【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の一態様において、疾患、好ましくは癌を治療するための方法であって、TMEM92遺伝子の発現を阻害するか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害する組成物の治療有効量を患者に投与することを含む方法が提供される。
【0007】
本発明はまた、治療に使用するための組成物であって、TMEM92遺伝子の発現を阻害できるか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害できる組成物を提供する。
【0008】
さらに、治療における、TMEM92遺伝子の発現を阻害するか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害する組成物の使用が提供される。
【0009】
本発明はさらに、疾患、好ましくは癌を治療するための薬剤の製造における、TMEM92遺伝子の発現を阻害するか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害する組成物の使用を提供する。
【0010】
好ましくは、組成物は、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含む。
【0011】
好ましくは、核酸配列は、単離された核酸配列である。
【0012】
好ましくは、組成物は、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含む核酸分子を含む。
【0013】
好ましくは、核酸分子は、二本鎖RNAを含む。
【0014】
好ましくは、核酸分子は、低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
このようなものとして、本発明の一実施形態において、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列は、TMEM92遺伝子の発現を妨害、例えば下方制御できることが好ましい。
【0015】
好ましくは、核酸分子は、ベクター核酸配列をさらに含む。
【0016】
好ましくは、核酸分子は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0017】
好ましくは、核酸分子は、TMEM92応答性プロモーターを含む。このようなものとして、核酸分子は、好ましくは、TMEM92を発現する細胞における遺伝子発現を選択的に駆動し得る。このような遺伝子としては、好ましくは、プロドラッグ活性化因子をコードするか、または溶菌ウイルスの複製を可能にする遺伝子が挙げられる。
【0018】
好ましくは、組成物は、核酸分子を含有する宿主細胞を含む。
【0019】
宿主細胞は哺乳類宿主細胞でもよいし、非哺乳類宿主細胞でもよい。
【0020】
好ましくは、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列は、ベクター、例えばDNAプラスミドに組み込まれる。このようなものとして、本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含むベクター、例えばDNAプラスミドを含む。
【0021】
好ましくは、組成物は、TMEM92タンパク質に結合できる抗体またはその断片を含む。
【0022】
好ましくは、抗体は、TMEM92タンパク質に特異的に結合する。
【0023】
好ましくは、抗体は、検出可能なマーカー、例えば蛍光マーカーまたはタグにコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、成長阻害剤にコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、細胞毒性剤、例えば毒素(例えば、免疫毒素)、抗生物質、溶解酵素または放射性同位体にコンジュゲーションされている。
【0024】
好ましくは、組成物は、TMEM92タンパク質機能のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニストを含む。
【0025】
好ましくは、組成物は、医薬組成物である。
【0026】
好ましくは、治療は、癌の治療である。
【0027】
好ましくは、疾患は、癌である。
【0028】
好ましくは、癌は、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体、または前記核酸配列を含む核酸分子、または
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体、または前記アミノ酸配列を含むアミノ酸分子
を含むバイオマーカーが提供される。
【0030】
この点において、配列番号:1は、1回膜貫通ドメインTMEM92遺伝子の核酸配列(GenBank参照番号NM_153229)に対応し、配列番号:2は、それによりコードされるTMEM92タンパク質(NCBIアクセッション番号EAW94628、gi119615034)に対応する。
【0031】
好ましくは、バイオマーカーは、例えば、前立腺癌バイオマーカー、非小細胞肺癌バイオマーカーおよび乳癌バイオマーカーから選択される癌バイオマーカーである。
【0032】
好ましくは、癌は、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される。
【0033】
好ましくは、その断片または変異体は、
(i)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列、ストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイゼーション可能な核酸配列、および/またはこれらに相補的な核酸配列、
(ii)配列番号:2と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、または
(iii)(i)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列
を含む。
【0034】
上記項目(iii)を言い換えれば、その断片または変異体は、
(A)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション可能な核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、または
(C)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列に相補的な核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、
を含むことが好ましい。
【0035】
好ましくは、その断片は、(i)配列番号:2に由来する少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個の連続するアミノ酸、または(ii)配列番号:1の核酸配列の断片であって、配列番号:2に由来する少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個の連続するアミノ酸をコードする断片を含む。より長い断片、例えば配列番号:2の少なくとも約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約50個、約75個、約100個、約125個および最大少なくとも約150個のアミノ酸、またはそれに対応する配列番号:1のコード断片も好ましい。断片としては、N末端および/またはC末端からx個のアミノ酸が削除された短縮ペプチドも挙げられ得る。このような短縮において、xは、1以上(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上)であってもよいが、好ましくは、配列番号:2の125個未満のアミノ酸、またはそれに対応する配列番号:1のコード断片である。
【0036】
好ましくは、その断片または変異体は、その機能性断片または機能性変異体である。
【0037】
本発明の別の態様によれば、患者における疾患、例えば癌を診断するための、または疾患、例えば癌を発症する危険性がある患者を同定するための方法であって、
(a)患者から得られた試料におけるバイオマーカーの量を測定すること、
(b)患者からの試料における測定されたバイオマーカーの量を正常対照におけるバイオマーカーの量と比較すること、
を含み、患者からの試料におけるバイオマーカーの量を正常対照におけるバイオマーカーの量と比較した差が、疾患の存在に関連するか、または疾患を発症する危険性に関連し、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、正常対照におけるバイオマーカーの量は、検出不可能である。
【0039】
本発明の別の態様によれば、患者における疾患、例えば癌を診断するための、または疾患、例えば癌を発症する危険性がある患者を同定するための方法であって、患者から得られた試料におけるバイオマーカーの量を測定することを含み、バイオマーカーの存在が疾患の存在に関連するか、または疾患を発症する危険性に関連し、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0040】
本発明の別の態様によれば、患者における疾患、例えば癌の進行をモニタリングするための方法であって、
(a)患者から得られた試料におけるバイオマーカーの量を測定すること、
(b)患者からの試料における測定されたバイオマーカーの量を正常対照におけるバイオマーカーの量と比較すること、および
(c)2つ以上の時間間隔で、工程(a)および(b)を反復すること
を含み、患者からのバイオマーカーの量の経時的な増加が疾患の進行の増大に関連し、患者からのバイオマーカーの量の経時的な減少が疾患の進行の減少に関連し、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0041】
したがって、本発明の方法は、疾患の発症、進行、安定化、改善および/または寛解を検出するのに使用できる。
【0042】
好ましくは、対照は、発症または進行をモニタリングするために、同じ患者からの過去の試料に由来し得る。しかしながら、集団、特に疾患がない健常集団または正常集団について、対照を標準化し得ることも好ましい。換言すれば、対照は、正常被験体に由来する正常対照試料で見られるバイオマーカーのレベルからなり得る。
【0043】
したがって、本発明の一例において、疾患、例えば癌の進行を診断またはモニタリングする方法であって、患者から得られた生体液におけるバイオマーカーを検出および/または定量化することを含み、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0044】
上記で論じたように、少なくとも2つの検出および/または定量化工程が、時間的に間隔を空けて提供されることが好ましい。
【0045】
好ましくは、工程の間隔を数日間、数週間、数年間または数カ月間空けて、バイオマーカーのレベルが変化したか否かを判定し、このようにして疾患の進行の変化があったか否かを示すことにより、2以上の機会に採取された試料におけるバイオマーカーのレベルの間で比較を行うことが可能になり、バイオマーカーのレベルの経時的な増加が疾患の発症または進行を示すのに対して、バイオマーカーのレベルの減少が疾患の改善および/または寛解を示し得る。
【0046】
好ましくは、バイオマーカーのレベルの差は、好ましくは少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.95%、好ましくは少なくとも約99.99%の信頼区間を提供する「t検定」を使用することによって統計的に有意に決定される。
【0047】
本発明のバイオマーカーおよび方法は早期癌を検出するのに特に有用であり、早期癌を検出するための公知の方法よりも高感度である。
【0048】
したがって、本発明のバイオマーカーおよび方法は、通常の方法を使用して癌について患者が試験陰性であった場合に癌を確認するのに特に有用である。
【0049】
治療の予後および選択は、癌の病期および患者の全般的健康状態に依存する。
【0050】
様々な種類の前立腺癌が公知である。最も一般的なものは前立腺細胞で発症し、前立腺腺癌として公知である。しかしながら、肉腫、小細胞癌および移行上皮癌などのその他の形態の前立腺癌が存在する。本発明の方法を使用して、これらの種類の癌のいずれかの発症を検出し得るが、腺癌の検出が好ましい。
【0051】
癌の進行は、通常、分類過程によってモニタリングされる。これは、癌がどのくらいよく発達しているか、およびそれが広がっているか否かを示す。スコアは1から4に進み、各病期で予後が段階的に悪くなる。
【0052】
前立腺癌に関して、病期は以下の通りである。
病期1:悪性細胞は、前立腺に限定されている。それらは、リンパ節またはその他の器官には広がっていない。グリーソンスコアは2〜4であり、前立腺の5パーセント未満が腫瘍成長から構成されている。
病期2:グリーソンスコアは5以上であり、腺の5%超が異常な成長を示す。癌は、依然として前立腺に限定されている。
病期3:悪性細胞が精嚢に広がっているが、リンパ節またはその他の器官には広がっていない。
病期4:リンパ節、骨盤組織またはより遠くの器官が侵されている。
【0053】
非小細胞肺癌に関して、病期は以下の通りである。
病期1:癌は肺の中に局在しており、いずれのリンパ節にも広がっていない。病期1は、病期1A(大きさが3cm以下の腫瘍)および病期1B(3cm超の腫瘍)に分けられる。
病期2:癌はリンパ節付近に広がっているか、またはリンパ節に広がっていないが、主要気管支の特定領域で、またはそれが肺粘膜に侵入する場所では大きい。病期2は、病期2A(大きさが3cm以下の腫瘍がリンパ節に広がっている)および病期2B(大きさが3cm以上の腫瘍がリンパ節に広がっているか、または主要気管支の領域もしくは肺粘膜もしくは胸壁に侵入する領域などの場所に存在する)に分けられる。
病期3:癌は、肺付近の組織に広がっている。病期3は、病期3A(大きな腫瘍がリンパ節付近に広がっているか、または任意の大きさの腫瘍が腫瘍からさらに離れたリンパ節に広がっている)および病期3B(任意の大きさの腫瘍が遠くのリンパ節に広がっているか、腫瘍が胸部におけるその他の構造、例えば心臓または食道に侵入しているか、または腫瘍が悪性胸水を伴っている)に分けられる。
病期4:癌は、体の別の部分に広がっている。これは、別の肺葉への広がりを含み得る。
【0054】
乳癌に関して、病期は以下の通りである。
病期1:腫瘍は、2cm未満である。腋窩リンパ節は侵されておらず、癌が体のいかなる場所にも広がっている兆候はない。
病期2:腫瘍は2〜5cmであるか、もしくは腋窩リンパ節は侵されているか、またはその両方である。しかしながら、癌がさらに広がっている兆候はない。
病期3:腫瘍は5cm超であり、筋肉または皮膚などの周囲の構造に付着しているかもしれない。リンパ節は通常は侵されているが、癌が乳房または腋窩リンパ腺を越えて広がっている兆候はない。
病期4:腫瘍は任意の大きさであるが、リンパ節は通常は侵されており、癌は体のその他の部分に広がっている。これは、二次癌または転移性乳癌である。
【0055】
好ましくは、本発明の方法は、病期1または病期2(より好ましくは病期1)の前にまたは前記病期に、癌の発症を検出する。
【0056】
本明細書において使用される「早期」という用語は、上記で論じた病期1および/または病期2を指すといえると理解される。
【0057】
本明細書において使用される「後期」という用語に関しては、病期3および/または病期4を指すといえると理解される。
【0058】
癌の病状の「早期」および「後期」の性質は、医師によって決定され得ると理解される。それらはそれぞれ非転移状態および転移状態に関連し得ることも想定される。
【0059】
一態様において、早期癌を検出するための本発明の方法が提供され、この方法では、対照と患者から得られた試料との間の増加が早期癌を示す。好ましくは、増加は、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約125%、好ましくは少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約250%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約500%である。
【0060】
また、後期癌を検出するための本発明の方法が提供され、この方法では、対照と患者から得られた試料との間の増加が後期癌を示す。好ましくは、増加は、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約125%、好ましくは少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約250%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約750%、好ましくは少なくとも約1000%である。
【0061】
さらに、癌の病期の変化をモニタリングするための本発明の方法が提供され、この方法では、より早期の試料または対照と比較した増加が、癌がより早期の病期から後期の病期に、例えば病期1から病期2に、病期2から病期3に、病期3から病期4に、早期から後期に、または中間の病期、例えば上記癌特異的病期に関する病期2Aから病期2Bに進行したことを示す。好ましくは、増加は、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約125%、好ましくは少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約250%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約750%、好ましくは少なくとも約1000%である。
【0062】
バイオマーカーは、正常対照のレベルの少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約3倍、好ましくは少なくとも約4倍、好ましくは少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、好ましくは少なくとも約30倍、好ましくは少なくとも約40倍、好ましくは少なくとも約50倍、好ましくは少なくとも約75倍、好ましくは少なくとも約100倍のレベルで存在する場合に、疾患、例えば癌の存在または疾患、例えば癌を発症する危険性を示すことが好ましい。
【0063】
本発明の方法においては、(i)正常対照のものと比較したバイオマーカーの発現の異なる増加レベル、および/または(ii)バイオマーカーの異なる発現レベルを参照することによって、異なる種類の癌を区別可能とすることが好ましい。
【0064】
例えば、
図4に示されるように、PC3(前立腺癌)の発現レベルはA549(非小細胞肺癌)の発現レベルよりも大きく、A549(非小細胞肺癌)の発現レベルはMDA−MB−231(乳癌)の発現レベルよりも大きかった。
【0065】
本発明はまた、疾患、例えば癌の治療の有効性をモニタリングするための方法であって、患者から得られた生体試料におけるバイオマーカーの存在を検出および/または定量化することを含み、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される方法を提供する。
【0066】
好ましくは、本発明の方法において、バイオマーカーの検出および/または定量化は、MALDI−TOF、SELDI、1または複数のリガンドとの相互作用を介して、1−Dもしくは2−Dゲルベースの分析システム、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーと質量分析技術(ICAT(登録商標)またはiTRAQ(登録商標)を含む)との組み合わせ、薄層クロマトグラフィー、NMR分光法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RAI)、酵素免疫測定法(EIA)、側方流動/免疫クロマトグラフィーストリップ試験、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、および粒子ベースの免疫測定法(金、銀またはラテックス粒子、磁性粒子またはQドットを使用することを含む)、および組織切片上における免疫組織化学の1またはそれ以上による。
【0067】
好ましくは、バイオマーカーの検出および/または定量化は、マイクロタイタープレート、ストリップフォーマット、アレイまたはチップ上で行われる。
【0068】
好ましくは、バイオマーカーの検出および/または定量化は、バイオマーカーに特異的な抗体を含むELISA、好ましくはレポーターに連結したものを含むELISAによる。
【0069】
好ましくは、バイオマーカーの検出および/または定量化は、バイオセンサーによる。
【0070】
好ましくは、試料は、患者から得られた生体液または組織を含む。好ましくは、生体液または組織は、尿、尿から採取された細胞、循環腫瘍細胞、生検試料、精液、肺洗浄液、乳頭吸引物、細胞液、痰、血液または唾液を含む。
【0071】
前立腺癌に関する好ましい実施形態において、試料は、尿、精液、血液、尿から採取された細胞、循環腫瘍細胞、および/または患者から得られた前立腺生検試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、患者の前立腺から得られた生体液または組織を含む。
【0072】
非小細胞肺癌に関する好ましい実施形態において、試料は、痰、肺洗浄液、血液、循環腫瘍細胞、および/または患者から得られた肺生検試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、患者の肺から得られた生体液または組織を含む。
【0073】
乳癌に関する好ましい実施形態において、試料は、(乳頭への食塩水洗浄からの)乳頭吸引物、血液、循環腫瘍細胞、および/または乳房組織生検試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、患者の乳房から得られた生体液または組織を含む。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態において、試料が得られた患者の体内の部位は、特定の種類の疾患、例えば癌に対応し得ると理解される。
【0075】
生体液が全細胞/インタクトな細胞を実質的に含まないか、または全く含まないことも好ましい。好ましくは、生体液は、血小板および細胞残屑(細胞の溶解により生じるものなど)を含まない。好ましくは、生体液は、原核細胞および真核細胞の両方を含まない。
【0076】
このような試料は、当技術分野で公知の多数の方法によって得ることができ、このようなものは当業者には明らかであろう。例えば、尿の試料は容易に入手可能であるが、血液または血清の試料は、例えば、注射針および注射器を使用することによって非経口的に得ることができる。無細胞試料または実質的な無細胞試料は、試料を当業者に公知の様々な技術(限定されないが、遠心分離およびろ過が挙げられる)に供することによって得ることができる。
【0077】
非侵襲的技術を使用して試料を得ることが一般に好ましいが、組織ホモジネート、組織切片および生検標本などの試料を得ることが依然としてより好ましい。
【0078】
本発明の別の態様は、疾患、好ましくは癌を有する患者を治療するための方法であって、本発明のバイオマーカーの治療有効量を患者に投与することを含み、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される方法に関する。
【0079】
本発明の別の態様は、患者における疾患、例えば癌をイメージングするための方法であって、本発明のバイオマーカーに結合する抗体またはその断片を患者に投与することを含み、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される方法に関する。
【0080】
好ましくは、抗体は、検出可能なマーカー、例えば蛍光マーカーまたはタグにコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、成長阻害剤にコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、細胞毒性剤、例えば毒素(例えば、免疫毒素)、抗生物質、溶解酵素または放射性同位体にコンジュゲーションされている。
【0081】
組成物についての本明細書における記述はまた、組成物それ自体に関することを意図する。したがって、本発明の別の態様は、
(A)本発明のバイオマーカー、
(B)(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列、
(C)(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含む核酸分子、
(D)核酸分子を含有する宿主細胞、
(E)(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含むベクター、例えばDNAプラスミド、
(F)TMEM92タンパク質に結合できる抗体またはその断片、
(G)本発明のバイオマーカーに結合できる抗体またはその断片、および/または
(H)TMEM92タンパク質機能のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニスト
を含む組成物に関する。
【0082】
好ましくは、組成物は、医薬組成物である。
【0083】
本発明はまた、本発明の組成物、例えば本発明のバイオマーカー、または本発明のバイオマーカーに結合する抗体もしくはその断片を含むワクチンを提供する。
【0084】
この点において、TMEM92は細胞膜の外側に存在するので、ワクチンに関する理想的な標的である。
【0085】
好ましくは、ワクチンは、例えば、前立腺癌ワクチン、非小細胞肺癌ワクチンおよび乳癌ワクチンから選択される癌ワクチンである。
【0086】
本発明の別の態様は、疾患、例えば癌のバイオマーカーとしての、体液中で検出可能なバイオマーカーの使用であって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される使用に関する。
【0087】
好ましくは、前記使用は、臨床スクリーニング、予後評価の方法、治療結果のモニタリング、特定の治療処置に対して反応する可能性が最も高い患者を同定する方法、ならびに薬物のスクリーニングおよび開発からなる群より選択される方法におけるものである。
【0088】
本発明の別の態様は、疾患、例えば癌を治療するための薬剤の製造における本発明の組成物またはバイオマーカーの使用であって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される使用に関する。
【0089】
また、例えば、癌に関する治療または診断に使用するための本発明の組成物またはバイオマーカーであって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される本発明の組成物またはバイオマーカーが提供される。
【0090】
本発明の別の態様は、患者における疾患、例えば癌をイメージングするための方法に使用するための、本発明のバイオマーカーに結合する抗体またはその断片であって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される抗体またはその断片に関する。
【0091】
好ましくは、本明細書において記載される抗体またはその断片は、本発明のバイオマーカーに特異的に結合する。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明の方法および組成物は、早期の、例えば疾患の症状が現れる前の疾患を治療または診断するためのものである。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、臨床病期の疾患を治療または診断するためのものである。
【0094】
本発明の別の態様によれば、上記方法または用途で使用するためのキットであって、バイオマーカーに結合できるか、またはバイオマーカーを特異的に認識できる体液中で検出可能なリガンド、例えば本明細書において記載される抗体またはその断片と、レポーター手段とを含むキットが提供される。
【0095】
好ましくは、キットは、アレイまたはチップである。
【0096】
好ましくは、キットは、マイクロタイタープレート、試験ストリップ、アレイまたはチップを含む。
【0097】
好ましくは、キットは、本発明の方法、用途および/または組成物にしたがって使用するための説明書を含む。
【0098】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態例を説明する。