特許第6158508号(P6158508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158508
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】タッチ入力装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/045 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   G06F3/045 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-284079(P2012-284079)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-127071(P2014-127071A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月2日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】萩原 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】古川 正三
(72)【発明者】
【氏名】上野 豊
【審査官】 岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−157150(JP,A)
【文献】 特開2004−246743(JP,A)
【文献】 特開2000−029612(JP,A)
【文献】 特開2005−352628(JP,A)
【文献】 特開2005−242501(JP,A)
【文献】 特開2006−079635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に導電膜が設けられた下部基板と、
前記下部基板の上面に対向する面である下面に導電膜が設けられ、前記下部基板よりも線膨張係数が大きい上部フィルムと、
前記下部基板と前記上部フィルムとの間に設けられ、前記下部基板と前記上部フィルムとに接着され、前記上部フィルムに働く張力により前記上部フィルムの中央部側に向かうせん断変形が常に生じており、前記上部フィルムの膨張に追従する弾性体と、を備えることを特徴とするタッチ入力装置。
【請求項2】
前記弾性体を含む接着層は、前記弾性体である弾性接着剤と前記弾性接着剤よりも剛性の高い基材とが積層されていることを特徴とする請求項1記載のタッチ入力装置。
【請求項3】
前記接着層は、複数の前記弾性接着剤と複数の前記基材とが積層されていることを特徴とする請求項2記載のタッチ入力装置。
【請求項4】
前記弾性体を含む接着層は、前記弾性体の上面及び下面に、前記弾性体と異なる部材からなる粘着部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のタッチ入力装置。
【請求項5】
上面に導電膜が設けられた下部基板と、
前記下部基板との間に隙間を有して前記下部基板に接着され、前記下部基板の上面に対向する面である下面に導電膜が設けられた上部フィルムと、
前記下部基板と前記上部フィルムとの間に設けられ、前記上部フィルムの膨張に追従する弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記下部基板と前記上部フィルムとの間であって、前記下部基板と前記上部フィルムとを接着させる接着層よりも前記上部フィルムの中央部側に、前記下部基板の上面に垂直な方向に圧縮されて設けられていることを特徴とするタッチ入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチ入力装置に関し、例えば上部フィルムと下部基板との間に弾性体を有するタッチ入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器や業務用端末市場の拡大に伴い、容易に座標検出可能なタッチパネルやタッチパッド等のタッチ入力装置の需要が拡大している。タッチ入力装置には様々な方式があるが、その1つに抵抗膜方式のタッチ入力装置がある。抵抗膜方式のタッチ入力装置として、両面テープ又は接着剤等の接着層を用いて、上部フィルムと下部基板とを貼り合わせた構成が知られている(例えば、特許文献1から3参照)。また、上部フィルムと下部基板との間であって接着層よりも内側に、上部フィルム等の損傷を抑制するために応力緩和材を設ける構成が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−210866号公報
【特許文献2】特開2004−272651号公報
【特許文献3】特開2000−29611号公報
【特許文献4】特開2002−82772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上部フィルムと下部基板とが接着層により貼り合わされたタッチ入力装置では、各々の熱膨張係数及び/又は湿度膨張係数の違いから、温度及び/又は湿度の変化に伴い、上部フィルムが波打つような変形(以下、波打ち現象と称する)をしてしまうことがある。波打ち現象が生じると、見た目が悪くなると共に、所定の押圧力でタッチ操作をしても入力が検知されなくなってしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、波打ち現象の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上面に導電膜が設けられた下部基板と、前記下部基板の上面に対向する面である下面に導電膜が設けられ、前記下部基板よりも線膨張係数が大きい上部フィルムと、前記下部基板と前記上部フィルムとの間に設けられ、前記下部基板と前記上部フィルムとに接着され、前記上部フィルムに働く張力により前記上部フィルムの中央部側に向かうせん断変形が常に生じており、前記上部フィルムの膨張に追従する弾性体と、を備えることを特徴とするタッチ入力装置である。本発明によれば、波打ち現象の発生を抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記弾性体を含む接着層は、前記弾性体である弾性接着剤と前記弾性接着剤よりも剛性の高い基材とが積層されている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記接着層は、複数の前記弾性接着剤と複数の前記基材とが積層されている構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記弾性体を含む接着層は、前記弾性体の上面及び下面に、前記弾性体と異なる部材からなる粘着部が設けられている構成とすることができる。
【0011】
本発明は、上面に導電膜が設けられた下部基板と、前記下部基板との間に隙間を有して前記下部基板に接着され、前記下部基板の上面に対向する面である下面に導電膜が設けられた上部フィルムと、前記下部基板と前記上部フィルムとの間に設けられ、前記上部フィルムの膨張に追従する弾性体と、を備え、前記弾性体は、前記下部基板と前記上部フィルムとの間であって、前記下部基板と前記上部フィルムとを接着させる接着層よりも前記上部フィルムの中央部側に、前記下部基板の上面に垂直な方向に圧縮されて設けられていることを特徴とするタッチ入力装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、波打ち現象の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、比較例1に係るタッチ入力装置の断面図である。
図2図2は、比較例1に係るタッチ入力装置を高温高湿の環境下に投入した場合の断面図である。
図3図3は、実施例1に係るタッチ入力装置の断面図である。
図4図4は、上部フィルムを下面側から見た図である。
図5図5は、実施例1に係るタッチ入力装置を高温高湿の環境下に投入した場合の断面図である。
図6図6は、実施例2に係るタッチ入力装置の断面図である。
図7図7は、実施例3に係るタッチ入力装置の断面図である。
図8図8は、実施例3に係るタッチ入力装置を高温高湿の環境下に投入した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず初めに、比較例1に係るタッチ入力装置について説明する。図1は、比較例1に係るタッチ入力装置の断面図である。図1のように、比較例1のタッチ入力装置60は、下部基板62と、上部フィルム64と、下部基板62と上部フィルム64とを接着させる両面テープ又は接着剤からなる接着層66と、を有する。下部基板62の上面と上部フィルム64の下面とには導電膜(不図示)が設けられており、下部基板62と上部フィルム64とは、それぞれの導電膜が対向するように貼り合わされている。下部基板62は、例えばガラス基板である。上部フィルム64は、例えばPET(ポリエチレンテフタレート)フィルムである。ガラスの線膨張係数は例えば9.0×10−6/℃程度であり、PETの線膨張係数は例えば6.5×10−5/℃程度である。したがって、下部基板62と上部フィルム64とは線膨張係数が異なり、上部フィルム64は下部基板62に比べて線膨張係数が大きい。
【0015】
図2は、比較例1に係るタッチ入力装置を高温高湿の環境下に投入した場合の断面図である。図2のように、比較例1のタッチ入力装置60が高温高湿(例えば40℃、90%)の環境下に投入されると、上部フィルム64は下部基板62に比べて線膨張係数が大きいことから、上部フィルム64は下部基板62よりも大きく膨張する。しかしながら、上部フィルム64は接着層66によって下部基板62に接着されているため、上部フィルム64の膨張は制限され、その結果、上部フィルム64に波打ち現象68が生じてしまう。波打ち現象68が生じてしまうと、見た目が悪くなり、また、タッチ操作をしても入力が検知されなくなってしまうことがある。
【0016】
そこで、線膨張係数及び/又は湿度膨張係数が異なる下部基板と上部フィルムとを貼り合わせたタッチ入力装置において、波打ち現象の発生を抑制することが可能な実施例について以下に説明する。
【実施例1】
【0017】
図3は、実施例1に係るタッチ入力装置の断面図である。実施例1のタッチ入力装置は、抵抗膜方式のタッチパネルである。また、図3では、実施例1のタッチ入力装置を製造した直後の断面を示している。図3のように、実施例1のタッチ入力装置10は、下部基板12と、上部フィルム14と、下部基板12と上部フィルム14とをそれらの間に隙間16を有して接着させる接着層18と、を有する。下部基板12の上面と、下部基板12の上面に対向する面である上部フィルム14の下面とには、導電膜(図示せず)が設けられており、下部基板12と上部フィルム14とは、それぞれの導電膜が対向するように貼り合わされている。
【0018】
下部基板12は、線膨張係数が比較的小さい部材である。上部フィルム14は、下部基板12よりも線膨張係数が大きい部材である。例えば、下部基板12には、厚さ0.5mm〜1.5mmのガラス基板を用いることができ、上部フィルム14には、厚さ175μm〜200μmのPETフィルムを用いることができる。下部基板12の上面と上部フィルム14の下面とに設けられた導電膜は、透明な導電膜であり、例えば厚さ100Å〜150ÅのITO(酸化インジウム錫)膜を用いることができる。
【0019】
接着層18は、弾性体18aと、弾性体18aの上面及び下面に設けられ、弾性体18aとは異なる部材からなる両面テープ又は接着剤等の粘着部18bと、を含む。接着層18の厚さは、例えば100μm〜200μmである。弾性体18aには、例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ハイパロンゴム、ブタジエンゴム等のゴム、又は、弾性を有するカーボンナノチューブを用いることができる。
【0020】
図4は、上部フィルム14を下面側から見た図である。図4のように、接着層18は、上部フィルム14の全周に渡って設けられており、上部フィルム14の全周が接着層18によって下部基板12に接着されている。
【0021】
図3のように、上部フィルム14には、内側(上部フィルム14の中央部側)に向かう張力20が働いている。この張力20によって、接着層18には上部フィルム14の中央部側に向かうせん断変形22が生じている。つまり、接着層18は、上部フィルム14の中央部側に向かって弾性変形をしている。接着層18に弾性体18aが含まれていることで、上部フィルム14の小さな張力20によっても、大きなせん断変形22(即ち、大きなせん断ひずみ)を得ることができる。なお、大きなせん断変形22を得る観点から、弾性体18aは、せん断弾性係数の小さい材料を用いることが好ましい。
【0022】
実施例1のタッチ入力装置10は、例えば上部フィルム14を引っ張りつつ、上部フィルム14を接着層18を介して下部基板12に貼り合わせることで形成することができる。上部フィルム14が下部基板12に貼り合わされた後、上部フィルム14が収縮することによって内側に向かう張力20が生じ、接着層18にせん断変形22が生じるようになるためである。
【0023】
図5は、実施例1に係るタッチ入力装置を高温高湿の環境下に投入した場合の断面図である。図5のように、実施例1に係るタッチ入力装置10は、高温高湿(例えば40℃、90%)の環境下に投入されると、上部フィルム14の線膨張係数が下部基板12に比べて大きいことから、上部フィルム14は下部基板12よりも大きく膨張する。接着層18は、上部フィルム14の中央部側に向かうせん断変形22が生じているため、上部フィルム14の膨張に追従して、上部フィルム14の外側に向かって変形する。これにより、上部フィルム14の波打ち現象の発生が抑制される。なお、接着層18が上部フィルム14の外側に向かって変形するため、接着層18に生じているせん断変形22は小さくなり、上部フィルム14の張力20も緩和される。
【0024】
ここで、接着層18に初期的に与えるせん断変形22は、上部フィルム14の膨張量を考慮し、上部フィルム14が膨張した場合でも、接着層18にせん断変形22が生じているようにすることが好ましい。接着層18のせん断変形22が無くなってしまうと、それ以上の上部フィルム14の膨張に追従することが難しくなり、波打ち現象の発生を抑制することが難しくなるためである。
【0025】
なお、実施例1のタッチ入力装置10を高温高湿の環境下から取り出し、製造時の環境下に置くと、実施例1のタッチ入力装置10は、上部フィルム14が収縮して、図1に示した状態となる。
【0026】
実施例1によれば、下部基板12と上部フィルム14との間に、下部基板12と上部フィルム14とを接着させる、弾性体18aを含む接着層18が設けられている。上部フィルム14には、上部フィルム14の中央部側に向かう張力20が生じており、接着層18は、上部フィルム14の張力20によってせん断変形22をしている。このため、図5で説明したように、タッチ入力装置10が高温高湿の環境下に置かれた場合、接着層18(即ち、弾性体18a)は、上部フィルム14の膨張に追従する。これにより、上部フィルム14の波打ち現象の発生を抑制することができる。
【0027】
接着層18は、弾性体18aと、弾性体18aの上面及び下面に設けられた、弾性体18aと異なる材料からなる粘着部18bと、を含む場合を例に示したがこれに限られない。接着層18が、弾性体の性質を有する弾性接着剤からなる場合でもよい。弾性接着剤として、例えばシリコーン樹脂等が挙げられる。しかしながら、接着層18は、弾性接着剤からなる場合よりも、弾性体18aと粘着部18bとの構成からなる場合の方が好ましい。この理由を以下に説明する。接着層18が弾性接着剤からなる場合、上部フィルム14と下部基板12とを貼り合わせる際の弾性接着剤は液体状であることから、貼り合わせにおいて、上部フィルム14にかかる張力20に伴い、弾性接着剤が内側に流れてしまう場合がある。特に、接着層18に大きなせん断変形22を生じさせるために弾性接着剤を厚くした場合に顕著である。一方、実施例1のように、接着層18が弾性体18aと粘着部18bとからなる場合は、粘着性を有さない固体の弾性体18aを用いることができるため、弾性体18aを厚くしたとしても、上記のようなことは起こり難いためである。
【0028】
上部フィルム14の小さな張力20によって、接着層18に大きなせん断変形22を生じさせるために、弾性体18aは厚い場合が好ましく、例えば50μm以上の場合が好ましく、70μm以上の場合がより好ましく、90μm以上の場合がさらに好ましい。また、弾性体18aが厚すぎると、上部フィルム14の張力20によって接着層18のせん断変形22が大きくなり過ぎてしまい、上部フィルム14が膨張しても接着層18が追従し難くなる場合がある。したがって、弾性体18aの厚さは、150μm以下の場合が好ましく、130μm以下の場合がより好ましく、110μm以下の場合がさらに好ましい。なお、弾性体18aの材質によってせん断弾性係数の値や塑性変形を起こし易いか否かの性質等が変わることから、弾性体18aの材質によって厳密な好ましい厚みは変わる。
【0029】
接着層18は、図4のように、上部フィルム14の全周に渡って設けられている場合でもよいし、例えば、上部フィルム14の対向する2辺のみ、又は3辺のみに設けられている場合でもよい。また、上部フィルム14の4辺又は3辺に設けられている場合、それぞれの辺に設けられた接着層18は互いに分離している場合でもよい。
【実施例2】
【0030】
図6は、実施例2に係るタッチ入力装置の断面図である。実施例2のタッチ入力装置も、抵抗膜方式のタッチパネルである。また、図6では、実施例2のタッチ入力装置を製造した直後の断面を示している。図6のように、実施例2のタッチ入力装置30は、下部基板12と上部フィルム14とを接着させる接着層38が、例えばシリコーン樹脂等の弾性接着剤38aと、弾性接着剤38aよりも剛性の高い基材38bと、が積層された構成をしている。接着層38は、複数の弾性接着剤38aと複数の基材38bとが交互に積層されていて、例えば3層の弾性接着剤38aと2層の基材38bとが交互に積層されている。接着層38の厚さは、例えば200μm〜400μmである。基材38bは、例えばPET及び/又は金属等を主成分とする部材を用いることができる。接着層38には、上部フィルム14の張力20によってせん断変形22が生じている。その他の構成については、実施例1の図3と同じであるため説明を省略する。
【0031】
接着層38は、弾性体である弾性接着剤38aを含んでいるため、上部フィルム14の張力20によって、上部フィルム14の中央部側に向かうせん断変形22が生じている。このため、実施例2においても、接着層38は上部フィルム14の膨張に追従し、上部フィルム14の波打ち現象の発生が抑制される。
【0032】
実施例2では、接着層38は、弾性体である弾性接着剤38aと、弾性接着剤38aよりも剛性の高い基材38bと、が積層された構成をしている。接着層38のせん断変形22を大きくするために接着層38を厚くすると、接着層38が弾性接着剤38aだけからなる場合では、上部フィルム14の張力20によって接着層38のせん断変形22が大きくなり過ぎてしまう場合がある。このため、上部フィルム14が膨張しても接着層38が追従し難くなる場合がある。しかしながら、実施例2のように、剛性の高い基材38bを挟んで弾性接着剤38aを積層させることで、接着層38の剛性が高められて、接着層38が必要以上に変形することを抑制できる。よって、接着層38が上部フィルム14の膨張に追従し難くなることを抑制でき、その結果、上部フィルム14の波打ち現象の発生を抑制できる。また、複数の弾性接着剤38aと複数の基材38bとを積層させて接着層38を厚くすることで、上部フィルム14の小さな張力20によっても、大きなせん断変形22を得ることが容易にできる。
【実施例3】
【0033】
図7は、実施例3に係るタッチ入力装置の断面図である。実施例3のタッチ入力装置も、抵抗膜方式のタッチパネルである。また、図7では、実施例3のタッチ入力装置を製造した直後の断面を示している。図7のように、実施例3のタッチ入力装置40では、下部基板12と上部フィルム14とを接着させる接着層48は、両面テープ又は接着剤からなり、弾性体は含んでいない。上部フィルム14には張力が生じていなく、接着層48はせん断変形をしていない。接着層48よりも上部フィルム14の中央部側に、下部基板12の上面と上部フィルム14の下面とに接して、例えばポリウレタンなどの弾性体50が設けられている。弾性体50は、下部基板12の上面に対して垂直な方向に圧縮された状態となっている。その他の構成については、実施例1の図3と同じであるため説明を省略する。
【0034】
図8は、実施例3に係るタッチ入力装置を高温高湿の環境下に投入した場合の断面図である。図8のように、実施例3のタッチ入力装置40は、高温高湿(例えば40℃、90%)の環境下に投入されると、上部フィルム14の線膨張係数が下部基板12に比べて大きいことから、上部フィルム14は下部基板12よりも大きく膨張する。このとき、弾性体50が圧縮状態にあることから、上部フィルム14の膨張量に応じ、弾性体50が反発作用によって下部基板12の上面に対して垂直な方向に伸長する。これにより、上部フィルム14の入力面(上面)を平坦状に維持することができ、上部フィルム14の波打ち現象の発生が抑制される。
【0035】
なお、実施例4のタッチ入力装置40を高温高湿の環境下から取り出し、製造時の環境下に置くと、実施例4のタッチ入力装置40は、上部フィルム14が収縮して、図7に示した状態となる。
【0036】
実施例3によれば、下部基板12と上部フィルム14との間であって、接着層48よりも上部フィルム14の中央部側に、下部基板12の上面に垂直な方向に圧縮された弾性体50が設けられている。このため、図8で説明したように、タッチ入力装置40が高温高湿の環境下に置かれた場合、弾性体50は、上部フィルム14の膨張に追従して伸長する。これにより、上部フィルム14の波打ち現象の発生を抑制することができる。
【0037】
弾性体50は、上部フィルム14の入力面を大きく確保するために、接着層48に近接して設けられている場合が好ましい。また、弾性体50は、図4の接着層18のように、上部フィルム14の全周に渡って設けられている場合でもよいし、上部フィルム14の対向する2辺のみ、又は3辺のみに設けられている場合でもよい。弾性体50が上部フィルム14の4辺又は3辺に設けられている場合、それぞれの辺に設けられた弾性体50は互いに分離していてもよい。また、上部フィルム14の1つの辺に対して、弾性体50が点在して設けられていてもよい。
【0038】
実施例1から実施例3では、タッチパネルを例に説明したが、タッチパッドであってもよいことは言うまでもない。また、抵抗膜方式の場合に限らず、下部基板と上部フィルムとが隙間を有して接着されている構成であれば、その他の方式のタッチパネル又はタッチパッドの場合でもよい。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 タッチ入力装置
12 下部基板
14 上部フィルム
16 隙間
18 接着層
18a 弾性体
18b 粘着部
20 張力
22 せん断変形
30 タッチ入力装置
38 接着層
38a 弾性接着剤
38b 基材
40 タッチ入力装置
48 接着層
50 弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8