特許第6158709号(P6158709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158709グリセリルグルコシド含有組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158709
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】グリセリルグルコシド含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20170626BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170626BHJP
   C07H 15/04 20060101ALI20170626BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170626BHJP
【FI】
   A61K8/60
   A61Q19/00
   C07H15/04 D
   !C07B61/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-540723(P2013-540723)
(86)(22)【出願日】2012年10月12日
(86)【国際出願番号】JP2012076412
(87)【国際公開番号】WO2013061802
(87)【国際公開日】20130502
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】特願2011-237347(P2011-237347)
(32)【優先日】2011年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 武徳
(72)【発明者】
【氏名】桐生 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】相澤 恭
【審査官】 石川 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−188584(JP,A)
【文献】 特開2008−208128(JP,A)
【文献】 特開2011−057610(JP,A)
【文献】 特開平08−188587(JP,A)
【文献】 特開平11−279190(JP,A)
【文献】 特開2009−107930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/60
A61Q 19/00
C07H 15/04
C07B 61/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)ないし(3);
(1)グリセリンとグルコースとを、スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂の存在下加熱して反応させる工程
(2)工程(1)で得られた反応液に塩基性化合物を添加し、pHを4〜7に調整する工程
(3)工程(2)でpHを調整した反応液からスルホ基を有する酸型イオン交換樹脂を除去する工程
を含むことを特徴とするグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
【請求項2】
工程(1)において、グリセリンとグルコースとをモル比5:1〜10:1で反応させるものである請求項1記載のグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
【請求項3】
実質的に溶媒を用いないものである請求項2記載のグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
【請求項4】
さらに次の工程(4);
(4)未反応のグリセリンの全部または一部を留去する工程
を含む請求項2または3に記載のグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
【請求項5】
グリセリルグルコシド含有組成物中の硫酸塩の含有量が1〜100ppmの範囲となるものである請求項1ないし4の何れかの項記載のグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
【請求項6】
次の工程(1)ないし(3);
(1)グリセリンとグルコースとを、スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂の存在下加熱して反応させる工程
(2)工程(1)で得られた反応液に塩基性化合物を添加し、pHを4〜7に調整する工程
(3)工程(2)でpHを調整した反応液からスルホ基を有する酸型イオン交換樹脂を除去する工程
を含むことを特徴とするグリセリルグルコシドの製造方法。
【請求項7】
次の工程(1)ないし(3);
(1)グリセリンとグルコースとを、酸型イオン交換樹脂の存在下加熱して反応させる工程
(2)工程(1)で得られた反応液に塩基性化合物を添加し、pHを4〜7に調整する工程
(3)工程(2)でpHを調整した反応液から、濾過により酸型イオン交換樹脂を除去する工程
を含むことを特徴とするグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリルグルコシド含有組成物の製造方法及び当該方法により製造されたグリセリルグルコシド含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリルグルコシドは、グリセリンとグルコースが1分子対1分子の割合でα−又はβ−グルコシド結合したものであり、甘味料等として食品に利用されている他、保湿性を有するため、保湿剤として化粧料等に配合されている。
【0003】
従来、グリセリンとグルコースからグリセリルグルコシドを合成する方法においては、触媒として硫酸またはパラトルエンスルホン酸が一般に用いられてきたが、酸触媒の使用により反応液のpHが低下し、そのまま濃縮すると著しい着色が生じるため、水酸化ナトリウムなどの塩基性化合物を添加してpHを中性付近に調整する必要があった。しかし、このようにpHを調整しても、なお得られた組成物は保存中に着色してしまい、保存安定性に欠けるという問題があった。また、この組成物は、保湿性の面でも十分なものとはいえなかった。
【0004】
この着色の問題を解決するために、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩の存在下に糖又は低級アルキルグリコシドとアルコールを反応させる配糖体の製造方法が開示されている(特許文献1)。この製法によって得られた配糖体組成物は、着色はある程度抑制されるものの、皮膚刺激性が強く、化粧料等の皮膚外用剤として利用するのに適さないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−188584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、着色が抑制され、かつ皮膚刺激性の少ないグリセリルグルコシド含有組成物を製造する方法の確立が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、従来の製法において、酸触媒と塩基性化合物との反応により生成する硫酸塩が着色の原因物質であり、生成した組成物中の硫酸塩の残存量を減少させることにより着色が抑制され、また皮膚刺激性も低減されることを知見した。そして、スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂の存在下グリセリンとグルコースを反応させることにより、硫酸塩の残存量を一定の微量な範囲に制御することができるため、着色や皮膚刺激性が抑制され、さらに、硫酸塩が過剰に含まれるもの、あるいは全く含まれないものよりも、保湿性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、次の工程(1)ないし(3);
(1)グリセリンとグルコースとを、スルホ基を有する酸型イオン交換樹 脂の存在下加熱して反応させる工程
(2)工程(1)で得られた反応液に塩基性化合物を添加し、pHを4〜 7に調整する工程
(3)工程(2)でpHを調整した反応液から、スルホ基を有する酸型イ オン交換樹脂を除去する工程
を含むことを特徴とするグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法である。
【0009】
また本発明は、上記製造方法によって製造されたグリセリルグルコシド含有組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法によれば、グリセリルグルコシド含有組成物に含まれる硫酸塩の残存量を、一定の微量な範囲に制御することができる。このため、着色が抑制され、皮膚刺激性の少ないグリセリルグルコシド含有組成物を得ることが可能である。さらに、このグリセリルグルコシド含有組成物は保湿性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のグリセリルグルコシド含有組成物の製造方法においては、まずグリセリンとグルコースとを、酸型イオン交換樹脂の存在下加熱して反応させる(工程(1))。グリセリンとグルコースとの反応は脱水反応であるため、水及び反応に寄与してしまうアルコール以外の任意の有機溶媒に溶解した溶液中で行うことができるが、過剰のグリセリンを溶媒として作用させ、実質的に他の溶媒を用いないことにより、後の精製工程を省略できるため好ましい。具体的には、グリセリンとグルコースは、通常モル比1:1〜20:1の範囲で反応させることができるが、好ましくは5:1〜20:1、より好ましくは5:1〜10:1の範囲でグリセリンを過剰に用いることが好適である。5:1〜10:1の範囲であれば、副生成物の生成が抑制され、反応が速やかに進行し、収率も高くなるため、生産効率や品質の面で好ましい。これに対し、この範囲よりもグリセリンの量が少ないと、グルコースが多量に結合した副生成物が多量に発生し、未反応のグルコースも多く残る場合があり、一方、この範囲よりもグリセリンの量が多いと、反応の進行が遅くなり、収率も低下する場合がある。
【0012】
このようなグリセリンとグルコースの反応を、スルホ基(−SOH)を有する酸型イオン交換樹脂の存在下において行う。スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂としては、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体をスルホン化したものなどが好適に用いられ、ゲル型およびポーラス型のどちらでも使用できる。市販品としては、アンバーリスト16WET(オルガノ社製)、ダイヤイオンPK228(三菱化学社製)、デュオライトC255KFH(住友ケムテックス社製)等が挙げられる。スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂の使用量は触媒活性が発揮される範囲であれば特に限定されないが、グルコースに対して、5〜50質量%、好ましくは15〜30質量%程度用いる。
【0013】
グリセリンとグルコースの反応は、反応温度80〜120℃、好ましくは90〜110℃で、1〜36時間、好ましくは5〜30時間程度行う。
【0014】
次いで、上記工程(1)で得られた反応液に塩基性化合物を添加する(工程(2))。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、このうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが保湿剤などとして利用する場合、中和後に生成する塩が刺激性に影響を及ぼしにくく、また強塩基のため使用量が少量で済むことから好適に用いられる。このような塩基性化合物を添加して、反応液のpHを4〜7、好ましくは4.5〜6の範囲に調整する。pHがこの範囲外であると、後にグリセリンを留去する際の熱により、副生成物を生じる問題点がある。
【0015】
次に、工程(2)でpHを調整した反応液から、スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂を除去する(工程(3))。スルホ基を有する酸型イオン交換樹脂の除去は、ろ過、遠心分離など通常の固液分離手段によって行うことができる。
【0016】
上記グリセリンとグルコースの反応において、過剰のグリセリンを用いた場合や、その他の溶媒を用いた場合には、必要に応じこれらを留去する(工程(4))。溶媒の留去は常法によって行えばよく、例えば、単蒸留や、溶媒の沸点が高い場合などは薄膜蒸留等の方法が挙げられ、未反応のグリセリンまたはその他の溶媒の全部または一部を留去することができる。
【0017】
以上のようにして得られた組成物には、グリセリルグルコシドが含まれる他、未反応のグルコースやグリセロール、硫酸塩、グルコースの重合物等の副生成物が含まれ得るが、これをそのまま本発明のグリセリルグルコシド含有組成物として用いることができる。また、水等の溶媒にグリセリルグルコシド含有組成物を60〜95質量%(固形物換算)溶解して水溶液等の形態としてもよい。また常法にしたがって活性炭処理を行って脱色することもできる。さらに、公知の精製方法によって精製することにより、高純度のグリセリルグルコシドを得ることができる。
【0018】
本発明の組成物に含まれるグリセリルグルコシドは、下記式(1)で表される(2R)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、式(2)で表される(2S)−1−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、式(3)で表される2−O−α−D−グルコピラノシルグリセロール、式(4)で表される(2R)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、式(5)で表される(2S)−1−O−β−D−グルコピラノシルグリセロール、式(6)で表される2−O−β−D−グルコピラノシルグリセロールのいずれか1種またはこれらの2種以上の混合物である。本発明のグリセリルグルコシド含有組成物には、実施例に記載の液体クロマトグラフィー(LC)測定条件で、これらのグリセリルグルコシドを合計60〜90LC%、好ましくは70〜80LC%含有する。
【0019】
【化1】
【0020】
【化2】
【0021】
【化3】
【0022】
【化4】
【0023】
【化5】
【0024】
【化6】
【0025】
また本発明のグリセリルグルコシド含有組成物に含まれる硫酸塩は、1〜100ppmが好ましく、2〜90ppmがより好ましく、3〜80ppmが特に好ましい。この範囲であると、着色や刺激性の問題が生じることなく、さらに保湿性が向上する。含まれ得る硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アルミニウム等が挙げられる。このような硫酸塩は、酸型イオン交換樹脂のスルホ基が外れ、工程(2)で添加される塩基性化合物と反応することにより生成するものと考えられる。従来のように、硫酸やパラトルエンスルホン酸を触媒として用いた製造方法では、残存する硫酸塩の濃度が200ppmよりも高くなるため、刺激性が強く、皮膚に適用することが困難であったが、本発明により初めてこのように硫酸塩を微量な範囲で含有するグリセリルグルコシド含有組成物を直接製造することが可能となった。なお、本発明において、グリセリルグルコシド含有組成物中の硫酸塩の含有量は、実施例に記載の方法(JIS K 0067準拠)による測定値である。
【0026】
このように本発明のグリセリルグルコシド含有組成物は、残存する硫酸塩の含有量が少ないため着色を抑制できるものであるが、この着色の度合いは、例えば、ハーゼン色数(APHA)で評価される値を用いることができる。ハーゼン色数は、無色から褐色まで段階を付けた比色管(ハーゼン標準液)と測定物を比較することにより、着色度合を測定することもできるし、APHA測定器を用いて測定することもできる。この値が大きくなるほど、無色から黄色、褐色、濃褐色となる。本発明のグリセリルグルコシド含有組成物のハーゼン色数(APHA)は、70以下が好ましく、30以下がより好ましく、10以下が特に好ましい。
【0027】
本発明のグリセリルグルコシド含有組成物には、上記グリセリルグルコシドや硫酸塩の他、未反応のグリセリンやグルコース、グルコースが重合したもの、グルコースが開環したものなどの副生成物が含まれ得る。本発明のグリセリルグルコシド含有組成物は、例えば、実施例に記載のHPLC測定条件で、60〜90LC%、好ましくは70〜80LC%のグリセリルグルコシド、15LC%以下、好ましくは10LC%以下、より好ましくは6%以下の未反応のグリセリン、15LC%以下、好ましくは10LC%以下の未反応のグルコース、実施例に記載の方法(JIS K 0067)による測定値で1〜100ppm、好ましくは2〜95ppm、特に好ましくは3〜90ppmの硫酸塩から構成される。
本発明のグリセリルグルコシド含有組成物には、pH調整剤を含有させてもよい。pH調整剤を含有させることで、長期に渡りグリセリルグルコシド含有組成物のpHを4〜7程度に安定させることができる。
上記pH調整剤としては、有機酸が挙げられ、具体的には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ギ酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸等が挙げられる。これらの中でも、pH安定化効果に優れる点より、グルコン酸が好ましく挙げられる。
pH調整剤の含有量としては、グリセリルグルコシド含有組成物において、1〜1000ppmが好ましく挙げられ、10〜300ppmが特に好ましく挙げられる。
【0028】
本発明のグリセリルグルコシド含有組成物は、皮膚刺激性が小さく、優れた保湿性を有するものであるため、保湿剤等として化粧料、医薬部外品、医薬品などの皮膚外用剤の原料として好適に使用できる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明について更に詳細を加えるが、本発明がこれら実施例に限定を受けないことは言うまでもない。
【0030】
実施例1
グリセリン129.7g(1.41モル)に、グルコース31.7g(0.17モル)加え(グリセリンとグルコースのモル比=8:1)、水洗、乾燥させた酸型イオン交換樹脂(アンバーリスト、オルガノ社製、型番:16WET)を4.78g加えた。次にこの混合物を減圧下(10mmHg)にて、100℃で10時間、加熱、攪拌を行った。反応終了後、苛性ソーダを加え、pHを5.2に調整した後、濃縮して溶媒を留去した。反応液を60℃程度まで冷却した後、酸型イオン交換樹脂をろ過により除去した。その後、溶媒を留去することでグリセリルグルコシド含有組成物を得た。
【0031】
実施例2
アンバーリスト16WETの代わりに、ダイヤイオン(三菱化学社製、型番:PK228H)を用いた以外は、実施例1と同様にしてグリセリルグルコシド含有組成物を得た。
【0032】
実施例3
アンバーリスト16WETの代わりに、デュオライト(住友ケムテックス社製、型番:C255KFH)を用いた以外は、実施例1と同様にしてグリセリルグルコシド含有組成物を得た。
【0033】
比較例1
アンバーリスト16WETの代わりに、硫酸を用いた以外は、実施例1と同様にしてグリセリルグルコシド含有組成物を得た。
【0034】
比較例2
アンバーリスト16WETの代わりに、ゼオライトを用いた以外は、実施例1と同様にしてグリセリルグルコシド含有組成物を得た。
【0035】
比較例3
アンバーリスト16WETの代わりに、パラトルエンスルホン酸を用いた以外、実施例1と同様にして、グリセリルグルコシド含有組成物を得た。
【0036】
試験例1
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたグリセリルグルコシド含有組成物について、以下の方法により着色度合い、保湿性および皮膚刺激性を評価した。結果を表1に示す。
【0037】
(ハーゼン色数の評価方法)
ハーゼン色数の測定は、APHA測定器(日本電色製:COH−400)を用いて測定した。各グリセリルグルコシド含有組成物の80%水溶液を調製し、調製直後(初期)および耐久性試験(40℃で100時間保存)後のハーゼン色数を測定し、着色度合いを調べた。
【0038】
(保湿性及び刺激性の評価方法)
各グリセリルグルコシド含有組成物の10質量%水溶液を調製し、20〜40歳の男性5名および女性5名の合計10名の被験者の前腕部に塗布し、塗布後30分間経過したときに、皮膚に対する保湿性、皮膚に対する刺激性を以下の評価基準に基づいて被験者に評価してもらい、その得点を合計した後、合計点を人数の10で除することにより、平均点を求めた。
(1)皮膚に対する保湿性の評価基準
10点:塗布前よりも肌がしっとりする。
5点:塗布前よりも肌がややしっとりする。
0点:塗布前と変わらない。
(2)皮膚に対する刺激性
10点:皮膚に対する刺激性がない。
5点:皮膚に対する刺激性がやや認められる。
0点:皮膚に対する刺激性が明らかに認められる。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示されるように、酸型の固体酸触媒を用いることで、グリセリルグルコシド含有組成物の着色度合いは小さく、耐久性にも優れ、また保湿性、刺激性に優れる結果となった。
【0041】
実施例4
グリセリンとグルコースの添加量をグリセリン64.9g(0.71モル)、グルコース127.9g(0.71モル)に代えた以外は実施例1と同様にしてグリセリルグルコシド含有組成物を得た(グリセリンとグルコースのモル比=1:1)。
【0042】
実施例5
グリセリンとグルコースの添加量をグリセリン129.7g(1.41モル)、グルコース16.9g(0.09モル)に代え、24時間加熱を行った以外は実施例1と同様にしてグリセリルグルコシド含有組成物を得た(グリセリンとグルコースのモル比=15:1)。
【0043】
試験例2
実施例1、4および5で得られたグリセリルグルコシド含有組成物について、試験例1と同様にして着色度合い、保湿性及び刺激性を評価した。結果を表2に示す。また、下記条件による液体クロマトグラフィー(LC)によりその組成を分析した。なお硫酸塩は、JIS K 0067に準拠して以下の方法により測定した。結果を表3に示す。
【0044】
(液体クロマトグラフィー(LC)の測定条件)
カラム:Shim-Pack SCR-101(島津GLC)
検出器:RI
カラム温度:75℃
溶離液:超純水
流量:0.6 mL/min
インジェクション量:20 μL
【0045】
(硫酸塩の測定方法)
硫酸塩は、JIS K 0067に準じて測定を行った。まず、蒸発皿にグリセリルグルコシド含有組成物5gを精秤し、ガスバーナーで炭化するまで加熱した。その後、電気炉に入れ、550℃で4時間加熱し、完全に灰化させた。灰化したものを精秤して、硫酸塩の量を計算した。
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
表2および3に示されるように、モル比1:1で反応させると、グルコースが多量に結合した副生成物が多量に発生し、未反応のグルコースも多く残る。これに対し、モル比8:1で反応させると、グルコースが多量に結合した副生成物の生成を抑制しつつ合成することができる。一方、モル比15:1で反応さると、反応中にグリセリンが過剰にあるため、反応の進行が非常に遅くなる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の製造方法は、グリセリルグルコシド含有組成物中に含まれる硫酸塩の残存量を微量な範囲に制御することができるものであり、着色が抑制され、かつ皮膚刺激性がなく保湿性に優れたグリセリルグルコシド含有組成物が得られるものである。したがって、化粧料等の皮膚外用剤に用いる原料の製造方法として有用なものである。