特許第6158533号(P6158533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158533
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】災害報知システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/10 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   G08B25/10 B
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-36755(P2013-36755)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-164640(P2014-164640A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】591235452
【氏名又は名称】日田アンテナ工事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】財津 要吉
【審査官】 山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−041112(JP,A)
【文献】 特開2004−282288(JP,A)
【文献】 特開2013−038567(JP,A)
【文献】 特開2007−020129(JP,A)
【文献】 特開2006−005550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 23/00−31/00
H04B 7/14− 7/26
H04M 3/00
3/16− 3/20
3/38− 3/58
7/00− 7/16
11/00−11/10
H04W 4/00− 8/24
8/26−16/32
24/00−28/00
28/02−72/02
72/04−74/02
74/04−74/06
74/08−84/10
84/12−88/06
88/08−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定地域における災害の発生を報知する災害報知システムであって、
単数又は複数の特定人に所持されて、音声を送信可能な通信機と、
前記通信機から送信される音声を受信可能であって、前記音声を所定範囲に放送可能な単数又は複数の放送機器と、を備え、
前記特定人は、屋内および戸外の少なくとも一方において、災害の発生を発見する場合に、移動しながら前記通信機を通じて前記災害の情報を音声で送信し、
前記放送機器は、受信した前記災害の情報を、音声により所定範囲に放送し、
前記特定人は、所定地域の情報に詳しいと共に所定地域を移動する責任を有する者であり、
前記通信機は、前記特定人に所持されることで、前記特定人の移動により移動可能であり、
前記放送機器は、前記通信機から送信される音声に、一定の加工を施して放送することが可能であり、
前記一定の加工は、聞き取りにくい表現の変更、方言の標準語への置き換え、もしくは音声信号への時刻あるいは発生場所の住所の追加である、災害報知システム。
【請求項2】
前記特定人は、戸外を移動中においても、前記通信機を所持している場合には、災害の発生を発見する場合に、前記通信機を通じて、前記災害の情報を音声で送信する、請求項1記載の災害報知システム。
【請求項3】
前記特定人は、屋内にいる場合においても、前記通信機を所持している場合には、災害の発生を発見する場合に、前記通信機を通じて、前記災害の情報を音声で送信する、請求項1記載の災害報知システム。
【請求項4】
前記放送機器は、電柱、信号機、建造物の屋上および専用支柱の少なくとも一つに設置される、請求項1からのいずれか記載の災害報知システム。
【請求項5】
前記放送機器は、前記通信機と対となって送受信可能な規格を有し、
前記通信機からの音声送信を受けて、前記放送機器の電源がONとなる、請求項1からのいずれか記載の災害報知システム。
【請求項6】
前記所定地域は、複数の前記放送機器を備え、
前記複数の放送機器のそれぞれは、単一の前記通信機からの送信音声を受けて、電源がONとなって、前記音声を放送する、請求項1からのいずれか記載の災害報知システム。
【請求項7】
前記通信機から送信される前記音声を受信し、前記所定範囲と異なる別範囲に設置される単数又は複数の放送機器に、前記音声を中継する中継機器を更に備え、
前記別範囲に設置される単数又は複数の前記放送機器は、前記別範囲に対して、中継された前記音声を放送する、請求項1からのいずれか記載の災害報知システム。
【請求項8】
前記放送機器は、前記通信機からの音声送信を受けて、前記放送機器の電源がONとなるまでの遅延時間に対応して放送するための前記音声を記憶するメモリを更に備える、請求項5記載の災害報知システム。
【請求項9】
前記放送機器は、通信機能のみの電源を常時ONとしておき、放送機能のみの電源を、前記通信機器からの音声通信を受けて、ONとする、請求項5記載の災害報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大雨、局地的水害、火災、地震、津波、土砂崩れなど、局地的かつ地域的に生じうる種々の災害を、地域において迅速かつ確実に報知することで、災害発生による被害の未然防止や被害拡大防止を図る、災害報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国は、複雑な地形と気象条件を有しており、狭い地域において局地的な災害が発生しやすい特徴を有している。例えば、非常に複雑な活断層を有していることで、局地的な地震が発生することがある。局地的な地震によって、局地的な地割れや地すべりなどの災害が生じることがある。また、沿岸部の特定の地域に津波が押し寄せることもある。
【0003】
また、複雑な山岳地形を有していることで、局地的な集中豪雨が発生することもある。局地的な集中豪雨は、河川の氾濫や土砂崩れ、あるいは土石流などを発生させることもある。特に、近年の地球温暖化現象をおそらくの原因として、いわゆるゲリラ豪雨と呼ばれる局地的な集中豪雨も、各地で頻繁に発生している。
【0004】
また、自然災害だけとは限らないが、ある地域で火災が発生することもある。人為的な火災や山火事のような自然による火災などの発生は、やはり局地的に発生する。
【0005】
また、局地的に発生するこれらの災害は、必ずしも都市部など人口が多く、各種のインフラが整備されている地域で起こるとは限らない。地方や田舎など、人口が少なかったり、各種インフラの整備が遅れていたりする地域で起こることも多い。人口が少ない地域で、このような局地的な災害が発生する場合には、人口が少ないことにより、災害の発生に気付かれないことがある。また、各種インフラの整備が遅れていることで、災害の発生に気付きにくいとの側面もある。当然ながら、人口が少なく、各種インフラ整備が遅れていることで、災害の発生に気付いたとしても、当該地域住人や当該地域にいる人々に、災害の発生を報知することが難しい問題を有している。
【0006】
もちろん、都市部などの人口の多い地域で発生する局地的な災害であっても、災害の種類や発生場所によっては、災害の発生に気付くのが遅れたり、災害の報知が遅れたりすることも生じうる。
【0007】
このように、局地的な災害の発生に気付くのが遅れたり、災害の報知ができなかったり遅れたりすることは、災害による被害を生じさせたり、被害の拡大を生じさせたりすることに繋がる。例えば、集中豪雨や火災などの発生に気付くのが遅れたり、報知が遅れたりすれば、当該発生地域の住人やたまたまそこにいる人々が、災害に巻き込まれて、負傷したり死亡したりすることもありえる。
【0008】
我が国の特徴は、(1)地形や気象条件の複雑性による、このような局地的な災害の発生、(2)都市部にのみ人口が集中しているだけでなく、様々な中規模、小規模な町や集落が、多くの地域に点在する、との点がある。この2つの特徴が相まって、局地的な災害の発生と、局地的な災害に基づく被害の発生が、問題となっている。
【0009】
このような災害発生が生じた場合に、各家庭をネットワークで結びつけて報知連絡を迅速に行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、災害の発生が認識された後で、報知対象者に適切に災害を報知する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−134636公報
【特許文献2】特開2010−152509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、近隣情報報知システム100を構成する複数の住宅に設置された緊急情報管理装置1は、災害の発生を検知すると無線通信手段12の有効通信範囲内にある他のユーザ宅にこの災害についての情報を送信する。かかる情報を受信したユーザ宅の緊急情報管理装置1は、自己の無線通信手段12の有効通信範囲内にある他のユーザ宅にこの情報を送信する、緊急情報を他の住宅に送信するシステムを開示する。
【0012】
特許文献1の技術は、各住宅に設置された緊急情報管理装置が、災害の発生を検知すると、無線通信を用いて、連鎖的に他の住宅に当該災害の発生を伝達していく。この結果、災害の発生した地域の住宅のそれぞれは、災害の発生を認識することができる。
【0013】
しかしながら、特許文献1の技術は、次の問題を有している。
【0014】
(問題1)災害の発生を検出する仕組みが不足している。災害発生を、災害監視を行う行政施設が行う場合には、行政施設の目に届かない範囲での災害発生を認識することが極めて困難である。あるいは、災害発生の認識までの時間が掛かってしまう問題がある。
【0015】
(問題2)また、行政施設が、災害監視および災害発生の認識を行ってから、最初の報知を行う集中処理方式がとられている地域が多い。この場合には、災害の認識が遅れることも否めず(行政施設から目の届かない局地的な場所での災害発生の場合や、行政機関の稼働時間外などの場合)、報知が遅れてしまう問題がある。
【0016】
(問題3)あるいは、災害発生を自動の装置で検出する場合には、災害の種類ごとに異なる自動検出装置を設置する必要がある。加えて、上述のように、近年では非常に局地的なゲリラ豪雨の発生など、災害発生が非常に局地的であることも多い。この場合には、自動検出装置の設置数が非常に多く必要となり、災害の種類ごとに異なる自動検出装置と相まって、災害発生の検出装置の整備コストが高くなり、行政等の予算で賄えない問題もある。
【0017】
(問題4)また、特許文献1の技術は、住宅に設置されている通信装置で、連鎖的に次の住宅に災害発生を通知することしかできない。このため、例えば家人が不在の住宅へ放置されても無駄であったり、災害への対応ができなかったりする問題もある。また、土砂崩れや集中豪雨などは、住宅の外で被害を生じさせることが多く、住宅や建物の外にいる人々に通知する必要がある。しかし、特許文献1の技術ではこれが出来ない。
【0018】
(問題5)問題4に関連して、各住宅で、通信装置を備える必要があるが、問題3と同様に、各住宅にこれらの通信装置を設置するコストの負担者を決定する問題があり、行政が負担する場合には、行政の予算で賄えない問題もある。
【0019】
特許文献2は、緊急災害速報を受信するとともに、受信した緊急災害速報に含まれる情報、及び/又は、受信した緊急災害速報に基づいて算出した情報を、報知対象者に報知する緊急災害速報報知装置1であり、報知内容と直接関係しない一般的な設問について、装置運用者に回答を要求する設問回答要求手段と、装置運用者の回答に基づいて、報知内容を自動的に選択設定する報知内容自動選択設定手段と、を備える緊急災害情報報知装置を開示する。
【0020】
特許文献2は、受信した緊急災害速報を基準に、必要な災害情報を報知するシステムを開示している。すなわち、最初に緊急災害速報を得ることを前提としている。しかしながら、広い地域での地震や津波、あるいは広範囲にわたる集中豪雨や集中降雪などの場合には、行政機関や行政からの委託機関が、この災害の発生を最初に認識することは可能である。しかし、地方で人口や行政機関等のインフラの密度の低い場所においての、局地的な集中豪雨や火災などの局地的災害を、行政機関や行政からの委託機関が最初に認識することは非常に困難である。もちろん、これは都市部においても、局地的災害であれば同様である。
【0021】
すなわち、特許文献2も、特許文献1と同様に、(問題1)〜(問題5)を有している。
【0022】
以上のように従来技術の災害報知システム等は、問題1〜問題5を有していた。簡潔に整理すれば、<目的1>局地的な災害発生を、リアルタイムかつ常時把握できるようになること、<目的2>リアルタイムかつ常時把握できた災害発生を、余分な専用装置の追加を最小限に抑えてコストを抑えた状態で、住宅、建物等の内部の人々や、外出中の人々(当該地域の住人以外で、たまたま当該地域に滞在や通過する人も含めて)に、効果的に報知すること、の2つを解決する災害報知システムが求められていた。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の災害報知システムは、所定地域における災害の発生を報知する災害報知システムであって、
単数又は複数の特定人に所持されて、音声を送信可能な通信機と、
通信機から送信される音声を受信可能であって、音声を所定範囲に放送可能な単数又は複数の放送機器と、を備え、
特定人は、屋内および戸外の少なくとも一方において、災害の発生を発見する場合に、移動しながら通信機を通じて前記災害の情報を音声で送信し、
放送機器は、受信した災害の情報を、音声により所定範囲に放送し、
特定人は、所定地域の情報に詳しいと共に所定地域を移動する責任を有する者であり、
通信機は、特定人に所持されることで、特定人の移動により移動可能であり、
放送機器は、通信機から送信される音声に、一定の加工を施して放送することが可能であり、
一定の加工は、聞き取りにくい表現の変更、方言の標準語への置き換え、もしくは音声信号への時刻あるいは発生場所の住所の追加である
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、本発明の災害報知システムは、所定地域における災害の発生を報知する災害報知システムであって、単数又は複数の所有者に所持されて、音声を送信可能な通信機と、通信機からの送信を受信可能であって、音声を所定範囲に放送可能な単数又は複数の放送機器と、を備え、所有者は、屋内および戸外の少なくとも一方において、災害の発生を発見する場合に、通信機を通じて災害の情報を音声で送信し、放送機器は、受信した災害の情報を、音声により所定範囲に放送する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の災害報知システムは、ある地域で所定の通信機を有している特定人が、局地的に発生した災害を見つけるだけで、災害の認識を行って第一報を通知できる。この特定人は、行政機関や委託機関に在室していなくても、戸外にいても、自宅にいても、勤務先にいても、どのような場所においても、災害の認識を行うことができると共に第一報を通知できる。
【0026】
このため、行政機関や委託機関から目につきにくい様々な地域で生じる局地災害を、リアルタイムかついち早く発見でき、以降の地域への報知にすぐにつなげることができる。このため、局地災害の検出に必要となる、検出装置、検出人材に掛かるコストを低減でき、地域の住人が主体的に地域で生じる局地災害を、常時かつリアルタイムに発見して報知できる。
【0027】
また、発見した特定人が通信機で災害の状況を発信するだけで、地域に設置されている放送装置から、リアルタイムで局地災害の発生や状況が放送される。この結果、発見から報知までの時間が極めて短縮されるので、地域における局地災害による被害を最小限に食い止めることができる。また、特定人は、屋内や戸外など、局地災害の発生現場に近い場所で、局地災害を発見した上で、通信機により発信する。つまり、局地災害の発生により近い場所の放送装置から放送されることになる。結果として、局地災害の被害を最も受ける可能性のある地域や地域住人への被害を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態1における災害報知システムの模式図である。
図2】本発明の実施の形態1における災害報知システムの処理手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施の形態2における災害報知システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の第1の発明に係る災害報知システムは、所定地域における災害の発生を報知する災害報知システムであって、単数又は複数の所有者に所持されて、音声を送信可能な通信機と、通信機からの送信を受信可能であって、音声を所定範囲に放送可能な単数又は複数の放送機器と、を備え、所有者は、屋内および戸外の少なくとも一方において、災害の発生を発見する場合に、通信機を通じて災害の情報を音声で送信し、放送機器は、受信した災害の情報を、音声により所定範囲に放送する。
【0030】
この構成により、災害報知システムは、屋内や戸外を問わず、通信機を所持した所有者によって、局地災害の発見を早期かつ高い確率で行える。従来と異なり、固定された場所での監視機関や自動での装置などによる精度劣化もなく、高い確率でかつ地域に根ざして災害を発見できる。
【0031】
本発明の第2の発明に係る災害報知システムでは、第1の発明に加えて、所有者は、戸外を移動中においても、通信機を所持している場合には、災害の発生を発見する場合に、通信機を通じて、災害の情報を音声で送信する。
【0032】
この構成により、戸外にいる所有者が、災害をいち早く発見できる。特に災害は、戸外で発生することがほとんどであるので、戸外にいる所有者によって災害が発見されてすぐに通信機を通じた報知ができることは、災害のいち早い報知に好適である。
【0033】
本発明の第3の発明に係る災害報知システムでは、第1の発明に加えて、所有者は、屋内にいる場合においても、通信機を所持している場合には、災害の発生を発見する場合に、通信機を通じて、災害の情報を音声で送信する。
【0034】
この構成により、屋内にいる所有者が、自らの目で発見したり、種々の情報収集手段によって収集した情報に基づいたりした災害を、いち早く報知できる。
【0035】
本発明の第4の発明に係る災害報知システムでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、所有者は、所定地域内で、通信機を所持することを定められた特定人である。
【0036】
この構成により、災害を発見して報知する所有者を、信頼ある人物に依頼することができる。
【0037】
本発明の第5の発明に係る災害報知システムでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、放送機器は、所有者が、通信機を通じて送信した音声を、そのまま放送する。
【0038】
この構成により、発見から放送までのリアルタイム性が確保される。加えて、音声をそのまま放送することで、災害を発見した際の危険性が伝わりやすくなり、住人等の避難が早期に行われるようになる。
【0039】
本発明の第6の発明に係る災害報知システムでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、放送機器は、電柱、信号機、建造物の屋上および専用支柱の少なくとも一つに設置される。
【0040】
この構成により、既存のインフラの活用が可能となり、災害報知システムの設置コストが低減できる。また、許可等の必要性も減少する。
【0041】
本発明の第7の発明に係る災害報知システムでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、放送機器は、通信機と対となって送受信可能な規格を有し、通信機からの音声送信を受けて、放送機器の電源がONとなる。
【0042】
この構成により、放送機器の消費電力を低減したり、バッテリー上がりを防止できたりする。
【0043】
本発明の第8の発明に係る災害報知システムでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、所定地域は、複数の放送機器を備え、複数の放送機器のそれぞれは、単一の通信機からの送信音声を受けて、電源がONとなって、音声を放送する。
【0044】
この構成により、放送機器の消費電力を低減したり、バッテリー上がりを防止できたりする。
【0045】
本発明の第9の発明に係る災害報知システムでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、通信機から送信される音声を受信し、所定範囲と異なる別範囲に設置される単数又は複数の放送機器に、音声を中継する中継機器を更に備え、別範囲に設置される単数又は複数の放送機器は、別範囲に対して、中継された音声を放送する。
【0046】
この構成により、放送できる範囲を拡大できる。
【0047】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0048】
(実施の形態1)
【0049】
実施の形態1について説明する。
【0050】
(全体概要)
まず、実施の形態1における災害報知システムの全体概要を説明する。図1は、本発明の実施の形態1における災害報知システムの模式図である。図1は、ある地域で設置・運用される一例としての災害報知システム1を示している。災害報知システム1は、例えば、ある市町村などにおいて、一定の集落が集中している地域に設置される。もちろん、市町村の面積が小さければ、市町村のいずれかの単位を一つの地域として災害報知システム1が設置されてもよい。
【0051】
しかしながら、市町村全体を一つの地域として、一つの災害報知システム1でカバーしようとする場合には、市町村が広い場合には、対応が難しくなる場合もある。このため、市町村の単位にこだわることなく、一定の集落が集中している地域を、一つのカバー単位として、災害報知システム1が設置されれば良い。
【0052】
災害報知システム1は、所定地域における災害の発生を報知する。災害報知システム1は、通信機3と、放送機器5とを、備える。通信機3は、所定地域における単数又は複数の所有者3に所持される。所有者3は、屋内にいても戸外にいてもどちらでもよい。当該所定地域で定められた所有者が、災害報知システム1に対応する通信機3を所持していればよい。
【0053】
例えば、所定地域で選任された担当者や、町内会長、町内委員などの人物が、通信機3の所有者として定められ、通信機3を所持すればよい。通信機3は、音声を受けて、通信電波に乗せて、無線送信することができる。すなわち、通信機3は、携帯電話機、トランシーバー、携帯端末などのように、音声通信(音声送信)を行うことができる機能を有している。
【0054】
所有者2は、屋内および戸外の少なくとも一方にいる間に、災害10の発生を発見することがある。災害10の例として、ゲリラ豪雨のような局地的な集中豪雨、河川の氾濫、竜巻、突風や強風、火災、土砂崩れ、地すべり、交通事故などがある。所有者2は、仕事や生活のために自宅や勤務先などの屋外にいることもある。あるいは、私用であったり仕事であったりで、戸外にいることもある。
【0055】
このように屋内にいたり戸外にいたりするときに、偶然に、災害10の発生を発見することがある。自ら発見することもあれば、他人に教えられることで、災害10の発生を認知することもある。所有者2は、この災害10の発生を発見したり認知したりできれば、通信機3に災害10の発生を話す。すなわち、音声で通信機3に災害10の発生を入力する。
【0056】
通信機3は、所有者2が話す音声を、送信電波に乗せて送信可能である。すなわち、通信機3は、所有者2が話した音声を、送信信号として送信できる。送信先は、通信機3と通信可能な範囲に設置されている単数又は複数の放送機器5である。図1では、放送機器5Aと放送機器5Bとの2つの放送機器5が、設置されている。放送機器5Aは、所定範囲6Aへの放送に対応している。放送機器5Bは、所定範囲6Bへの放送に対応している。
【0057】
通信機3より送信された音声信号は、放送機器5Aおよび放送機器5Bに到達する。放送機器5Aおよび放送機器5Bのそれぞれは、送信された音声信号を、受信した災害情報として音声により所定範囲6A,6Bのそれぞれに放送する。所定範囲6Aには、単数又は複数の建造物7Aが存在し、当然、建造物7Aの内部にいる人物あるいは外部にいる人物が存在する。放送機器5Aは、これら建造物7A内部の人物あるいは外部の人物に、災害情報を放送して報知できる。
【0058】
一方、放送機器5Bは、所定範囲6Bに、災害情報を音声で放送して、災害10の発生や状況を報知できる。このとき、所定範囲6Aの場合と同じく、所定範囲6Bには、建造物7Bが存在している。放送機器5Bは、この建造物7Bの内部もしくは外部にいる人物等に、災害情報を、音声で報知できる。
【0059】
放送機器5A,5Bは、通信機3から送信された音声信号に呼応して、放送を行う。すなわち、通信機3からの送信に対してほぼリアルタイムに、所定範囲6A、6Bに災害情報を放送できる。また、放送機器5A,5Bは、通信機3からの音声信号をそのままの音声(言葉の変換等はほとんどない)で放送できる。つまり、通信機3と放送機器5A,5Bとは、携帯端末やトランシーバー同士で会話しているのと同様の状況になる。この結果、災害10を発見した所有者2が、通信機3に話しかける内容が、リアルタイムに、放送機器5Aから所定範囲6Aに放送され、放送機器5Bから所定範囲6Bに放送される。
【0060】
所定範囲6Aおよび所定範囲6Bのそれぞれにいる人物等は、災害10の発生を知ることができると共に、その危険性を把握できる。例えば、自分がいる住居や職場が、災害10の被害を受ける可能性があると考える場合には、当該場所から避難することができる。あるいは、たまたま災害10の発生場所の近隣にいる(歩いていたり、車で移動していたりする場合)には、当該場所を避けて移動を行うなどの対応ができる。
【0061】
災害10は、狭い地域でかつ短時間にめまぐるしく変化することも多く、避難や回避などの早期の対応が必要となる。所定地域内を移動していたり、所定地域内にいたりする所有者2が、災害10を発見するとすぐに通信機3を通じて、放送機器5A,5Bに音声送信することで、所定範囲6A,6B内の人々の危険回避が可能となる。
【0062】
なお、放送機器5A、5Bは、通信機3からの音声をそのまま放送してもよいし、一定の加工を施してから放送しても良い。例えば、聞き取りにくい表現を変更したり、方言を標準語に置き換えたりするなどである。あるいは、所有者2が通信機3を通じて送信した音声信号に、時刻や詳細な発生場所の住所を、放送機器5A、5Bが自動で追加して、包装することも好適である。このような加工によって、所定範囲6A、6Bにいる人々への注意喚起が、より的確になるからである。
【0063】
(実施の形態1の災害報知システムのメリット)
(発見の高さと、発見速度の速さ)
所有者2は、屋内および戸外の少なくとも一方にいる際に、自らあるいは伝聞であっても主体的に災害10を発見できる。しかも、災害10は、地域の狭い地域にて発生することが多いが、所有者2は、災害10の近隣にいる場合に、この災害10を発見する。すなわち、災害10の発見率は高まり、発見した所有者2が、即座に所持している通信機3を用いて、発見した災害10の発生を、放送機器5に送信できる。
【0064】
従来技術の災害報知システムは、行政機関や委託機関等に設置されている選任の監視機関によって、災害を発見して、所定の手続を踏まえてから災害放送を行っていた。このため、発見が遅れたり、発見がなされなかったりする問題もあった。あるいは、選任の監視機関は、地域の様々な場所を常にパトロールしているわけではないし、パトロールしているとしても局地災害と遭遇するとは限らない。こういった面でも、従来技術の災害報知システムでは、局地災害の発見が遅れたり、なされなかったりする。
【0065】
加えて、従来技術の災害報知システムでは、行政機関や委託機関に設置されている監視機関(すなわち、選任された監視員)のみが、災害の発生を発見して、報知する権限を有している。このため、一般の住人から災害発生の一報を受けた場合でも、それを確認し、所定の手順を踏んだ後でなければ、災害放送を行えない問題もあった。この結果、局地災害が発生している地域の住人、そこにたまたまいる人物、あるいは通過ないし近接している人物等に、被害が発生したり、被害が拡大したりする問題もあった。
【0066】
これに対して、実施の形態1の災害報知システム1は、上述の通り、通信機3を所有する所有者3であれば、誰でも災害10を発見したところで、放送機器5A,5Bに音声送信できる。このため、特定人だけに留まらずに災害10を発見する人数が増加して、当然に発見率や災害10の発生から発見までの時間が短くなる。
【0067】
また、監視機関は、特定の場所に待機している監視員もしくはパトロール中の監視員のみで、災害10の発生を発見させる必要がある。このため、当然ながら、発見率が下がる。これに対して、所有者2は、屋内や戸外など、ランダムに様々な場所に存在する。加えて、選任されれば誰でも所有者2となって、通信機3を所持している。この結果、常に様々な場所に、通信機3を所持する所有者2が存在する状態となる。当然に、災害10の発見率が向上し、発生から発見までの時間も短くなる。
【0068】
特に、通信機3は、トランシーバーや携帯電話機などの小型の端末であるので、所有者3は、外出先でも所持するのは容易である。このため、行政による監視機関などのような固定された場所での監視と異なり、所有者3は、様々な場所に出かけることができる(もちろん、災害発見のためでなく、自らの用事などのために)。外出先であることのほうが、当然災害10を発見しやすい。このように、所有者2は、自分の所用で外出した先で、偶然災害10を発見できることも多くなり、この点でも発見率が向上する。もちろん、災害発生から発見までの時間も短くなる。所有者3の数が多くなればなるほど、効果は高まる。
【0069】
(リアルタイムの報知)
また、災害10を発見した所有者2は、手元に所持している通信機3を用いて、災害10の発見の事実や、災害10の状況を音声で、即座に送信できる。送信された音声信号は、放送機器5A,5Bに到達すると、放送機器5A,5Bが、そのまま(信号処理や仕様に応じて生じる遅延はありえる)放送を行う。
【0070】
すなわち、所有者2は、災害10を発見すれば即座に、報知を行うことができる。従来技術であれば、例えば、監視員が局地災害を発見しても、所定の手順を踏んだり、所定の機器の操作を行ったりしてから、初めて報知につなげることができていた。あるいは、一般の住人などから災害発見の連絡を受けても、監視機関は、自らその災害の発生を確認してから、報知の処理手順に入ることをおおなっていた。
【0071】
つまり、従来技術では、発見が遅れるだけでなく、発見から報知までの時間も非常に長くなることが多かった。
【0072】
これに対して、上述の通り、実施の形態1における災害報知システム1は、発見したらそのまま所持している通信機3を通じて音声送信すればよいので、発見から報知までの時間もほぼリアルタイムである。もちろん、発見した所有者2から通信機3への音声送信がリアルタイムであることと、通信機3が放送機器5A,5Bに直接的に通信可能であることとが相まって、所有者2が送信した音声が、リアルタイムに、所定範囲6A,6Bに放送される。
【0073】
これらの手順の組み合わせによって、災害10の発見から報知までの時間が非常に短縮される。言い換えれば、災害10が発見されていながら、報知が遅れて被害が拡大することが防止される。
【0074】
(移動しながらの音声送信によるメリット)
また、所有者2は、所持している通信機3(モバイル可能である)を通じて、発見した災害10の情報を、放送機器5A,5Bに送信できる。このため、所有者2は、歩きながら、走りながらあるいは車等で移動しながら、災害情報を送信することができる。
【0075】
災害10は、その災害の種類によっては、現場近くに居続ける事は危険であることが多い。所有者2が、災害10を発見できるということは、災害10の発生場所の付近にいる状態である。
【0076】
例えば、災害10が河川の氾濫や集中豪雨であれば、その範囲は次第に広がる可能性がある。災害10が火災である場合も、その範囲は次第に広がる可能性がある。このように、範囲が次第に広がる災害10を発見した所有者2が、発見の事実や災害情報を、固定された場所(いわゆる放送設備を有する放送室など。監視機関などは、このように固定された放送設備を有する放送室などである)からしか、送信できないとする。この場合には、当然に災害の広がりに従って、発見した所有者2への危険性が高まる問題が生じる。
【0077】
例えば、2011年に起きた東日本大震災では、放送室から津波の警告を放送し続けた担当者が、津波に巻き込まれるという悲劇もあった。
【0078】
これに対して、実施の形態1における災害報知システム1は、移動可能に所持している通信機3に話をするだけで、放送機器5に音声が送信できる。すなわち、災害10を発見した所有者2は、災害から避難しながら、災害情報を送信し続けることができる。
【0079】
この点では、従来技術と異なり、所有者2は災害情報を送信し続けながら、自らが災害の被害を受けることを防止できる。こうなれば、当然に、発見した所有者2は、災害情報を送信するモチベーションが高まり、様々な地域で発生する災害10を、所有者2は、より高い確率で送信して報知することができる。
【0080】
なお、所有者2は、戸外を移動中において、災害10を発見した場合に、その災害情報を、通信機3を通じて放送機器5に送信できる。あるいは、屋内にいる場合においても、災害10を発見した場合に、その災害情報を、通信機3を通じて放送機器5に送信できる。
【0081】
いずれの場合でも、所有者2は、災害の被害から逃げながら、通信機3を通じて災害情報を送信することができる。
【0082】
なお、屋内にいる所有者2は、自ら発見した災害10の情報を、通信機3を通じて送信することもできるし、他人から得た情報に基づいた災害10の情報を、通信機3を通じて送信することもできる。
【0083】
次に、各部の詳細について説明する。
【0084】
(通信機)
通信機3は、所有者2が所持して、音声を電波に乗せて送信することを可能とする機器である。所有者2が、移動しながら所持できることが好ましく、モバイル可能なトランシーバー、携帯電話機、携帯端末、携帯専用端末など、汎用の機器が使われてもよいし、専用の機器が用いられてもよい。
【0085】
通信機3は、放送機器5と対となって送受信可能な規格を有することが好ましい。放送機器5は、スピーカーなどを通じて所定範囲6に放送を行うだけでなく、通信機3から送信された音声信号を受信して、音声に変換する必要があるからである。
【0086】
通信機3は、所有者2に所持されてできるだけ長い時間活用される必要があるので、バッテリーによって動作することが好ましい。
【0087】
所有者2は、通信機3を所持することで、災害10を発見した場合に、放送機器5へ送信して、所定範囲6の人々に報知できる。このため、所有者2は、所定地域で定められた特定人であることが好ましい。余りに無作為かつ無制限に所有者2が選任されると、いたずらや信用度の低下などの問題が生じるからである。
【0088】
一方、所有者2が制限されて少なすぎると、災害10の発見率が下がる問題もある。このため、所定地域においては、町内会長、町世話人、教員等の責任を有する者、地域商店主など、責任および信用度が高く、所定地域の情報に詳しいと共に所定地域を移動することの多い者が、所有者2として選任されることが適当である。
【0089】
(放送機器)
放送機器5は、上述の通り、通信機3と対になる送受信可能な規格を有しており、更に、受信した通信機3からの音声送信を受けて、音声を所定範囲6に放送する。このため、放送機器5は、通信機能と音声放送機能とを有していることが好ましい。簡便に構成されるには、通信機3と同じ規格を有する通信装置と、通信装置の送話部分に繋がって音声を拡散放送できるスピーカーと、を備えることが適当である。
【0090】
放送機器5は、受信した音声信号を、そのままの音声で放送すればよい。こうすることで、所有者2が、災害10を発見した場合に送信した音声を、リアルタイムに放送できる。所有者2が通信機3に話す内容が、最も災害10の危険性を表すことができるので、そのまま放送することが、注意喚起としては好ましい。
【0091】
もちろん、上述した通り、方言、聞き取りにくい言葉などがある場合には、放送機器5が、自動修正して放送することも適当である。加えて、所有者2が通信機3を通じて送信した災害10の発生場所について、放送機器5が、自動で場所を説明しなおすことを行っても良い。例えば、放送機器5が放送対象とする所定範囲6に対して、災害10の発生場所がどの程度離れているか、などの情報を、放送機器5は、自動付加して放送しても良い。
【0092】
また、図1の一部に示される写真部分は、放送機器5A,5Bの実際の設計例を示している。放送機器5A、5Bのそれぞれは、電柱、信号機、建造物の屋上および専用支柱の少なくとも一つに設置される。図1の写真では、電柱に、放送機器5A、5Bが設置されている。
【0093】
このように、既に整備されているインフラに、放送機器5が設置されることで、放送機器の設置コストが低減できる。また、電柱、信号機、建造物の屋上および専用支柱の少なくとも一つに設置されることで、高い位置からの放送が可能となり、所定範囲6における放送の効果が高まることになる。
【0094】
また、場合によっては、既にスピーカーが設置されているインフラがある場合には、このスピーカーに通信機3に対応する通信装置を設置するだけで、通信機3からの音声信号を放送できる放送機器5が完成する。このように、既存のインフラを効率よく活用することで、実施の形態1の災害報知システム1の設置コストを、低減できることが可能となる。
【0095】
また、放送機器5は、通信機3からの音声信号を受けて、放送機器5の電源がONとなる仕様を有することも好適である。放送機器5は、当然ながら災害10の発生時に放送する機能を発揮できればよい。このため、常時電源がONであることは、放送機器5の消費電力の観点から好ましくない。また、放送機器5がバッテリーにより動作する場合には、実際に放送を必要とするときに、バッテリーが電力供給不足となっている可能性もある。
【0096】
このような環境問題や不測の事態に対応するために、放送機器5は、通信機3からの音声送信を受けて、電源がONとなる仕様を有していることも適当である。
これは、図1のように、所定地域において複数の放送機器5A、5Bが備わっている場合にも、単一の通信機3からの音声送信を受けて、複数の放送機器5A、5Bのそれぞれの電源がONとなる仕様であることも好ましい。
【0097】
このように、電源がONとなってから、通信機3からの音声送信を、放送機器5は、所定範囲6に放送する。このとき、電源ONとなる遅延を考慮して、放送機器5は、遅延に応じた放送やこのために必要なメモリを保持していることも適当である。
【0098】
(処理手順)
次に、図2を用いて処理手順を説明する。
【0099】
図2は、本発明の実施の形態1における災害報知システムの処理手順を示すフローチャートである。図1に示されるような所定地域において設置された災害報知システム1の動作手順を、図2のフローチャートは示している。
【0100】
まず、ステップST1にて、所有者2が通信機3を所持する。通信機3を所持する所有者2は、自己の所用に応じて所定地域の戸外を移動したり、屋内にいたりする。あるいは、所有者2が、災害10などの発見を目的として、所定地域を移動したりする。
【0101】
次に、ステップST2にて所有者2は、災害10を発見する。災害10は、集中豪雨や土砂崩れなどの様々な災害である。所有者2は、自分の視認により災害10を発見することもあるし、他人からの伝聞等によって、災害10を発見することもある。
【0102】
発見すると、ステップST3にて、所有者2は、災害10の情報を、通信機3に送話する。通信機3は、トランシーバーや携帯端末などであるので、送話することで、音声信号を送信できる機能を有している。次いで、通信機3の通信機能によって、ステップST4にて、通信機3は、通信範囲にある放送機器5に、音声を送信する。音声送信においては、通信機3の有する規格に従った送信が行われれば良い。
【0103】
次いで、ステップST5にて、通信機3からの音声信号を受信した放送機器5は、電源をONにする。通常は電源をOFFにしておき、音声信号の受信によって初めて電源がONになることで、放送機器5の消費電力の削減や、バッテリー切れの防止ができる。
【0104】
電源がONになると、ステップST6にて、放送機器5が受信した音声信号を、放送機器5が備えるスピーカーに出力する。放送機器5は、通信機3からの音声信号を受信する通信機能(通信手段)と、音声を放送するスピーカーなどの音声放送機能(放送手段)とを、有している。電源がONになることで、このスピーカーなどの音声放送機能が機能するようになる。この点で、放送機器5は、通信機能だけが常時電源をONにしておき、放送機能のみが、音声信号の受信時のみに、電源をONとする仕様となっていることでもよい。
【0105】
次に、ステップST7にて、放送機器5は、受信した災害情報を音声として、所定範囲に放送する。この放送される所定範囲は、放送機器5の放送能力によって定まり、地域の実情に合わせて定められれば良い。
【0106】
最後に、ステップST8にて、放送機器5の放送を、所定範囲の人々が聞くことができる。災害情報を聞いた人々は、災害からの被害が、自分に及ばないように工夫するなどを行ったり、更に他人に伝達するなどの行為を行ったりして、災害の被害拡大防止に努める。
【0107】
以上のように、地域で生じうる災害10を、行政機関や委託機関などの大掛かりな仕組みを借りることなく、少ない費用とインフラで、地域住民が自ら早期に周知して、被害の未然防止を図ることができる。また、行政機関や委託機関と異なり、小回りのよい災害10の発見と、発見にリアルタイムに対応した報知とが相まって、実施の形態1における災害報知システム1は、地域における様々な災害10による被害防止を実現できる。
【0108】
(実施の形態2)
【0109】
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、中継機器を備えて、放送可能とする範囲を広げる災害報知システムを開示する。
【0110】
図3は、本発明の実施の形態2における災害報知システムの模式図である。実施の形態2における災害報知システム11は、中継機器8を備える。この中継機器8は、所有者2が通信機3で送信した災害情報を、より広範囲にわたって放送する役割を担う。
【0111】
放送機器5Aおよび放送機器5Bは、所有者2が所持している通信機3からの音声送信を受信できる範囲に設けられている。このため、放送機器5Aおよび放送機器5Bのそれぞれは、通信機3からの音声送信を直接受信できる。直接受信した音声信号を、放送機器5Aは所定範囲6Aに音声として放送する。同様に、直接受信した音声信号を、放送機器5Bは、所定範囲6Bに音声として放送する。
【0112】
このとき、通信機3から送信された災害情報を、音声として放送する手順や仕組みは、実施の形態1で説明した通りである。
【0113】
一方、災害10であっても、その被害は広範囲におよぶ可能性もある。例えばゲリラ豪雨の場合でも、その位置が刻々と変わってしまい、ある地域から別の地域に、ゲリラ豪雨が移動することもある。もちろん、河川の氾濫や森林火災も同様である。
【0114】
所有者2が移動しながら所持できる通信機3は、小型であって、移動しながらの所持が容易であるメリットや、放送免許や通信免許が不要であるメリットを有している。しかしながら、このような通信機3は、電波出力が小さく、設置されている放送機器5に、送信信号を到達させる距離に限界を有している。
【0115】
しかしながら、ある災害10が、所定範囲6Aおよび所定範囲6Bに対応する範囲だけでなく、所定範囲6C〜6Eにも影響が及ぶ可能性もある。このような場合に、所有者2が所持する通信機3からの音声送信のみでは、全ての所定範囲6A〜6Eに、災害を報知する放送を行うことは無理である。
【0116】
中継機器8は、このような問題を解消できる。中継機器8は、通信機3から受信した音声信号を、一定の距離以上離れた放送機器5Cなどに、増幅などを行って送信できる。いわゆる再送信である。あるいは、中継機器8は、ある放送機器5から他の放送機器5に音声信号を中継して送信しても良い。いずれにしても、中継機器8は、通信機3からの音声信号を、より広い範囲の放送機器5に拡げることができる。
【0117】
図3においては、所定範囲6Cに設けられる放送機器5C、所定範囲6Dに設けられる放送機器5D、所定範囲6Eに設けられる放送機器5Eのそれぞれが、中継機器8による中継信号に基づいて、放送を行う。放送の手順は、実施の形態1で説明した通りである。
【0118】
このように、通信機3の送信出力だけではカバーできなかった、所定範囲6C〜6Eに対しても、災害情報を放送して報知することができる。結果として、広い範囲の人々に、災害による注意を喚起できる。
【0119】
もちろん、中継機器8が複数設置されたり、中継機器8が送受信可能に連結されたりすることで、一つの通信機3から放送できる範囲が更に広がる。
【0120】
以上のように、実施の形態2における災害報知システム11は、より広範囲に、災害の発生とその情報を早期かつリアルタイムに報知できる。当然、実施の形態と同じく、地域住民の自らの発見作業がそのまま報知されるので、地域での災害を、地域で被害防止する仕組みが構築される。結果として、様々な側面に基づいて、災害の未然防止が図られるようになる。
【0121】
また、通信機3や放送機器5は、既存の廉価な部材を利用することができ、インフラ整備のコストも廉価で済ませることもできる。この結果、行政の補助や予算措置を待つことなく、地域の防災を地域の取り組みで進めることができる。
【0122】
以上、実施の形態1〜2で説明された災害報知システムは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0123】
1 災害報知システム
2 所有者
3 通信機
5 放送機器
6 所定範囲
8 中継機器
11 災害報知システム
図1
図2
図3