【文献】
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.,2009年,Vol.106, No.9,p.3396-3401
【文献】
Clin. Cancer Res.,2006年,Vol.12, No.9,p.2879-2887
【文献】
Biochem. Biophys. Res. Commun.,2007年,Vol.353 No.1,p.211-216
【文献】
J. Heapatol.,2010年 1月 6日,Vol.52, No.3,p.322-329
【文献】
Eur. J. Immunol.,2009年,Vol.39, No.9,p.2492-2501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列番号53で表されるヒトTIM−3のIgVドメインのアミノ酸配列のうち、67番から105番目のアミノ酸配列、67番から96番目のアミノ酸配列または67番から87番目のアミノ酸配列に結合し、かつADCC活性を有するモノクローナル抗体又は抗原結合活性を有する該抗体断片であって、
モノクローナル抗体が、以下の(i)〜(v)から選ばれるいずれか1である、モノクローナル抗体又は抗原結合活性を有する該抗体断片。
(i)CDR1〜3がそれぞれ配列番号1〜3で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号4〜6で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体。
(ii)CDR1〜3がそれぞれ配列番号11〜13で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号14〜16で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体。
(iii)CDR1〜3がそれぞれ配列番号21〜23で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号24〜26で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体。
(iv)配列番号8で表されるアミノ酸配列の20番目から140番目のアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつ配列番号10で表されるアミノ酸配列の21番目から127番目のアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むモノクローナル抗体。
(v)配列番号18で表されるアミノ酸配列の20番目から140番目のアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつ配列番号20で表されるアミノ酸配列の23番目から129番目のアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むモノクローナル抗体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明におけるヒトTIM−3としては、配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列を含み、かつヒトTIM−3の機能を有するポリペプチド、ならびに配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、最も好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつヒトTIM−3の機能を有するポリペプチドなどが挙げられる。
【0019】
配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換、又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得る方法としては、部位特異的変異導入法 [Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research、10、6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79、6409、(1982)、Gene、34、315(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488(1985)]などを用いて、例えば、配列番号53で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAに部位特異的変異を導入する方法が挙げられる。
【0020】
欠失、置換又は付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、好ましくは1個〜数十個、例えば、1〜20個、より好ましくは1個〜数個、例えば、1〜5個のアミノ酸である。
【0021】
ヒトTIM−3をコードする遺伝子としては、配列番号52又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示される塩基配列が挙げられる。配列番号52又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示される塩基配列において、1以上の塩基が欠失、置換又は付加された塩基配列からなり、かつヒトTIM−3の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、配列番号52又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する塩基配列、好ましくは80%以上の相同性を有する塩基配列、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する塩基配列からなり、かつヒトTIM−3の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子、ならびに配列番号52又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示される塩基配列を有するDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAからなり、かつヒトTIM−3の機能を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子なども本発明のヒトTIM−3をコードする遺伝子に包含される。
【0022】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、配列番号52又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示される塩基配列を有するDNAをプローブに用いた、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、サザンブロット・ハイブリダイゼーション法、又はDNAマイクロアレイ法などにより得られるハイブリダイズ可能なDNAを意味する。
【0023】
具体的には、ハイブリダイズしたコロニー若しくはプラーク由来のDNA、又は該配列を有するPCR産物またはオリゴDNAを固定化したフィルター又はスライドガラスを用いて、0.7〜1.0mol/Lの塩化ナトリウム存在下、65℃でハイブリダイゼーション[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)、DNA Cloning 1:Coretechniques、A Practical Approach、Second Edition、Oxford University、(1995)]を行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルター又はスライドグラスを洗浄することにより同定できるDNAを挙げることができる。
【0024】
前記ハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号52又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示される塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するDNA、好ましくは80%以上の相同性を有するDNA、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
【0025】
真核生物の蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列には、しばしば遺伝子の多型が認められる。本発明において用いられる遺伝子に、このような多型によって塩基配列に小規模な変異を生じた遺伝子も、本発明のTIM−3をコードする遺伝子に包含される。
【0026】
本発明における相同性の数値は、特に明示した場合を除き、当業者に公知の相同性検索プログラムを用いて算出される数値であってよいが、塩基配列については、BLAST[J.Mol.Biol.、215、403(1990)]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値など、アミノ酸配列については、BLAST2[Nucleic Acids Res.、25、3389(1997)、Genome Res.、7、649(1997)、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Education/BLASTinfo/information3.html]においてデフォルトのパラメータを用いて算出される数値などが挙げられる。
【0027】
デフォルトのパラメータとしては、G(Cost to open gap)が塩基配列の場合は5、アミノ酸配列の場合は11、−E(Cost to extend gap)が塩基配列の場合は2、アミノ酸配列の場合は1、−q(Penalty for nucleotide mismatch)が−3、−r(reward for nucleotide match)が1、−e(expect value)が10、−W(wordsize)が塩基配列の場合は11残基、アミノ酸配列の場合は3残基、−y[Dropoff(X) for blast extensions in bits] がblastnの場合は20、blastn以外のプログラムでは7、−X(X dropoff value forgapped alignment in bits)が15及びZ(final X dropoff value for gapped alignment in bits)がblastnの場合は50、blastn以外のプログラムでは25である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/html/blastcgihelp.html)。
【0028】
配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチドは、当業者に公知の方法によって作製することができ、例えば、配列番号52で示されるアミノ酸配列をコードするDNAの一部を欠失させ、これを含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養することにより作製することができる。
【0029】
また、上記の方法で作製されるポリペプチド又はDNAに基づいて、上記と同様の方法により、配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドを得ることができる。
【0030】
さらに、配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列の部分配列からなるポリペプチド、又は配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列の部分配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドは、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)法、t−ブチルオキシカルボニル(tBoc)法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0031】
本発明におけるヒトTIM−3の細胞外領域としては、例えば、配列番号53で示される該ポリペプチドのアミノ酸配列を公知の膜貫通領域予測プログラムSOSUI(http://bp.nuap.nagoya−u.ac.jp/sosui/sosui_submit.html)、TMHMM ver.2(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM−2.0/)、ExPASy Proteomics Server(http://Ca.expasy.org/)又はSMART(http://smart.embl−heidelberg.de/)などを用いて予測された領域などが挙げられる。
【0032】
本発明におけるヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列としては、SMARTにおいて予測される細胞外ドメインである、配列番号53で表されるアミノ酸配列の1番目から201番目までが挙げられる。
【0033】
本発明におけるヒトTIM−3の細胞外領域の立体構造としては、配列番号53又はGenBankアクセッション番号NM_032782で示されるアミノ酸配列を含むヒトTIM−3の細胞外領域が天然状態でとりうる構造と同等の構造を有していればいずれの構造でもよい。ヒトTIM−3の細胞外領域が天然状態でとりうる立体構造とは、細胞膜上に発現しているヒトTIM−3の天然型の立体構造のことをいう。
【0034】
本発明においてヒトTIM−3の機能としては、リガンドとなる蛋白質(例えば、ガレクチン−9)との結合により、Th1細胞にアポトーシスを誘導するなどのメカニズムでTh1応答を阻害し、例えば末梢性寛容を誘導することをいう。また、貪食細胞上においては、受容体としてアポトーシス細胞を認識することをいう。
【0035】
本発明のモノクローナル抗体(以下、本発明の抗体ともいう。)又はその抗体断片が、ヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合することは、固相サンドイッチ法などを用いたラジオイムノアッセイ、又は酵素免疫測定法(ELISA)などを用いたヒトTIM−3を発現した細胞に対する公知の免疫学的検出法、好ましくは蛍光細胞染色法などの特定の抗原を発現した細胞と特定抗原に対する抗体の結合性を調べることができる方法により確認することができる。
【0036】
例えば、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いる蛍光抗体染色法[Cancer Immunol.Immunother.、36、373(1993)]、フローサイトメトリーを用いる蛍光細胞染色法、又はBiacoreシステム(GEヘルスケア社製)などを用いた表面プラズモン共鳴などの方法が挙げられる。
【0037】
また、公知の免疫学的検出法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを組み合わせて確認することもできる。
【0038】
ヒトTIM−3を発現した細胞としては、該TIM−3を発現していればいずれの細胞でもよく、例えばヒト体内に天然に存在する細胞、ヒト体内に天然に存在する細胞から樹立された細胞株、又は遺伝子組換え技術により得られた細胞などが挙げられる。
【0039】
ヒト体内に天然に存在する細胞としては、例えば、がん、自己免疫疾患またはアレルギー性疾患の患者体内において該TIM−3が発現している細胞が挙げられ、具体的には、Th1細胞、マクロファージ及び樹状細胞などが挙げられる。
【0040】
ヒト体内に天然に存在する細胞から樹立された細胞株としては、例えば、前記のがん患者から得られた該TIM−3が発現している細胞を株化して得られた細胞株のうち、該TIM−3を発現している細胞株が挙げられる。例えば、ヒトから樹立された細胞株である急性骨髄性白血病由来細胞株KG−1[American Type Culture Collection(ATCC)番号:CCL−246]又はバーキットリンパ腫由来細胞株Daudi(ATCC番号:CCL−213)などが挙げられる。
【0041】
遺伝子組換え技術により得られた細胞としては、具体的には、例えば、該TIM−3をコードするcDNAを含む発現ベクターを昆虫細胞又は動物細胞などに導入することにより得られる、該TIM−3を発現した細胞などが挙げられる。
【0042】
また本発明は、ヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合し、ADCC活性を発揮するモノクローナル抗体に関する。
【0043】
本発明におけるADCC活性とは、細胞表面のヒトTIM−3に結合した抗体が、Fc部分を介して主にナチュラルキラー細胞(以下NK細胞と表記する)表面のFcγRIIIaに結合し、その結果、NK細胞から放出されるパーフォリンまたはグランザイムなどの細胞傷害性分子によって生じる細胞融解反応である[Clark M、Chemical Immunology,65,88(1997);Gorter Aら、Immunol.Today,20,576(1999)]。
【0044】
本発明の抗体としては、ヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造を認識し、かつ該細胞外領域に結合する抗体またはその抗体断片、もしくはヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合し、ADCC活性を有するモノクローナル抗体または抗体断片であればいずれの抗体も包含される。
【0045】
本発明の抗体としては、具体的には、配列番号53で表されるヒトTIM−3のアミノ酸配列における、1番目〜201番目のアミノ酸配列からなる細胞外領域のうち、好ましくは67番目〜105番目のアミノ酸配列、より好ましくは67番目〜96番目のアミノ酸配列、さらに好ましくは67番目〜87番目のアミノ酸配列、から選ばれるいずれかのアミノ酸配列、またはその立体構造に結合する抗体が挙げられる。
【0046】
前記抗体として、具体的には、以下の(i)〜(iii)のモノクローナル抗体およびその抗体断片が挙げられる。
(i)相補性決定領域(complementarity deterining region、以下CDRと記す)1〜3がそれぞれ配列番号1〜3で表されるアミノ酸配列を含む抗体の重鎖(以下、H鎖と記す)を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号4〜6で表されるアミノ酸配列を含む抗体の軽鎖(以下、L鎖と記す)を含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
(ii)CDR1〜3がそれぞれ配列番号11〜13で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号14〜16で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
(iii)CDR1〜3がそれぞれ配列番号21〜23で表されるアミノ酸配列を含む抗体のH鎖を含み、かつCDR1〜3がそれぞれ配列番号24〜26で表されるアミノ酸配列を含む抗体のL鎖を含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
【0047】
また、本発明のモノクローナル抗体としてより具体的には、以下の(a)および(b)のモノクローナル抗体及びその抗体断片が挙げられる。
(a)配列番号8で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつ配列番号10で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
(b)配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつ配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むモノクローナル抗体及びその抗体断片
【0048】
さらに、本発明のモノクローナル抗体としては、前記モノクローナル抗体と競合して、ヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体及びその抗体断片、並びに前記モノクローナル抗体が結合するヒトTIM−3の細胞外領域上に存在するエピトープと、同じエピトープに結合するモノクローナル抗体及びその抗体断片を挙げることができる。
【0049】
本発明において、モノクローナル抗体と競合する抗体とは、本発明のモノクローナル抗体と同一または部分的に同一のヒトTIM−3の細胞外領域にエピトープ(抗原決定基ともいう)を有し、該エピトープに結合する抗体をいう。本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体とは、本発明のモノクローナル抗体が認識するヒトTIM−3のアミノ酸配列と同じ配列を認識し結合する抗体をいう。
【0050】
本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマにより生産される抗体、又は抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した形質転換体により生産される遺伝子組換え抗体を挙げることができる。
【0051】
モノクローナル抗体とは、単一クローンの抗体産生細胞が分泌する抗体であり、ただ一つのエピトープ(抗原決定基ともいう)を認識し、モノクローナル抗体を構成するアミノ酸配列(1次構造)が均一であることが特徴である。
【0052】
エピトープとしては、例えば、モノクローナル抗体が認識し、結合する単一のアミノ酸配列、アミノ酸配列からなる立体構造、糖鎖が結合したアミノ酸配列及び糖鎖が結合したアミノ酸配列からなる立体構造などが挙げられる。
【0053】
本発明のモノクローナル抗体は、配列番号53で表されるヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列のうち、22番目〜131番目のアミノ酸配列で表されるヒトTIM−3のIgVドメインのアミノ酸配列に結合することが好ましい。具体的には、本発明のモノクローナル抗体が結合するアミノ酸配列は、配列番号53の67番目〜105番目のアミノ酸配列であることが好ましく、67番目〜96番目のアミノ酸配列であることがより好ましく、67番目〜87番目のアミノ酸配列であることがさらに好ましい。
【0054】
本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープは、配列番号53で表されるヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列のうち、22番目〜131番目のアミノ酸配列で表されるヒトTIM−3のIgVドメインに含まれることが好ましい。具体的には、本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープは、67番目〜105番目のアミノ酸配列の中に含まれることが好ましく、67番目〜96番目までのアミノ酸配列の中に含まれることがより好ましく、67番目〜87番目までのアミノ酸配列の中に含まれることがさらに好ましい。
【0055】
本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープのアミノ酸配列は、ヒトTIM−3のIgVドメインのアミノ酸配列のうち、配列番号53の67番目〜87番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1のアミノ酸を含むことが好ましく、67番目、74番目、76番目、78番目、79番目、81番目、83番目および85番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1のアミノ酸を含むことがより好ましい。
【0056】
また、本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープのアミノ酸配列は、ヒトTIM−3のIgVドメインのアミノ酸配列のうち、配列番号53の67番目〜87番目のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも連続した2以上のアミノ酸を含むことが好ましく、67番目、74番目、76番目、78番目、79番目、81番目、83番目および85番目のアミノ酸から選ばれる少なくとも1のアミノ酸を含み、かつ配列番号53の67番目〜87番目のアミノ酸配列から選ばれる少なくとも連続した2以上のアミノ酸を含むことがより好ましい。
【0057】
具体的には、本発明のモノクローナル抗体が結合するエピトープのアミノ酸配列としては、配列番号53の67番目〜74番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、67番目〜76番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、67番目〜78番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、67番目〜79番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、67番目〜81番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、67番目〜83番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、67番目〜85番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、
74番目〜76番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、74番目〜78番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、74番目〜79番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、74番目〜81番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、74番目〜83番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、74番目〜85番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、
76番目〜78番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、76番目〜79番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、76番目〜81番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、76番目〜83番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、76番目〜85番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、
78番目〜79番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、78番目〜81番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、78番目〜83番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、78番目〜85番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、
79番目〜81番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、79番目〜83番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、79番目〜85番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、
81番目〜83番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、81番目〜85番目のアミノ酸を含むアミノ酸配列、または、
83番目〜85番のアミノ酸を含むアミノ酸配列、などが挙げられる。
【0058】
ハイブリドーマは、例えば、上記のヒトTIM−3を発現した細胞などを抗原として調製し、該抗原を免疫した動物より抗原特異性を有する抗体生産細胞を誘導し、さらに、該抗体生産細胞と骨髄腫細胞とを融合させることにより、調製することができる。該ハイブリドーマを培養するか、または該ハイブリドーマ細胞を動物に投与して該動物を腹水がん化させ、該培養液又は腹水を分離、精製することにより抗TIM−3モノクローナル抗体を取得することができる。
【0059】
抗原を免疫する動物としては、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができるが、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、ニワトリ又はラビットなどが用いられる。また、このような動物から抗体産生能を有する細胞を取得し、該細胞にin vitroで免疫を施した後に、骨髄腫細胞と融合して作製したハイブリドーマが生産する抗体なども本発明の抗体に包含される。
【0060】
本発明において遺伝子組換え抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト型CDR移植抗体、ヒト抗体又は抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体を包含する。遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を有し、抗原性が低く、血中半減期が延長されたものは、治療薬として好ましい。遺伝子組換え抗体は、例えば上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものが挙げられる。
【0061】
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVH及びVLとヒト抗体の重鎖定常領域(以下、CHと記す)及び軽鎖定常領域(以下、CLと記す)とからなる抗体をいう。本発明のヒト型キメラ抗体は、ヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより、VH及びVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体のCH及びCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0062】
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3またはhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることができる。
【0063】
本発明のヒト型キメラ抗体として具体的には、配列番号28で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつが配列番号30で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むキメラ抗体が挙げられる。
【0064】
さらに、本発明のキメラ抗体としては、本発明のモノクローナル抗体と競合して、ヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するキメラ抗体及び上述のキメラ抗体が結合するヒトTIM−3の細胞外領域上に存在するエピトープと、同じエピトープに結合するキメラ抗体を挙げることができる。
【0065】
ヒト型CDR移植抗体とは、ヒト化抗体という場合もあり、ヒト以外の動物の抗体のVH及びVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVH及びVLの適切な位置に移植した抗体をいう。本発明のヒト型CDR移植抗体は、ヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するヒト以外の動物のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから産生されるヒト以外の動物の抗体のVH及びVLのCDRのアミノ酸配列を任意のヒト抗体のVH及びVLのフレームワーク領域(以下、FRと表記する)に移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCH及びCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、動物細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0066】
ヒト型CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、好ましくはhIgGクラスのものが用いられ、さらにhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3又はhIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいずれのものでもよく、κクラスまたはλクラスのものを用いることができる。
【0067】
本発明のヒト型CDR移植抗体としては、具体的には、CDR1〜3が配列番号21〜23で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVHを含み、かつCDR1〜3が配列番号24〜26で表されるアミノ酸配列を含む抗体のVLを含むヒト化抗体が挙げられる。
【0068】
本発明のヒト化抗体として、具体的には、以下の(a)VHおよび(b)VLの少なくとも一方を含むヒト化抗体が挙げられる。
(a)配列番号67のアミノ酸配列、または配列番号67のアミノ酸配列の12番目のLys、20番目のVal、38番目のArg、40番目のAla、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、72番目のAla、74番目のThr、98番目のArg、および113番目のValから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む抗体のVH
(b)配列番号69のアミノ酸配列、または配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeu、13番目のAla、15番目のVal、36番目のTyr、43番目のAla、44番目のPro、46番目のLeu、71番目のPhe、および85番目のThrから選ばれる少なくとも1つのアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含む抗体のVL
【0069】
更に、本発明のヒト化抗体に含まれるVHとしては、以下の(1)〜(8)が好ましい。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLys、20番目のVal、38番目のArg、40番目のAla、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、72番目のAla、74番目のThr、98番目のArg、および113番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLys、38番目のArg、40番目のAla、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、72番目のAla、74番目のThr、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のVal、38番目のArg、48番目のMet、68番目のVal、70番目のIle、72番目のAla、98番目のArg、および113番目のValが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArg、40番目のAla、48番目のMet、67番目のArg、72番目のAla、74番目のThr、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLys、67番目のArg、68番目のVal、72番目のAla、74番目のThr、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArg、40番目のAla、48番目のMet、67番目のArg、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArg、48番目のMet、67番目のArg、および74番目のThrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArg、48番目のMet、および98番目のArgが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVH
【0070】
前記VHのアミノ酸配列としては、例えば、配列番号67のアミノ酸配列中の、12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、または113番目のValをLeuに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0071】
12個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、配列番号67のアミノ酸配列中の、12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列が挙げられる。
【0072】
11個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(12)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0073】
10個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(8)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0074】
8個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(13)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、98番目のArgをGlyに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0075】
7個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(11)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0076】
6個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(16)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0077】
5個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、70番目のIleをLeuに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、72番目のAlaをValに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、74番目のThrをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0078】
4個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(8)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および74番目のThrをLysに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および72番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
【0079】
3個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(9)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、38番目のArgをLysに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および72番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、48番目のMetをIleに、および74番目のThrをLysに置換したアミノ酸配列
【0080】
2個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(21)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、および38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および40番目のAlaをArgに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および72番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および74番目のThrをLysに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号67のアミノ酸配列中の40番目のAlaをArgに、および48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(16)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(17)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列
(18)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および72番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列
(19)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および74番目のThrをLysに置換したアミノ酸配列
(20)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(21)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに、および113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
【0081】
1個の改変が導入されたVHのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(12)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号67のアミノ酸配列中の12番目のLysをValに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号67のアミノ酸配列中の20番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号67のアミノ酸配列中の38番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号67のアミノ酸配列中の40番目のAlaをArgに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号67のアミノ酸配列中の48番目のMetをIleに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号67のアミノ酸配列中の67番目のArgをLysに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号67のアミノ酸配列中の68番目のValをAlaに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号67のアミノ酸配列中の70番目のIleをLeuに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号67のアミノ酸配列中の72番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号67のアミノ酸配列中の74番目のThrをLysに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号67のアミノ酸配列中の98番目のArgをGlyに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号67のアミノ酸配列中の113番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
【0082】
また、本発明のヒト化抗体に含まれるVLとしては、以下の(1)〜(6)が好ましい。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeu、13番目のAla、15番目のVal、36番目のTyr、43番目のAla、44番目のPro、46番目のLeu、71番目のPhe、および85番目のThrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeu、15番目のVal、36番目のTyr、44番目のPro、46番目のLeu、71番目のPhe、および85番目のThrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のVal、36番目のTyr、44番目のPro、46番目のLeu、71番目のPhe、および85番目のThrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyr、43番目のAla、44番目のPro、46番目のLeu、および85番目のThrが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のVal、36番目のTyr、46番目のLeu、および71番目のPheが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyr、および44番目のProが、他のアミノ酸残基に置換されたアミノ酸配列を含むVL
【0083】
前記VLのアミノ酸配列としては、配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換する改変から選ばれる少なくとも1つの改変が導入されたアミノ酸配列が挙げられる。
【0084】
9個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列が挙げられる。
【0085】
8個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(9)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
【0086】
7個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(9)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
【0087】
6個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(6)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
【0088】
5個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、および46番目のLeuをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
【0089】
4個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(10)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、46番目のLeuをGlyに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、および46番目のLeuをGlyに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
【0090】
3個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(7)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、36番目のTyrをLeuに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の13番目のAlaをValに、36番目のTyrをLeuに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、および46番目のLeuをGlyに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、44番目のProをPheに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
【0091】
2個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(15)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、および36番目のTyrをLeuに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の13番目のAlaをValに、および36番目のTyrをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および36番目のTyrをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、および43番目のAlaをSerに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、および46番目のLeuをGlyに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(10)配列番号69のアミノ酸配列中の13番目のAlaをValに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(11)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(12)配列番号69のアミノ酸配列中の43番目のAlaをSerに、および44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(13)配列番号69のアミノ酸配列中の44番目のProをPheに、および46番目のLeuをGlyに置換したアミノ酸配列
(14)配列番号69のアミノ酸配列中の44番目のProをPheに、および71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(15)配列番号69のアミノ酸配列中の44番目のProをPheに、および85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
【0092】
1個の改変が導入されたVLのアミノ酸配列としては、具体的には、例えば、以下の(1)〜(9)のアミノ酸配列が挙げられる。
(1)配列番号69のアミノ酸配列中の11番目のLeuをMetに置換したアミノ酸配列
(2)配列番号69のアミノ酸配列中の13番目のAlaをValに置換したアミノ酸配列
(3)配列番号69のアミノ酸配列中の15番目のValをLeuに置換したアミノ酸配列
(4)配列番号69のアミノ酸配列中の36番目のTyrをLeuに置換したアミノ酸配列
(5)配列番号69のアミノ酸配列中の43番目のAlaをSerに置換したアミノ酸配列
(6)配列番号69のアミノ酸配列中の44番目のProをPheに置換したアミノ酸配列
(7)配列番号69のアミノ酸配列中の46番目のLeuをGlyに置換したアミノ酸配列
(8)配列番号69のアミノ酸配列中の71番目のPheをTyrに置換したアミノ酸配列
(9)配列番号69のアミノ酸配列中の85番目のThrをAspに置換したアミノ酸配列
【0093】
また、本発明のヒト化抗体の具体例としては、抗体のVHが配列番号67および/または抗体のVLが配列番号69のアミノ酸配列を含むヒト化抗体、抗体のVHが配列番号67および/または抗体のVLが
図2で示されるいずれかのアミノ酸配列を含むヒト化抗体、または、抗体のVHが
図1で示されるいずれかのアミノ酸配列および/または抗体のVLが配列番号69のアミノ酸配列を含むヒト化抗体などが挙げられる。
【0094】
さらに、本発明のヒト化抗体としては、本発明のモノクローナル抗体と競合して、ヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するヒト化抗体及び上述のヒト化抗体が結合するヒトTIM−3の細胞外領域上に存在するエピトープと、同じエピトープに結合するヒト化抗体を挙げることができる。
【0095】
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体をいうが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリー及びヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども含まれる。
【0096】
ヒト体内に天然に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルスなどを感染させ不死化し、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養上清中より該抗体を精製することができる。
【0097】
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を表面に発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに、遺伝子工学的手法により2本の完全なH鎖及び2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
【0098】
ヒト抗体産生トランスジェニック動物は、ヒト抗体遺伝子が細胞内に組込まれた動物を意味する。具体的には、例えば、マウスES細胞へヒト抗体遺伝子を導入し、該ES細胞をマウスの初期胚へ移植後、発生させることによりヒト抗体産生トランスジェニックマウスを作製することができる。ヒト抗体産生トランスジェニック動物からのヒト抗体は、通常のヒト以外の動物で行われているハイブリドーマ作製方法を用い、ヒト抗体産生ハイブリドーマを取得し、培養することで培養上清中にヒト抗体を産生蓄積させることにより作製できる。
【0099】
上述の抗体又は抗体断片を構成するアミノ酸配列において、1つ以上のアミノ酸が欠失、付加、置換又は挿入され、かつ上述の抗体又はその抗体断片と同様な活性を有するモノクローナル抗体又はその抗体断片も、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片に包含される。
【0100】
欠失、置換、挿入及び/又は付加されるアミノ酸の数は1個以上でありその数は特に限定されないが、部位特異的変異導入法[Molecular Cloning 2nd Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research、10、6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、79、6409(1982)、Gene、34、315(1985)、Nucleic Acids Research、13、4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、488(1985)]などの周知の技術により、欠失、置換もしくは付加できる程度の数である。例えば、好ましくは1〜数十個、より好ましくは1〜20個、さらに好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個である。
【0101】
上記の抗体のアミノ酸配列において1つ以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入又は付加されたとは、次のことを示す。即ち、同一配列中の任意、かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中において、1又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入又は付加があることを意味する。また、欠失、置換、挿入又は付加が同時に生じる場合もあり、置換、挿入又は付加されるアミノ酸残基は天然型と非天然型いずれの場合もある。
【0102】
天然型アミノ酸残基としては、例えば、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、又はL−システインなどが挙げられる。
【0103】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の好ましい例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2、4−ジアミノブタン酸、2、3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
g群:フェニルアラニン、チロシン
【0104】
本発明において、抗体断片としては、Fab、F(ab’)
2、Fab’、一本鎖抗体(scFv)、二量体化V領域(diabody)、ジスルフィド安定化V領域(dsFv)及びCDRを含むペプチドなどが挙げられる。
【0105】
Fabは、IgGを蛋白質分解酵素であるパパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0106】
本発明のFabは、ヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体をパパインで処理して得ることができる。また、該抗体のFabをコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、Fabを製造することもできる。
【0107】
F(ab’)
2は、IgGのヒンジ領域の2個のジスルフィド結合の下部を蛋白質分解酵素であるペプシンで分解して得られた、2つのFab領域がヒンジ部分で結合して構成された、分子量約10万の抗原結合活性を有する断片である。
【0108】
本発明のF(ab’)
2は、ヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体をペプシンで処理して得ることができる。また、下記のFab’をチオエーテル結合またはジスルフィド結合させ、作製することもできる。
【0109】
Fab’は、前記F(ab’)
2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明のFab’は、本発明のヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するF(ab’)
2をジチオスレイトールなどの還元剤で処理して得ることができる。また、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、Fab’を製造することもできる。
【0110】
scFvは、1本のVHと1本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと表記する)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドで、抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0111】
本発明のscFvは、本発明のヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0112】
diabodyは、scFvが二量体化した抗体断片で、二価の抗原結合活性を有する抗体断片である。二価の抗原結合活性は、同一であることもできるし、一方を異なる抗原結合活性とすることもできる。
【0113】
本発明のdiabodyは、本発明のヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAをペプチドリンカーのアミノ酸配列の長さが8残基以下となるように構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0114】
dsFvは、VH及びVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基は既知の方法[Protein Engineering、7、697(1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。
【0115】
本発明のdsFvは、本発明のヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体のVH及びVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。
【0116】
CDRを含むペプチドは、VH又はVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接又は適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
【0117】
本発明のCDRを含むペプチドは、本発明のヒトTIM−3を特異的に認識し、かつ該細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体のVH及びVLのCDRをコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物用発現ベクターまたは真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法、又はtBoc法などの化学合成法によって製造することもできる。
【0118】
本発明のモノクローナル抗体には、本発明のヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体又はその抗体断片に放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、蛋白質、又は抗体医薬などを化学的または遺伝子工学的に結合させた抗体の誘導体を包含する。
【0119】
本発明における、抗体の誘導体は、本発明のヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体又はその抗体断片のH鎖またはL鎖のN末端側またはC末端側、抗体又はその抗体断片中の適当な置換基または側鎖、さらにはモノクローナル抗体又はその抗体断片中の糖鎖などに、放射性同位元素、低分子の薬剤、高分子の薬剤、免疫賦活剤、蛋白質又は抗体医薬などを化学的手法[抗体工学入門、地人書館(1994)]により結合させることにより製造することができる。
【0120】
また、本発明のヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体又は抗体断片をコードするDNAと、結合させたい蛋白質又は抗体医薬をコードするDNAを連結させて発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを適当な宿主細胞へ導入し、発現させる遺伝子工学的手法より製造することができる。
【0121】
放射性同位元素としては、例えば、
131I、
125I、
90Y、
64Cu、
99Tc、
77Lu、又は
211Atなどが挙げられる。放射性同位元素は、クロラミンT法などによって抗体に直接結合させることができる。また、放射性同位元素をキレートする物質を抗体に結合させてもよい。キレート剤としては、1−イソチオシアネートベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)などが挙げられる。
【0122】
低分子の薬剤としては、例えば、アルキル化剤、ニトロソウレア剤、代謝拮抗剤、抗生物質、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン療法剤、ホルモン拮抗剤、アロマターゼ阻害剤、P糖蛋白阻害剤、白金錯体誘導体、M期阻害剤若しくはキナーゼ阻害剤などの抗がん剤[臨床腫瘍学、癌と化学療法社(1996)]、又はハイドロコーチゾン、プレドニゾンなどのステロイド剤、アスピリン、インドメタシンなどの非ステロイド剤、金チオマレート、ペニシラミンなどの免疫調節剤、サイクロフォスファミド、アザチオプリンなどの免疫抑制剤、マレイン酸クロルフェニラミン若しくはクレマシチンのような抗ヒスタミン剤などの抗炎症剤[炎症と抗炎症療法、医歯薬出版株式会社(1982)]などが挙げられる。
【0123】
抗がん剤としては、例えば、アミフォスチン(エチオール)、シスプラチン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロフォスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、ゲムシタビン(ゲムザール)、ダウノルビシン、プロカルバジン、マイトマイシン、シタラビン、エトポシド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、フルオロウラシル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、ダウノマイシン、ペプロマイシン、エストラムスチン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテア)、アルデスロイキン、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、10−ヒドロキシ−7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、イリノテカン(CPT−11)、ノギテカン、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、ヒドロキシカルバミド、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパラガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、ゴセレリン、リュープロレニン、フルタミド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル、ハイドロコーチゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ビンデシン、ニムスチン、セムスチン、カペシタビン、トムデックス、アザシチジン、UFT、オキザロプラチン、ゲフィチニブ(イレッサ)、イマチニブ(STI571)、エルロチニブ、FMS−like−tyrosine kinase 3(Flt3)阻害剤、Vascular endothelialgrowth factor receptor(VEGFR)阻害剤、fibroblastgrowth factor receptor(FGFR)阻害剤、イレッサ、タルセバなどのepidermal growth factor receptor(EGFR)阻害剤、ラディシコール、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン、ラパマイシン、アムサクリン、オール−トランスレチノイン酸、サリドマイド、アナストロゾール、ファドロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、金チオマレート、D−ペニシラミン、ブシラミン、アザチオプリン、ミゾリビン、シクロスポリン、ラパマイシン、ヒドロコルチゾン、ベキサロテン(ターグレチン)、タモキシフェン、デキサメタゾン、プロゲスチン類、エストロゲン類、アナストロゾール(アリミデックス)、ロイプリン、アスピリン、インドメタシン、セレコキシブ、アザチオプリン、ペニシラミン、金チオマレート、マレイン酸クロルフェニラミン、クロロフェニラミン、クレマシチン、トレチノイン、ベキサロテン、砒素、ボルテゾミブ、アロプリノール、カリケアマイシン、イブリツモマブチウキセタン、タルグレチン、オゾガミン、クラリスロマシン、ロイコボリン、イファスファミド、ケトコナゾール、アミノグルテチミド、スラミン、メトトレキセート、マイタンシノイド、又はその誘導体、などが挙げられる。
【0124】
低分子の薬剤と抗体とを結合させる方法としては、例えば、グルタールアルデヒドを介して薬剤と抗体のアミノ基間を結合させる方法、又は水溶性カルボジイミドを介して薬剤のアミノ基と抗体のカルボキシル基を結合させる方法などが挙げられる。
【0125】
高分子の薬剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(以下、PEGと表記する)、アルブミン、デキストラン、ポリオキシエチレン、スチレンマレイン酸コポリマー、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、又はヒドロキシプロピルメタクリルアミドなどが挙げられる。これらの高分子化合物を抗体又は抗体断片に結合させることにより、(1)化学的、物理的または生物的な種々の因子に対する安定性の向上、(2)血中半減期の顕著な延長、(3)免疫原性の消失又は抗体産生の抑制、などの効果が期待される[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。例えば、PEGと抗体を結合させる方法としては、PEG化修飾試薬と反応させる方法などが挙げられる[バイオコンジュゲート医薬品、廣川書店(1993)]。PEG化修飾試薬としては、リジンのe−アミノ基への修飾剤(日本国特開昭61−178926号公報)、アスパラギン酸及びグルタミン酸のカルボキシル基への修飾剤(日本国特開昭56−23587号公報)、又はアルギニンのグアニジノ基への修飾剤(日本国特開平2−117920号公報)などが挙げられる。
【0126】
免疫賦活剤としては、例えば、イムノアジュバントとして知られている天然物でもよく、具体例としては、免疫を亢進する薬剤が、β(1→3)グルカン(レンチナン、シゾフィラン)、又はαガラクトシルセラミドなどが挙げられる。
【0127】
蛋白質としては、例えば、NK細胞、マクロファージ、又は好中球などの免疫担当細胞を活性化するサイトカイン若しくは増殖因子、又は毒素蛋白質などが挙げられる。
【0128】
サイトカインまたは増殖因子としては、例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ、インターロイキン(以下、ILと記す)−2、IL−12、IL−15、IL−18、IL−21、IL−23、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、又はマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)などが挙げられる。
【0129】
毒素蛋白質としては、例えば、リシン、ジフテリアトキシン、又はONTAKなどが挙げられ、毒性を調節するために蛋白質に変異を導入した蛋白毒素も含まれる。
【0130】
抗体医薬としては、例えば、抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原、腫瘍の病態形成に関わる抗原又は免疫機能を調節する抗原、病変部位の血管新生に関与する抗原に対する抗体が挙げられる。
【0131】
抗体の結合によりアポトーシスが誘導される抗原としては、例えば、Cluster of differentiation(以下、CDと記載する)19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD37、CD53、CD72、CD73、CD74、CDw75、CDw76、CD77、CDw78、CD79a、CD79b、CD80(B7.1)、CD81、CD82、CD83、CDw84、CD85、CD86(B7.2)、human leukocyte antigen(HLA)−Class II、又はEpidermalgrowth Factor Receptor(EGFR)などが挙げられる。
【0132】
腫瘍の病態形成に関わる抗原又は免疫機能を調節する抗体の抗原としては、例えば、CD40、CD40リガンド、B7ファミリー分子(CD80、CD86、CD274、B7−DC、B7−H2、B7−H3、又はB7−H4)、B7ファミリー分子のリガンド(CD28、CTLA−4、ICOS、PD−1、又はBTLA)、OX−40、OX−40リガンド、CD137、tumor necrosis factor(TNF)受容体ファミリー分子(DR4、DR5、TNFR1、又はTNFR2)、TNF−related apoptosis−inducing ligand receptor(TRAIL)ファミリー分子、TRAILファミリー分子の受容体ファミリー(TRAIL−R1、TRAIL−R2、TRAIL−R3、又はTRAIL−R4)、receptor activator of nuclear factor kappa B(RANK)、RANKリガンド、CD−25、葉酸受容体4、サイトカイン[IL−1α、IL−1β、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−13、transforminggrowth factor(TGF)β、又はTNFαなど]、これらのサイトカインの受容体、ケモカイン(SLC、ELC、I−309、TARC、MDC、又はCTACKなど)、又はこれらのケモカインの受容体が挙げられる。
【0133】
病変部位の血管新生を阻害する抗体の抗原としては、例えば、vascular endothelialgrowth factor(VEGF)、Angiopoietin、fibroblastgrowth factor(FGF)、EGF、platelet−derivedgrowth factor(PDGF)、insulin−likegrowth factor(IGF)、erythropoietin(EPO)、TGFβ、IL−8、Ephilin、SDF−1、又はこれらの受容体などが挙げられる。
【0134】
蛋白質又は抗体医薬との融合抗体は、モノクローナル抗体又は抗体断片をコードするcDNAに蛋白質をコードするcDNAを連結させ、融合抗体をコードするDNAを構築し、該DNAを原核生物または真核生物用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを原核生物または真核生物へ導入することにより発現させ、融合抗体を製造することができる。
【0135】
上記抗体の誘導体を検出方法、定量方法、検出用試薬、定量用試薬又は診断薬として使用する場合に、本発明のヒトTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体又はその抗体断片に結合する薬剤としては、通常の免疫学的検出又は測定法で用いられる標識体が挙げられる。
【0136】
標識体としては、例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ若しくはルシフェラーゼなどの酵素、アクリジニウムエステル若しくはロフィンなどの発光物質、又はフルオレセインイソチオシアネート(FITC)若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート(RITC)などの蛍光物質などが挙げられる。
【0137】
また、本発明は、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片を有効成分として含有するTIM−3陽性細胞が関与する疾患の治療薬に関する。
【0138】
TIM−3陽性細胞が関与する疾患としては、TIM−3が発現している細胞が関与する疾患であればいかなるものでもよく、例えば、がん、自己免疫疾患、アレルギー性疾患が挙げられる。
【0139】
がんとしては、例えば、血液がん、乳癌、子宮癌、大腸癌、食道癌、胃癌、卵巣癌、肺癌、腎臓癌、直腸癌、甲状腺癌、子宮頸癌、小腸癌、前立腺癌又は膵臓癌などが挙げられ、好ましくは血液がん、食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌又は前立腺癌が挙げられる。
【0140】
血液がんとしては、例えば、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia、AML)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia、CML)、骨髄異形成症候群(myelodysplasticsyndromes、MDS)、多発性骨髄腫(multiple myeloma)、皮膚T細胞性リンパ腫(cutaneous T cell lymphoma、CTCL)、末梢T細胞性リンパ腫(peripheral T cell lymphoma、PTCL)、未分化大細胞型リンパ腫(anaplastic large cell lymphoma、ALCL)、急性リンパ性白血病(acute lympatic leukemia、ALL)、慢性リンパ性白血病(chronic lympatic leukemia、CLL)、その他リンパ性白血病、NK細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、又は、バーキットリンパ腫をはじめとする非ホジキンリンパ腫などが挙げられる。
【0141】
自己免疫疾患としては、例えば、関節リウマチ、乾癬、クローン病、強直性脊椎炎、多発性硬化症、I型糖尿病、肝炎、心筋炎、シェーグレン症候群、移植後拒絶反応自己免疫性溶血性貧血、水疱性類天疱瘡、グレーヴス病、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、天疱瘡および悪性貧血などが挙げられる。
【0142】
アレルギー性疾患としては、例えば、急性又は慢性気道過敏症、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、PIE症候群、食物アレルギー、花粉症、アレルギー性鼻、気管支喘息、アトピー性皮膚炎およびアナフィラキシーショックなどが挙げられる。
【0143】
本発明の治療剤としては、上述した本発明のモノクローナル抗体又は該抗体断片を有効成分として含有する。
【0144】
本発明の抗体又は該抗体断片、又はこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、又はこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の任意の方法により製造した医薬製剤として提供するのが望ましい。
【0145】
投与経路は、治療に際して最も効果的なものを使用するのが好ましく、経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられ、好ましくは静脈内投与を挙げられる。
【0146】
投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、又はテープ剤などが挙げられる。
【0147】
投与量又は投与回数は、目的とする治療効果、投与方法、治療期間、年齢、及び体重などにより異なるが、通常成人1日当たり10μg/kg〜10mg/kgである。
【0148】
さらに、本発明は、TIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造を特異的に認識し、かつ該細胞外領域に結合するモノクローナル抗体又はその抗体断片を有効成分として含有する、TIM−3の免疫学的検出又は測定方法、TIM−3の免疫学的検出用又は測定用試薬、TIM−3が発現する細胞の免疫学的検出又は測定方法、及びTIM−3陽性細胞が関与する疾患の診断薬に関する。
【0149】
本発明においてTIM−3の量を検出又は測定する方法としては、任意の公知の方法が挙げられる。例えば、免疫学的検出又は測定方法などが挙げられる。
【0150】
免疫学的検出又は測定方法とは、標識を施した抗原又は抗体を用いて、抗体量又は抗原量を検出又は測定する方法である。免疫学的検出又は測定方法としては、放射性物質標識免疫抗体法(RIA)、酵素免疫測定法(EIA又はELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(luminescent immunoassay)、ウェスタンブロット法又は物理化学的手法などが挙げられる。
【0151】
本発明のモノクローナル抗体又は該抗体断片を用いてTIM−3が発現した細胞を検出又は測定することにより、TIM−3が関連する疾患を診断することができる。
【0152】
該ポリペプチドが発現している細胞の検出には、公知の免疫学的検出法を用いることができるが、免疫沈降法、蛍光細胞染色法、免疫組織染色法、又は免疫組織染色法などが、好ましく用いられる。また、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などの蛍光抗体染色法なども用いることができる。
【0153】
本発明においてTIM−3を検出又は測定する対象となる生体試料としては、組織細胞、血液、血漿、血清、膵液、尿、糞便、組織液、又は培養液など、TIM−3が発現した細胞を含む可能性のあるものであれば特に限定されない。
【0154】
本発明のモノクローナル抗体若しくはその抗体断片、又はこれらの誘導体を含有する診断薬は、目的の診断法に応じて、抗原抗体反応を行うための試薬、該反応の検出用試薬を含んでもよい。抗原抗体反応を行うための試薬としては、例えば、緩衝剤、塩などが挙げられる。検出用試薬としては、例えば、該モノクローナル抗体若しくはその抗体断片、又はこれらの誘導体を認識する標識された二次抗体、又は標識に対応した基質などの通常の免疫学的検出又は測定法に用いられる試薬が挙げられる。
【0155】
以下に、本発明の抗体の製造方法、疾患の治療方法、及び疾患の診断方法について、具体的に説明する。
【0156】
1.モノクローナル抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原となるTIM−3又はTIM−3を発現させた細胞は、TIM−3全長又はその部分長をコードするcDNAを含む発現ベクターを、大腸菌、酵母、昆虫細胞、又は動物細胞などに導入することにより、得ることができる。また、TIM−3を多量に発現している各種ヒト腫瘍培養細胞、ヒト組織などからTIM−3を精製し、得ることが出来る。また、該腫瘍培養細胞、又は該組織などをそのまま抗原として用いることもできる。さらに、Fmoc法、又はtBoc法などの化学合成法によりTIM−3の部分配列を有する合成ペプチドを調製し、抗原に用いることもできる。
【0157】
本発明で用いられるTIM−3は、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)またはCurrent Protocols inmolecular Biology、John Wiley&Sons(1987−1997)などに記載された方法などを用い、例えば以下の方法により、該TIM−3をコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
【0158】
まず、TIM−3をコードする部分を含む完全長cDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製する。上記完全長cDNAの代わりに、完全長cDNAをもとにして調製された、ポリペプチドをコードする部分を含む適当な長さのDNA断片を用いてもよい。次に、得られた該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入することにより、ポリペプチドを生産する形質転換体を得ることができる。
【0159】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞における自律複製又は染色体中への組込みが可能で、ポリペプチドをコードするDNAを転写できる位置に、適当なプロモーターを含有しているものであればいずれも用いることができる。
【0160】
宿主細胞としては、大腸菌などのエシェリヒア属などに属する微生物、酵母、昆虫細胞、又は動物細胞など、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
【0161】
大腸菌などの原核生物を宿主細胞として用いる場合、組換えベクターは、原核生物中で自律複製が可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、TIM−3をコードする部分を含むDNA、及び転写終結配列を含むベクターであることが好ましい。また、該組換えベクターには、転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。さらに、該組換えベクターには、プロモーターを制御する遺伝子を含んでいてもよい。
【0162】
該組換えベクターとしては、リボソーム結合配列であるシャイン・ダルガルノ配列(SD配列ともいう)と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
【0163】
また、該TIM−3をコードするDNAの塩基配列としては、宿主内での発現に最適なコドンとなるように塩基を置換することができ、これにより目的とするTIM−3の生産率を向上させることができる。
【0164】
発現ベクターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(以上、ロシュ・ダイアグノスティックス社製)、pKK233−2(ファルマシア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(プロメガ社製)、pQE−8(キアゲン社製)、pKYP10(日本国特開昭58−110600号公報)、pKYP200[Agricultural Biological Chemistry、48、669(1984)]、pLSA1[Agric Biol.Chem.、53、277(1989)]、pGEL1[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82、4306(1985)]、pBluescript II SK(−)(ストラタジーン社製)、pTrs30[大腸菌JM109/pTrS30(FERM BP−5407)より調製]、pTrs32[大腸菌JM109/pTrS32(FERM BP−5408)より調製]、pGHA2[大腸菌IGHA2(FERM BP−400)より調製、日本国特開昭60−221091号公報]、pGKA2[大腸菌IGKA2(FERM BP6798)より調製、日本国特開昭60−221091号公報]、pTerm2(US4686191、US4939094、US5160735)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pEG400[J.Bacteriol.、172、2392(1990)]、pGEX(ファルマシア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)、又はpME18SFL3などが挙げられる。
【0165】
プロモーターとしては、使用する宿主細胞中で機能を発揮できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、又はT7プロモーターなどの、大腸菌またはファージなどに由来するプロモーターを挙げることができる。また、Ptrpを2つ直列させたタンデムプロモーター、tacプロモーター、lacT7プロモーター、又はlet Iプロモーターなどの人為的に設計改変されたプロモーターなども用いることができる。
【0166】
宿主細胞としては、例えば、大腸菌XL−1Blue、大腸菌XL2−Blue、大腸菌DH1、大腸菌MC1000、大腸菌KY3276、大腸菌W1485、大腸菌JM109、大腸菌HB101、大腸菌No.49、大腸菌W3110、大腸菌NY49、又は大腸菌DH5αなどが挙げられる。
【0167】
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、使用する宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、69、2110(1972)、Gene、17、107(1982)、Molecular&General Genetics、168、111(1979)] が挙げられる。
【0168】
動物細胞を宿主として用いる場合、発現ベクターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、pcDNA I、pcDM8(フナコシ社製)、pAGE107[日本国特開平3−22979号公報;Cytotechnology、3、133(1990)]、pAS3−3(日本国特開平2−227075号公報)、pcDM8[Nature、329、840(1987)]、pcDNA I/Amp(インビトロジェン社製)、pcDNA3.1(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103[J.Biochemistry、101、1307(1987)]、pAGE210、pME18SFL3、又はpKANTEX93(国際公開第97/10354号)などが挙げられる。
【0169】
プロモーターとしては、動物細胞中で機能を発揮できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のimmediate early(IE)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター、又はモロニーマウス白血病ウイルスのプロモーター若しくはエンハンサーが挙げられる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0170】
宿主細胞としては、例えば、ヒト白血病細胞Namalwa細胞、サル細胞COS細胞、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞CHO細胞(Journal of Experimental Medicine、108、945(1958);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、60、1275(1968);Genetics、55、513(1968);Chromosoma、41、129(1973);Methods in Cell Science、18、115(1996);Radiation Research、148、260(1997);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、4216(1980);Proc.Natl.Acad.Sci.USA、60、1275(1968);Cell、6、121(1975);Molecular Cellgenetics、Appendix I、II(pp.883−900))、CHO/DG44、CHO−K1(ATCC番号:CCL−61)、DUkXB11(ATCC番号:CCL−9096)、Pro−5(ATCC番号:CCL−1781)、CHO−S(Life Technologies、Cat#11619)、Pro−3、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(又はYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NSO、マウスミエローマ細胞SP2/0−Ag14、シリアンハムスター細胞BHK又はHBT5637(日本国特開昭63−000299号公報)、などが挙げられる。
【0171】
宿主細胞への組換えベクターの導入方法としては、動物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、エレクトロポレーション法[Cytotechnology、3、133(1990)]、リン酸カルシウム法(日本国特開平2−227075号公報)、又はリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、7413(1987)]などが挙げられる。
【0172】
以上のようにして得られるTIM−3をコードするDNAを組み込んだ組換えベクターを保有する微生物、又は動物細胞などの由来の形質転換体を培地に培養し、培養物中に該TIM−3を生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、TIM−3を製造することができる。該形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
【0173】
真核生物由来の細胞で発現させた場合には、糖または糖鎖が付加されたTIM−3を得ることができる。
【0174】
誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドなどを、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養する場合にはインドールアクリル酸などを培地に添加してもよい。
【0175】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えば、一般に使用されているRPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association、199、519(1967)]、EagleのMEM培地[Science、122、501(1952)]、ダルベッコ改変MEM培地[Virology、8、396(1959)]、199培地[Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、73、1(1950)]、Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)培地、又はこれら培地に牛胎児血清(FBS)などを添加した培地などが挙げられる。培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO
2存在下などの条件下で1〜7日間行う。また、培養中必要に応じて、カナマイシンまたはペニシリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。
【0176】
TIM−3をコードする遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、分泌生産又は融合蛋白質発現などの方法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]を用いることができる。
【0177】
TIM−3の生産方法としては、宿主細胞内に生産させる方法、宿主細胞外に分泌させる方法、又は宿主細胞外膜上に生産させる方法があり、使用する宿主細胞、または生産させるTIM−3の構造を変えることにより、適切な方法を選択することができる。
【0178】
TIM−3が宿主細胞内又は宿主細胞外膜上に生産される場合、ポールソンらの方法[J.Biol.Chem.、264、17619(1989)]、ロウらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86、8227(1989)、Genes Develop.、4、1288(1990)]、日本国特開平05−336963号公報、又は国際公開第94/23021号などに記載の方法を用いることにより、TIM−3を宿主細胞外に積極的に分泌させることができる。
【0179】
また、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子などを用いた遺伝子増幅系(日本国特開平2−227075号公報)を利用してTIM−3の生産量を上昇させることもできる。
【0180】
得られたTIM−3は、例えば、以下のようにして単離、精製することができる。
【0181】
TIM−3が細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後に細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、又はダイノミルなどを用いて細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。
【0182】
前記無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安などによる塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化学社製)などのレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(ファルマシア社製)などのレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロースなどのレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、又は等電点電気泳動などの電気泳動法などの手法を単独または組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0183】
TIM−3が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、上記と同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として該TIM−3の不溶体を回収する。回収した該TIM−3の不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈又は透析することにより、該TIM−3を正常な立体構造に戻した後、上記と同様の単離精製法によりポリペプチドの精製標品を得ることができる。
【0184】
TIM−3又はその糖修飾体などの誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清において該TIM−3又はその糖修飾体などの誘導体を回収することができる。該培養物を上記と同様に遠心分離などの手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0185】
また、本発明において用いられるTIM−3は、Fmoc法、又はtBoc法などの化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンストケムテック社製、パーキン・エルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジインストルメント社製、シンセセル−ベガ社製、パーセプチブ社製、又は島津製作所社製などのペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
【0186】
(2)動物の免疫と融合用抗体産生細胞の調製
3〜20週令のマウス、ラット又はハムスターなどの動物に、(1)で得られる抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。また、免疫原性が低く上記の動物で充分な抗体価の上昇が認められない場合には、TIM−3ノックアウトマウスを被免疫動物として用いることもできる。
【0187】
免疫は、動物の皮下、静脈内または腹腔内に、例えば、フロインドの完全アジュバント、又は水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなどの適当なアジュバントとともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)、又はKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
【0188】
抗原の投与は、1回目の投与の後、1〜2週間おきに5〜10回行う。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清の抗体価を酵素免疫測定法[Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]などを用いて測定する。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示した動物を融合用抗体産生細胞の供給源とする。
【0189】
抗原の最終投与後3〜7日目に、免疫した動物より脾臓などの抗体産生細胞を含む組織を摘出し、抗体産生細胞を採取する。脾臓細胞を用いる場合には、脾臓を細断、ほぐした後、遠心分離し、さらに赤血球を除去して融合用抗体産生細胞を取得する。
【0190】
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を用い、例えば、8−アザグアニン耐性マウス(Balb/C由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology、18、1(1978)]、P3−NS1/1Ag41(NS−1)[European J.Immunology、6、511(1976)]、SP2/0−Ag14(SP−2)[Nature、276、269(1978)]、P3−X63−Ag8653(653)[J.Immunology、123、1548(1979)]、又はP3−X63−Ag8(X63)[Nature、256、495(1975)]などが用いられる。
【0191】
該骨髄腫細胞は、正常培地[グルタミン、2−メルカプトエタノール、ジェンタマイシン、FBS、及び8−アザグアニンを加えたRPMI1640培地]で継代し、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10
7個以上の細胞数を確保する。
【0192】
(4)細胞融合とモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの調製
(2)で得られる融合用抗体産生細胞と(3)で得られる骨髄腫細胞をMinimum Essential Medium(MEM)培地又はPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、融合用抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離した後、上清を除く。
【0193】
沈澱した細胞群をよくほぐした後、ポリエチレングリコール−1000(PEG−1000)、MEM培地及びジメチルスルホキシドの混液を37℃で、攪拌しながら加える。さらに1〜2分間毎にMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。遠心分離後、上清を除く。沈澱した細胞群をゆるやかにほぐした後、融合用抗体産生細胞にHAT培地[ヒポキサンチン、チミジン、及びアミノプテリンを加えた正常培地]中にゆるやかに細胞を懸濁する。この懸濁液を5%CO
2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
【0194】
培養後、培養上清の一部を抜き取り、後述のバインディングアッセイなどのハイブリドーマの選択方法により、TIM−3を含む抗原に反応し、TIM−3を含まない抗原に反応しない細胞群を選択する。次に、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し[1回目はHT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は正常培地を使用する]、安定して強い抗体価の認められたものをモノクローナル抗体産生ハイブリドーマとして選択する。
【0195】
(5)精製モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8〜10週令のマウス又はヌードマウスに、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを腹腔内に注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水がん化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析し、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムまたはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGまたはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
【0196】
また、(4)で得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、10%FBS添加を添加したRPMI1640培地などで培養した後、遠心分離により上清を除き、Hybridoma−SFM培地に懸濁し、3〜7日間培養する。得られた細胞懸濁液を遠心分離し、得られた上清よりプロテインA−カラム又はプロテインG−カラムによる精製を行ない、IgG画分を集め、精製モノクローナル抗体を得ることもできる。なお、Hybridoma−SFM培地には5%ダイゴGF21を添加することもできる。
【0197】
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白量の定量は、ローリー法又は280nmでの吸光度より算出する。
【0198】
(6)モノクローナル抗体の選択
モノクローナル抗体の選択は以下に示す酵素免疫測定法によるバインディングアッセイ、及びBiacoreによるkinetics解析により行う。
【0199】
(6−a)バインディングアッセイ
抗原としては、(1)で得られるTIM−3をコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、または動物細胞などに導入して得られた遺伝子導入細胞、リコンビナント蛋白質、又はヒト組織から得た精製ポリペプチドまたは部分ペプチドなどを用いる。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA又はKLHなどのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製して、これを用いる。
【0200】
抗原を96ウェルプレートなどのプレートに分注し、固相化した後、第1抗体として血清、ハイブリドーマの培養上清又は精製モノクローナル抗体などの被験物質を分注し、反応させる。PBS又はPBS−Tweenなどで、よく洗浄した後、第2抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質又は放射線化合物などで標識した抗イムノグロブリン抗体を分注して反応させる。PBS−Tweenでよく洗浄した後、第2抗体の標識物質に応じた反応を行ない、免疫原に対し特異的に反応するモノクローナル抗体を選択する。
【0201】
また、本発明の抗TIM−3モノクローナル抗体と競合してTIM−3に結合するモノクローナル抗体は、上述のバインディングアッセイ系に、被検抗体を添加して反応させることで取得できる。すなわち、被検抗体を加えた時にモノクローナル抗体の結合が阻害される抗体をスクリーニングすることにより、TIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造への結合について、取得したモノクローナル抗体と競合するモノクローナル抗体を取得することができる。
【0202】
さらに、本発明のTIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合するモノクローナル抗体が認識するエピトープと、同じエピトープに結合する抗体は、上述のバインティングアッセイ系で取得された抗体のエピトープを同定し、同定したエピトープの、部分的な合成ペプチド、又はエピトープの立体構造に擬態させた合成ペプチド等を作製し、免疫することで、取得することができる。
【0203】
(6−b)Biacoreによるkinetics解析
Biacore T100を用い、抗原と被験物の間の結合におけるkineticsを測定し、その結果を機器付属の解析ソフトウエアで解析をする。抗マウスIgG抗体をセンサーチップCM5にアミンカップリング法により固定した後、ハイブリドーマ培養上清又は精製モノクローナル抗体などの被験物質を流し、適当量結合させ、さらに濃度既知の複数濃度の抗原を流し、結合、解離を測定する。
【0204】
得られたデータを機器付属のソフトウエアを用い、1:1バインディングモデルによりkinetics解析を行い、各種パラメータを取得する。又は、ヒトTIM−3をセンサーチップ上に、例えばアミンカップリング法により固定した後、濃度既知の複数濃度の精製モノクローナル抗体を流し、結合、解離を測定する。得られたデータを機器付属のソフトウエアを用い、バイバレントバインディングモデルによりkinetics解析を行い、各種パラメータを取得する。
【0205】
2.遺伝子組換え抗体の作製
遺伝子組換え抗体の作製例として、以下にヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体の作製方法を示す。
(1)遺伝子組換え抗体発現用ベクターの構築
遺伝子組換え抗体発現用ベクターは、ヒト抗体のCH及びCLをコードするDNAが組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターにヒト抗体のCH及びCLをコードするDNAをそれぞれクローニングすることにより構築することができる。
【0206】
ヒト抗体のC領域は任意のヒト抗体のCH及びCLを用いることができる。例えば、ヒト抗体のγ1サブクラスのCH及びκクラスのCLなどを用いる。ヒト抗体のCH及びCLをコードするDNAには、cDNAを用いるが、エキソンとイントロンからなる染色体DNAを用いることもできる。
【0207】
動物細胞用発現ベクターには、ヒト抗体のC領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、pAGE107[Cytotechnol.、3、133(1990)]、pAGE103[J.Biochem.、101、1307(1987)]、pHSG274[Gene、27、223(1984)]、pKCR[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78、1527(1981)]、pSG1bd2−4[Cytotechnol.、4、173(1990)]、又はpSE1UK1Sed1−3[Cytotechnol.、13、79(1993)]などを用いる。
【0208】
動物細胞用発現ベクターのうちプロモーターとエンハンサーには、SV40の初期プロモーター[J.Biochem.、101、1307(1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスLTR[Biochem.Biophys.Res.Commun.、149、960(1987)]、又は免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell、41、479(1985)]とエンハンサー[Cell、33、717(1983)]などを用いる。
【0209】
遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、遺伝子組換え抗体発現ベクターの構築の容易さ、動物細胞への導入の容易さ、動物細胞内での抗体H鎖及びL鎖の発現量のバランスが均衡するなどの点から、抗体H鎖及びL鎖が同一のベクター上に存在するタイプ(タンデム型)の遺伝子組換え抗体発現用ベクター[J.Immunol.Methods、167、271(1994)]を用いるが、抗体H鎖及びL鎖が別々のベクター上に存在するタイプを用いることもできる。タンデム型の遺伝子組換え抗体発現用ベクターには、pKANTEX93(国際公開第97/10354号公報)、pEE18[Hybridoma、17、559(1998)]などを用いる。
【0210】
(2)ヒト以外の動物由来の抗体のV領域をコードするcDNAの取得及びアミノ酸配列の解析
非ヒト抗体のVH及びVLをコードするcDNAの取得及びアミノ酸配列の解析は以下のようにして行うことができる。
【0211】
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞よりmRNAを抽出し、cDNAを合成する。合成したcDNAをファージ又はプラスミドなどのベクターにクローニングしてcDNAライブラリーを作製する。
【0212】
前記ライブラリーより、マウス抗体のC領域部分又はV領域部分をコードするDNAをプローブとして用い、VHまたはVLをコードするcDNAを有する組換えファージ又は組換えプラスミドをそれぞれ単離する。組換えファージ又は組換えプラスミド上の目的とするマウス抗体のVHまたはVLの全塩基配列をそれぞれ決定し、塩基配列よりVH又はVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定する。
【0213】
非ヒト抗体を産生するハイブリドーマ細胞を作製するヒト以外の動物には、マウス、ラット、ハムスター、又はラビットなどを用いるが、ハイブリドーマ細胞を作製することが可能であれば、いかなる動物も用いることができる。
【0214】
ハイブリドーマ細胞からの全RNAの調製には、チオシアン酸グアニジン−トリフルオロ酢酸セシウム法[Methods in Enzymol.、154、3(1987)]、又はRNA easy kit(キアゲン社製)などのキットなどを用いる。
【0215】
全RNAからのmRNAの調製には、オリゴ(dT)固定化セルロースカラム法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]、又はOligo−dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイオ社製)などのキットなどを用いる。また、Fast Track mRNA Isolation Kit(インビトロジェン社製)、又はQuickPrep mRNA Purification Kit(ファルマシア社製)などのキットを用いてハイブリドーマ細胞からmRNAを調製することもできる。
【0216】
cDNAの合成及びcDNAライブラリーの作製には、公知の方法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、Supplement 1、John Wiley&Sons(1987−1997)]、又はSperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning(インビトロジェン社製)、またはZAP−cDNA Synthesis Kit(ストラタジーン社製)などのキットなどを用いる。
【0217】
cDNAライブラリーの作製の際、ハイブリドーマ細胞から抽出したmRNAを鋳型として合成したcDNAを組み込むベクターには、該cDNAを組み込めるベクターであればいかなるものでも用いることができる。例えば、ZAP ExPress[Strategies、5、58(1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research、17、9494(1989)]、λZAPII(ストラタジーン社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning:A Practical Approach、I、49(1985)]、Lambda BlueMid(クローンテック社製)、λEx Cell、pT7T3−18U(ファルマシア社製)、pcD2[Mol.Cell.Biol.、3、280(1983)]、又はpUC18[Gene、33、103(1985)]などを用いる。
【0218】
ファージ又はプラスミドベクターにより構築されるcDNAライブラリーを導入する大腸菌には、該cDNAライブラリーを導入、発現及び維持できるものであればいかなるものでも用いることができる。例えば、XL−1Blue MRF[Strategies、5、81(1992)]、C600[Genetics、39、440(1954)]、Y1088、Y1090[Science、222、778(1983)]、NM522[J.Mol.Biol.、166、1(1983)]、K802[J.Mol.Biol.、16、118(1966)]、又はJM105[Gene、38、275(1985)]などを用いる。
【0219】
cDNAライブラリーからの非ヒト抗体のVH又はVLをコードするcDNAクローンの選択には、アイソトープまたは蛍光標識したプローブを用いたコロニー・ハイブリダイゼーション法、又はプラーク・ハイブリダイゼーション法[Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]などを用いる。
【0220】
また、プライマーを調製し、mRNAから合成したcDNA又はcDNAライブラリーを鋳型として、Polymerase Chain Reaction法[以下、PCR法と表記する、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、Second Edition、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols inmolecular Biology、Supplement 1、John Wiley&Sons(1987−1997)]を行うことよりVH又はVLをコードするcDNAを調製することもできる。
【0221】
選択されたcDNAを、適当な制限酵素などで切断後、pBluescript SK(−)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにクローニングし、通常用いられる塩基配列解析方法などにより該cDNAの塩基配列を決定する。塩基配列解析方法には、例えば、ジデオキシ法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、74、5463(1977)]などの反応を行った後、ABI PRISM3700(PEバイオシステムズ社製)又はA.L.F.DNAシークエンサー(ファルマシア社製)などの塩基配列自動分析装置などを用いる。
【0222】
決定した塩基配列からVH及びVLの全アミノ酸配列をそれぞれ推定し、既知の抗体のVH及びVLの全アミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、取得したcDNAが分泌シグナル配列を含む抗体のVH及びVLの完全なアミノ酸配列をコードしているかをそれぞれ確認する。
【0223】
分泌シグナル配列を含む抗体のVH及びVLの完全なアミノ酸配列に関しては、既知の抗体のVH及びVLの全アミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することにより、分泌シグナル配列の長さ及びN末端アミノ酸配列を推定でき、さらにはそれらが属するサブグループを知ることができる。また、VH及びVLの各CDRのアミノ酸配列についても、既知の抗体のVH及びVLのアミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]と比較することによって見出すことができる。
【0224】
また、得られたVH及びVLの完全なアミノ酸配列を用いて、例えば、SWISS−PROT又はPIR−Proteinなどの任意のデータベースに対してBLAST法[J.Mol.Biol.、215、403(1990)]などの相同性検索を行い、VH及びVLの完全なアミノ酸配列が新規なものかを確認できる。
【0225】
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、それぞれ非ヒト抗体のVH又はVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングすることで、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築することができる。
【0226】
非ヒト抗体のVH又はVLをコードするcDNAの3’末端側と、ヒト抗体のCH又はCLの5’末端側とを連結するために、連結部分の塩基配列が適切なアミノ酸をコードし、かつ適当な制限酵素認識配列になるように設計したVH及びVLのcDNAを作製する。
【0227】
作製されたVH及びVLのcDNAを、(1)で得られるヒト型CDR移植抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現する様にそれぞれクローニングし、ヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築する。
【0228】
また、非ヒト抗体VH又はVLをコードするcDNAを、適当な制限酵素の認識配列を両端に有する合成DNAを用いてPCR法によりそれぞれ増幅し、(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターにクローニングすることもできる。
【0229】
(4)ヒト型CDR移植抗体のV領域をコードするcDNAの構築
ヒト型CDR移植抗体のVH又はVLをコードするcDNAは、以下のようにして構築することができる。
【0230】
非ヒト抗体のVH又はVLのCDRのアミノ酸配列を移植するヒト抗体のVH又はVLのFRのアミノ酸配列をそれぞれ選択する。選択するFRのアミノ酸配列には、ヒト抗体由来のものであれば、いずれのものでも用いることができる。
【0231】
例えば、Protein Data Bankなどのデータベースに登録されているヒト抗体のFRのアミノ酸配列、又はヒト抗体のFRの各サブグループの共通アミノ酸配列[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]などを用いる。抗体の結合活性の低下を抑えるため、元の抗体のVH又はVLのFRのアミノ酸配列とできるだけ高い相同性(少なくとも60%以上)のFRのアミノ酸配列を選択する。
【0232】
次に、選択したヒト抗体のVH又はVLのFRのアミノ酸配列に、もとの抗体のCDRのアミノ酸配列をそれぞれ移植し、ヒト型CDR移植抗体のVH又はVLのアミノ酸配列をそれぞれ設計する。設計したアミノ酸配列を抗体の遺伝子の塩基配列に見られるコドンの使用頻度[A.L.F.DNA、US Dept.Health and Human Services(1991)]を考慮してDNA配列に変換し、ヒト型CDR移植抗体のVH又はVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列をそれぞれ設計する。
【0233】
設計したDNA配列に基づき、100塩基前後の長さからなる数本の合成DNAを合成し、それらを用いてPCR反応を行う。この場合、PCR反応での反応効率及び合成可能なDNAの長さから、好ましくはH鎖、L鎖とも6本の合成DNAを設計する。
【0234】
また、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト型CDR移植抗体発現用ベクターに容易にヒト型CDR移植抗体のVH又はVLをコードするcDNAをクローニングすることができる。
【0235】
又は、設計したDNA配列に基づき、1本のDNAとして合成された各H鎖、L鎖全長合成DNAを用いることで実施できる。
【0236】
PCR反応後、増幅産物をpBluescript SK(−)(ストラタジーン社製)などのプラスミドにそれぞれクローニングし、(2)に記載の方法と同様の方法により、塩基配列を決定し、所望のヒト型CDR移植抗体のVH又はVLのアミノ酸配列をコードするDNA配列を有するプラスミドを取得する。
【0237】
(5)ヒト型CDR移植抗体のV領域のアミノ酸配列の改変
ヒト型CDR移植抗体は、非ヒト抗体のVH及びVLのCDRのみをヒト抗体のVH及びVLのFRに移植しただけでは、その抗原結合活性は元の非ヒト抗体に比べて低下する[BIO/TECHNOLOGY、9、266(1991)]。
【0238】
ヒト型CDR移植抗体では、ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸配列の中で、直接抗原との結合に関与しているアミノ酸残基、CDRのアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基、及び抗体の立体構造を維持し、間接的に抗原との結合に関与しているアミノ酸残基を同定し、それらのアミノ酸残基を元の非ヒト抗体のアミノ酸残基に置換することにより、低下した抗原結合活性を上昇させることができる。
【0239】
抗原結合活性に関わるFRのアミノ酸残基を同定するために、X線結晶解析[J.Mol.Biol.、112、535(1977)]又はコンピューターモデリング[Protein Engineering、7、1501(1994)]などを用いることにより、抗体の立体構造の構築及び解析を行うことができる。また、それぞれの抗体について数種の改変体を作製し、それぞれの抗原結合活性との相関を検討することを繰り返し、試行錯誤することで必要な抗原結合活性を有する改変ヒト型CDR移植抗体を取得できる。
【0240】
ヒト抗体のVH及びVLのFRのアミノ酸残基は、改変用合成DNAを用いて(4)に記載のPCR反応を行うことにより、改変させることができる。PCR反応後の増幅産物について(2)に記載の方法により、塩基配列を決定し、目的の改変が施されたことを確認する。
【0241】
(6)ヒト型CDR移植抗体発現ベクターの構築
(1)で得られる遺伝子組換え抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流に、構築した遺伝子組換え抗体のVH又はVLをコードするcDNAをそれぞれクローニングし、ヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築することができる。
【0242】
例えば、(4)及び(5)で得られるヒト型CDR移植抗体のVH又はVLを構築する際に用いる合成DNAのうち、両端に位置する合成DNAの5’末端に適当な制限酵素の認識配列を導入することで、(1)で得られるヒト型CDR移植抗体発現用ベクターのヒト抗体のCH又はCLをコードするそれぞれの遺伝子の上流にそれらが適切な形で発現するようにそれぞれクローニングする。
【0243】
(7)遺伝子組換え抗体の一過性発現
(3)及び(6)で得られる遺伝子組換え抗体発現ベクター、又はそれらを改変した発現ベクターを用いて遺伝子組換え抗体の一過性発現を行い、作製した多種類のヒト型CDR移植抗体の抗原結合活性を効率的に評価することができる。
【0244】
発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現できる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができるが、例えばCOS−7細胞(ATCC番号:CRL1651)を用いる[Methods in Nucleic Acids Res.、CRC Press、283(1991)]。
【0245】
COS−7細胞への発現ベクターの導入には、DEAE−デキストラン法[Methods in Nucleic Acids Res.、CRC Press、(1991)]、又はリポフェクション法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、7413(1987)]などを用いる。
【0246】
発現ベクターの導入後、培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量及び抗原結合活性は酵素免疫抗体法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などを用いて測定する。
【0247】
(8)遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株の取得と遺伝子組換え抗体の調製
(3)及び(6)で得られた遺伝子組換え抗体発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株を得ることができる。
【0248】
宿主細胞への発現ベクターの導入には、エレクトロポレーション法[日本国特開平2−257891号公報、Cytotechnology、3、133(1990)]などを用いる。
【0249】
遺伝子組換え抗体発現ベクターを導入する宿主細胞には、遺伝子組換え抗体を発現させることができる宿主細胞であれば、いかなる細胞でも用いることができる。例えば、CHO−K1(ATCC番号:CCL−61)、DUkXB11(ATCC番号:CCL−9096)、Pro−5(ATCC番号:CCL−1781)、CHO−S(Life Technologies、Cat#11619)、ラットミエローマ細胞YB2/3HL.P2.G11.16Ag.20(又はYB2/0ともいう)、マウスミエローマ細胞NSO、マウスミエローマ細胞SP2/0−Ag14(ATCC番号:CRL1581)、マウスP3−X63−Ag8653細胞(ATCC番号:CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子が欠損したCHO細胞[Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77、4216(1980)]、レクチン耐性を獲得したLec13[Somatic Cell and Molecular Genetics、12、55(1986)]、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC番号:CRL1662)などを用いる。
【0250】
また、細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースの合成に関与する酵素などの蛋白質またはN−グリコシド結合複合型糖鎖の還元末端のN−アセチルグルコサミンの6位にフコースの1位がα結合する糖鎖修飾に関与する酵素などの蛋白質、又は細胞内糖ヌクレオチドGDP−フコースのゴルジ体への輸送に関与する蛋白質などの活性が低下又は欠失した宿主細胞、例えばα1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞(国際公開第2005/035586号、国際公開第02/31140号)などを用いることもできる。
【0251】
発現ベクターの導入後、遺伝子組換え抗体を安定に発現する形質転換株は、G418硫酸塩などの薬剤を含む動物細胞培養用培地で培養することにより選択する(日本国特開平2−257891号公報)。
【0252】
動物細胞培養用培地には、RPMI1640培地(インビトロジェン社製)、GIT培地(日本製薬社製)、EX−CELL301培地(ジェイアールエイチ社製)、IMDM培地(インビトロジェン社製)、Hybridoma−SFM培地(インビトロジェン社製)、又はこれら培地にFBSなどの各種添加物を添加した培地などを用いる。
【0253】
得られた形質転換株を培地中で培養することで培養上清中に遺伝子組換え抗体を発現蓄積させる。培養上清中の遺伝子組換え抗体の発現量及び抗原結合活性はELISA法などにより測定できる。また、形質転換株は、DHFR増幅系(日本国特開平2−257891号公報)などを利用して遺伝子組換え抗体の発現量を上昇させることができる。
【0254】
遺伝子組換え抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインA−カラムを用いて精製する[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]。また、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー及び限外濾過などの蛋白質の精製で用いられる方法を組み合わすこともできる。
【0255】
精製した遺伝子組換え抗体のH鎖、L鎖或いは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法[Nature、227、680(1970)]、又はウェスタンブロッティング法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、Antibodies−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]など用いて測定することができる。
【0256】
3.精製モノクローナル抗体又はその抗体断片の活性評価
精製した本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片の活性評価は、以下のように行うことができる。
【0257】
TIM−3発現細胞株に対する結合活性は、前述の1−(6a)記載のバインディングアッセイ及び(6b)記載のBiacoreシステムなどを用いた表面プラズモン共鳴法を用いて測定する。また、蛍光抗体法[Cancer Immunol.Immunother.、36、373(1993)]などを用いて測定できる。
【0258】
抗原陽性培養細胞株に対する補体依存性傷害活性(以下、CDC活性と記す)、又はADCC活性は公知の測定方法[Cancer Immunol.Immunother.、36、373(1993)]により測定する。
【0259】
4.抗体のエフェクター活性を制御する方法
本発明の抗TIM−3モノクローナル抗体のエフェクター活性を制御する方法としては、抗体のFc領域の297番目のアスパラギン(Asn)に結合するN結合複合型糖鎖の還元末端に存在するN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)にα1,6結合するフコース(コアフコースともいう)の量を制御する方法(国際公開第2005/035586号、国際公開第2002/31140号、国際公開第00/61739号)、または抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することで制御する方法などが知られている。本発明の抗TIM−3モノクローナル抗体にはいずれの方法を用いても、エフェクター活性を制御することができる。
【0260】
エフェクター活性とは、抗体のFc領域を介して引き起こされる抗体依存性の活性をいい、ADCC活性、CDC活性、またはマクロファージ若しくは樹状細胞などの食細胞による抗体依存性ファゴサイトーシス(Antibody−dependent phagocytosis、ADP活性)などが知られている。
【0261】
抗体のFcのN結合複合型糖鎖のコアフコースの含量を制御することで、抗体のエフェクター活性を増加又は低下させることができる。抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を低下させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子が欠損したCHO細胞を用いて抗体を発現することで、フコースが結合していない抗体を取得することができる。フコースが結合していない抗体は高いADCC活性を有する。
【0262】
一方、抗体のFcに結合しているN結合複合型糖鎖に結合するフコースの含量を増加させる方法としては、α1,6−フコース転移酵素遺伝子を導入した宿主細胞を用いて抗体を発現させることで、フコースが結合している抗体を取得できる。フコースが結合している抗体は、フコースが結合していない抗体よりも低いADCC活性を有する。
【0263】
また、抗体のFc領域のアミノ酸残基を改変することでADCC活性またはCDC活性を増加又は低下させることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0148165号明細書に記載のFc領域のアミノ酸配列を用いることで、抗体のCDC活性を増加させることができる。また、米国特許第6,737,056号明細書、米国特許第7,297,775号明細書または米国特許第7,317,091号明細書に記載のアミノ酸改変を行うことで、ADCC活性又はCDC活性を、増加させることも低下させることもできる。
【0264】
さらに、上述の方法を組み合わせて、一つの抗体に使用することにより、抗体のエフェクター活性が制御された抗体を取得することができる。
【0265】
5.本発明の抗TIM−3モノクローナル抗体又はその抗体断片を用いた疾患の治療方法
本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片は、TIM−3陽性細胞が関与する疾患の治療に用いることができる。
【0266】
本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片、又はこれらの誘導体を含有する治療剤は、有効成分としての該抗体もしくは該抗体断片、又はこれらの誘導体のみを含むものであってもよいが、通常は薬理学的に許容される1以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野において公知の方法により製造した医薬製剤として提供される。
【0267】
投与経路としては、例えば、経口投与、又は口腔内、気道内、直腸内、皮下、筋肉内若しくは静脈内などの非経口投与が挙げられる。投与形態としては、例えば、噴霧剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、乳剤、座剤、注射剤、軟膏、又はテープ剤などが挙げられる。
【0268】
経口投与に適当な製剤としては、例えば、乳剤、シロップ剤、カプセル剤、錠剤、散剤、又は顆粒剤などでが挙げられる。
【0269】
乳剤又はシロップ剤のような液体調製物は、水、ショ糖、ソルビトール若しくは果糖などの糖類、ポリエチレングリコール若しくはプロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油若しくは大豆油などの油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、又はストロベリーフレーバー若しくはペパーミントなどのフレーバー類などを添加剤として用いて製造する。
【0270】
カプセル剤、錠剤、散剤又は顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、ショ糖若しくはマンニトールなどの賦形剤、デンプン若しくはアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはタルクなどの滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース若しくはゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤又はグリセリンなどの可塑剤などを添加剤として用いて製造する。
【0271】
非経口投与に適当な製剤としては、例えば、注射剤、座剤又は噴霧剤などが挙げられる。
【0272】
注射剤は、塩溶液、ブドウ糖溶液、又はその両者の混合物からなる担体などを用いて製造する。
【0273】
座剤はカカオ脂、水素化脂肪又はカルボン酸などの担体を用いて製造する。
【0274】
噴霧剤は受容者の口腔及び気道粘膜を刺激せず、かつ本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片を微細な粒子として分散させ、吸収を容易にさせる担体などを用いて製造する。担体としては、例えば乳糖又はグリセリンなどを用いる。また、エアロゾル又はドライパウダーとして製造することもできる。
【0275】
さらに、上記非経口剤においても、経口投与に適当な製剤で添加剤として例示した成分を添加することもできる。
【0276】
6.本発明の抗TIM−3モノクローナル抗体又はその抗体断片を用いた疾患の診断方法
本発明のモノクローナル抗体又は該抗体断片を用いて、TIM−3又はTIM−3が発現した細胞を検出又は測定することにより、TIM−3が関連する疾患を診断することができる。
【0277】
TIM−3が関連する疾患の一つであるがんの診断は、例えば、以下のようにTIM−3の検出又は測定して行うことができる。
【0278】
患者体内のがん細胞に発現しているTIM−3をフローサイトメーターなどの免疫学的手法を用いて検出することにより診断を行うことができる。
【0279】
免疫学的手法とは、標識を施した抗原又は抗体を用いて、抗体量又は抗原量を検出又は測定する方法である。例えば、放射性物質標識免疫抗体法、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫測定法、ウェスタンブロット法又は物理化学的手法などを用いる。
【0280】
放射性物質標識免疫抗体法は、例えば、抗原又は抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体又は該抗体断片を反応させ、さらに放射線標識を施した抗イムノグロブリン抗体又は結合断片を反応させた後、シンチレーションカウンターなどで測定する。
【0281】
酵素免疫測定法は、例えば、抗原又は抗原を発現した細胞などに、本発明の抗体又は該抗体断片を反応させ、さらに標識を施した抗イムノグロブリン抗体又は結合断片を反応させた後、発色色素を吸光光度計で測定する。例えばサンドイッチELISA法などを用いる。
【0282】
酵素免疫測定法で用いる標識体としては、公知[酵素免疫測定法、医学書院(1987)]の酵素標識を用いることができる。例えば、アルカリフォスファターゼ標識、ペルオキシダーゼ標識、ルシフェラーゼ標識、又はビオチン標識などを用いる。
【0283】
サンドイッチELISA法は、固相に抗体を結合させた後、検出又は測定対象である抗原をトラップさせ、トラップされた抗原に第2の抗体を反応させる方法である。該ELISA法では、検出又は測定したい抗原を認識する抗体又は抗体断片であって、抗原認識部位の異なる2種類の抗体を準備し、そのうち、第1の抗体又は抗体断片を予めプレート(例えば、96ウェルプレート)に吸着させ、次に第2の抗体又は抗体断片をFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素、又はビオチンなどで標識しておく。
【0284】
上記の抗体が吸着したプレートに、生体内から分離された、細胞又はその破砕液、組織又はその破砕液、細胞培養上清、血清、胸水、腹水、又は眼液などを反応させた後、標識したモノクローナル抗体又は抗体断片を反応させ、標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知の抗原を段階的に希釈して作製した検量線より、被験サンプル中の抗原濃度を算出する。
【0285】
サンドイッチELISA法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、Fab、Fab’、又はF(ab’)
2などの抗体フラグメントを用いてもよい。サンドイッチELISA法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体又は抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体又は抗体断片との組み合わせでもよい。
【0286】
蛍光免疫測定法は、文献[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]などに記載された方法で測定する。蛍光免疫測定法で用いる標識体としては、例えば、公知[蛍光抗体法、ソフトサイエンス社(1983)]の蛍光標識が挙げられる。例えば、FITC、又はRITCなどが挙げられる。
【0287】
発光免疫測定法は文献[生物発光と化学発光 臨床検査42、廣川書店(1998)]などに記載された方法で測定する。発光免疫測定法で用いる標識体としては、例えば、公知の発光体標識が挙げられ、アクリジニウムエステル、ロフィンなどが挙げられる。
【0288】
ウェスタンブロット法は、抗原又は抗原を発現した細胞などをSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)−PAGE[Antibodies−A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]で分画した後、該ゲルをポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜又はニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に抗原を認識する抗体又は抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼなどの酵素標識、又はビオチン標識などを施した抗マウスIgG抗体又は結合断片を反応させた後、該標識を可視化することによって測定する。一例を以下に示す。
【0289】
配列番号53で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを発現している細胞または組織を溶解し、還元条件下でレーンあたりの蛋白量として0.1〜30μgをSDS−PAGE法により泳動する。泳動された蛋白質をPVDF膜にトランスファーし1〜10%BSAを含むPBS(以下、BSA−PBSと表記する)に室温で30分間反応させブロッキング操作を行う。
【0290】
ここで本発明のモノクローナル抗体を反応させ、0.05〜0.1%のTween−20を含むPBS(以下、Tween−PBSと表記する)で洗浄し、ペルオキシダーゼ標識したヤギ抗マウスIgGを室温で2時間反応させる。Tween−PBSで洗浄し、ECL Western Blotting Detection Reagents(アマシャム社製)などを用いてモノクローナル抗体が結合したバンドを検出することにより、配列番号53で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを検出する。ウェスタンブロッティングでの検出に用いられる抗体としては、天然型の立体構造を保持していないポリペプチドに結合できる抗体が用いられる。
【0291】
物理化学的手法は、例えば、抗原であるTIM−3と本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片とを結合させることにより凝集体を形成させて、この凝集体を検出することにより行う。この他に物理化学的手法として、例えば、毛細管法、一次元免疫拡散法、免疫比濁法またはラテックス免疫比濁法[臨床検査法提要、金原出版(1998)]などが挙げられる。
【0292】
ラテックス免疫比濁法は、抗体又は抗原を感作させた粒径0.1〜1μm程度のポリスチレンラテックスなどの担体を用い、対応する抗原または抗体により抗原抗体反応を起こさせると、反応液中の散乱光は増加し、透過光は減少する。この変化を吸光度または積分球濁度として検出することにより被験サンプル中の抗原濃度などを測定する。
【0293】
一方、TIM−3が発現している細胞の検出又は測定は、公知の免疫学的検出法を用いることができるが、例えば、好ましくは免疫沈降法、免疫細胞染色法、免疫組織染色法又は蛍光抗体染色法などが挙げられる。
【0294】
免疫沈降法は、TIM−3を発現した細胞などを本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片と反応させた後、プロテインG−セファロースなどのイムノグロブリンに特異的な結合能を有する担体を加えて抗原抗体複合体を沈降させる。又は以下のような方法によっても行なうことができる。ELISA用96ウェルプレートに上述した本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片を固相化した後、BSA−PBSによりブロッキングする。
【0295】
抗体が、例えばハイブリドーマ培養上清などの精製されていない状態である場合には、抗マウスイムノグロブリン、抗ラットイムノグロブリン、プロテイン−A又はプロテインGなどをあらかじめELISA用96ウェルプレートに固相化し、BSA−PBSでブロッキングした後、ハイブリドーマ培養上清を分注して結合させる。次に、BSA−PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、TIM−3を発現している細胞または組織の溶解液を反応させる。よく洗浄した後のプレートより免疫沈降物をSDS−PAGE用サンプルバッファーで抽出し、上記のウェスタンブロッティングにより検出する。
【0296】
免疫細胞染色法又は免疫組織染色法は、抗原を発現した細胞又は組織などを、場合によっては抗体の通過性を良くするため界面活性剤またはメタノールなどで処理した後、本発明のモノクローナル抗体と反応させ、さらにFITCなどの蛍光標識、ペルオキシダーゼなどの酵素標識又はビオチン標識などを施した抗イムノグロブリン抗体又はその結合断片と反応させた後、該標識を可視化し、顕微鏡にて顕鏡する方法である。
【0297】
また、蛍光標識の抗体と細胞を反応させ、フローサイトメーターにて解析する蛍光抗体染色法[Monoclonal Antibodies−Principles and practice、Third edition、Academic Press(1996)、単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック(1987)]により検出を行うことができる。
【0298】
特に、TIM−3の細胞外領域のアミノ酸配列、またはその立体構造に結合する、本発明のモノクローナル抗体又はその抗体断片は、蛍光抗体染色法により天然型の立体構造を保持して発現している細胞の検出ができる。
【0299】
また、蛍光抗体染色法のうち、FMAT8100HTSシステム(アプライドバイオシステム社製)などを用いた場合には、形成された抗体−抗原複合体と、抗体−抗原複合体の形成に関与していない遊離の抗体又は抗原とを分離することなく、抗原量又は抗体量を測定できる。
【0300】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0301】
[実施例1]
(ヒトTIM−3 cDNAの分子クローニングと安定発現株作製)
ヒトTIM−3のcDNAはHuman MTC Panel(クローンテック社製)を鋳型にExTaq(タカラバイオ社製)を用いたPCR法により増幅した。プライマーは、TIM−3 Fw2(配列番号31)及びTIM−3 Re2(配列番号32)を用いた。得られたPCR産物をpGEM−T Easy vector(Promega社製)へ挿入し、TOP10 One Shot(インビトロジェン社製)に形質転換し増幅させた後、ミニプレップ法によりプラスミドDNAを抽出した。
【0302】
精製したプラスミドDNAについて、プライマーTIM−3 Fw2及びTIM−3 Re2を用いたDNA配列解析を行い、GenBankアクセッション番号NM_032782のコーディングリージョンと同一の塩基配列を有するクローンを選定した。選定したクローンのインサートをpMCs−IRES−GFPベクター(CELL BIOLABS社製)へ組換え(hTIM−3/pMCs−IG)、Retrovirus Constructive System Ampho(タカラバイオ社製)を用い、ヒトTIM−3レトロウイルスを調製した。
【0303】
このヒトTIM−3レトロウイルスを、あらかじめフローサイトメトリー解析で内在的にTIM−3が発現していないことを確認したJurkat細胞(ATCC番号:CRL−2063)、EoL−1細胞(RIKEN CELL BANK番号:RCB0641)及びL929細胞(シグマアルドリッチ社製)へそれぞれ感染させた。数回の継代の後、FACSAria(BD Biosciences社製)にてTIM−3陽性細胞を採取した。さらに数回の継代の後、再度FACSAriaにてTIM−3陽性細胞を採取することによって、ヒトTIM−3安定発現細胞株を作製した。
【0304】
[実施例2]
(可溶型細胞膜外ヒトTIM−3ヒトFc融合蛋白質発現ベクターの調製)
ヒトTIM−3の細胞外領域をコードするcDNAを実施例1で構築したhTIM−3/pMCs−IGを鋳型にExTaq(タカラバイオ社製)を用いたPCR法で増幅した。プライマーはpMCs−Fw(配列番号33)及びTIM3ED−FcReXba(配列番号34)を用いた。
【0305】
得られたPCR産物をpTracer−CMV−FLAG−humanFcベクター[pTracer−CMV(インビトロジェン社製)のXba I部位とApa I部位にFLAG及びヒトIgG1のFc領域を導入した改変ベクター]に挿入し、TOP10 One Shot(インビトロジェン社製)に形質転換し増幅させた後、ミニプレップ法によりプラスミドDNA(sTIM−3−FLAG−Fc/pTracerCMV)を抽出した。
【0306】
精製したsTIM−3−FLAG−Fc/pTracerCMVは、T7(配列番号35)及びhTIM−3 Fw1(配列番号36)をプライマーとしたDNA配列解析により、GenBankアクセッション番号NM_032782の当該領域と同一の塩基配列を有することを確認した。インサート(EcoRI認識部位の後ろからApaI認識部位直前まで)の配列は配列番号37のとおりであった。
【0307】
[実施例3]
(可溶型細胞膜外ヒトTIM−3発現ベクターの調製)
ヒトTIM−3の細胞外領域をコードするcDNAを実施例2で構築したsTIM−3−FLAG−Fc/pTracerCMVを鋳型にExTaq(タカラバイオ社製)を用いたPCR法で増幅した。プライマーはTIM−3 Fw2(配列番号31)及びTIM3ED−FLAG4aa(配列番号39)を用いた。
【0308】
次に、得られたPCR産物を鋳型に、TIM−3 Fw2(配列番号31)及びC−FLAG−NotR2(配列番号40)をプライマーとしたExTaq(タカラバイオ社製)によるPCR法によりFLAG epitopeを連結した。得られたPCR産物をpGEM−T Easy vector(Promega社製)に挿入し、TOP10 One Shot(インビトロジェン社製)に形質転換し増幅させた後、ミニプレップ法によりプラスミドDNA(sTIM−3−FLAG/pEF6 Myc_HisC)を抽出した。
【0309】
精製したsTIM−3−FLAG/pEF6 Myc_HisCは、T7(配列番号35)及びBGH−R(配列番号41)をプライマーとしたDNA配列解析により、GenBankアクセッション番号NM_032782の当該領域と同一の塩基配列を有することを確認した。インサート(Not I認識部位の後ろからNot I認識部位直前まで)の配列は配列番号42のとおりであった。
【0310】
[実施例4]
(可溶型細胞膜外ヒトTIM−3ヒトFc融合蛋白質及び可溶型細胞膜外ヒトTIM−3の調製)
実施例2及び実施例3で得られたsTIM−3−FLAG−Fc/pTracerCMVプラスミドDNA及びsTIM−3−FLAG/pEF6 Myc_HisCプラスミドDNAをそれぞれHEK293F細胞(インビトロジェン社製)に導入し、一過性に発現させた。6日後、細胞上清を回収し、蛋白精製に用いた。
【0311】
可溶型細胞膜外ヒトTIM−3ヒトFc融合蛋白質又は可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を含む培養上清を遺伝子導入から6日後に遠心分離により回収し、Anti−FLAG M2 Agarose Affinitygel(シグマ社製)を用いて作製したAnti−FLAGカラムとFLAGペプチド(シグマ社製)を用いてマニュアルに従い精製した。
【0312】
溶出液を分画し、各フラクションを還元条件化でSDS−PAGE後、銀染色及びウェスタンブロッティングを行った。ウェスタンブロッティングには、抗FLAG M2抗体(シグマ社製)とアルカリフォスファターゼ標識ウサギ抗マウスイムノグロブリン抗体(ダコ社製)を用いた。目的の蛋白質が認められたフラクションをアミコンウルトラ−4 10K(ミリポア社製)を用いて濃縮し、Superdex 200gp(GEヘルスケア社製)を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行った。
【0313】
分画し、各フラクションを還元条件化でSDS−PAGE後、銀染色及びウェスタンブロッティングを行った。目的の蛋白質が認められたフラクションを濃縮し、PBS 0.5mLで洗浄した。孔径0.22μmのメンブランフィルターMILLEX−GV(ミリポア社製)でろ過滅菌し、可溶型細胞膜外ヒトTIM−3ヒトFc融合蛋白質又は可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を得た。エンドトキシン測定用専用試薬である、リムルスES−IIキットワコー(和光純薬社製)を用いて精製度を測定し、十分に精製されていることを確認した。
【0314】
[実施例5]
(ヒト抗体産生マウスの作製)
免疫に用いたマウスは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体の遺伝的背景を有しており、かつ、ヒトIg重鎖遺伝子座を含む14番染色体断片(SC20)及びヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を同時に保持する。このマウスはヒトIg重鎖遺伝子座を持つ系統Aのマウスと、ヒトIgκ鎖トランスジーンを持つ系統Bのマウスとの交配により作製された。
【0315】
系統Aは、内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、子孫伝達可能な14番染色体断片(SC20)を保持するマウス系統であり、例えば富塚らの報告[Tomizuka.et al.、Proc Natl Acad Sci USA.、2000 Vol97:722]に記載されている。
【0316】
また、系統Bは内因性Ig重鎖及びκ軽鎖破壊の両者についてホモ接合体であり、ヒトIgκ鎖トランスジーン(KCo5)を保持するマウス系統(トランスジェニックマウス)であり、例えばFishwildらの報告[Nat Biotechnol、1996、14:845]に記載されている。
【0317】
系統Aの雄マウスと系統Bの雌マウス、または系統Aの雌マウスと系統Bの雄マウスの交配により得られた、血清中にヒトIg重鎖及びκ軽鎖が同時に検出される個体[Ishida&Lonberg、IBC’s 11th Antibody Engineering、Abstract 2000]を、以下の免疫実験に用いた。なお、前記ヒト抗体産生マウス(以下、KMマウスと記す)は、契約を結ぶことによって、協和発酵キリン株式会社より入手可能である。
【0318】
[実施例6]
(ヒトTIM−3に対するヒトモノクローナル抗体の作製)
本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら、講談社発行、1991年)等に記載されるような一般的方法に従って調製した。免疫原としてのTIM−3は、実施例1で得られたTIM−3発現L929細胞又は実施例4で得られた可溶型細胞膜外ヒトTIM−3ヒトFc融合蛋白質を用いた。被免疫動物は、上記KMマウスを用いた。
【0319】
まず、KMマウスに、TIM−3発現L929細胞をマウス1匹あたり1×10
7個腹腔内に免疫した。初回免疫から以降、同細胞を3回又はそれ以上免疫した。脾臓を取得する3日前に、実施例4で得られた可溶型細胞膜外ヒトTIM−3ヒトFc融合蛋白質20μg/マウス個体を尾静脈投与した。免疫されたマウスから脾臓を外科的に取得した後、PBS 4mL中に脾臓を入れ、メッシュ(セルストレイナー:ファルコン社製)上でシリンジのピストンを用いてつぶした。
【0320】
メッシュを通過した細胞懸濁液を遠心分離して細胞を沈澱させた後、Red Blood Cell Lysing Buffer(シグマ社製)1mLで再懸濁した。室温で5分間のインキュベーションの後、50単位/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシンを含む無血清DMEM培地(インビトロジェン社製)(以下、無血清DMEM培地と記す)10mLを加え、遠心分離により細胞を沈澱させた。
【0321】
沈殿した細胞を、再度、無血清DMEM培地に懸濁した。一方、ミエローマ細胞SP2/0(ATCC番号:CRL−1581)は10% FCS(インビトロジェン社製)、50単位/mL ペニシリン、50μg/mL ストレプトマイシンを含むDMEM培地(インビトロジェン社製)(以下、血清入りDMEM培地と記す)にて、37℃、5%炭酸ガス存在下で細胞濃度が1×10
6細胞/mLを越えないように培養した。
【0322】
SP2/0細胞を脾臓由来細胞と同様に無血清DMEM培地10mLで洗浄し、無血清DMEM培地に懸濁した。これら脾臓由来細胞の懸濁液とマウスミエローマ懸濁液とを細胞数5:1で混合し、遠心分離後、上清を完全に除去した。このぺレットに、融合剤として50%(w/v)ポリエチレングリコール1500(ベーリンガーマンハイム社製)1mLを、ピペットの先でぺレットを撹拌しながらゆっくり添加した後、予め37℃に加温しておいた無血清DMEM培地1mLをゆっくり添加した。さらに5mL及び10mLの無血清DMEM培地をゆっくり添加した。その後、37℃、5%炭酸ガス存在下で5分間静置した。
【0323】
遠心分離後、上清を除去して得られた融合細胞を、10% FCS(インビトロジェン社製)、ペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミン(インビトロジェン社製、カタログ番号10378−016を100倍希釈)、IL−6(5ng/mL)、2−メルカプトエタノール(インビトロジェン社製、カタログ番号21985−023を1000倍希釈)を含むDMEM培地(インビトロジェン社製)(以下、IL−6入りDMEM培地と記す)50mLに懸濁し、37℃、5%炭酸ガス存在下で培養した。
【0324】
翌日、細胞をピペッティングにより回収し、遠心分離により沈殿した細胞ペレットを10mLのIL−6入りDMEM培地に再懸濁した。翌日、Hypoxanthine−aminopterin−thymidine(以下、HATと記す、シグマ社製)を添加し、約7−10日後、培養上清を回収し、ハイブリドーマスクリーニングに用いた。
【0325】
[実施例7]
(ヒトTIM−3に対するマウスモノクローナル抗体の作製)
本実施例におけるモノクローナル抗体の作製は、単クローン抗体実験操作入門(安東民衛ら、講談社発行、1991年)等に記載されるような一般的方法に従って調製した。免疫原としてのTIM−3は、実施例1で得られたTIM−3発現L929細胞又は実施例4で得られた可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を用いた。被免疫動物は、Balb/Cマウス(日本チャールズ・リバー社から購入)を用いた。
【0326】
まず、Balb/Cマウスに、TIM−3発現L929細胞をマウス1匹あたり1×10
7個腹腔内に免疫した。初回免疫から以降、同細胞を3回又はそれ以上免疫した。脾臓を取得する3日前に、実施例4で得られた可溶型細胞膜外ヒトTIM−3 20μg/マウス個体を尾静脈投与した。免疫されたマウスから脾臓を外科的に取得した後、PBS 4mL中に脾臓を入れ、メッシュ(セルストレイナー:ファルコン社製)上でシリンジのピストンを用いてつぶした。
【0327】
メッシュを通過した細胞懸濁液を遠心分離して細胞を沈澱させた後、Red Blood Cell Lysing Buffer(シグマ社製)1mLで再懸濁した。室温で5分間のインキュベーションの後、無血清DMEM培地10mLを加え、遠心分離により細胞を沈澱させた。沈殿した細胞を、再度、無血清DMEM培地に懸濁した。一方、ミエローマ細胞 SP2/0(ATCC番号:CRL−1581)は血清入りDMEM培地にて、37℃、5%炭酸ガス存在下で細胞濃度が1×10
6細胞/mLを越えないように培養した。
【0328】
SP2/0細胞を脾臓由来細胞と同様に無血清DMEM培地10mLで洗浄し、無血清DMEM培地に懸濁した。これら脾臓由来細胞の懸濁液とマウスミエローマ懸濁液とを細胞数5:1で混合し、遠心分離後、上清を完全に除去した。このぺレットに、融合剤として50%(w/v)ポリエチレングリコール1500(ベーリンガーマンハイム社製)1mLを、ピペットの先でぺレットを撹拌しながらゆっくり添加した後、予め37℃に加温しておいた無血清DMEM培地1mLをゆっくり添加した。
【0329】
この細胞懸濁液に5mLの無血清DMEM培地をゆっくり添加した後、さらに10mLの無血清DMEM培地を添加し、37℃、5%炭酸ガス存在下で5分間静置した。遠心分離後、上清を除去して得られた融合細胞を、IL−6入りDMEM培地50mLに懸濁し、37℃、5%炭酸ガス存在下で培養した。翌日、細胞をピペッティングにより回収し、遠心分離により沈殿した細胞ペレットを10mLのIL−6入りDMEM培地に再懸濁した。翌日、HAT(シグマ社製)を添加し、約7−10日後、培養上清を回収し、ハイブリドーマスクリーニングに用いた。
【0330】
[実施例8]
(ヒトTIM−3に結合するヒト及びマウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング)
実施例6及び7で作製した細胞上清を用いてハイブリドーマのスクリーニングを行った。方法は、ヒトTIM−3安定発現細胞株を利用したフローサイトメトリー法で行った。まず、実施例1で得られたヒトTIM−3発現Jurkat細胞又はEoL−1細胞をステイニングメディウム(2% FCS及び0.05% アジ化ナトリウムを含むPBS)で洗浄し、1mLあたり1×10
7個になるように再びステイニングメディウムで懸濁した。細胞懸濁液を96ウェルプレートに10μLずつ移した。
【0331】
さらに、ハイブリドーマの上清50μLを加え、4℃、30分間静置した。ステイニングメディウムで2回洗浄後、ステイニングメディウムで200倍希釈した標識抗体を50μLずつ加え、4℃、30分間静置した。標識抗体は、ヒトモノクローナル抗体に対してはGoat F(ab’)
2 Anti−Human IgG(γ chain specific)−R−PE(サザンバイオテック社製)を、マウスモノクローナル抗体に対してはGoat F(ab’)
2 Anti−Mouse IgG(H+L)R−PE、(サザンバイオテック社製)を用いた。
【0332】
ステイニングメディウムで2回洗浄後、FACSCalibur(BD Biosciences社製)で解析し、一次スクリーニングとした。ポジティブクローンを拡大培養した後、FACSAria(BD Biosciences社製)でクローンソーティングし、Hypoxanthine−thymidine(以下、HTと記す、シグマ社製)を含んだIL−6入りDMEM培地で約7日培養した。
【0333】
回収した上清について、一次スクリーニングと同様にスクリーニングを行い、抗ヒトTIM−3ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ及び抗ヒトTIM−3マウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマをクローニングし、モノクローナル抗体の精製に用いた。
【0334】
[実施例9]
(ハイブリドーマ由来モノクローナル抗体の精製)
実施例8で取得した抗ヒトTIM−3ヒト又はマウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから、抗TIM−3ヒト又はマウスモノクローナル抗体を精製した。簡単には、CELLine 抗体産生システム(BD Biosciences社製)を用い、高濃度に抗TIM−3抗体を含むハイブリドーマ上清を調製し、抗ヒトTIM−3モノクローナル抗体を精製した。まず、クローン化されたハイブリドーマを無血清培地に馴化させるために、HTを含んだIL−6入りDMEM培地とBD Cell MAb 無血清培地(BD Biosciences社製)を1:1で混合した培地で数日間培養し、1:2で混合した培地でさらに数日間培養した。
【0335】
その後、BD Cell MAb 無血清培地(BD Biosciences社製)で培養し、ハイブリドーマを無血清化した。無血清化したハイブリドーマはCL−1000フラスコなどにてマニュアルに従い培養し、高濃度に抗TIM−3抗体を含むハイブリドーマ上清を回収した。ハイブリドーマ上清からの抗体精製はProtein Aを用いた標準的な方法で実施した。
【0336】
具体的には、MabSelect(GEヘルスケア社製)をオープンカラムに詰め、PBSで2倍希釈した上清を通過させ、0.1mol/L Glycin−HCl(pH2.7)を用いて溶出し、アミコンウルトラ(ミリポア社製)を用いて濃縮した。その後、NAP−5カラム(GEヘルスケア社製)でPBSに置換し、濾過滅菌することで、精製抗ヒトTIM−3ヒトモノクローナル抗体を4クローン(512抗体、644抗体、4545抗体、4177抗体)、精製抗ヒトTIM−3マウスモノクローナル抗体を1クローン(8213抗体)取得した。
【0337】
[実施例10]
(抗TIM−3ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプの決定)
実施例9で得られた抗TIM−3ヒトモノクローナル抗体のアイソタイプは、抗原固相ELISA法及びフローサイトメトリー法により決定した。
具体的には、抗原固相ELISA法では、まず、実施例4で得られた可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を1μg/mL Carbonate−Bicarbonate Buffer(シグマ社製)に調製したものを50μL、ELISA用96穴マイクロプレート(Maxisorp、ヌンク社製)の各ウェルに加えた。4℃で一晩インキュベートし、可溶型細胞膜外ヒトTIM−3をマイクロプレートに吸着させた。
【0338】
上清を捨てた後、SuperBlock Blocking Buffer in TBS(PIERCE社製)を加えて室温で10分間インキュベートし、さらにハイブリドーマ培養上清50μLを添加し、室温で30分間インキュベートした。各ウェルを0.1% Tween20含有トリス緩衝生理食塩水(TBS−T)で洗浄後、HRPで標識されたマウス抗ヒトIgG1抗体、マウス抗ヒトIgG2抗体、マウス抗ヒトIgG3抗体又はマウス抗ヒトIgG4抗体(10% SuperBlock Blocking Buffer含有TBS−Tでそれぞれ2000、2000、2000、4000倍希釈したもの。SouthernBiotech社製)をそれぞれ50μL加え、室温下で30分間インキュベートした。
【0339】
各ウェルをTBS−Tで洗浄し、基質緩衝液(TMB、DAKO社製)を50μL加え、室温下で20分間インキュベートした後、0.5mol/L硫酸(和光純薬工業株式会社製)を50μL加え、反応を止めた。波長450nm(参照波長570nm)での吸光度をマイクロプレートリーダー(VersaMax、モレキュラーデバイス社製)で測定した。
【0340】
また、フローサイトメトリー法では、まず、実施例1で得られたヒトTIM−3発現Jurkat細胞をステイニングメディウムで洗浄後、ハイブリドーマの上清50μLを加え、4℃、30分間静置した。洗浄後、ステイニングメディウムで100倍程度に希釈したMouse Anti−Human IgG1−PE、Mouse Anti−Human IgG2−PE、Mouse Anti−Human IgG3(Hinge)−PE及びMouse Anti−Human IgG 4(Fc)−PE(全てサザンバイオテック社製)をそれぞれ50μLずつ加え、4℃、30分間静置し、FACSCalibur(BD Biosciences社製)で解析した。
【0341】
以上の結果から、512抗体、644抗体、4545抗体のアイソタイプはそれぞれ、IgG1、IgG4、IgG2であることが明らかとなった。
【0342】
[実施例11]
(ヒトTIM−3に対するマウスモノクローナル抗体のアイソタイプの決定)
実施例9で得られた抗ヒトTIM−3マウスモノクローナル抗体のアイソタイプは、IsoStrip Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて決定した。実施例8で得られた抗TIM−3抗体を含むハイブリドーマ上清を用い、マニュアルに従って操作した。その結果、8213抗体のアイソタイプはIgG2bであることが明らかとなった。
【0343】
[実施例12]
(抗TIM−3モノクローナル抗体遺伝子の単離)
実施例9で取得された抗ヒトTIM−3ヒト又はマウスモノクローナル抗体産生ハイブリドーマから抗TIM−3ヒト又はマウスモノクローナル抗体遺伝子を単離した。トータルRNAの抽出は、クローン化したハイブリドーマから、High Pure RNA Isolation Kit(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用い、マニュアルに従い実施した。抗体cDNAの可変領域のクローニングは、SMART RACE cDNA amplification Kit(クローンテック社製)を用い、添付の説明書に従って行った。
【0344】
ヒトモノクローナル抗体重鎖(VH)のPCRには、UPM(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーhh−6(配列番号44)を用い、さらに、この反応液の一部を鋳型とし、NUP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーhh−3(配列番号45)を用いた。PCR産物をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)などを用いてクローニングし、ベクターのユニバーサルプライマー(例えば、T7またはM13Rプライマー)を用いて塩基配列及びアミノ酸配列を解析した。
【0345】
その結果、512抗体のVHは、塩基配列が配列番号54、アミノ酸配列が55で表され、644抗体のVHは、塩基配列が配列番号58、アミノ酸配列が59で表され、4545抗体のVHは、塩基配列が配列番号7、アミノ酸配列が配列番号8で表され、4177抗体のVHは、塩基配列が配列番号17、アミノ酸配列が配列番号18で表されることが明らかとなった。得られた各可変領域とヒトIgG1の定常領域とを発現ベクターN5KG1(Biogen IDEC Inc社製)に組み込み、連結した。
【0346】
ヒトモノクローナル抗体軽鎖(VL)のPCRには、UPM(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーhk−2(配列番号46)を用い、さらに、この反応液の一部を鋳型とし、NUP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーhk−6(配列番号47)を用いた。PCR産物をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)などを用いてクローニングし、ベクターのユニバーサルプライマー(例えば、T7またはM13Rプライマー)を用いて塩基配列及びアミノ酸配列を解析した。
【0347】
その結果、512抗体のVLは、塩基配列が配列番号56、アミノ酸配列が57で表され、644抗体のVLは、塩基配列が配列番号60、アミノ酸配列が61で表され、4545抗体のVLは、塩基配列が配列番号9、アミノ酸配列が配列番号10で表され、4177抗体のV
Lは、塩基配列が配列番号19、アミノ酸配列が配列番号20で表されることが明らかとなった。得られた各可変領域とκ鎖の定常領域とを発現ベクターN5KG1(Biogen IDEC Inc社製)に組み込み、連結した。
【0348】
マウスモノクローナル抗体重鎖(VH)のPCRには、UPM(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーmH_Rv1(配列番号48)を用い、さらに、この反応液の一部を鋳型とし、NUP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社)とプライマーmH_Rv2(配列番号49)を用いた。
【0349】
PCR産物をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)などを用いてクローニングし、ベクターのユニバーサルプライマー(例えば、T7またはM13Rプライマー)を用いて塩基配列及びアミノ酸配列を解析した。
【0350】
その結果、8213抗体のVHは、塩基配列が配列番号27、アミノ酸配列が配列番号28で表されることが明らかとなった。得られた可変領域とマウスIgG2a定常領域とを連結し、発現ベクターN5KG1(Biogen IDEC Inc社製)に組み込んだ。
【0351】
マウスモノクローナル抗体軽鎖(VL)のPCRには、UPM(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーmK_Rv1(配列番号50)を用い、さらに、この反応液の一部を鋳型とし、NUP(SMART RACE cDNA amplification Kit;クローンテック社製)とプライマーmK_Rv2(配列番号51)を用いた。PCR産物をZero Blunt TOPO PCR Cloning Kit(インビトロジェン社製)などを用いてクローニングし、ベクターのユニバーサルプライマー(例えば、T7またはM13Rプライマー)を用いて塩基配列及びアミノ酸配列を解析した。
【0352】
その結果、8213抗体のVLは、塩基配列が配列番号29、アミノ酸配列が配列番号30で表されることが明らかとなった。得られた可変領域とマウスκ鎖の定常領域とを連結し、上述の8213抗体のVHを組み込んだ発現ベクターに挿入した。
【0353】
また、陰性コントロールとして抗ジニトロフェノール(DNP)ヒトIgG1抗体を得るため、抗重鎖(VH)の塩基配列(配列番号62)、抗体軽鎖(VL)の塩基配列(配列番号64)、ヒトIgG1及びκ鎖の定常領域を発現ベクターN5KG1(Biogen IDEC Inc社製)に組み込んだ。
【0354】
[実施例13]
(組換抗TIM−3ヒトモノクローナルデフコース抗体の精製)
実施例12で構築した組換え型抗体発現ベクターを宿主細胞に導入し、組換え型抗体発現細胞を作製した。発現のための宿主細胞は、既報に従い、FUT8
−/− CHO細胞を用いた(Clin Cancer Res 2006:12(9)Iida et al.)。まず、実施例12で得られた512、644、4545、又は、4177の発現ベクターをFreeStyle
TM MAX Reagent(インビトロジェン社製)を用いてFUT8
−/− CHO細胞にそれぞれ導入した。FUT8
−/− CHO細胞は、シェーカーを用いてCO
2 5%、37℃の環境下で培養し、約5日後に培養上清を回収した。
【0355】
回収した培養上清をProtein A(GEヘルスケア社製)及び精製量に応じて0.8×40cmカラム(バイオラッド社製)などを用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として0.02mol/L クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.7、50mmol/L NaCl)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は0.2mol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加した。
【0356】
調製された抗体溶液は、NAP−25(GEヘルスケア社製)及びアミコンウルトラ(10000カット、ミリポア社製)を用いてPBSに置換及び濃縮し、ろ過滅菌した後、組換抗TIM−3ヒトモノクローナルデフコース抗体(512抗体、644抗体、4545抗体、4177抗体)を得た。リムルスES−IIキットワコー(和光純薬社製)を用いて精製度を測定し、十分に精製されていることを確認した。
また、実施例12で得られた抗DNP抗体の発現ベクターをCHO−DG44細胞に導入した。CHO−DG44細胞は、シェーカーを用いてCO
2 5%、37℃の環境下で培養し、約5日後に培養上清を回収した。回収した培養上清を、同様に精製Protein A(GEヘルスケア社製)及び精製量に応じて0.8×40cmカラム(バイオラッド社製)などを用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として0.02mol/L クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.7、50mmol/L NaCl)を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は0.2mol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加した。調製された抗体溶液は、NAP−25(GEヘルスケア社製)及びアミコンウルトラ(10000カット、ミリポア社製)を用いてPBSに置換及び濃縮し、ろ過滅菌した後、組換抗DNP抗体を得た。リムルスES−IIキットワコー(和光純薬社製)を用いて精製度を測定し、十分に精製されていることを確認した。
【0357】
[実施例14]
(組換抗TIM−3マウスモノクローナル抗体の精製)
実施例12で得られた8213抗体の発現ベクターは、293フェクチン(インビトロジェン社製)を用いてHEK293F細胞(インビトロジェン社製)に導入した。HEK293F細胞は、シェーカーを用いてCO
2 5%、37℃の環境下で培養し、約5日後に培養上清を回収した。回収した培養上清をProtein A(GEヘルスケア社製)及び精製量に応じて0.8×40 cm カラム(バイオラッド社製)などを用い、吸着緩衝液としてPBS、溶出緩衝液として0.02mol/L クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.7、50mmol/L NaCl)を用いてアフィニティー精製した。
【0358】
溶出画分は0.2mol/L リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を添加した。調製された抗体溶液は、NAP−25(GEヘルスケア社製)及びアミコンウルトラ(10000カット、ミリポア社製)を用いてPBSに置換及び濃縮し、ろ過滅菌した後、組換抗TIM−3マウスモノクローナル抗体(8213抗体)を得た。リムルスES−IIキットワコー(和光純薬社製)を用いて精製度を測定し、十分に精製されていることを確認した。
【0359】
[実施例15]
(精製モノクローナル抗体の蛍光標識)
ハイブリドーマ由来モノクローナル抗体および組換モノクローナル抗体の蛍光標識は、Alexa Fluor 647 Monoclonal Antibody Labeling Kit(インビトロジェン社製)を用い、マニュアルに従い実施した。標識操作後、TIM−3発現細胞に対するFACSCalibur(BD Biosciences社製)により、各抗体がAlexa Fluor 647(以下、Alexa−647と記す)で標識されていることを確認した。
【0360】
[実施例16]
(競合試験によるエピトープ分類−1)
実施例13及び14で得られた抗体、並びに市販の抗TIM−3抗体である344823抗体(Clone 344823、R&D Systems社製)のエピトープの関係を競合試験で検討した。簡単には、被験抗体を実施例1で得られたTIM−3発現細胞に反応させ、標識した別の抗TIM−3抗体がTIM−3発現細胞にさらに結合しうるかをフローサイトメトリー法で評価した。
【0361】
第一段階として、実施例13及び14で作製したモノクローナル抗体(512抗体、644抗体、4545抗体、4177抗体、8213抗体)と344823抗体との競合の有無をそれぞれ検討した。まず、ステイニングメディウムで洗浄したヒトTIM−3発現EoL−1細胞と親株EoL−1細胞に精製した被験モノクローナル抗体(512抗体、644抗体、4545抗体、4177抗体、8213抗体)をそれぞれ反応させた(4℃ 30分間)。終濃度は10μg/mLとした。続いて、PE標識344823抗体(Clone 344823、R&D Systems社製)を添加し、反応させた(4℃ 30分間)。ステイニングメディウムで洗浄後、7−AAD(BD Biosciences社製)を加え、FACSCalibur(BD Biosciences社製)で解析した。
【0362】
その結果、陽性対照として用いたヤギ由来抗ヒトTIM−3 ポリクローナル抗体(R&D Systems社製)及び644抗体はPE標識344823抗体のTIM−3発現細胞への結合をほぼ完全に阻害した。一方で、512、4545及び8213抗体はPE標識344823抗体のTIM−3発現細胞への結合を阻害しなかった。また、4177抗体は、PE標識344823抗体のTIM−3発現細胞への結合を阻害したが、その阻害は644抗体に比べると極めて低かった。従って、644抗体は344823抗体と競合する一方で、512、4545及び8213抗体は344823抗体と競合せず、4177抗体は344823抗体と競合するものの、その競合は部分的であることが明らかとなった。
【0363】
第二段階として、これまでテストした抗TIM−3モノクローナル抗体のうち、344823抗体と競合しなかった、512、4545及び8213抗体の競合の有無を検討した。方法は、標識抗体として実施例15で得られたAlexa−647標識512抗体又はAlexa−647標識8213抗体を用いた以外は、第一段階と同様に行った。その結果、4545及び8213抗体は、Alexa−647標識512抗体のTIM−3発現細胞への結合を阻害しなかった。
【0364】
一方で、4545抗体は、Alexa−647標識8213抗体のTIM−3発現細胞への結合を阻害した。従って、4545抗体と8213抗体は競合する一方で、これら2抗体は512抗体と競合しないことが明らかとなった。この結果は、512抗体は、344823抗体及び8213抗体と異なるエピトープを認識することを示唆している。
【0365】
第三段階として、第一段階で344823抗体と部分的に競合することが明らかとなった4177抗体について、512及び8213抗体との競合の有無を検討した。方法は、第二段階と同様に行った。その結果、4177抗体は、Alexa−647標識512抗体のTIM−3発現細胞への結合を阻害しない一方で、Alexa−647標識8213抗体のTIM−3発現細胞への結合を阻害したことから、4177抗体は512抗体と競合せず、8213抗体と競合することが明らかとなった。
【0366】
以上の結果から、実施例13及び14で得られた5抗体のうち、644抗体は344823抗体が認識するエピトープの近傍を認識し、512抗体は344823抗体または他の4抗体(644抗体、4545抗体、4177抗体、8213抗体)が認識するエピトープと異なるエピトープを認識することが示唆された。
【0367】
また、8213抗体は344823抗体または512抗体が認識するエピトープとは異なるエピトープを認識することが示唆された。4545抗体はこの8213抗体が認識するエピトープの近傍を認識することが示唆された。一方、4177抗体は8213抗体が認識するエピトープの近傍と共に、344823抗体が認識するエピトープの近傍もわずかに認識することが示唆された。
【0368】
[実施例17]
(組換抗TIM−3ヒトモノクローナルデフコース抗体による抗体依存的細胞傷害活性試験)
抗体を介した細胞性の細胞傷害活性は、抗体の存在下でエフェクターとしてヒト末梢血由来単核球(Peripheral Blood Mononuclear Cells、以下、PBMCと記す)を用い、ターゲット細胞へのADCC活性の測定を実施した。まず、健康なボランティアより末梢血を採取し、抗凝固剤を添加した。この血液をFicoll−Plaque Plus(GEヘルスケア社製)の上に静置し、界面を乱さないように大型遠心分離機(CF9RX、日立工機社製)を用いて2000rpmで20分間遠心分離した。
【0369】
細胞が含まれる中間層を集めPBSを用いて洗浄し、900rpm 20分間の遠心分離により血小板を除いたものをPBMCとして測定に用いた。次に、ターゲット細胞に用いるDaudi細胞とPBMCをエフェクター/ターゲット比=50で混合した。
【0370】
実施例13及び14で得られた組換抗TIM−3ヒトモノクローナルデフコース抗体(512抗体、644抗体、4545抗体、4177抗体)およびヒトIgG1コントロールとして抗DNP抗体をそれぞれ培地に懸濁し、終濃度1μg/mL、トータル100μLとなるように添加した。混合後、37℃、5% CO
2存在下で4時間培養した。培地中に放出されたLDH量から、ターゲット細胞の溶解度を評価した。LDHの測定と溶解度の算出は、CytoTox 96 Non−Radioactive Cytotoxicity Assay(プロメガ社製)を用い、マニュアルに従った。有意差検定は標準的なStudent’s t−testを用い、危険率(p)が0.05以下のものを有意に異なるものとした。
【0371】
Daudi細胞に対するADCC活性を測定した結果、抗DNP抗体と比較して、4545抗体及び4177抗体は、ターゲット細胞溶解率の顕著な増加が認められた。この結果は、抗TIM−3マウス抗体8213、および、抗TIM−3マウス抗体8213と競合する抗TIM−3抗体は、高いADCC活性を有することを示唆している。
【0372】
同様に、実施例13で得られた、組換抗TIM−3ヒトモノクローナルデフコース抗体(4545抗体、4177抗体)、市販抗ヒトTIM−3モノクローナル抗体である344823抗体、および、ネガティブコントロールとして抗DNP抗体を用い、同様にADCC活性の測定を実施した。
【0373】
まず、健康なボランティアより末梢血を採取し、抗凝固剤を添加した。この血液をFicoll−Plaque Plus(GEヘルスケア社製)の上に静置し、界面を乱さないように大型遠心分離機(CF9RX、日立工機社製)を用いて2000rpmで20分間遠心分離した。細胞が含まれる中間層を集めPBSを用いて洗浄し、900rpm 20分間の遠心分離により血小板を除いたものをPBMCとして測定に用いた。
【0374】
次に、ターゲット細胞に用いるDaudi細胞とPBMCをエフェクター/ターゲット比=25で混合した。4545抗体、4177抗体、344823抗体、抗DNP抗体およびPBSを培地に懸濁し、終濃度1μg/mL、トータル100μLとなるように添加した。混合後、37℃、5% CO
2存在下で4時間培養した。培地中に放出されたLDH量から、ターゲット細胞の溶解度を評価した。
【0375】
LDHの測定と溶解度の算出は、CytoTox 96 Non−Radioactive Cytotoxicity Assay(プロメガ社製)を用い、マニュアルに従った。有意差検定は標準的なStudent’s t−testを用い、危険率(p)が0.05以下のものを有意に異なるものとした。Daudi細胞に対するADCC活性を測定した結果、4545抗体、および、4177抗体は、抗DNP抗体と比較して、ターゲット細胞溶解率の有意な増加が認められた。一方、344823抗体は、抗DNP抗体およびPBSと比較して、ターゲット細胞溶解率の有意な増加は認められなかった。
【0376】
[実施例18]
(抗TIM−3抗体を用いた結合解離定数の算出)
抗TIM−3抗体の結合解離定数を、表面プラズモン共鳴の原理による解析装置(Biacore、GE ヘルスケア社製)を用いて解析した。簡単には、抗ヒト抗体または抗マウス抗体をCM5センサーチップに固相化し、次に抗TIM−3ヒトまたはマウス抗体を流して結合させ、次いで実施例4で作製した可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を流すことによって、抗TIM−3抗体に対するTIM−3の結合解離を観察した。全実験工程を通して、基本的にはGE ヘルスケア社の結合解離定数算出のための実験方法を参照した。
【0377】
具体的には、センサーチップはCM5(リサーチグレード、GEヘルスケア社製)を用いた。まず、CM5チップを400mmol/L EDC(N−ethyl−N’−(3−dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride)と100mmol/L NHS(N−hydroxysuccinimide)を等量混合したものをCM5チップに流して活性化させた。次に、Human Antibody Capture Kit(GEヘルスケア社製)付属の抗ヒト抗体抗体をキット付属の溶液に希釈して流し、CM5チップにヒト抗体に対する抗体を必要量固相化させた。
【0378】
また、マウス抗体に関しては、Mouse Antibody Capture Kit(GEヘルスケア社製)付属のマウス抗体に対する抗体をキット付属の溶液に希釈して流し、CM5チップに必要量固相化させた。次に、1mol/L ethanolamide hydrochlorideを流し、活性化したチップ表面をブロッキングし不活化させた。
【0379】
次に、抗TIM−3抗体を1フローセルに1種類ずつHBS−EPバッファー(GEヘルスケア社製)に希釈して流し、固相化されたヒト抗体に対する抗体またはマウス抗体に対する抗体に結合させた。次に、可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を流した。結合した抗TIM−3抗体及び可溶型細胞膜外ヒトTIM−3を解離させるため、Human Antibody Capture Kit付属の3mol/L MgCl
2、またはMouse Antibody Capture Kit付属のpH1.7 Glycine−HClをキット付属の量を流した。
【0380】
ここまでの工程を1ステップとし、同様の工程を可溶型細胞膜外ヒトTIM−3について複数の濃度で繰り返すことで、結合解離定数を算出するためのデータ(センサーグラム)を取得した。アナライトとして流した可溶型細胞膜外ヒトTIM−3の濃度は、280nmの吸光度を測定し、1mg/mL を1.4ODとして算出した。
【0381】
可溶型細胞膜外ヒトTIM−3の分子量は、電気泳動の泳動度から、約42.8 kDaと算出した。解析は、Biaevaluationソフト(GEヘルスケア社製)を用い、Biaevaluation Software Handbookを参照した。具体的には、Kinetics解析の同時解析を実施し、基本的に1:1 Langmuir Bindingの反応モデルを採用してフィッティングし、結合速度定数(Ka)及び解離速度定数(Kd)を算出し、Kd/Kaの計算により解離定数K
D値を算出した。
【0382】
抗ヒトTIM−3ヒトモノクローナル抗体のK
D値は、多くの抗体で10
−9mol/Lオーダーとなった。このことから、TIM−3を標的にしたADCC活性と結合親和性の間に相関は認められなかった。
【0383】
抗ヒトTIM−3マウスモノクローナル抗体は、観察した限りにおいて(例えば解離相を30分程度観察)、抗原である可溶型細胞膜外ヒトTIM−3との解離が認められなかった。このことから、ヒトTIM−3に対し、極めて高い結合性を有するモノクローナル抗体を作製しうることが示された。
【0384】
[実施例19]
(競合試験によるエピトープ分類−2)
抗TIM−3抗体である、512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体、344823抗体、F38−2E2抗体、および、コントロールの抗DNP抗体のエピトープを競合試験で検討した。簡単には、未標識の被験抗体を実施例1で得られたTIM−3発現細胞に反応させ、蛍光標識した別の抗TIM−3抗体がTIM−3発現細胞にさらに結合しうるかをフローサイトメトリー法で評価した。
【0385】
ステイニングメディウムで洗浄したヒトTIM−3発現EoL−1細胞に精製した被験モノクローナル抗体[抗DNP抗体、512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体、344823抗体(R&D Systems社製)、F38−2E2抗体(Imgenex社製)]をそれぞれ反応させた(4℃ 30分間)。終濃度は10μg/mLとした。続いて、Alexa−647またはAPC標識抗TIM−3抗体[344823抗体(R&D Systems社)、F38−2E2抗体(eBioscience社製)]を添加し、反応させた(4℃ 30分間)。ステイニングメディウムで洗浄後、7−AAD(BD Biosciences社製)を加え、FACSCalibur(BD Biosciences社製)で解析した。
【0386】
結果を表1に示す。表1において、未標識抗TIM−3抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合がネガティブコントロールと同程度に認められた場合を「+」、未標識抗TIM−3抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が減弱しながらも認められた場合を「+/−」、未標識抗TIM−3抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められなかった場合を「−」で表した。
【0387】
【表1】
【0388】
表1に示すように、Alexa−647標識512抗体は、その他の未標識抗TIM−3抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められたことから、644抗体、4545抗体、8213抗体、344823抗体、F38−2E2抗体とは競合しない、独立したエピトープを認識することが示唆された。
【0389】
Alexa−647標識644抗体は、未標識抗TIM−3抗体344823抗体またはF38−2E2抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められない、もしくは減弱したことから、344823抗体、F38−2E2抗体と競合する、互いに近接したエピトープを認識することが示唆された。
【0390】
Alexa−647標識4545抗体は、未標識抗TIM−3抗体8213抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められなかったことから、8213抗体と競合する、互いに近接したエピトープを認識することが示唆された。
【0391】
Alexa−647標識8213抗体は、未標識抗TIM−3抗体4545抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められなかったことから、4545抗体と競合する、互いに近接したエピトープを認識することが示唆された。
【0392】
APC標識344823抗体は、未標識抗TIM−3抗体644抗体またはF38−2E2抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められない、もしくは減弱したことから、644抗体またはF38−2E2抗体と競合する、互いに近接したエピトープを認識することが示唆された。
【0393】
APC標識F38−2E2抗体は、未標識抗TIM−3抗体644抗体または344823抗体の結合したTIM−3発現細胞への結合が認められなかったことから、644抗体または344823抗体と競合する、互いに近接したエピトープを認識することが示唆された。
【0394】
[実施例20]
(マウスTIM−3 cDNAの分子クローニング)
マウスTIM−3のcDNAは実施例1と同様に取得した。Balb/cマウス由来骨髄細胞からHigh Pure RNA Isolation Kit(ロシュ社製)を用いてtotal RNAを抽出し、ThermoScript RT−PCR System(インビトロジェン社製)を用いて鋳型cDNAを合成した。プライマーは、mTim−3 Fw3(配列番号70)及びmTim−3 Re3(配列番号71)を用いた。pGEM−T Easy vector(Promega社製)へ挿入後、DNA配列解析により、GenBankアクセッション番号AF450241のコーディングリージョンと同一の塩基配列を有するクローンを選定した。
【0395】
選定したクローンを鋳型としたPCRにより、pEF6/Myc−HisCベクター(インビトロジェン社製)のNotI部位に挿入した(mTim−3/pEF6 Myc_HisC)。PCRのプライマーには、mTim−3 Fw4NotI(配列番号72)およびmTim−3 Re4NotI(配列番号73)を用いた。
【0396】
[実施例21]
(hTim−3/pEF6 Myc_HisCの構築)
実施例1で作製したhTIM−3/pMCs−IG plasmid DNAとpEF6 Myc_HisCをそれぞれNotIで消化し、ヒトTIM−3発現pEF6 Myc_HisC ベクターを構築した(hTim−3/pEF6 Myc_HisC)。DNA配列解析を行い、GenBankアクセッション番号NM_032782のコーディングリージョンと同一の塩基配列を有することを確認した。
【0397】
[実施例22]
(抗ヒトTIM−3抗体のマウスTIM−3抗体への交差性評価)
実施例20および実施例21で作製したmTim−3/pEF6 Myc_HisC、hTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNA、および、コントロールの空ベクターを実施例4と同様にHEK293F細胞にそれぞれトランスフェクションした。2日後、実施例15と同様にAlexa−647標識した抗ヒトTIM−3抗体(512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体)、APC標識市販抗ヒトTIM−3抗体(344823抗体およびF38−2E2抗体)およびPE標識市販抗マウスTIM−3抗体(RMT3−23抗体、バイオレジェンド社製)のヒトTIM−3およびマウスTIM−3に対する結合性をフローサイトメトリーで評価した。
【0398】
その結果、512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体、344823抗体およびF38−2E2抗体はヒトTIM−3発現293F細胞にのみ結合した。一方、RMT3−23抗体はマウスTIM−3発現293F細胞にのみ結合した。このことから、512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体、344823抗体およびF38−2E2抗体はマウスTIM−3には交差反応しないことが分かった。
【0399】
[実施例23]
(IgVドメインをマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質発現系の構築)
hTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型としてhTIM3+mIgV_vecR1プライマー(配列番号74)および、hTIM3+mIgV_vecF1プライマー(配列番号75)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。mTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型としてhTIM3+mIgV_insF1プライマー(配列番号76)および、hTIM3+mIgV_insR1プライマー(配列番号77)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0400】
得られた2つのPCR産物をGENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(IgV chimeraTIM−3/pEF6 Myc_HisC、配列番号78)。
【0401】
[実施例24]
(MucinドメインをマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質発現系の構築)
hTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型としてhTIM3+mMucin_vecR2プライマー(配列番号80)および、hTIM3+mMucin_vecF2プライマー(配列番号81)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。mTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型としてhTIM3+mMucin_insF2プライマー(配列番号82)および、hTIM3+mMucin_insR2プライマー(配列番号83)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0402】
得られた2つのPCR産物をGENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(Mucin chimeraTIM−3/pEF6 Myc_HisC、配列番号84)。
【0403】
[実施例25]
(IgVドメインをマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質およびMucinドメインをマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質への抗TIM−3抗体の結合性評価)
実施例23および24で作製したIgV chimeraTIM−3/pEF6 Myc_HisC、Mucin chimeraTIM−3/pEF6 Myc_HisC、hTim−3/pEF6 Myc_HisC、mTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNA、および、コントロールの空ベクターを実施例4と同様にHEK293F細胞にトランスフェクションした。2日後、実施例22と同様に抗TIM−3抗体の結合性をフローサイトメトリーで評価した。
【0404】
その結果、512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体、4177抗体、344823抗体およびF38−2E2抗体は、ヒトTIM−3発現細胞とMucin chimeraTIM−3発現細胞のみに結合した。一方、RMT3−23抗体はマウスTIM−3発現細胞とIgV chimeraTIM−3発現細胞のみに結合した。
【0405】
このことから、テストした全ての抗ヒトTIM−3抗体(512抗体、644抗体、4545抗体、8213抗体、4177抗体、344823抗体、F38−2E2抗体)およびマウスTIM−3抗体(RMT3−23抗体)はIgVドメインを認識することが示された。
【0406】
[実施例26]
(TIM−3 chimera 22−47/pEF6 Myc_HisCの構築)
ヒトTIM−3(配列番号53)の22から47番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質を発現させるための発現ベクター(以下、TIM−3 chimera 22−47、と記す)を構築した。方法は、実施例21で作製したhTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型に、hTIM3chimera22−47F1プライマー(配列番号86)および、hTIM3chimera22−47R1プライマー(配列番号87)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0407】
得られたPCR産物を鋳型に、hTIM3chimera22−47F2プライマー(配列番号88)および、hTIM3chimera22−47R2プライマー(配列番号89)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0408】
得られたPCR産物を鋳型に、hTIM3chimera22−47F3プライマー(配列番号90)および、hTIM3chimera22−47R3プライマー(配列番号91)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0409】
3度目のPCRで得られたPCR産物をDpnI(New England Biolabs社製)で消化後、アガロース電気泳動した。DNAを抽出し、GENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(TIM−3 chimera 22−47/pEF6 Myc_HisC、配列番号92)。
【0410】
[実施例27]
(TIM−3 chimera 57−66/pEF6 Myc_HisCの構築)
ヒトTIM−3(配列番号53)の57から66番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質を発現させるための発現ベクター(以下、TIM−3 chimera 57−66、と記す)を構築した。方法は、実施例21で作製したhTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型に、T4 Polynucleotide Kinase(New England Biolabs社製)を用いてリン酸化したhTIM3chimera57−66Fプライマー(配列番号94)および、hTIM3chimera57−66Rプライマー(配列番号95)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0411】
得られたPCR産物をDpnI(New England Biolabs社製)で消化後、アガロース電気泳動した。DNAを抽出し、LigaFast
TM Rapid DNA Ligation System(プロメガ社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(TIM−3 chimera 57−66/pEF6 Myc_HisC、配列番号96)。
【0412】
[実施例28]
(TIM−3 chimera 67−105/pEF6 Myc_HisCの構築)
ヒトTIM−3(配列番号53)の67から105番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質を発現させるための発現ベクター(以下、TIM−3 chimera 67−105、と記す)を構築した。hTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型としてhTIM3chimera67−105Fプライマー(配列番号98)および、hTIM3chimera67−105Rプライマー(配列番号99)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0413】
mTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型としてmTIM3chimera67−105Fプライマー(配列番号100)および、mTIM3chimera67−105Rプライマー(配列番号101)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。得られた2つのPCR産物をGENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(TIM−3 chimera 67−105/pEF6 Myc_HisC、配列番号102)。
【0414】
[実施例29]
(TIM−3 chimera 74−81/pEF6 Myc_HisCの構築)
ヒトTIM−3(配列番号53)の74から81番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質を発現させるための発現ベクター(以下、TIM−3 chimera 74−81、と記す)を構築した。方法は、実施例21で作製したhTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型に、hTIM3chimera74−81Fプライマー(配列番号104)および、hTIM3chimera74−81Rプライマー(配列番号105)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0415】
得られたPCR産物をDpnI(New England Biolabs社製)で消化後、アガロース電気泳動した。DNAを抽出し、GENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(TIM−3 chimera 74−81/pEF6 Myc_HisC、配列番号106)。
【0416】
[実施例30]
(TIM−3 chimera 88−96/pEF6 Myc_HisCの構築)
ヒトTIM−3(配列番号53)の88から96番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質を発現させるための発現ベクター(以下、TIM−3 chimera 88−96、と記す)を構築した。方法は、実施例21で作製したhTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型に、hTIM3chimera88−96Fプライマー(配列番号108)および、hTIM3chimera88−96Rプライマー(配列番号109)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0417】
得られたPCR産物をDpnI(New England Biolabs社製)で消化後、アガロース電気泳動した。DNAを抽出し、GENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(TIM−3 chimera 88−96/pEF6 Myc_HisC、配列番号110)。
【0418】
[実施例31]
(TIM−3 chimera 96−105/pEF6 Myc_HisCの構築)
ヒトTIM−3(配列番号53)の96から105番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質を発現させるための発現ベクター(以下、TIM−3 chimera 96−105、と記す)を構築した。方法は、実施例21で作製したhTim−3/pEF6 Myc_HisC plasmid DNAを鋳型に、hTIM3chimera96−105Fプライマー(配列番号112)および、hTIM3chimera96−105Rプライマー(配列番号113)を用い、PrimeSTAR GXL DNA Polymerase(タカラバイオ社製)を用いたPCRで増幅した。
【0419】
得られたPCR産物をDpnI(New England Biolabs社製)で消化後、アガロース電気泳動した。DNAを抽出し、GENEART seamless cloning and assembly kit(インビトロジェン社製)を用い、結合させた。形質転換体から得られたクローンの配列を解析し、目的の配列であることを確認した(TIM−3 chimera 96−105/pEF6 Myc_HisC、配列番号114)。
【0420】
[実施例32]
(IgVドメインの一部をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質への抗TIM−3抗体の結合性評価)
実施例26から31で作製した各種TIM−3キメラ蛋白質の発現ベクター、および、コントロールの空ベクターを実施例4と同様にHEK293F細胞にそれぞれトランスフェクションした。導入された発現ベクターおよび当該ベクターにより発現するTIM−3キメラ蛋白質は次の通りである。
(1)TIM−3 chimera 22−47:ヒトTIM−3(配列番号53)の22から47番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質
(2)TIM−3 chimera 57−66:ヒトTIM−3(配列番号53)の57から66番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質
(3)TIM−3 chimera 67−105:ヒトTIM−3(配列番号53)の67から105番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質
(4)TIM−3 chimera 74−81:ヒトTIM−3(配列番号53)の74から81番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質
(5)TIM−3 chimera 88−96:ヒトTIM−3(配列番号53)の88から96番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質
(6)TIM−3 chimera 96−105:ヒトTIM−3(配列番号53)の96から105番目に相当するアミノ酸をマウスTIM−3に置換したTIM−3キメラ蛋白質
トランスフェクションした2日後、実施例22と同様に抗TIM−3抗体の結合性をフローサイトメトリーで評価した。
【0421】
その結果を表2に示す。表2において、トランスフェクションした細胞への抗体の結合が認められた場合を「+」、トランスフェクションした細胞への抗体の結合が減弱しながらも認められた場合を「+/−」、トランスフェクションした細胞への抗体の結合が認められなかった場合を「−」で表した。
【0422】
【表2】
【0423】
表2に示すように、4545抗体および8213抗体は、TIM−3 chimera 22−47、TIM−3 chimera 57−66、TIM−3 chimera 88−96、TIM−3 chimera 96−105をトランスフェクションした細胞に結合した。一方、TIM−3 chimera 67−105をトランスフェクションした細胞に結合しなかった。
【0424】
512抗体は、TIM−3 chimera 57−66、TIM−3 chimera 88−96、TIM−3 chimera 96−105、TIM−3 chimera 67−105、および、TIM−3 chimera 74−81をトランスフェクションした細胞に結合した。一方、TIM−3 chimera 22−47をトランスフェクションした細胞に結合しなかった。
【0425】
644抗体、344823抗体、および、F38−2E2抗体は、TIM−3 chimera 22−47、TIM−3 chimera 88−96、TIM−3 chimera 96−105、TIM−3 chimera 67−105、および、TIM−3 chimera 74−81をトランスフェクションした細胞に結合した。一方、TIM−3 chimera 57−66をトランスフェクションした細胞に結合しなかった。
4177抗体は、TIM−3 chimera 88−96、TIM−3 chimera 96−105、および、TIM−3 chimera 74−81をトランスフェクションした細胞に結合した。また、TIM−3 chimera 22−47、TIM−3 chimera 57−66、TIM−3 chimera 67−105をトランスフェクションした細胞に弱く結合した。
【0426】
以上の結果と、実施例16および実施例19の結果から、4545抗体および8213抗体は、ヒトTIM−3の67から87番目のアミノ酸に結合することが示された。さらに、TIM−3 chimera 74−81をトランスフェクションした細胞に結合しなかったことから、4545抗体および8213抗体のヒトTIM−3への結合に必要なアミノ酸が74番目から81番目のアミノ酸に含まれていることが示唆された。
【0427】
また、512抗体は、ヒトTIM−3の47番目までのアミノ酸に結合すること、644抗体、344823抗体、および、F38−2E2抗体は、ヒトTIM−3の57から66番目のアミノ酸に結合することが示唆された。
【0428】
さらに、4177抗体は、4545抗体または8213抗体は結合する一方、512抗体、644抗体、344823抗体、および、F38−2E2抗体は結合しない、ヒトTIM−3の67から87番目のアミノ酸に含まれるアミノ酸のうち、74から81番目を除くアミノ酸にも結合することが示唆された。
【0429】
[実施例33]
(抗ヒトTIM−3 8213抗体ヒト化抗体の作製)
(1)8213抗体ヒト化抗体のVHおよびVLのアミノ酸配列の設計
8213抗体ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。8213抗体VHのCDR1〜3のアミノ酸配列(配列番号21〜23)の移植に適したヒト抗体のVHのFRのアミノ酸配列を以下のようにして選択した。
【0430】
カバットらは、既知の様々なヒト抗体のVHをそのアミノ酸配列の相同性からサブグループ(HSG I〜III)に分類し、それらのサブグループ毎に共通配列を報告している[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]。そこで、ヒト抗体のVHのサブグループI〜IIIの共通配列のFRのアミノ酸配列と8213抗体VHのFRのアミノ酸配列との相同性検索を実施した。
【0431】
相同性を検索した結果、HSGI、HSGII、およびHSGIIIの相同性はそれぞれ77.0%、55.2%、58.6%であった。従って、8213抗体VHのFRのアミノ酸配列はサブグループIと最も高い相同性を有していた。
【0432】
以上の結果から、ヒト抗体のVHのサブグループIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、8213抗体VHのCDRのアミノ酸配列(配列番号21〜23)を移植した。このようにして、配列番号67で表される抗ヒトTIM−3 8213抗体ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列8213抗体HV0を設計した。
【0433】
次に、8213抗体ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列を以下のようにして設計した。8213抗体VLのCDR1〜3のアミノ酸配列(配列番号24〜26)を移植に適したヒト抗体のVLのFRのアミノ酸配列を、以下のようにして選択した。
【0434】
カバットらは、既知の様々なヒト抗体のVLをそのアミノ酸配列の相同性からサブグループ(HSG I〜IV)に分類し、それらのサブグループ毎に共通配列を報告している[Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Dept.Health and Human Services(1991)]。そこで、ヒト抗体のVLのサブグループI〜IVの共通配列のFRのアミノ酸配列と8213抗体VLのFRのアミノ酸配列との相同性検索を実施した。
【0435】
相同性を検索した結果、HSGI、HSGII、HSGIII、およびHSGIVの相同性はそれぞれ76.3%、61.3%、61.3%、68.8%であった。従って、8213抗体VLのFRのアミノ酸配列はサブグループIと最も高い相同性を有していた。
【0436】
以上の結果から、ヒト抗体のVLのサブグループIの共通配列のFRのアミノ酸配列の適切な位置に、8213抗体VLのCDRのアミノ酸配列(配列番号24〜26)を移植した。このようにして、配列番号69で表される抗ヒトTIM−3 8213抗体ヒト化抗体のVLのアミノ酸配列8213抗体LV0を設計した。
【0437】
上記で設計した8213抗体ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列8213抗体HV0、およびVLのアミノ酸配列8213抗体LV0は、選択したヒト抗体のFRのアミノ酸配列に、マウスモノクローナル抗体である8213抗体のCDRのアミノ酸配列のみを移植した配列である。
【0438】
しかし、一般に、ヒト化抗体を作製する場合には、単にヒト抗体のFRへマウス抗体のCDRのアミノ酸配列を移植するのみでは、結合活性が低下してしまうことが多い。このような結合活性の低下を回避するため、CDRのアミノ酸配列の移植とともに、ヒト抗体とマウス抗体で異なっているFRのアミノ酸残基のうち、結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基を改変することが行われている。そこで、本実施例においても、結合活性に影響を与えると考えられるFRのアミノ酸残基を以下のようにして同定し、改変することとした。
【0439】
まず、上記で設計した8213抗体ヒト化抗体のVHのアミノ酸配列8213抗体HV0、およびVLのアミノ酸配列8213抗体LV0より成る抗体V領域(以下、HV0LV0と表す)の三次元構造をコンピューターモデリングの手法を用いて構築した。三次元構造座標作製および三次元構造の表示には、Discovery Studio(アクセルリス社)を用いた。また、8213抗体のV領域の三次元構造のコンピューターモデルも同様にして構築した。
【0440】
更に、HV0LV0のVHおよびVLのFRのアミノ酸配列の中で、8213抗体と異なっているアミノ酸残基を選択し、8213抗体のアミノ酸残基へ改変したアミノ酸配列を作製し、同様に三次元構造モデルを構築した。これら作製した8213抗体、HV0LV0および改変体の各V領域の三次元構造を比較し、抗体の結合活性に影響を与えると予測されるアミノ酸残基を同定した。
【0441】
その結果、HV0LV0のFRのアミノ酸残基の中で抗原結合部位の三次元構造を変化させ、抗体の結合活性に影響を与えると考えられるアミノ酸残基として、
8213抗体HV0では、12番目のLys、20番目のVal、38番目のArg、40番目のAla、48番目のMet、67番目のArg、68番目のVal、70番目のIle、72番目のAla、74番目のThr、98番目のArg、および113番目のValを、8213抗体LV0では、11番目のLeu、13番目のAla、15番目のVal、36番目のTyr、43番目のAla、44番目のPro、46番目のLeu、71番目のPhe、および85番目のThrを、それぞれ選択した。
【0442】
これらの選択したアミノ酸残基のうち、少なくとも1つ以上のアミノ酸配列を8213抗体の同じ部位に存在するアミノ酸残基へ改変し、様々な改変を有するヒト化抗体のVHおよびVLを設計した。
【0443】
具体的には、VHについては、配列番号67のアミノ酸配列の12番目のLysをValに、20番目のValをLeuに、38番目のArgをLysに、40番目のAlaをArgに、48番目のMetをIleに、67番目のArgをLysに、68番目のValをAlaに、70番目のIleをLeuに、72番目のAlaをValに、74番目のThrをLysに、98番目のArgをGlyに、または113番目のValをLeuに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
【0444】
また、VLについては、配列番号69のアミノ酸配列の11番目のLeuをMetに、13番目のAlaをValに、15番目のValをLeuに、36番目のTyrをLeuに、43番目のAlaをSerに、44番目のProをPheに、46番目のLeuをGlyに、71番目のPheをTyrに、および85番目のThrをAspに置換するアミノ酸改変のうち、少なくとも1つの改変を導入した。
【0445】
HV0LV0のFRに存在する、少なくとも1つのアミノ酸残基を改変した8213抗体ヒト化抗体の抗体V領域として、HV0LV0、HV0LV2、HV0LV4、HV0LV5、HV0LV6、HV0LV7、HV0LV9、HV3LV0、HV3LV2、HV3LV4、HV3LV5、HV3LV6、HV3LV7、HV3LV9、HV4LV0、HV4LV2、HV4LV4、HV4LV5、HV4LV6、HV4LV7、HV4LV9、HV5LV0、HV5LV2、HV5LV4、HV5LV5、HV5LV6、HV5LV7、HV5LV9、HV6LV0、HV6LV2、HV6LV4、HV6LV5、HV6LV6、HV6LV7、HV6LV9、HV7LV0、HV7LV2、HV7LV4、HV7LV5、HV7LV6、HV7LV7、HV7LV9、HV8LV0、HV8LV2、HV8LV4、HV8LV5、HV8LV6、HV8LV7、HV8LV9、HV10LV0、HV10LV2、HV10LV4、HV10LV5、HV10LV6、HV10LV7、HV10LV9、HV12LV0、HV12LV2、HV12LV4、HV12LV5、HV12LV6、HV12LV7、およびHV12LV9をそれぞれ設計した。
【0446】
H鎖可変領域HV3、HV4,HV5,HV6、HV7、HV8,HV10、HV12、およびL鎖可変領域LV2、LV4、LV5、LV6、LV7、LV9のアミノ酸配列をそれぞれ
図1および2に示した。
【0447】
(2)8213抗体ヒト化抗体の作製
8213抗体ヒト化抗体の可変領域のアミノ酸配列をコードするDNAは、8213抗体VHおよび8213抗体VLのアミノ酸配列をコードするDNA(配列番号27、29)で用いられているコドンを利用して設計し、アミノ酸改変を行う場合には、哺乳動物細胞で高頻度で使用されるコドンを用いて設計し、各々作製した。
【0448】
これらDNA配列を用いて、抗体発現ベクターの構築およびヒト化抗体の発現を行った。
【0449】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2010年6月11日付で出願された米国仮出願(61/353836)に基づいており、その全体が引用により援用される。