(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、耐火構造の一実施形態について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1に示すように、耐火構造は、建築物の床スラブ71を貫通して配置される鋳鉄製の耐火性継手管61に、耐火性管体11が連結された構成を有する。すなわち、耐火構造は、建築物の区画部としての床スラブ71と、この床スラブ71を貫通して配置される耐火性継手管61と、耐火性管体11とを備えている。本実施形態の耐火構造の有する配管は、建築物の排水システムを構成する。
【0013】
<耐火性継手管>
耐火性継手管61は、床スラブ71に形成された貫通孔72に挿入される。床スラブ71は、コンクリート製であり、耐火性継手管61と貫通孔72の内壁との間がモルタル73で埋められることで、床スラブ71に耐火性継手管61が固定される。耐火性継手管61は、上下のみに流路を有するものであってもよいし、床スラブ71の上方で横方向に沿った流路を構成する枝管部を有していてもよい。
【0014】
<耐火性管体>
耐火性管体11は、難燃性を有する樹脂製の管本体12を有している。管本体12は、第1樹脂製継手管13と、この第1樹脂製継手管13に連結される第2樹脂製継手管14とを有している。
【0015】
第1樹脂製継手管13は、耐火性継手管61が連結される第1連結部15を有している。第1連結部15は、耐火性継手管61の端部が挿入される被挿入部15aと、この被挿入部15aの内周に沿って配置されるゴム製のシール部材15bとを有している。被挿入部15aに耐火性継手管61の端部が挿入されることで、第1連結部15の内壁と耐火性継手管61の外周面とがシール部材15bによってシールされる。
【0016】
第1樹脂製継手管13の第1連結部15と反対側の端部は、第2樹脂製継手管14に挿入され、接着剤で接合されている。
第2樹脂製継手管14は、難燃性を有する樹脂製の立て管62が連結される第2連結部16を有している。第2連結部16には、立て管62の端部が挿入され、接着剤で接合される。
【0017】
管本体12及び立て管62を構成する樹脂としては、例えば、硬質の塩化ビニル樹脂が挙げられる。
<被覆材>
管本体12の外周には、被覆材21が設けられている。被覆材21は、耐火性を有する無機繊維層22と非通気層23とを備えている。無機繊維層22は、通気性を有しており、第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bから構成されている。非通気層23は、第1無機繊維層22aと第2無機繊維層22bとの間に配置されている。このように被覆材21は、第1無機繊維層22a、非通気層23、及び第2無機繊維層22bが順に積層された積層構造を有している。
【0018】
第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bを構成する無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、金属繊維、鉱物繊維、アルミナ繊維、及びカーボン繊維が挙げられる。第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bは、織布又は不織布から構成される。第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bの耐熱温度は、好ましくは700℃以上であり、より好ましくは800℃以上であり、さらに好ましくは900℃以上である。第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bの密度は、30〜250kg/m
3の範囲であることが好ましい。第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bの厚みは、2〜15mmの範囲であることが好ましい。
【0019】
非通気層23は、高分子材料からなる基材と無機充填材とを含有する材料から形成されている。高分子材料としては、例えば、合成樹脂、エラストマー、及びゴムから選ばれる少なくとも一種が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びスチレン系樹脂が挙げられる。エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、及びウレタン系エラストマーが挙げられる。ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、及びブチルゴムが挙げられる。高分子材料の中でも、可撓性が付与されることで、管本体12の外周に沿った形状に変形することが容易であることから、エラストマー及びゴムから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0020】
無機充填材としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化チタン、バライト、鉄粉、酸化亜鉛、及びグラファイトが挙げられる。無機充填剤の含有量は、高分子材料100質量部に対して、50〜85質量部の範囲であることが好ましい。
【0021】
非通気層23には、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、粘着剤等の添加剤を含有させることもできる。非通気層23の厚みは、0.5〜5mmの範囲であることが好ましい。
次に、被覆材21の配置の詳細について説明する。
【0022】
上記の管本体12において、第1連結部15と第2連結部16との間には、第1樹脂製継手管13の周壁と第2樹脂製継手管14の周壁とが重なる厚肉部12aが形成されている。被覆材21の有する積層構造は、厚肉部12aから第2連結部16の端部にわたる位置に設けられている。被覆材21の有する積層構造は、少なくとも厚肉部12aと重なる位置に設けられることが好ましく、少なくとも第2樹脂製継手管14の長さ方向の全体にわたって設けられることがより好ましい。
【0023】
なお、本実施形態の第2無機繊維層22bは、第1連結部15と重なる位置に設けられている。非通気層23についても、第2無機繊維層22bと同様に第1連結部15と重なる位置に設けられている。
【0024】
<支持具>
耐火構造は、被覆材21を床スラブ71に支持する金属製の支持具51を備えている。支持具51は、被覆材21を保持する保持部52と、この保持部52を床スラブ71に支持させる支持部53とを備えている。金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼が挙げられる。
【0025】
保持部52は、筒状の本体部52aと、被覆材21の一端面に沿って延設される第1壁部52bと、被覆材21の他端面に沿って延設される第2壁部52cとを有する。第1壁部52b及び第2壁部52cは、それぞれ無機繊維層22の上端面及び下端面を覆う形状を有している。このように保持部52は、被覆材21を覆う形状を有している。
【0026】
保持部52は、被覆材21の径方向から装着可能となっている。こうした保持部52は、例えば、軸方向に延在する開閉部を有するとともに、その開閉部に対向した位置に回動部が設けられる。開閉部は、係合及び離脱可能に構成され、保持部52は開閉部の係合により装着される。
【0027】
支持具51は、支持部53の一端を床スラブ71に固定した後に、支持部53の少なくとも一部、又は保持部52と支持部53とが、例えばボルト及びナット等の連結具で連結されることで装着される。
【0028】
<作用>
次に、耐火構造の作用について説明する。
耐火構造は、被覆材21を床スラブ71に支持する支持具51を備えるため、管本体12に対する被覆材21の位置ずれ、すなわち耐火性継手管61に対する被覆材21の位置ずれを長期にわたって抑制することが可能である。また、耐火性管体11は、無機繊維層22を有するため、管本体12の外周への熱伝導が抑制される。すなわち、被覆材21が管本体12の外周に設けられることで、火災の際に管本体12の軟化や熱分解が進行し難くなり、管本体12を構成する難燃性の樹脂が被覆材21の内側に残留し易くなる。
【0029】
図2に示すように、耐火構造が加熱されると、管本体12が熱変形するとともに管本体12の一部が熱分解し、被覆材21の内側に残留物17が形成される。この残留物17により、被覆材21内側の径方向全体又は径方向の一部が閉塞される。
【0030】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)耐火構造は、耐火性継手管61に、耐火性管体11が連結された構成を有している。耐火性管体11は、管本体12と被覆材21とを有している。被覆材21は、耐火性を有する無機繊維層22を備えている。さらに、耐火構造は、被覆材21を床スラブ71に支持する支持具51を備えている。
【0031】
この構成によれば、被覆材21が管本体12の外周に設けられることで、火災の際に管本体12の軟化や熱分解が進行し難くなり、管本体12を構成する難燃性の樹脂が被覆材21の内側に残留し易くなる。このように残留した樹脂(残留物17)は、被覆材21内側の径方向全体又は径方向の一部を閉塞する。このとき、耐火性継手管61に対する被覆材21の位置ずれが支持具51によって抑制されていることで、耐火性継手管61の開口の近傍で残留物17が形成され易くなる。これにより、鋳鉄製の耐火性継手管61が貫通して配置される区画貫通部の耐火性を高めることが容易となる。
【0032】
(2)支持具51は、被覆材21の外周面全体及び無機繊維層22の端面全体を覆う形状を有している。この構成によれば、被覆材21の外周面に熱風が直接当たることが回避されるとともに、通気性を有する無機繊維層22の端面からの熱風の侵入が抑制される。これにより、火災の際に管本体12の軟化や熱分解が進行し難くなり、管本体12を構成する難燃性の樹脂が被覆材21の内側に残留し易くなる。
【0033】
(3)非通気層23は、第1無機繊維層22aと第2無機繊維層22bとの間に配置されている。この構成によれば、無機繊維層22の内部の断熱作用が高まることで、火災の際に管本体12の軟化や熱分解が進行し難くなり、管本体12を構成する難燃性の樹脂が被覆材21の内側に残留し易くなる。
【0034】
(4)非通気層23は、高分子材料からなる基材と無機充填剤とを含有する材料から形成されることで、高分子材料の軟化時又は溶融時の粘性が高まる。これにより、非通気層23は、第1無機繊維層22aと第2無機繊維層22bとの間に留まり易くなるため、被覆材21の形状が維持され易くなる。
【0035】
(5)難燃性を有する樹脂の一種である塩化ビニル樹脂が加熱されると、分子中の塩素原子及び水素原子が塩化水素ガスとして脱離する。この塩化水素ガスは塩化ビニル樹脂を体積膨張させる。このため、管本体12は塩化ビニル樹脂から構成されることで、残留物17の体積が増加し易くなる。従って、被覆材21の内側における閉塞を促進させることが可能である。
【0036】
(6)管本体12は、第1樹脂製継手管13と、第1樹脂製継手管13に連結される第2樹脂製継手管14とを有している。この場合、厚肉部12aを形成することが容易となる。このため、被覆材21の内側の残留物の体積を容易に増加させることができる。従って、被覆材21の内側における閉塞を促進させることが可能である。
【0037】
(変更例)
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・前記支持具51は、第1壁部52b及び第2壁部52cを有しているが、第1壁部52b及び第2壁部52cの少なくとも一方は省略されてもよい。
【0038】
・前記本体部52aは、被覆材21の外周面全体を覆う形状を有しているが、被覆材21の外周面を部分的に覆う形状に変更されてもよい。例えば、本体部52aは、不連続な環状に形成されていてもよい。
【0039】
・前記保持部52は、被覆材21に挿入される突起を有していてもよい。この場合、保持部52と被覆材21との位置ずれが長期にわたって抑制され易くなる。
・前記保持部52の外周面の少なくとも一部に、例えば、振動を抑制する制振層を設けてもよい。
【0040】
・前記支持具51は、被覆材21を床スラブ71に支持させているが、被覆材21を耐火性継手管61に支持させるように変更されてもよい。
・前記非通気層23は、省略されてもよい。また、非通気層23が省略されるとともに第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bのいずれか一方が省略されることで、単層の無機繊維層を備えた被覆材に変更されてもよい。
【0041】
・前記第1無機繊維層22a及び第2無機繊維層22bのいずれか一方は、省略されてもよい。すなわち、前記被覆材21は、例えば、無機繊維層とその外周に配置される非通気層とを備えた被覆材に変更されてもよい。このように配置された非通気層によって、無機繊維層と支持具51との間の断熱作用を高めることが可能である。従って、火災の際に管本体12の軟化や熱分解が進行し難くなり、管本体12を構成する難燃性の樹脂が被覆材21の内側に残留し易くなる。
【0042】
・前記非通気層23には、無機繊維が含有されていてもよい。
・前記第1無機繊維層22a、第2無機繊維層22b、及び非通気層23の少なくとも一つの層は、複数の層から構成されていてもよい。
【0043】
・前記第2無機繊維層22bの外周に非通気層23をさらに設けてもよい。
・前記第2無機繊維層22bは、第1連結部15の外周を被覆しているが、厚肉部12aのみが被覆される構成に変更されてもよい。非通気層23についても、第2無機繊維層22bと同様に第1連結部15の外周を被覆しているが、厚肉部12aのみが被覆される構成に変更されてもよい。
【0044】
・前記第1無機繊維層22aによっても第1連結部15が被覆されるように、被覆材21を変更されてもよい。
・前記管本体12は、第1樹脂製継手管13と、第2樹脂製継手管14とを有しているが、第1連結部15と第2連結部16とを有する一体型の樹脂製継手管に変更されてもよい。なお、残留物17による閉塞の度合いは、例えば、第1無機繊維層22a又は第2無機繊維層22bの厚みをより厚く設定することで高めることが可能である。また、管本体12の厚みを厚くするほど、残留物17が多くなる傾向にあるため、管本体12の厚みの設定によっても残留物17による閉塞の度合いを高めることができる。前記実施形態の管本体12は、残留物17による閉塞に有効な厚肉部12aを容易に形成できるという観点から有利である。
【0045】
・前記管本体12は、難燃性を有する樹脂以外の材料が含まれていてもよい。例えば、管本体12は、樹脂と熱膨張性の材料とを含む構成に変更することで、加熱による膨張を促進することができる。
【0046】
・前記管本体12は、例えば、難燃性を有するオレフィン系樹脂により形成されてもよい。
・前記第1連結部15は、耐火性管体11が挿入される被挿入部15aを有しているが、耐火性管体11に挿入される挿入部に変更されてもよい。この場合、例えば、特許文献1に開示されるように、耐火性継手管61にフランジを形成し、このフランジ、パッキン、締結具等を用いて、耐火性継手管61に耐火性管体11を固定することができる。
【0047】
・前記第1樹脂製継手管13と第2樹脂製継手管14との連結構造、及び第2連結部16と立て管62との連結構造についても、挿入及び被挿入の関係は前記実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0048】
・床スラブ71は、コンクリート製に限らず、石板等で形成されていてもよい。
・前記耐火構造は、区画部として、水平方向に沿って区画する床スラブ71に適用されているが、例えば、区画部として、垂直方向に沿って区画する耐火性を有する壁材に適用されてもよい。この場合、第2連結部16には、立て管62の代わりに、難燃性を有する樹脂製の横管が連結される。
【0049】
・第2連結部16に連結される管体は、難燃性を有する樹脂製の管体に限らず、鋳鉄製の管体や鋼製の管体に変更されてもよい。
・前記耐火性管体11及び耐火構造は、排水システムに適用されているが、通気システムに適用されてもよい。
【0050】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記耐火構造において、前記管本体は、前記耐火性継手管に連結される第1樹脂製継手管と、前記第1樹脂製継手管に連結される第2樹脂製継手管とを備える耐火構造。
【0051】
(ロ)前記耐火構造において、前記被覆材は、前記無機繊維層の外周側に配置される非通気層をさらに備える耐火構造。
(ハ)前記耐火構造において、前記被覆材は、非通気層をさらに備え、前記無機繊維層は、第1無機繊維層と第2無機繊維層とを含み、前記非通気層は、前記第1無機繊維層と前記第2無機繊維層との間に配置されている耐火構造。
【実施例】
【0052】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を具体的に説明する。
(実施例1)
図1に示される耐火性管体を製造した。管本体は、塩化ビニル樹脂製であり、第1無機繊維層及び第2無機繊維層としては、シリカ繊維の不織布を用いた。この不織布の厚みは約5mmであり、密度は約125kg/m
3であり、耐熱温度は約1000℃である。非通気層としては、オレフィン系樹脂からなる基材と、無機充填剤としての硫酸バリウムとを含有するシートを用いた。このシートの厚みは、約1.5mmである。この耐火性管体を用いて試験用の耐火構造を形成した。
【0053】
図3に示すように、耐火性及び断熱性を有する容器91の開口にコンクリート製の試験用床スラブ92を設けた。試験用床スラブ92の貫通孔93に耐火性継手管61を配置し、貫通孔93とその上方にモルタル94を打設した。そして、所定長さの立て管62が連結された耐火性管体11を耐火性継手管61に連結し、さらに支持具51を装着した。
【0054】
(比較例1)
比較例1では、被覆材及び支持具を省略した以外は、実施例1と同様に試験用の耐火構造を形成した。
【0055】
(耐火性の試験)
実施例1の耐火構造について耐火性の試験を行った。この試験では、バーナ95を用いて容器91内を加熱した。そして、温度測定箇所96の温度において、開始温度が約20℃であり、終了温度が約1000℃になるようにバーナの火力を調整し、開始から60分後に耐火性の試験を終了した。
【0056】
比較例1についても、実施例1と同様に耐火性の試験を行った。
続いて、各例の試験後に、耐火性継手管61の上方から流路の写真を撮影した。その写真を用いて、耐火性継手管61下端の開口面積に対して閉塞されている部分の面積を百分率で算出し、これを閉塞率とした。実施例1の閉塞率は90%以上であるのに対して、比較例1の閉塞率は0%であった。