(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの実施形態では、運動徴候を有する痙攣の検出装置は、痙攣関連の筋肉活動をほぼ表すEMG信号を提供することのできる1つまたは複数のEMG電極と、EMG信号を受信し、EMG信号を処理して痙攣が発生しているか否かを判定し、EMG信号に基づき痙攣が発生していると判定される場合にアラームを発生するように構成されたプロセッサと、を備えることができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、装置および方法は、EMG電極を含む検出ユニットと、検出ユニットと通信し検出ユニットから物理的に分離しているベースユニットとを含み、基地局が検出ユニットからEMG信号を受信および処理し、痙攣が発生した可能性があるかを処理済みのEMG信号から判定し、少なくとも1人の介護者にアラームを送信するように構成される。いくつかの実施形態では、基地局が、アラーム状態の検証のために検出ユニットによって提供されるデータを独立して処理することができる。基地局がアラームに同意する場合、基地局は、遠隔装置および局所音声生成装置に対してアラームを生成することができる。基地局に検出ユニットのアラームに合意させることで、投票概念を導入することができる。両方の装置が決定に関して投票し、音声アラームに合意するかもしれない。これは誤アラームを制限するのに使用することができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、EMG信号をある期間について収集し、フィルタ処理を行って、複数の周波数帯域を選択することができる。たとえば、EMG周波数スペクトルは、たとえば3またはそれ以上の多数の周波数帯域に分割してもよく、各周波数帯域の1つまたは複数の特徴、たとえばその帯域の出力成分またはその帯域内の1つまたは複数の周波数でのスペクトル密度を測定してもよい。帯域の「出力成分」または「出力振幅」は、ある期間にわたって行われうる筋肉動作に関係する可能性があり、ある周波数範囲について集約されたスペクトル密度(たとえば、各周波数の出力)に関係する可能性がある。一般に、出力成分またはスペクトル密度は、たとえば何らかの係数によって調整された時に、実際の出力内容またはスペクトル密度に比例する数値として測定できる。ある周波数帯域について測定された特徴は、その分散および、他の周波数帯域で測定されたその特性に関する共分散によって正規化することができ、その結果得られた正規化後の数値が処理され、HotellingのT二乗統計量が特定される。T二乗統計分析に基づき、EMG信号を使って、痙攣の発生を宣言するか否か、およびアラームを1カ所また複数カ所の場所に送信するか否かを査定することができる。
【0016】
いくつかの実施形態において、T二乗統計値の計算は、異なる周波数帯域からの信号への重み付け係数(Weighting factors)の割当てを含んでいてもよい。重み付け係数はたとえば、訓練期間中に取得された各種の周波数帯域に関連付けられる信号を分析することによって決定できる。周波数帯域の各々に割り当てられる重みは、たとえば、訓練期間中に計算された、その周波数帯域の分散/共分散マトリクスの逆数から計算できる。この方法では、より多くの筋活動を示す周波数帯域(通常、より低周波数範囲)には、より少ない筋活動を示す周波数帯域(通常、より高周波数範囲)より軽い重みを割り当てることができる。重み付け係数はまた、通常の活動中に大きな筋活動を示す周波数帯域からの信号を減少させて、誤ったアラームが起動される可能性を低下させ、および/または通常の活動と痙攣のエピソードをよりよく区別できるように割り当てることもできる。適当な重み付けは、訓練期間中に観察された個人の正常な筋運動に依存させることができる。ある個人については、T二乗の計算で基本的に、3つの周波数帯域からの信号に等しい重みが割り当てられるかもしれず、他の個人については、重み付け係数を違えて、たとえば痙攣活動検出技術の感度を高めるようにするかもしれない。
【0017】
いくつかの実施形態では、主成分分析法(Principal Component Analysis)(PCA)を使って複数の周波数帯域を分析することができる。たとえば、各EMG信号について3つの周波数帯域を選択してもよく、その数、たとえば3つまでの主成分を使用できる。これらの帯域の幅は異なっていてもよく、より狭いものと、より広いものがあってよい。いくつかの実施形態において、PCA分析に基づく統計パラメータを基準値、たとえば訓練期間中に特定されたベースラインPCA値と比較してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、EMG出力を一般的な痙攣の特徴および、1つまたは複数の閾値と比較することができる。EMG出力データの1つまたは複数の数値が1つまたは複数の閾値を超えた場合、そのイベントを記録してもよく、たとえばそのイベントをレジスタに記録することによって行われる。たとえば、EMG出力を使ってT二乗統計値を計算してもよく、これをT二乗閾値と比較して、検出イベントをレジスタに記録するために使用してもよい。別の例として、1つまたは複数のレジスタに記録されるイベントは、特徴的なGTC波形の存在、データバーストの存在、または、米国特許出願第13/275309号明細書に詳しく記載されているようなその他の特徴に対応していてもよい。レジスタに登録されたイベントの、出力データの各種の特徴に関する分析結果を使って、痙攣の発生を宣言するか否か、およびアラームを1カ所または複数カ所の場所に送信してもよいか否かを査定することができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法および/または装置は、ある個人またはある患者集合についてカスタム化することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、装置は、個人の筋肉の最大随意収縮(Maximum Voluntary Contraction)(MVC)に基づいて、感度設定を確定または調整できる。MVCは、患者が随意収縮中に加えうる最大の力に関連付けられる。筋肉の強度には個人差がありえ、EMG信号の振幅もまた異なる可能性がある。最大随意筋力発揮中の患者の筋電図データの測定(およびそれに応じた感度設定の調整)により、方法を個人の筋肉組織に合わせてカスタム化でき、本明細書に記載の方法の、痙攣活動と非痙攣期間のデータとの区別に対する選択度が高まる。いくつかの実施形態において、T二乗閾値は、個人の休息時および個人のMVC時に得られたEMGデータから計算されるT二乗統計値に基づいて設定できる。いくつかの実施形態において、T二乗統計値の閾値は、休息時のT二乗統計値より、MVC中と個人の休息中に計算されたT二乗統計値との差の、ある因子分だけ大きい数値であってもよい。いくつかの実施形態において、Zファクタ(Z−factor)の閾値は、患者のMVC実行中に得られた筋電図データに基づいてスケーリングすることができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の痙攣検出方法および/または装置は適応型であってもよい。たとえば、痙攣イベント中またはその後、人間のオペレータは各種の要素(これらの要素について本明細書中でさらに詳しく説明する)、たとえばZファクタの閾値、アラームラグ要素、または重み付け係数(選択された周波数帯域からの信号に関する)等の設定を見直し、痙攣の重篤度、実際の痙攣の非検出、または誤検出に基づいて調整してもよい。いくつかの実施形態において、検出設定は、たとえば偽陽性イベントがある数だけ存在したこと等に基づいて、自動的に変わってもよい。たとえば、アラームがトリガされると、個人にはアラームを取り消す選択肢が提供される。システムは自動的にイベントを偽陽性に分類してもよく、また、たとえばZファクタの閾値および/またはアラームラグ等の検出要素を調整して、その後の偽陽性のイベントの特徴付けを最小限にするように構成されてもよい。痙攣データは1人または複数の患者から収集されるため、ある患者または患者集合の監視に使用される設定は、その後の痙攣をより正確に予測できるように変化してもよい。たとえば、検出アルゴリズムは調整可能なテンプレートファイルを含み、または使用してもよく、これは各種の設定を含み、方法の成功事例に基づいて更新できる。収集されたデータと痙攣関連の出来事、たとえば宣言されたイベント、実際の痙攣および誤って報告された出来事等の間の関連付けを追跡し、その方法の成否を評価することができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法および装置はたとえば、アラームプロトコルを開始させ、患者を医療的または外科的に管理するのを助ける痙攣事象のログを生成し、迷走神経刺激装置を起動させ、痙攣を中止するまたは弱めるのに使用可能なその他の刺激装置を起動するのに使用することができる。いくつかの実施形態では、痙攣関連事象のログが医師を促して治療方式の失敗により早く気付かせることができる。
【0022】
本明細書に記載の装置および方法は、痙攣を検出し、特にEMGを用いて痙攣について介護者に適時に警告するために使用することができる。装置および方法は、たとえば、アラームプロトコルを開始する、痙攣事象のログを作成して患者を医療的または外科的に管理するのを助ける、迷走神経刺激装置を起動する、あるいは痙攣を止める、または弱めるのに使用可能なその他の刺激装置を起動するために使用することができる。いくつかの実施形態では、痙攣関連事象のログにより、治療方式の失敗をより速く医師に気付かせることができる。該装置および方法は、持続性−間代性、持続性のみ、または間代性のみの痙攣を含むがそれらに限定されない運動徴候を伴う痙攣を検出する一つ若しくは複数の工程および装置および/または装置のシステムを含むことができる。実施形態によっては、「運動徴候(motor manifestation)」は持続的であろうとなかろうと筋肉活動全般を指す。運動徴候は、個々の身体の明らかな動作を生ずるかもしれないし、生じないかもしれない。
【0023】
多量のEMGおよびその他の患者関連データを収集し、保存のためにデータの優先順位をつけ、システム最適化のためにそのようなデータを編成し、疑わしい痙攣に応答してアラームを開始するために、さまざまなシステムが適切に使用できる。
図1は、上記システムの例示的な実施形態を示す。
図1の実施形態では、痙攣検出システム10は、検出ユニット12、任意の基地局14、任意のビデオカメラ9、および任意のアラームトランシーバ16を備えることができる。検出ユニットは、患者の皮膚表面またはその近傍で筋肉からの電気信号を検出し、処理のためにそれらの電気EMG信号をプロセッサに送信することのできる1つまたは複数のEMG電極を備えることができる。基地局は、検出ユニットからのEMG信号を受信および処理し、痙攣が発生したか否かを処理したEMG信号から判定し、アラームを介護者に送信することのできるコンピュータを備えることができる。アラームトランシーバは、介護者によって携行され、あるいは介護者の近傍に配置されて、基地局によって送信されるアラームを受信および中継することができる。
【0024】
図1の装置を使用する際、癲癇性痙攣を起こし易い人11はベッドで休息している、あるいは日常生活に含まれ得るその他の位置にいることができ、身体と物理的に接触する、あるいは身体に近接する検出ユニット12を有することができる。検出ユニット12は、固定電源またはかさばる基地局14に拘束されずに立ち上がり歩き回り、日常の活動の従事することができるような無線装置とすることができる。たとえば、検出ユニット12はシャツの袖に織り込むことができる、あるいはアームバンドまたはブレスレットに搭載することができる。別の実施形態では、1つまたは複数の検出ユニット12はベッド、椅子、幼児用自動車シート、またはその他の適切な衣服、家具、機器、および痙攣を起こし易い人の使用するアクセサリに配置する、あるいは組み込むことができる。検出ユニット12は処理および分析のために信号を基地局に送信し得る電極などの単純センサを備えることができる、あるいは、いくつかのデータ処理および記憶容量を有する「スマート」センサを備えることができる。いくつかの実施形態では、単純センサは、人が着用するベルトに搭載される電池式トランシーバに有線または無線で接続することができる。
【0025】
システムは、たとえば、夕方や夜間などの休息時に、あるいは幾らかのその他の活動に従事している間に、患者を監視することができる。患者の検出ユニット12が痙攣を検出する場合、検出ユニット12は有線または無線で、たとえば、通信ネットワークまたは無線リンクを介して基地局14と、ブルートゥース(登録商標)を介して遠く離れた携帯電話又はその他の携帯式デバイスと、或いは、基地局及び遠く離れた携帯電話へ同時に、通信することができる。検出ユニット12は、より徹底的な分析のために一部の信号を基地局装置に送信することができる。たとえば、検出ユニット12はEMG信号(および任意でECGおよび温度センサ信号)を処理および使用して、痙攣の発生の可能性に関する最初の査定を行い、別個の処理および確認のために、それらの信号と査定を基地局14に送信することができる。痙攣が発生しているらしいと確認すれば、基地局14はアラームを起動して、eメール、テキスト、または任意の適切な有線または無線のメッセージインジケータによりネットワーク15上で介護者にアラームを送信する。いくつかの実施形態では、検出ユニット12、基地局14、または介護者、たとえば、基地局から提供される信号を監視する遠隔の介護者のうち1つまたは複数が痙攣の発生を判定する場合、情報を収集するようにビデオカメラ9をトリガすることができる。いくつかの実施形態では、携帯電話又はその他の携帯式デバイスは、検出ユニット12により実行される分析よりも完全な分析を可能にするアプリケーションを備えるように構成され得る。従って、携帯電話は、例えば、基地局と同等の、又は類似する機能のいくらかを提供し得る。
【0026】
一般的な家庭用電源によって電力を供給され、バックアップ用バッテリを含む基地局14は、検出ユニット12よりも動作に利用可能な処理、送信、および分析能力が高く、より多くの量の信号履歴を記憶し、その多量データに照らして受信信号を評価することができる。基地局14は、家族の寝室などのように基地局14から遠隔に配置されるアラームトランシーバ16と、または介護者によって携行される、あるいは職場やクリニックに配置される無線装置17、18と通信することができる。基地局14および/またはトランシーバ16は、ネットワーク15などの任意の適切な手段を介して、携帯電話17、PDA18、またはその他のクライアント機器を通じ介護者または医療従事者にアラームまたはメッセージを送信することができる。よって、システム10は痙攣の正確なログを提供して、患者の医師に治療方式の成功または失敗をより迅速に認識させることができる。当然ながら、基地局14は、本明細書に記載の信号を受信、処理、および分析して、アラームを送信することのできるインストールされたプログラムを有するコンピュータを単に備えることができる。別の実施形態では、システム10は、たとえば、EMG電極と、インストールされたプログラムアプリケーションを用いて本明細書に記載のEMG信号を処理するために電極からのEMG信号を受信するように構成されるiPhone(商標)のようなスマートフォンとを単に備えることができる。別の実施形態では、EMG信号および関連データの記憶および処理のために、ネットワーク15を介していわゆる「クラウド」コンピューティングおよび記憶装置を使用することができる。さらに別の実施形態では、1つまたは複数のEMG電極は、本明細書に開示されるようにEMG信号を処理し、ネットワーク上でアラームを送信することのできるプロセッサを有する単独ユニットとして一括してパッケージ化することができる。言い換えると、装置は、患者上に配置され、基地局と離れたトランシーバを必要としない単独の製品を備えることができる。いくつかの実施形態では、アラームは、例えば、テストメッセージを備えた所定の電話番号に携帯電話をダイアルアウトさせるようにすることができ、かつ音声通信リンクを読み込むように使用され得る。
【0027】
図1の実施形態では、信号データは保管のために遠隔データベース19に送信することができる。いくつかの実施形態では、信号データは複数の癲癇患者から中央データベース19に送信されて、癲癇性痙攣の一般「ベースライン」感度レベルおよび信号特徴を確定し改良するための基盤を提供するように「匿名化」することができる。データベース19および基地局14はネットワーク15を介して遠隔コンピュータ13から遠隔アクセスされて、検出器ユニットおよび/または基地局ソフトウェアの更新およびデータ送信を可能にする。基地局14は遠隔トランシーバ16が行うような可聴アラームを生成することができる。すべての無線リンクは、ソフトウェアおよびデータ送信とメッセージ送達確認のために双方向性とすることができる。基地局14は、痙攣通知のために上述したメッセージング方法のうち1つまたは全部を採用することもできる。基地局14は事象アラームを終了させる「アラーム解除」ボタンを設けることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、トランシーバは、家具ユニットやその他の構造、たとえば、環境ユニットまたはオブジェクト内に追加で搭載することができる。検出ユニットがトランシーバに十分に接近している場合、上記トランシーバはデータを基地局に送信することができる。よって、基地局は、その情報がトランシーバから、ひいては関連の環境ユニットから受信されていることを認識できる。いくつかの実施形態では、基地局は、特定のトランシーバからの信号を受信しているか否かに応じて、特定のテンプレートファイルを選択するか、或いはたとえば本明細書で後述される閾値Z−ファクタ、重み付け係数、アラームラグ設定及び/又はその他の設定を含む関連したデバイスの設定を使用することができる。よって、たとえば、検出器とベッドまたはベビーベッドに対応付けられるトランシーバとから情報を受信する場合、基地局は、たとえば、トイレのシンクに取り付けられるユニット、或いは個人が運動中に典型的に身に着ける衣服などの別の環境ユニットと対応付けられるトランシーバから受信する場合と違った風にデータを取り扱うことができる。さらに、検出ユニット及び基地局は入出力能を有し、いくつかの実施形態において、一つのユニットにおける設定の調整は他の設置絵の対応する調整を生じ得る。
【0029】
図1の実施形態は、睡眠中に使用するのに最小限の侵襲性を有する、あるいは日常活動をごくわずかにしか阻害しないように構成することができ、1つか2つくらいの最小数の電極しか必要とせず、頭部に電極を装着する必要がなく、運動徴候を有する痙攣を検出することができ、1つまたは複数の局地的および/または遠隔部位の痙攣の存在を警告することができ、家庭での使用のために十分安価にすることができる。
【0030】
図2は、検出ユニット12または検出器の一実施形態を示す。検出ユニット12はEMG電極20、さらにはECG電極21も含むことができる。検出ユニット12は、リードオフ検出器22を有する増幅器をさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のリードオフ検出器は、電極が人体に物理的に接触しているか、あるいは人体から離れすぎているかを示して、筋肉活動、体温、脳活動、またはその他の患者の現象を検出する信号を提供することができる。
【0031】
検出ユニット12は、人の体温を感知する温度センサ23をさらに含むことができる。加速度計などのその他のセンサ(図示せず)を検出ユニットに含めることができる。電極20および21、温度センサ23、およびその他のセンサからの信号をマルチプレクサ24に提供することができる。マルチプレクサ24は検出ユニット12の一部にすることができる、あるいは検出ユニット12が高性能センサでない場合は基地局14の一部にすることができる。次に、信号はマルチプレクサ24から1つまたは複数のアナログ−デジタルコンバータ25に伝えることができる。アナログ−デジタルコンバータは検出ユニット12の一部にすることができる、あるいは基地局14の一部にすることができる。次に、信号は、本明細書に開示の処理および分析のために1つまたは複数のマイクロプロセッサ26に伝えることができる。マイクロプロセッサ26は検出ユニット12の一部にすることができる、あるいは基地局14の一部にすることができる。検出ユニット12および/または基地局14は、適切な容量のメモリをさらに含むことができる。マイクロプロセッサ26はトランシーバ27を使用して信号データおよびその他の情報を伝えることができる。検出ユニット12および/または基地局14の構成要素による、および構成要素間の通信は有線または無線通信とすることができる。いくつかの実施形態において、検出ユニット12は録音機能を備え、かつその他の送信データに加えて音声信号を送信するように構成され得る。
【0032】
当然ながら、
図2の例示の検出ユニットは別の様式に構成することができる。
図2の検出器の構成要素の多くは、検出ユニット12ではなく基地局14に置くことができる。たとえば、検出ユニットは単に、基地局14と無線通信するEMG電極20を備えることができる。上記実施形態では、A−D変換と信号処理は基地局14で行うことができる。ECG電極21が含まれる場合、多重化も基地局14で実行することができる。
【0033】
別の例では、
図2の検出ユニット12は、EMG電極20、ECG電極21、および温度センサ23のうち1つまたは複数を有し、小さなベルトに装着したトランシーバ部で有線または無線通信を行う電極部を備えることができる。トランシーバ部は、マルチプレクサ24、A/Dコンバータ25、マイクロプロセッサ26、トランシーバ27、およびメモリやI/O装置(たとえば、アラーム解除ボタンおよび視覚ディスプレイ)などのその他の構成要素を含むことができる。
【0034】
図3は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ30、電源31、バックアップ電源32、1つまたは複数のI/O装置33、およびイーサネット(登録商標)接続34およびトランシーバ35などの各種通信手段を含むことができる基地局14の実施形態を示す。基地局14は、検出ユニット12よりも高い処理および記憶能力を有し、介護者が検出ユニット12から受信される際にリアルタイムでEMG信号を視聴し、あるいはメモリからの履歴EMG信号を視聴するためにEMG信号グラフの表示用のより大きな電子ディスプレイを含むことができる。基地局14はEMG信号および検出ユニット12から受信したその他のデータを処理することができる。基地局14は、痙攣が発生しているらしいと判定する場合、トランシーバ35を介してアラームを介護者に送信することができる。いくつかの実施形態において、基地局14は、(例えば、検出ユニット12からの)音声データを含む信号を受信するように装備されているか、録音機能を装備されているか、或いはその両方が装備されている。基地局は、その他の送信データに加えて音声信号を介護者に送信するように構成され得る。
【0035】
図1〜
図3の各種装置は、有線または無線通信を介して相互に通信することができる。システム10はクライアント−サーバまたはその他のアーキテクチャを備え、ネットワーク15を介する通信を可能にすることができる。当然ながら、システム10は、2つ以上のサーバおよび/またはクライアントを備えることができる。別の実施形態では、システム10は、ピアツーピアアーキテクチャ、またはその組み合わせまたは合成などのその他の種類のネットワークアーキテクチャを備えることができる。
【0036】
正常な随意筋運動においては、主動筋と拮抗筋の協働的な協調収縮によって特定の運動が達成される。痙攣中にはしばしば、このような協調が失われる。その代わりに、筋肉が体の異なる部分を動かなくする傾向があり、この時、筋肉は相互に対抗しあう。このような状況のよい例は、二頭筋と三頭筋の双方を刺激した時の運動発作の硬直期に見ることができる。これらの筋肉は、非常に高い振幅の信号で相互に対抗しあうが、腕はほとんど全く動かない。このようなより高周波数の電気活動は、たとえば全身性硬直間代発作(Generalized Tonic−Clonic)(GTC)痙攣、すなわち全身性の硬直痙攣の特徴でありうる。それゆえ、明白な運動信号がないまま、運動徴候(および高振幅のEMG信号)が現れる可能性がある。前述のように、このような特徴を示す痙攣は、加速度計に基づく検出器では確実に検出されない可能性がある。本明細書に記載のEMG電極は、(筋活動の明確な兆候が存在しなくても)患者の運動徴候を検出でき、様々な方法による処理と分析に適したEMG信号を生成できる。
【0037】
EMG電極は、1つまたは複数の筋肉、たとえば二頭筋の上またはその付近に設置することができる。あるいは、同じ腕で、1つのEMG検出器を二頭筋の上に、また、1つのEMG検出器を三頭筋の上に、伸縮性アームバンド、布、テープまたはその他、電極をこれらの筋肉と接触させた状態に保持する、他のいずれかの方法を用いて設置することができる。監視対象の1つまたは複数の筋肉が主動筋と拮抗筋の対を含む場合、これらの筋肉間のEMGデータの関係と、これらのデータを、協調的運動の場合に予想されるものと同様に相関させることができるか否かという点を使用して、正常な筋挙動を痙攣に伴う運動徴候と区別することができる。痙攣が始まると、EMG電極からの信号の振幅が増大を始め、最終的に振幅は非常に大きくなりうる。しかしながら、高振幅信号が必ずしも実際の痙攣を特徴付けているとはかぎらない。数多くの体の動き、たとえば夜驚症等によってもまた、高振幅信号が発生される可能性がある。したがって、単に高振幅信号を検出するだけでは、痙攣は検出されないかもしれない。ある程度、より長期間にわたって持続する高振幅信号のほうが、痙攣のよりよい指標となる可能性がある。
【0038】
正常および痙攣関連の筋活動をよりよく特徴付けるために、本明細書に記載の監視では、EMG信号の振幅の変化を観察するだけでなく、本願の技術はさらに、選択された周波数帯域に関する出力振幅の分散/共分散を評価し、このようなデータを使ってT二乗統計値を計算できる。選択されたスペクトル帯域からの信号の変化の観察(および、分散/共分散マトリクスに基づく、たとえばそこから特定される逆マトリクスの使用等によるスペクトル帯域からの信号の正規化)は、実際の痙攣と、監視していた場合に本来であれば区別しにくいかもしれない夜驚症等のイベントとを区別するのに役立つ可能性がある。T二乗統計値の大きさは、たとえば異なる周波数帯域にわたる信号の分布が変化した状態を反映することができる。たとえば、特定の高周波数信号の、他の周波数範囲に対する相対的振幅が増大すると、計算されたT二乗統計値は非常に敏感に変化しうる。さらに、状況によっては、T二乗値は、出力全体が有意に変化しなくても、変化する可能性がある。
【0039】
1/fや何らかの環境源等の様々なノイズ源によって、出力全体とEMGデータの正側振幅全体が増大するかもしれないが、本明細書に記載の技術を用いれば、これは痙攣起源のEMG信号と容易に区別できる。たとえば、いくつかのノイズ源は異なる周波数帯域からの、特徴的な方法で変化しうる信号を含んでおり、システムはこのような変化を実際の痙攣に関連する変化から区別するようにプログラムし、またはそのようになすことができる。さらに、痙攣中の高周波数成分には、大きな分散/EMGスペクトルの他の領域との共分散が見られる可能性がある。分散/共分散(およびそこから計算されるT二乗統計値)の測定および/または帯域に関連する重みの調整はしたがって、様々な根源、たとえば痙攣、正常な筋肉運動、各種のノイズ源(たとえば、特に周波数依存のノイズ源)から発生されたEMG信号間の差を増強させるためのツールとして機能することができ、その結果、このようなイベントの特徴付けと検出が容易となる。
【0040】
随意収縮における筋活動の正常な動員では、筋肉動員のために低周波数信号(約30Hz)が送信されることがあり得、その後、活動がより激しくなると、筋肉の収縮を維持するために、より高周波数の信号が送信されうる。このような信号は300Hz〜400Hzの高さであってもよいが、トレーニングをしている運動選手の場合は約1,000Hzに達することがある。運動徴候を伴う痙攣中、マクロ電極で記録される電気周波数はしばしば約300Hzを持続的に超えうる。しかしながら、約300Hz〜400Hzを超えると、信号は一般に、非常に弱くなることがある。高周波数信号が比較的弱く、高周波数信号の振幅が出力全体のうちの小さな部分しか占めないかもしれないとしても、ある個人について、このような高周波数信号の存在および/または高周波数範囲とその他の周波数範囲との信号比の変化は、非常によく痙攣を示している可能性がある。このような変化は、本明細書に記載されているように、周波数帯域内または帯域間の分散/共分散の分析によって捕捉でき、この情報は、異なる帯域内の周波数データを分割せず、またT二乗統計手法を採用しなければ失われる可能性がある。
【0041】
いくつかの実施形態において、正常に筋活動中の個人に関する各種の周波数成分から得られる信号の相対的な変化を追跡し、その個人が痙攣を起こした時の本人の周波数成分の変化と比較することができる。各種の周波数帯域内で測定された出力に関連する重み付け係数は、一般的な正常筋肉運動、ノイズ源、痙攣活動を区別するように調整できる。いくつかの実施形態において、たとえばZ値の閾値、ラグ設定、1つまたは複数の周波数帯域に関連する重み付け係数、またはこれらの組み合わせ等の可変値を、一般的な正常筋肉運動、ノイズ源、痙攣活動を区別するように調整できる。
【0042】
痙攣を起こしやすい個人は、いくつかの実施形態において、監視期間中にEMGデータを収集し、統計値を計算し、これらの数と基準EMGデータまたは1つまたは複数の基準期間中に収集された数値と比較することによって監視してもよい。基準期間では、監督された状況下で個人を監視してもよく、たとえば、ある期間中に、発生するかしれない痙攣が独自に検証される(たとえば、ビデオ監視を用いる)。基準期間は、初めて個人が機器を装着した時とすることができる。しかしながら、基準期間はまた、たとえば必要と思われる場合等に繰り返してもよく、あるいは、たとえば個人が機器の装着に慣れてから等、別の時期に実行してもよい。
【0043】
基準期間中、個人の監視は各種の活動への従事中に行ってもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、基準期間では、個人が休息している時、一般的な日常活動を行っている時、通常、活発および/または反復的な動作が関わる活動を行っている時(たとえば、非限定的な例として、最大随意収縮時)、またはこれらの組み合わせにおいてEMGデータを収集してもよい。異なる活動の実行中に収集されたEMGデータを使って、患者が経験するかもしれず、痙攣活動と区別されるかもしれない筋肉活動の休息および/または上昇部分を特徴付けることができる。このような活動は、ベースライン活動の特徴付けに使用でき、これは、いくつかの実施形態において、監視期間中のT二乗値を比較する対象となる基準T二乗値を確定するために使用でき、この比較はたとえばこれらのT二乗値の差を計算することによって行われる。いくつかの実施形態において、方法は、監視期間中に収集されたEMGデータを、電極の再正規化および訓練期間(逆マトリクスの決定等による分散/共分散マトリクスの再計算と加重係数(weighting coefficients)の確定による)の一方または両方によって、日常の使用中に繰り返される基準期間の中で定期的に再正規化してもよい。再正規化では、筋活動を、小さいT二乗値を提供するT二乗ベースラインの周囲に有効にセンタリングしなおしてもよく、この小さい数値を基準T二乗ベースラインとして使用でき、そこからT二乗値を、たとえばこれらの数値を差し引くことによって、またはそれらの間のデルタ値を計算することによって比較できる。いくつかの実施形態において、基準T二乗値は、ゼロに丸め、および/または計算に入れなくてもよい。それゆえ、いくつかの実施形態では、監視中に取得されたT二乗値を使用してもよい(その数値が計算されるたびに、毎回基準値を差し引かなくてよい)。これは、監視中のT二乗値を数値ゼロと比較することと考えてもよい。監視中の電極の定期的サンプリングは、いくつかの実施形態において、正規化後の期間中の基準T二乗値が低いままであり、監視中のT二乗値を小さい数(すなわちゼロ)と比較しても筋肉活動の分析が不正確にならないことを確認するために使用できる。
【0044】
基準期間中に取得されたEMCデータは、患者に痙攣のイベントが起こっていない時のT二乗統計値に関する分散/共分散マトリクスおよび/または逆マトリクスを計算するために使用でき、いくつかの実施形態においては、ベースライン、すなわち基準T二乗統計値を確定するためにも使用できる。たとえば、基準期間中、装置は、個人に初めて接続された時に得られるEMGデータを使ってT二乗統計値に関する分散/共分散マトリクスを計算することにより、個人について自己訓練する(self−train)ことができる。非痙攣−休息期間中の選択周波数帯域にわたるT二乗統計値を計算することにより、その後の信号を分析する際の基準となるベースライン値が得られる。非痙攣−休息期間中の選択周波数帯域にわたるT二乗統計値に関する分散/共分散マトリスクの計算を使って、その後のT二乗統計値の計算に使用可能な加重係数を確定できる。いくつかの実施形態において、逆マトリクスを計算してもよく、選択された複数の周波数帯域の各々に割り当てられる重みは、逆マトリクスの係数から決定してもよい。分散/共分散マトリクスの逆マトリクスは、分散/共分散マトリクスと畳み込むと単位行列が生成されるようなマトリクスであってもよい(これは逆行列とも呼ぶことができる)。逆マトリクスを使って重みを確定し、T二乗値を正規化することは、患者の筋肉組織に対する異なる周波数帯域の寄与を自動的に調整する方法であることがわかっている。
【0045】
いくつかの実施形態において、基準期間(複数の場合もある)を使って、機器設定、たとえば、Zファクタの閾値またはT二乗値の閾値、周波数領域間の重み付け係数、アラームラグ設定、基準T二乗統計値に関する分散/共分散マトリクス、基準T二乗統計値の標準偏差、その他の要素、またはこれらの組み合わせ等を確定することができる。将来の使用期間(監視期間)で電極正規化を行ってもよい(たとえば増幅器および/またはデジタル信号利得設定の調整を行う)が、その他の機器設定(上述のもの等)は、少なくともいくつかの実施形態において、変更しなくてもよく、これらの定数の所定の数値(1つまたは複数の基準期間から決定)は、監視期間全体にわたって一定に保持し、使用できる。たとえば、その1つまたは複数の基準期間中に機器設定を決定した後に、痙攣活動について個人を監視する場合、いくつかの実施形態において、電極の正規化、EMGデータの収集とそれに伴うT二乗値の計算、このデータと、所定のT二乗値の閾値との比較、アラームを起動できるか否かの判断を行うことができる。所定のT二乗値の閾値は、いくつかの実施形態において、(基準期間中の)T二乗基準ベースラインの収集と、T二乗値の閾値を収集されたT二乗基準ベースラインの標準偏差ユニットのいずれかの数に設定することを含んでいてもよい。所定のT二乗値の閾値は、いくつかの実施形態において、(患者がMVCを実行している基準期間中の)T二乗値の収集と、T二乗値の閾値をMVC実行中に取得されたT二乗値の特定の係数に設定することを含んでいてもよい。所定のT二乗値の閾値は、いくつかの実施形態において、(基準期間中とMVC実行中の)T二乗値の収集と、MVC時のT二乗値の計算を数回繰り返すことと、MVC中に実行された、数回繰り返されたT二乗の計算の標準偏差を計算することと、T二乗値の閾値を、MVC中に取得された繰り返しのT二乗値から計算された標準偏差の特定の数にスケーリングすることを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の基準期間中に機器設定を決定した後、痙攣活動について個人を監視する際に、いくつかの実施形態において、電極の正規化、EMGデータの取得とそれに伴うT二乗値の計算、そのデータと基準T二乗値との比較、アラームを起動してよいか否かの評価が行われてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態において、T二乗値の比較(たとえば、監視期間中に決定されたT二乗値と基準T二乗値との比較)と、アラームを起動すべきか否かの評価においては、T二乗値間の差を基準T二乗統計値の標準偏差の単位でスケーリングし、標準偏差の数がZファクタの閾値(標準偏差の単位)を超えるか否か、または特定の時間間隔にわたってそのファクタを超えるか否かを評価してもよい。T二乗値の閾値は、ある数値、たとえば特定の数の標準偏差(Zファクタの閾値とも呼ばれる)だけ基準T二乗値を超えてもよく、また別の方法でもスケーリングでき、たとえば、上述の、または特定の集合(特定の上腕周囲径を有する患者等)の全患者について有効であると判断された容認可能な数値に設定されたMVC計算を用いて行われる。
【0047】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の基準期間を使って機器設定を確定でき、監視期間でこれらの設定を使用できる。監視期間では、電極の正規化(たとえば、増幅器および/またはデジタル信号利得設定の調整)を行ってもよいが、そうでなければ、基準期間中に決定された機器設定を使用できる。いくつかの実施形態において、基準期間はこれに加えて、またはその代わりに、システムが患者を監視しているのと同じ期間中、たとえば同じ日または間隔で行ってもよい。このような基準期間は、個人の家庭で行ってもよい。たとえば、いくつかの実施形態において、装置は、自動校正を開始するように構成でき(たとえば、電極利得設定の調整を行ってもよい)、装置は、たとえばEMGセンサが筋肉上にどれだけきつく取り付けられているか、湿度、EMGセンサの位置またはその他の要素等を考慮して正規化されてもよい。正規化は、いくつかの実施形態において、T二乗統計の計算のための分散/共分散マトリクスを再計算するのに必要な期間にわたるデータの収集によりシステムを再訓練することと、重み付け係数を設定すること、またはその両方を含んでいてもよい。正規化は、いくつかの実施形態において、電極の校正(たとえば、利得設定の調整を行い、および/または検出器の入力間の同相信号除去が容認可能および/または予想範囲内であることを確認する)と、基準T二乗統計値の計算のためのデータ収集または選択帯域間の重み付け係数の計算のためのデータ収集、またはその両方によるシステム訓練を含んでいてもよい。正規化中のデータ収集により、システムは、基準T二乗統計値を確定することができ、デフォルト基準T二乗統計値を交換するか、以前に使用されていた基準T二乗値を交換することができる。たとえば、システムは、決定された1つを新たに決定された基準T二乗値に置き換えてもよい。再訓練期間中、システムはまた、いくつかの実施形態において、痙攣活動について患者を監視していてもよい。たとえば、訓練用のデータ収集中に、システムはそのデータ、すなわちリアルタイムで収集されたデータを、たとえば以前の訓練期間または患者集合から確定されていた基準値と比較し、痙攣が発生しているか否かを評価してもよい。システムがある期間内に監視を終えると、このシステムは、その期間のデータを後続の期間の評価のための設定の中に組み込むことができる。システムは、いくつかの実施形態において、正規化中に収集したデータを評価し、最近収集されたデータは、そのデータが特定の要求事項を満たした場合のみ組み込んでも(および設定を更新しても)よい。たとえば、ある設定の更新は、基準T二乗値の値、基準T二乗ベースラインの標準偏差、またはその両方が許容範囲内であるか否かに依存してもよい。システムはまた、スプリアスデータ、たとえば、ランダムノイズまたは個人の予期しない急速運動等からの外れ値が排除されるようなルーチンを実行してもよい。正規化は、定期的に、または特定の基準に応答して行われてもよい。システムは、たとえば、個人が最初に機器に接続された時、または信号の平均振幅の十分な増減が発生した、または特定の期間にわたり発生した時に、ある期間からEMGデータを収集することによって、自動的にシステムを再訓練してもよい。
【0048】
それゆえ、異なる実施形態は、監督された状況下で行われた基準期間、定期的正規化中(たとえば、家庭で使用中の定期的正規化を含む)のいずれか、またはその両方からの設定を組み込んでもよい。これに加えて、いくつかの実施形態において、少なくともいくつかの機器設定は、すべての患者から、または特定の集合の患者から得られたデータに基づいて確定させてもよい。たとえば、監督された状況下での基準期間中に個人を監視する代わりに、個人が、すべての患者または特定の集合の患者に固有の設定でプログラムされている機器を使用してもよい。非限定的な例として、MVCに基づくT二乗値の閾値またはZファクタの閾値を設定すること、または基準期間の標準偏差に関してスケーリングする代わりに、これらの設定を、ある上腕円周径(MUAC)を有する患者について有効であることがわかっている一般的な設定に基づいて設定してもよく、これはたとえば、MUACの数値が約16cm〜約24cmの個人に対して1つの閾値設定、MUACの数値が約24cm〜約28cmの個人についての異なる設定を使用する。いくつかの実施形態において、個人は機器を装着してもよく、初めての監視時に、EMG電極が校正ルーチン(たとえば、増幅器および/またはデジタル信号利得設定を調整する)を実行してもよいが、たとえば基準T二乗統計値、Zファクタの閾値、アラームラグ設定等、その他の設定は母集団ごとに行われてもよい。他の実施形態において、基準T二乗統計値は、最初に機器を接続した時に、たとえば校正と一緒に、および訓練中に、自動的に決定されてもよく、したがって、個人に合わせてカスタム化できる。しかしながら、他の機器設定、たとえばZファクタの閾値とアラームラグ設定は母集団ごとであってもよい。それゆえ、上記の方法のいくつかにより、患者の監視が容易となり得、患者が監督された状況下で時間を過ごす必要がなくなる。
【0049】
いくつかの実施形態において、機器設定は、人間のオペレータが外部から確認し、見直すことによってのみ調整可能であってもよい。他の実施形態において、機器設定の調整は、その代わりに、またはそれに加えて、自動的に行われてもよい。たとえば、前述のように、アラームがトリガされると、個人にはアラームを取り消す選択肢が与えられる。このような実施形態では、機器は、このような取消を偽陽性イベントとして記録することができる。システムは、このイベントを偽陽性に分類でき、システムは、検出要素、たとえばZファクタの閾値および/またはアラームラグを調整して、その後の偽陽性イベントの特徴付けを最小限にするように構成することができる。たとえば、偽陽性イベントが記録されるたびに、Zファクタの閾値を、標準偏差の単位で約10だけ増大させてもよい。あるいは、システムが、基準T二乗ベースラインとMVC実行中のT二乗計算の差に関してスケーリングされていれば、システムは、T二乗値の閾値を調整することによって検出感度を調整できる。
【0050】
機器は、偽陽性イベントが記録されるたびに、Zファクタの閾値等の設定を自動的に調整してもよく、あるいはシステムは、特定の数の偽陽性イベントが検出された後でのみ、検出設定を調整してもよい。いくつかの実施形態において、システムはまた、以前のモニタ期間中に正しく特定された、および/または基準期間中に検出された実際の痙攣からのデータの記録をメモリ内に含んでいてもよい(または、設定要素を調整している間等、必要に応じてこれにアクセスしてもよい)。システムは、検出設定を調整して、新しい設定により、システムが以前に記録された痙攣の検出を見落としてしまっていないかを計算してもよい。それゆえ、検出された痙攣の履歴記録は、設定の調整に対する妥当性確認の役割を果たすことができる。システムは、いくつかの実施形態において、各種の検出設定に関する理想的な設定点を発見するために、設定を調整してもよい。たとえば、検出ユニットまたは基地局(これは、前述のように、より高度なプログラミング能力を有する可能性がある)のいずれかが、実際に記録された痙攣と、偽陽性イベントとして記録されたイベントとの間の最適な選択性を提供する設定を発見するアルゴリズムを実行してもよい。設定の調整において、検出システムは、記録された痙攣のほか、あらゆる偽陽性イベントを保存するか、またこれにアクセスできてもよい。さらに、システム(たとえば、検出ユニットおよび/または基地局)は、アラームの起動には不十分であるものの、それに十分に近かったかもしれないEMGデータを保存してもよい。その結果、システムは、設定の調整とこれらの設定の使用によって、保存されたデータに関する偽陽性検出が起こりうることはなかったことを確認可能となりうる。したがって、システムは、関連するデータにアクセスして、実際の痙攣の検出を最適化し、偽陽性イベントを最小限にするように設定をダイナミックに調整でき、さらに、これを自動的に行うことができる。
【0051】
図4は、痙攣の特徴に関してEMG信号をモニタし、痙攣が検出された時にアラーム応答を開始する例示的方法36を示す。ステップ38で、EMG信号(および必要に応じてその他の検出器出力信号)を、たとえば救急車または家庭内で収集することができる。ステップ40で、EMG信号をフィルタ処理して、各種の幅の複数の周波数帯域を選択することができる。フィルタ処理は、ソフトウェアまたは電子回路部品、たとえば適当に重み付けされたバンドパスフィルタ(たとえば、Baxter−Kingバンドパスフィルタ)によって行うことができる。たとえば、いくつかの実施形態においては、次のような3つの周波数帯域を選択できる。すなわち、範囲1は約300Hz〜約400Hzの範囲であってもよく、範囲2は約130Hz〜約240Hzの範囲であってもよく、範囲3は約30Hz〜約40Hzの範囲であってもよい。選択された周波数帯域からのデータをステップ42で処理することができ、1つまたは複数の統計値を特定できる。たとえば、T二乗統計値を、選択された周波数帯域の出力振幅の分散/共分散に基づいて計算できる。ステップ44で、基準データを決定、選択、または使用することができ、計算された1つまたは複数の統計値(ステップ42)を基準データと比較することができる(ステップ46)。いくつかの実施形態において、T二乗値をベースラインと比較することができ、このベースラインは0に近い小さい数であるか、0であってもよく、これはベースラインが基準期間中に収集された基準データに基づいてそのように(たとえば加重係数の調整、電極正規化またはその両方によって)調整されたからである。いくつかの実施形態において、T二乗統計値と基準T二乗統計値の差(ΔT二乗)を特定してもよい。ステップ48で、方法は、痙攣イベントが発生しているか否かを査定することができる。このような査定ではたとえば、基準T二乗ベースラインとは異なる標準偏差の単位数によってΔT二乗値をスケーリングし、MVCに基づいてT二乗値の閾値を設定し、集合ごとの基準に基づいて閾値を設定し、またはこれらの方法の組み合わせを用いて閾値を設定する。ΔT二乗のスケーリング後の数値、たとえばZファクタ(標準偏差の単位)をZファクタの閾値またはT二乗値の閾値と比較して、痙攣が発生している可能性を判断することができる。痙攣が発生している可能性に関するその判断に基づいて、方法はアラームプロトコルを開始することができ(ステップ50)、および/またはシステムは次のEMGデータセットを収集して(ステップ52)、再びアラームを起動すべきか否かを査定することができる。
【0052】
ステップ38に示されるように、本明細書に記載される方法は、EMGデータの収集を含む。いくつかの実施形態では、EMG電極データの分析によってのみ痙攣の検出を達成することができる。別の実施形態では、一つ以上のEMG検出器と一つ以上のその他の検出器との組み合わせを使用することができる。たとえば、温度検出器、加速度計、ECG検出器、その他の検出器、またはそれらの任意の組み合わせを使用できる。加速度計は、たとえば患者の四肢に配置して、痙攣を特徴付けることのできる激しい運動の種類を検出することができる。同様に、ECGセンサを使用して、痙攣を特徴付けることのできる上昇したまたは異常な心拍数を検出することができる。監視装置は、EEGで一般的なように、従来通り頭部に多数の有線電極を配置することなく癲癇性痙攣を検出することができる。EMGとその他のデータとの組み合わせは、たとえば、特に厄介な患者に使用することができる。電極と皮膚との接触安定性に影響を及ぼし得る過剰な量の弛緩性皮膚や高濃度の脂肪組織を有する患者は、監視が困難であり、かつ複数の検出器を使用する対象となり得る。非EMG検出器(存在する場合)からのデータが種々の様式にて使用され得る。たとえば、いくつかの実施形態において、Z−ファクタの閾値又はタイムラグファクタは、痙攣が起こり得ることを裏付ける(或いは否定する)データの存在に基づいて調整され得る。従って、システムのEMGデータに対する感受性は、その他の検出器からの裏付けられた、または否定された証拠に基づいて修正され得る。いくつかの実施形態において、特定の基準ファイルの選択は、少なくとも一部は、別の検出器によって収集されたデータに基づいているかもしれない。
【0053】
いくつかの実施形態において、EMG検出器は、個人の二頭筋に配置されるような単一の検出ユニットを含み得る。別の実施形態において、二つ以上の検出ユニットの組み合わせが使用され得る。たとえば、EMG検出器は、主動筋および拮抗筋筋肉群に装着し、その他の筋肉の組み合わせからの信号を収集することができる。概して、ステップ38にて収集されたEMGデータは、たとえば、表面単極電極、双極差動電極、あるいは別の適切な形状の電極などの種々の任意の種類の電極からのものであり得る。そのような電極はたとえば、皮膚表面に配置することによって、ジェルの貼付を含んでいても含まなくてもよく、いくつかの実施形態では、Ag/AgCl電極とすることができる。たとえば、基準導線と2つの表面入力を有する双極EMG電極配置を使用することで、それらの入力に共通する雑音を抑えることができる。たとえば、差動増幅器を使用することができ、一方の入力から他方の入力の信号の減算を達成することができる。従って、筋肉群の脱分極に起因するような入力信号の差を選択的に増幅させ、両入力に共通する信号(外部雑音など)はほぼ無効にすることができる。すでに述べたように、いくつかの実施形態において、電極の校正または正規化が周期的に実施され得る。いくつかの実施形態において、電極の正規化は、EMG検出ユニットの検出または基準入力の一方或いは両方への試験パルス、典型的には交流電流の印加を含み得る。試験パルスからの出力信号は、日常的な校正(増幅器及び/又はデジタル信号利得設定の調整を含む)を実施するために使用され得る。
【0054】
ステップ40で、EMG信号をフィルタ処理して、各種の幅の複数の周波数帯域を選択することができる。フィルタ処理は、ソフトウェアまたは電子回路部品、たとえば適当に重み付けされたバンドパスフィルタ(たとえば、Baxter−Kingバンドパスフィルタ)によって行うことができる。ステップ38(データの収集)とステップ40(関心対象の周波数領域の選択)は、便宜上、別のステップとして説明できる。しかしながら、このような説明は、本願の方法をソフトウェアまたは電極回路部品、たとえばアナログまたはデジタル信号処理によるフィルタ処理に限定するものと解釈するべきではなく、どのような技術および/またはアナログおよびデジタル信号処理の組み合わせも、スペクトルデータの分離に使用できる。いくつかの実施形態において、第一の範囲、第二の範囲、第三の範囲を含む3つの周波数帯域を選択できる。第一の範囲は、約250Hz〜約420Hz、または約300Hz〜約400Hz、または約325Hz〜約375Hzとすることができる。第二の範囲は、約80Hz〜約290Hz、または約130Hz〜約240Hz、または約150Hz〜約220Hzであってもよい。第三の範囲は、約10Hz〜約50Hz、または約30Hz〜約40Hz、または約32Hz〜約38Hzであってもよい。いくつかの実施形態において、ステップ40で選択される周波数帯域は、過去に基準期間中に分析された測定済み波形に基づいていてもよい。たとえば、基準期間中に痙攣期間からのスペクトルデータを測定して、そのデータを一般化されたGTC波形と比較し、またはそれにフィットさせることができる。GTC波形は多数の特徴的基準点を含んでおり、これらをある患者のスペクトルデータと相関させることができる。たとえば、GTC波形は、約280Hz〜約320Hzの付近のスペクトル密度が低い領域(極小)と、約380Hz〜約420Hzの付近のスペクトル密度が高い領域(極大)と、極値間の変曲点と、を示している。このような特徴的な基準点は、異なる個人において特定可能であるが、これらの患者について、その点は異なる周波数に見られるかもしれない。これらの基準点の位置は、患者個人の筋肉組織に関連付けることができ、一部の個人については、痙攣中の運動徴候に関連している可能性がある。いくつかの実施形態において、特徴的な基準点、たとえば極小値、極大値または変曲点の位置を使って、T二乗の計算に使用される複数の選択された帯域のうちの少なくとも1つの位置を選択または調整することができる。いくつかの実施形態において、分析用に選択される周波数領域の数は3より多くてもよい。たとえば、いくつかの方法、特に、非限定的な例としてPCA分析法を用いる方法では、3つより多い範囲を選択できる。周波数帯域の選択は、ある期間のEMGデータを収集し、このデータを高速フーリエ変換(FFT)方式で変換することによって行ってもよい。いくつかの実施形態において、データは、約2分の1秒〜約2秒の期間(またはその他の期間)について収集し、周波数ドメインに変換してもよい。
【0055】
ステップ42において、(選択された周波数範囲からの)EMGデータを、各種の統計的手法のいずれかを使って処理することができる。たとえば、いくつかの実施形態において、これらの選択周波数範囲からのデータは、HotellingのT二乗統計値の特定に使用できる。HotellingのT二乗検定では、データが独立した多変量ガウス分布であることを前提とする。このような前提は一般に、EMGデータには無効である。しかしながら、これまでにわかっている点として、HotellingのT二乗統計値は、選択周波数範囲内の測定された出力振幅が変化したことを認識するメトリックとしての役割を果たすことができ、これは痙攣の出現を表す可能性がある。したがって、HotellingのT二乗統計値は、各周波数範囲に関して測定された出力の振幅が、その分散と、他の周波数範囲内で測定された出力振幅との共分散によって正規化される測定基準と考えることができる。この方法により、1つの周波数範囲の出力を使用するか、周波数範囲の組み合わせに関する出力の合計を使用することにより、このデータをその分散/他の選択範囲との共分散での正規化による畳み込みを行うことなく、痙攣イベントまたはアラーム状態をより高感度に安定して示す指標を生成できる。重要な点として、システムは、たとえば1つまたは複数の周波数範囲にわたってまとめられた出力成分の測定等の場合より痙攣活動に対して感度が高いため、痙攣の検出を見落とすことなく、検出の閾値を高めることができる(それゆえ、多くの偽陽性検出を回避できる)。いくつかの実施形態において、T二乗分析を選択帯域内の出力振幅について実行できる。他の実施形態において、T二乗分析では、EMGデータの他の特徴を使う、あるいはこれを出力振幅と組み合わせて使うことができる。たとえば、ある帯域内の1つまたは複数の個別の周波数でのスペクトル密度、たとえば特定の帯域内のピークスペクトル密度、または帯域内の平均スペクトル密度もまた、HotellingのT二乗統計法で処理できる。これに加えて、使用されているかもしれない他のセンサからのデータ、たとえば、温度、加速度計またはECGデータもまた処理できる。
【0056】
ステップ42のT二乗計算は、選択された周波数範囲にわたる分散/共分散の計算に基づいて行うことができる。T二乗統計値は各時点で計算でき、たとえばEMGデータの各秒で1024の統計値または2048の統計値(サンプリングレートによる)が生成される。もちろん、たとえばエイリアシングを回避するために、必要に応じて他の適当なサンプリングレートも使用できる。3つの周波数範囲を使うと、3×3の正の対称分散/共分散マトリクスを作ることができ、これは特異値分解(SVD)計算を使って逆転できる。分散/共分散マトリクスはそれゆえ、その固有値と正規直交アイゲンベクトルに分解することができる。固有値とアイゲンベクトルを使って、分散/共分散マトリクスの逆を計算することができ、またT二乗計算にも、たとえば加重係数を計算することによって使用できる。T二乗統計値は、たとえば、3つの周波数範囲の出力振幅を合成して1つのT二乗統計値にするために使用できる。
【0057】
いくつかの実施形態において、ステップ42のT二乗計算では、選択周波数帯域からの信号に異なる重みを割り当てることができる。ステップ42で使用される重み付け因子は、たとえば、基準−訓練期間中に選択周波数帯域を分析することによって特定されていてもよい。周波数帯域の各々に割り当てられる重みは、たとえば選択周波数帯域の分散/共分散マトリクスの逆から計算することができ、たとえば基準−訓練期間中に計算することができる。周波数帯域の各々に割り当てられる重みは、したがって、定期的な正規化(および再訓練)中等に自動的にも、またはいくつかの実施形態においては、オペレータによっても、ダイナミックに調整できる。この方法では、より多くの筋活動を示す周波数範囲(通常、より低周波数範囲)には、より少ない筋活動を示す周波数範囲(通常、より高周波数範囲)より少ない重みを割り当てることができる。適当な重み付けは、基準−訓練期間中に観察された個人の通常の筋肉運動と選択された具体的な周波数帯域に依存できる。たとえば、これらの帯域は以下のように選択できる。すなわち、範囲1は約300Hz〜約400Hzの範囲であってもよく、範囲2は約130Hz〜約240Hzの範囲であってもよく、範囲3は約30Hz〜約40Hzの範囲であってもよい。これらの帯域を使用する時、重み付け係数は、範囲3について、約5%〜約20%または約8%〜約15%、範囲2について、約20%〜約40%または約25%〜約35%、範囲1について、約50%〜約70%または約55%〜約65%であってもよい。
【0058】
T二乗統計値は、たとえばある電極に関するサンプリング周期等、どのようなデータ収集間隔で計算してもよく、また、たとえば指数平滑法を用いる等によって計算値を平滑化し、平滑化された統計値を基準データと比較してもよい。各種の適当な平滑化手法(たとえば、移動平均、フィルタ、Savitzky−Golayフィルタ、ガウスフィルタ、カイザーウィンドウ、各種のウェーブレット変換等)のいずれも使用できる。一般に、平滑化係数(α)は0〜1の範囲であってもよく、すなわち0<α≦1である。いくつかの実施形態においては、0.5の平滑化関数を使用できる。一般に、α>0.5では平滑化が減少する可能性があり、α<5では平滑化が増大する可能性がある。平滑化を増大させることによって、特定される痙攣イベントが減り、それゆえ、痙攣アラームの応答性が低くなる可能性がある。T二乗統計値は、データ収集中の各時間間隔で計算して、基準値と比較してもよい(以下のステップ46参照)。ある基準値と比較される数値は平滑化された数値であってもよく、および/または特定の時間間隔からの平均値であってもよい。たとえば、約10ミリ秒にわたって収集されたデータ(これは、複数のT二乗計算を含んでいてもよい)を平均して、T二乗値の平均を基準T二乗値と比較することができる。したがって、1つのT二乗値と基準T二乗値の間の比較計算の数(ステップ46参照)は、T二乗統計値が計算された回数と同じでも、違ってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態において、T二乗値は、複数のT二乗計算の平均値または個別のT二乗値であってもよい。複数のT二乗値を収集することによって、監視期間中の標準偏差(および/またはデータセットの変動性に関する他のメトリック)を計算することができる。これは、T二乗の基準またはベースラインレベルの標準偏差と混同するべきではない(および、たとえばZファクタの評価等により、T二乗計算をベースラインまたは基準レベルの標準偏差の単位でスケーリングする)。複数の個別のT二乗計算の標準偏差は、いくつかの実施形態において、アラームを起動するべきか否かを判定する際のメトリクスとして使用できる。それゆえ、いくつかの実施形態において、T二乗値(たとえば、個別値、T二乗値の平均、または平滑化された値)、アラームラグ、監視期間からの複数のT二乗値の標準偏差、またはこれらの組み合わせを使って、痙攣が起こっているか否かを査定することができる。
【0060】
再び
図4を参照すると、ステップ44で、基準データ(後のステップ46で、統計値またはステップ42で測定された値と比較するためのもの)を、使用のために測定または選択することができる。基準データは、いくつかの実施形態において、メモリから選択してもよく、たとえば所定の基準値を含めることのできるテンプレートファイルにアクセスすることによる。たとえば、基準T二乗統計値は、たとえば監督された状況下で行われる基準−訓練期間中に取得されたEMGデータから確定するか、または特定の患者集合の中の個人について選択されるかのいずれでもよい。いくつかの実施形態において、基準値は、1回(たとえば監視期間開始時)選択してもよく、単純に連続間中の多くの異なる計算に使用できる。しかしながら、いくつかの実施形態において、基準T二乗値は、ある監視期間中に特定し、(および単純に選択し)てもよい。たとえば、装置は、個人に初めて接続された時に得られたEMGデータを使って基準T二乗統計値のための分散/共分散マトリクスを計算することにより、各患者に合わせて自動的に自己訓練してもよい。たとえば、たとえば2分から12分までの10分間のEMGデータを訓練に使用してもよい。他の適当な時間もまた使用でき、たとえば1分間、2分間、または5分間でもよい。このような再訓練は、システムが異なる使用期間ごとの振幅のばらつきに対処するのに役立つ可能性がある。たとえば、振幅は、たとえばEMGセンサの設置場所等に依存して使用のたびに異なる可能性がある。装置は、たとえばどれだけきつくEMGセンサが筋肉上に設置されているか、湿度、EMGセンサの位置等を考慮して、セッションごとに正規化することができる。いくつかの実施形態において、システムは、電極の接続後、訓練の前に、ある遅延時間、たとえば2分またはその他の時間だけ遅延させてもよい。個人はたとえば、皮膚の上に検出ユニットを取り付けると、腕を過度に動かす傾向があり、皮膚のインピーダンスは取り付け後しばらくして安定化する傾向がありうる。訓練期間(または再訓練期間)中に、個人は実質的に休息していてもよい。いくつかの実施形態において、個人は訓練中、激しい活動を避けることを除き、ほとんどの一般的な日常活動を行ってもよい。訓練中、検出システムは痙攣れ活動も監視していてよい。たとえば、ある訓練(または再訓練)期間中、システムは保存された設定にデフォルトされてもよく、たとえば、システムは、テンプレートファイルに保存された設定、または最後に使用された許容値にデフォルトされてもよい。訓練期間中に痙攣のエピソードが発生した場合、この痙攣を検出することができ、訓練を別の期間へと移動できる。
【0061】
いくつかの実施形態において、システムの正規化は定期的に、たとえば規則的な間隔で行うことができる。システムの正規化は、その代わりに、またはそのほかに、以前の期間中、たとえば過去1時間に信号の平均振幅の十分な増減が起こり、アラームが発せられなかった時に行ってもよい。いくつかの実施形態において、再正規化は、平均振幅がある割合を超えて変化した時にいつでも行ってよい。たとえば、EMG信号の振幅における最大容認可能ドリフトをテンプレートファイルの中に表示してもよい(たとえば、校正間の「最大振幅ドリフト」)。
【0062】
いくつかの実施形態において、再正規化は、誤ったアラームが生成されすぎであるとみなされた時にいつでも行うことができる。たとえば、いくつかの実施形態において、個人に対して、アラームが送信された、または送信されようとしていることを知らせてもよい。個人には、その知らせを受けて、実際には痙攣が発生していないことに気付いた場合に、システムが偽陽性の警報を発したというメッセージを介護者および/またはデータ保存ユニットに送信する選択肢を与えることができる。いくつかの実施形態において、偽陽性の警報があったことが繰り返し送信されることが、システムの再校正を開始させる役割を果たしてもよい。いくつかの実施形態において、再校正はまた、たとえば監視対象となっている個人が、または介護者、たとえば患者を遠隔的に監視できる個人が、手作業で制御できる。再正規化の完了後、その中で測定された基準値は、EMGデータから特定された統計値とのその後の比較に使用できる。
【0063】
ステップ46で、処理されたEMGデータの1つまたは複数の統計値、たとえば異なる範囲内の出力振幅に基づくT二乗統計値(ステップ42参照)を基準値と比較してもよい。T二乗統計値の差(ΔT二乗値)はたとえば、以下のように計算できる。
ΔT二乗値=(T二乗統計値)−(基準T二乗値)(式1)
式中、ΔT二乗値=監視期間中に計算されたT二乗統計値と基準T二乗値の差
T二乗統計値=監視期間中に取得されたデータから特定されたHotellingのT二乗統計値
基準T二乗値=基準−訓練期間中に取得されたデータまたは特定の患者集合のデータから特定されたHotelligのT二乗統計値
前述のように、いくつかの実施形態において、基準T二乗値は、たとえば定期的正規化中に(たとえば、検出器の正規化およびシステムの訓練または再訓練によって)、低い数値となるように調整してもよい。それゆえ、いくつかの実施形態において、基準T二乗値をΔT二乗値の計算に含めることができ、いくつかの実施形態において、ゼロと仮定してもよい。
【0064】
ステップ48において、特定された統計値および/またはこれらの数値の基準値との比較を利用して、痙攣イベントが起こっている可能性を判定できる。いくつかの実施形態において、Z値、たとえば統計上の係数(T二乗値)が異なる標準偏差の単位を特定してもよい。たとえば、Z値は以下のように計算できる。
Z値=[ΔT二乗値]/[(σ)基準T二乗値](式2)
式中、Z値=標準偏差の単位でスケーリングされたT二乗統計値間の差
ΔT二乗値=監視期間中に取得されたデータから計算されたT二乗統計値と基準統計期間内に取得されたデータから計算されたT二乗統計値の差
(σ)基準T二乗値=T二乗ベースラインの標準偏差
Z値は、したがって、ΔT二乗の数値を、基準期間中に特定されたT二乗ベースラインからの標準偏差の単位でスケーリングすることができる。Zファクタのスケーリングに使用されるT二乗ベースラインの標準偏差は、重み係数の計算に使用される基準−訓練期間としても使用される基準期間(またはそれに連続する基準期間)から測定できる。他の実施形態において、基準期間は、加重係数の決定に使用される基準−訓練期間と同時でなくてもよい。たとえば、患者が特定の活動を行っている基準期間は、標準偏差の測定に使用でき、監督された状況下で実行でき、重み付け係数を確定するための基準期間は、日常の家庭での使用中に実行できる。いくつかの実施形態において、T二乗値の閾値を使用してもよく、T二乗値の比較は、このT二乗値の閾値(たとえば、MVCを使って決定されるか、1つまたは複数の分類基準に基づいて特定される)と行ってもよい。
【0065】
Z値がZファクタの閾値を超過することがわかった場合、アラームプロトコルの開始を決定できる。たとえば、アラームを起動すべきか否かの査定は、以下のようにすることができる。
Z値>Zファクタの閾値の場合(アラームプロトコルを開始する)(式3)
Z値<Zファクタの閾値の場合(アラームを起動しない)(式4)
いくつかの実施形態において、T二乗統計値の大きさに対するアラームの感度を調整することができる。アラーム状態のトリガに使用されるZファクタの閾値を、より高い数値に設定してもよい。Zファクタの閾値を高くすることは、誤ったアラームの頻度を減らすのに役立つ。Zファクタの閾値はたとえば、T二乗値のベースラインからの標準偏差1つとすることができる。それゆえ、Z値の1は、訓練期間中に特定されたT二乗値ベースラインからの標準偏差1つであり、Z値の2は、そのベースラインからの標準偏差2つであり、Z値の3は、そのベースラインからの標準偏差3つ等々である。痙攣による筋活動の増大(より高振幅のEMG信号)によって、より大きなT二乗値が生成される可能性があり、使用者はたとえば、Z値の閾値を3に設定して、筋活動が特定の振幅レベルに到達しなければ、アラーム状態に達しないようにすることができる。一般に、Z値の閾値がより低い数値であると、より多くの誤ったアラームが生成される可能性があり、より高いZ値の閾値を使って、誤ったアラームの頻度を低下させることができる。
【0066】
適当なZファクタの閾値の選択は、使用される設定に依存できる。たとえば、選択周波数帯域についての重み付け係数は、運動徴候、ノイズ源、痙攣に対するシステムの応答に影響を与える可能性がある。これに加えて、システムの訓練と、T二乗値計算のための分散/共分散マトリクスの計算は、Zファクタの閾値の大きさに影響を与えうる。たとえば、低周波数帯域に関する重み付け係数が大きいと、システムはある運動徴候(たとえば、一般的な筋活動を伴う)に対して、より応答性が高くなる。これに加えて、そのような重み付け係数の場合、T二乗統計値は、より高周波数の信号が筋肉の収縮を維持するために送信された時に、それほど急速に変化しないかもしれない。低周波数帯域に関連する重みを小さくすると、高周波数の運動徴候に対するシステムの感度を高くすることができる。しかしながら、低周波数の重み付け係数が低すぎると、信号の全体的な強度は低下する可能性がある。
【0067】
本明細書に記載の周波数帯域と相対的重み付け係数を使用することによって、(個人が何らかの一般的な日常活動を行っていても)非常に安定したベースラインが得られるようなT二乗統計値を生成することができる。重要な点として、これにより、痙攣が発生している時に存在する可能性のある筋活動の種類に対して急速かつ選択的に増大するT二乗値が提供され、それゆえ、高いZファクタの閾値を使用できる。これは、動いている個人および/または活発な日常活動に従事できる個人の場合でも、偽陽性検出を大幅に低減できるため、有利であろう。いくつかの実施形態において、Zファクタの閾値は約1000と高くてもよく、それでもなお、痙攣活動を捕捉できる。したがって、本願のZファクタの閾値は、いくつかの実施形態において、最大約1000またはそれより高くすることができ、または約45〜約1000とすることができる。
【0068】
いくつかの実施形態において、MVC計算を使って、Zファクタの閾値を設定することができる。たとえば、Zファクタの閾値は、T二乗値が、Zファクタの閾値を超えるために、MVC中に計算されたT二乗統計値(MVC中の基準T二乗値)と個人が休息中に計算されたT二乗統計値の差のいずれかの係数(N)となるように設定できる。たとえば、Zファクタの閾値をT二乗統計値間の係数(N)に設定するために、Zファクタの閾値を次のように計算することができる。
Zファクタの閾値=N[((MVC中の基準T二乗値)−(基準T二乗値))/(α)基準T二乗値]
Zファクタの閾値の数値、アラームラグ、またはこれらの組み合わせを、痙攣イベントが発生しているか否の査定に使用できる。システムが、痙攣が起きているかもしれないとみなした場合、このシステムはアラームプロトコルを開始してもよい(ステップ50)。もちろん、アラームを起動するか否かの判断中に、システムはいくつのZ値をメモリの中に保存して、分析してもよい。たとえば、アラームラグが2秒に設定されると、適当な数の以前の測定値から、Zファクタを考えることができる。あるいは、システムは、痙攣が存在しないとみなし、たとえば、次のサイクルのEMGデータを収集し、痙攣が発生しているか否かの査定を繰り返すことができる。
【0069】
図4に示されるように、ステップ46と48は、処理されたEMGデータを基準データ(またはそのデータから得られた数値)と比較することと、そのデータを使って、痙攣が発生している可能性があるか否かを判断することを示している。前述のように、基準データはテンプレートファイルから選択してもよく、患者は毎日検出ユニットを再訓練しなくてもよい。むしろ、使用者は検出ユニットを取り付けて、確定された基準データをダウンロードし、これを使って、EMGから得られた統計値を分析することができる。テンプレートファイルは、たとえば、ステップ46と48のいずれかで収集データを扱い、または分析するために使用される各種の定数を含んでいてもよい。このようなテンプレートファイルに含めることのできる情報の一部を表1に示す。確認のために付記すれば、「XX」は単なるプレースホルダであり、大きさや精度を如何様にも示唆していないと解釈するべきである。
【0070】
【表1】
想定されることとして、少なくとも状況によっては、テンプレートファイルのために最初に選択される数値の少なくともいくつかは、個人を患者集合に分類することによって確定できる。たとえば、いくつかの実施形態において、初期テンプレートファイルは、一般的患者集合からの履歴データを使って取得してもよい。患者はたとえば、各種の特徴、たとえば年齢、性別、人種、体重、体脂肪率、腕の脂肪量、脚の脂肪量、上腕円周径、体力レベル、1つまたは複数の最大随意収縮レベルのいずれかの組み合わせで定義することができ、または患者は他の特徴で定義することもできる。患者の病歴、たとえば、痙攣の既往歴、現在服用中の薬剤、またはその他の要素も考慮してよい。ある患者の設定を、その患者がマッチする特定の患者集合に基づいて画定するために、その特定の集合の中のその他の患者に関する保存データを使用してもよい。保存データは、EMGデータと、そのデータが非痙攣期間または痙攣期間に関わるものか否かの指標を含んでいてもよい。ある患者についてのデータが収集されると、そのデータはデータライブラリに追加されてもよい。テンプレートファイルを生成または選択したところで、これを検出ユニット、ベースユニット、またはその両方の中のコンピュータメモリに含めてもよく、個人はこれを家庭用の検出ユニットで使用できる。
【0071】
機器設定はまた、訓練期間中の患者の監視から確定してもよく、たとえば患者を監督された状況下で監視することができる。たとえば、監視中、一般的な痙攣の特徴を判断するためにデータを収集してもよい。患者はたとえば、数日間にわたり、または統計的に有意な数の痙攣に関わるデータの収集に必要なその他の間隔にわたり、EMGでの監視を行うことができる。監視期間中、患者のEMGデータを収集できる。既知の痙攣の期間および、非痙攣期間を含む時間間隔からのEMGデータを収集し、保存してもよく、オペレータはこのデータを分析し、使用するための基準値を特定できる。オペレータは、たとえば、データを分析してもよく、各種の異なる仮説的な数値をテンプレートファイルにインポートすることができる。すると、システムは、この仮説的な数値を使って、たとえばアラームまたは偽陽性が発行されたか否かを、記録されたデータに基づいてシミュレートすることができる。オペレータは、そのデータに基づいて、または全患者または特定の集合の患者について一般的である数値に基づいて、テンプレートファイル用の数値を選択できる。
【0072】
いくつかの実施形態において、基準−訓練期間ではまた、ある患者の最大随意収縮(MVC)の測定または、その筋電図上のシグナチャ(signature)の測定を行ってもよい。たとえば、患者は、最大強度の条件下で随意収縮を行い、筋電図上の信号が記録される。筋肉の強度には個人差があるため、EMG信号の振幅もまた異なる可能性があり、したがって、患者にMVCを行わせることにより、その個人の筋肉組織に合わせて機器の設定をカスタム化できる。MVCは、オペレータがある患者に関する感度の数値、たとえばZ値の閾値および/またはアラームラグ等の設定を行うのを支援するために使用できる。MVCは、痙攣を低い頻度でのみ起こす患者および、合理的な訓練期間中に痙攣に関する痙攣にとって重要な統計データを収集するのが難しいかもしれない患者の場合に特に有益となりうる。
【0073】
いくつかの実施形態において、EMG信号を使用して痙攣を検出するための装置と方法は多数のステップを含むことができる。たとえば、いくつかの実施形態において、検出ユニットおよび/または基地局は、信号活動から監視の継続が妥当とされるまで、「スリープ」モードにすることができる。「スリープ」モードでは、基地局は定期的に、検出器に対してリードオフの検出と信号モニタについてのポーリングを行うことができる。このような実施形態は、データの中で最も関係の深い部分、たとえばデータの中で、痙攣を含んでいる可能性が最も高い部分の収集を計画するために使用できる。
【0074】
たとえば、
図5は、1つの実施形態による痙攣検出方法58を示す。方法58では、データ収集レートは、検出ユニットの状態に依存する。たとえば、方法58は、検出ユニットおよび/または基地局を「スリープ」モード、すなわち破線60の中の動作により特徴付けられるものと、実質的な連続動作モード、たとえば活動状態66との間でトグルするために使用できる。
図5に示されているように、検出器および/またはベースユニットは、「スリープモード」中のある期間にわたり、休止状態62であるように構成することができる。休止状態62では、検出器またはベースユニットはサイレントであってもよく、たとえば、監視を行わず、または患者からデータを収集しないようにすることができる。休止状態は、休止状態62から定期的に出て、たとえばある期間にわたる検出器データを収集するための命令を含んでいてもよい。すなわち、検出器は、データが収集されるポーリング動作ステップ64に入ることができる。個々のポーリング動作の継続期間は、検出ユニットの状態に関する決定を下すのに必要なデータを収集するのに十分な長さとすることができる。すなわち、たとえば、ポーリングステップ64中に収集されたデータに基づいて、検出ユニットは休止状態62に戻っても、または他の状態、たとえば活動状態66に入ってもよい。いったん活動状態66に入ると、検出ユニットはたとえば、電気活動を連続的または実質的に連続的に監視することができる。
【0075】
たとえば、Z値の閾値とアラームラグの閾値を越えると、アラームがデータとともに、たとえば基地局に送信されてもよい。基地局は独自にデータを処理し、アラーム状態を検証することができる。基地局がアラームに同意すると、基地局は、遠隔機器とローカルの音声発生器に対してアラームを発生することができる。アラームまたは警報は、可聴信号、事前に録音された音声メッセージ、テキストメッセージ、電子メール、PDAのトリガ振動、またはその他適当な注意喚起機構を含んでいてもよい。患者の検出ユニットまたは基地局にはさらに、たとえばスマートフォンや携帯型ナビゲーションデバイスで使用されているようなGPS機能を搭載し、介護者が患者の居場所を特定できるようにしてもよい。アラームまたは警報は患者の位置情報を含んでいてもよい。
【0076】
他の実施形態において、一体型の機器を使用してもよく、基地局またはその他の遠隔データ処理機能は不要である。一体型の機器は、EMGデータを処理し、Z値の閾値とアラームラグの閾値を超えた時に介護者にアラームを送信することができる。一体型の機器は、患者の筋肉の上に取り付けることができ、ネットワーク通信、たとえば携帯電話を介して介護者にアラームを通信できる、小型のバッテリ式携帯機器を含んでいてもよい。一体型機器にはさらに、GPS機能を搭載し、介護者が患者の居場所を特定できるようにしてもよい。この場合もまた、アラームまたは警報は患者の位置情報を含んでいてもよい。
【0077】
いくつか実施形態において、検出ユニットは、(適正にトリガされると)アラームを基地局に(たとえば802.11プロトコルによって)送信でき、また、患者が装着している検出ユニットからの通信を離れた場所の携帯電話またはその他の携帯機器に、Blurtooth(商標)を介して送信することができる。通信はまた、たとえば携帯電話に対して、たとえばテキストメッセージを送信することにより、所定の電話番号をダイヤルし、反対側で人が応答した場合に音声通信リンクを開くように指示することができる。それゆえ、基地局が実行可能な各種の機能を携帯電話でも行うことができる。基地局と携帯電話の両方を接触させる、すなわちBluetooth(商標)を介することの1つの利点は、2つの送信手段に異なる動作距離を持たせることができる点である。それゆえ、患者は異なる場所を自由に行き来でき、監視のための接続状態が切れる危険がない。
【0078】
いくつかの実施形態において、基地局(または適当なアプリケーションがインストールされたスマートフォン)に検出ユニットのアラームに同意させることによって、投票機能が導入される。このような機能を用いた場合、両方の機器が決定に投票し、アラームをトリガすることに同意しなければならない。このプロセスは、誤ったアラームを制限できる。このような実施形態では、検出ユニットは信号データを処理し、その結果と生データの両方を基地局に送信することができる。基地局は独自に信号データを処理し、その結果を検出ユニットによって送信された結果と比較することができる。前述のように、基地局は、より大きな処理能力を有し、それゆえ、検出ユニットより多くの時間期間を処理し、これを、より高度なアルゴリズムを用いて行うことができる。基地局の結果が検出ユニットの結果と一致すれば、アラームを発生してもよく、たとえばメッセージが介護者に送信される。基地局の結果が検出ユニットの結果と異なる場合、検出ユニットの結果に偽陽性のフラッグを立てることができる。当初、検出ユニットの結果には、(基地局が反対であっても)アラームをトリガする可能性が高くなるような重みを付けることができ、偽陽性が発生され、またオペレータのフィードバックが供給されると、方法は、たとえばZファクタの設定、ラグの設定または加重係数を調整することによって、偽陽性を減らすように患者に適応させることができる。方法を適応させると、基地局に対する信頼度を大きくすることができる。
【0079】
いくつかの実施形態において、検出ユニットはT二乗統計値を計算するアルゴリズムを使用することができる。T統計値と基準T二乗統計値との比較(および、Zファクタ、たとえばT二乗統計値が異なる分の標準偏差の数の特定)を使って、患者の状態を監視することができる。このアルゴリズムはさらに、システムの感度を調整する上での必要性に応じて、ラグ設定も使用できる。検出ユニットの計算を単純化するために、限定的な数の周波数領域を選択し、限定的な数の重み付け係数を検出ユニットの計算の中で使用することができる。前述のように、より大きな処理能力を持ちうる基地局は、いくつかの実施形態において、たとえば周波数領域のばらつき、重み付け係数、およびその他の基準等を含む多数の異なるアルゴリズムを適用して、痙攣が発生しているか否かを評価することができる。基地局はまた、たとえばT二乗統計値を使用してイベントをレジスタに記録するアルゴリズムを適用してもよい。追加のレジスタをその他のデータ特徴、たとえば、特徴的なGTC波形の存在、データバーストの存在に、またはその他の特徴たとえば、米国特許出願第13/275309号明細書に記載されているものに関連付けることができる。出力データの異なる特徴に関してレジスタに記録されたイベントの分析は、痙攣の発生を宣言するか否か、およびアラームを1カ所または複数カ所の場所に送信するか否かを査定するために使用できる。
【0080】
痙攣イベント中またはその後、人間のオペレータはZファクタの閾値とアラームラグの設定を見直し、痙攣の重篤さ、またはおそらく感度設定が高すぎることによる実際の痙攣の不検出に基づいて調整することができる。多くの人々が痙攣を起こすことがあり、たとえば前述の一過性痙攣のように、痙攣を起こしたことに気付かない。記録データの見直しは、痙攣を起こす人の医学的管理に役立つ。また、人間のオペレータは、データを評価し、監視期間中に発生したことがわかっている活動に基づいて、痙攣が起こらなかったという結論を出し、アラームを取り消すか、または監視システムに対し、検出された波形は痙攣を示すものではなかったと伝えることができる。同様に、人間のオペレータは、監視システムに対し、検出されない痙攣が起きていたことを、たとえば痙攣が起きた期間を特定することによって伝えることもできる。たとえば、オペレータには、EMG活動のローリング「ウィンドウ」を含むEMGデータが提供されてもよく、人間のオペレータは記録された信号を「巻き戻して」、監視システムに痙攣が発生した時間ウィンドウを指し示すことができる。いくつかの実施形態において、基地局は信号を視覚的に表示し、グラフィックユーザインタフェース(GUI)を提供してもよく、これによって人間のオペレータは、「ウィンドウ」を選択し、他の動作閾値と条件を規定することができる。監視システムはそれゆえ、追加のデータポイントを有することができ、これに照らして、その特定の患者に対する将来の痙攣イベントが評価される。
【0081】
痙攣検出装置は、人か携帯でき、伸縮性のアームバンド等を使って体に取り付けることのできる検出ユニットを含んでいてもよい。検出ユニットはバッテリ式であってもよく、基地局と無線通信してもよい。検出ユニットは、信号の受信、バッファ、処理、送信に十分なデータ保存、処理、送信能力を有していてもよい。検出ユニットは、たとえば、より少ないT二乗計算またはPCA成分を使用することによって信号を処理し、簡素化された分析を行うことができる。検出ユニットは、痙攣が起こっていると判断すると、その分析結果と生信号データの両方をベッドサイドの基地局にダウンロードし、より複雑な処理が行われるようにすることができる。基地局は、はるかに大きな能力、より大きな記憶容量、より大きな処理速度と能力を有し、全体として情報処理のためのより十分な装備を有していてもよい。たとえば、これはより多くのT二乗計算を行うことができる。同様に、基地局は生および処理済みの信号データを遠隔コンピュータに送信して、さらに詳しい分析と、使用中の他のユニットからの信号データとの集約が行われるようにすることができる。たとえば、複数の基地局が、複数の患者に関するデータを遠隔コンピュータに送信してもよい。各基地局は、他の基地局のデータを受信しなくてもよいが、遠隔コンピュータが共通のデータ保存場所の役割を果たしてもよい。データの集約によって、別のデータポイントが得られ、そこから、基地局と検出ユニットに工場デフォルトまたはアップグレートで供給されるかもしれないベースラインの閾値、アラーム感度の閾値、統計情報をさらに改善することができる。
【0082】
本明細書に記載のシステムは、いくつかの実施形態において、介護者が各種のシステム設定を監視および/または調整できるように構成されてもよい。たとえば、介護者はシステムに監視地点でアクセスし、使用し、たとえばシステム定数を変更し(たとえば感度を調整する)、患者の履歴、家族歴、現在または過去の服用薬物、薬物療法計画の遵守状況を閲覧し、または痙攣発生のログを作り、患者の医学的または外科的管理に役立てることができる。システムインタフェースのいくつかの実施形態の態様例が例示を目的とした
図6、7A〜7D、8、9A〜9D、10A〜10D及び11に示されている。たとえば、基地局は、介護者が各種の処理、分析、アラーム、およびその他の選択肢を選択できるようにするユーザインタフェースを提供するようにプログラムすることができる。基地局は、たとえば、介護者に対して、
図6のものと同様のグラフィカルユーザインタフェースを提供してもよく、これによって使用者は、リアルタイムで収集されるEMGデータを記録、処理、分析すること、または、以前に記録されたEMGデータの処理と分析、を行うことができる。
図6の実施形態からわかるように、使用者は、「クライアント」のフィールドに監視対象の、または閲覧したい記録の主である患者の氏名または識別番号を入力することができる。「日付」のフィールドは、使用者が監視の日付を入力できる。「EMGセンサ」のフィールドでは、使用者が使用する予定のEMGセンサの数(1または2個のセンサ)を選択できる。これに加えて、使用者は、たとえばZ値の閾値とアラームラグの設定、たとえば1/4秒の間隔またはそれ以外のいずれかの間隔等を設定することによって、システムの感度を調整できる。いくつかの実施形態において、Zファクタの閾値は1〜500またはそれ以上の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、適応アルゴリズムが、誤ったアラームに関する使用者からのフィードバックを使用して、Zファクタおよび/またはアラームラグを自動的に調整し、たとえば数値を一緒にまたは交互にインクリメントすることによって、感度を下げることができる。
【0083】
これに加えて、いくつかの実施形態において、使用者はシステムを訓練モードにすることができる。たとえば、ソフトウェアは使用者に対し、「学習」ボタンを選択する選択肢を与えてもよく、使用者は学習期間の開始時期を特定することができる。これに加えて、使用者はたとえば、「自動」ボタンを選択するか、システムにいずれかの別の方法で再訓練をプロンプトする(prompting)ことによって、学習を自動化することができる。使用者は、「保存」ボタンを選択することによって設定を保存できる。使用者は、「開始」ボタンを選択することによって、監視および記録プロセスを開始し、「一時停止」および「継続」ボタンをそれぞれ選択することによって、監視および記録プロセスを一時停止し、再開することができる。要するに、このシステムでは一般に、使用者が手動でシステム機能の中からあるルーチンを調整または選択できる。
【0084】
これに加えて、本明細書に記載のシステムは、過去の記録を検索し、および/またはダウンロードする機能を含んでいてもよい。たとえば、使用者が、たとえば前回記録したファイルを開くことによって、または現在の監視セッションのうちの前の部分を見ることによって、以前に記録したEMG信号セットを処理したい場合は、そのようにすることができる。使用者は、たとえば、
図7Aに示されるものと同様の、「ファイル」のドロップダウンメニューから過去に記録されたEMGファイルを開き、または閉じることができる。デフォルトでは、
図6の実施形態の「データ」のボックスの中の患者情報フィールドは空白であってもよい。使用者がEMGファイルを開くと、これらのフィールドは、
図7Bに示されるように、自動的にポピュレートされてもよい。
図7Bに示されるように、EMGファイルを選択し、開くことができ、たとえば
図7Bで選択されているEMGファイルは、2011年1月2日の午後10:36から開始された患者Aの075950を記録するためのものである(
図12に関して説明されているEMGファイル)。この例において、完全なファイルは約8時間分のデータを含み、5800万以上の記録を含んでいる。使用者はたとえば、もしたとえばその日にエピソードが1回のみ発生し、監視セッションの開始から約50分後に始まり、約15分間継続したことがわかっている場合、最初の800万の記録だけを抽出するように選択できる。あるいは、使用者はデータを最後の記録まですべて処理するように指定することもできる。他の実施形態において、使用者は、
図8Cの実施形態からわかるように、そこからデータを処理する時間範囲を特定することができる。
【0085】
使用者は、いくつかの実施形態において、
図7Dの実施形態からわかるように、さらに処理するためにEMGファイルを他のプログラムにエクスポートすることができる。たとえば、EMGファイルを読み、アラーム分析を行った後に、データをタブ区切りテキスファイルにエクスポートしてもよく、これを他の、STATA、SAS、JMP等の分析およびグラフ作成用のソフトウェアにインポートすることができる。たとえば使用者は、2つのコラム、すなわち各記録のT二乗値(またはPCA値)とアラーム状態を含むアラームデータをエクスポートすることができる。アラーム状態はたとえば、0か1の数値によって表すことができる。1の数値は、アラームがある時点で発信されたことを示してもよい。EMGの数値はまた、事前処理せずにエクスポートしてもよい。
【0086】
これに加えて、EMG値を、抽出された周波数帯域と共にエクスポートすることも可能である。たとえば、EMG27とEMG28の2つのチャネルが使用されている場合、これらのチャネルからのデータをエクスポートしてもよく、各周波数帯域は2つの数値、たとえば2つのEMGセンサの各々について1つずつを有していてもよい。ユーザインタフェースにより、
図8の実施形態からわかるように、使用者はログファイルを開き、また閉じることができる。基地局は自動的にログファイル、log.txtを開き、また閉じてもよく、これをテキストプロセッサで閲覧することが可能である。メインメニューの「ログ」の部分によって、使用者がログファイルの名前を変更し、ログファイルの保存先を選択できるようにしてもよい。使用者はまた、いつでもそのファイルを閉じ、別のログファイルを開くことができる。ログファイルは、ソフトウェアを使用して発生する問題のデバッギングに使用できる。
【0087】
ユーザインタフェースはまた、
図9Aの実施形態からわかるように、「構成」のメニューを提供してもよい。メインメニューの「構成」の部分によって、使用者が別のアルゴリズムの有効性をテストすることができるようにしてもよい。デフォルトでは、HotellingのT二乗統計値が選択されてもよい。あるいは、PCA分析が行われてもよい。実際の数値の代わりに、抽出された周波数の絶対値を使用してもよい。抽出された周波数の数値は一般に、0を中心として振動し、数値の約半分は負である。デフォルトでは、これらの負の数値がT二乗およびPCA統計値の計算に使用されてもよい。しかしながら、「絶対値」を選択することにより、すべての負の数値を、その絶対値である負ではない数値に置き換えることができる。
【0088】
たとえば、
図9Bの実施形態においては、3つの信号周波数帯域が処理の対象として選択されてもよい。デフォルトでは、300〜400Hz、130〜240Hz、30〜40Hzの3つの周波数帯域が自動的に選択されてよい。さらに、たとえばさらに2つの帯域等、また別の帯域を他の周波数範囲について選択してもよい。
【0089】
これに加えて、
図9Cの実施形態からわかるように、使用者は、バンドパスフィルタの幅を選択してもよい。デフォルトでは、0.25秒がフィルタの幅として使用されてもよい。0.25秒を選択すると、あるデータポイントのいずれかの側の0.25秒を選択できる。より一般的には、フィルタの幅は約0.10秒〜約0.50秒の範囲であってもよい。したがって、フィルタは各フィルタ計算に1025の記録を使用してもよく、これは2048/秒のサンプル周波数の中の0.50秒のデータに対応する。
【0090】
図9Dの実施形態からわかるように、使用者は、特定の患者の記録を選択してもよい。患者の記録を選択することによって、システムは以前の患者記録を使用して、その患者の他の記録に関するシステムを構成できる。これらの選択は、その記録またはその患者に関して発見された最良値に合わせて、開始と停止の記録と感度の数値を自動的に調整できる。
【0091】
ユーザインタフェースにより、使用者はまた、「閲覧」メニューを操作することによって各種のデータを閲覧できる。
図10Aの実施形態からわかるように、「クライアント情報」のメニュー項目は使用者に対し、患者に関する情報、たとえば
図7Bに示されている情報を提供することができる。これに加えて、
図10Cの実施形態からわかるように、エピソードの情報があれば、これを閲覧することができる。記録が1つまたは複数の痙攣のエピソードを含んでいる場合、これらのエピソードの開始と停止の記録が使用者に対して表示されてもよい。あるいは、これらのエピソードの開始および停止時間が使用者に表示されてもよい。
【0092】
図10Dの実施形態からわかるように、「閲覧」メニューはまた、使用者に対し、アラーム情報を閲覧する方法を提供してもよい。いくつかの実施形態において、使用者はアラーム分析を実行した後のみ、「アラーム情報」メニューを選択できる。アラーム分析では、指定された信号処理構成、たとえばHotellingのT二乗でデータ全体を処理してもよい。アラーム分析は、発見されたアラームの概要を示すポップアップウィンドウを表示してもよい。使用者がこのウィンドウを閉じて、後にこれを再び閲覧したくなった場合、使用者は「閲覧」→「アラーム情報」を選択できる。
【0093】
通常、痙攣検出システムの装置は、本明細書に開示の方法および目標のうち1つまたは複数を達成する任意の適切な種類および構成とすることができる。たとえば、サーバは、1つまたは複数のその他のコンピュータまたはプログラム、またはクライアントからコマンドまたは要求に応答する1つまたは複数のコンピュータまたはプログラムを備えることができる。クライアント装置は、1つまたは複数のその他のコンピュータまたはプログラム、またはサーバによって提供されるサービスに関するコマンドまたは要求を発する1つまたは複数のコンピュータまたはプログラムを備えることができる。
図1の各種装置、たとえば、12、13、14、16、17、18および/または19は、機能および構成に応じてサーバまたはクライアントとすることができる。サーバおよび/またはクライアントは、たとえば、メインフレームコンピュータ、デスクトップコンピュータ、PDA、スマートフォン(AppleのiPhone(商標)、MotorolaのAtrix(商標)4G、およびResearch In MotionのBlackberry(商標)など)、タブレット、ネットブック、携帯型コンピュータ、ネットワーク通信機能付き携帯メディアプレー(Microsoft社のZune HD(商標)やAppleのiPod Touch(商標)デバイスなど)、ネットワーク通信機能付きカメラ、ウェアラブルコンピュータなどであっても、そこに置いてもよい。
【0094】
コンピュータは、入力を受け付け、プログラムにしたがって入力を処理し、出力を生成することのできる任意の装置とすることができる。コンピュータは、たとえば、プロセッサ、メモリ、およびネットワーク接続機能を備えることができる。コンピュータは、コンピュータのサイズ、速度、コスト、および機能に応じて、スーパーコンピュータ、メインフレーム、ワークステーション、マイクロコンピュータ、PDA、およびスマートフォンなどの様々な種類とすることができる。コンピュータは固定型でも携帯型でもよく、携帯電話、媒体記録および再生、データ転送、ウェブブラウジング、データ処理、データクエリ、工程自動化、ビデオ会議、人工知能などの様々な機能に合わせてプログラミングすることができる。
【0095】
プログラムは、コンピュータ(オブジェクトコード)によって実行可能な形式、人間(ソースコード)によって読取可能な形式、あるいはそれ以外にかかわらず、アルゴリズムなどの任意の一連の指示を含むことができる。プログラムは、1つまたは複数のデータ構造および変数を含む、あるいは呼び出すことができる。プログラムは、ハードウェアまたはソフトウェア、またはその組み合わせに埋め込むことができる。プログラムは、C、C++、Java(登録商標)、Perl、PHP、Ruby、SQLなどの任意の適切なプログラミング言語を用いて作成することができる。コンピュータソフトウェアは、1つまたは複数のプログラムおよび関連データを含むことができる。コンピュータソフトウェアはたとえば、システムソフトウェア(オペレーティングシステムソフトウェア、デバイスドライバ、およびユーティリティなど)、ミドルウェア(ウェブサーバ、データアクセスソフトウェア、およびエンタープライズメッセージングソフトウェアなど)、アプリケーションソフトウェア(データベース、ビデオゲーム、およびメディアプレーヤなど)、ファームウェア(装置固有ソフトウェア搭載の計算機、キーボード、および携帯電話など)、およびプログラミングツール(デバッガ、コンパイラ、およびテキストエディタなど)を含む。
【0096】
メモリは、情報が一時的または永久的に記憶される、および検索される任意のコンピュータ読取可能媒体を含むことができる。メモリの例は、SRAM、DRAM、Z−RAM、フラッシュ、光ディスク、磁気テープ、パンチカード、EEPROMなどの各種RAMおよびROMを含む。メモリは1つまたは複数の装置および/または地理的位置またはその全体に、RAID技術などで仮想化して提供することができる。
【0097】
I/O装置は、コンピュータへ情報を提供する、および/またはコンピュータから情報を受信することのできる任意のハードウェアを備えることができる。例示のI/O装置は、ディスクドライブ、キーボード、ビデオディスプレイスクリーン、マウスプリンタ、プリンタ、カードリーダ、スキャナ(バーコード、指紋、虹彩、QRコード(登録商標)、およびその他の種類のスキャナなど)、RFID機器、テープドライブ、タッチスクリーン、カメラ、運動センサ、ネットワークカード、記憶装置、マイクロフォン、オーディオスピーカ、タッチペンおよびトランスデューサ、および関連インタフェースおよびドライバを含む。
【0098】
ネットワークは、仮想的に、切り替えられ、ルーティングされ、完全に接続された、セルラーネットワーク、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、都市圏ネットワーク(MAN)、その他の種類のエリアネットワーク、ケーブルテレビネットワーク、通信衛星ネットワーク、電話網、公的ネットワーク、私設ネットワーク、有線または無線ネットワーク、およびそれらの組み合わせとそのサブネットワークを含むことができる。ネットワークは、ルータ、ブリッジ、スイッチ、ハブ、中継器、コンバータ、受信機、プロキシ、ファイアウォール、トランスレータなどの様々なネットワーク機器を使用することができる。ネットワーク接続は有線または無線とし、マルチプレクサ、ネットワークインタフェースカード、モデム、IDSNターミナルアダプタ、ラインドライバなどを使用することができる。ネットワークは、ポイントツーポイント、バス、スター、ツリー、メッシュ、リング、およびその任意の組み合わせまたは剛性などの任意の適切なトポロジを含むことができる。
【0099】
無線技術は、ISMバンド装置、WiFi、Bluetooth(登録商標)、携帯電話SMS、セルラー(CDMA2000、WCDMA(登録商標)など)、WiMAX、WLANなどの利用可能な無線技術のうち1つまたは複数を使用する、個人対個人無線、個人対固定受信装置、個人対遠隔アラーム装置などの様々な形を取ることができる。
【0100】
コンピュータ、I/O装置、およびネットワーク機器内またはそれらの間の通信は各種プロトコルを用いて達成することができる。プロトコルはたとえば、信号伝達、エラー検出および訂正、データフォーマッティング、およびアドレスマッピングを含むことができる。たとえば、プロトコルは、7層オープンシステム相互接続モデル(OSIモデル)、またはTCP/IPモデルにしたがい提供することができる。
【0101】
本明細書に記載の方法および装置に関連する追加情報は後述の実施例に関連して理解することができる。
【実施例1】
【0102】
1つの例において、個人、たとえば患者Aに関するデータが記録された。その記録からのデータには、遠隔的にアクセスしても、または基地局上に構成されたユーザインタフェースを通じてアクセスしてもよい。たとえば、
図11に示されるように、基地局のソフトウェアにより、使用者は情報にアクセスし、これを閲覧することができる。
図11に示されるように、インタフェースによって、使用者は患者の記録、たとえばEMGファイル075950から最初の800万を選択して表示させることができる。記録は、選択され、
図12に示されるように表示されてもよい。この特定の例では、電極が患者に、その患者が特に痙攣を起こしやすい期間にわたって接続された。
図12に示される記録に関して、監視セッション開始2分後に10分間の訓練期間が始まった。
図12において、Y軸の右の最初の縦線102は約12分の箇所に引かれており、これは訓練期間の終了を示している。
図13は、訓練領域のログピリオドグラムを示す。その中に示されているように、また
図13と
図14(これはエピソード領域のログピリオドグラムを示す)とを比較すると明らかなように、スペクトルの大部分において比較的低振幅の信号しかない。
【0103】
再び
図12を参照すると、縦線102と縦線104の間の期間はEMGデータが収集され、アラームが起動されなかった期間を示す。例示のために、次の3つの縦線は大まかに、痙攣エピソードの開始(線104)、アラーム状態の開始(線106)、痙攣エピソードの大部分の終了(線108)を示している。基地局のユーザインタフェースと
図11から表示されるように、Z=4であり、アラームラグはこの例では4秒である。それゆえ、アラーム状態は、4秒を超える期間にわたってZ≧4であった時に起動できる。この実施例では、患者は睡眠中の比較的短時間だけ監視された。より長い期間について、または患者が他の活動に従事している間、たとえば他の実質的な信号が存在する可能性があるような場合に患者を監視することにより、他の検出設定、たとえばZの閾値および/またはアラームラグの、より大きな数値を使用してもよい。
【0104】
図13に示されるように、痙攣エピソードのログピリオドグラムは、エピソードのない期間と比較して、有意に高い振幅を示している。
図13のx軸は固有周波数に関してプロットされており、ヘルツの単位の周波数に関していてもよい。たとえば、
図14からわかるように、約300Hz〜約400Hz、約130Hz〜約240Hz、および約30Hz〜約40Hzの範囲の周波数が、処理と分析に特に適しているかもしれない。
【0105】
図15〜21にそれぞれ示されているように、300〜400Hz、130〜240Hz、30〜40Hz、10〜50Hz、4〜5Hz、3〜4Hz、2〜3Hzの7種類の周波数範囲を通過させるようにフィルタ処理されたEMG波形が示されている。
図15〜18からわかるように、10〜50Hz、4〜5Hz、3〜4Hz、2〜3Hzの、より低周波数範囲では、より高周波数帯域より、はるかに多くの非痙攣筋活動が示されており、その理由は前述のとおりであり、すなわち、活動のための筋肉の動員には、より低周波数の信号が使用される可能性があることと、活動が増えても増えなくてもよいことである。それゆえ、このような、より低周波数範囲は痙攣の検出での使用には、より適していないかもしれず、もし使用され、または重み付が大きすぎると、誤ったアラームの回数が増える場合がある。ここでも、例示のために、3本の縦線を使って痙攣エピソードの開始、アラーム状態の開始、痙攣エピソードの大部分の停止が表示されている。これらの波形からわかるように、高いZ値を有する偶発的な筋活動がありうるが、その活動は、アラーム状態をトリガするほど長い時間は持続しないであろう。
【0106】
図22は、300〜400Hz(
図15に見られる)、130〜240Hz(
図16に見られる)、30〜40Hz(
図17に見られる)の3つの周波数範囲についてT二乗統計値が計算された後の波形を示している。ここでも、例示のために、縦線が引かれて、痙攣エピソードの開始と終了が示されている。T二乗計算から、Z値がZ=4の閾値を超えたことが示されると、
図22の実施形態に見られるように、システムはアラーム状態の信号を送信してもよく、警報を介護者に送った。
図23の実施形態に見られるように、T二乗アラーム統計値の図は、アラーム状態がバイナリであってもよいことを示しており、すなわち、それはエピソードが認識された時にアラーム状態が1となる場合を除き、0であってもよいことを示している。
【実施例2】
【0107】
この実施例2において、合計12名の患者の各々を約4.4日間にわたって監視した。監視では、体表面EMG電極を使用し、本明細書に記載のT二乗アルゴリズムを使ってデータの処理を行った。患者は女性5名、男性7名の対象者を含み、その全員が動ける個人であった。もちろん、身体的に歩くことのできない患者も監視できる。すなわち、一般に、動けて日常活動に従事できる患者については、非痙攣の運動徴候と痙攣活動の間の区別が非常に難しいかもしれない。この調査では、監視期間に、監督された状況下での一晩の滞在が含まれていた。患者が一般に睡眠中である時間の部分に加えて、監視期間には、患者が各種の一般的な日常活動のうちの任意の活動を自由に行った期間が含まれていた。たとえば、患者は自由に動き(歩き回り)、歯を磨き、髪をとかし、テレビを見て、またはその他のあらゆる所望の活動に従事した。これらの活動が患者によって行われたことをビデオモニタで確認し、これを、いずれかの痙攣エピソードの存在を確認するためのチェックとしても使用した。すなわち、体表面EMG電極での監視に加えて、患者はまた、入院患者用の頭皮ビデオEEG(VEEG)記録でも監視された。
【0108】
EMG記録のために、各患者の片方の腕を、片側二頭筋および三頭筋の筋肉から体表面EMG記録が提供されるように準備した。しかしながら、2つの筋肉領域からのデータを収集中に、いずれかの筋肉群からのデータを個別に使用できることがわかった。EMG電極は双極Ag/AgCl電極であり、データは無線で収集され、評価へと送られた。この調査の患者の全員について、3つの周波数帯域を選択した。これらの周波数帯域は、約30〜40Hの範囲の第一の帯域、約130〜240Hzの範囲の第二の帯域、約300〜400Hzの範囲の第三の帯域を含む。EMGデータは毎秒約1,024データポイントのサンプリングレートで収集した。その他の検出設定は、基準期間中の電極信号の特徴付けによって選択した。たとえば、T二乗値の閾値は、訓練期間中に得られたT二乗基準値より上の約100の標準偏差と確定することができる。このような数値は、Zファクタの閾値に100の数値を入力することによって設定できる。この調査の患者については、Zファクタの閾値を約100〜約1000の間の数値に設定した、この調査の患者のアラームラグ設定は、約3〜約10秒間に設定した。
【0109】
監視中、12名の患者のうち6名に、合計7回のGTC痙攣があった。監視システムは、存在したGTC痙攣のすべての検出に成功した。痙攣はすべて、あるGTC痙攣中の初期の腕の運動のいずれからも約10秒以内(全体として、この運動から約2〜約3秒以内)に検出された。したがって、システムは、GTC痙攣をほとんど即時に検出する。もちちん、GTC痙攣の即時検出は重要でありえる。これは、たとえば痙攣の検出が、痙攣の停止または軽減のために使用可能な刺激装置に連結されている場合に、特に当てはまる。それに加えて、これによって第一応答者(親またはその他の介護者等)が痙攣イベント中にできるだけ早くその場に行くことができる。これに加えて、対象者が自由に動き回り、一般的な日常活動を行うことができるにも関わらず、システムは痙攣を検出でき、1つの偽陽性アラームも起動させなかった。
【実施例3】
【0110】
この実施例3では、3名の患者の各々を痙攣活動に関して評価した。患者の各々は動くことができ、約30時間の監視期間中、それぞれ自由に一般的な日常活動に従事した。監視期間の前に、患者に対し、少なくとも2回の最大随意収縮を行うように指示した。当然のことながら、体力のある患者は、運動の合間に休息を入れながら、複数回の最大随意収縮を行うことができ、ほとんど筋活動の低下は見られない。他の患者は、より少ない回数のMVCを行ったところで、疲れるかもしれない。それゆえ、1回の基準期間中に都合よく実行されるMVCの回数は患者によって異なっていてもよい。MVCの実行中にEMG活動を収集し、T二乗値を測定した。第一の患者について、2回の別々のMVCを実行している時の平均T二乗値は約742と809であった。この第一の患者について、監視期間中に1回の痙攣が測定された。この痙攣では、T二乗値が2663、すなわち2回のMVCの実行中に測定されたT二乗値の平均値の約3.4倍となることがわかった。第二の患者については、1回のMVCの実行中のT二乗値は約270であった。この第二の患者について、監視期間中に1回の痙攣が測定された。この痙攣では、T二乗値が2386、すなわち、2回のMVCの実行中に測定されたT二乗値の平均値の約8.8倍になることがわかった。第三の患者については、2回の別々のMVCを実行している時の平均T二乗値は約570と668であった。この第三の患者に関しては、監視期間中に3回の痙攣が測定された。これらの痙攣では、T二乗値が330302、35767、53944となることがわかった。活発な患者の場合、T二乗値の閾値がMVCの約100%で、有意な数の偽陽性は生じない。休息中の患者または身体障害があって活発でない患者の場合、T二乗値の閾値がMVCの約50%で、有意な数の偽陽性が発生しない。
【実施例4】
【0111】
この実施例4においては、1名の患者を家庭で監視するように設定してもよく、検出ユニットを二頭筋と三頭筋に設置してもよい。監視システムは、遠隔トランシーバ要素と、患者の生活空間における様々な場所に関連付けられた追加のトランシーバを含んでいてもよい。第一の環境トランシーバを患者ベッドに設置し、第二の環境トランシーバを患者のバスルームに設置してもよい。患者の睡眠中、検出ユニットと第一の環境トランシーバは動作的に通信してよい。システムの基地局は、この関係を示す信号を受け、その患者用にカスタム化されたテンプレートファイルを選択することができる。選択されたテンプレートファイルは、その患者の睡眠中に収集されたその患者のデータに基づいていてもよい。テンプレートファイルは、患者が睡眠中に動いてもアラームが起動しないようなZラグ設定を含んでいてもよい。
【0112】
患者は、睡眠の途中で目を覚まし、バスルームに行くかもしれない。この運動は一般に、筋肉運動のレベルを上昇させる可能性がある。これに加えて、患者がベッドから離れると、第一の環境トランシーバと検出ユニットの間の一時的な関係が変化する可能性がある。基地局は、この位置依存の関係を示す信号を受信してもよく、それに応答して、第二のテンプレートファイルを使用するように選択してもよい。この実施例4において、第二のテンプレートファイルには、アラームに対するシステムの感度を低下させるために適当なZラグ設定と重み付け係数(たとえば、低ないし中程度の筋活動に関連付けられた小さい重み)が含まれる。患者は、バスルームに行った後、ベッドに戻るかもしれず、検出ユニットと第一の環境トランシーバの間の関係が回復されるかもしれない。基地局は、患者の新たな位置を示す信号を受信してもよく、たとえば第一の環境トランシーバは、それが検出ユニットの存在を検出すると、基地局に情報のパルスを送信して、適当なテンプレートファイル、たとえばベッドで睡眠中の患者に関するものを選択できる。
【0113】
いくつかの実施形態において、トランシーバはさらに、家具またはその他の構造物のユニット、たとえば環境ユニットまたは物体の中に取り付けてもよい。検出ユニットがそのトランシーバに十分に近ければ、そのトランシーバはデータを基地局に送ることが可能であってもよい。それゆえ、基地局は、その情報がそのトランスデューサから、およびしたがって、それに関連する環境ユニットから受信されていることを認識できる。いくつかの実施形態において、基地局は特定のテンプレートファイルを選択してもよく、これはたとえば、アラームをトリガするか否かを評価するために使用される周波数領域間の重み付け係数またはZファクタ、またはアラームラグの設定または本明細書に記載のその他のデータを含んでおり、これはそれが特定のトランシーバから信号を受信しているか否かに依存する。それゆえ、たとえば、基地局が検出器から、およびベッドまたはベビーベッドに関連付けられたトランスデューサから情報を受け取ると、基地局はこのデータを、そのデータを他の物に関連付けられたトランスデューサから受信した場合とは異なる方法で扱うことができる。
【0114】
開示される方法および装置とその利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義される発明から逸脱せずに各種変更、置換、および改変を行うことができると理解すべきである。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載の工程、機械、製品、材料の構成、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。たとえば、「含む(include)」なる用語の使用は、「からなる(comprising)」なる用語、即ち、開放型(open−ended)であるように解釈されるべきである。本開示から容易に理解できるように、本明細書に記載の対応する実施形態と略同一の機能を実現する、あるいは略同一の結果を達成する既存の、または後に開発される工程、機械、製品、材料の構成、手段、方法、またはステップを利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、工程、機械、製品、材料の構成、手段、方法、またはステップなどを範囲に含めることを意図する。