【実施例】
【0026】
本発明を実施するための形態を、
図1〜
図10を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の浮体式フラップゲートの概略構成を示した図である。
【0027】
図1において、21は例えば防波堤や防潮壁の、開口部の路面rsに設置される本発明の浮体式フラップゲートである。この浮体式フラップゲート21は、海洋(或いは河川)から生活空間や地下空間に水wが流入しようとする際、流入する水wの水圧を利用して、基端側22aの回転軸22cを支点として扉体22の先端側22bを起立揺動させて開口部を水密状態に遮断するものである。
【0028】
本発明の浮体式フラップゲート21は、
図1に示すように、扉体22の先端面22dにワイヤロープ24の一端を取付けている。この扉体22の先端面22dへのワイヤロープ24の取付け例として、
図1では、扉体22の先端面22dの例えば両側にブラケット23を取付け、これらブラケット23にワイヤロープ24の一端を取付けている。このワイヤロープ24の他端は、倒伏時の扉体22の先端面22dの、前記ブラケット23と相対する位置に設けた収納体25の前面に設けたスリット25aから内部に引き込まれている。
【0029】
なお、前記スリット25aは、
図1(d)のように、スリット25aと平行に切り目27aを入れたゴム板27で塞いでおけば、収納体25の内部へ塵などが入ることを防止できる。
【0030】
前記収納体25の内部には、例えば、カウンタウエイト26aと、上下2個の定滑車26b,26cからなる滑車群と、前記カウンタウエイト26aの上昇限を規定するストッパ26dを備えた扉体動作等補助ユニット26が関連配置されている。
【0031】
そして、収納体25のスリット25aから内部に引き込まれた前記ワイヤロープ24の他端は、下方の定滑車26cから上方の定滑車26bに巻き回された後、カウンタウエイト26aに取り付けられて、カウンタウエイト26aを吊り下げている。
【0032】
前記上下2個の定滑車26b,26cは、前記ワイヤロープ24を案内し、起立途中又は倒伏途中における扉体22の水平面に対する傾斜角θが所定角度になった時に前記カウンタウエイト26aが最下点となるような位置に設置する。なお、発明者らの調査結果によれば、前記所定角度の傾斜角θは15°〜60°の範囲であれば問題がないことが分かっている。
【0033】
つまり、下方に位置する定滑車26cは、扉体22が起立限になった時にカウンタウエイト26aがストッパ26dに当接する一方(
図2(a)参照)、倒伏時にはストッパ26dにぴったり当接するか、或いは当接しないように、その設置位置を決定する(
図2(b)参照)。
【0034】
すなわち、ワイヤロープ24の一端から、下方に位置する定滑車26cへのワイヤロープ24の巻き付け終了までの長さが、倒伏時の前記長さ(B1+A1)よりも起立限時の前記長さ(B2+A2)が長くなるように、前記定滑車26cの設置位置を決定する。或いは、倒伏時の前記長さ(B1+A1)と起立限時の前記長さ(B2+A2)が同じになるように、前記定滑車26cの設置位置を決定する。
【0035】
このようにすることで、扉体22の起立限位置を保ったまま、1個の定滑車とする場合に比べて、上方の定滑車26bの設置位置を低い位置にすることなく、扉体22を所定の起立限(角度)で支持することができる。また、上方の定滑車26bを高い位置に設置することで、カウンタウエイト26aの揚程を確保することができる。
【0036】
このカウンタウエイト26aの形状や、カウンタウエイト26aと滑車群の設置位置関係は、
図1,2に示したものに限らず、
図3〜
図6に例示したものでも良い。
【0037】
図3は、滑車群を構成する下方の定滑車26cを2個とし、上方の定滑車26bとの間でカウンタウエイト26aを昇降動させるものである(柱型)。この柱型の場合、
図1,2と同じカウンタウエイト26aを使用しても、扉体動作等補助ユニット26を収納する収納体25の奥行きD(
図3(a)の
紙面左右方向の長さ)を短くすることができる。
【0038】
図4は、
図1,2に示したカウンタウエイト26aよりも薄形の直方体状として、扉体動作等補助ユニット26を収納する収納体25の扉体幅方向長さL(
図4(b)の紙面上下方向の長さ)を短くしたものである(薄型)。この薄型の場合、扉体22の倒伏時、対をなす扉体動作等補助ユニット26を収納する収納体25間の間隔W(
図4(c)参照)を広くできる。
【0039】
図5は、
図1,2に示したカウンタウエイト26aの、下方の定滑車26cとの相対部分を凹ませ、当該凹ませた部分に下方の定滑車26cを挿入可能としたものである(コンパクト型)。このコンパクト型の場合、
図1,2と同タイプであっても、扉体動作等補助ユニット26を収納する収納体25の奥行きDを短くすることができる。
【0040】
図1〜
図5の例では、上方の定滑車2
6bと下方の定滑車2
6cのワイヤロープ24の案内面が同じ方向となるように配置しているが、
図6に示したように、上方の定滑車2
6bと下方の定滑車2
6cのワイヤロープ24の案内面が角度をなして配置したものでも良い(幅広型)。
【0041】
本発明の浮体式フラップゲート21は、倒伏状態にある扉体22の先端面22dのロープ取付け部との相対位置に設けた収納体25の内部に扉体動作等補助ユニット26を配置するので、扉体22の側部に扉体動作等補助ユニット26の収納スペースが不要になる。
【0042】
従って、扉体動作等補助ユニット26の収納スペースを有する側部戸当りが設置できない場所であっても浮体式フラップゲート21を設置することが可能になり、場合によっては、既設壁を側壁として使用することも可能である。
【0043】
また、本発明の浮体式フラップゲート21は、扉体22の倒伏時にはワイヤロープ24が収納体25の内部に収納されているので、美観が損なわれることがない。
【0044】
上記構成の本発明の浮体式フラップゲート21では、扉体22の起立時、及び扉体22の倒伏時は、以下に説明するような作用を奏する。
【0045】
(扉体22の起立時:
図7(a)〜(e))
浸水初期は、(a)図に示す出水前の倒伏状態から、カウンタウエイト26aが降下し、扉体22は起立方向に引っ張られて起立を補助される((b)図参照)。そして、水平面に対する扉体22の傾斜角θが例えば30°になると、扉体22とワイヤロープ24が一直線になり((c)図参照)、カウンタウエイト26aは最下端の位置となる。
【0046】
水平面に対する扉体22の傾斜角θが30°を超えると、扉体22の起立揺動によりカウンタウエイト26aが上昇するので、カウンタウエイト26aが抵抗となって扉体22の起立速度を減速し((d)図参照)、起立完了時((e)図参照)の衝撃力を緩和する。
【0047】
(起立状態の扉体22の倒伏時:
図7(f),(g))
倒伏初期は、カウンタウエイト26aが下降し、扉体22は倒伏方向に引っ張られて水位の低下に追従して倒伏する((f)図参照)。そして、水平面に対する扉体22の傾斜角θが例えば30°になると、扉体22とワイヤロープ24が一直線になり、カウンタウエイト26aは最下端の位置となる((c)と同じ状態)。
【0048】
水平面に対する扉体22の傾斜角θが例えば30°より小さくなると、扉体22の倒伏によりカウンタウエイト26aが上昇するので、カウンタウエイト26aが抵抗となって扉体22の倒伏速度を減速し((g)図参照)、倒伏完了時((a)図と同じ状態)の衝撃力を緩和する。
【0049】
本発明の浮体式フラップゲート21を構成する扉体動作等補助ユニット26は、
図1〜
図6に示した構成でなくても良い。
【0050】
例えば、
図8に示すように、カウンタウエイト26aの代わりに、圧縮コイルばね31を取り付けても良い。
【0051】
圧縮コイルばね31を使用する場合、例えば扉体22の傾斜角θが30°の時に、
図9(a)に示すように圧縮コイルばね31が自然長となるようにして、ばねによる扉体起立方向の旋回力が最小となるように設置する。そして、扉体22の倒伏時又は起立限時に、
図9(b)に示すように圧縮コイルばね31が圧縮されて、扉体
22の起立方向又は倒伏方向の旋回力が最大となるように設置する。
【0052】
一方、圧縮コイルばね31に代えて引張りコイルばね32を使用する場合は、扉体22の傾斜角θが30°で、
図10(a)に示すように引張りコイルばね32が自然長となるようにし、扉体22の倒伏時又は起立限時で、
図10(b)に示すように引張りコイルばね32が伸ばされるようにする。
【0053】
前記圧縮コイルばね31或いは引張りコイルばね32は、
図9や
図10に示したような線形のコイルばねに限らず、テーパコイルばね、円錐形コイルばね、鼓形コイルばね、樽形コイルばね、不等ピッチコイルばねのような非線形特性を有するばねを使用しても良い。
【0054】
また、軸中心側から順番に、例えば大径で長さの短い第1の圧縮ばね、中径で長さが中間の第2の圧縮ばね、小径で長さの長い第3の圧縮ばねからなる組合せコイルばねを用いて引張力を非線形とするものでも良い。
【0055】
この組合せコイルばねでは、扉体の倒伏時では、3つの圧縮ばねが全て縮んでいる状態である。そして、扉体の起立初期から起立前期までは、3つの圧縮ばねがそれぞれ伸び始め、起立前期になると第1の圧縮ばねが元の性質に戻る。
【0056】
次に、起立前期から扉体の起立中期までは、第2の圧縮ばねと第3の圧縮ばねが順次元の性質に戻り、3つの圧縮ばね全てが自然長に戻る。
【0057】
起立中期から扉体の起立完了までは、第3の圧縮ばね、第2の圧縮ばね、第1の圧縮ばねが順次縮んでいき、起立完了時には3つの圧縮ばねが全て縮んだ状態になる。
なお、倒伏時は前記起立時と逆になる。
【0058】
本発明は、前記の例に限るものではなく、各請求項に記載の技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
【0059】
例えば、前記実施例では、ワイヤロープ24を使用しているが、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、アラミド系、ポリアリレート系、超高密度ポリエチレンなどの繊維ロープを使用しても良い。
【0060】
また、上記の例では本発明の浮体式フラップゲート21を防波堤や防潮壁の開口部に設置する場合について説明したが、本発明の浮体式フラップゲート21の設置場所は防波堤や防潮壁の開口部に限らず、施設や地下通路の入口等に設置することもできる。