特許第6158785号(P6158785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6158785疾患を治療、診断およびモニタリングするための組成物ならびに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158785
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】疾患を治療、診断およびモニタリングするための組成物ならびに方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20170626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20170626BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A61K39/395 T
   A61P35/00
   A61K39/395 C
   A61K31/7088ZNA
   G01N33/53 M
   G01N33/53 D
   A61K49/00
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-501704(P2014-501704)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-511845(P2014-511845A)
(43)【公表日】2014年5月19日
(86)【国際出願番号】GB2012000285
(87)【国際公開番号】WO2012131301
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月17日
(31)【優先権主張番号】1105129.9
(32)【優先日】2011年3月28日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513245727
【氏名又は名称】エイチオーエックス セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098017
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 宏嗣
(72)【発明者】
【氏名】モーガン,リチャード
【審査官】 吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0047689(US,A1)
【文献】 GILES TERRI S,GENE EXPRESSION PROFILING OF COLONIC SERRATED EPITHELIAL LESIONS,PROCEEDINGS OF UNITED STATES AND CANADIAN ACADEMY OF PATHOLOGY ANNUAL MEETING [ONLINE],2011年 2月28日,URL,http://www.abstracts2view.com/uscap11/view.php?nu=USCAP11L_1882
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
A61K 41/00−49/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MEM92タンパク質の機能を阻害する組成物であって、TMEM92タンパク質に結合できる抗体を含む、癌治療薬として用いる組成物。
【請求項2】
前記抗体が、検出可能なマーカーおよび/または成長阻害剤にコンジュゲーションされており、場合により、前記抗体が、細胞毒性剤、抗生物質、溶解酵素または放射性同位体にコンジュゲーションされている、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
TMEM92遺伝子の発現を阻害する組成物であって、配列番号:1の核酸配列に相補的な核酸分子を含む、癌治療薬として用いる組成物。
【請求項4】
前記核酸分子が二本鎖RNAを含み、場合により、前記核酸分子が低分子干渉RNA(siRNA)を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
前記癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌について、患者における前記癌の存在または前記癌を発症する危険性がある患者を特定する方法であって、
(a)患者から得られた試料における次の(i)または(ii)を含むバイオマーカーの量を測定すること、
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分子、
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)患者からの前記試料における測定された前記バイオマーカーの量を正常対照における前記バイオマーカーの量と比較すること、を含み、
患者からの前記試料における前記バイオマーカーの量を正常対照における前記バイオマーカーの量と比較した差が、癌の存在に関連するか、または癌を発症する危険性に関連する、方法。
【請求項7】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌について、患者における前記癌の存在または前記癌を発症する危険性がある患者を特定する方法であって、
患者から得られた試料における次の(i)または(ii)を含むバイオマーカーの量を測定することを含み、
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分子、
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク質、
前記バイオマーカーの存在が癌の存在に関連するか、または癌を発症する危険性に関連する、方法。
【請求項8】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌について、患者における癌の進行をモニタリングする方法であって、
(a)患者から得られた試料における次の(i)または(ii)を含むバイオマーカーの量を測定すること、
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分子、
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク質、
(b)患者からの前記試料における測定された前記バイオマーカーの量を正常対照における前記バイオマーカーの量と比較すること、および
(c)2つ以上の時間間隔で、工程(a)および工程(b)を反復すること
を含み、
患者からの前記バイオマーカーの量の経時的な増加が癌の進行の増大に関連し、患者からの前記バイオマーカーの量の経時的な減少が癌の進行の減少に関連する、方法。
【請求項9】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌の治療の有効性をモニタリングするための方法であって、
患者から得られた生体試料における次の(i)または(ii)を含むバイオマーカーの存在を検出および/または定量化することを含む方法。
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク
【請求項10】
患者における癌の画像生成方法であって、
画像が前記患者に投与される、次の(i)または(ii)を含むバイオマーカーに結合する抗体またはその断片を用いて生成され
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分子、
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク質、
癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される、画像生成方法。
【請求項11】
前記抗体が検出可能なマーカーに結合されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌の診断に用いる組成物であって、配列番号:2を含むアミノ酸配列または前記アミノ酸配列を含むタンパク質を含んでなる組成物。
【請求項13】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌の治療または診断に用いる組成物であって、配列番号:1の核酸配列に相補的な核酸配列を含む核酸分子を含んでなる組成物。
【請求項14】
前記核酸分子を含有する宿主細胞を含んでなる請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌の治療または診断に用いる組成物であって、配列番号:1の核酸配列に相補的な核酸配列を含むベクター、例えばDNAプラスミドを含んでなる組成物。
【請求項16】
前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌の治療または診断に用いる組成物であって、TMEM92タンパク質に結合できる抗体またはその断片を含んでなる組成物。
【請求項17】
請求項1ないし5のいずれかに記載の組成物を使用する際に用いるキットであって、
前記キットは、下記の(i)または(ii)を含むバイオマーカーに結合できる、または前記バイオマーカーを特異的に認識できる体液中で検出可能なリガンドと、レポーター手段とを含むキット。
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的な核酸配列からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分子
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体のアミノ酸配列からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク質
【請求項18】
請求項6ないし11のいずれかに記載の方法に使用するためのキットであって、
前記キットは、下記の(i)または(ii)を含むバイオマーカーに結合できるか、または該バイオマーカーを特異的に認識できる体液中で検出可能なリガンドと、レポーター手段とを含むキット。
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体からなる核酸分子、または前記核酸配列を含む核酸分子
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体からなるタンパク質、または前記アミノ酸配列を含むタンパク質
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、疾患、例えば癌を治療、診断およびモニタリングするための組成物ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は世界で最も高頻度に見られる疾患の1つであり、毎年何百万人もの人々が罹患している。多くの種類の癌が公知である。大部分の癌については、有効な治療は存在しないか、または少数の患者で有効であるに過ぎない。
したがって、癌の新たな治療および癌を診断する新たな方法を確定することが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
TMEM92(膜貫通タンパク質92)(NM_153229)はいまだに特性決定されていない遺伝子であり、1回膜貫通ドメインを有する159個のアミノ酸(17.2kDa)タンパク質をコードすると予測される(図1)。
【0004】
驚くべきことに、TMEM92は多くの正常成体組織で発現しておらず、肝臓、結腸、肺および子宮で非常に低いレベルでのみ発現しており、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌に由来する細胞株で強く発現していることが見出された。TMEM92の差次的発現の結果として、その発現は、例えば、癌に関連するバイオマーカーとして使用できる。
【0005】
さらに、PC3細胞(転移性前立腺癌に由来する)およびWPMY−1細胞(正常前立腺線維芽細胞に由来する非悪性細胞株)においてTMEM92のsiRNAノックダウンを使用することにより、PC3におけるTMEM92のノックダウンは、対照siRNAと比較して細胞生存の有意な減少を引き起こすが、WPMY−1細胞におけるTMEM92ノックダウンは、細胞死を引き起こさないことが本明細書において示された。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の一態様において、疾患、好ましくは癌を治療するための方法であって、TMEM92遺伝子の発現を阻害するか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害する組成物の治療有効量を患者に投与することを含む方法が提供される。
【0007】
本発明はまた、治療に使用するための組成物であって、TMEM92遺伝子の発現を阻害できるか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害できる組成物を提供する。
【0008】
さらに、治療における、TMEM92遺伝子の発現を阻害するか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害する組成物の使用が提供される。
【0009】
本発明はさらに、疾患、好ましくは癌を治療するための薬剤の製造における、TMEM92遺伝子の発現を阻害するか、またはTMEM92タンパク質の機能を阻害する組成物の使用を提供する。
【0010】
好ましくは、組成物は、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含む。
【0011】
好ましくは、核酸配列は、単離された核酸配列である。
【0012】
好ましくは、組成物は、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含む核酸分子を含む。
【0013】
好ましくは、核酸分子は、二本鎖RNAを含む。
【0014】
好ましくは、核酸分子は、低分子干渉RNA(siRNA)を含む。
このようなものとして、本発明の一実施形態において、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列は、TMEM92遺伝子の発現を妨害、例えば下方制御できることが好ましい。
【0015】
好ましくは、核酸分子は、ベクター核酸配列をさらに含む。
【0016】
好ましくは、核酸分子は、異種ポリペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0017】
好ましくは、核酸分子は、TMEM92応答性プロモーターを含む。このようなものとして、核酸分子は、好ましくは、TMEM92を発現する細胞における遺伝子発現を選択的に駆動し得る。このような遺伝子としては、好ましくは、プロドラッグ活性化因子をコードするか、または溶菌ウイルスの複製を可能にする遺伝子が挙げられる。
【0018】
好ましくは、組成物は、核酸分子を含有する宿主細胞を含む。
【0019】
宿主細胞は哺乳類宿主細胞でもよいし、非哺乳類宿主細胞でもよい。
【0020】
好ましくは、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列は、ベクター、例えばDNAプラスミドに組み込まれる。このようなものとして、本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含むベクター、例えばDNAプラスミドを含む。
【0021】
好ましくは、組成物は、TMEM92タンパク質に結合できる抗体またはその断片を含む。
【0022】
好ましくは、抗体は、TMEM92タンパク質に特異的に結合する。
【0023】
好ましくは、抗体は、検出可能なマーカー、例えば蛍光マーカーまたはタグにコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、成長阻害剤にコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、細胞毒性剤、例えば毒素(例えば、免疫毒素)、抗生物質、溶解酵素または放射性同位体にコンジュゲーションされている。
【0024】
好ましくは、組成物は、TMEM92タンパク質機能のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニストを含む。
【0025】
好ましくは、組成物は、医薬組成物である。
【0026】
好ましくは、治療は、癌の治療である。
【0027】
好ましくは、疾患は、癌である。
【0028】
好ましくは、癌は、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される。
【0029】
本発明の別の態様によれば、
(i)配列番号:1を含む核酸配列またはその断片もしくは変異体、または前記核酸配列を含む核酸分子、または
(ii)配列番号:2を含むアミノ酸配列またはその断片もしくは変異体、または前記アミノ酸配列を含むアミノ酸分子
を含むバイオマーカーが提供される。
【0030】
この点において、配列番号:1は、1回膜貫通ドメインTMEM92遺伝子の核酸配列(GenBank参照番号NM_153229)に対応し、配列番号:2は、それによりコードされるTMEM92タンパク質(NCBIアクセッション番号EAW94628、gi119615034)に対応する。
【0031】
好ましくは、バイオマーカーは、例えば、前立腺癌バイオマーカー、非小細胞肺癌バイオマーカーおよび乳癌バイオマーカーから選択される癌バイオマーカーである。
【0032】
好ましくは、癌は、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される。
【0033】
好ましくは、その断片または変異体は、
(i)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列、ストリンジェントな条件下でこれらにハイブリダイゼーション可能な核酸配列、および/またはこれらに相補的な核酸配列、
(ii)配列番号:2と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列、または
(iii)(i)の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列
を含む。
【0034】
上記項目(iii)を言い換えれば、その断片または変異体は、
(A)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、
(B)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション可能な核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、または
(C)配列番号:1と少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約75%、または少なくとも約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約96%、または少なくとも約97%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の核酸配列同一性を有する核酸配列に相補的な核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、
を含むことが好ましい。
【0035】
好ましくは、その断片は、(i)配列番号:2に由来する少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個の連続するアミノ酸、または(ii)配列番号:1の核酸配列の断片であって、配列番号:2に由来する少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、好ましくは少なくとも6個、好ましくは少なくとも7個、好ましくは少なくとも8個の連続するアミノ酸をコードする断片を含む。より長い断片、例えば配列番号:2の少なくとも約10個、約15個、約20個、約25個、約30個、約50個、約75個、約100個、約125個および最大少なくとも約150個のアミノ酸、またはそれに対応する配列番号:1のコード断片も好ましい。断片としては、N末端および/またはC末端からx個のアミノ酸が削除された短縮ペプチドも挙げられ得る。このような短縮において、xは、1以上(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100またはそれ以上)であってもよいが、好ましくは、配列番号:2の125個未満のアミノ酸、またはそれに対応する配列番号:1のコード断片である。
【0036】
好ましくは、その断片または変異体は、その機能性断片または機能性変異体である。
【0037】
本発明の別の態様によれば、患者における疾患、例えば癌を診断するための、または疾患、例えば癌を発症する危険性がある患者を同定するための方法であって、
(a)患者から得られた試料におけるバイオマーカーの量を測定すること、
(b)患者からの試料における測定されたバイオマーカーの量を正常対照におけるバイオマーカーの量と比較すること、
を含み、患者からの試料におけるバイオマーカーの量を正常対照におけるバイオマーカーの量と比較した差が、疾患の存在に関連するか、または疾患を発症する危険性に関連し、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、正常対照におけるバイオマーカーの量は、検出不可能である。
【0039】
本発明の別の態様によれば、患者における疾患、例えば癌を診断するための、または疾患、例えば癌を発症する危険性がある患者を同定するための方法であって、患者から得られた試料におけるバイオマーカーの量を測定することを含み、バイオマーカーの存在が疾患の存在に関連するか、または疾患を発症する危険性に関連し、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0040】
本発明の別の態様によれば、患者における疾患、例えば癌の進行をモニタリングするための方法であって、
(a)患者から得られた試料におけるバイオマーカーの量を測定すること、
(b)患者からの試料における測定されたバイオマーカーの量を正常対照におけるバイオマーカーの量と比較すること、および
(c)2つ以上の時間間隔で、工程(a)および(b)を反復すること
を含み、患者からのバイオマーカーの量の経時的な増加が疾患の進行の増大に関連し、患者からのバイオマーカーの量の経時的な減少が疾患の進行の減少に関連し、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0041】
したがって、本発明の方法は、疾患の発症、進行、安定化、改善および/または寛解を検出するのに使用できる。
【0042】
好ましくは、対照は、発症または進行をモニタリングするために、同じ患者からの過去の試料に由来し得る。しかしながら、集団、特に疾患がない健常集団または正常集団について、対照を標準化し得ることも好ましい。換言すれば、対照は、正常被験体に由来する正常対照試料で見られるバイオマーカーのレベルからなり得る。
【0043】
したがって、本発明の一例において、疾患、例えば癌の進行を診断またはモニタリングする方法であって、患者から得られた生体液におけるバイオマーカーを検出および/または定量化することを含み、場合により、疾患が、例えば前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される癌である方法が提供される。
【0044】
上記で論じたように、少なくとも2つの検出および/または定量化工程が、時間的に間隔を空けて提供されることが好ましい。
【0045】
好ましくは、工程の間隔を数日間、数週間、数年間または数カ月間空けて、バイオマーカーのレベルが変化したか否かを判定し、このようにして疾患の進行の変化があったか否かを示すことにより、2以上の機会に採取された試料におけるバイオマーカーのレベルの間で比較を行うことが可能になり、バイオマーカーのレベルの経時的な増加が疾患の発症または進行を示すのに対して、バイオマーカーのレベルの減少が疾患の改善および/または寛解を示し得る。
【0046】
好ましくは、バイオマーカーのレベルの差は、好ましくは少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、好ましくは少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.95%、好ましくは少なくとも約99.99%の信頼区間を提供する「t検定」を使用することによって統計的に有意に決定される。
【0047】
本発明のバイオマーカーおよび方法は早期癌を検出するのに特に有用であり、早期癌を検出するための公知の方法よりも高感度である。
【0048】
したがって、本発明のバイオマーカーおよび方法は、通常の方法を使用して癌について患者が試験陰性であった場合に癌を確認するのに特に有用である。
【0049】
治療の予後および選択は、癌の病期および患者の全般的健康状態に依存する。
【0050】
様々な種類の前立腺癌が公知である。最も一般的なものは前立腺細胞で発症し、前立腺腺癌として公知である。しかしながら、肉腫、小細胞癌および移行上皮癌などのその他の形態の前立腺癌が存在する。本発明の方法を使用して、これらの種類の癌のいずれかの発症を検出し得るが、腺癌の検出が好ましい。
【0051】
癌の進行は、通常、分類過程によってモニタリングされる。これは、癌がどのくらいよく発達しているか、およびそれが広がっているか否かを示す。スコアは1から4に進み、各病期で予後が段階的に悪くなる。
【0052】
前立腺癌に関して、病期は以下の通りである。
病期1:悪性細胞は、前立腺に限定されている。それらは、リンパ節またはその他の器官には広がっていない。グリーソンスコアは2〜4であり、前立腺の5パーセント未満が腫瘍成長から構成されている。
病期2:グリーソンスコアは5以上であり、腺の5%超が異常な成長を示す。癌は、依然として前立腺に限定されている。
病期3:悪性細胞が精嚢に広がっているが、リンパ節またはその他の器官には広がっていない。
病期4:リンパ節、骨盤組織またはより遠くの器官が侵されている。
【0053】
非小細胞肺癌に関して、病期は以下の通りである。
病期1:癌は肺の中に局在しており、いずれのリンパ節にも広がっていない。病期1は、病期1A(大きさが3cm以下の腫瘍)および病期1B(3cm超の腫瘍)に分けられる。
病期2:癌はリンパ節付近に広がっているか、またはリンパ節に広がっていないが、主要気管支の特定領域で、またはそれが肺粘膜に侵入する場所では大きい。病期2は、病期2A(大きさが3cm以下の腫瘍がリンパ節に広がっている)および病期2B(大きさが3cm以上の腫瘍がリンパ節に広がっているか、または主要気管支の領域もしくは肺粘膜もしくは胸壁に侵入する領域などの場所に存在する)に分けられる。
病期3:癌は、肺付近の組織に広がっている。病期3は、病期3A(大きな腫瘍がリンパ節付近に広がっているか、または任意の大きさの腫瘍が腫瘍からさらに離れたリンパ節に広がっている)および病期3B(任意の大きさの腫瘍が遠くのリンパ節に広がっているか、腫瘍が胸部におけるその他の構造、例えば心臓または食道に侵入しているか、または腫瘍が悪性胸水を伴っている)に分けられる。
病期4:癌は、体の別の部分に広がっている。これは、別の肺葉への広がりを含み得る。
【0054】
乳癌に関して、病期は以下の通りである。
病期1:腫瘍は、2cm未満である。腋窩リンパ節は侵されておらず、癌が体のいかなる場所にも広がっている兆候はない。
病期2:腫瘍は2〜5cmであるか、もしくは腋窩リンパ節は侵されているか、またはその両方である。しかしながら、癌がさらに広がっている兆候はない。
病期3:腫瘍は5cm超であり、筋肉または皮膚などの周囲の構造に付着しているかもしれない。リンパ節は通常は侵されているが、癌が乳房または腋窩リンパ腺を越えて広がっている兆候はない。
病期4:腫瘍は任意の大きさであるが、リンパ節は通常は侵されており、癌は体のその他の部分に広がっている。これは、二次癌または転移性乳癌である。
【0055】
好ましくは、本発明の方法は、病期1または病期2(より好ましくは病期1)の前にまたは前記病期に、癌の発症を検出する。
【0056】
本明細書において使用される「早期」という用語は、上記で論じた病期1および/または病期2を指すといえると理解される。
【0057】
本明細書において使用される「後期」という用語に関しては、病期3および/または病期4を指すといえると理解される。
【0058】
癌の病状の「早期」および「後期」の性質は、医師によって決定され得ると理解される。それらはそれぞれ非転移状態および転移状態に関連し得ることも想定される。
【0059】
一態様において、早期癌を検出するための本発明の方法が提供され、この方法では、対照と患者から得られた試料との間の増加が早期癌を示す。好ましくは、増加は、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約125%、好ましくは少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約250%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約500%である。
【0060】
また、後期癌を検出するための本発明の方法が提供され、この方法では、対照と患者から得られた試料との間の増加が後期癌を示す。好ましくは、増加は、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約125%、好ましくは少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約250%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約750%、好ましくは少なくとも約1000%である。
【0061】
さらに、癌の病期の変化をモニタリングするための本発明の方法が提供され、この方法では、より早期の試料または対照と比較した増加が、癌がより早期の病期から後期の病期に、例えば病期1から病期2に、病期2から病期3に、病期3から病期4に、早期から後期に、または中間の病期、例えば上記癌特異的病期に関する病期2Aから病期2Bに進行したことを示す。好ましくは、増加は、少なくとも約100%、好ましくは少なくとも約125%、好ましくは少なくとも約150%、好ましくは少なくとも約200%、好ましくは少なくとも約250%、好ましくは少なくとも約300%、好ましくは少なくとも約500%、好ましくは少なくとも約750%、好ましくは少なくとも約1000%である。
【0062】
バイオマーカーは、正常対照のレベルの少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約3倍、好ましくは少なくとも約4倍、好ましくは少なくとも約5倍、好ましくは少なくとも約10倍、好ましくは少なくとも約20倍、好ましくは少なくとも約30倍、好ましくは少なくとも約40倍、好ましくは少なくとも約50倍、好ましくは少なくとも約75倍、好ましくは少なくとも約100倍のレベルで存在する場合に、疾患、例えば癌の存在または疾患、例えば癌を発症する危険性を示すことが好ましい。
【0063】
本発明の方法においては、(i)正常対照のものと比較したバイオマーカーの発現の異なる増加レベル、および/または(ii)バイオマーカーの異なる発現レベルを参照することによって、異なる種類の癌を区別可能とすることが好ましい。
【0064】
例えば、図4に示されるように、PC3(前立腺癌)の発現レベルはA549(非小細胞肺癌)の発現レベルよりも大きく、A549(非小細胞肺癌)の発現レベルはMDA−MB−231(乳癌)の発現レベルよりも大きかった。
【0065】
本発明はまた、疾患、例えば癌の治療の有効性をモニタリングするための方法であって、患者から得られた生体試料におけるバイオマーカーの存在を検出および/または定量化することを含み、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される方法を提供する。
【0066】
好ましくは、本発明の方法において、バイオマーカーの検出および/または定量化は、MALDI−TOF、SELDI、1または複数のリガンドとの相互作用を介して、1−Dもしくは2−Dゲルベースの分析システム、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーと質量分析技術(ICAT(登録商標)またはiTRAQ(登録商標)を含む)との組み合わせ、薄層クロマトグラフィー、NMR分光法、サンドイッチ免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RAI)、酵素免疫測定法(EIA)、側方流動/免疫クロマトグラフィーストリップ試験、ウエスタンブロッティング、免疫沈降、および粒子ベースの免疫測定法(金、銀またはラテックス粒子、磁性粒子またはQドットを使用することを含む)、および組織切片上における免疫組織化学の1またはそれ以上による。
【0067】
好ましくは、バイオマーカーの検出および/または定量化は、マイクロタイタープレート、ストリップフォーマット、アレイまたはチップ上で行われる。
【0068】
好ましくは、バイオマーカーの検出および/または定量化は、バイオマーカーに特異的な抗体を含むELISA、好ましくはレポーターに連結したものを含むELISAによる。
【0069】
好ましくは、バイオマーカーの検出および/または定量化は、バイオセンサーによる。
【0070】
好ましくは、試料は、患者から得られた生体液または組織を含む。好ましくは、生体液または組織は、尿、尿から採取された細胞、循環腫瘍細胞、生検試料、精液、肺洗浄液、乳頭吸引物、細胞液、痰、血液または唾液を含む。
【0071】
前立腺癌に関する好ましい実施形態において、試料は、尿、精液、血液、尿から採取された細胞、循環腫瘍細胞、および/または患者から得られた前立腺生検試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、患者の前立腺から得られた生体液または組織を含む。
【0072】
非小細胞肺癌に関する好ましい実施形態において、試料は、痰、肺洗浄液、血液、循環腫瘍細胞、および/または患者から得られた肺生検試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、患者の肺から得られた生体液または組織を含む。
【0073】
乳癌に関する好ましい実施形態において、試料は、(乳頭への食塩水洗浄からの)乳頭吸引物、血液、循環腫瘍細胞、および/または乳房組織生検試料を含む。いくつかの実施形態において、試料は、患者の乳房から得られた生体液または組織を含む。
【0074】
したがって、いくつかの実施形態において、試料が得られた患者の体内の部位は、特定の種類の疾患、例えば癌に対応し得ると理解される。
【0075】
生体液が全細胞/インタクトな細胞を実質的に含まないか、または全く含まないことも好ましい。好ましくは、生体液は、血小板および細胞残屑(細胞の溶解により生じるものなど)を含まない。好ましくは、生体液は、原核細胞および真核細胞の両方を含まない。
【0076】
このような試料は、当技術分野で公知の多数の方法によって得ることができ、このようなものは当業者には明らかであろう。例えば、尿の試料は容易に入手可能であるが、血液または血清の試料は、例えば、注射針および注射器を使用することによって非経口的に得ることができる。無細胞試料または実質的な無細胞試料は、試料を当業者に公知の様々な技術(限定されないが、遠心分離およびろ過が挙げられる)に供することによって得ることができる。
【0077】
非侵襲的技術を使用して試料を得ることが一般に好ましいが、組織ホモジネート、組織切片および生検標本などの試料を得ることが依然としてより好ましい。
【0078】
本発明の別の態様は、疾患、好ましくは癌を有する患者を治療するための方法であって、本発明のバイオマーカーの治療有効量を患者に投与することを含み、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される方法に関する。
【0079】
本発明の別の態様は、患者における疾患、例えば癌をイメージングするための方法であって、本発明のバイオマーカーに結合する抗体またはその断片を患者に投与することを含み、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される方法に関する。
【0080】
好ましくは、抗体は、検出可能なマーカー、例えば蛍光マーカーまたはタグにコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、抗体は、成長阻害剤にコンジュゲーションされている。好ましくは、抗体は、細胞毒性剤、例えば毒素(例えば、免疫毒素)、抗生物質、溶解酵素または放射性同位体にコンジュゲーションされている。
【0081】
組成物についての本明細書における記述はまた、組成物それ自体に関することを意図する。したがって、本発明の別の態様は、
(A)本発明のバイオマーカー、
(B)(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列、
(C)(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含む核酸分子、
(D)核酸分子を含有する宿主細胞、
(E)(i)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体に相補的であり、および/または(ii)配列番号:1の核酸配列またはその断片もしくは変異体にハイブリダイゼーション可能な核酸配列を含むベクター、例えばDNAプラスミド、
(F)TMEM92タンパク質に結合できる抗体またはその断片、
(G)本発明のバイオマーカーに結合できる抗体またはその断片、および/または
(H)TMEM92タンパク質機能のアンタゴニスト、例えば小分子アンタゴニスト
を含む組成物に関する。
【0082】
好ましくは、組成物は、医薬組成物である。
【0083】
本発明はまた、本発明の組成物、例えば本発明のバイオマーカー、または本発明のバイオマーカーに結合する抗体もしくはその断片を含むワクチンを提供する。
【0084】
この点において、TMEM92は細胞膜の外側に存在するので、ワクチンに関する理想的な標的である。
【0085】
好ましくは、ワクチンは、例えば、前立腺癌ワクチン、非小細胞肺癌ワクチンおよび乳癌ワクチンから選択される癌ワクチンである。
【0086】
本発明の別の態様は、疾患、例えば癌のバイオマーカーとしての、体液中で検出可能なバイオマーカーの使用であって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される使用に関する。
【0087】
好ましくは、前記使用は、臨床スクリーニング、予後評価の方法、治療結果のモニタリング、特定の治療処置に対して反応する可能性が最も高い患者を同定する方法、ならびに薬物のスクリーニングおよび開発からなる群より選択される方法におけるものである。
【0088】
本発明の別の態様は、疾患、例えば癌を治療するための薬剤の製造における本発明の組成物またはバイオマーカーの使用であって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される使用に関する。
【0089】
また、例えば、癌に関する治療または診断に使用するための本発明の組成物またはバイオマーカーであって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される本発明の組成物またはバイオマーカーが提供される。
【0090】
本発明の別の態様は、患者における疾患、例えば癌をイメージングするための方法に使用するための、本発明のバイオマーカーに結合する抗体またはその断片であって、場合により、癌が、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される抗体またはその断片に関する。
【0091】
好ましくは、本明細書において記載される抗体またはその断片は、本発明のバイオマーカーに特異的に結合する。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明の方法および組成物は、早期の、例えば疾患の症状が現れる前の疾患を治療または診断するためのものである。
【0093】
いくつかの実施形態において、本発明の方法および組成物は、臨床病期の疾患を治療または診断するためのものである。
【0094】
本発明の別の態様によれば、上記方法または用途で使用するためのキットであって、バイオマーカーに結合できるか、またはバイオマーカーを特異的に認識できる体液中で検出可能なリガンド、例えば本明細書において記載される抗体またはその断片と、レポーター手段とを含むキットが提供される。
【0095】
好ましくは、キットは、アレイまたはチップである。
【0096】
好ましくは、キットは、マイクロタイタープレート、試験ストリップ、アレイまたはチップを含む。
【0097】
好ましくは、キットは、本発明の方法、用途および/または組成物にしたがって使用するための説明書を含む。
【0098】
次に、添付の図面を参照して、本発明の実施形態例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1図1は、TMEM92の細胞外ドメインおよび細胞質ドメインの略図を示す。
図2図2は、TMEM92の核酸配列(配列番号:1)を示す。
図3図3は、TMEM92のアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。
図4図4は、癌由来の細胞株PC3、A549およびMDA−MB−231と正常成体組織におけるTMEM92の発現を示す。発現は、GAPDH遺伝子と比較して示す(比x10,000)。
図5図5は、PC3およびWPMY−1細胞におけるTMEM92のsiRNAノックダウンを示す。「Con siR」=対照(非特異的)siRNA、「TMEM92 siR」=TMEM92特異的siRNA。**TMEM92 siRNA処理のPC3対WPMY−1細胞における細胞生存についてp<0.01。
図6図6は、3個のその他のTMEMの発現データを示す。
図7図7は、TMEM92タンパク質がPC3細胞に存在するが、WPMY−1細胞には存在しないことを示す。抗TMEM92抗体を使用した蛍光顕微鏡検査(緑色)。(A)PC3細胞(核、細胞質および膜染色の証拠)、(B)WPMY−1細胞(染色なし)。核はDAPIで染色する(青色)。スケールバー:50μm。
図8図8は、PC3細胞におけるTMEM92タンパク質を示す。抗TMEM92抗体を使用した蛍光顕微鏡検査(緑色)。(A)洗浄剤への曝露によって透過性にした細胞。核はDAPIで染色する(青色)。(B)TMEM92の表面発現を示すための非透過性細胞。スケールバー:5μm。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明は、疾患、例えば癌を治療するための方法および組成物、ならびにバイオマーカーに関し、好ましくは、癌は、前立腺癌、非小細胞肺癌および乳癌から選択される。
【0101】
TMEM92は、正常組織とは反対に癌で差次的に発現している新規な細胞表面タンパク質である。本明細書において提供されるデータは、例えば、それを認識する抗体を使用することによって、または例えば小分子薬物によりその活性を遮断することによって、例えば組織切片中の、または特定の体液中に存在する場合に癌のマーカーとして、および癌の標的としてそれを使用できることを示している。
【0102】
本明細書において、「約」という用語は、±20%、より好ましくは±10%、さらにより好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
本明細書において使用される「治療有効量」という用語は、問題となっている疾患に起因する少なくとも1つの状態もしくは症状の重症度を軽減し、および/または前記状態もしくは症状を改善するのに必要な組成物の量を意味する。
【0103】
本明細書において、明瞭かつ簡潔な明細書を記述することを可能にする方法で実施形態を説明したが、本発明から逸脱することなく実施形態を様々に組み合わせてもよいし、分離してもよいと意図および理解される。
【0104】
臨床用途のために、本発明の化合物またはそのプロドラッグ形態は医薬製剤に製剤化され、これがその意図される投与経路、例えば経口、経直腸、非経口またはその他の投与方法に適合するように製剤化される。医薬製剤は、通常、活性物質を通常の医薬的に許容される希釈剤または担体と混合することによって調製される。本明細書において使用される「医薬的に許容される担体」という語は、医薬投与に適合性であるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを包含することを意図する。医薬的に許容される希釈剤または担体の例は、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶セルロース、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、コロイド状二酸化ケイ素などである。医薬活性物質のためのこのような媒質および作用物質の使用は、当技術分野で周知である。あらゆる通常の媒質または作用物質が活性化合物に不適合性である場合を除き、組成物中でのその使用が企図される。
【0105】
このような製剤はまた、その他の薬理活性物質、および通常の添加物、例えば安定剤、湿潤剤、乳化剤、香味剤、緩衝剤などを含有し得る。
【0106】
製剤は、公知の方法、例えば造粒、圧縮、マイクロカプセル化、スプレーコーティングなどによってさらに調製され得る。製剤は、通常の方法によって錠剤、カプセル、顆粒剤、粉剤、シロップ、懸濁液、坐剤または注射剤の剤形に調製され得る。液体製剤は、活性物質を水またはその他の適切なビヒクルに溶解または懸濁することによって調製され得る。錠剤および顆粒剤は、通常の方法でコーティングされ得る。
【0107】
非経口、皮内または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈剤(例えば注射用蒸留水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたはその他の合成溶媒)、抗菌剤(例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム)、キレート剤(例えばエチレンジアミン四酢酸)、緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩)、および張度調整用の物質(例えば塩化ナトリウムまたはデキストロース)。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与バイアルに封入され得る。
【0108】
注射用途に適切な医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与について、適切な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、注射容易性が存在する程度に流動的であるべきである。組成物は製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の保護は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0109】
滅菌注射液は、適切な溶媒中に、必要量の活性化合物(例えば、本発明の実施形態の化合物)を上記に列挙した成分の1つまたは成分の組み合わせと一緒に組み込み、その後、必要に応じてろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、基本分散媒およびその他の必要成分(上記に列挙したもの)を含有する滅菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射液調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥であり、予め滅菌ろ過したその溶液から、有効成分と任意の所望の追加成分との粉末が作られる。
【0110】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口治療投与の目的のために、活性化合物は賦形剤と一緒に組み込まれ、錠剤、トローチまたはカプセルの形態で使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬として使用するために流体担体を使用して調製され得、この場合、流体担体中の化合物は経口的に適用され、口内ですすがれ、吐き出されるかまたは飲み込まれる。医薬適合性の結合剤および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含められ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか、または類似性質の化合物を含有し得る:結合剤(例えば微結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン)、賦形剤(例えばデンプンもしくはラクトース)崩壊剤(例えばアルギン酸、Primogelもしくはトウモロコシデンプン)、潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes)、流動促進剤(例えばコロイド状二酸化ケイ素)、甘味剤(例えばスクロースもしくはサッカリン)、または香味剤(例えばペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジフレーバー)。
【0111】
吸入による投与については、化合物は、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含有する加圧容器もしくはディスペンサ、またはネブライザから、エアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0112】
全身投与はまた、経粘膜的手段または経皮的手段によるものであり得る。経粘膜投与または経皮投与については、浸透させるべき障壁に適した浸透剤が製剤化に使用される。このような浸透剤は当技術分野で一般に公知であり、例えば、経粘膜投与については、洗浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻内噴霧器または坐剤の使用によって達成され得る。経皮投与については、活性化合物は、当技術分野で一般的に公知の軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリームに製剤化される。
【0113】
化合物はまた、直腸送達用の坐剤(例えば、ココアバターおよびその他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を用いて)または停留浣腸の形態で調製され得る。
【0114】
好ましくは、活性化合物は、体内からの迅速な排出から化合物を保護する担体、例えばインプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤と一緒に調製される。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸が使用され得る。このような製剤の調製方法は、当業者に明らかであろう。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から購入できる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を有する感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、医薬的に許容される担体として使用され得る。これらは、当業者に公知の方法にしたがって調製され得る。
【0115】
投与容易性および投与量の均一性のために、経口組成物または非経口組成物を投与単位形態で製剤することは特に有利である。本明細書において使用される投与単位形態は、治療されるべき被験体のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要な医薬担体と共同して所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の投与単位形態についての詳細は、活性化合物の独自の特性および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにこのような活性化合物を配合することについての当技術分野に固有の制限によって決定され、それらに直接依存する。
【0116】
このような化合物の毒性および治療効果は、例えばLD50(集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定するための、細胞培養物または実験動物における標準的な医薬手順によって決定され得る。毒性作用と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表され得る。大きな治療指数を示す化合物が好ましい。毒性副作用を示す化合物を使用してもよいが、非感染細胞への潜在的損傷を最小限に抑え、それにより副作用を低減するために、罹患組織の部位にこのような化合物を標的とする送達システムを設計することに注意を払うべきである。
【0117】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータは、ヒトに使用するための投与量範囲を策定するのに使用され得る。このような化合物の投与量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を伴わないED50を含む循環濃度の範囲内である。投与量は、用いられる剤形および利用される投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。本発明の方法に使用される任意の化合物について、治療有効量は、最初に、細胞培養アッセイから推定できる。用量は、細胞培養物で決定されたIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように動物モデルで策定され得る。このような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定できる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0118】
医薬組成物は、投与の説明書と一緒に容器、パックまたはディスペンサに含められ得る。
【0119】
本明細書において、「同一性」は、当技術分野で公知のように、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野において、「同一性」はまた、場合によってはこのような配列のストリング間のマッチによって決定される、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の間の配列関連性の程度を意味する。同一性のパーセンテージは、公知の方法、例えば限定されないが、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part I,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987、Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、Carillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)(これらのすべては、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって容易に計算され得る。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最大のマッチをもたらすように設計される。同一性を決定する方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性のパーセンテージを決定する好ましいコンピュータプログラム法としては、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Atschul,S.F.et al.,J.Molec.Biol.215:403−410(1990))が挙げられる。BLAST Xプログラムは、NCBIおよびその他のソースから公的に利用可能である(その全体が参照により本明細書に組み込まれる、BLAST Manual,Altschul,S.,et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894;Altschul,S.,et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))。例示として、「配列番号:A」の参照ヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%の「同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列が「配列番号:A」の参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドにつき最大5個の点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は参照配列と同一であることを意図する。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列のヌクレオチドの最大5%が欠失されてもよし、別のヌクレオチドで置換されてもよし、または参照配列の全ヌクレオチドの最大5%のヌクレオチド数が参照配列に挿入されてもよい。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端の位置で起こってもよいし、それらの末端の位置の間のどこかで起こってもよく、参照配列のヌクレオチド中で個々に、または参照配列内で1つ以上の連続する群で散在する。同様に、「配列番号:B」の参照アミノ酸配列と少なくとも例えば95%の「同一性」を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドは、ポリペプチド配列が「配列番号:B」の参照アミノ酸の各100アミノ酸につき最大5個のアミノ酸変化を含み得ることを除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列は参照配列と同一であることを意図する。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列のアミノ酸残基の最大5%が欠失されてもよいし、別のアミノ酸で置換されてもよし、または参照配列の全アミノ酸残基の最大5%のアミノ酸数が参照配列に挿入されてもよい。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端の位置で起こってもよいし、それらの末端の位置の間のどこかで起こってもよく、参照配列の残基中で個々に、または参照配列内で1つ以上の連続する群で散在する。
【0120】
本明細書において使用される「ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションする」という用語は、互いに少なくとも50%相同な受容体をコードするヌクレオチド配列が、典型的には依然として互いにハイブリダイゼーションしているハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を表すことを意図したものである。この条件は、互いに少なくとも約65%、少なくとも約70%または少なくとも約75%またはそれ以上相同な配列が、典型的には依然として互いにハイブリダイゼーションしているようなものであり得る。このようなストリンジェントな条件は当業者に公知であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6で見られ得る。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃でのハイブリダイゼーション、次いで0.2×SSC、0.1%SDS、50〜65℃での1回以上の洗浄である。一実施形態において、ストリンジェントな条件下で配列番号:1の配列にハイブリダイゼーションする単離された受容体核酸分子は、天然に存在する核酸分子に対応する。本明細書において使用される「天然に存在する」核酸分子は、自然界で生じるヌクレオチド配列(例えば、天然のタンパク質をコードする)を有するRNAまたはDNA分子を指す。
【0121】
本明細書において、「抗体または抗体断片」は、抗体を天然に産生する任意の種に由来するか、または組換えDNA技術によって作製されたかにかかわらず、血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母または細菌から単離されたかにかかわらず、抗体(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)または断片(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉鎖的な立体構造の多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ)を指す。
【0122】
本明細書において、「治療」という用語は、既存の疾患の治療および/または疾患の発生を防ぐための予防的治療を意味する。このようなものとして、本発明の方法は、疾患の治療、予防、進行の阻止または発症の遅延に使用され得る。
【0123】
「バイオマーカー」という用語は当技術分野全体で使用されており、癌組織の存在などの特定の生物学的状態を示す。一部の場合、異なる形態のバイオマーカーは特定の病状を示し得るが、理論に拘束されることなく、単に、体液または組織中の本発明のバイオマーカーのレベルの上昇の存在が癌を示すと考えられる。例えば、異なる糖型のTMEM92ペプチドが分泌されることは現在は想定されていないが、それにもかかわらずこれらは本発明によって包含される。例えば糖型構造または糖含量が変化したような様々な糖型がTMEM92について決定されるかもしれないが、これらは包含され、さらには癌の進行も示し得る。TMEM92ペプチドもしくはその断片の切断、突然変異もしくは欠失または連結も想定される。

【0124】
上記で論じたように、驚くべきことに、癌由来の試料におけるTMEM92遺伝子の発現が正常試料と比較して有意に増加することが見出された。多くの場合、癌由来の試料では発現されているが、対応する正常試料では全く発現されていない。したがって、本発明のバイオマーカーは、癌特異的バイオマーカーであるといえる。
【0125】
TMEM92について得られた結果(図4)は、その他のTMEM遺伝子で得られた結果(図6)と比較した場合に特に驚くべきものである。
【0126】
本発明の別の利点は、不快で潜在的に有害な侵襲的手順であって、さらには不正確かもしれない侵襲的手順に頼らずに、正確な診断を提供できることである。さらに、本発明は特に高感度である。好ましくは、本発明の方法は、いかなるその他の検出方法の前に、および癌の明らかな症状の発症前に、癌の発症を検出し得る。したがって、癌の治療に対してより感受性があり、転移期に入った可能性が低い早期に、癌は治療され得る。
【0127】
本発明のバイオマーカーは、診断方法、例えば臨床スクリーニングにおいて、ならびに予後評価の方法、治療結果のモニタリング、特定の治療処置に反応する可能性が最も高い患者の同定、薬物のスクリーニングおよび開発において使用され得る。さらに、本発明のバイオマーカーおよびその使用は、新たな薬物治療の同定および薬物治療の新たな標的の発見に有用である。
【0128】
「診断」という用語は、疾患、例えば癌の有無、その発達段階、例えば早期もしくは後期、または癌の良性もしくは転移性の同定、確認およびまたは特性決定を包含する。
【実施例】
【0129】
TMEM92(NM_153229)はいまだに特性決定されていない遺伝子であり、1回膜貫通ドメインを有する159個のアミノ酸(17.2kDa)タンパク質をコードすると予測される(図1)。本発明者らのデータは、それが多くの正常成体組織で発現しておらず、肝臓、結腸、肺および子宮で非常に低いレベルでのみ発現していることを示している(図4)。しかしながら、それは、癌由来の細胞株PC3(前立腺癌)、A549(非小細胞肺癌)およびMDA−MB−231(乳癌)で強く発現している。
【0130】
この差次的発現は、TMEM92が癌の潜在的標的であり得ることを示している。この可能性をさらに探るために、本発明者らは、PC3細胞(転移性前立腺癌に由来する)およびWPMY−1細胞(正常前立腺線維芽細胞に由来する非悪性細胞株)において、TMEM92のsiRNAノックダウンを使用した。使用したsiRNAは、以下の配列を有していた:
フォワード:5’GCUUCAGGCCUGAAGAAUA3’(配列番号:3)、および
リバース:5’UAUUCUUCAGGCCUGAAGC3’(配列番号:4)。
【0131】
PC3におけるTMEM92のノックダウンは、対照siRNAと比較して細胞生存の有意な減少を引き起こしたが(図5)、WPMY−1細胞におけるTMEM92ノックダウンは、細胞死を引き起こさない。
【0132】
これらの結果は、TMEM92が、例えば(i)上記のsiRNAによるTMEM92遺伝子のノックダウン、(ii)TMEM92タンパク質に結合してその機能を遮断し、および/または細胞を免疫による殺傷の標的にする抗体、ならびに(iii)TMEM92機能の小分子アンタゴニストを介した癌の有用な治療標的になり得ることを示している。
【0133】
加えて、TMEM92の差次的発現は、それが癌のバイオマーカーとして有用であり得ることを示している。
【0134】
TMEM92は、癌細胞上に存在することがいまだに示されていない。加えて、TMEM92を遮断することによって癌細胞を殺傷する能力により、それは非常に重要な標的になる。
【0135】
癌に対する多くの診断方法および治療方法があるにもかかわらず、完璧なものはなく、多くのものは価値が限られている。診断試験では偽陽性結果または偽陰性結果が出ることが多く、癌細胞の先天的または後天的な耐性により、治療法が非有効的になり得る。癌におけるTMEM92の高発現は、癌細胞の生存におけるその役割(ノックダウン研究によって癌細胞の生存に必要であることが示された)と一緒に、それが診断および標的化の両方に有益に貢献し得ることを示している。
【0136】
TMEM92について得られた結果は、3個のその他のTMEMについても繰り返された。3個のその他のTMEMについて得られた発現データ(図6)は、これらのTMEMが癌よりも正常成体組織で高く発現していることを示しており、これは、TMEM92について得られた結果と正反対である。したがって、これは、TMEM92について本明細書に提示した結果の驚くべき性質のさらなる証拠を提供する。
【0137】
図7および図8に示されるように、正常前立腺上皮細胞に由来する非悪性細胞株であるWPMY−1とは対照的に、前立腺癌細胞は、高レベルのTMEM92タンパク質を発現している(図7)。TMEM92は核、細胞質および膜に存在しており(図8)、細胞によって培養培地に分泌される。さらに、TMEM92タンパク質は、前立腺癌を有する男性の尿中で検出され得るが、年齢適合対照には存在せず、これは、それがこの疾患のバイオマーカーとして使用され得ることを示している。
【0138】
本明細書に記載した現在の好ましい実施形態への様々な変更および修正は当業者に明らかであることが理解されるべきである。このような変更および修正は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、およびその付随する利点を損なうことなく行うことができる。したがって、このような変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]