回転体2とが入れ替わっており、第1回転体1が第2回転体2に対して接近するように、軸線方向Bに移動する構成である。よって、基本的な構成は実施形態1のトルク断続装置と同じである。
【0030】
実施形態2のトルク断続装置は、突歯21と突歯21との間に進入するのが階段状突歯3の飛び込み部31である。突歯21の先端部211と先端部211との飛び込み部間隔c3は、階段状突歯3の噛み合い部32の歯厚を基準にしているため、飛び込み部31の歯厚に対して飛び込み部間隔c3は十分広くなり、飛び込みやすい。なお、噛み合い部間隔c4は、第1回転体1の噛み合い部32の歯厚が一番大きな部分が通ることができるだけの間隔があるため、飛び込み部31が進入するのに充分な間隔である。
【0031】
よって、階段状突歯3を備える第1回転体1が、階段状突歯3を備えない第2回転体2に対して接近して係合する構成であっても、基本的な作用効果は実施形態1のトルク断続装置と同じである。
【0032】
(実施形態3)
本実施形態3のトルク断続装置は、図9に示すように、第1回転体1及び第2回転体4の両方が実施形態1のトルク断続装置の第1回転体1と同様の階段状突歯3を備える。第1回転体1と第2回転体4とは、それぞれ同回転方向Aで相対回転している。そして、第2回転体4は第1回転体1に係合するために、接近するように軸線方向Bで移動する。第1回転体1と第2回転体4とが係合する様子は、実施形態1のトルク断続装置で図4図7を用いて説明したのと同じである。
【0033】
実施形態3のトルク断続装置は、実施形態1のトルク断続装置の作用効果を有し、更に第1回転体1及び第2回転体4の両方が階段状突歯3であるため、飛び込み部31と飛び込み部31との間に飛び込みやすい。その上、相補的な形状となるため、図10に示すように係合の際は互いの飛び込み部31と噛み合い部32との側面が当接し、二箇所の側面部分D、Eでの係合を確保できる。従って、噛み合い必要長さを稼ぐことができるため、第1回転体1及び第2回転体4の軸線方向の長さ(先太部分の側面31a、32bの長さ)を短縮することができる。
【0034】
(実施形態4)
本実施形態4のトルク断続装置で用いられる第1及び/又は第2回転体の階段状突歯5は、図11に示すように、先端部チャンファ面54の角度αと噛み合い部チャンファ面53の角度βとが異なる。対向する回転体としては、先端部チャンファ面54の角度αと噛み合い部チャンファ面53の角度βとが同じである階段状突歯3や、階段状に形成されていない突歯21を備える回転体の何れでも良い。
【0035】
(実施形態5)
本実施形態5のトルク断続装置で用いられる第1及び/又は第2回転体の階段状突歯6は、図12に示すように、全ての角が丸く成形されている。飛び込み部61の最先端60、先端部チャンファ面64と飛び込み部61の側面61aとの間の角、飛び込み部61の側面61aと噛み合い部チャンファ面63との間の角、噛み合い部チャンファ面63と噛み合い部62の側面62bとの間の角が丸い。このような形状を採用することで、トルク断続装置で用いられる回転体は、当接する際の摩擦が抑制され、また摩耗が抑制される。
【0036】
(実施形態6)
本実施形態6のトルク断続装置で用いられる第1回転体7は、図13に示すように、突歯71の飛び込み部711が周方向に非対称であり、更に斜めに形成されている。飛び込み部711の一方の側面711aと他方の側面711bとは傾斜角度も長さも異なる。そして、噛み合い部712も周方向に非対称であり、斜めに形成されている。噛み合い部712の一方の側面712aと他方の側面712bとは傾斜角度も長さも異なる。第2回転体8は、その突歯81が第1回転体7の突歯71と形状が同じであり、周方向で反対である。つまり、係合する際は、同じ傾斜角の側面同士が当接する。第2回転体8の突歯81の飛び込み部811が第1回転体7の突歯71の飛び込み部711と飛び込み部711との間に飛び込んできた際は、第2回転体8の飛び込み部811の一方の側面811aと第1回転体7の飛び込み部711の一方の側面711aとが当接するか、第2回転体8の飛び込み部811の他方の側面811bと第1回転体7の飛び込み部711の他方の側面711bとが当接する。第2回転体8の突歯81が軸線方向Bに更に移動して、第1回転体7と第2回転体8とが係合する際は、第2回転体8の噛み合い部812の一方の側面812aと第1回転体7の噛み合い部712の一方の側面712aとが当接するか、第2回転体8の噛み合い部812の他方の側面812bと第1回転体7の噛み合い部812の他方の側面712bとが当接する。
【0037】
第1回転体7の突歯71及び第2回転体8の突歯81は、側面が傾斜している。飛び込み部711、811は先細形状で、噛み合い部712、812は先太形状である。そのため、隣接する突歯71との飛び込み部間隔c5が広くなっており、飛び込んでくる突歯81も傾斜しており進入しやすい。進入して当接後は、傾斜面に沿って軸線方向Bの移動が促される。そして、係合の際は、隙間なく当接することができる。また、係合後は係合が外れにくい。
【0038】
本実施形態6のトルク断続装置は、周方向の一方側での押し分け頻度が高い噛み合いクラッチに用いることで、バックラッシュの低減や押し分け荷重の低減に有効である。図13において、第1回転体7は回転方向前側の側面と、第2回転体8は回転方向後側の側面とが当接して噛み合う噛み合いクラッチに特に効果的である。第2回転体8が軸線方向Bで移動して突歯81の飛び込み部811が飛び込んできた際、第2回転体8の飛び込み部811の一方の側面811aと第1回転体7の飛び込み部711の一方の側面711aとが当接し、傾斜面の形状に沿って突歯81が第1回転体7の突歯71と突歯71との間に導かれる。第2回転体8の突歯81が飛び込んで、飛び込み部811の一方の側面811aが第1回転体7の飛び込み部711の一方の側面711aに当接後、はじかれ、第2回転体8の飛び込み部811の他方の側面811bと第1回転体8の飛び込み部811の他方の側面711bとが当接した場合、両側面811b、711bによって軸線方向Bに導かれやすい。そのため、第2回転体8がはじかれた際には、突歯81は軸線方向Bに更に進入している。
【0039】
(実施形態7)
本実施形態7のトルク断続装置で用いられる第1回転体9は、図14に示すように、実施形態6のトルク断続装置で用いられた第1回転体7の突歯71の飛び込み部711が変形した形状の突歯91である。突歯91は、周方向の一方が周方向に切り欠かれたような形状の飛び込み部911と、実施形態6のトルク断続装置で用いられた第1回転体7の突歯71の噛み合い部712の形状の噛み合い部912とを備える。第1回転体9と係合する第2回転体8は、実施形態6のトルク断続装置で用いられた第2回転体8である。よって、説明を省略する。
【0040】
第1回転体9の飛び込み部911は、第2回転体8の飛び込み部811の一方の側面811aに対向する一方の側面911aがほぼ軸線方向Bに平行である。そして、第1回転体9の突歯91は、飛び込み部911と噛み合い部912との間に、飛び込み部911から噛み合い部912に向かって歯厚が大きくなるように傾斜した噛み合い部チャンファ面913が形成されている。
【0041】
本実施形態7のトルク断続装置は、実施形態6のトルク断続装置と同様に、周方向の一方側で押し分け頻度が高い噛み合いクラッチに採用するのが好ましい。第1回転体9に、第2回転体8が軸線方向Bで接近し、第1回転体9と第2回転体8とが係合する場合で説明する。まず、第1回転体9の突歯91の飛び込み部911と飛び込み部911との間に、第2回転体8の突歯81の飛び込み部811が飛び込んでくる。第1回転体9の飛び込み部911と飛び込み部911との間の飛び込み部間隔c6は、第1回転体9の飛び込み部911が周方向で切り欠いたような形状をしていることもあり、対向する第2回転体8の突歯81の飛び込み部811が進入するのに充分な広さがある。飛び込んだ第2回転体8の飛び込み部811は、一方の側面811aが第2回転体9の飛び込み部911の一方の側面911aに当接し、側面811aの傾斜形状によって、突歯81が軸線方向Bに導かれる。その際、第2回転体8の突歯81がはじかれても、第2回転体8の突歯81の飛び込み部811の他方の側面811bが第1回転体9の突歯91の飛び込み部911の他方の側面911bに当接し、互いの側面の傾斜によって軸線方向Bに更に導かれる。第1回転体9と第2回転体8とが係合する際は、当接する側面は、互いに同じ傾斜角の側面が当接するため、隙間なく係合できる。また、先太形状であるため、係合も外れにくい。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、、実施形態1〜5の階段状突歯(3、5、6)は、回転方向の前方側と後方側とが同じ形状であるが、一方のみを階段状に形成されたものでも良い。回転方向が一定であり、当接する側面が決まっているのであれば、当接する側面側のみを階段状に加工することで、加工時間や加工費用を抑制することができる。
【符号の説明】
【0043】
1,7,9:第1回転体、
2,4,8:第2回転体、21,71,81,91:突歯、211:歯先部、
212:歯元部、211a,212b,211c,31a,32b,61a,62b,711a,711b,712a,712b,811a,811b,812a,812b,911a,911b,912a,912b:側面、
213,34,54,64,913:先端部チャンファ面、3,5,6:階段状突歯、
31,51,61,711,811,911:飛び込み部(歯先部)、
32,52,62,712,812,912:噛み合い部(歯元部)、
33,53,63,913:噛み合い部チャンファ面、
60:最先端。
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図14