特許第6158840号(P6158840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6158840
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ガレクチンのガラクトシド阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/26 20060101AFI20170626BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C07H15/26CSP
   A61K31/7048
   A61P1/16
   A61P9/00
   A61P11/00
   A61P13/12
   A61P27/02
   A61P35/00
【請求項の数】15
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2014-553715(P2014-553715)
(86)(22)【出願日】2013年1月24日
(65)【公表番号】特表2015-504909(P2015-504909A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2013051339
(87)【国際公開番号】WO2013110704
(87)【国際公開日】20130801
【審査請求日】2016年1月18日
(31)【優先権主張番号】12152413.6
(32)【優先日】2012年1月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514162852
【氏名又は名称】ガレクト・バイオテック・エイビイ
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】レフレル,ホーコン
(72)【発明者】
【氏名】ムコパディヤイ,バララム
(72)【発明者】
【氏名】ラージプート,ヴィシャル
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0185039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 15/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
を有する化合物であって、
1、R2、R3、R4、R5は独立して、水素、任意に置換されたアルキル基、ハロゲン、任意に置換されたアルコキシ基、ヒドロキシル基、置換されたカルボニル基、任意に置換されたアシルオキシ基、任意に置換されたアミノ基からなる群から選択され、又は R1、R2、R3、R4、R5のうちの隣接する位置にある2つ、3つ、4つ若しくは5つは、結合して1つ若しくは複数の環を形成し、この場合R1、R2、R3、R4、R5の残りは独立して前記群から選択される、化合物。
【請求項2】
5は水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
2、R3のうちの一方はフルオロであり、
2、R3のうちのフルオロでない方は水素であり、
1、R4、R5は全て水素である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項4】
3、R3のうちの一方はヒドロキシル基であり、
3、R4のうちのヒドロキシル基ではない方は水素であり、
1、R2、R5は全て水素である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
2、R3はフルオロであり、R1、R4、R5は全て水素であるか、又は
3、R4はフルオロであり、R1、R1、R5は全て水素である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
2はクロロであり、
1、R3、R4、R5は全て水素である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
2、R3は結合してベンゼン環を形成し、
1、R4、R5は全て水素である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
1、R2、R3、R4、R5は全て水素である、請求項1〜2のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物は、以下:
ビス−{3−O−[(2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(7−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(7−メトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(7−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(6−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(3H−ナフト[2,1−b]ピラン−3−オン−2−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(6−tert−ブチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(6−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(6−フルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(6,7−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(5−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(5−フルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(5,6−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;
ビス−{3−O−[(6−トリフルオロメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン;及び
ビス−{3−O−[(7−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン
からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、並びに薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む、医薬組成物。
【請求項11】
障害の治療に使用する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
肺線維症、肝線維症、腎線維症、眼科的線維症、心臓の線維症からなる群から選択される線維症の前記障害に使用する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
眼血管新生、又は眼血管新生に関連する疾患若しくは状態から選択される病理学的血管新生である前記障害に使用する、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
加齢に関連する黄斑変性症及び角膜血管新生から選択される眼疾患である前記障害に使用する、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
癌である前記障害に使用する、請求項11に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物、医薬品としての上記化合物の使用、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連するいずれかの障害の治療のための医薬品の製造のための上記化合物の使用に関する。本発明は、また上記新規の化合物を含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ガレクチンは、特徴的な糖鎖認識ドメイン(CRD)を有するタンパク質である(非特許文献1;非特許文献2)。これは2つの決定的特徴、即ち1)β−ガラクトース結合部位、2)約7のアミノ酸(その大半(約6の残基)がβ−ガラクトース結合部位を構成する)の配列モチーフの十分な類似性を有する、約130のアミノ酸(約15kDa)の強固に折り畳まれたβ−サンドイッチ構造である。しかしながら、β−ガラクトース結合部位に隣接する部位は、天然の糖の強固な結合のために必要であり、これらの選択が異なると、天然の糖に対する異なる微細特異性がガレクチンに付与される。
【0003】
ヒト、マウス、ラットのゲノム配列が近年完全に解析されたことにより、1つの哺乳類ゲノムに、種によって若干異なる約15のガレクチン、ガレクチン様タンパク質が含まれることが分かっている(非特許文献2)。
【0004】
ガレクチンサブユニットは、単一のペプチド鎖に1つ又は2つのCRDを含むことができる。第1のカテゴリ、モノ−CRDガレクチンは、脊椎動物において単量体又は二量体(2種類)として発生する。研究が大きく進んでいるのは、二量体ガレクチン−1と、溶液中の単量体であるがリガンドに出会うと凝集して多量体となり得るガレクチン−3とである(非特許文献2)。これらは最初に発見されたガレクチンであり、多くの組織に豊富に存在する。
【0005】
現在、PubMedにはガレクチンに関する3500件を超える刊行物が存在するが、その大半は上述のように、ガレクチン−1(>900件)及びガレクチン−3(>1600件)に関するものである。有力なエビデンスにより、例えば炎症及び癌におけるガレクチンの役割が示唆されており、その進歩が最近、特集号にて概説された(非特許文献3)。
【0006】
ガレクチンは、自由リボソーム上にシグナルペプチドを有さないサイトゾルタンパク質として合成される。これらのN末端はアセチル化(これはサイトゾルタンパク質の典型的な修飾である)され、これらはサイトゾル内に長時間残留する(これは分泌タンパク質の特徴ではない)。これらはサイト内から細胞核、特定のサイトゾル部位を標的とすることができるか、又はまだ知られていないがおそらくは、例えばIL−1の輸送と同様に非古典的(非ER−ゴルジ)経路によって(誘導的又は構成的に)分泌される(非特許文献2)。これらはまた、これらのコンパートメント全てにおいて機能でき、ガレクチン−3に関して、高く評価されている定期刊行物において発表された確かなエビデンスは、細胞核におけるRNAスプライシング、サイトゾルにおけるアポトーシスの抑制、及び細胞内信号伝達及び細胞接着に対する様々な細胞外の影響における役割を支援する(非特許文献3)。ガレクチン−7、ガレクチン−12は、またアポトーシスを亢進し、特定の細胞における細胞周期及び分化を調節することによって、特定のサイトゾル中で働く(非特許文献3のHsu及びLiu)。また、殆どのガレクチンは、場合によっては超分子規則配列(非特許文献4)を形成する架橋結合糖タンパク質(例えばラミニン、インテグリン、IgE受容体)によって細胞外でも作用し、これによって細胞接着を調節し得るし、細胞内信号を誘発し得る。これに関連して、近年、これらの細胞膜内で微小ドメイン(格子)の形成を伴うガレクチンの機能の分子機構の発現が見られ(非特許文献5;非特許文献6)、これは同様に糖タンパク質受容体の細胞内移動、及び細胞表面上での存在に影響を及ぼす(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。細胞培養、ヌル変異体(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)、及びガレクチンで処理された動物 (非特許文献10;非特許文献15)又はガレクチン阻害剤で処理された動物(非特許文献16;非特許文献17 非特許文献18)について、以上のことが文献に記載されている。
【0007】
可能性のあるガレクチン−3阻害剤の治療用途
ガレクチン−3は、多様な現象に関係するものであり、従って阻害剤は多数の用途を有する。特異性の欠如又は化学的焦点の欠如としてこれを理解することは容易である。従って、アスピリン及びシクロオキシゲナーゼ(COX−I、II)との類似が有用である。COXは、広範なプロスタグランジンの前駆体を生成し、従って多様な生物学的機構に関与する。これらの阻害剤、アスピリン及びその他のNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)もまた広範かつ多様な効果を有する。これにも関わらず、これらの阻害剤は医療において極めて有用であり、複数の異なる特異的な効用を有する。
【0008】
従って、COXのようなガレクチンが、いくつかの基本的な生物学的調節機構(まだ知られていない)のうちの一部である場合、これらは様々な文脈において異なる目的で「先天的に使用される」。NSAIDのようなガレクチン阻害剤は、系全体を破壊することは期待できないが、均衡を少し傾けることは期待できる。
【0009】
炎症の阻害
ガレクチン−3の炎症促進作用は、細胞内の炎症部位へのガレクチン−3の導入、免疫細胞への様々な効果(例えば好中球中の酸化バースト及び単球の化学走性)、並びにヌル変異体マウスの主に好中球及びマクロファージにおける炎症反応の低減によって表される(非特許文献3)。更に、Mac−2BP、ガレクチン−3リガンドのノックアウトマウスでは、炎症反応が増大する(非特許文献19)。重要なことに、近年の研究においてガレクチン−3は、マクロファージM2分化及び筋線維芽細胞の活性化における主要な速度制限因子として識別されており、これは線維症の成長に影響を及ぼす(非特許文献20;非特許文献21)。
【0010】
炎症は、侵入した有機体及び組織損傷に対する身体の防御反応である。しかしながら、これが平衡を失っている場合、炎症はしばしば破壊的なものにもなり、多くの疾患の病理の一部として発生する。このため、炎症の薬理学的な調節には、医学的な関心が大いに寄せられている。ガレクチン−3阻害剤は、このために利用可能な手段に、更なる重要手段を追加するものとして期待されている。
【0011】
線維症関連状態の治療
線維症におけるガレクチン−3の可能な役割についての概念は、細胞及びマクロファージ分化に対する生体外研究(非特許文献20)、並びにマクロファージ分化及び筋線維芽細胞活性化に関する生体内研究(非特許文献21)に由来する。要するに、以下のような前提が存在する:ガレクチン−3は、細胞表面滞在時間を延長し、従ってTGF−β受容体の反応性を亢進することがわかっており(非特許文献22)、これはM2マクロファージへの代替マクロファージの分化、筋線維芽細胞活性化を調節する。よって、ガレクチン−3は、TGF−β信号伝達並びに代替マクロファージ分化及び筋線維芽細胞活性化の内因性エンハンサの有力な候補であるため、ガレクチン−3阻害剤は、線維症及び不利な組織再構築の治療に極めて有用である。
【0012】
癌の治療
多数の免疫組織化学的研究により、癌における特定のガレクチンの発現の変化が示されており(非特許文献3のvan den Bruleら及びBidonら)、そして例えばガレクチン−3は、現在甲状腺癌の組織化学的マーカとして確立されている。癌におけるガレクチン−3の役割に関する直接的なエビデンスは、主にRazらによる、又はその他(非特許文献3内)によるマウスモデルに由来する。(ガレクチン−3の発現が減少又は増加した)ペアになった腫瘍細胞株において、ガレクチン−3の導入は腫瘍及び転移の増大につながり、ガレクチン−3の抑制は腫瘍及び転移の減少につながる。抗アポトーシス性であることによる腫瘍の成長の亢進、血管新生の促進、又は細胞接着に影響を与えることによって転移を促進するために、ガレクチン−3が提案されてきた。以上から、ガレクチン−3の阻害剤が有用な抗癌効果を有することが明らかである。実際、請求されているもののガレクチン−3を阻害することが証明されていない糖類は、抗癌効果を有することが報告されている。本出願人独自の研究において、CRDを含むガレクチン−3の断片は、ドミナントネガティブ阻害剤として作用することによって、マウスモデルにおいて乳癌を阻害した(非特許文献16)。より最近、分子が小さいガレクチン−3の阻害は、細胞アッセイ及び生体外において(非特許文献23)、そして生体内において(非特許文献24)、放射線及び標準的な抗アポトーシス薬剤に対する腫瘍細胞の感受性を実際に大幅に亢進することが実証された。
【0013】
ガレクチン−1もまた低分化癌細胞において過剰発現することが多く、ガレクチン−9又はその類縁体であるガレクチン−4、ガレクチン−8は特定の種類の癌に導入されている(非特許文献24;非特許文献3)。ガレクチン−1は、活性化されたT細胞においてアポトーシスを誘導し、生体内において自己免疫性疾患に対して顕著な免疫抑制効果を有する(非特許文献3のRabinovichら及びPaceら)。従って、癌におけるこれらのガレクチンの過剰発現は、宿主が発生させるT細胞反応に対して腫瘍が自己を防衛する助けとなり得る。
【0014】
ガレクチン−1、ガレクチン−3に関するヌル変異体マウスは長年にわたって確立されてきた(非特許文献25)。これらは飼育条件において健康であり、見たところ正常に繁殖する。しかしながら近年の研究により、ガレクチン−3ヌル変異体に関しては好中球とマクロファージの機能(上述)及び骨形成、ガレクチン−1ヌル変異体に関しては神経細胞及び筋細胞の再生/分化(非特許文献2;非特許文献25;非特許文献3のWatt)における微妙に異なる複数の表現形が明らかになっている。近年、ガレクチン−7ヌル変異体マウス、ガレクチン−9ヌル変異体マウスが作出され、これもまた飼育条件において大いに健康であるが、まだ詳細には分析されていない。発現部位における分化、特異性、その他の特性により、異なるガレクチンは機能的に互いに置換できるようにはならない。ヌル変異体マウスの観察は、通常の飼育条件において観察できるように、ガレクチンは基本的な生命維持機能に関して本質的なものではないことを示す。その代わりガレクチンは、飼育条件には見られないストレス条件において、正常な機能のオプティマイザとなるか、及び/又は本質的なものとなり得る。ヌル変異体マウスにおける強力な効果の欠如により、ガレクチン阻害剤は薬剤としてより好ましいものとなり得る。ガレクチンの活性が上述のような病理学的条件に寄与し、その一方で正常な条件に寄与しない場合、これらの阻害はより望ましくない副作用を有することになる。
【0015】
血管新生の治療
VEGF受容体−2(VEGFR−2)を通した血管内皮成長因子(VEGF)の信号伝達は、主要な血管新生経路である。ガレクチン−1(Gal−1)とガレクチン−3(Gal−3)が共にVEGF/VEGFR−2信号伝達経路の重要なモジュレータであることを実証する複数の研究が公開されている。ガレクチン阻害剤、TDXが、病的血管新生に対する効用を有すると予測されることも公開されている(非特許文献26)。
【0016】
公知の阻害剤
天然リガンド
固相結合アッセイ及び阻害アッセイは、ガレクチンと結合する能力を有する多数の糖類及び糖複合体を同定した(非特許文献27、非特許文献2)。全てのガレクチンは、Kdが0.5〜1mMであるラクトースと結合する。D−ガラクトースの類似性は50〜100倍低い。N−アセチルラクトサミン及び関連する二糖類はラクトースとほぼ同等に結合するが、特定のガレクチンに対して、これらの結合は低下するか、又は最大10倍程度良好に結合できる。ガレクチン−3のための最良の小さい糖類リガンドは、ラクトース又はLacNAc−残基に付着した血液型A決定遺伝子を担持するものであり、ラクトースの最大約50倍結合することが分かった。ガレクチン−1は、これらの糖類に対する選好を示さない。
【0017】
ポリラクトサミン型の大きい糖類は、ガレクチンのための好ましいリガンドとして提案されてきた。ポリラクトサミン担持グリコペプチドを用いた溶液において、ガレクチン−3に関するエビデンスは存在するが、ガレクチン−1に関しては存在しない(非特許文献28)。修飾植物ペクチン多糖類は、ガレクチン−3と結合することが報告されている(非特許文献17)。
【0018】
ガレクチン−3リガンドとして同定された上述の天然糖類は、腹部で酸加水分解しやすく、また酵素分解しやすいため、医薬組成物の活性成分として使用するには適していない。更に、天然糖類は自然に加水分解し、経口投与後に消化管から容易に吸収されない。
【0019】
ガレクチン特異性
上述のような小さな天然糖類による阻害を用いたガレクチン特異性の研究により、全てのガレクチンがラクトース、LacNAc、関連する二糖類と結合することが示されているが、ガレクチン−3は特定のより長い糖類とより良好に結合することも示されている(非特許文献28)。これらの長い糖類は、伸長した結合溝と結合する(例えばラクトース又はLacNAcの)ガラクトースのC−3位に追加された追加の糖残基を有することを特徴とする。この溝の形状はガレクチンによって変化し、従って同一の伸長部分は異なるガレクチンによって同様に結合されることはない。
【0020】
合成阻害剤
抗癌活性を有するアミノ酸と結合した糖類は、初めは血清中の天然化合物として同定されたが、その後合成類似体が作出された(非特許文献18)。これらのうち、アミノ酸と結合したラクトース又はガラクトースはガレクチンを阻害するが、対応する非誘導化糖とほぼ同様の効用しかない。ガレクチン−3を阻害するシトラスペクチンの化学修飾形態(非特許文献29)は、生体内において抗腫瘍活性を示す(非特許文献17;非特許文献30)。
【0021】
最大4つのラクトース部分を有するクラスタ分子は、ガレクチン−3に結合してガレクチン−1、ガレクチン−5に結合していない場合、強い多価効果を示した(非特許文献31)。7つのガラクトース、ラクトース又はN−アセチルラクトサミン残基を有するシクロデキストリン系糖クラスタもまた、ガレクチン−3に対する強い多価効果を示したが、ガレクチン−1、ガレクチン−7に対しては弱かった(非特許文献32)。ラクトース残基において多価となった星状デンドリマー(非特許文献33)、糖ポリマー(非特許文献34;非特許文献35)は、ラクトースに比べて僅かに改善された効用を有するガレクチン−3阻害剤として説明されている。ガレクチン−3リガンドとして同定された上述の合成化合物は、自然に加水分解し、経口投与後に消化管から容易に吸収されないため、医薬組成物中の活性成分として使用するには適していない。
【0022】
上述の天然オリゴ糖類、糖クラスタ、糖デンドリマー、糖ポリマーは、吸収するには極性が強く大き過ぎ、場合によっては患者に免疫反応を発生させるほど大きい。更にこれらは腹部で酸加水分解しやすく、また酵素分解しやすい。よって、小さい合成分子が必要とされる。
【0023】
チオジガラクトシドは、N−アセチルラクトサミンとほぼ同等の効果を有する加水分解に対して安定性であるが極性ではある合成阻害剤であることが知られている(非特許文献28)。芳香族アミド又は置換ベンジルエーテルをC−3’に有するN−アセチルラクトサミン誘導体は、ガレクチン−3の極めて有効な阻害剤であることが実証されており、これは4.8μMという飛び抜けて低いIC50値を有し、天然のN−アセチルラクトサミン二糖と比較して20倍改善されている(非特許文献36;非特許文献37)。芳香族アミド部分の存在により、これらの誘導体は全体として極性が低く、従って生体内におけるガレクチンの阻害のための作用剤としてより適当である。更に、C3−トリアゾールガラクトシドは、何らかのガレクチンの対応するC3−アミドと同等の可能性を有する阻害剤であることが実証されている。よって、適切な構造を有するいずれのガラクトースC3−置換基は、ガレクチン類似性の亢進をもたらし得る。
【0024】
しかしながら、ガラクトース及びN−アセチルラクトサミン糖部分にグリコシド結合が存在するため、C3−アミド−誘導化化合物、C3−トリアゾリル−誘導化化合物は依然として生体内で加水分解しやすく、またこれらはガレクチン−3の潜在的な小分子阻害剤であるが、更に改善された類似性及び安定性が望まれている。これに応じて、チオジガラクトシドの3,3’−ジアミド−誘導化又は3,3’−ジトリアゾリル−誘導化に基づく阻害剤が開発され(非特許文献38;非特許文献39;非特許文献40;特許文献1及び特許文献2;特許文献3;特許文献4)、これらはO−グリコシドの、加水分解及び酵素に対して不安定な結合を欠損している。これらの阻害剤は、また複数のガレクチンに関して優れた類似性を呈した(低いnM範囲のKdまで下降する)。3,3’−誘導化チオジガラクトシドはガレクチンに関して高い類似性を呈するにも関わらず、それでもなお、遮断を形成する3−N−誘導化ガラクトース成分に達するための二重反転反応を伴うその多段階合成に欠点を有する。更に、チオジガラクトシドの1つのガラクトース環のシクロヘキサン置換は、ガラクトース環を模倣し、これによってジアミド−チオジガラクトシド誘導体、ジトリアゾリル−チオジガラクトシド誘導体に迫る効果を有するガレクチン−1、ガレクチン−3阻害剤を提供することが証明されている(特許文献5)。置換シクロヘキサンによるD−ガラクトピラノースユニットの置換により、極性は低下し、また代謝感受性も通常低下し、これにより、薬剤らしい特性が改善される。
【0025】
いくつかの上述の化合物は、特許文献3に記載されているような以下の一般式:
【0026】
【化1】
【0027】
特許文献1に記載されているような以下の一般式(ここでRIはD−ガラクトースであり得る):
【0028】
【化2】
【0029】
及び特許文献5に記載されているような以下の一般式を有する。
【0030】
【化3】
【0031】
よって、従来技術の化合物の錯体保護D−ガラクトピラノース誘導体における二重反転反応を伴う、ガラクトース3−N−誘導化(Z、Yは好ましくは窒素原子である)への製造プロセスが決して最適なものではないため、特にガレクチン−1、ガレクチン−3であるガレクチン類に対する阻害剤の分野において、今なお相当な需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】国際公開第2005/113569号
【特許文献2】米国特許第2007185041号
【特許文献3】国際公開第2005/113568
【特許文献4】米国特許第7638623B2号
【特許文献5】国際公開第2010/126435号
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】Barondes,S.H.,Cooper,D.N.W.,Gitt,M.A.,and Leffler,H.(1994).Galectins.Structure and function of a large family of animal lectins.J.Biol.Chem.269:20807−20810.
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【非特許文献3】Leffler,H.,editor,(2004b)Special Issue on Galectins.Glycoconj.J.19:433−638.
【非特許文献4】Brewer et al,2002
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【非特許文献11】Gedronneau et al,2008
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【非特許文献25】Poirier,2002
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【非特許文献29】Platt and Raz,1992
【非特許文献30】Nangia−Makker et al.,2002
【非特許文献31】Vrasidas et al.,2003
【非特許文献32】Andre et al.,2004
【非特許文献33】Andre et al.,1999
【非特許文献34】Pohl et al.,1999
【非特許文献35】David et al.,2004
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【非特許文献40】Salameh,B.A.,Cumpstey,I.,Sundin,A.,Leffler,H.,and Nilsson,U.J.(2010).1H−1,2,3−Triazol−1−yl thiodigalactoside derivatives as high affinity galectin−3 inhibitors. Bioorg Med Chem 18:5367−5378.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
従って本発明は、3−O−プロパルギル−ガラクトース誘導体から容易に製造可能で、チオジガラクトシドIのO3−位、O3’−位にクマリルメチル部分を担持し、従来技術から公知の化合物に匹敵するガレクチン結合活性を有する化合物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本明細書で開示する化合物は、一般式(I)を有する。
【0036】
【化4】
【0037】
ここでR1、R2、R3、R4、R5は独立して、水素、任意に置換されたアルキル基、ハロゲン、少なくとも1つの炭素を有する任意に置換されたアルコキシ基、ヒドロキシル基、置換されたカルボニル基、任意に置換されたアシルオキシ基、任意に置換されたアミノ基からなる群から選択される。R1、R2、R3、R4、R5のうちの隣接する位置にある2つ、3つ、4つ又は5つは結合して1つ又は複数の環を形成してよく、ここでR1、R2、R3、R4、R5の残りは独立して上記群から選択される。
【0038】
構造(I)から明らかであるように、ピラノース環の構成はβ−D−ガラクトである。
【0039】
本発明はまた、医薬品として使用するための上述の化合物にも関する。
【0040】
本発明は更に、上述の化合物のうちの1つ又は複数と、少なくとも1つの薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体とを含む、医薬組成物に関する。
【0041】
本発明は更に、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害の治療に使用するための、上述の化合物に関する。
【0042】
本発明は更に、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害の治療に使用するための医薬品の製造のための、上述の化合物に関する。
【0043】
本発明は更に、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害の治療のための方法に関し、請求項1〜4のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を、上記治療が必要な哺乳類に治療有効量だけ投与する。
【0044】
本明細書で開示する化合物は、主にガレクチン−3阻害剤である。しかしながら場合によっては、これらのうちの少なくともいくつかは、他のガレクチンの阻害剤でもある。
【0045】
ガレクチン阻害剤としてのクマリル−置換チオジガラクトシドの設計
従来技術は、チオジガラクトシドの3−位、3’−位に類似性亢進構造部分を付着させる様々な手段を説明している。上述の部分はO又はNを介してチオジガラクトシドに結合される。しかしながら、ガレクチン(特にガレクチン−3)に関して高い類似性を達成するために、これらの構造部分は、N(アミド結合又はトリアゾリル環)を介してチオジガラクトシドの3−位、3’−位に結合される芳香族基であるべきである(Cumpstey et al.,2005b;Cumpstey et al.,2008;Salameh et al.,2010;WO2005113569/US2007185041;WO2005113568,US7638623B2)。Oを介して結合された構造部分は、阻害効果を提供するものの類似性は低い(Delaine et al.,2008)。Nを介してチオジガラクトシドの3−位、3’−位に結合する必要から、N原子をチオジガラクトシドの3−位、3’−位に導入するための非最適延長合成配列が必要となる。出願人らは、O−プロパルギル基をチオジガラクトシドの3−位、3’−位に付着させることによって、より容易にアクセス可能なO−結合構造部分を得ることができることを発見した。O−プロパルギル基は、公知の効率的な化学的変換によって、様々な複素環式芳香族環系に変換できる。ガラクトピラノース誘導体における3−O−プロパルギル基の、クマリルメチル構造への変換と、これに続くチオジガラクトシド形成への実装により、従来技術の3,3’−ジアミド−チオジガラクトシド、3,3’−トリアゾリル−チオジガラクトシドと同じ範囲の効率を有する阻害剤が実際に得られた。従来技術のO3−結合チオジガラクトシド、O3’−結合チオジガラクトシドは、N−結合誘導体より大幅に効率が低かったため、これは予期せぬことであった。この予期せぬ効率は、容易にアクセス可能なO−プロパルギル−担持前駆体分子から得られた置換(ヘテロ)二環式部分(クマリルメチル)の最適な特性によるものであることは明らかである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の一態様によると、上述のように、R1、R2、R3、R4、R5は独立して、水素、任意に置換されたアルキル基、ハロゲン、少なくとも1つの炭素を有する任意に置換されたアルコキシ基、ヒドロキシル基、置換されたカルボニル基、任意に置換されたアシルオキシ基、任意に置換されたアミノ基からなる群から選択される。
【0047】
本開示において、用語「アルキル基」は1〜7の炭素原子を含むアルキル基に関し、これは1つ又は複数の不飽和炭素原子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アルキル基は1〜4の炭素原子を含み、これは1つ又は複数の不飽和炭素原子を含んでいてもよい。アルキル基の炭素原子は直鎖又は分岐鎖を形成してもよい。上記アルキル基の炭素原子はまた、3、4、5、6又は7の炭素原子を含む環を形成してもよい。よって、本明細書で使用する用語「アルキル基」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、3−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、2−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、n−ヘプチル、2−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、1−メチルシクロプロピルを包含する。
【0048】
上述のように、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ又は複数がアルキル基である場合、このアルキル基は任意に置換されていてもよい。R1、R2、R3、R4、R5のうちのいくつかがアルキル基である場合、これらは任意に、互いに独立して置換されていてもよい。この任意の置換とは、アルキル基が、有機化学の分野において公知である1つ、2つ又は3つ以上の置換基で置換され得ることを意味する。本明細書で開示するような任意に置換されたアルキル基のために使用してもよい置換基の例は、ハロゲン、アルコキシ、ニトロ、スルホ、アミノ、ヒドロキシ、カルボニル基である。
【0049】
本開示において、用語「ハロゲン」はフルオロ、クロロ、ブロモ又はヨード基を意味する。
【0050】
本開示において、用語「アルコキシ基」は、1〜7の炭素原子を含むアルコキシ基に関し、これは1つ又は複数の不飽和炭素原子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アルコキシ基は1〜4の炭素原子を含み、これは1つ又は複数の不飽和炭素原子を含んでいてもよい。よって用語「アルコキシ基」は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、3−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、n−ヘキソキシ基、2−メチルペントキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、2,3−ジメチルブトキシ基、n−ヘプトキシ基、2−メチルヘキソキシ基、2,2−ジメチルペントキシ基、2,3−ジメチルペントキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、1−メチルシクロプロピルオキシ基を包含する。
【0051】
上述のように、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ又は複数がアルコキシ基である場合、このアルコキシ基は任意に置換されていてもよい。R1、R2、R3、R4、R5のうちのいくつかがアルコキシ基である場合、これらは任意に、互いに独立して置換されていてもよい。この任意の置換とは、アルコキシ基が、有機化学の分野において公知である1つ、2つ又は3つ以上の置換基で置換され得ることを意味する。本明細書で開示するような任意に置換されたアルコキシ基のために使用してもよい置換基の例は、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、カルボニル基である。
【0052】
上述のように、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ又は複数は、置換カルボニル基であってもよい。各カルボニル基は、有機化学の分野において公知である置換基によって置換されてもよい。本明細書で開示するような置換カルボニル基のために使用してもよい置換基の例は、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、フェニル、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル基である。上記カルボニル基は、また9〜14の炭素原子(例えば10の炭素原子)を含む、二環式〜多環式構造を含んでもよい。よって本開示による「置換カルボニル」という表現は、ベンゾイル、ナフトイル等のいずれかを包含する。
【0053】
本開示において、用語「アシルオキシ基」は、1〜7の炭素原子を含む基に関し、これは1つ又は複数の不飽和炭素原子を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、アシルオキシ基は1〜4の炭素原子を含み、これは1つ又は複数の不飽和炭素原子を含んでいてもよい。よって用語「アシルオキシ基」は、アセトキシ基、プロピオキシ基等を包含する。
【0054】
上述のように、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ又は複数がアシルオキシ基である場合、このアシルオキシ基は任意に置換されていてもよい。R1、R2、R3、R4、R5のうちのいくつかがアシルオキシ基である場合、これらは任意に、互いに独立して置換されていてもよい。この任意の置換とは、アシルオキシ基が、有機化学の分野において公知である1つ、2つ又は3つ以上の置換基で置換され得ることを意味する。本明細書で開示するような任意に置換されたアシルオキシ基のために使用してもよい置換基の例は、ハロゲン、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシ、カルボニル基である。ハロゲン置換基は、ブロモ、フルオロ、ヨード、クロロである。
【0055】
上述のように、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ又は複数がアミノ基である場合、このアミノ基は任意に置換されていてもよい。R1、R2、R3、R4、R5のうちのいくつかがアミノ基である場合、これらは任意に、互いに独立して置換されていてもよい。この任意の置換とは、アミノ基が、有機化学の分野において公知である1つ、2つ又は3つ以上の置換基で置換され得ることを意味する。本明細書で開示するような任意に置換されたアミノ基のために使用してもよい置換基の例は、アルキル、カルボニル、アリール、ヘテロアリール、フェニル基である。上記アミノ基は、また9〜14の炭素原子(例えば10の炭素原子)を含む、二環式〜多環式構造を含んでいてもよい。よって、用語「置換アミノ基」は、ベンズアミド、シクロヘキシルアミノ、フェニルアミノ等のいずれかを意味する。
【0056】
更に、R1、R2、R3、R4、R5のうちの隣接する位置にある2つ、3つ、4つ又は5つは結合して1つ又は複数の環を形成していてもよく、ここでR1、R2、R3、R4、R5の残りは独立して上記群から選択される。このような環は脂肪族又は芳香族であってもよく、またヘテロ原子を含む。このような環の例は、ベンゼル、ピペリジン、シクロペンタン、ナフタレン環である。いくつかの実施形態では、R2、R3はベンゼン環を形成する。
【0057】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つは、R1、R2、R3、R4、R5のうちのそれ以外のものから独立して水素である。よって、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は全ては水素であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つは独立して、ハロゲン類からなる群から選択される。よって、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は全てはハロゲンであってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つは独立して、任意に置換されたアルコキシ基からなる群から選択される。よって、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は全ては、任意に置換されたアルコキシ基であってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つは独立して、ヒドロキシル基である。よって、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は全てはヒドロキシル基であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つは独立して、任意に置換されたカルボニル基からなる群から選択される。よって、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は全ては、任意に置換されたカルボニル基であってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5のうちの少なくとも1つは独立して、任意に置換されたアミノ基からなる群から選択される。よって、R1、R2、R3、R4、R5のうちの1つ、2つ、3つ、4つ又は全ては、任意に置換されたアミノ基であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、一般式(I)の化合物は、ガレクチン−3に対する1μM未満(即ち<1μM)のKdを有する。この文脈において、Kdの値は、Sorme et al.,2003a,2004に記載された試験に従って測定される。
【0064】
いくつかの実施形態では、R5は水素である。
【0065】
いくつかの実施形態では、R2はフルオロであり、R1、R3、R4、R5のそれぞれは水素である。
【0066】
いくつかの実施形態では、R3はフルオロであり、R1、R2、R4、R5のそれぞれは水素である。
【0067】
いくつかの実施形態では、R3はヒドロキシル基であり、R1、R2、R4、R5のそれぞれは水素である。
【0068】
いくつかの実施形態では、R4はヒドロキシル基であり、R1、R2、R3、R5のそれぞれは水素である。
【0069】
いくつかの実施形態では、R2、R3の両方はフルオロであり、R1、R4、R5のそれぞれは水素である。
【0070】
いくつかの実施形態では、R3、R4の両方はフルオロであり、R1、R2、R5のそれぞれは水素である。
【0071】
いくつかの実施形態では、R2はクロロであり、R1、R3、R4、R5のそれぞれは水素である。
【0072】
いくつかの実施形態では、R2、R3は結合してベンゼン環を形成し、R1、R4、R5のそれぞれは水素である。
【0073】
いくつかの実施形態では、一般式(I)のR1、R2、R3、R4、R5は全て水素である。
【0074】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(20)である。
【0075】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(7−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(21)である。
【0076】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(7−メトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(22)である。
【0077】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(7−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(23)である。
【0078】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(6−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(24)である。
【0079】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(3H−ナフト[2,1−b]ピラン−3−オン−2−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(25)である。
【0080】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(6−tert−ブチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(26)である。
【0081】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(6−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(27)である。
【0082】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(6−フルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(28)である。
【0083】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(6,7−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(29)である。
【0084】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(5−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(30)である。
【0085】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(5−フルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(31)である。
【0086】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(5,6−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(32)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(6−トリフルオロメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(33)である。
【0088】
いくつかの実施形態では、この化合物は、ビス−{3−O−[(7−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(34)である。
【0089】
上述のように、本明細書で開示するような医薬組成物は、本明細書で開示する化合物に加えて更に、少なくとも1つの薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1〜99重量%の上記少なくとも1つの薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体と、1〜99重量%の本明細書で開示するような化合物とを含む。活性成分と、薬学的に許容可能な補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体とを合わせた量は、医薬組成物の100重量%超を構成してはいけない。
【0090】
上述のように、本明細書で開示する化合物及び医薬組成物は、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害の治療のために使用できる。
【0091】
本明細書で開示する化合物及び医薬組成物を、上述の治療及び/又は阻害のために使用する場合、治療有効量の少なくとも1つの化合物を、上述の治療を必要とする哺乳類に投与する。
【0092】
本明細書で使用する用語「治療」は、疾患又は状態を治療又は緩和するための治療、及び疾患又は状態の進展を予防するための治療の両方に関する。治療は短期的又は長期的のいずれで実行してもよい。
【0093】
用語「治療有効量」は、所望の治療効果につながる量に関する。
【0094】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、ガレクチン発現に依存する障害である。
【0095】
この文脈において、用語「リガンド」は、ガレクチンが結合するリガンド、受容体及び/又は類似の構造に関する。このようなリガンド、受容体及び/又は類似の構造は、例えば糖脂質、糖タンパク質又はプロテオグリカンである。
【0096】
いくつかの実施形態では、ガレクチンはガレクチン−3である。
【0097】
いくつかの実施形態では、上述の哺乳類はヒトである。
【0098】
いくつかの実施形態では、哺乳類は、高いレベルのガレクチン−3を有することが分かったヒトである。これは、ELISA又は上記哺乳類の体液又は組織中のガレクチン−3を測定するのに適した同様の抗体ベース検知システム等の、市販の試験を用いて検知できた。ガレクチン−3のレベルは、イムノアッセイを実施することによって定量化できる。ガレクチン−3イムノアッセイは、ガレクチン−3が存在する場合に免疫特異的結合が発生し得る条件下で、試験対象からの試料を適切な抗体に接触させることと、抗体によるいずれかの免疫特異的結合の量を検知又は測定することとを伴う。いずれの適切なイムノアッセイを用いることができ、これには、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射線アッセイ、蛍光イムノアッセイ、タンパク質Aイムノアッセイ等の技術を用いる、競合アッセイ及び非競合アッセイが含まれるが、これらに限定されるものではない。最も一般的な酵素イムノアッセイは、「酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)」である。ELISAは、標識(例えば酵素結合)形態の抗体を使用して、抗原の濃度を検知及び測定するための技術である。ELISAには様々な形態が存在し、これらは当業者には公知である。標準的なELISA技術は、「Methods in Immunodiagnosis」第2版、Rose及びBigazzi編、John Wiley&Sons、1980年;Campbellら「Methods and Immunology」W.A.Benjamin,Inc.、1964年;Oellerich,M.(1984年)、J.Clin.Chem.Clin.Biochem.22:895〜904に記載されている。ガレクチン−3を検知するための好ましい酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットは市販されている(BG Medicine,Waltham,Mass)。
【0099】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、炎症性障害又は疾患である。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得るこのような炎症性障害又は疾患の例は、IBD(炎症性大腸疾患)、潰瘍性大腸炎、クローン病、SLE(全身性エリテマトーデス)、多発性硬化症である。
【0100】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は線維症であり、これは線維性疾患、状態又は障害と呼んでもよい。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得る線維性疾患の例は、肺線維症、肝線維症及び腎線維症;心臓の線維症及び線維症に起因する心不全、眼の線維症(即ち眼科的線維症)、傷害後の線維症、術後線維症、放射線誘発性線維症、炎症状態に関連する線維症、腸の線維症、腹膜線維症、臓器の正常な機能を損ういずれかの臓器の線維症である。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得る肺線維症の一例は、特発性肺線維症である。
【0101】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、敗血症性ショックである。
【0102】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、癌転移を含む癌である。
【0103】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、自己免疫疾患である。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得る自己免疫疾患の例は、リウマチ性関節炎、多発性硬化症である。
【0104】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、代謝障害である。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得る代謝障害の一例は、糖尿病である。
【0105】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、心臓病又は心不全である。
【0106】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、病理学的血管新生である。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得る病理学的血管新生の例は、眼血管新生、眼血管新生に関連する疾患又は状態、癌である。
【0107】
いくつかの実施形態では、哺乳類のリガンドに対するガレクチンの結合に関連する障害は、眼疾患である。本発明によって又は本発明による化合物若しくは医薬組成物を用いて治療され得る眼疾患の例は、上述のような眼血管新生及び眼血管新生に関連する疾患又は状態、並びに加齢に関連する黄斑変性症及び角膜血管新生である。
【0108】
いくつかの実施形態では、上述の目的のために、本明細書で開示する化合物を1つのみ使用する。
【0109】
いくつかの実施形態では、上述の目的のために、本明細書で開示する化合物を2つ以上使用する。
【0110】
本発明の化合物を含む本発明による医薬組成物は、経口、静脈、局所、腹腔内、鼻腔内、口腔内、舌下、若しくは皮下投与に適合させてもよく、又は例えばエアロゾル若しくは空気中を漂う微粉末の形態での気道を介した投与に適合させてもよく、又は眼を介した投与、眼球内、硝子体内若しくは角膜投与に適合させてもよい。従って、本発明の医薬組成物は、例えば錠剤、カプセル、粉末、注射用溶液、噴霧用溶液、軟膏、経皮パッチ又は座薬の形態であってもよい。代替として、特に眼に影響する様々な疾患又は障害に関して、本発明による医薬組成物は、点眼薬、点眼ゲル、点眼スプレー又は眼帯の形態であってもよい。
【0111】
本発明の医薬組成物は任意に、本発明の化合物を2つ以上含んでいてもよい。この組成物は、また加齢に関連する障害の治療の分野の他の医薬品と共に使用することもできる。
【0112】
本発明の化合物の典型的な用量は大幅に変化し、これは、投与経路、治療が必要な固体の要件、固体の体重、年齢、全身状態等の多くの因子に依存する。
【0113】
本発明の組成物に使用してもよい補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体は、化合物及び医薬組成物の他の成分と両立可能であるという意味において、薬学的に許容可能でなければならず、またその受容者にとって有害であってはならない。組成物が、アレルギ反応等の副作用を引き起こし得るいずれかの材料を含まないことが好ましい。本発明の組成物に使用してもよい補助剤、希釈剤、賦形剤及び/又は担体は、当業者に公知である。
【実施例】
【0114】
クマリル置換チオジガラクトシドの合成
クマリル置換チオジガラクトシドを、スキーム1に示すように、公知のフェニル3−O−プロパルギル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド1(Giguere et al.,2006)から合成した。
【0115】
【化5】
【0116】
ガレクチン−3に対するKd値の評価
公知の蛍光分極ベースアッセイ(Sorme et al., 2003a, 2004)において、ガレクチン−1、ガレクチン−3阻害効率に関して化合物20〜34を評価した(以下の表1も参照のこと)。公知のガレクチン阻害剤であるメチルβ−D−ガラクトシド及びチオジガラクトシドを、参照化合物として含めた。実際、全ての化合物は、低いμM又はnM範囲の解離定数を有するガレクチン−1、ガレクチン−3の潜在的な阻害剤であった。これは、チオジガラクトシドのO3、O3’上の、合成に関して単純な、適切に構成されたクマリル置換基が、合成に関してより早い段階の公知の同等の3−N−置換化合物(3,3’−アミド−チオジガラクトシド;36に深く関係するもの等)と同様の阻害効率を示すこと、同一のアッセイで評価した場合に、最も優れた公知の同等の3−O−置換化合物(3,3’−ジエステルチオジガラクトシド35)よりも有意に優れていることの証拠となる。
【0117】
20、23〜24、28〜32の、最も優れた従来技術と同様の飛び抜けて高い阻害剤としての効能、及び容易にアクセス可能な3−O−プロパルギル−ガラクトース誘導体を介した大幅に簡略化された合成経路により、3−O−クマリル−置換チオジガラクトシドは、ガレクチン−3が病原となる状態を標的とした医薬組成物の活性材料として適したものとなる。
【0118】
【表1】
【0119】
方法論/実験
一般的な合成手順
本明細書で開示するような化合物は、後述する一般的な方法及び手順によって調製できる。本明細書で使用するガレクチン−1アッセイ、ガレクチン−3アッセイ、ガレクチン−7アッセイ、ガレクチン−8アッセイ、ガレクチン−9アッセイは、後述する一般的な方法及び手順で実行できる。典型的な又は好ましいプロセス条件(例えば反応温度、時間、反応物質のモル比、溶媒、圧力、pH等)が挙げられている場合、このプロセス条件以外を使用してはならないと明記されていない限り、他のプロセス条件もまた使用可能であることに留意されたい。最適な反応条件は、特定の反応物質、使用する溶媒、pH等によって変化し得るが、当業者はこのような条件を、平常の最適化手順によって決定できる。
【0120】
物質の識別は、HRMS(Micromass Q−tof micro)、NMR(Bruker Ultrashield 400 plus、400MHz)によって行った。参照として残余CHD2Cl(7.26ppm)又はCHD2OD(3.35ppm)を用いて、Me4Siから低磁場において化学シフトが報告される。化学シフト及び結合定数は1H−NMRから得られ、COSY実験から陽子共鳴が割り当てられた。シリカゲル(Davisil 35〜70μm、60A)を用いて、RF−HPLC(Beckman、system gold)又はフラッシュクロマトグラフィによって精製を行った。UV光、H2SO4(aq)又はイソ−バニリン/H2SO4/EtOH現像液によって可視化されたTLC(アルミニウムシート、シリカゲル60F254)で反応を追跡した。THF及びEt2Oをナトリウム/ベンゾフェノン上で乾燥し、蒸留した。CH2Cl2を分子篩(4A、1.6mm)で乾燥した。他の溶媒及び試薬は市販されており、更なる精製を行うことなく使用した。蛍光分極実験をPolarStar機器(BMG、オッフェンブルク(ドイツ))で実施した。ガレクチンの阻害剤としての20〜34の評価を、文献(Sorme et al.,2003a,2004)に記載されているような蛍光分極を用いて実施した。ガレクチン濃度並びに蛍光プローブの選択及び濃度は、ガレクチン−3に関して、濃度200nMのガレクチン−3と共にSalomonsson et al.,2010に記載されたtdga−プローブを20nMで使用した以外は、Cunpstey et al.,2005aに記載されている通りとした。各阻害剤は、4〜0.25μMの複数の濃度において二重試験した。ガレクチン7に関して実験を0℃で行った以外は、全ての蛍光分極実験を20℃で行った。
【0121】
ジ−(3−O−プロパルギル−β−D−ガラクトピラノシル)−スルファン(化合物4)の合成
無水ジクロロメタン(20mL)中の化合物1(2.0g、4.58mmol、Giguere et al.2006)溶液に、分子臭素(0.26mL、5.04mmol)を添加し、溶液を、開始材料が僅かに速く移動する成分に完全に変換されたことがTLCによって示されるまで、0℃で15分間撹拌した。シクロペンテンを用いて余剰の臭素を中和し、溶液を真空下で蒸発させた。n−ヘキサン−EtOAc(2:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィによって残滓を精製して、無色の濃いシロップとして純粋な化合物2(1.52g、82%)を得た。化合物2の安定性が影響を受けやすいことを考慮したが、更なる反応においても、分析的特徴付けを行うことなくこれを考慮した。無水アセトニトリル(15ml)中の化合物2の半量(0.76g、1.87mmol)に、窒素の連続流下でチオウレア(0.14g、1.86mmol)を添加し、混合物を、移動相n−ヘキサン−EtOAc(2:1)を用いたTLCによって、より遅い移動速度への化合物2の完全な消費が確認されるまで、80℃で4時間灌流させた。反応混合物を室温まで冷却し、窒素雰囲気下において、無水アセトニトリル中の化合物2の第2の半量(0.76g、1.87mmol)の溶液及びそれに続いて触媒量のEt3Nを反応物に添加し、反応物を一晩撹拌した。TLC(移動相n−ヘキサン−EtOAc(1:1))によって反応の完了を確認した。溶液を真空下で蒸発させた。n−ヘキサン−EtOAc(1:1)を用いたフラッシュクロマトグラフィによって残滓を精製して、白色固体として純粋な化合物4(0.92g、72%)を得た。
【0122】
クマリン20−34の合成のための一般的な実験手順
25mL丸底フラスコ内の無水THF(5mL)中の4(1mmol)、トシルアジド(Waser et al.,2006)(2mmol)、CuI(0.1mmol)、サリチルアルデヒド(2.2mmol)溶液を、窒素下で1時間撹拌する。続いてEt3N(2mmol)を、シリンジを介してゆっくりと添加する。得られた溶液を、TLC分析が4(n−ヘキサン−EtOAc)の完全な変換を示すまで、室温で12〜24時間撹拌してもよい。溶媒を真空下で蒸発させ、残滓をCH2Cl2(10mL)に溶解させ、水性NH4Cl(2×10mL)及び生理食塩水(10mL)を順に用いて洗浄する。有機層を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、真空下で蒸発させる。n−ヘキサン−EtOAcを溶出剤として用いたフラッシュクロマトグラフィによって残滓を精製して、化合物5〜19を得る。化合物5〜7、10〜19について、残滓をメタノール(50mL)に溶解させ、メタノール性ナトリウムメトキシド(0.1mL、1M)を添加する。(場合によっては、ジクロロメタン(10mL)を添加して、透明な反応溶液を得る。)12〜24時間後に水(0.4mL)を添加し、更に12〜24時間後に反応物を濃縮する。カラムクロマトグラフィ(SiO2、ジクロロメタン/メタノール、11:1)により、>95%の純粋な20〜22、25〜34を得た。化合物8、9について、残滓をメタノール/ジクロロメタン(1:1、50mL)に溶解させ、AcCl(5.5mL)をゆっくりと添加した。TLC分析によって反応の完了が示されたら(2〜6日後)、反応物を濃縮する。カラムクロマトグラフィ(SiO2、ジクロロメタン/メタノール、5:1)により、>95%の純粋な23〜24を得た。
【0123】
メトキシ誘導体ビス−{3−O−[(7−メトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(22)の合成のための、選択された具体的な実験手順
化合物4(100mg、0.14mmol)を無水THF(5mL)に溶解させた。CuI(5.54mg、0.029mmol)、4−メトキシ−サリチルアルデヒド(52.9 mg、0.35mmol)、TsN3(68.6mg0.35mmol)を上述の溶液に添加し、反応物を窒素下で室温で撹拌した。1時間後、Et3N(80μL、0.58mmol)をゆっくりと注入し、得られた溶液を、TLCが4(n−ヘキサン−EtOAc、1:3)の完全な変換を示すまで、室温で12時間撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、残滓をCH2Cl2(10mL)に溶解させ、水性NH4Cl(2×10mL)及び生理食塩水(10mL)を順に用いて洗浄する。有機層を分離し、乾燥させ(Na2SO4)、真空下で蒸発させる。残滓をMeOHに溶解させ、数滴のCH2Cl2と共にNaOMeを添加して、透明な溶液を作製した。反応混合物を12時間撹拌した後に0.4mLの水を添加し、反応混合物を再び室温に12時間放置した。反応の完了後、これをDOWEX H+樹脂で中和した。反応混合物を濾過し、溶媒を真空下で蒸発させた。フラッシュクロマトグラフィ(SiO2、ジクロロメタン/メタノール、10:1)によって残滓を精製して、純粋な化合物22(85mg、83%)を得た。
【0124】
メトキシ誘導体ビス−{3−O−[(5,6−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(32)の合成のための、選択された具体的な実験手順
化合物4(300mg、0.437mmol)、CuI(16.6mg、0.087mmol)を、アルゴン下で無水THF(3mL)中で撹拌した。5,6−ジフルオロ−サリチルアルデヒド(166mg、1.05mmol)、Et3N(146μL、1.05mmol)を添加し、続いてTsN3(207mg、1.05mmol)を滴下した。20℃で1.5時間後、シリカゲル(1.5g)を添加し、溶媒を真空下で蒸発させて、自由流動固体を得た。シリカゲルカラム(25g)上に材料を積載し、トルエン中の0〜25%アセトンを用いて溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィによって、精製を実行した。産物を、灰白色粉末(500mg)として得た。残滓(500mg、0.383mmol)をCH2Cl2(20mL)及びメタノール(20mL)に溶解させた。メタノール中のナトリウムメトキシド25重量%溶液を滴下して、pHを11とした。混合物を20℃で18時間撹拌した。水(80μL)を充填して、混合物を更に24時間撹拌した。固体CO2ペレットを添加することによって反応物を中和し、続いてシリカゲル(1.2g)を添加した。混合物を真空下で濃縮して、自由流動固体を得た。シリカゲルカラム(25g)上に材料を積載し、CH2Cl2中の0〜25%メタノールを用いて溶出させるフラッシュカラムクロマトグラフィによって、精製を実行した。産物32を白色固体(105mg、29%)として単離した。
【0125】
得られた化合物に関するデータ
ビス−{3−O−[(2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(20)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.21(s,2H,ArH),7.68(d,2H,J7.6Hz,ArH),7.59(m,2H,ArH),7.39(m,4H,ArH),4.61−4.54(m,6H,CH2Ar,H−1),4.02(bs,2H,H−4),3.60(t,2H,J9.6Hz,H−2),3.52(m,4H,H−6a,H−6b),3.39(m,4H,H−3,H−5).13CNMR(DMSO−d6,100MHz)δ:159.7,152.5,138.6,131.3,128.1,126.2,124.7,119.1,116.1(ArC)83.2(C−1),82.6,78.9,69.2,65.2,65.0,60.3;C3234NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:695.1567;実測値697.1582
【0126】
ビス−{3−O−[(7−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(21)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.20(s,2H,ArH),7.77(bs,2H,ArH),7.64(m,2H,ArH),7.48(d,2H,J9.2Hz,ArH),4.46−4.53(m,6H,CH2Ar,H−1),4.03(bs,2H,H−4),3.64−3.35(m,8H,H−2,H−6a,H−6b,H−3,H−5).13CNMR(DMSO−d6,100MHz)δ:159.7,151.4,137.7,131.1,128.7,127.8,127.4,120.7,118.4(ArC)83.4(C−1),82.6,79.1,69.4,65.6,65.3,60.6;C3232Cl214SNa(M+Na)+について算出したHRMS:765.0788;実測値765.0791
【0127】
ビス−{3−O−[(7−メトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(22)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.15(s,2H,ArH),7.60(d,2H,J8.8Hz,ArH),7.03(d,2H,J8.6Hz,ArH),6.98(dd,4H,J2.5,8.6Hz,ArH),5.20(brs,2H,HO−2),4.61(d,2H,J10Hz,H−1),4.51(bABq,4H,J14.8Hz,CH2Ar),4.03(bs,2H,H−4),3.84(s,6H,OCH3),3.63−3.48(m,6H,H−2,H−6a,H−6b),3.36(m,4H,H−3,H−5).13CNMR(DMSO−d6,100MHz)δ:162.2,160.4,154.6,139.5,129.3,122.4,112.8,100.7(ArC)83.2(C−1),82.8,79.0,69.3,65.4,65.1,60.4,56.1(OCH3);C343816SNa(M+Na)+について算出したHRMS:757.1778;実測値757.1781
【0128】
ビス−{3−O−[(7−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(23)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:10.49(s,2H,HO−Ar),8.11(s,2H,ArH),7.50(d,2H,J8.0Hz,ArH),6.82(dd,2H,J2.4Hz,8.4Hz,ArH),6.74(d,2H,J2.0Hz,ArH),5.20(d,2H,J6.0Hz,HO−2),4.62(m,6H,H−1,HO−4,HO−6),4.54(ABq,4H,J14.4Hz,CH2Ar),4.02(brs,2H,H−4),3.60(m,6H,H−2,H−6),3.39(m,4H,H−3,H−5);LRMS(ESI)m/z:729.1[M+Na]+
【0129】
ビス−{3−O−[(6−ヒドロキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(24)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:9.73(s,2H,HO−Ar),8.14(s,2H,ArH),7.27(d,2H,J8.8Hz,ArH),7.02(m,4H,J2.8Hz,8.8Hz,ArH),5.26(d,2H,J5.6Hz,HO−2),4.64(m,6H,H−1,HO−4,HO−6),4.58(ABq,4H,J15.2Hz,CH2Ar),4.02(brs,2H,H−4),3.65(m,2H,H−2),3.52(m,4H,H−6),3.39(m,4H,H−3,H−5);LRMS(ESI)m/z:729.2[M+Na]+
【0130】
ビス−{3−O−[(3H−ナフト[2,1−b]ピラン−3−オン−2−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(25)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:9.09(s,2H,ArH),8.61(d,2H,J8Hz,ArH),8.18(d,2H,J8.8Hz,ArH),8.08(d,2H,J8.0Hz,ArH),7.79(m,2H,J8.0Hz,ArH),7.65(m,2H,J8.0Hz,ArH),7.62(d,2H,J8.8Hz,ArH),5.60(d,2H,J5.6Hz,HO−2),4.79(d,2H,J4.8Hz,HO−4),4.67(m,8H,H−1,CH2Ar,HO−6),4.09(brs,2H,H−4),3.76(m,2H,H−2),3.58(m,4H,H−6),3.47(m,4H,H−3,H−5);LRMS(ESI)m/z:796.9[M+Na]+
【0131】
ビス−{3−O−[(6−tert−ブチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(26)
1HNMR(CD3OD,400MHz)δ:8.08(s,2H,ArH),7.55(dd,2H,J2.4,7.2,Hz,ArH),7.53(s,2H,ArH),7.17(m,2H,ArH),4.64(d,2H,J9.9Hz,H−1),4.54(dABq,4H,J1.3,14.3Hz,CH2Ar),4.10(bd,2H,J2.6Hz,H−4),3.74(dd,4H,J4.2,11.5Hz,H−6a),3.73(dd,2H,J9.4,11.4Hz,H−2),3.61(dd,2H,J4.7,11.5Hz,H−6b),3.50(brdd,2H,J4.9,6.1Hz,H−5),3.41(dd,2H,J3.2,9.2Hz,H−3)1.26(s,18H,tBu);C4050NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:809.2819;実測値809.2839
【0132】
ビス−{3−O−[(6−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(27)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.20(s,2H,ArH),7.78(d,2H,J2.5Hz,ArH),7.64(dd,2H,J2.5,8.8,Hz,ArH),7.48(d,2H,J8.8Hz,ArH),5.21(d,2H,J5.8Hz,HO−2),4.62(m,6H,H−1,HO−4,HO−6),4.54(dABq,4H,J1.3,14.6Hz,CH2Ar),4.03(brs,2H,H−4),3.64−3.36(m,8H,H−2,H−3,H−5,H−6);C3232Cl2NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:765.0788;実測値765.0807
【0133】
ビス−{3−O−[(6−フルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(28)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.20(brs,2H,ArH),7.50(m,6H,ArH),7.64(dd,2H,J2.5,8.8,Hz,ArH),7.48(d,2H,J8.8Hz,ArH),5.21(brs,2H,HO−2),4.60(m,10H,H−1,HO−4,HO−6,CH2Ar),4.03(brs,2H,H−4),3.69−3.25(m,8H,H−2,H−3,H−5,H−6);C32322NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:733.1379;実測値733.1411
【0134】
ビス−{3−O−[(6,7−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(29)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.17(s,2H,ArH),7.80(dd,2H,J8.8,10.3Hz,ArH),7.73(dd,2H,J6.8,11.1Hz,ArH),4.60(d,2H,J9.8Hz,H−1),4.53(ABq,4H,J1.3,14.9Hz,CH2Ar),4.02(brd,J2.4Hz,2H,H−4),3.62(t,2H,J9.8Hz,H−2),3.54,3.38(2m,8H,H−2,H−3,H−5,H−6);C32304NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:769.1190;実測値769.1222
【0135】
ビス−{3−O−[(5−クロロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(30)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.41(brs,2H,ArH),7.60(brt,2H,J8.2Hz,ArH),7.51(dd,2H,J1.1,8.0,Hz,ArH),7.44(brd,2H,J8.2Hz,ArH),4.62(d,2H,J9.7Hz,H−1),4.58(dABq,4H,J1.7,15.9Hz,CH2Ar),4.05(brd,2H,J2.7Hz,H−4),3.64(t,2H,J9.4Hz,H−2),3.55(dd,2H,J6.5,11.5Hz,H−6a),3.50(dd,2H,J6.1,11.5Hz,H−6b),3.40(dd,2H,J3.1,9.2Hz,H−3);C3232Cl2NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:765.0788;実測値765.0793
【0136】
ビス−{3−O−[(5−フルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(31)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.32(brs,2H,ArH),7.62(m,2H,ArH),7.27(m,4H,ArH),5.31(brs,2H,HO−2),4.61(m,10H,H−1,HO−4,HO−6,CH2Ar),4.03(brs,2H,H−4),3.68−3.35(m,10H,H−2,H−3,H−5,H−6);C32322NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:733.1379;実測値733.1407
【0137】
ビス−{3−O−[(5,6−ジフルオロ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(32)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.35(brs,2H,ArH),7.70(brq,2H,J5.4Hz,ArH),7.34(brd,4H,J4.4Hz,ArH),5.35(brd,2H,J5.6Hz,HO−2),4.61(m,10H,H−1,HO−4,HO−6,CH2Ar),4.04(brs,2H,H−4),3.69−3.36(m,10H,H−2,H−3,H−5,H−6);C32304NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:769.1190;実測値769.1220
【0138】
ビス−{3−O−[(6−トリフルオロメトキシ−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(33)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.27(brs,2H,ArH),7.73(brs,2H,ArH),7.61(brdd,2H,J2.3,8.6Hz,ArH),7.57(d,2H,J9.0Hz,ArH),5.21(brs,2H,HO−2),4.62(m,4H,HO−4,HO−6),4.62(d,2H,J9.7Hz,H−1),4.56(bABq,4H,J11.8Hz,CH2Ar),4.04(brs,2H,H−4),3.64−3.50及び3.43−3.35(2m,10H,H−2,H−3,H−5,H−6);C34326NaO16S(M+Na)+について算出したHRMS:865.1213;実測値865.1247
【0139】
ビス−{3−O−[(7−メチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン−3−イル)−メチル]−β−D−ガラクトピラノシル}スルファン(34)
1HNMR(DMSO−d6,400MHz)δ:8.20(s,2H,ArH),7.56(d,2H,J7.9Hz,ArH),7.26(s,2H,ArH),7.20(brd,2H,J6.9Hz,ArH),4.61(d,2H,J9.8Hz,H−1),4.53(dABq,4H,J15.2Hz,CH2Ar),4.03(brs,2H,H−4),3.63(t,2H,J9.4Hz,H−2),3.55(m,4H,H−6),3.58−3.48(dd,2H,J6.1,11.5Hz,H−6b),3.43−3.38(m,4H,H−3,H−5);C3438NaO14S(M+Na)+について算出したHRMS:725.1880;実測値725.1904
【0140】
線維症、炎症、癌におけるガレクチン阻害の生体内効率の例
炎症
上述のように、多くの研究によって、炎症反応の亢進におけるガレクチン−3の役割が示唆されている。例えば、炎症部位からの好中性白血球にガレクチン−3を添加するか、又はLPSへの曝露によって刺激することによって、有毒な酸素ラジカルの生成が増大する。ラクトースはこの反応を阻害できる(Almquist et al.,2001)。より最近では、重要なものとして、ガレクチン−3がマクロファージ分化及び筋線維芽細胞の活性化の速度制限因子であり(Mackinnon et al.,2008;Mackinnon et al.,2011)、これが線維症のプロセスを開始させることが報告されている。これらのモデルにおいて、ガレクチン−3阻害は、マクロファージ分化及び筋線維芽細胞活性化、従って線維症を阻害することが実証され、これによりガレクチン−3は、炎症/線維症プロセスにおける治療介入の標的として実際に確認された。本発明において説明した物質は、ラクトースよりはるかに高い可能性を有するガレクチン−3阻害剤であるため、上述の反応の阻害剤としてラクトースよりはるかに効果的なものとなる。これらの物質は小分子であり、より疎水性であり、通常は崩壊に対してより安定であるため、ラクトースやガレクチン−3Cよりも生体内ではるかに良好に利用可能である。
【0141】
炎症性大腸疾患への効果
本研究の目標は、本発明のガレクチン−3阻害剤の、腸管炎症のモデルにおいて炎症及び/又は線維症を減少させる又は除去する能力を実証することである。
【0142】
メスの8〜12週齢CBA/Jマウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)に、0.1Mの生理的等張緩衝塩溶液(HBSS)中の20mgのストレプトマイシンを投与して共生微生物相を根絶し、その24時間後に、100k0.1MのHEPESバッファ(pH8.0)中の3つの106コロニー形成単位(cfu)ネズミのチフス菌株SL1344を、経口強制送達によって感染させる。対照マウスには、100k0.1MのHEPESを経口強制送達によって投与する。
【0143】
炎症及び線維症が成長する時間を与えながらネズミチフス菌に対する炎症反応を根絶するために、感染後8日目に全ての群を0.5mg/mlのレボフロキサシンで処理する。
【0144】
選択した群のマウスを、1、8、9又は12日目から研究の終了まで連続して、異なる用量のガレクチン−3阻害剤で処理する。使用する投与経路は、経口、皮下、腹腔内、静脈内を含む。
【0145】
ネズミチフス菌感染後21日目に動物を安楽死させる。盲腸及び遠位結腸を解剖、測定、計量及び撮影する。盲腸及び遠位結腸を液体窒素で急激に凍結し、分子分析のために−80℃で保存され、また組織学的分析のために、これらの組織切片の両方を採集してホルマリン中で保存する。
【0146】
TNF−α、IL−1、TGF−β、IL−12、IL−6、ガレクチン−3、IGF−1、CTGFを含む線維症及び炎症マーカの発現に関して、RT−PCR、免疫組織化学及びELISA技術の両方を用いて切片を評価する。切片は別個の病理学者によって観察され、標準スケールを用いて炎症及び線維症の度合いを採点する。
【0147】

上述のように、ヒト癌モデルに関するマウスにおける複数の研究により、ガレクチン−3の発現の亢進によって腫瘍の成長が早まり、転移が増加することが示されている(Leffler,2001;Takenaka et al in Leffler(editor),2004b)。ガレクチン−3を阻害するものの、場合によっては他のタンパク質も阻害すると仮定される修飾多糖類(シトラスペクチン)の注射については、ラットにおいて前立腺癌を減少させることが報告された(Pienta et al.,1995)。ラクトシラート化ステロイドは、リンパ腫モデル、神経膠芽腫モデルにおいて治療的に有益な効果を有することが実証された(Ingrassia et al.,2006)。ガレクチン−3を阻害するために提案されたラクツソリル−ロイシン誘導体は、生体内におけるタキソール誘導アポトーシスへの腫瘍細胞の感受性を増大させることが証明されている(Glinsky et al.,2009)。従って、ガレクチン−3の有効な小分子阻害剤は、ガレクチン−3Cと同等の抗癌効果を有すると考えられる(John et al.,2003)。
【0148】
癌のモデル
CD−1ヌードマウスの群に、ヒト腫瘍細胞株からの細胞を用いて皮下異種移植を行う。腫瘍の成長が約130mm3に到達したら、治療を開始する。マウスを複数の群に分け、この時点から様々な頻度、用量で治療を施し、この治療には本発明のガレクチン−3阻害剤と共に、担体、活性対照物質が含まれる。腫瘍の成長及び体重変化を28日間追跡する。
【0149】
肺炎症及び線維症のモデル
ハロタンを用いてメスのC57/B16マウス(10〜14週齢)に麻酔をかけ、ブレオマイシン(生理食塩水50μl中に33μg)又は生理食塩水を気管内投与し、26日目に肺を採取する。ブレオマイシンが肺の損傷を誘発した後18、20、22、24日目に、異なる用量の本発明による複数のガレクチン−3阻害剤のうちの1つ又は複数を、マウスの肺に点滴する。コラーゲン着色肺切片の組織学的採点、MacKinnon et al.,2012に記載されているようなSircolアッセイによる総コラーゲン含量により、線維症を評価する。
【0150】
肺胞上皮細胞への効果
WTマウスからの一次肺胞上皮細胞をプレートに取り、ガレクチン−3阻害剤の存在又は不在下でTGF−β1を用いて処理する。細胞は溶解し、活性β−カテニン、総β−カテニン、βアクチンに関してウェスタンブロットで分析される。
【0151】
免疫組織化学
マッソン3色染色法、ヘマトキシリンとエオシン(H&E)を製造者の指示通りに使用して、マウス組織のパラフィン包埋切片を染色する。切片を免疫組織化学に関して処理し、以下の一次抗体:マウス抗活性−β−カテニン(抗ABC)抗体(Millipore)を使用し、切片を視覚化して定量化する。
【0152】
肺線維症及び炎症の決定
マッソン3色染色法で染色した切片において、組織学的な肺炎症及び線維症の採点を行う。炎症(細気管支周囲、血管周囲、肺胞壁厚)を、>5のランダムな領域において、以下の系(細気管支周囲、血管周囲:1=細胞なし、2=<20細胞、3=20〜100細胞、4=>100細胞;肺胞壁厚:1=細胞なし、2=2〜3細胞厚、3=4〜5細胞厚、4=>5細胞厚)を用いて倍率×630で採点する。総合的な炎症スコアは、これらのスコアの合計である。線維症スコアは、切片の、コラーゲンに関して陽性染色された領域として評価される(1=なし、2=<10%、3=<50%、4=>50%)。領域の大部分が肺胞からなる領域のみを採点する。
【0153】
Sircolアッセイによる肺コラーゲンの決定
製造者の指示通りにSircolアッセイを行うことにより、左肺葉のコラーゲン含量を決定する。左肺葉は、0.5M酢酸中の5mlの3mg/mlペプシン中で細かく切断され、4℃で24時間振盪することによってインキュベートする。洗浄した肺抽出物(0.2ml)を、0.8mlのSircol試薬を用いて室温で1時間インキュベートし、4℃で5分間にわたる10000gの遠心分離によって、コラーゲンを沈殿させる。沈殿物を1ml1MNaoH中で可溶化し、コラーゲン標準に沿って570nmで吸光度を測定する。
【0154】
一次2型肺胞上皮細胞の単離
標準的な方法に従って、処理したマウス及び対照マウスの2型肺胞上皮細胞(AEC)を抽出する。即ち、50U/mlのディスパーゼ(BD Biosciences)を1ml、灌流肺へと気管内投与し、これに続いて1%低融点アガロースを0.5ml点滴投与する。上気道内のアガロースを氷上に2分間静置し、肺を50U/mlディスパーゼ4ml中に、室温で45分間配置する。上気道を除く肺葉を、50μg/mlのDNAseI(Sigma−Aldrich、UK)を含むDMEM内に分散させる。細胞懸濁液を100−μm細胞ストレーナに通し、細胞をDMEMで洗浄し、10%FCSを含むDMEM中に再懸濁させる。細胞懸濁液を1時間、細胞培養用プラスチック上に取り、いずれの汚染された線維芽細胞及びマクロファージが付着できるようにする。付着しない上皮細胞を係数し、組織培養用プラスチック上、又は5μg/mlコラーゲン(AMS Biotechnology)、10μg/mlフィブロネクチン(Sigma−Aldrich)で事前にコーティングされたカバーガラス上で2日間培養する。細胞をPBSで3回洗浄した後、処理を行う。上皮細胞を、10%FCS、50U/mlペニシリン、50μg/mlストレプトマイシン、5μg/mlのL−グルタミンを含むDMEM中でインキュベートするか、マウス完全培地(0.25%BSA、10nMヒドロコルチゾン、5μg/mlインスリン−トランスフェリン−ナトリウム−亜セレン酸(ITS)を含み、かつ0.1mg/mlコハク酸ナトリウム、75μg/mlコハク酸、1.8μg/ml重酒石酸コリンで補完されたDMEM/F−12)に移す。
【0155】
ウェスタンブロッティング
25mMのHEPES(pH7.4)、0.3MのNaCl、1.5mMのMgCl2、0.2mMのEDTA、0.5%のトリトンX−100、0.5mMのジチオトレイトール、1mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤(Boehringer Mannheim,Sussex,UK;製造者の指示通りに調製)に、細胞を溶解させる。Pierce BCAタンパク質アッセイ試薬(Pierce)を用いて、溶解物をタンパク質に対して平衡化し、12%SDS−PAGEゲル上で分離する。ウェスタンブロット分析は、以下の一次抗体:ウサギ抗β−カテニン抗体(BD Biosciences)、ウサギポリクローナル抗−β−アクチン抗体(Sigma、UK)、マウス抗活性−β−カテニン(抗ABC)抗体(Millipore)を用いて行われる。
【0156】
血管新生の阻害
VEGF受容体−2(VEGFR2)を通した血管内皮成長因子(VEGF)の信号伝達は、主要な血管新生経路であり、ここではガレクチン−1及びガレクチン−3タンパク質が重要なモジュレータである。
【0157】
マウスの角膜において、硝酸銀を用いた焼灼によって眼の血管新生を誘発する。被験体のある群には、0.5%のDMSOを含むPBS中の、本発明による複数のガレクチン−3阻害剤のうちの1つ又は複数を、1日置きに結膜下注射する。対照被験体には、担体のみ(即ち0.5%のDMSOを含むPBSのみ)を結膜下注射する。被験体の別の群には、10μlの担体のみの、又は担体中の50μMのガレクチン−3阻害剤の点眼薬を、1日に1回投与する。
【0158】
結膜下注射処理又は点眼薬処理の5日後、被験体を殺し、角膜のフラットマウントを実施し、これを撮影し、抗−CD31を用いて染色して、血管を視覚化する。
【0159】
角膜全体を覆う欠陥の密度をImageJにより定量化し、スチューデント試験によって分析する。
【0160】
引用文献
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