(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158707
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】フィルム状電池製造のためのスラリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20170626BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20170626BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20170626BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20170626BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20170626BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20170626BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20170626BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20170626BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20170626BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M10/052
H01M10/0566
H01M10/058
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-535558(P2013-535558)
(86)(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公表番号】特表2013-545234(P2013-545234A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】IB2011054738
(87)【国際公開番号】WO2012056389
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年6月21日
【審判番号】不服2015-13875(P2015-13875/J1)
【審判請求日】2015年7月23日
(31)【優先権主張番号】20101514
(32)【優先日】2010年10月28日
(33)【優先権主張国】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】399038295
【氏名又は名称】エレクトロヴァヤ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ハウグスター,ビョーン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン,トム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァロン,ラーシュ,オーレ
(72)【発明者】
【氏名】スリヴァスタヴァ,アクヒレシュ,クマール
【合議体】
【審判長】
池渕 立
【審判官】
土屋 知久
【審判官】
小川 進
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−353570(JP,A)
【文献】
特開平11−250892(JP,A)
【文献】
特開2010−157512(JP,A)
【文献】
特開2010−064022(JP,A)
【文献】
特開2000−150320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/139
H01M4/62
H01M4/505,525,58,587
H01M10/0565,0566
H01M10/052,058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)負極活物質である活物質(A)をバインダー(B)と混合し(1)、混合物を得る工程、及び
b)スラリーを生成するために炭酸エチレン(C)を前記混合物に加える(1)
工程を備え、
前記工程(b)は前記炭酸エチレン(C)の融点以上の温度で行われ、ここで、前記炭酸エチレンの前記融点は40℃であり、かつ
前記負極活物質は黒鉛、Li4Ti5O12、Si及びGeからなる群から選ばれることを特徴とする、
リチウムイオン電池に使用する電極箔を被覆するスラリーの製造方法。
【請求項2】
前記バインダー(B)はポリフッ化ビニリデンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)負極活物質及び正極活物質のいずれかである活物質(A)を、バインダー(B)と混合する(1)ことで、混合物を得る工程、
b)スラリーを生成するために炭酸エチレン(C)を前記混合物に加える(1)工程、
ここで、前記工程(b)は前記炭酸エチレン(C)の融点以上の温度で行われ、ここで、前記炭酸エチレンの前記融点は40℃であり、かつ前記正極活物質はLiCoO2、LiFePO4、LiMn2O4、LiNiO2、Li2FePO4F及びLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2からなる群から選ばれ、かつ前記負極活物質は黒鉛、Li4Ti5O12、Si及びGeからなる群から選ばれる;
c)電極箔(D)を前記スラリーで被覆する(2)工程、
d)前記炭酸エチレンの乾燥によって前記電極箔上の被覆を乾燥する(3)工程、並びに、
e) i)前記スラリーで被覆された電極箔をロール成形する工程(5)、及び
ii)前記スラリーで被覆された電極箔を焼成する工程(6)、
を備え、
前記工程dはさらに平行して前記炭酸エチレン(C)を再利用するために集める再生利用工程(4)を備える、
リチウムイオン電池の電極箔の製造方法。
【請求項4】
前記集められた炭酸エチレンは再利用前に濃縮され、ろ過され、かつ不純物が取り除かれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バインダー(B)はポリフッ化ビニリデンである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
a)請求項3に記載の方法で前記電極箔を製造する工程であって、前記電極箔は正極及び負極である工程、
b)前記正極及び前記負極を、これらの間に位置するリチウムイオン透過膜とともに積層する工程、
c)前記正極、前記負極及び前記透過膜を、開口を有する筐体内に設置する工程、並びに、
d)前記筐体を電解質で満たす工程であって、前記電解質はリチウムイオン電池を得るための、リチウムを含有する塩と炭酸エチレン(C)とを含む、工程を備える、
リチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフィルム状電池(battery film)の製造のためのスラリー(スラリー、懸濁液、懸濁体、泥漿)の製造方法に関し、本発明はより詳細には電池の負極及び正極に塗布するスラリーの生産方法、リチウム電池の正極及び負極の製造方法、並びにリチウムイオン電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は3つの主要な部材:負極、正極及び電解質を備える。
【0003】
負極及び正極は通常、粉末混合物の薄膜層である活物質で被覆された金属箔からなり、これらはバインダー(結着剤)でお互い結合している。バインダー粉末粒子同士を結着し、さらに金属箔に強固に結着させる機能を有する。バインダーは柔軟かつ電解質に対して化学的な安定なものでなければならない。
【0004】
負極は黒鉛(graphite)粉末、すなわちカーボンを含む薄膜層(40−100ミクロン)で被覆される銅箔からなり、またカーボン同士はプラスチック材料PVDF(フッ化ビニリデン樹脂)で結合していることが典型的である。
【0005】
正極はPVDFでお互いに結合したリチウム−金属酸化物の薄膜層(40−100ミクロン)で被覆されるアルミニウム箔を備えることが典型的である。
【0006】
電解質は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF
6)、テトラフルオロリン酸リチウム(LiPF
4)、ヘキサフルオロ砒酸リチウム(LiAsF
6)、過塩素酸リチウム(LiCIO
4)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF
4)、及びリチウムトリフラート(LiCF
3SO
3)等のリチウム塩と、EC(炭酸エチレン)、DEC(炭酸ジエチル)及びDMC(炭酸ジメチル)等の有機炭酸塩との混合物が典型的である。
【0007】
リチウムイオン電池のフィルム状電池の製造方法としては、活物質をPVDFと混ぜ、これを、PVDFを溶解する溶媒に混合するのが最も一般的である。バインダーを溶解するのは、材料を分散させるためで混合粉末中の粒子間で、それらの間の結合を保障するためである。かかる混合物は選んだ方法、及び使われた溶媒の量に基づいて押し出し加工、ロール成形、又はテープ成形によって金属箔上に成層される。成層後、金属箔は蒸発乾燥される。
【0008】
PVDFはNMP(N−メチルピロリドン)に溶解するのが最も一般的であり、それらは毒性があり、また環境への影響も大きい。他にも各種溶媒があるが、大部分は毒性、引火性、または完成した電池の化学構造に関連した悪影響を有するのが一般的である。したがって、製造中にフィルム状電池から溶媒は完全に取り除くことが重要であり、NMPの蒸発乾燥は、環境条件によって調整できる。最後に残った溶媒をフィルム状電池から(ppm水準以下で)除去する工程には、エネルギーと空間が必要であり、所定の器材を必要とする。
【0009】
水で媒介する製造方法があり、かかる方法では粉末と水とを混合し、ペースト又は薄い泥漿を形成する。水を使う欠点は、電池を動作させるために乾燥させたフィルム状電池は完全に水分を除去しなければならず、水を乾燥するために比較的エネルギーが必要である。
【0010】
米国2005/0271797A1によれば、リチウム電池の製造方法は(a)ECの結晶を所定の溶媒に溶解して、EC溶液を調製する工程、(b)バインダー溶液を作るためバインダーを所定の溶媒に溶解し、次に所望の組成の活物質材料及び導電材料をバインダー溶液に加え、十分に混合する工程、(c)(a)工程で調製した所定量のEC溶液を(b)工程で調製した所定量のバインダー溶液に加え、EC混合液及びバインダー溶液を十分に混合し、電極バインダーの形態のスラリーが電極の表面を被覆するようにする工程、(e)集電体をスラリーで被覆する工程、(f)ペースト層を所定温度で乾燥し、スラリーの乾燥後、所定の圧力にて、乾燥した電極構造体を圧縮することで電極の製造工程を完結する各工程を備える。また米国2005/0271797A1によれば、かかる方法は、溶媒の炭酸エチレンとの混合に差し挟んで、さらに続けて炭酸エチレンと混合した所定量の溶液をバインダー溶液と他の溶媒の混合液に加えるために、さらに第2の溶媒を活物質とともにバインダー溶液へ混合するものである。このため、上記方法は少なくとも一の溶媒をスラリーの生成に利用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開2005/0271797明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記溶媒利用にかかる問題が負担とならないリチウム電池の電極材料のスラリーの製造方法が必要とされている。
【0013】
本発明は電池の正極及び負極の材料に塗布するスラリーの製造方法、リチウム電池の正極及び負極の製造方法、さらにリチウムイオン電池の製造方法を提供することを目的とし、上述の課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
より的確に言えば、本発明はリチウムイオン電池に使用する電極を被覆するスラリーの製造方法を表すものである。該方法は下記の工程を含む
a)活物質をバインダーと混合しバインダー溶液とし、また
b)前記スラリーを生成するために有機炭酸塩をバインダー溶液に加える。
【0015】
本発明の一態様において、前記工程a)及びb)により混合工程を実施するが、工程b)は前記有機炭酸塩(C)の融点以上の温度で行う。
【0016】
本発明の他の態様において一の負極及び一の正極に活物質(A)を用いることが好ましい。
【0017】
さらに本発明の他の態様において、正極活物質はLiCoO
2、LiFePO
4、LiMn
2O
4、LiNiO
2、Li
2FePO
4F、LiCo
1/3Ni
1/3iMn
1/3O
2、及びLi(Li
αNi
xMn
yCo
z)からなる群から選ばれ、負極活物質はLiC
6、Li
4Ti
5O
12、Si(Li
4.4Si)及びGe(Li
4.4Ge)からなる群から選ばれる。
【0018】
本発明の付加的な態様において、バインダーは
ポリフッ化ビニリデンであり、一以上の有機炭酸塩は炭酸エチレン、炭酸ジメチル、及び炭酸ジエチルからなる群から選ばれる。
【0019】
また本発明はリチウム電池の電極の製造方法を開示し、該方法は下記の工程を備える:
a)活物質をバインダーと混合することで、バインダー溶液とする工程、
b)スラリーを形成するために有機炭酸塩を加える工程;ここで工程b)は有機炭酸塩(C)の融点以上の温度で行う、
c)電極材料を前記スラリーで被覆する工程、
d)有機炭酸塩の乾燥によって電極材料上の被覆を乾燥する工程、及び
e)リチウム電池に用いる電極を形成するためにスラリーの表面を処理する工程。
【0020】
また前記工程は、d工程がさらに平行して有機炭酸塩からの気体を再使用するために集める、再生利用工程4を備えることで特徴づけられる。前記集められた有機炭酸塩は再利用前に濃縮し、ろ過し、かつ不純物を取り除くことができる。
【0021】
工程eの他の実施は、一又は二以上の下記の補助工程を備える:
i)電極材料をロール成形する、
ii)電極材料を焼成する、及び
iii)リチウム電池に使用するために電極材料を仕上げ処理する。
【0022】
開示する発明の他の態様において、活物質を一の負極及び一の正極のためにそれぞれ用い、正極活物質はLiCoO
2、LiFePO
4、LiMn
2O
4、LiNiO
2、Li
2FePO
4F、LiCo
1/3Ni
1/3iMn
1/3O
2、及びLi(Li
αNi
xMn
yCo
z)からなる群から選ばれ、負極活物質はLiC
6、Li
4Ti
5O
12、及びSi(Li
4.4Si)及びGe(Li
4.4Ge)からなる群から選ばれる。
【0023】
開示する発明の態様において、さらにバインダーは
ポリフッ化ビニリデンである。
【0024】
本発明の他の態様において、一以上の有機炭酸塩は炭酸エチレン、炭酸ジエチル、及び炭酸ジメチルからなる群から選ばれる。
【0025】
本発明の他の態様は、リチウム電池を製造する方法であり、該方法は少なくとも下記工程を有する:
【0026】
a)リチウムイオン電池で用いる電極を被覆するスラリーを作成する工程であり、ここでスラリーは活物質、バインダーに加えて希釈剤(シンナー、thinner、他の材料を希望の濃度に希釈するために用いる液体)/有機炭酸塩を備えるものとし、希釈剤/有機炭酸塩は製造されるリチウム電池の電解質材料中の成分からなり、
ここで工程a)は希釈剤/有機炭酸塩(C)の融点以上の温度で行う;
【0027】
b)負極材料及び正極材料をスラリーで被覆する工程、
c)有機炭酸塩を乾燥させることで負極及び正極材料上の被膜を乾燥させる工程、並びに
d)電極がリチウムイオン電池で使用できるようにスラリーの表面を処理する工程、
e)一の又は複数の正極及び負極を、これらの間に位置するリチウム透過膜とともに積層する工程、
f)前記正極、負極及び透過膜を、開口を有する筐体内に設置する工程、並びに、
g)筐体を電解質で満たす工程であり、ここで前記電解質はリチウムを含有する塩と希釈剤/有機炭酸塩とを含む。
【0028】
また本発明はここに開示する方法で得られる、活物質(A)、バインダー(B)及び有機炭酸塩(C)を備えるスラリーに関する。
【0029】
また本発明はここに開示する方法で得られる、リチウム電池の電極に関する。
【0030】
また本発明はここに開示する方法で得られる、リチウムイオン電池に関する。
【0031】
他の開示する発明の態様及び特徴は、添付した独立の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
添付した図面は開示する発明の理解を高めるものである。
【
図1】開示する発明の電池の電極に用いるスラリーの製造の原理を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
下記において、開示する発明を添付の図面を参照しつつ説明する。
【0034】
本発明において、正極及び負極として通常使用される金属箔も、開示する発明による方法に適合する構造物(fabrics)、より一般的には任意の導電性のある導体と同様の材料を、含有することができることが理解されることを希望する。
【0035】
初めに、本発明の全般的な実施について説明し、次に方法の実施例を示す。
【0036】
導入において示したように、リチウム電池のための電池の電極を被覆するスラリーの製造工程を変更しようとする要請がある。
【0037】
リチウムイオン電池は通常3つの機能的要素、すなわち負極、正極、加えて電解質を備える。上述のとおり、開示する発明の目的は、不都合をともなう電極箔を被覆するための溶媒の使用の、代替方法を見出すことである。
【0038】
電極箔に塗布するスラリーは、電極に積層される活物質層が適正な乾燥状態の膜厚と均質性を有するよう、適正な密度・濃度(body)及び粘度を有していなければならない。
【0039】
PVDF等のバインダー及び活物質の形状の粉末からペースト又は薄い液状のスラリーを生成できるように、液体を加える必要がある。電池完成時に構成要素として組み入れられる液体を使用することで、かかる液体を完全に除去する必要が無くなる。かかる液体を完全に除去した場合には、かかる構成要素は後の工程でさらに加えられる必要がある。開示する発明の実施のため、電池の電極を被覆するスラリーの製造方法を説明するが、スラリーは活性のある構成要素を示し、またバインダーは希釈剤で希釈されるものであるが、希釈剤は同じリチウム電池で使用される電解質の構成要素である。
【0040】
本発明におけるスラリーの製造工程を、
図1を用いて全般的に説明する。スラリー完成時に構成成分となる活物質Aを最初の均質化工程1でバインダーBと混合する。スラリーを適正な粘度及びコンシステンシー(consistency:スラリーの濃度・密度・粘度)にするため、溶液Cを加える。本発明において、溶液Cはリチウムイオン電池の完成時にその構成要素の一つとなる。
【0041】
均質化工程後、スラリーが所望の濃度(body)/粘度となるので、電極材料Dを該スラリーで被覆することが出来る(工程2)。被覆方法は、押し出し加工、ロール成形、若しくはテープ成形、又は工業的に知られる他の被覆方法が適する。
【0042】
本製造方法の工程3は均質化工程1で加えたシンナーの蒸発を含む工程である。このため積層されたスラリーは粘調なスラリーからもっと固い材料に変化する。
【0043】
工程3と平行して、蒸発するシンナーを再利用するための再利用工程4が進む。
【0044】
工程3及び4に続く工程5では、被覆された電極材料がロール成形される。
【0045】
工程6では、ロール成形された電極を焼成する。かかる焼成により他の物の中でバインダーが活性のある電極材料及び電極箔に十分に結合するように保障される。
【0046】
図中の最後の工程7はさらにリチウムイオン電池を完成することを含む。
【0047】
工程1から7による製造は連続的に切れ目なく実施することができるので、工程1が完了した時は、処理単位が工程1から工程2に移動し、その後新たな材料が工程1の均質化処理に投入される。その後の各工程でも同様に処理されるため、製造工程を連続的に実施できる。
【実施例】
【0048】
[本発明に沿った実施]
本発明を以下の実施例とともに説明する。
【0049】
本発明にかかる実施例において、リチウムイオン電池の製造に用いる材料は以下のものを含む。
【0050】
負極、すなわち陰極は銅箔で構成される。かかる銅箔は主として黒鉛粉末(LiC
6)の形態の活物質で被覆される。また、他の活物質、例えばチタン酸塩(titanat)(Li
4Ti
5O
12)、Si(Li
4.4Si)、又はGe(Li
4.4Ge)を負極活物質として用いることもできる。黒鉛粉末は銅箔に塗布される。かかる被覆工程を適切に行い、均質な表面を得るため、その後黒鉛粉末をPVDFと混合しなければならない。続いて該PVDF及び黒鉛粉末に対し、被覆工程に適した粘性を与えなければならない。所望の粘性を得るために、炭酸エチレン(EC)等の有機炭酸塩(C)を加え、混合する。かかる調製工程は全体的な工程の説明における均質化工程1に相当する。混合物をシンナー(thinner)/炭酸エチレン(C)、例えば適切な粘性を与えるために混入される成分の融点以上の温度に加熱してもよい。かかる温度はシンナー(thinner)/ECの融点以上でもよく、かつバインダーの融点以上でもよく、また以下でもよい。
【0051】
正極、例えば陽極はアルミニウム箔で構成され、かかるアルミニウム箔はリチウム−金属酸化物の形態の活物質で被覆される。かかるリチウム−金属酸化物で銅箔を被覆することで、かかる被覆工程は適切に行われ、均質な表面が作られる。その後リチウム−金属酸化物AをPVDFと混合しなければならない。続いてPVDF及びリチウム−金属酸化物を被覆するのに適した粘性を与えなければならない。このため、所望の粘性を得るために、炭酸エチレン(EC)等の有機炭酸塩(C)を加え、混合物を混ぜ合わせる。この混合工程は全体的な工程の説明における均質化工程1に相当する。
【0052】
正極及び負極に対する以降の工程は概ね
図1に表される工程にならう。
【0053】
[開示する発明の他の実施に係る詳細]
本発明を、以下の付加的な実施例とともに説明する。
【0054】
本発明の実施の詳細に沿った、この実施例において、リチウムイオン電池の製造に用いる材料は以下のものを含む。
【0055】
負極、すなわち陰極は銅箔で構成される。かかる銅箔は黒鉛粉末(LiC
6)の形態の活物質で被覆されるのが典型的である。なお負極の製造工程は上述の通りである。
【0056】
正極、すなわち陽極はアルミニウム箔で構成される。かかるアルミニウム箔はコバルト酸リチウム(LiCoO
2)の一つのようなリチウム−金属酸化物、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)のような多価陰イオン、又はマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)の形態の活物質で被覆される。正極材料はさらに、LiNiO
2、Li
2FePO
4F、LiCo
1/3Ni
1/3iMn
1/3O
2、及びLi(Li
αNi
xMn
yCo
z)O
2の補助的ではない群(not supplementary group)に見出すことが出来る。簡便のため、以下において、金属酸化物の用語を上述のリン酸塩/酸化物に用いるものとする。
【0057】
金属酸化物を銅箔に被覆する。かかる被覆工程を適切に行い、均質な表面を得るため、リチウム−金属酸化物AをバインダーBと混合しなければならず[工程1]、例えばPVDF及び金属酸化物に被覆するのに適した粘性を与えなければならない。所望の粘性を得るためその混合物に炭酸エチレン(EC)等の有機炭酸塩(C)又は炭酸ジエチルを加え、混ぜ合わせる。この混合工程は全体的な工程の説明における均質化工程[1]に相当する。
【0058】
正極及び負極に対する以降の工程は概ね
図1に表される工程にならう。
【0059】
すなわち、かなりのバインダー及び原料の活物質を結合することとなるが、ここでシンナー(thinner)/有機炭酸塩(C)が完成時の構成要素となることが中心となる問題である。
【0060】
このため、最終的に残留し集約した(concentration of)、シンナー(thinner)/有機炭酸塩(C)を除去する必要が無く、エネルギーを節約できると考えられる。
【0061】
以下、電解質、及び電解質の一部を構成する材料に関する性質について説明する。通常の電池において電解質は基本的に、炭酸エチレン(EC)、又は炭酸ジエチル等の有機炭酸塩を含有する。かかるECは最も一般的に利用され、約40℃で溶融する蝋質の材料であり、このため粘性の低い液体である。ECは毒性が高くない。ECは匂いがなく、高温(140℃以上)では引火しやすい。
【0062】
本発明の態様によれば、バインダーB(PVDF等)、粉末A(活物質)及び溶解したECすなわちCを混合することでかかるスラリーを所望の粘性とすることができる。ECの量は混合物の所望の粘性に合わせて調製することが出来る。
【0063】
この混合物はECの融点以上かつバインダーの融点(例えば、PVDFについては約180℃)以下又は以上の任意の温度でよく均質化される(工程1)。このためバインダーともに粒子をよく混合することで、混合物中であらゆる粒子の間に分散する。
【0064】
混合物中であらゆる粒子の間にバインダー粒子Bが均等に分散するように混合物を十分に均質化することで(工程1)、金属箔Dをかかる混合物にて被覆することができる。押し出し加工、ロール成形、又はテープ成形によってこれを実施できる。フィルム状電池はECの濃度が電池の完成時における所望のEC濃度と同等又はそれ以下になるまでECを蒸発させるためさらに加熱する必要がある(工程3)
【0065】
続くフィルム状電池のロール成形(工程5)で粒子をまとめて圧縮し、粒子間の結合を高める。
【0066】
本工程においてフィルム状電池の乾燥により生成されるEC−蒸気は濃縮し、ろ過し、再利用することが出来る。ECは健康及び環境対する影響がほとんどなく毒性の少ない液体である。
【符号の説明】
【0067】
数字又はアルファベットで示す符号は以下の一欄の通りである。
[I]
A:活物質、黒鉛及び酸化リチウム等
B:バインダー、例えばPVDF
C:開示する発明にかかる希釈剤(シンナー、Thinner)、有機炭酸塩等の電解質の構成要素
D:集電箔(Leading foil)、アルミニウム箔、銅箔、中でもアルミニウムの織布(canvas)及び銅の織布(canvas)
【0068】
[II]
1:均質化
2:被覆、例えば押し出し加工、テープ成形、ロール成形、又はこれらと同等のもの
3:溶剤の蒸発
4:溶剤の再利用
5:ロール成形
6:焼成、バインダーを溶融するための
7:以降の電池の組み立て