【文献】
ODELL EDWARD W,ANTIBACTERIAL ACTIVITY OF PEPTIDES HOMOLOGOUS TO A LOOP REGION IN HUMAN LACTOFERRIN,FEBS LETTERS,NL,ELSEVIER,1996年 1月 1日,V382,P175-178
【文献】
HAVERSEN L,STRUCTURE-MICROBICIDAL ACTIVITY RELATIONSHIP OF SYNTHETIC FRAGMENTS DERIVED 以下備考,ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,2010年 1月,V54 N1,P418-425,FROM THE ANTIBACTERIAL ALPHA-HELIX OF HUMAN LACTOFERRIN
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
膿痂疹、火傷、感染した擦過傷、感染した裂傷、擦傷、丹毒、蜂巣炎、膿瘍、フルンケル、癰、閉鎖創、手術部位感染、二次的に感染した皮膚炎:アトピー性皮膚炎、乾癬、及びアレルギー性接触皮膚炎、動物咬傷、並びにカテーテル関連感染の治療、予防法(prophylaxis)及び/又は予防で使用するための、請求項3に記載の医薬組成物。
【背景技術】
【0002】
ラクトフェリンは、77kDaの分子量を有する一本鎖金属結合糖タンパク質である。殺菌特性に関与するラクトフェリンの構造ドメインは、ラクトフェリシンと呼ばれる、ペプシン切断断片である(例えば、Bellamy W.ら、Identification of the bactericidal domain of lactoferrin, Biochim. Biophys. Acta 1121: 130-136, 1992、及びBellamy W.ら、Antibacterial spectrum of lactoferricin B, a potent bactericidal peptide derived from the N-terminal region of bovine lactoferrin, J. Appl. Bact. 73: 472-479, 1992を参照)。
【0003】
ラクトフェリン受容体は、単球及びマクロファージ、レクチン刺激ヒト末梢血リンパ球、刷子縁細胞、及び腫瘍細胞株を含む多くの種類の細胞上に見出される。
【0004】
いくつかの特許文献は、感染又は炎症の治療のためのラクトフェリンの活用可能性を記載する。WO 98/06425において、例えば、ラクトフェリン及びラクトフェリシンが、感染、炎症及び腫瘍の治療及び予防のために使用できることが開示されている。
【0005】
EP 629 347は、(A)ラクトフェリン加水分解物及び/又はラクトフェリン由来の1つ以上の抗菌ペプチド、及び(B)金属キレートタンパク質、トコフェロール、シクロデキストリン、グリセリン‐脂肪酸エステル、アルコール、EDTA又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、ポリリン酸又はその塩、キトサン、システイン、及びその有効成分としてコール酸からなる群から選択される1つ以上の化合物を含む抗菌剤を記載する。この抗菌剤は、製品の加工、特に、例えば、食品及び医薬品を安全に加工することを目的とする。この文献によれば、薬剤は、従って、新しい防腐剤である。当該文献において、いくつかのペプチド配列が提供され、そしてそれらのいくつかは、本発明によるペプチドと類似しているが、さらに以下で記載するいくつかの重要な相違がある。
【0006】
US 5,304,633は、ヒト及びウシラクトフェリンの加水分解物から分離された抗菌性ペプチドを開示する。ヒトラクトフェリンのアミノ酸12〜47、及び17〜41に相当するペプチドの分離が、具体的に開示されている。
【0007】
JP 7145196は、ラクトフェリンの加水分解による抗生物質ペプチドの調製を記載する。ヒトラクトフェリンのアミノ酸17〜41に相当するペプチドの調製が、具体的に記載されている。
【0008】
JP 8040925は、ラクトフェリン由来のペプチドを含む医薬組成物、及び角膜損傷、特に角膜炎の治療におけるそれらの使用を開示する。ヒトラクトフェリンの17〜41、12〜58、及び19〜38アミノ酸に相当するペプチドが、具体的に記載されている。
【0009】
JP 7274970は、抗菌性ラクトフェリシン由来のペプチド、具体的にはヒトラクトフェリンの18〜42アミノ酸に相当するペプチドの組み換え産物が開示されている。
【0010】
JP 8143468は、ラクトフェリン由来のペプチド及び抗潰瘍剤としてのそれらの使用が記載され、ヒトラクトフェリンの19〜33アミノ酸に相当するペプチドが、具体的に開示されている。
【0011】
WO 00/01730は、ヒトラクトフェリン由来のペプチド及び感染及び炎症の治療のためのそれらの使用が記載されている。
【0012】
EP 1 228 097は、ヒトラクトフェリンの隣接したN‐末端由来のペプチド及び微生物剤(microbial agent)としてのそれらの使用が記載されている。
【0013】
EP 1151009は、抗菌及び/又はエンドトキシン中和活性を有するヒトラクトフェリンの35〜50アミノ酸に相当する配列を含むペプチドが記載されている。
【0014】
WO 2006/047744は、少なくとも33アミノ酸を含み、そして4つの正電荷のアミノ酸で、N‐及びC‐末端の両方において置換されているヒトラクトフェリンのN‐末端部分由来の免疫調節ペプチドが記載されている。
【0015】
WO 2009/050279は、突然変異ラクトフェリンペプチド及びそれらの抗菌活性が記載されている。
【0016】
WO 2009/062898は、アルギニン置換ラクトフェリンペプチド並びにそれらの抗菌及び抗炎症活性が記載されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、改善された抗菌及び/又は抗炎症活性を有する新規ペプチドに関する。本発明によるペプチドは、成熟ヒトラクトフェリンの13〜30アミノ酸に相当するアミノ酸配列(配列番号1)に基づいて設計される。
【0018】
【化1】
【0019】
本発明の第一の実施態様は、少なくとも以下のアミノ酸配列:
【0020】
【化2】
を含むペプチド
(配列中、
X1は、C、L、W、K、又はRであり、
X2は、C、F、K、W、又はRであり、
X3は、L、又はRであり、
X5は、L、K、又はRであり、
X7は、N、S、A、L、W、K、又はRであり、
X8は、M、W、又はSであり、
X9は、R、又はVであり、
X11は、V、A、H、L、又はRであり、及び
X12は、R、L、又はWである)
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体(variant)、に関する。
【0021】
ペプチドは、好ましくはさらに、N‐末端にアミノ酸W又はR‐Wを含むことができる。
【0022】
ペプチドは、好ましくはさらに、C‐末端にアミノ酸R又はR‐Lを含むことができる。
【0023】
好ましくは、本発明の第一の実施態様によるペプチドは、少なくとも以下のアミノ酸配列:
【0024】
【化3】
【0025】
(配列中、
X1は、W、K、又はRであり、
X2は、C、K、又はRであり、
X3は、L、又はRであり、
X5は、L、又はRであり、
X7は、W、又はKであり、
X8は、M、又はWであり、
X9は、R、又はVであり、
X11は、V、A、又はRであり、及び
X12は、R、又はLである)
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体を含む。
【0026】
ペプチドは、好ましくはさらに、N‐末端にアミノ酸W又はR‐Wを含むことができる。
【0027】
ペプチドは、好ましくはさらに、C‐末端にアミノ酸R又はR‐Lを含むことができる。
【0028】
より好ましくは、本発明の第一の実施態様によるペプチドは、以下のアミノ酸配列:
【0029】
【化4】
【0030】
から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体から選択される。
【0031】
最も好ましくは、本発明の第一の実施態様によるペプチドは、以下のペプチド:
【0032】
【化5】
【0033】
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体から選択される。
【0034】
本発明の第二の実施態様は、少なくとも以下のアミノ酸配列:
【0035】
【化6】
【0036】
を含むペプチド
(配列中、
X1は、Q、R、又はNであり、
X2は、S、R、又はKであり、
X3は、E、R、又はLであり、
X4は、A、R、又はFであり、
X5は、T、K、R、H、Q、又はEであり、
X6は、K、T又はSであり、
X7は、R、F、又はLであり、
X8は、F、K、又はAであり、
X11は、L、R、又はAであり、
X13は、N、又はQであり、及び
X18は、L、R、又はAである)
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体に関する。
【0037】
ペプチドは、好ましくはさらに、N‐末端にアミノ酸配列K‐Rを含むことができる。
【0038】
ペプチドは、好ましくはさらに、C‐末端にアミノ酸配列K‐R、W‐W、又はG‐Pを含むことができる。
【0039】
好ましくは、本発明の第二の実施態様によるペプチドは、少なくとも以下のアミノ酸配列:
【0040】
【化7】
【0041】
(配列中、
X1は、Q、R、又はNであり、
X3は、E、R、又はLであり、
X4は、A、R、又はFであり、
X5は、T、K、R、Q、又はEであり、
X6は、K、T、又はSであり、
X7は、R、F、又はLであり、
X8は、F、K、又はAであり、
X11は、L、R、又はAであり、及び
X18は、L、R、又はAである)
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体を含む。
【0042】
ペプチドは、好ましくはさらに、N‐末端にアミノ酸配列K‐Rを含む。
【0043】
ペプチドは、好ましくはさらに、C‐末端にアミノ酸配列K‐R、W‐W、又はG‐Pを含むことができる。
【0044】
より好ましくは、本発明の第二の実施態様によるペプチドは、以下のアミノ酸配列:
【0045】
【化8】
【0046】
から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体から選択される。
【0047】
最も好ましくは、本発明の第二の実施態様によるペプチドは、以下のペプチド:
【0048】
【化9】
【0049】
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体から選択される。
【0050】
本発明によるさらなる好ましいペプチドは、以下:
【0051】
【化10】
【0052】
及びこれらのペプチドの機能的に同等の変異体である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明のペプチドは、好ましくは、12〜100の長さのアミノ酸残基、例えば、好ましくは、12〜50の長さのアミノ酸残基、又は12〜30の長さのアミノ酸残基、例えばさらに好ましくは、12〜約25の長さのアミノ酸残基、例えば最も好ましくは、12〜20の長さのアミノ酸残基、例えば、12、13、14、15、16,17、18,19、又は20アミノ酸残基を有する。
【0055】
本発明によるペプチドは、一般的な20個の遺伝子的にコードされたアミノ酸を含む。それらは、天然の「L」型と比較して、それらに対応する立体異性体について、「D」型で、1つ以上のアミノ酸をまた含んでもよい。
【0056】
本明細書において、一文字又は三文字記号が、アミノ酸を示すために使用される。これらの記号は、そしてそれらは、当業者に周知であり、以下の意味:A=Ala=アラニン、C=Cys=システイン、D=Asp=アスパラギン酸、E=Glu=グルタミン酸、F=Phe=フェニルアラニン、G=Gly=グリシン、I=Ile=イソロイシン、K=Lys=リシン、M=Met=メチオニン、N=Asn=アスパラギン、P=Pro=プロリン、Q=Gln=グルタミン、R=Arg=アルギニン、S=Ser=セリン、T=Thr=スレオニン、V=Val=バリン、W=Trp=トリプトファンを持つ。小文字は、対応するD‐アミノ酸を指定するために使用される。
【0057】
本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体は、1つ以上のアミノ酸の挿入又は欠失、例えば、1‐5挿入又は欠失、1、2、3、4又は5挿入又は欠失が挙げられる。
【0058】
本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体はまた、置換を含むことができる。置換は、保存的又は非保存的のいずれかであってもよい。保存的置換は、同じ一般的な種類(例えば、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸など)内のアミノ酸の、同じ種類内の他のアミノ酸による置換である。例えば、疎水性アミノ酸は、他の疎水性アミノ酸と置換することができ、例えば、Trpは、Leuにより置換することができる。正電荷のアミノ酸は、他の正電荷のアミノ酸で置換することができ、例えば、Argは、Lysにより置換することができ、例えば、1‐5置換、1、2、3、4、又は5置換である。
【0059】
図1は、アミノ酸の異なる種類を示す。
【0060】
本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体は、所望する機能的特性が、ポリペプチドによって保持される限り、他の非天然アミノ酸をまた含むことができる。そのような非天然アミノ酸は、α,α‐二置換アミノ酸、N‐アルキルアミノ酸、又は特定の天然アミノ酸を模倣した他の変異体が挙げられる。
【0061】
例えば、本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体において、リシン(K/Lys)は、好ましくは、Dap(ジアミノプロピオン酸)、Dab(2,4‐ジアミノブタン酸)、Orn(オルニチン)、又はHyl(5‐ヒドロキシリシン)によって置換することができ、アルギニン(R/Arg)は、好ましくは、Har(ホモアルギニン)によって置換することができ、アラニン(A/Ala)は、好ましくは、Aib(α‐アミノイソ酪酸)又はAbu(2‐アミノブタン酸)によって置換することができ、バリン(V/Val)は、好ましくは、Nva(ノルバリン)又はIva(イソバリン)によって置換することができ、ロイシン(L/Leu)は、好ましくは、Nle(ノルロイシン)又はCha(3‐シクロヘキシルアラニン)によって置換することができ、セリン(S/Ser)は、好ましくは、Hse(ホモセリン)によって置換することができ、システイン(C/Cys)は、好ましくは、Hcy(ホモシステイン)によって置換することができ、ヒスチジン(H/His)は、好ましくは、Hhs(ホモヒスチジン)又は3‐MH(3‐メチルヒスチジン)によって置換することができ、フェニルアラニン(F/Phe)は、好ましくは、Phg(2‐フェニルグリシン)で置換することができ、プロリン(P/Pro)は、好ましくは、Hyp(4‐ヒドロキシプロリン)で置換することができる。
【0062】
従って、ペプチドの機能的に同等の変異体は、以下のペプチド:
【0065】
から選択されるペプチドと比較して、70%超の配列同一性、例えば、75%超の配列同一性、好ましくは、80%超の配列同一性、例えば、85%超の配列同一性、最も好ましくは、90%超の配列同一性、例えば、93、94、95、96、97、98、又は99%を有するペプチドである。
【0066】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、以下のように決定される。最初に、アミノ酸配列は、例えば、BLASTIバージョン2.0.14及びBLASTPバージョン2.0.14を含むBLASTZの独立型由来のBLAST2 Sequences(Bl2seq)プログラムを使用して、配列番号1と比較される。このBLASTZの独立型は、米国政府の国立生物工学情報センターのウェブサイト(ncbi.nlm.nih.gov)から入手することができる。Bl2seqプログラムを使用する方法を説明する使用説明書は、BLASTZに付属のリードミー(readme)ファイルに見出すことができる。Bl2seqは、BLASTPアルゴリズムを使用して、2つのアミノ酸配列間の比較を実施する。2つのアミノ酸配列を比較するために、Bl2seqのオプションは、以下:‐iは、比較される第一アミノ酸配列を含むファイルに設定され(例えば、C:\seq1.txt);‐jは、比較される第二アミノ酸配列を含むファイルに設定され(例えば、C:\seq2.txt);‐pは、blastpに設定され;‐oは、任意の所望するファイル名に設定され(例えば、C:\output.txt);及びすべての他のオプションは、それらのデフォルト設定の状態に設定される、のように設定される。例えば、以下のコマンド:C:\Bl2seq−ic:\seq1.txt−jc:\seq2.txt−pblastp−oc:\Output.txtは、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを生成するために使用することができる。仮に2つの比較された配列が、相同性(homology)を共有する場合は、次に、指定された出力ファイルは、整列配列(aligned sequence)として、相同性のそれらの領域を示す。仮に2つの比較された配列が、相同性を共有しない場合、次に、指定された出力ファイルは、整列配列を示さない。一旦整列されると、一致数は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が、両配列において示されている位置の数を数えることにより決定される。
【0067】
パーセント同一性は、識別される配列に示されている配列の長さで一致数を割り、続いて生じた値に100を乗じることによって決定される。例えば、配列が、仮に配列番号1に示された配列(配列番号1に示された配列の長さは、18である)と比較され、そして一致数が16である場合、その結果、当該配列は、配列番号1に示された配列に対して、89%のパーセント同一性を有する(すなわち、16÷18
*100=89)。
【0068】
さらに、他のポリペプチド、例えば、精製を簡単にするためのグルタチオン‐S‐トランスフェラーゼ、プロテインA、オリゴ‐ヒスチジンタグへの、又は抗体、例えば、Mycタグエピトープによって認識されるエピトープへの、本発明によるペプチドの融合は、本発明にまた含まれる。
【0069】
例えば、ペプチドの検出又は分離に有用である、又はペプチドの細胞取り込みの促進に有用である他の望ましい特徴を含む融合がまた、本発明に含まれる。そのような融合パートナーは、ビオチン部分、ストレプトアビジン部分、放射性部分、小さなフルオロフォア若しくは緑色蛍光タンパク質(GFP)フルオロフォアのような蛍光部分、免疫原性タグ、脂溶性分子、又はペプチドの細胞取り込みを促進することができるポリペプチドドメインである。
【0070】
本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体は、例えば、PEG化、アミド化、エステル化、アシル化、アセチル化及び/又はアルキル化による化学修飾又は誘導体化アミノ酸をまた含むことができる。
【0071】
PEGに関して様々な連結戦略が存在し、そして含まれるべきである。例えば、PEGは、N‐末端アミノ基に結合することができ、又は反応性のアミノ若しくはヒドロキシル基(Lys、His、Ser、Thr、及びTyr)を有するアミノ酸残基に直接、若しくはリンカーとしてγ‐アミノ酪酸を使用することによって結合することができる。PECは、カルボキシル(Asp、Glu、C‐末端)、又はスルフヒドリル(Cys)基とまた共役することができる。
【0072】
本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体は、側鎖官能基との反応により生成されるアミノ酸の化学誘導体をまた含むことができる。そのような誘導体化分子は、遊離アミノ基が、誘導体化されて、アミン塩酸塩、p‐トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ(carboxybenzoxy)基、t‐ブチル‐オキシカルボニル基、クロロアセチル基、又はホルミル基を形成する分子を含む。遊離カルボキシル基は、誘導化されて、塩、メチル及びエチルエステル、又は他の種類のエステル及びヒドラジドを形成することができる。遊離ヒドロキシル基は、誘導体化されて、O‐アセチル、又はO‐アルキル誘導体を形成することができる。
【0073】
本発明によるペプチドの機能的に同等の変異体は、ペプチドのペプチド模倣変異体(peptidomimetic variant)をまた含むことができる。ペプチド模倣は、ペプチドの構造及び特定の特徴を模倣する化合物である。例えば、ペプチド模倣は、逆(‐CO‐NH)結合を有するペプチドを含む。さらに、ペプチド模倣は、アミノ酸残基が、通常のアミド結合を置換するγ(CH
2NH)結合によって結合される変異体を含む。さらに、ペプチド模倣は、オメガ‐アミノ酸をまた含み、ここで、アミノ‐及びカルボキシル‐基は、可変長のポリメチレン単位によって分離される。
【0074】
本発明によるペプチドは、修飾、例えば、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化又はチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニア又はメチルアミンで)、及びペプチドのN‐又はC‐末端領域が、エキソタンパク質分解(exoproteolytic)消化に対する感受性を減らすためにブロック遮断される他の末端修飾を含むことができる。さらに、N‐末端のアセチル化、及びC‐末端のアミド化によって、ペプチドは、末端で非荷電になる。受容体がLFの対応する配列(N‐及びC‐末端の電荷は存在しない)に結合すると仮定すると、キャップされたペプチド(capped peptide)は、より良好に結合するはずである。というのも、それらは、未キャップのペプチド(uncapped peptides)よりも本来のタンパク質にこの点において似ているからである。
【0075】
本発明によるペプチドは、Pasupuletiら、Biochim Biophys Acta 2009, 1790:800-8によって記載されるように、作用強度を増加するために、トリプトファンでC‐末端に末端タグ化(end‐tagged)することができる。
【0076】
さらに、存在する場合には、ペプチド中のシステイン残基は、アセトアミドメチル‐システインにより置換することができる。さらに、本発明によるペプチドは、配列中の2つのシステインの間のジスルフィド架橋の構築によって得られる、環状形態でもよい。さらに本発明によるペプチドは、ラクタム形成を含むことができる。
【0077】
本発明によるペプチドは、感染、炎症、腫瘍、疼痛、創傷、及び/又は瘢痕の治療及び/又は予防のために好適である。本明細書中で使用される用語「治療(treatment)」は、病状、疾患進行、又は他の異常な状態の悪影響を治癒すること(curing)、好転すること(reversing)、軽減すること(attenuating)、緩和すること(alleviating)、最小限にすること(minimising)、抑制すること(suppressing)、又は食い止めること(halting)を意味し、そして用語「予防(prevention)」は、病状又は疾患進行又は他の異常な又は有害な症状を発症するリスクを最小限にすること、軽減すること(reducing)、又は抑制することを意味する。
【0078】
本発明によるペプチド又は医薬品又は医療機器で治療できる感染は、すべての種類の病原体、例えば、細菌、ウィルス、真菌などによって引き起こされる感染を含む。本発明によるペプチドは、医療機器関連感染を軽減し/予防するために様々な医療機器製品を被膜し/処理するために使用されてもよい。
【0079】
様々な種類の炎症を治療することもできる。炎症は、とりわけ、組織及び器官の異常な「発赤(redness)」及び腫脹、患部の疼痛及び発熱、毛細血管拡張、白血球浸潤などにより特徴付けられる複雑な現象である。炎症は、細菌及び他の有害物質への暴露、及び物理的な損傷によって主に引き起こされる。アレルギー性炎は、アレルギー性ぜんそく、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、及びいくつかの眼のアレルギー疾患を含む、いくつかの障害又は病状の重要な病態生理学的特徴である。
【0080】
従って、本発明の1つの態様は、感染、炎症、腫瘍、疼痛、創傷、及び瘢痕の治療及び/又は予防方法を提供し、ここで本発明のペプチドの有効量、及びその機能的に同等の変異体が、患者に投与される。前記ペプチドは、経口投与、全身投与、非経口投与、局部投与及び局所投与用に処方されてもよい。さらに、前記ペプチドは、食料品中に含まれてもよく、又は乳児用食品(infant formula food)中に含まれてもよい。
【0081】
さらに、本発明の他の態様は、感染、炎症、腫瘍、疼痛、創傷、及び瘢痕の治療及び/又は予防における使用のための本発明のペプチドを提供する。前記ペプチドは、経口投与、全身投与、非経口投与、局部投与又は局所投与用に処方されてもよい。さらに、前記使用のためのペプチドは、食料品中に含まれてもよく、又は乳児用食品中に含まれてもよい。
【0082】
さらに、本発明の他の態様は、感染、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防のための医薬品又は医療機器の製造のための、本発明のペプチドの使用を提供する。前記医薬品は、経口投与、全身投与、非経口投与、局部投与、又は局所投与用に処方されてもよい。さらに、医薬品若しくは医薬製品/医療機器は、食料品中に含まれてもよく、又は乳児用食品中に含まれてもよい。
【0083】
炎症は、多くの形態を有し、そして様々な異なるサイトカイン及び他の化学的なシグナルによって媒介される。炎症のこれらのメディエーターは、腫瘍壊死因子‐α(TNF‐α)、インターロイキン‐1(IL‐1)、インターロイキン‐4(IL‐4)、インターロイキン‐5(IL‐5)、インターロイキン‐6(IL‐6)、インターロイキン‐8(IL‐8)、インターフェロン‐γ(IFN‐γ)、及び様々なコロニー刺激因子(CSF)が挙げられる。
【0084】
感染の阻害及び炎症反応の調節を介して、本発明のペプチドは、創傷及び瘢痕形成の治療及び/又は予防のために好適である。上述したように、本発明によるペプチドはまた、腫瘍の治療のために好適である。
【0085】
本発明によるペプチドは、それらが、医療機器、医薬品、又は医薬組成物として使用されるか、又は医療機器、医薬品、又は医薬組成物中に含まれるかのいずれかでもよい。本発明による医薬品又は医療機器又は医薬組成物はまた、医薬製剤の製造又は製剤の投与を容易にするために使用される物質を含んでもよい。そのような物質は、当業者に周知であり、例えば、医薬的に許容されるアジュバント、担体、及び防腐剤でもよい。
【0086】
従って、本発明の1つの態様は、本発明によるペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0087】
本発明の他の態様は、感染、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防における使用のための本発明によるペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0088】
本発明によるペプチドは、経口投与、全身投与、非経口投与、局部投与、又は局所投与のいずれか用に処方されてもよい。
【0089】
本発明によるペプチド、医薬品、医療機器及び医薬組成物は、患者に経口的、全身的、非経口的、局部的又は局所的のいずれかで投与することができる。
【0090】
本明細書中で使用される用語「患者(patient)」は、病状、疾患進行、又は他の異常な若しくは有害な症状のリスクがある、又は病状、疾患進行、又は他の異常な若しくは有害な症状を患っている任意の者に関する。
【0091】
全身投与は、例えば、尿路感染症、大腸炎及び腫瘍の治療のために好適である。全身投与は、経口、経鼻、経肺、経口咽頭、静脈内、動脈内、腔内、筋肉内、皮下、経皮、坐薬(直腸を含む)、又は当業者に公知の他の経路によって行うことができる。
【0092】
局部投与は、例えば、皮膚及び皮膚組織感染症及び炎症、呼吸器感染、粘膜などにおけるすべての感染及び炎症の治療のために好適である。局部投与は、局所、経皮、経口、経鼻、経膣、眼、耳、肺、又は経口咽頭経路によって行われてもよい。局部感染又は炎症の治療のために、本発明によるペプチド又は医薬品は、例えば、ゲル、クリーム、軟膏、溶液又はペースト、吸入粉末/溶液、耳又は点眼剤/懸濁液/軟膏中に含まれてもよい。
【0093】
本発明の方法において、本発明によるペプチドの有効量が、患者に投与される。本明細書中で使用される用語「有効量(effective amount)」は、病状、疾患進行又は他の異常な又は有害な症状を治療し又は予防するために十分な量に関する。
【0094】
本発明のペプチド又は医薬品又は医療機器及び方法は、尿路感染及び大腸炎、皮膚及び皮膚組織感染及び炎症、外耳、外耳道、内耳及び眼及び呼吸器系における感染及び炎症、慢性及び急性創傷の治療及び/又は予防のために、特に非常に好適であるが、いくつかの他の炎症及び感染疾患、例えば、炎症性腸疾患、関節リウマチ、関節症、HIV‐1ウィルスによって引き起こされる症状、CMVウィルスによって引き起こされる症状、及び真菌、例えば、カンジダ アルビカンス(Candida albicans)及びカンジダ クルセイ(Candida Krusei)などのカンジダ(Candida)種、アスペルギルス(Aspergillus)及びクリプトコッカス ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)によって引き起こされる任意の症状がまた、本発明に従って治療可能である。この列挙は、本発明の範囲を限定しない。
【0095】
本発明によるペプチド、医薬品、医療機器及び方法はまた、そのような合併症を誘導する増加したリスクを有する患者において、炎症又は感染疾患を発症するリスクを軽減することによる予防医療のために非常に好適である。
【0096】
本発明のペプチドは、抗炎症及び免疫調節性の治療に好適であり、限定されないが以下:
1)一般に、炎症及び/又は炎症から生じる病状の治療、及び具体的には、
2a)腸;クローン病(Morbus Crohn)、大腸炎、潰瘍性大腸炎、
2b)関節;関節リウマチ、関節炎、関節症、筋痙攣、筋断裂、筋障害、筋挫傷、筋捻挫を含む筋肉の局所性障害、
2c)皮膚;乾癬、湿疹(湿疹(excema))皮膚炎、ざ瘡、
2d)心臓;心膜炎、心内膜炎、心不全、
2e)疼痛;(さらに以下の2fで特定)、
2f)神経系;アルツハイマー、多発性硬化症、手根管症候群、椎間板ヘルニア、頸部リゾパシー(Cervical rhizopathy)、ベル麻痺(Bells palsy)、急性脊髄損傷、脊髄圧迫、脊柱管狭窄、帯状疱疹後神経痛、ウィルス性脳炎、ウィルス性髄膜炎、メニエール病、ポリオ及びポリオ後合併症(postpolio complication)、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパチー、多発性ニューロパチー、三叉神経痛(Trigminal neuralgia)、慢性てんかん性疾患、
2g)感覚器官;緑内障、
2h)粘膜表面;(化学/放射線療法の結果生じる炎症)、
2i)アレルギー;
2j)自己免疫疾患
が例示される。
【0097】
本発明のペプチドは、さらに症状及び処置に関連する創傷及び瘢痕の予防及び治療のために好適であり、限定されないが、以下:
3a)様々な組織、例えば、皮膚、筋肉、腱、神経組織、血管、及び体の様々な部位、例えば、眼、耳、声帯、手、脊髄、腹腔内、胸腔内、頭蓋腔内、口腔、婦人科医学に関する処置、子宮内膜症、包茎における外科的処置、
3b)ざ瘡、
3c)肥厚性瘢痕及びケロイド、
3d)胸膜炎、
3e)腹膜透析、
3f)急性及び慢性創傷
が例示される。
【0098】
本発明のペプチドは、さらに抗血管新生効果を有することが確信されており、そして従って、以下:
4a)がん、
4b)関節リウマチ
の治療のために好適である。
【0099】
本発明のペプチドは、抗感染効果を有し、そして以下:
5a)抗菌効果;
上及び下気道(扁桃炎、副鼻腔炎、肺炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症など)、
眼の感染(例えば、結膜炎)、
尿路感染、
性感染疾患(コンドームの抗菌コーティングを含む)、
生殖管(膣症、膣炎、子宮頸炎、子宮内膜炎、PID)、
消化管感染(GIで開始される全身性の感染)、
中枢神経系感染、
皮膚及び皮膚組織の感染、例えば、手術部位感染、蜂巣炎及び膿瘍、二次的に感染した皮膚病、膿痂疹、及び癰又はせつ腫症(グラム陽性及びグラム陰性細菌、ブドウ球菌(staphylococcus)、例えば、MRSA、ストレプトコッカス(streptococcus)、院内(nosocomial)、創傷、熱傷を含む)を含む二次的に感染した外傷性病変(secondarily infected traumatic lesion)、筋肉の感染、関節の感染(例えば、敗血症性関節炎)、骨の感染、並びに造血系の感染、
歯根膜炎、歯肉炎を含む、口、眼、内及び外耳、並びに外耳道に関連する感染、
5b)抗ウィルス効果;
上及び下気道、
性感染疾患、
消化管感染(GIで開始される全身性の感染)、
中枢神経系感染、
5c)抗真菌効果;
上及び下気道(例えば、アフタ、皮膚粘膜カンジダ症)、
尿生殖路(例えば、外陰膣カンジダ症、亀頭炎)、
消化管感染(GIで開始される全身性の感染)、
中枢神経系感染、
皮膚及び皮膚組織の感染(例えば、皮膚粘膜カンジダ症)、皮膚病、湿疹
の予防及び治療のために好適である。
【0100】
最も好ましくは、本発明のペプチドは、膿痂疹、火傷、感染した擦過傷、感染した裂傷、擦傷、丹毒、蜂巣炎、膿瘍、フルンケル、癰、閉鎖創、手術部位感染、二次的に感染した皮膚炎:アトピー性皮膚炎、乾癬、及びアレルギー性接触皮膚炎、動物咬傷、カテーテル関連感染の治療、予防法(prophylaxis)及び/又は予防のために使用される。
【0101】
本発明によるペプチド、医薬品、医療機器、及び方法は、単独、お互いに組み合わせて、従来の治療と組み合わせてのいずれかで使用されてもよい。
【0102】
本発明によると、基礎疾患、低出生体重、又は薬物治療によるそのような症状のリスクが増加している患者における感染及び/又は炎症を減少することを意図する任意の種類の食品又は飲料中に、本発明のペプチドを有効量で含むことができる。例えば、乳児において、細菌、ウィルス、又は真菌によって生じる炎症によって引き起こされる体重減少のような、細菌の有害な影響を阻害することを意図する乳児用食品中に、本発明のペプチドを有効量で含むことができる。本発明によるペプチドが、例えば、栄養目的のために、食料品中に使用される場合、天然起源のペプチドを使用することが特に好ましい。
【0103】
本発明によるペプチドは、抗菌効果を有するので、それらはまた、様々な食料品及び医薬品、例えば、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、溶液、乳液などにおいて、防腐剤として使用することができる。
【0104】
本発明は、以下の実施例において、これからさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定するものと決して見なされるべきではない。
【実施例】
【0105】
実施例1.ペプチドスクリーニング1
2つのクラスのラクトフェリン由来のペプチドを、設計しそして試験した。活性ペプチドを、すべてのクラスで識別した。
【0106】
新規ペプチド変異体を、配列番号1と類似している配列を有するペプチドの測定した抗炎症及び抗菌活性に基づいて、設計した。さらに、これらのペプチドに対して対応する配列の構造的考察を、考慮に入れた。特に、これは、ペプチドのヘリシティを維持し、そして強化することを意図する。第一のスクリーニングラウンドに関して、クラス1ペプチドの新規変異体をN‐キャップモチーフ及び(i,i+3)及び(i,i+4)ロイシンスペーシングを導入することによって設計し、両方ともヘリックスの安定性を向上することを示唆する。さらに、ヘリックスの両親媒性特徴を、特定の位置で極性正電荷アミノ酸の挿入によって修飾した。クラス2由来のペプチドの新規変異体を、正電荷及びペプチドの疎水性領域を増加することによって設計した。従って、ペプチドの両親媒性を増加した(
図2)。新規設計に基づいて、約50のペプチドをPEP screen library(Sigma)として発注し、そして抗炎症及び抗菌活性の両方について試験した。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
抗炎症活性をLPSで刺激したTHP‐1細胞におけるTNF‐α産生の阻害として測定した。
ヒト単球に相当するTHP‐1細胞株(TIB‐202;ATCC,Manassas,VA,USA)を、10%ウシ胎児血清(FBS;PAA Laboratories GmbH,Pasching,Austria)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Sigma‐Aldrich,St.Louis,MO,USA)、及び20mMのHEPES(PAA,Laboratories GmbH,Pasching,Austria)を補充したRPMI1640(PAA Laboratories GmbH,Pasching,Austria)中で保持した。
【0110】
細胞密度を10
6細胞/mlに調整し、そして100μlの懸濁液を、96ウェル細胞培養プレート(Sarstedt,Numbrecht,Germany)に、ウェルごとに添加した。単球をマクロファージ様細胞に分化するために、細胞を10ng/mlのPMA(13‐酢酸12‐ミリスチン酸ホルボール;Sigma‐Aldrich,St.Louis,MO,USA)で、48時間処理した。その後、細胞を、5%熱不活化FBSを含む以外は、上記特定された培地中に、0.1ng/mlのリポポリサッカライド(LPS;E.coli血清型O55:B5;Sigma‐Aldrich,St.Louis,MO,USA)の添加によって刺激した。LPSの添加30分後、ペプチド(40μM)を、3連で添加した。37℃、5%CO
2及び湿った環境で、6時間のインキュベーション後、細胞上清を回収し、遠心分離し、そしてELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)によってTNF‐α含量を分析するまで、−20℃で冷凍した。ペプチド添加なしで刺激されたTNF‐αレベルを100%に設定し、そして基礎分泌を0%に設定して、結果を平均相対分泌(%)として示す(表2)。
【0111】
【表3】
【0112】
抗菌活性を、最小殺菌濃度(Minimal microbicidal concentration),MMC99,アッセイを使用する黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する殺菌効果として測定した。
5%のウマ脱線維血液(National Veterinary Institute(SVA),Uppsala,Sweden)を補充した血液寒天プレート(Columbia agar(Oxoid,Basingstoke,UK)上で培養した黄色ブドウ球菌(S.aureus)(#1800;CCUG,Gothenburg,Sweden)を、ブレインハートインフュージョン培地(3.7%のBHI;Difco,BD Diagnostics,Franklin Lakes,NJ,USA)に移し、そして37℃で一晩、250rpmで振とう機においてインキュベートした。培養物を、その後、新鮮なBHI培地で1:10に希釈し、そしてさらに2時間インキュベートして、対数増殖期に達した。細菌をペレット化し、そして600nmでの光学濃度を測定することによって推定された10
7細菌/mlの濃度に、1%BHI培地(超純水で100倍に希釈したBHI培地)中に懸濁した。ペプチドを、1%BHI培地において、160μM〜1,25μMまで、2倍ステップによって段階希釈した。ペプチド(100μl)を、その後、37℃で2時間、細菌(5μlの10
7細菌/ml)とインキュベートした。懸濁液の液滴(5μl)を、血液寒天プレートに置いた。血液寒天プレートを、37℃で一晩インキュベートした。MMC
99値(すなわち、生菌の99%減少を達成するために必要な最小ペプチド濃度)を、記録した(表3)。アッセイにおいて使用した細菌懸濁液の濃度は、血液寒天プレート上の生菌数により確認した。
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
実施例2.ペプチドスクリーニング2
この第一のスクリーニングラウンド由来のペプチドに関するTNF‐α活性を、ProPHECY(商標)ソフトウェア(Saromics,Lund,Sweden)を使用して多変量解析に供した。多くの記述子を、それぞれのペプチドに関して計算した。TNF‐α活性は、その結果、これらの記述子と相関していた。独立した回帰モデルを、それぞれのペプチドクラスのために作成した。さらに、すべてのペプチドクラスを考慮したグローバルモデルをまた、作成した。回帰モデルの分析は、改善したTNF‐α活性に貢献するいくつかの変数を示唆した。第二のスクリーニングラウンドに関する新規ペプチドを、主に電荷調節、両親媒性、及び疎水性に基づいて、それぞれのペプチドクラスのために示唆した。新規設計に基づいて、約80のペプチドを、PEP screen library(Sigma)として発注し、そして抗炎症及び抗菌活性の両方について試験した。
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
抗炎症活性をLPSで刺激したTHP‐1細胞におけるTNF‐α産生の阻害として測定した。
ヒト単球に相当するTHP‐1細胞株(TIB‐202;ATCC,Manassas,VA,USA)を、10%ウシ胎児血清(FBS;PAA Laboratories GmbH,Pasching,Austria)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Sigma‐Aldrich,St.Louis,MO,USA)、及び20mMのHEPES(PAA,Laboratories GmbH,Pasching,Austria)を補充したRPMI1640(PAA Laboratories GmbH,Pasching,Austria)中で保持した。
【0119】
細胞密度を10
6細胞/mlに調整し、そして100μlの懸濁液を、96ウェル細胞培養プレート(Sarstedt,Numbrecht,Germany)に、ウェルごとに添加した。単球をマクロファージ様細胞に分化するために、細胞を10ng/mlのPMA(13‐酢酸12‐ミリスチン酸ホルボール;Sigma‐Aldrich,St.Louis,MO,USA)で、48時間処理した。その後、細胞を、5%熱不活化FBSを含む以外は、上記特定された培地中に、0.1ng/mlのリポポリサッカライド(LPS;E.coli血清型O55:B5;Sigma‐Aldrich,St.Louis,MO,USA)の添加によって刺激した。LPSの添加30分後、ペプチド(40μM、10μM及び4μM)を、3連で添加した。6時間のインキュベーション後、細胞上清を回収し、遠心分離し、そしてELISA(R&D Systems,Minneapolis,MN,USA)によってTNF‐α含量を分析するまで、−20℃で冷凍した。ペプチド添加なしで刺激されたTNF‐αレベルを100%に設定し、そして基礎分泌を0%に設定して、結果を平均相対分泌(%)として示す(表5)。
【0120】
【表8】
【0121】
【表9】
【0122】
抗菌活性を、最小殺菌濃度(Minimal microbicidal concentration),MMC99,アッセイを使用する黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対する殺菌効果として測定した。
5%のウマ脱線維血液(National Veterinary Institute(SVA),Uppsala,Sweden)を補充した血液寒天プレート(Columbia agar(Oxoid,Basingstoke,UK)上で培養した黄色ブドウ球菌(S.aureus)(#1800;CCUG,Gothenburg,Sweden)を、ブレインハートインフュージョン培地(3.7%のBHI;Difco,BD Diagnostics,Franklin Lakes,NJ,USA)に移し、そして37℃で一晩、250rpmで振とう機においてインキュベートした。培養物を、その後、新鮮なBHI培地で1:10に希釈し、そしてさらに2時間インキュベートして、対数増殖期に達した。細菌をペレット化し、そして600nmでの光学濃度を測定することによって推定された10
7細菌/mlの最終濃度に、1%BHI培地(超純水で100倍に希釈したBHI培地)中に懸濁した。ペプチドを、1%BHI培地又は50%熱不活化擬似創傷滲出液(超純水で2回希釈した、生理食塩水中に0.1%のペプトン(Oxoid,Basingstoke,UK)(1つの部分)及び胎児ウシ血清(1つの部分)を含む、SWF)のいずれかにおいて、400μM〜0.78μMまで2倍ステップによって段階希釈した。ペプチド(100μl)を、その後、37℃で2時間、細菌(5μlの10
7細菌/ml)とインキュベートした。懸濁液の液滴(5μl)を、血液寒天プレートに置いた。血液寒天プレートを、37℃で一晩インキュベートした。MMC
99値(すなわち、生菌の99%減少を達成するために必要な最小ペプチド濃度)を、記録した(表6)。アッセイにおいて使用した細菌懸濁液の濃度は、血液寒天プレート上の生菌数により確認した。
【0123】
【表10】
【0124】
【表11】
【0125】
クラス2ペプチド
ペプチドのいくつかの変異体を、増加した電荷で設計し、そして疎水性領域を追加した。特に、両親媒性の調節は、高い活性を有するペプチドを達成するために重要であった。
【0126】
クラス2ペプチド配列及び抗炎症アッセイ由来の結果を使用する主成分分析(ProPHECY(商標))に基づいて、活性ペプチドの3つの異なるクラスターを識別した(
図3)。クラスターは、スクリーニングラウンド2由来のペプチドのみを含む。それぞれのクラスター由来の最も活性なペプチドを、表7にまとめる。
【0127】
図3の散布図は、ペプチド特性の主成分分析に基づく。ペプチドは整列され、そしてそれぞれのアミノ酸の物理化学的特性が考慮される。プロットにおいて互いに隣接しているペプチドはまた、より高い類似度を有していることが期待される。すなわち、ペプチドは、ほとんどの位置において同一又は類似するアミノ酸を有する。それに応じて、遠位のペプチドは、より多くの異なる配列を有することが期待される。例えば、ペプチド232及び244は、非常に隣接しており(クラスターA参照)、そしてそれらは、3つの位置(232は、R、R及びMを有し、並びに244は、K、K及びW有する(R及びK、並びにM及びWは、あまり異ならない))で異なる。これは、8つの位置で異なることに加えて、長さにおいて2つの残基が異なるペプチド240及び249(それぞれクラスターB及びC)と比較することができる。従って、スコアプロットは、ペプチド間の物理化学的類似性の概要を与える。
【0128】
【表12】
【0129】
表7中の結果の概要は、高い活性のために重要である位置及び変異を識別するのをより容易にする。これらのペプチドにおいて、いくつかの位置を、正に荷電したアミノ酸、例えば、Lys(K)及びArg(R)で置換した。さらに、いくつかの位置を、ペプチド末端における疎水性を増加し、そして両親媒性を増加し及び調節するために、疎水性アミノ酸に変更した。ProPHECY(商標)分析は、位置1及び2、並びに位置5で、正に荷電したアミノ酸を有することが有利であることを示す。さらに、疎水性アミノ酸は、位置7、8及び12において存在することが有利である。これらのすべてのペプチドは、位置3においてLeu(L)を有する。両親媒性は、従って、仮に位置7、8及び12が、疎水性残基に変更され、又は増加した疎水性を有する残基に変更された場合(ペプチド244においてMetからTrp)、向上する。
【0130】
クラスターB中のペプチドを、正電荷及び疎水性を増加するために、1つ又は2つの残基で、N‐末端及びC‐末端両方において伸長した。ペプチド240は、正電荷及び両親媒性がこのペプチドに関してより低いので、活性が低い。ペプチド239及び241の最も活性なものは、位置2及び5において正に荷電したアミノ酸、及び位置3及び7において疎水性アミノ酸を有する。
【0131】
クラスターCペプチドにおいて、両親媒性は、ペプチドに沿って表面の他の部分に移動し、そして「回転した(rotated)」。これは、位置1、5、9及び12を疎水性アミノ酸で置換し、そして位置2、3、7及び11を正に荷電したアミノ酸で置換することによって達成される。
【0132】
最後に、クラスターA及び特にクラスターBに属する活性クラス2ペプチドのいくつかは、ほぼ生理食塩濃度においてさえ、高い抗菌効果を示す。
【0133】
実施例3.インビトロ抗菌効果
ペプチド232(配列番号78)、及び220(配列番号67)の抗菌効果を、黄色ブドウ球菌(S.aureus)(CCUG1800)、MRSA(CCUG41879)、緑膿菌(P.aeruginosa)(ATCC15442)、大腸菌(CCUG31246)、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)(CCUG4207)、P.アクネス(CCUG1794T)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)(ATCC12228)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)(ATCC13883)、A.バウマニ(A.baumannii)(ATCC19606)、及びC.アルビカンス(C.albicans)(ATCC64549)に対するMMC
99(最小殺菌濃度)アッセイによって分析した。ペプチドを、BiopeptideCompany(San Diego,CA,USA)及びBachem AG(Bubendorf,Switzerland)から購入し、そして結果を、表8A及び8Bにそれぞれ示す。
【0134】
ペプチドを、2つの異なるアッセイ培地、1%BHI培地(ブレインハートインフュージョン培地)又は50%熱不活化擬似創傷滲出液(SWF)で、段階希釈し、そしてその後、2時間微生物とインキュベートした。懸濁液の液滴を血液寒天プレートに置いた。MMC
99値、すなわち、生存能力のある微生物の99%減少を達成するために必要な最小ペプチド濃度を、記録した。表8に示したように、すべてのペプチドは、感染において頻繁に表れる微生物を死滅させる能力を有する。
【0135】
【表13】
【0136】
【表14】
【0137】
実施例4.ラットの切除創傷モデルにおけるインビボ抗菌効果
ペプチド232(配列番号78)、及びペプチド220(配列番号67)のインビボ抗菌効果を、ラットの切除創傷モデルにおいて検討した。創傷を、2時間、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)で接種し、続いて、細菌の終了及び収集前2時間、ペプチド又は対照(H
2O)の単回投与を行った。すべてのペプチドは、顕著な抗菌効果を示した(
図4)。
【0138】
実施例5.ブタの感染した創傷におけるインビボ抗菌効果
ペプチド232(配列番号78)、及びペプチド220(配列番号67)の抗菌効果を、ブタの皮膚のエクスビボモデルにおいて検討した。創傷を、PBS/血清 50/50の存在下、黄色ブドウ球菌(S.aureus)で接種した。接種2時間後、創傷を、ペプチド又はプラセボ(H
2O)の単回投与で処理した。4時間後、処理細菌を収集し、そしてそれぞれの創傷の生菌数を測定した。結果は、局部に適用した場合、ペプチドが、非常に有効な抗感染剤であることを示すラットにおける知見を裏付けた(
図5)。