特許第6158733号(P6158733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158733
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】冷風式クーラーの冷却制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20170626BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   F25D17/06 315
   F25D23/00 302E
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-45779(P2014-45779)
(22)【出願日】2014年3月8日
(65)【公開番号】特開2015-169398(P2015-169398A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014687
【氏名又は名称】東弘電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(72)【発明者】
【氏名】須藤 惇
(72)【発明者】
【氏名】須藤 朗孝
【審査官】 安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−240373(JP,A)
【文献】 特開平06−014702(JP,A)
【文献】 特開平06−042844(JP,A)
【文献】 特開平06−042854(JP,A)
【文献】 米国特許第3417574(US,A)
【文献】 須藤惇,須藤朗孝,りんご貯蔵ユニットクーラー,冷凍,日本,社団法人日本冷凍空調学会,2000年11月15日,第75巻第877号,第970−975(38−43)頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/06
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒の熱交換器としての凝縮器と冷却器、
前記冷媒を圧縮し高温高圧にする圧縮機、及び、
前記高温高圧の前記冷媒を前記熱交換器で熱交換され、低温高圧になった前記冷媒を低圧液化し、この低圧液化された前記冷媒を膨張させてガス化する膨張手段とからなる冷風式クーラーを用いて、冷却運転と除霜運転を繰り返しながら、庫内を冷却して一定の温度に保持するための冷風式クーラーの冷却制御方法において、
外気温度が低温に低下した場合、前記冷却運転時、(a)庫外の前記凝縮器の凝縮圧力を確保し、かつ、(b)庫内の前記冷却器の負荷を前記外気温度に相応して増加させることで、前記冷却器の表面温度を所定の蒸発温度以上に定常的に保持して、冷却することで、前記庫内を一定の低温多湿に維持し、
前記凝縮器に送風する庫外ファンの回転数を制御することで前記凝縮圧力を確保し、
前記外気温度が下がるのに比例して、前記冷却器に送風する庫内ファンの回転数を増大させる制御をすることにより、前記冷却器の表面温度を所定の蒸発温度以上に定常的に保持する
ことを特徴とする冷風式クーラーの冷却制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の冷風式クーラーの冷却制御方法において、
前記外気温度が前記低温に低下した場合、前記除霜運転時、(c)前記庫外ファンを停止し、かつ、(d)前記庫内ファンを回転させて、前記冷却器の負荷を増加させると共に、前記冷却器の表面の霜と水滴を、前記庫内に強制的に拡散させることで、前記冷却器の蒸発温度を所定温度に維持し、前記庫内を一定の多湿に維持する
ことを特徴とする冷風式クーラーの冷却制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の冷風式クーラーの冷却制御方法において、
前記冷却器の表面温度が所定の緩和温度に達したとき、前記除霜運転を停止し、前記冷却運転に切り替える
ことを特徴とする冷風式クーラーの冷却制御方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の中から選択される1項に記載の冷風式クーラーの冷却制御方法において、
前記庫内は、果物又は野菜を保存するのに最適な低温多湿である
ことを特徴とする冷風式クーラーの冷却制御方法。
【請求項5】
請求項4に記載の冷風式クーラーの冷却制御方法において、
前記果物はりんごである
ことを特徴とする冷風式クーラーの冷却制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の冷風式クーラーの冷却制御方法において、
前記庫内は、温度−1〜+2℃、湿度85%以上の低温多湿である
ことを特徴とする冷風式クーラーの冷却制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラーの冷却方法に関し、詳しくは、冷風式クーラーを用いて、冷蔵庫、貯蔵庫等の室内を、果物や野菜等を保存するのに最適な低温多湿の状態に冷却する冷風式クーラーの冷却制御方法に関する。更に詳細には、本発明は、外気温度が−10℃以下という極端に下がった状況で、冷風式クーラーを用いて、冷蔵庫、貯蔵庫等の庫内を、果物や野菜を保存するのに最適な低温多湿の状態にする冷風式クーラーの冷却制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
果物や野菜等は低温多湿の状態で保存すると良いことが知られている。果物や野菜等は、その凍結寸前の低い温度で保存されるとその鮮度が保持される。また、果物や野菜等が多くの水分を含んでおり、その水分が数パーセントでも減少すると、鮮度や品質等が低下し、商品としての価値が大きく低下する。従って、果物や野菜等は保存するとき、適当な湿度維持が要求される。例えば、リンゴが保存される庫内は、湿度が85〜95%、温度が−1℃で管理されることが最適である(非特許文献1を参照。)。
【0003】
低温多湿の環境の庫内に保存されている果物や野菜等は、庫内が外気から遮断されていても、自らの呼吸熱により庫内温度が最適温度より上昇する。そのため、庫内をクーラーにより常に冷却し最適温度を維持する必要がある。従来から果物や野菜等が保存される庫内を、クーラーを用いて冷却し、果物や野菜等の最適温度で保存する多くの技術が開発されて実用されている。
【0004】
例えば、従来の冷風式クーラーを用いた冷却方法においては、冷蔵室内の温度を−1〜+2℃に保つための冷却サイクルのときには冷却器の上側から下側に冷媒を送り、除霜時には四方切換弁を切り換えて、冷却器を凝縮器として作動させ、クーラーをヒートポンプとする。すなわち、一時的に四方切換弁を切り替えて、冷凍暖房サイクルを反転させて室内の冷却器の除霜を行うが、この作動は自動的に定期的に行われ、除霜時には圧縮冷媒は冷却器の下側から上側の方向に流れる(特許文献1)。
【0005】
果物や野菜等は低温多湿の状態で保存するとき、冷蔵室内の温度を−1〜+2℃に保持するためには、室内にある冷却器の表面温度は、冷却サイクル時に、−20〜−30℃となる。そのとき、室内の湿気の多くは結露あるいは凍結し、室内の湿度を低下させてしまう。このように従来の冷風式クーラーを用いる冷却方法を採用した冷蔵庫は、冷却サイクルのとき、室内の冷却器の温度が必要以上に低下するため、室内の湿気の多くが結露し凍結する。
【0006】
そして、冷蔵庫の除霜サイクルのとき、結露した霜が溶けて水滴として流出する。この冷却サイクルと除霜サイクルの各工程が繰り返して行われることによって、室内の空気は、順次湿度を低下させて乾燥する。そのため、室内をりんご等の果物や野菜の保存に適した低温でかつ高湿度に維持するためには、室内に新たに加湿器を設置する等の対策が必要であった。また、特許文献2,3には、室内の空気の湿度を下げることなく、冷蔵室内の温度を安定して保持する冷風式クーラーを開示している。
【0007】
特許文献2に記載の冷風式クーラーは、青果物や野菜の保存に適する低温多湿に冷却しているものである。詳しくは、この冷風式クーラーは、全密閉往復動式圧縮機とキャピラリーチューブで冷媒を制御し、庫内温度に相応して冷却・除霜サイクルを制御するものに、外気温度に相応して凝縮器の冷却用ファンの回転数を無段階に制御するコントローラを付加して凝縮器の放熱機能を制御することにより、冷却器の表面温度を−10〜−15℃に定常的に保持して低温多湿に冷却する。
【0008】
更に、特許文献3に記載の冷風式クーラーは、冷却サイクルのとき、室外の凝縮器に送風するファンを外気温度に相応して無段階に比例制御した回転数で回転させることにより、室内の冷却器の表面温度を−15℃以上に定常的に保持して冷却している。そして、この冷風式クーラーは、除霜サイクルのとき、外気温度が−15℃〜+15℃の温度範囲では、それら冷却器および凝縮器に送風する各ファンを何れも停止している。
【0009】
外気温度が+15℃を超え、且つ当該冷却器の表面温度が+35℃までは、外気温度に相応して無段階に比例制御するか、一時的に停止制御し、当該冷却器の表面温度が+35℃以上になった段階で、当該凝縮器に送風するファンを最大回転数で回転させて除霜している。非特許文献1、2にも特許文献2,3と同様の冷風式クーラーの構造及び機能を記載している。これらの冷風式クーラーは、通常稼働で、冷却器の蒸発温度を−10〜−15℃に保持する。冷風式クーラーの冷媒は、基本的に、通年を通して同じ流体を利用しており、冷却器の蒸発温度と冷媒封入を外気温度と関係なく一定にしている。
【0010】
更に、特許文献4に記載の冷蔵庫は、冷却する対象となる部屋、または、大型の冷蔵庫毎に、冷却システムを専用設計する必要がなく、汎用性のある冷却ユニットである。この冷蔵庫は、圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張手段、蒸発器用ファンモータと、凝縮器用ファンモータとで形成される冷却ユニットと、外気温度を検出する外気温センサーと、庫内温度センサーを有する筐体とを組み合わせることで、外気温センサーと庫内温度センサーの検出結果をもとに、圧縮機の運転範囲を決定している。凝縮器用ファンモータの印圧電圧を抑制し、回転数を下げ、消費電力を低減している(特許文献4の段落[0011]、[0012]等を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公昭49−44469号公報
【特許文献2】特許第3250671号
【特許文献3】特許第3443661号
【特許文献4】特開2005―16877号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】須藤 朗孝、須藤 惇 「りんご貯蔵ユニットクーラー」,冷凍(社団法人日本冷凍空調学会誌),Vol.75,No.877(2000),pp.970-975.
【非特許文献2】須藤 朗孝、須藤 惇 「りんご貯蔵用小型冷凍機の圧縮機構吸込弁の破損とその対策」,社団法人日本冷凍空調学会論文集,Vol.20,No.4(2003),pp.437-448.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかながら、従来の冷蔵庫、貯蔵庫は、外気温度が低い場合、例えば外気温度が−10〜−30℃と極端に低下したときは、冷蔵庫、貯蔵庫は効率よく稼働しなくなる。具体的には、冷却器の蒸発温度を−10〜−15℃に保持することは難しくなる。特許文献2,3及び非特許文献1,2に記載の冷風式クーラーは、外気温度が−10〜−30℃に低下した場合の蒸発器ファンモータ、凝縮器用ファンモータの制御方法については、記載がない。
【0014】
更に、特許文献4の場合は、低温多湿に関する考え方、その時の冷却制御方法が記載されていない。自然界の季節的天候による温度変化ばかりでなく、日中の気象条件によって外気の温度が急激に変動したりする。また、日本の東北地方、北海道においては、外気温が−30℃までに低下する地域がある。このように、日中の外気温が急激に低下した場合や外気温が極端に低下した場合は、果物や野菜等に適した低温多湿の保存状態を達成、維持する冷却方法が求められている。
【0015】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、外気温度が低い場合でも、果物や野菜に適した低温多湿の保存状態を達成、維持する冷風式クーラーの冷却制御方法を提供する。
本発明の目的は、外気温度が−10〜−30℃と極端に低下したときでも、果物や野菜に適した低温多湿の保存状態を達成、維持する冷風式クーラーの冷却制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明は、冷蔵庫、貯蔵庫等の庫内を冷却して一定の温度に保持するための冷風式クーラーの冷却制御方法である。
【0019】
本発明の冷風式クーラーの冷却制御方法において、冷風式クーラーは、冷媒の熱交換器としての凝縮器と冷却器、前記冷媒を圧縮し高温高圧にする圧縮機、及び、前記高温高圧の前記冷媒を前記熱交換器で熱交換され、低温高圧になった前記冷媒を低圧液化し、この低圧液化された前記冷媒を膨張させてガス化する膨張手段とからなる冷風式クーラーを用いて、冷却運転と除霜運転を繰り返しながら、庫内を冷却して一定の温度に保持し、
外気温度が低温に低下した場合、前記冷却運転時、(a)庫外の前記凝縮器の凝縮圧力を確保し、かつ、(b)庫内の前記冷却器の負荷を前記外気温度に相応して増加させることで、前記冷却器の表面温度を所定の蒸発温度以上に定常的に保持して、冷却することで、前記庫内を一定の低温多湿に維持し、
前記凝縮器に送風する庫外ファンの回転数を制御することで前記凝縮圧力を確保し、
前記外気温度が下がるに比例して、前記冷却器に送風する庫内ファンの回転数を増大させる制御をすることにより、前記冷却器の表面温度を所定の蒸発温度以上に定常的に保持することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の冷風式クーラーの冷却制御方法は、前記外気温度が前記低温に低下した場合、前記除霜運転時、(c)前記庫外ファンを停止し、かつ、(d)前記庫内ファンを回転させて、前記冷却器の負荷を増加させると共に、前記冷却器の表面の霜と水滴を、前記庫内に強制的に拡散させることで、前記冷却器の蒸発温度を所定温度に維持し、前記庫内を一定の多湿に維持することを特徴とする。
【0021】
前記冷却器の表面温度が所定の緩和温度に達したとき、前記除霜運転を停止し、前記冷却運転に切り替える。
前記庫内は、果物又は野菜を保存するに最適な低温多湿である。
果物又は野菜を保存するに最適な低温多湿は、果物又は野菜が凍結する寸前の温度であると良い。
【0022】
前記庫内は、湿度が80%以上、好ましくは85%以上の多湿であると良い。
前記果物はりんごであると良い。
前記庫内は、温度−1〜+2℃、湿度85%以上の低温多湿である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明によると、外気温度が−10〜−30℃と極端に低下した場合でも、外気温度の変化に対して、凝縮器の凝縮圧を保持し、蒸発器の負荷を増やすことで、蒸発温度を一定に保持することができ、冷風式クーラーを制御できるようになった。従って、冷蔵庫、貯蔵庫の庫内は、果物や野菜等に適した低温多湿の環境を安定的に維持、保持できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施の形態の冷風式クーラー1の構成を示す概念図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の冷風式クーラー1の庫外ファンモータ9を外気温度に応じて制御する様子を図示しているグラフである。
図3図3は、本発明の第1の実施の形態の冷風式クーラー1の庫内ファンモータ7を外気温度に応じて制御する様子を図示しているグラフである。
図4図4は、本発明の実施の形態の制御ユニット20の例の概要を図示したブロック図である。
図5図5は、本発明の実施の形態の制御ユニット20の回路構成例の一部を図示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。上述の通り、従来の冷風式クーラーは、外気温度が高い場合、例えば、−10℃以上の場合、その能力を発揮している。本発明は、外気温度が低い場合、例えば、外気温度が−10℃以下と極端に低下したとき、冷風式クーラー1の制御方法を提供する。具体的に、外気温度が−10〜−30℃と極端に低下した場合でも、外気温度の変化に対して、凝縮器、蒸発器を制御する制御方法を提供することができる。図1は、本発明の実施の形態の冷風式クーラー1の概要を図示している。
【0026】
冷風式クーラー1についてはその構造と機能そのものは公知であるが、その概略を説明する。冷風式クーラー1は、冷却器2、凝縮器3、圧縮機4、四方弁5、庫内ファン6、庫内ファンモータ7、庫外ファン8、庫外ファンモータ9、ドライヤー10、冷却用のキャピラリーチューブ11等からなる。冷却器2、凝縮器3、圧縮機4、四方弁5、ドライヤー10、キャピラリ―チューブ11は配管で接続されている。冷風式クーラー1は、庫内サーモスタット12と庫外サーモスタット13を備える。
【0027】
冷却器2は、庫内の空気と冷媒の熱交換をするための熱交換器である。凝縮器3は、冷媒と外気との熱交換をするための熱交換器である。圧縮機4は、冷媒を圧縮し、高温高圧の液状冷媒にするための機器である。四方弁5は、冷媒の流れを変えるための弁で、冷却サイクルと除霜サイクルのとき、冷媒の流れを逆方向にする働きをする。キャピラリーチューブ11は、冷媒の減圧と流量制御を行うためのもので、膨張弁としての働きをするものである。
【0028】
ドライヤー10は、キャピラリーチューブ11へ供給される冷媒を一時的に溜めて、キャピラリーチューブ11に働く冷媒の圧力を調整するものである。庫内ファン6は、庫内の空気を循環させるものであり、詳しくは、冷却器2の表面に庫内空気を流し込み、冷却器2の負荷を制御するものである。言い換えると、冷却器2への吸込空気の流量を制御する働きをする。庫内ファンモータ7は、電源供給を受けて、稼働し、庫内ファン6を回転させて、庫内ファン6の回転速度を制御するものである。庫外ファン8は、庫外の空気、いわゆる外気を、凝縮器3に吸込するものである。
【0029】
図示しないが、冷風式クーラー1は、庫内の温度を測定するための庫内温度計、外気の温度を測定するための外気温度計、冷却器2の端板の温度(冷却器温度)を測定するための冷却器用温度計、凝縮器3の端板の温度(凝縮器温度)を測定するための凝縮器用温度計等を備える。以下、庫内温度、外気温度、冷却器温度、凝縮器温度は、これらの計器で測定した、庫内の温度、外気の温度、冷却器2の端板の温度、凝縮器3の端板の温度をそれぞれ意味する。
【0030】
庫外ファンモータ9は、電源供給を受けて、稼働し、庫外ファン8を回転させ、その回転速度を制御するものである。庫内サーモスタット12は、庫内ファンモータ7の回転数を制御するサーモスタットである。庫外サーモスタット13は、庫外ファンモータ9の回転数を制御するサーモスタットである。庫内サーモスタット12は、外気温度、冷却器温度を検知して機能する。庫外サーモスタット13は、外気温度、冷却器温度を検知して機能する。
【0031】
また、冷風式クーラー1は、図1に図示せず、図4に例示しているが、冷風式クーラー1の動作を制御するための制御ユニット20を有する(図4を参照。)。制御ユニット20は、特に、圧縮機4、四方弁5、庫内ファンモータ7、庫外ファンモータ9の動作を制御する。制御ユニット20は、上述の各種温度計で計測した温度データを取得して、信号処理し、これらの機器を制御する。庫内サーモスタット12、庫外サーモスタット13は、自動的に動作するものであっても良いが、制御ユニット20から指示されて動作するものでも良い。
【0032】
制御ユニット20は、外気温と冷却器2の端板の温度を取得して、庫内ファンモータ7と庫外ファンモータ9を制御する。結果的には、庫内ファン6と庫外ファン8の回転数を制御し、冷却器2と凝縮器3の吸込空気量を制御する。これにより、冷却器2と凝縮器3の熱交換が適当な設定値になる。
【0033】
冷風式クーラー1は、ヒートポンプの原理で稼働する。冷風式クーラー1は、庫内を冷却する冷却運転と、冷却時に冷却器2に付着した霜を除霜する除霜運転を交互に繰り返して運転されている。冷却運転のとき、冷却器2はヒートポンプの蒸発器として、凝縮器3はヒートポンプの凝縮器として機能する。除霜運転のときは、冷却器2はヒートポンプの凝縮器として、凝縮器3はヒートポンプ装置の蒸発器として機能する。
【0034】
〔冷却運転〕
冷却運転時は、冷却器2は冷媒の蒸発によって庫内の熱を奪い、庫内を冷却する。冷却器2の表面の温度(端板の温度)は、−15℃以下に低下することがある。庫内を低温多湿の貯蔵条件に維持するには、冷却器2の表面の温度を一定にすることが好ましい。例えば、庫内を−1〜+2℃で湿度85%以上の貯蔵条件を達成させるためには、冷却器2の表面温度を−15℃以上に定常的に保持する。
【0035】
言い換えると、冷風式クーラー1は、冷却器2の蒸発温度を所定の温度に保持して、運転する。例えば、冷風式クーラー1は、冷却器2の蒸発温度を−10〜−15℃に保持する。冷却器2の蒸発温度を外気温度と関係なく一定にする。本例の冷風式クーラー1は、凝縮器3に送風する庫外ファン8を外気温度に相応して無段階に制御した回転数で回転させ、冷却器2の表面温度を−15℃以上に定常的に保持する。庫外ファンモータ9の回転数は、外気温度及び凝縮器3の端板の温度の変化を感知して変化する。庫内ファンモータ7の回転数は、冷却器2の温度、外気温度を感知して変化させる。
【0036】
図2のグラフは、庫外ファンモータ9を外気温度に応じて制御する様子を示している。図2のグラフの縦軸は、庫外ファンモータ9の回転数を示し、横軸は外気温度を示している。図2のグラフには、冷風式クーラー1の庫外ファンモータ9を制御する従来の制御方法(以下、「従来技術」という。)と、本発明の制御方法の両方を図示している。従来技術と本発明では、庫外ファンモータ9の回転数の制御は、外気温度が約−10℃〜50℃の温度範囲では、同じである。
【0037】
具体的に、従来技術でも本発明のどちらの場合でも、庫外ファンモータ9の回転数を約320rpmから庫外ファンモータ9の最大回転数までに制御している。しかしながら、外気温度が−10℃以下の場合は、従来技術では、庫外ファンモータ9の回転数を下げている。これに対して、本発明では、庫外ファンモータ9の回転数を、外気温度が約−10℃〜+50℃のインターバルで制御したときの最低回転数にしている。冷却器2の蒸発温度を制御するためには、庫外ファンモータ9を回転させて、凝縮器3の凝縮圧力を制御する。
【0038】
この場合、外気温度が−10℃以上〜+20℃のときは、効率よく制御できる。しかし、外気温度が−10℃以下、場合によって−30℃までに低下した場合、凝縮器3の凝縮圧力を制御することができない。本発明では、外気温度が−15℃以下になった場合、外気温度が−10℃のときと同じ程度の回転数で庫外ファン8を回転させて、凝縮器3の熱交換で冷媒の圧力を確保している。これと同時に、冷却器2の負荷を増やして、冷媒の蒸発温度を一定に制御している。
【0039】
図3は、庫内ファンモータ7を外気温度に応じて制御する様子を示している。図3に示すグラフの縦軸は、庫内ファンモータ7の回転数を示し、横軸は外気温度を示している。図3に示すグラフには、冷風式クーラー1の庫内ファンモータ7を制御する従来の制御方法(以下、「従来技術」という。)と、本発明の制御方法の両方を図示している。従来技術と本発明では、庫内ファンモータ7の回転数の制御は、外気温度が約−10℃〜+50℃のインターバルでは、同じで、約500rpmと一定にしている。
【0040】
従来技術では、庫内ファンモータ7の回転数の制御は、外気温度が−10℃以下に下がっても、−10℃〜+50℃になっても、一定で制御している。本発明の場合は、庫内ファンモータ7の回転数の制御は、外気温度が−10℃以下になると、その外気温度に相応して制御している。詳しくは、外気温度が−10℃以下になるにつれて、庫内ファンモータ7の回転数(速度)を増大している。図3の例では、外気温度が−10℃のとき、庫内ファンモータ7の回転数が500rpmである。
【0041】
外気温度が−30℃のとき、庫内ファンモータ7の回転数が880rpmである。言い換えると、外気温度が−10℃以下に下がった場合、冷却器2の負荷を増やしている。外気温度が−15℃以下に下がると、凝縮器3の熱交換が多くなり、冷却器2の蒸発温度が下がっていく。冷却器2の蒸発温度を一定にするためには、冷却器2の負荷を増加させる。
【0042】
図2のグラフから分かるように、即ち、凝縮器3の吸込の風量を一定にし、冷却器2の蒸発温度を感知しながら、冷却器2(蒸発器)の吐出量を変化させて、冷却器2の蒸発温度を一定にしている。この制御によって、最終的に、庫内の湿度を保持出来る。冷却器2の蒸発温度を一定に保持出来ることにより、冷却器2より吐出する冷却空気の温度が一定になる。これにより、庫内の湿度を一定に保持することが出来る。
【0043】
凝縮器3側の気温が極端に低下した場合、冷却器2の蒸発温度が下がり、一定に保持することが不可能となる。そのため、冷却器2(蒸発器)に対する負荷を増す(庫内ファン6の回転数を増大させる)ことにより蒸発温度を一定に保持することが可能になる。これにより室温を一定に保持出来るばかりでなく、蒸発温度を一定に保持出来るので、恒温室内の高湿と低温を自由に変化させ保持出来る効果がある。
【0044】
〔除霜運転〕
冷風式クーラー1の除霜運転のとき、冷却器2が加熱して、その表面温度が上昇し、冷却時に冷却器2に付着した霜が溶け、その水滴を拡散又は蒸発させる働きをする。除霜運転のとき、庫外ファン8と庫外ファンモータ9を停止させる。除霜運転のとき、庫内ファン6は、条件によって、稼働させる。
【0045】
冷風式クーラー1の除霜運転のとき、ファンがないと凝縮器3における熱交換は非常に少ないので、冷媒における状態変化は少なく、従って、冷却器2が急激に加熱され、50℃以上に加熱する。除霜サイクルのとき、冷却器2の表面温度が十35℃以下の場合は、庫内ファン6が停止する。除霜サイクルのとき、冷却器2の表面温度が十35℃以上になると直ちにサーモスタット12が働き、冷却器2(凝縮器として機能)に送風する庫内ファン6が最大回転数で回転する。
【0046】
このとき、冷却器2の表面に氷結した水分が解け、庫内ファン6の風速によって、室内へ拡散し、湿気になって戻される。そして、室内を果物や野菜等の保存に最適な低温多湿(−1〜+1℃、約90%)状態への達成に寄与する。これにより、冷却運転と除霜運転の各工程を繰り返すが、室内の湿度は低下することがなく、低温多湿の状態を維持することができる。このように、除霜運転時に、冷却器2の着霜が溶けてできた水滴を蒸発又は拡散させて庫内へ戻し、庫内の湿度を維持する。
【0047】
もともと、冷却器2に着霜する霜は、庫内の水分である。除霜運転が開始されて除霜するとき、冷却器2の着霜が溶ける。庫内ファン6を稼働させて、冷却器2に付着している水滴を蒸発又は拡散させて、庫内へ強制的に戻している。これによって、除湿した水分として室内に戻し、庫内の湿度を元に戻す働きをする。除霜終了後、冷却運転が開始する。また、除霜運転時に、外気温度が一定温度以下に下った場合、庫内ファンモータ7の回転数速度を制御する運転を行う。
【0048】
例えば、外気温度が−10℃以下に下った場合、庫内ファンモータ7を最大回転数速度で回転させる。このとき、冷却器2の着霜が溶けてできた水滴を蒸発又は拡散させて庫内へ戻す。また、除霜運転時、外気温度が−15〜+15℃のとき、冷却器2と凝縮器4に送風する各ファン6、8のいずれも停止する。そして、外気温度が+15℃以上のとき、冷却器2に送風する庫内ファン6は停止させ、凝縮器3に送風する庫外ファン8は一時的に停止させるが、冷却器2の表面温度が+35℃以上になったときに回転させる。
【0049】
この回転は、庫内ファンモータ7の最大回転数で行われる。冷風式クーラー1は、より効率的にするため、除霜時間を短縮化している。冷却器2にあまり着霜させないように短時間のインターバルで、除霜運転を実施する。除霜時間ができるだけ短時間となるように、除霜運転時に、冷却器2の温度を急激に温度上昇させる必要がある。庫内ファン6は、冷却器2の温度を急激に温度上昇させるためである。庫内ファン6は、庫内温度によって運転調整され制御される。
【0050】
冷却運転は、除霜運転で冷却器2上の霜を取り除いた後で、開始する。除霜運転と冷却運転は、短い時間で切り替えて行うことが好ましい。例えば、除霜運転の時間は数分以上で行われ、例えば、3〜10分間で行うことが好ましく、3〜5分間がより好ましい。除霜運転が終了後、冷却運転に切り替える。また、除霜運転時に、冷却器2の表面温度が緩和温度に達したとき、冷却運転に切り替えることができる。除霜運転の時間は、この緩和温度に達する時間で決められる。
【0051】
〔制御ユニット20〕
図4は、本発明の実施の形態の制御ユニット20の例の概要を図示したブロック図である。制御ユニット20は、主に、電源部21、制御部22、運転・表示部23から構成される。電源部21は、端子26を介して、商業電源等の電源に接続される。この電源は、図4の中では、好ましい例として3相(3Φ)200Vの電源を例示しているが、単相100V、単相200Vであっても良い。電源部21は、この3相(3Φ)200Vの電源から、制御ユニット20の構成部品や冷風式クーラー1のその他の構成部品に電源供給するためのものである。
【0052】
冷風式クーラー1の圧縮機4、庫内ファンモータ7、庫外ファンモータ9等は、駆動トルクが大きいので、3相(3Φ)200Vの電源が最適であるが、単相100V、単相200Vであっても良い。制御部22は、制御ユニット20全体の制御をするものである。制御部22は、電子又は電気的に動作する中央制御装置(シーケンサ)を有する構成であることができるが、本例では、多数リレー26〜28からなっている。
【0053】
制御部22は、複数のタイマ29、30等から制御時間に関するデータと、外気の温度を測定する外気温度計16、庫内の温度を測定する庫内温度計15、冷却器2の端板の温度を測定する冷却器温度計14等の温度計から測定データを取得して、リレー26〜28を切り替えしながら、庫内ファンモータ7、庫外ファンモータ9、四方弁5(図1図5を参照。)、圧縮機4(図1を参照。)等の制御を行う。タイマ29、30は、本例では、除霜時間の設定するものであり、60分周期等の長周期のタイマ、3〜20分周期の短周期のタイマである。
【0054】
外気温度計16は、凝縮器3の端板又は凝縮器3の近傍に設置されて、外気の温度を測定する。庫内温度計15は、庫内に設置され、庫内の温度を測定する。冷却器温度計14は、冷却器2の端板の温度を測定するもので、冷却器2の端板に設置される。これらの温度計は、入力端子31、32、33に接続されて、制御部22に接続される。スイッチ24とスイッチ25は、庫内ファンモータ7、庫外ファンモータ9の制御盤に接続されて動作する。
【0055】
制御部22は、スイッチ24とスイッチ25を介して、庫内ファンモータ7、庫外ファンモータ9に電源を供給し、それらを稼働と停止、そして回転速度を制御する。この図4に図示していないが、図1に図示した庫内サーモスタット12と庫外サーモスタット13は、冷却器温度計14、外気温度計16、庫内温度計15からデータを取得して、制御部22から直接制御されても良い。運転・表示部23は、冷風式クーラー1へ電源供給の状況、運転状況を表示するものである。
【0056】
運転・表示部23は、冷風式クーラー1全体を稼働又は停止するための運転スイッチ34、全体の電源が接続されていることを示す電源ランプ35、運転状況(運転しているか、停止しているか)を表示する運転ランプ36等を備える。電源ランプ35は、電源部21が電源に接続されたときに点灯する。運転ランプ36は、運転スイッチ34がONになり、冷風式クーラー1が稼働して運転しているときに点灯する。
【0057】
運転・表示部23は、このような簡単な構造になっているが、タッチディスプレイ、LED表示板、液晶ディスプレイ等を用いて、電流供給状況、各温度計の計測値、庫内湿度計(図示せず。)の測定値、運転時間、冷却時間、冷却サイクル、除霜時間、除霜サイクル、除霜運転の運転開始予定時刻、冷却運転の運転開始予定時刻、機種情報、日付、各種機器の測定値の経過グラフィック等の各種の運転データを表示することが可能である。マイクロコンピュータ等の計算機を用いて制御ユニット20を構成すると、この運転データを取得し、処理し易い。
【0058】
図5は、本発明の実施の形態の制御ユニット20の回路構成例の一部を図示した回路図である。上述の制御ユニット20は、上述の機能を実現するものであれば、電子回路でも、電気回路でも、電子計算機を用いた電子回路でも実現することができる。図5に図示した例は、庫内ファンモータ7を制御する例を示している。図5に図示した例は、リレーとスイッチを用いたもっとも簡易な回路構成である。図5には、リレー28、変圧器37、庫内ファンモータ制御盤7aに設置されたサイリスタ38が図示されている。
【0059】
リレー28、図4に図示した冷却器温度計14、外気温度計16、庫内温度計15からデータを取得し、かつ、タイマ29、30からデータを取得して、電源の接続、切断をする。変圧器37は、制御ユニット20の主回路回線から、庫内ファンモータ制御盤7aに電源供給をするための変圧器で、リレー28が、庫内ファンモータ制御盤7a側に切り返したときに動作する。サイリスタ38は、リレー28の指示で、庫内ファンモータ7の電源を接続、切断する。リレー28は、四方弁5の運転方向を変換することも可能である。ここで、図示していないが、ほぼ同じ構成の回路で、庫外ファンモータ9を制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、低温多湿の冷凍装置を利用する分野に利用するとよい。特に、低温多湿の環境を要する野菜や果物等の保存、冷蔵、冷凍、運搬する分野で利用すると良い。
【符号の説明】
【0061】
1…冷風式クーラー
2…冷却器
3…凝縮器
4…圧縮機
5…四方弁
6…庫内ファン
7…庫内ファンモータ
8…庫外ファン
9…庫外ファンモータ
10…ドライヤー
11…キャピラリーチューブ
12…庫内サーモスタット
13…庫外サーモスタット
20…制御ユニット
21…電源部
22…制御部
23…運転・表示部
24,25…スイッチ
26,27,28…リレー
29,30…タイマ
34…運転スイッチ
35…電源ランプ
36…運転ランプ
37…変圧器
38…サイリスタ
図1
図2
図3
図4
図5