【文献】
HAVERSEN L,STRUCTURE-MICROBICIDAL ACTIVITY RELATIONSHIP OF SYNTHETIC FRAGMENTS DERIVED 以下備考,ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,2010年 1月,V54 N1,P418-425,FROM THE ANTIBACTERIAL ALPHA-HELIX OF HUMAN LACTOFERRIN
【文献】
ODELL EDWARD W,ANTIBACTERIAL ACTIVITY OF PEPTIDES HOMOLOGOUS TO A LOOP REGION IN HUMAN LACTOFERRIN,FEBS LETTERS,NL,ELSEVIER,1996年 1月 1日,V382,P175-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
膿痂疹、熱傷創、感染性擦り傷、感染性裂傷、表皮剥離、丹毒、小胞炎、膿瘍、癰(furuncles)、癰(carbuncles)、縫合傷、外科手術部位感染症、 二次的感染性皮膚病:アトピー性皮膚炎、乾癬、及びアレルギー性接触皮膚炎、動物咬傷及びカテーテル関連感染症の治療、予防、又は抑制のための、請求項1記載のペプチドを含む医薬組成物。
【背景技術】
【0002】
背景技術
ラクトフェリンは、77 kDaの分子量を有する単鎖金属結合糖タンパク質である。抗菌性を引き起こすラクトフェリンの構造的ドメインは、ラクトフェリシンと呼ばれるぺプシン開裂フラグメントであることが判っている(例えば、ラクトフェリンの殺菌ドメインの同定, Biochim. Biophys. Acta 1121: 130-136, 1992, 及びBellamy W.他, ウシラクトフェリンのN-末端領域から得られた強力な殺菌ペプチドであるラクトフェリンBの抗菌スペクトル, J. Appl. Bact. 73: 472-479, 1992参照)。ラクトフェリン受容体は、単球及びマクロファージ、レクチン-刺激ヒト抹消血リンパ球、刷子縁細胞、及び腫瘍細胞株を含む多くの種類の細胞において見出されている。
【0003】
数個の特許公開公報は、感染症又は炎症の治療のためのラクトフェリンの可能な使用を記載している。国際公開第WO 98/06425には、例えば、ラクトフェリン及びラクトフェリシンが、感染症、炎症及び腫瘍の治療及び予防のために使用できることが開示されている。
【0004】
EP 629 347は、(A)ラクトフェリシン加水分解物及び/又はラクトフェリン由来の1以上の抗菌ペプチド、及び(B)金属キレートタンパク質、トコフェロール、シクロデキストリン、グリセリン脂肪酸エステル、アルコール、EDTA又はその塩、アスコルビン酸又はその塩、クエン酸又はその塩、ポリリン酸又はその塩、キトサン、システイン、及びコリン酸から成る群より選ばれる1以上の化合物、をその有効成分として含む抗菌剤を記載している。
【0005】
この抗菌剤は、製品の処理、例えば食品及び医薬を安全に処理することを意図している。この刊行物にしたがう抗菌剤は、したがって、新規な保存料である。該刊行物では、いくつかのペプチド配列は記載され、その中には、さらに以下に記載するいくつかの重要な相違があるが、本発明のペプチドに類似しているものもある。
【0006】
米国特許第5,304,633号明細書は、ヒト及びウシのラクトフェリンの加水分解物から単離された抗菌ペプチドを開示する。ヒトラクトフェリンのアミノ酸12〜47及び17〜41に相当するペプチドの単離が具体的に開示されている。
【0007】
日本国特許第7145196号明細書は、ラクトフェリンの加水分解による抗菌性ペプチドの調製を記載する。ヒトラクトフェリンのアミノ酸17〜41に対応するペプチドの調製が具体的に記載されている。
【0008】
日本国特許第8040925号明細書は、ラクトフェリシン由来ペプチドを含む医薬組成物、及び角膜損傷、特に角膜炎の治療におけるその使用、を開示している。ヒトラクトフェリンのアミノ酸17〜41、12〜58及び19〜38に対応するペプチドが具体的に開示されている。
【0009】
日本国特許第7274970号明細書は、ヒトラクトフェリンのアミノ酸18〜42に対応するペプチドが開示されている。
【0010】
日本国特許第8143468号明細書は、ラクトフェリン由来ペプチド及びその抗潰瘍薬としての使用を記載し、ヒトラクトフェリンのアミノ酸19〜33に対応するペプチドが具体的に開示されている。
【0011】
国際公開第WO 00/01730は、ヒトラクトフェリン由来のペプチド、及び感染症及び炎症の治療のためのその使用を記載する。
【0012】
EP 1 228 097号は、ヒトラクトフェリンのすぐ隣のN-末端から得られたペプチド、及び微生物剤としてのその使用を記載する。
【0013】
EP 1151009号は、抗菌及び/又はエンドトキシン中和活性を有するヒトラクトフェリンのアミノ酸35〜50に対応する配列を含むペプチドを記載する。
【0014】
国際公開第WO 2006/047744は、少なくとも33個のアミノ酸を含み、N-末端及びC-末端の両方が4つの正に荷電したアミノ酸によって置換された、ヒトラクトフェリンのN-末端部分から得られる免疫調節ペプチドを記載する。
【0015】
国際公開第WO 2009/050279は、成熟ラクトフェリンペプチド及びその抗菌活性を記載する。
【0016】
国際公開第WO 2009/062898は、アルギニン置換ラクトフェリン、及びその抗菌及び抗炎症活性を記載する。
【発明の概要】
【0017】
発明の概要
本発明は、改善された抗菌及び/又は抗炎症活性を有する新規ペプチドに関する。本発明のペプチドは、成熟ヒトラクトフェリンのアミノ酸13〜30に対応する配列番号1:
Q-P-E-A-T-K-C-F-Q-W-Q-R-N-M-R-K-V-R (配列番号1)
のアミノ酸配列に基づいて設計される。
【0018】
本発明の第1の実施態様は、少なくとも以下のアミノ酸配列:
X1-X2-W-X4-X5-X6-M-X8-K-V-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17(配列番号2)
[式中、
X1はF、K又はRであり、
X2はQ、W又はRであり、
X4はK又はRであり、
X5はR又はKであり、
X6はN、A、V、W又はRであり、
X8はR又はKであり、
X11はR、F又はKであり、
X12はG、S、N、V、L又はHであり、
X13はS、G、T又はVであり、
X14はR、L、Y、W又はKであり、
X15はR、K又はWであり、
X16はR、K又はWであり、及び
X17はR、G、Q、V、M、F、W又はKである。]
を含むペプチド、又はその機能的等価変異体に関する。
【0019】
本発明のペプチドは、好ましくは、N-末端にアミノ酸F、W又はCをさらに含むことができる。
【0020】
当該ペプチドは、好ましくは、C-末端にアミノ酸G、R又はLをさらに含むことができる
【0021】
好ましくは、本発明の第1の実施態様にしたがうペプチドは、少なくとも以下のアミノ酸配列:
X1-X2-W-K-X5-X6-M-X8-K-V-X11-X12-X13-X14-X15-X16-X17(配列番号3)
[式中、
X1はF、K又はRであり、
X2はQ又はWであり、
X5はR又はKであり、
X6はN、A、V又はWであり、
X8はR又はKであり、
X11はR、F又はKであり、
X12はV、L又はNであり、
X13はS、G、T又はVであり、
X14はR、L、Y、W又はKであり、
X15はR、K又はWであり、
X16はR、K又はWであり、及び
X17はR、F、W又はKである。]
を含むペプチド、又はその機能的等価変異体を含む。
【0022】
本発明のペプチドは、好ましくは、N-末端にアミノ酸F、W又はCをさらに含むことができる。
【0023】
当該ペプチドは、好ましくは、C-末端にアミノ酸G、R又はLをさらに含むことができる
【0024】
より好ましくは、本発明の第1の実施態様にしたがうペプチドは、以下のアミノ酸配列:
R-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-F-H-S-Y-R-R-M-G (配列番号21)
K-Q-W-K-R-W-M-R-K-V-F-V-S-L-R-R-V-G (配列番号22)
R-Q-W-K-R-V-M-R-K-V-F-G-S-R-W-W-R-G (配列番号23)
K-Q-W-K-R-M-M-R-K-V-F-S-V-R-R-W-F-L (配列番号24)
F-R-Q-W-K-R-W-M-R-K-V-F-H-S-W-R-R-W (配列番号27)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号6)
W-F-Q-W-K-R-A-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号7)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号8)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-K-K-K-K-G (配列番号19)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-L-R-R-W-G (配列番号20)
F-R-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-Q-G (配列番号25)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-L-S-R-R-R-R-G (配列番号31)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-N-S-R-R-R-R-G (配列番号32)
F-W-W-K-K-A-M-K-K-V-K-G-T-R-R-R-R-G (配列番号34)
から選ばれるアミノ酸配列を含むペプチド、及びその機能的等価変異体、から選択される。
【0025】
最も好ましくは、本発明の第1の実施態様にしたがうペプチドは、以下のペプチド:
R-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-F-H-S-Y-R-R-M-G (配列番号21)
K-Q-W-K-R-W-M-R-K-V-F-V-S-L-R-R-V-G (配列番号22)
R-Q-W-K-R-V-M-R-K-V-F-G-S-R-W-W-R-G (配列番号23)
K-Q-W-K-R-M-M-R-K-V-F-S-V-R-R-W-F-L (配列番号24)
F-R-Q-W-K-R-W-M-R-K-V-F-H-S-W-R-R-W (配列番号27)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号6)
W-F-Q-W-K-R-A-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号7)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号8)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-K-K-K-K-G (配列番号19)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-L-R-R-W-G (配列番号20)
F-R-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-Q-G (配列番号25)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-L-S-R-R-R-R-G (配列番号31)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-N-S-R-R-R-R-G (配列番号32)
F-W-W-K-K-A-M-K-K-V-K-G-T-R-R-R-R-G (配列番号34)
、及びその機能的等価変異体から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のペプチドは、好ましくは、12〜100アミノ酸残基長、例えば好ましくは〜50アミノ酸残基、又は12〜30アミノ酸残基、例えばより好ましくは12〜25アミノ酸残基、例えば最も好ましくは12〜20アミノ酸残基、例えば12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸残基を有する。
【0028】
本発明にしたがうペプチドは、標準的な20個の遺伝的にコードされたアミノ酸を含む。それらは、天然のV型と比べて、「D」型での対応する立体異性体中に1以上のアミノ酸を含んでもよい。
【0029】
記載では、1文字又は3文字記号がアミノ酸を示すために使用される。
【0030】
当業者に周知のこれらの記号は、以下の意味を有する:A = Ala = アラニン、C = Cys = システイン、D = Asp = アスパラギン酸、E = Glu = グルタミン酸、F = Phe = フェニルアラニン、G= Gly = グリシン、I- lie = イソロイシン、K = Lys = ロイシン、M= Met = メチオニン、N = Asn = アスパラギン、P = Pro = プロリン、Q = Gin = グルタミン、R = Arg = アルギニン、S = Ser = セリン、T = Thr = スレオニン、V = Val = バリン、W = Trp = トリプトファン。
【0031】
小文字は、対応するD-アミノ酸を表すために使用される。本発明のペプチドの機能性等価変異体は、1〜5個の挿入又は欠損、1、2、3、4又は5個の挿入又は欠損のような1以上のアミノ酸の挿入又は欠損を含む。
【0032】
本発明のペプチドの機能性等価変異体は、置換を含んでもよい。置換は、保存的又は非-保存的のいずれかでよい。保存的置換は、同一の種類内の別のアミノ酸による、同一の一般的な種類(例えば、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸等)内でのアミノ酸の置換である。例えば、疎水性アミノ酸は、別の疎水性アミノ酸と置換することができる、例えばTrpはLeuと置換することができる。正に荷電したアミノ酸は、別の正に荷電したアミノ酸と、例えばArgは、Lysと、1〜5個の置換、1、2、3、4又は5個の置換をすることができる。
【0033】
図1はアミノ酸の異なった種類を示している。
【0034】
本発明のペプチドの機能性等価変異体は、所望の機能的性質が当該ペプチドによって保持されている限り、他の非天然アミノ酸を含んでもよい。かかる非天然アミノ酸は、α、α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、又は特定の天然アミノ酸を模倣した他の変異体を含むことができる。
【0035】
例えば、本発明のペプチドの機能等価変異体では、リジン (K/Lys) は、好ましくは、Dap (ジアミノプロピオン酸)、Dab (2,4-ジアミノブタン酸)、Orn (オルニチン) 又はHyl (5-ヒドロキシリジン) と置換でき、アルギニン (R/Arg) は、好ましくはHar (ホモアルギニン) と置換でき、アラニン (A/Ala) は好ましくはAib (α-アミノイソブチル酸) 又はAbu (2-アミノブタン酸) と置換でき、バリン (V/Val) は好ましくはNva (ノルバリン) 又はIva (イソバリン) と置換でき、ロイシン (L/Leu) は好ましくはNle (ノルロイシン) 又はCha (3-シクロヘキシルアラニン) と置換でき、セリン (S/Ser) は好ましくはHse (ホモセリン) と置換でき、システイ (C/Cys) は好ましくはHey (ホモシステイン) と置換でき、ヒスチジン (H/His) は好ましくはHhs (ホモヒスチジン) 又は3-MH (3-メチルヒスチジン) と置換でき、フェニルアラニン (F/Phe) は好ましくはPhg (2-フェニルグリシン) と置換でき、プロリン (P/Pro) は好ましくはHyp (4-ヒドロキシプロリン) と置換できる。
【0036】
したがって、本発明の機能的等価変異体は、以下のペプチド:
R-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-F-H-S-Y-R-R-M-G (配列番号21)
K-Q-W-K-R-W-M-R-K-V-F-V-S-L-R-R-V-G (配列番号22)
R-Q-W-K-R-V-M-R-K-V-F-G-S-R-W-W-R-G (配列番号23)
K-Q-W-K-R-M-M-R-K-V-F-S-V-R-R-W-F-L (配列番号24)
F-R-Q-W-K-R-W-M-R-K-V-F-H-S-W-R-R-W (配列番号27)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号6)
W-F-Q-W-K-R-A-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号7)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-R-G (配列番号8)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-K-K-K-K-G (配列番号19)
F-Q-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-L-R-R-W-G (配列番号20)
F-R-W-K-R-R-M-R-K-V-R-G-S-R-R-R-Q-G (配列番号: 25)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-L-S-R-R-R-R-G (配列番号: 31)
F-W-W-K-R-A-M-R-K-V-R-N-S-R-R-R-R-G (配列番号: 32)
F-W-W-K-K-A-M-K-K-V-K-G-T-R-R-R-R-G (配列番号34)
から選ばれるペプチドに比べて、70%超配列同一性、例えば75%超配列同一性、好ましくは80%超配列同一性、例えば85%超配列同一性、最も好ましくは90%超配列同一性、例えば、93、94、95、96、97、98又は99%超配列同一性を有するペプチドである。
【0037】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、以下のように決定される。第1に、アミノ酸は、BLASTNバージョン2.0.14及びBLASTPバージョン2.0.14を含むBLASTZの独立型バージョンからのBLAST 2 Sequences (BI2seq) プログラムを用いて、例えば配列番号1と比較される。このBLASTZの独立型バージョンは、米国政府の国立生物工学情報センターウェブサイトncbi.nlm.nih.gov.から入手できる。BI2seqプログラムの使用方法を説明する教示は、BLASTZに添付のリードミーファイルで見出すことができる。BI2seqは、BLASTPアルゴリズムを使用して2つのアミノ酸配列間の比較を行う。2つのアミノ酸配列を比較するために、BI2seqのオプションは以下のように設定される:-iは、比較されるべき第1のアミノ酸配列を含むファイルに対する設定(例えば、C: \seq1.txt)であり;-jは、比較されるべき第2のアミノ酸配列を含むファイルに対する設定(例えば、C: \seq2.txt)であり;-pは、blastpに対する設定であり;-oは、任意の所望のファイル名に対する設定(例えば、C: \outout.txt)であり;全ての他のオプションはそのデフォルト設定に残される。例えば、以下のコマンドは、2つのアミノ酸配列間の比較を含むアウトプットファイルを作成するために使用できる:C: \BI2seq -i c: \seq1.txt -j c: seq2.txt -p blastp -o c:\output.txt。上記の2つの比較した配列が相同性を共有する場合には、指定したアウトプットファイルは、並べられた配列として相同性のその領域を示すことになる。上記の2つの比較した配列が相同性を共有しない場合には、指定したアウトプットファイルは、並べられた配列を示さないことになる。一旦並べられると、一致(マッチ)数は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸残基が2つの配列に現れる位置の数を数えることによって決定される。
【0038】
パーセント同一性は、同一の配列で示される配列長によって一致数を分け、得られた値に100を乗じることによって、決定される。例えば、配列を配列番号1の配列(配列番号1の配列長は18)と比較し、一致数が16の場合には、当該配列は、配列番号1の配列に対して89%のパーセント同一性(すなわち、16/18 * 100 = 89)を有する。
【0039】
さらに、本発明のペプチドの、精製を単純化するための、他のポリペプチド、例えばグルタチオン-S-トランスフェラーゼ、プリティンA、オリゴ-ヒスチジンタグへの融合体は、又はMycタグエピトープ等の抗体によって認識されるエピトープへの融合体も、本発明に含まれる。例えばペプチドを検出もしくは単離する又はペプチドの細胞内取り込みを促進するのに有用である他の好ましい特徴を含む融合体も、本発明に含まれる。かかる融合体パートナーの例は、ビオチン部分、ストレプトアビジン部分、放射活性部分、小フルオロフォア又は緑色蛍光タンパク質GFPフルオロフォアのような蛍光部分、免疫原性タグ、ペプチドの細胞取り込を促進することができる親油性分子又はポリペプチドドメインである。
【0040】
本発明のペプチドの機能性等価変異体は、例えば、PEG化、アミデート化、エステル化、アシル化、アセチル化及び/又はアルキル化によって、化学的に修飾された又は誘導化されたアミノ酸を含んでもよい。
【0041】
PEGのための異なった結合方法が存在し、含まれるべきである。例えば、PEGは、N-末端アミノ基に、又は反応性アミノもしくはヒドロキシル基を有するアミノ酸残基(Lys、His、Ser、Thr及びTyr)に、直接又はリンカーとしてのγ-ブチル酸を用いて結合できる。PEGは、カルボキシル(Asp、Glu、C-末端)又はスルフヒドリル(Cys)基に結合することもできる。
【0042】
本発明のペプチドの機能性等価変異体は、機能性側(side)との反応によって生成されるアミノ酸の化学的誘導体を含むこともできる。かかる誘導化分子は、遊離アミノ基が、アミノ塩酸塩、p-トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t-ブチル-オキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成するように誘導化された、分子を含む。遊離のカルボキシ基は、塩、メチル及びエチルエステル、又は他の種類のエステル、及びヒドラジドを形成するように誘導化することができる。遊離のヒドロキシ基は、O-アセチル又は0-アルキル誘導体を形成するように誘導化することができる。
【0043】
本発明にしたがうペプチドの機能性等価変異体は、当該ペプチドのペプチドミメティク変異体を含むことができる。ペプチドミメティクは、当該ペプチドの構造及び特定の特徴を模倣する化合物である。例えば、ペプチドミメティクは、反転(-CO-NH-)結合を有するペプチドを含む。加えて、ペプチドミメティクは、アミノ酸残基が慣用的アミド結合を置換するγ(CH
2NH)-結合によって結合される、変異体を含む。さらに、ペプチドミメティクはまた、アミノ-及びカルボキシル基が可変長のポリメチレン単位によって分離されるオメガ-アミノ酸を含む。
【0044】
本発明にしたがうペプチドは、修飾、例えばアミデート化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化又はチオグリコール酸アミデート化)、末端カルボキシアミデート化(例えば、アンモニア又はメチルアミン)、及び、当該ペプチドのN-又はC-末端領域が、エキソ型タンパク質分解性消化に対する感受性を減少させるのを助けるためにブロックされる他の末端修飾を含む。さらに、N-末端のC-末端へのアセチル化及びアミデート化によって、当該ペプチドは、末端が荷電されないことになる。受容体がLFの対応する配列(N-及びC-末端電荷がない)に結合すると推定すると、キャップされたペプチドは、この点で、キャップされないペプチドよりも野生型タンパク質に類似しているので、よりよく結合するはずである。
【0045】
本発明にしたがうペプチドは、Pasupuleti他, Biochim Biophys Acta 2009, 1790: 800-8に記載されているように、効力を増加させるためにトリプトファンでC-末端タグ化されてもよい。
【0046】
さらに、本ペプチドのシステイン残基は、アセトアミドメチル-システインによって置換されてもよい。さらに、本発明にしたがうペプチドは、配列中の2つのシステイン間のジスルフィド橋の形成によって得られる環状形態にあってもよい。さらに、本発明にしたがうペプチドは、形成されたラクタムを含むこともできる。
【0047】
本発明にしたがうペプチドは、感染症、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防に好適である。本明細書で用いる用語「治療」は、疾患状態、疾患進行又は他の異常症状の有害な効果を治癒し、逆転させ、弱め、緩和し、最小限にし、抑制し又は停止することを言い、本明細書で用いる用語「予防」は、疾患状態もしくは進行又は他の異常症状もしくは有害な症状の進行のリスクを最小限にし、減少させ又は抑制することを言う。
【0048】
本発明にしたがうペプチド又は医薬生成物/医療機器で処置し得る感染症は、全ての種類の病原体、例えば細菌、ウイルス、真菌等を含む。本発明にしたがうペプチドは、装置関連感染症を減少させ/予防するための、異なった医薬生成物/医療機器製品を被覆/処理するために使用することができる。
【0049】
異なった種類の炎症を治療することもできる。炎症は、言い換えれば、異常な「赤み」、及び組織及び臓器の腫れ、感染部位の疼痛及び発熱、毛細管拡張、白血球浸潤等によって特徴付けられる複雑な現象である。炎症は、細菌性物質及び他の有害物質、及び怪我への曝露によって主に起こる。アレルギー炎症は、重要なアレルギー喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びいくつかの眼アレルギー疾患を含むいくつかの障害又は病状の重要な病理生理学的特徴である。
【0050】
したがって、本発明の1つの局面は、感染症、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防のための方法であって、本発明のペプチド及びその機能的に等価な変異体の有効量が患者に投与される、方法を提供する。前記ペプチドは、経口的に、全身的に、非経口的に、局部的に又は局所的投与のために調製することができる。さらに、前記ペプチドは、食品に含有し、又は幼児用食品に含有することができる。
【0051】
さらに、本発明の別の局面は、感染症、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防に使用するための本発明のペプチドを提供する。前記ペプチドは、経口的に、全身的に、非経口的に、局部的に又は局所的投与のために調製することができる。さらに、使用のための前記ペプチドは、食品に含有し、又は幼児用食品に含有することができる。
【0052】
さらに、本発明の別の局面は、感染症、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防のための、医薬生成物/医療機器製品の製造のための、本発明のペプチドの使用を提供する。前記ペプチドは、経口投与、全身性投与、非経口投与、局部投与又は局所投与のために調製することができる。さらに、医薬生成物/医療機器製品は、食品に含有し、又は幼児用食品に含有することができる。
【0053】
炎症は多くの形態を有し、様々な異なったサイトカイン及び他の化学シグナルによって介在される。炎症のこれらのメディエイターは、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-4(IL-4)、インターロイキン-5(IL-5)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、γ-インターフェロン(IFN-γ)及び様々なコロニー刺激因子(CSF)を含む。
【0054】
本発明のペプチドは、感染症の抑制及び炎症性反応の調節をするが、創傷及び瘢痕の形成の治療及び/予防のために有効である。上で述べたように、本発明にしたがうペプチドはまた、腫瘍の治療に好適である。
【0055】
本発明のペプチドは、医療機器、医薬生成物又は医薬組成物であるように使用されてもよく、又はそれらに含まれるように使用されてもよい。本発明にしたがう医薬生成物又は医薬組成物は、医薬調製物の製造又は該調製物の投与を促進するために使用される物質を含んでもよい。かかる物質は、当業者に周知であり、例えば薬学的に許容されるアジュバント、担体及び保存料でよい。
【0056】
したがって、本発明の1つの局面は、本発明にしたがうペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0057】
本発明の別の局面は、感染症、炎症、腫瘍、疼痛、創傷及び瘢痕の治療及び/又は予防において使用するための、本発明のペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0058】
本発明のペプチドは、経口投与、全身性投与、非経口投与、局部投与、又は局所投与のいずれかのために調製することができる。
【0059】
本発明のペプチド、医薬生成物、医療機器及び医薬組成物は、患者に、経口的に、全身的に、非経口的に、局部的に又は局所的に投与することができる。
【0060】
本明細書で使用される用語「患者」は、疾患状態、疾患進行又は他の異常もしくは有害な症状に罹患しているリスクにある、又は罹患している、任意の人を関する。
【0061】
全身性投与は、例えば、尿路感染症、大腸炎及び腫瘍の治療に好適である。全身性投与は、経口の、鼻腔の、肺の、口腔咽頭の、静脈内の、動脈内の、腔内の、筋肉内の、皮下の、経皮的な、座薬(直腸を含む)の、又は当業者に公知の他の経路によって行われる。
【0062】
局部投与は、例えば、皮膚及び皮膚構造感染症、及び炎症、呼吸器感染症、粘膜でのすべての感染症及び炎症などの治療に好適である。局部投与は、局所的、皮膚上への、経口の、鼻腔の、膣の、眼の、耳の、肺の、又は中咽頭の経路によって行われる。局部的感染症又は炎症の治療のために、本発明にしたがうペプチド又は医薬生成物又は医療機器は、例えば、ゲル、クリーム、軟膏、溶液又はペースト、吸入粉末/溶液、耳の又は眼の溶液/懸濁液/軟膏に含まれてよい。
【0063】
本発明にしたがう方法において、本発明にしたがうペプチドの有効量が患者に投与される。本明細書で使用される用語「有効量」は、疾患状態、疾患進行又は他の異常もしくは有害な症状を治療又は予防するために十分な量に関する。
【0064】
本発明にしたがうペプチド又は医薬生成物、医療機器及び方法は、特に、尿路感染症及び大腸炎、皮膚及び皮膚構造感染症及び炎症、外耳、外耳道及び内耳の感染症及び炎症、及び呼吸器系、慢性及び急性の創傷の治療及び/又は予防のために好適であるが、いくつかの他の炎症及び感染的疾患、例えば、炎症性腸疾患、リウマチ様関節炎、関節、HIV-1ウイルスによって起こる症状、CMVウイルスによって起こる症状、真菌、例えばカンジダ種、例えばカンジダ・アルビカンス及びカンジダ・クルセイ、アスペルギルス及びクリプトコッカス・ネオフォルマンスによって起こる症状、もまた、本発明にしたがって治療可能である。この列挙は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0065】
本発明にしたがうペプチド、医薬生成物、医療機器及び方法はまた、炎症又は感染性疾患の合併症を誘導する高いリスクを有する患者において、炎症又は感染性疾患を発症するリスクを減少させることによる予防的医療に特に適している。
【0066】
本発明のペプチドは、以下に例示される抗炎症及び免疫調節療法に適するが、それらに限定されない:
1) 一般的に、炎症及び/又は炎症から起こる病状の治療及び/予防、特に、
2a) 腸; モルブス・クローン、大腸炎、
2b) 関節; リウマチ様関節炎、関節炎、関節症、筋痙攣、筋断裂、筋損傷、筋肉緊張、筋捻挫を含む筋肉の局部的疾患、
2c) 皮膚病学; 乾癬、湿疹 (excema)、皮膚炎、ざ瘡、
2d) 心臓; 心膜炎、心内膜炎、心不全、
2e) 疼痛; (以下の2fでさらに特定する)、
2f) 神経系; アルツハイアー、多発性硬化症、手根管症候群、椎間板ヘルニア、頚部リゾパシー、ベル麻痺、急性脊髄損傷、脊髄圧迫、脊柱管狭窄、ヘルペス後神経痛、ウイルス性脳炎、ウイルス性髄膜炎、メニエル病、ポリオ及びポリオ後の合併症、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、多発ニューロパチー、三叉神経痛、慢性癲癇代理症、
2g) 感覚器官; 緑内障、
2h) 粘膜表面 (化学・放射線療法の結果としての炎症)、
2i) アレルギー、
2j) 自己免疫疾患。
【0067】
本発明のペプチドは、症状及び手段に関連して、以下に例示される創傷及び/又は瘢痕の予防及び/又は治療にさらに適しているが、これらに限定されない:
3a) 皮膚、筋肉、腱、神経組織、血管等の様々な組織に対する外科的手法、及び異なった身体の部位、例えば眼、耳、声帯、腕、脊髄、腹腔内腔、胸腔内腔、頭蓋内腔、口腔、婦人科手法、子宮内膜症、包茎、
3b) にきび、
3c) 肥厚性瘢痕及びケロイド、
3d) 胸膜炎、
3e) 腹膜透析、
3f) 急性及び慢性創傷。
【0068】
本発明のペプチドは、抗-血管新生効果を有するとさらに考えられており、そのため、以下の治療及び/又は予防に適している:
4a) 癌、
4b) リウマチ様関節炎。
【0069】
本発明のペプチドは、抗-乾癬効果を有し、以下の治療及び/又は予防に適している:
5a)
抗菌効果:
上下気道(扁桃炎、副鼻腔炎、肺炎、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症等)
眼の感染 (例えば、結膜炎)、
尿路感染、
性感染症 (コンドームの抗菌コーティングを含む)、
生殖管 (腟疾患、腟炎、子宮頸管炎、子宮内膜炎、PIDを含む)、
胃腸管感染 (GIで始まる全身感染)、
中枢神経系感染症、
皮膚及び皮膚構造の感染症、例えば外科手術部位感染症を含む二次感染性外傷変形、蜂巣炎又は膿瘍、二次感染皮膚疾患、膿痂疹、及び癰又はフルンケル症 (グラム陽性及びグラム陰性菌、ブドウ球菌例えばMRSA, スタフィロコッカス、院内、創傷、火傷を含む)、筋肉、関節 (例えば、化膿性関節炎)、骨及び造血系、
歯周炎、歯肉炎を含む、口、眼、内耳及び外耳、及び耳道に関連する感染。
【0070】
5b)
抗ウイルス効果:
上下気道、
性感染症、
胃腸管感染 (GIで始まる全身感染)、
中枢神経系感染症。
5c)
抗真菌効果:
上下気道 (例えば、アフター、皮膚粘膜のカンジダ症)、
泌尿生殖器 (例えば、外陰部カンジダ症、亀頭炎)、
胃腸管感染 (GIで始まる全身感染)、
中枢神経系感染症、
皮膚及び皮膚構造の感染症 (例えば、皮膚粘膜のカンジダ症)、皮膚症、及び湿疹。
【0071】
最も好ましくは、本発明は、膿痂疹、火傷、感染表皮剥脱、感染断裂、表皮剥離、丹毒、蜂巣炎、膿瘍、癰(furuncles)、癰(carbuncles)、縫合創傷、手術部位感染、二次感染皮膚病;アトピー性皮膚炎、乾癬、及びアレルギー性接触皮膚炎、動物咬傷、カテーテル関連感染症の、治療、予防及び/又は抑制のために使用される。
【0072】
本発明にしたがうペプチド、医薬及び方法は、単独で、又は他のものと組み合わせてもしくは慣用的治療方法と組み合わせて使用してよい。本発明によれば、根底にある疾患、出産時低体重又は医療的処置に起因して感染症及び/又は炎症の増加したリスクを経験している患者において、かかる症状を減少させることを意図した任意の種類の食品又は飲料に、有効量で当該ペプチドを含むこともできる。例えば、幼児において細菌、ウイルス又は真菌によって誘導される炎症によって起こる体重減少のような細菌の悪影響を阻害することを意図した幼児調製食品に、有効量で当該ペプチドを含めることができる。本発明にしたがうペプチドが食品、例えば栄養目的で使用される時に、自然起源のペプチドを使用することが特に好ましい。
【0073】
本発明にしたがうペプチドは抗菌効果を有するので、異なった食品及び医薬、例えばゲル、クリーム、軟膏、ペースト、溶液、エマルション等中の保存料として使用することもできる。
【0074】
本発明を以下の実施例でさらに説明する。これらの実施例は、本発明を例証することを意図しているにすぎず、本発明の範囲を何ら限定するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0075】
実施例 1. ペプチドスクリーン1
表1に示すペプチド由来のラクトフェリンをデザインし、試験した。活性ペプチドを同定した。
【0076】
新規ペプチド変異体を、配列番号1に類似の配列を有するペプチドの、測定された抗炎症及び抗菌活性に基づいて、デザインした。さらに、これらのペプチドの対応する配列の構造的考慮を行った。実際に、このことは、該ペプチドの螺旋性を維持し亢進することを意味する。ペプチドの新規変異体は、該ペプチドの陽性電荷及び疎水性領域を増加することによってデザインした。したがって、該ペプチドの両親媒性は増加した(
図2)。この新規デザインに基づいて、新規ペプチドは、EPscreen ライブラリ(Sigma)として注文し、抗炎症及び抗菌活性を試験した。
【0077】
【表1】
【0078】
抗炎症活性を、LPS刺激THP-1細胞中のTNF-α産生阻害として測定した
ヒト単球に対応するTHP-1細胞株 (TIB-202; ATCC, Manassas, VA, USA) を、10%ウシ胎児血清 (FBS; PAA Laboratories GmbH, Pasching, Austria)、1 mMピルビン酸ナトリウム (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)、及び20 mM HEPES (PAA, Laboratories GmbH, Pasching, Austria) で補充したRPMI 1640 (PAA Laboratories GmbH, Pasching, Austria) に維持した。
【0079】
細胞濃度を10
6 細胞/mlに調整し、100μlの懸濁液を96-ウェル細胞培養プレート (Sarstedt, Numbrecht, Germany) にウェル当たりで添加した。単球をマクロファージ様細胞と識別するために、該細胞を10 ng/ml PMA (ホルボール 12-ミリスタート 13-アセタート; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) で、48時間処理した。その後、該細胞を、0.1 ng/mlリポ多糖体 (LPS; E. coli抗原型055: B5; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) の、5%熱不活性化FBSを含む以外は上で特定した培地への添加によって刺激した。LPSの添加後30分、ペプチド (40 μM) を3点で添加した。37℃、5% C0
2、及び湿雰囲気中でのインキュベーションの6時間後に、細胞上清を回収し、ELISA (R&D Systems, Minneapolis, MN, USA) によるTNF-α量を分析するまで-20℃で冷凍保存した。結果は、平均相対的分泌(%)として、100%になるように設定して加えた、ペプチドなしで刺激したTNF-αレベル、及び0%になるように設定した基準分泌と一緒に表す(表2)。
【0080】
【表2】
【0081】
抗菌活性は、最低殺菌濃度を用いるS. aureusに対する殺菌効果として測定した(MMCaaアッセイ)
血液-アガープレート [5%脱線維素ウマ血液 (National Veterinary Institute (SVA), Uppsala, Sweden) で補充したコロンビア・アガー (Oxoid, Basingstoke, UK)] 上で培養したS. aureus (#1800; CCUG, Gothenburg, Sweden) を、ブレインハートインフュージョン培地 (3.7% BHI; Difco, BD Diagnostics, Franklin Lakes, NJ, USA) に移し、250 rpm、37℃で、終夜、シェーカーでインキュベートした。その後、培養物を新鮮BHI培地で1:10に希釈し、対数期増殖になるまでさらに2時間インキュベートした。細菌をペレット化し、1 % BHI培地 (超純水で100倍に希釈したBHI培地) に懸濁して、600 nmで光学密度を測定することによって推定した10
7細菌/mlの濃度にした。
【0082】
ペプチドは、160 μMから1.25 μMまで、1 % BHI培地で、2倍法で段階的に希釈した。その後、ペプチド (100 μl) を、細菌 (5 μl 10
7細菌/ml) で、2時間、37℃で、インキュベートした。懸濁液の液滴 (5 μl) を血液アガープレート上に置いた。血液アガープレートを終夜、37℃でインキュベートした。MMC
99値、すなわち、生存細菌の99%減少を達成するために必要とされる最低ペプチド濃度を記録した(表3)。アッセイに使用した細菌懸濁液の濃度は、血液アガープレート上に生存数によって確認した。
【0083】
【表3】
【0084】
実施例 2. ペプチドスクリーン2
第1スクリーニングラウンドからのペプチドのTNF-α活性は、ProPHECY(商標)software (Saromics, Lund, Sweden) を用いて、多変量分析に供した。多数の記述子を各々のペプチドについて計算した。TNF-α活性は、次いで、これらの記述子に相関した。別個の回帰モデルは、ペプチドの種類について作成した。加えて、ペプチドの種類を考慮した全体的モデルも作成した。
【0085】
回帰モデルの分析は、改善されたTNF-α活性に寄与するいくつかの変数を示唆した。第2スクリーニングラウンドの新規ペプチドは、主に電荷、両親媒性お及び疎水性の調節に基づいて、ペプチドの種類を示唆した。新規デザインに基づいて、約80のペプチドを、PEPscreen ライブラリ (Sigma) として注文し、抗炎症及び抗菌活性を試験した。
【0086】
【表4】
【0087】
抗炎症活性を、LPS刺激THP-1細胞中のTNF-α産生阻害として測定した
ヒト単球に対応するTHP-1細胞株 (TIB-202; ATCC, Manassas, VA, USA) を、10%ウシ胎児血清 (FBS; PAA Laboratories GmbH, Pasching, Austria)、1 mMピルビン酸ナトリウム (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA)、及び20 mM HEPES (PAA, Laboratories GmbH, Pasching, Austria) で補充したRPMI 1640 (PAA Laboratories GmbH, Pasching, Austria) に維持した。
【0088】
細胞濃度を10
6 細胞/mlに調整し、100 μlの懸濁液を96-ウェル細胞培養プレート (Sarstedt, Numbrecht, Germany) にウェル当たりで添加した。単球をマクロファージ様細胞と識別するために、該細胞を10 ng/ml PMA (ホルボール 12-ミリスタート 13-アセタート; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) で、48時間処理した。その後、該細胞を、0.1 ng/mlリポ多糖体 (LPS; E. coli抗原型055: B5; Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, USA) の、5%熱不活性化FBSを含む以外は上で特定した培地への添加によって刺激した。LPSの添加後30分、ペプチド (40 μM、10 μM、及び4 μM) を3点で添加した。37℃、5% C0
2、及び湿雰囲気中でのインキュベーションの6時間後に、細胞上清を回収し、ELISA (R&D Systems, Minneapolis, MN, USA) によるTNF-α量を分析するまで-20℃で冷凍保存した。結果は、平均相対的分泌(%)として、100%になるように設定して加えた、ペプチドなしで刺激したTNF-αレベル、及び0%になるように設定した基準分泌と一緒に表す(表5)。
【0089】
【表5】
【0090】
抗菌活性は、最低殺菌濃度を用いるS. aureusに対する殺菌効果として測定した(MMC99アッセイ)
血液-アガープレート [5%脱線維素ウマ血液 (National Veterinary Institute (SVA), Uppsala, Sweden) で補充したコロンビア・アガー (Oxoid, Basingstoke, UK)] 上で培養したS. aureus (#1800; CCUG, Gothenburg, Sweden) を、ブレインハートインフュージョン培地 (3.7% BHI; Difco, BD Diagnostics, Franklin Lakes, NJ, USA) に移し、250 rpm、37℃で、終夜、シェーカーでインキュベートした。その後、培養物を新鮮BHI培地で1:10に希釈し、対数期増殖になるまでさらに2時間インキュベートした。細菌をペレット化し、1 % BHI培地 (超純水で100倍に希釈したBHI培地) に懸濁して、600 nmで光学密度を測定することによって推定した10
7細菌/mlの終濃度にした。
【0091】
ペプチドは、400 μMから0.78 μMまで、1 % BHI培地、又は50%熱不活性化刺激創傷液 [超純粋で2倍に希釈された、1量部のペプトン(Oxoid, Basingstoke, UK)の生理食塩水、及び1量部のウシ胎児血清を含む、SWF] のいずれかで、2倍法で段階的に希釈した。その後、ペプチド (100 μl) を、細菌 (5 μl 10
7細菌/ml) で、2時間、37℃で、インキュベートした。懸濁液の液適 (5 μl) を血液アガープレート上に置いた。血液アガープレートを終夜、37℃でインキュベートした。MMC
99値、すなわち、生存細菌の99%減少を達成するために必要とされる最低ペプチド濃度を記録した(表3)。アッセイに使用した細菌懸濁液の濃度は、血液アガープレート上に生存数によって確認した。
【0092】
その後、ペプチド (100 μl) を、細菌 (5 μl 10
7細菌/ml) で、2時間、37℃で、インキュベートした。懸濁液の液滴 (5 μl) を血液アガープレート上に置いた。血液アガープレートを終夜、37℃でインキュベートした。MMC
99値、すなわち、生存細菌の99%減少を達成するために必要とされる最低ペプチド濃度を記録した(表3)。アッセイに使用した細菌懸濁液の濃度は、血液アガープレート上に生存数によって確認した。
【0093】
【表6】
【0094】
ペプチド
本ペプチドの鋳型は、アルギニン置換されたペプチドである。以下で議論するペプチドは同様の長さのペプチドであり、
図3の散布図は、40μMでの目立ったTNF-α活性を有するペプチドを持つ2つのクラスターを示す。ペプチド鋳型は同濃度ではほとんど不活性であったが、より高濃度では活性である。
【0095】
【表7】
【0096】
表7は、クラスターA及びBの両方での多数の突然変異を示す。ペプチドの2つの群は、重複し、位置的変異に関して互いに補足することが明らかに分かる。クラスターA由来の活性ペプチドはすべて、位置1及び4に荷電したR又はKを有し、位置11に疎水性アミノ酸Fを有する。疎水性アミノ酸V、M及びW、並びに荷電したアミノ酸Rは、位置16に見られる。位置14、16及び17はすべて、疎水性の非荷電のアミノ酸F、M、V又はWを有し、これは、同位置にRを有する鋳型とは異なる。クラスターBは、位置2のQが疎水性残基W、L又は荷電したアミノ酸Rのいずれかと置換され得ることを示している。
【0097】
クラスターA及びBでなされた修飾は、位置によっては互いに相補的である。したがって、位置-1は、付加された疎水性C、F又はW、又は極性Sアミノ酸を有し得る。位置12でのアミノ酸、これは鋳型ペプチドに関してGであるが、異なった数の残基、極性及び疎水性の残基、例えばH、V、S、N、Lと交換可能である。位置13でも状況は同じである。そこでは、鋳型のSは、V、G及びTと交換できる。活性ペプチドは、位置14、15、16、17及び18に疎水性及び荷電したアミノ酸を有し得る。位置17では、G及びQを有する活性ペプチドを見出すこともできる。最後に、クラスターA及びBに属する活性ペプチドのすべては、原則的に、生理学的塩濃度に近い場合でさえも高い抗菌効果を示す。
【0098】
実施例 3. インビトロ抗菌効果
ペプチド265 (配列番号 27) の抗菌効果は、S. aureus (CCUG 1800)、MRSA (CCUG 41879)、P. aeruginosa (ATCC 15442)、E. coli (CCUG 31246)、S. pyogenes (CCUG 4207)、P. acnes (CCUG 1794T)、S. epidermidis (ATCC12228)、K. pneumoniae (ATCC 13883)、A. baumannii (ATCC 19606)、及びC. albicans (ATCC 64549) に対するMMC
99 (最低殺菌濃度) アッセイによって分析した。ペプチドは、Biopeptide Company (San Diego, CA, USA) and Bachem AG (Bubendorf, Switzerland) から購入し、結果を表8A及び8Bにそれぞれ示す。
【0099】
ペプチドは、2種のアッセイ培地、1 % BHI培地 (ブレインハートインフュージョン) 又は50%熱不活性化刺激創傷液 (SWF) で段階的に希釈し、その後、2時間、微生物でインキュベートした。懸濁液の液滴を血液アガープレート上に置いた。MMC
99値、すなわち、生存細菌の99%減少を達成するために必要とされる最低ペプチド濃度を記録した。表8に示すように、ペプチドは、感染に頻繁に現れる微生物を殺すための能力を有する。
【0100】
【表8】
【0101】
【表9】
【0102】
実施例 4. ラットの切除創傷におけるインビボ抗菌効果
ペプチド265 (配列番号27) のインビボ抗菌効果を、ラットの切除創傷モデルで研究した。創傷をメシチリン耐性S. aureus (MRSA) で2時間接種した後、細菌の停止及び採取の2時間前、ペプチド又はコントロール (H
2O) を単一投与した。ペプチドは目立った抗菌効果を示した (
図4)。
【0103】
実施例 5. ブタの感染性創傷におけるインビボ抗菌効果
ペプチド265 (配列番号27) の抗菌効果を、ブタ皮膚でのエクスビボモデルで研究した。創傷は、PBS/血清50/50の存在下で、S. aureus (MRSA) で接種した。接種2時間後、ペプチド又はプラセボ (H
2O) の単一投与で創傷を処置した。処置4時間後、細菌を採取し、各々の創傷の生存数を決定した。結果は、ペプチドが局所的に適用される時に相当効率的な抗感染剤であることを示す、
ラットでの発見を確認する (
図5)。