(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イソシアネート化合物は、前記イソシアネート基を前記ウレア末端によりブロックすると共に、その分子鎖同士を鎖延長剤により鎖延長してなる鎖延長イソシアネート化合物からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のブロックイソシアネート組成物。
前記イソシアネート化合物は、鎖延長剤により鎖延長することなく前記イソシアネート基を前記ウレア末端によりブロックしてなる非鎖延長イソシアネート化合物からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のブロックイソシアネート組成物。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[概説]
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)を説明するが、本発明の各実施の形態について説明する前に、本発明の熱解離性ブロック剤及び当該熱解離性ブロック剤を使用したブロックイソシアネート組成物について(各実施の形態を包括する上位概念的説明として)説明する。まず、本発明者らは、低温で熱解離し、環境に有害な影響を及ぼすことがなく、熱解離性ブロック剤を求めて鋭意検討を重ねた結果、イソシアネート化合物の熱解離性ブロック剤として、従来の亜硫酸水素塩や二亜硫酸塩などのブロック剤と同等の低温解離性を有する一方で製造時又は熱解離時に亜硫酸ガス等の有毒ガスを発生しないブロック剤についての知見を得て、本発明の熱解離性ブロック剤に想到し、当該熱解離性ブロック剤を使用したイソシアネート組成物と、当該イソシアネート組成物を使用したプレポリマーの発明に想到した。即ち、本発明は、第1の観点の発明として、イソシアネート化合物、及び、イソシアネート化合物と反応して極低温で解離できる熱解離性ブロック剤からなり、イソシアネート化合物の末端イソシアネート基を熱解離性ブロック剤が保護することによりブロックイソシアネート化合物を合成するブロックイソシアネート組成物を提供し、第2の観点の発明として、前記ブロックイソシアネート組成物を水系溶媒中で製造する方法を提供し、第3の観点の発明として、前記ブロックイソシアネート組成物の熱解離性ブロック剤に適用される熱解離性ブロック剤を提供する。
【0029】
<熱解離性ブロック剤>
ここで、本発明に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と極低温で解離できる熱解離性ブロック剤とからブロックイソシアネート化合物を合成するものにおいて、その熱解離性ブロック剤が、アンモニア又はアンモニウム塩であると共に、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基をウレア末端によりブロックすることを特徴としている。また、熱解離性ブロック剤としてのアンモニウム塩は、アンモニウムの炭酸塩、アンモニウムの炭酸水素塩、アンモニウムの過炭酸塩、アンモニウムのリン酸塩、アンモニウムのリン酸水素塩、アンモニウムのリン酸二水素塩、アンモニウムの酢酸塩、及び、アンモニウムのシュウ酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の熱解離性ブロック剤とすることができる。
【0030】
換言すれば、本発明の熱解離性ブロック剤は、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基をウレア末端によりブロックする限りにおいて、アンモニアからなる(大区分の)第1の種類の熱解離性ブロック剤(本願書類中において、説明の便宜上、「アンモニア系熱解離性ブロック剤」ということがある。)と、アンモニウム塩としての、アンモニウムの炭酸塩、アンモニウムの炭酸水素塩、アンモニウムの過炭酸塩、アンモニウムのリン酸塩、アンモニウムのリン酸水素塩、アンモニウムのリン酸二水素塩、アンモニウムの酢酸塩、及び、アンモニウムのシュウ酸塩のいずれか1種、又は、これらの2種以上からなる(大区分の)第2の種類の熱解離性ブロック剤(本願書類中において、説明の便宜上、「アンモニウム塩系熱解離性ブロック剤」ということがある。)とに区分(大分類的に類別)することもできる。この場合、本発明の熱解離性ブロック剤は、これら(大区分の)第1〜第2の種類の熱解離性ブロック剤の1種又は2種以上を混合した(混合型の)熱解離性ブロック剤から構成することもできる。
【0031】
前記熱解離性ブロック剤の具体例として、上記のアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤としては、炭酸アンモニウム((NH
4)
2CO)、炭酸水素アンモニウム(NH
4HCO
3)、過炭酸アンモニウム((NH
4)
2CO
4)、リン酸アンモニウム((NH
4)
3PO
4)、リン酸水素アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、酢酸アンモニウム(CH
3COONH
4)、及び、シュウ酸アンモニウム((NH
4)
2C
2O
4)、又は、これらの混合物を挙げることができる。
【0032】
本発明では、好ましくは、熱解離性ブロック剤としては、上記のうち、極低温での熱解離性、熱解離時の発生ガスの種類や熱解離時の解離性等の観点から、アンモニア、又は、炭酸水素アンモニウムが使用される。
【0033】
<熱解離性ブロック剤の添加量>
本発明のブロックイソシアネート組成物中の熱解離性ブロック剤の添加量は、上記いずれの種類の熱解離性ブロック剤においても、NCO基換算で、イソシアネート化合物1モルに対し、0.1〜2.0モル、好ましくは、0.5〜2.0モル、最も好ましくは、1.0〜1.5モルである。
【0034】
<ブロックイソシアネート化合物の解離温度>
前記ブロックイソシアネート化合物の(加熱により熱解離性ブロック剤がイソシアネート化合物のイソシアネート基から解離する)解離温度は、前記熱解離性ブロック剤がアンモニア系であるかアンモニウム塩系であるかにかかわらずほぼ同等であり、60〜150℃の温度範囲である。即ち、ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、熱解離性ブロック剤が、アンモニア系熱解離性ブロック剤であっても、アンモニウム塩系熱解離性ブロック剤であっても、アンモニア系熱解離性ブロック剤及びアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤という上位概念として判断する限り、有意な差がない(即ち、ほぼ同等である)ことが本発明者らによる実験結果により確認されており、熱解離性ブロック剤の種類による若干の解離温度の差はあったとしても、特性上はほぼ同等のものとして把握することができる。一方、アンモニア系熱解離性ブロック剤及びアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤の個別・具体的な種類によっては(即ち、上掲列挙したアンモニアや炭酸アンモニウム等の熱解離性ブロック剤の個別・具体的な種類によっては)、組み合わされるイソシアネート化合物の種類、イソシアネート化合物に対する熱解離性ブロック剤の配合率、製造条件等に応じて、上記60℃〜150℃の温度範囲内で、解離温度が相違する場合も当然ある。
【0035】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度>
本発明のブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度は、(上記のブロックイソシアネート組成物について説明したのと同様の意味で)前記熱解離性ブロック剤がアンモニア系であるかアンモニウム塩系であるかにかかわらずほぼ同等であり、80〜150℃の温度範囲である。即ち、上記のとおり、ブロックイソシアネート組成物に含有される熱解離性ブロック剤がアンモニア系であるかアンモニウム塩系であるかにかかわらず、ブロックイソシアネート組成物の解離温度がほぼ同等であるため、ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度もほぼ同等のものとなる。
【0036】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化時間>
本発明のブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化時間は、約20秒〜約1時間の時間範囲である。
【0037】
[実験結果による確認]
本発明の発明者らは、本発明のブロックイソシアネート組成物及びブロックイソシアネートプレポリマー組成物を完成する過程で、鋭意の実験を実施し、その実験結果より、上記のアンモニアやアンモニウム塩が、本発明の熱解離性ブロック剤として機能し、所定の作用効果(ブロックイソシアネート化合物の末端乃至遊離NCO基のブロック乃至保護効果、及び、加熱に所定の低温域でのブロック剤の解離効果)を確実に発揮していることを確認している。以下、その実験結果について説明する。
【0038】
<ブロックイソシアネート組成物におけるNCO基のブロック>
まず、本発明者らは、所定の容器中で、アンモニア水と極性有機溶媒としてのジオキサンとの混合水溶液を含む水系溶媒を一定温度に維持し、その中にイソホロンジイソシアネート(IPDI)を長時間に渡り滴下しながら攪拌したところ、IPDIがアンモニアと反応することで、ブロックイソシアネートが得られた。この溶液を、サンプル溶液として、熱走査FT−IR(日本分光株式会社製FT−IR6000)によって分析したところ、IPDIのNCO基(イソシアネート基)による2240cm
−1付近の赤外吸収スペクトルは消失しており、また、1535cm
−1付近には−NH・CO−に起因する顕著な赤外吸収スペクトルが現われ、このサンプル溶液の100℃以上で連続的に減少していることが確認できた。また、NMR(核磁気共鳴)による分析においては、このサンプル溶液について、6ppm付近にイソシアネートとアンモニアとの反応によって生成されたと考えられる1級アミンのピークが確認され、また、8ppm付近にイソシアネートとアンモニアとの反応によって生成されたと考えられる2級アミンのピークが確認された。また、TG−MS(熱重量測定−質量分析)による分析においては、このサンプル溶液の60℃以上で、アンモニア(NH
3(m/Z=17))のマスピークが検出され、アンモニアガスの発生が確認できた。このTG−MSの分析結果を熱走査FT−IRの分析結果と併せて考察すると、このサンプル溶液では、アンモニアガスの発生に伴って−NH・CO−が減少しているものと考えられる。
【0039】
これらのことから、以下の点を確認することができた。まず、このサンプル溶液は、上記赤外吸収スペクトルを示すことから、アンモニアが関与する溶液であることが確認された。また、このサンプル溶液は、1535cm
−1付近に−NH・CO−に起因する顕著な赤外吸収スペクトルが現れると共に、このサンプル溶液の100℃以上ではこの1535cm
−1付近の赤外吸収スペクトルが連続的に減少していることから、単に、アンモニアが混合している溶液ではない(即ち、単に混合しているのではなく、保護基としてイソシアネート化合物のNCO基に付加している)ことが確認された。更に、このサンプル溶液は、NCO基に固有の吸収スペクトルを示さない一方、NMRにおいて6ppm付近にイソシアネートとアンモニアとの反応によって生成されたと考えられる1級アミンのピークが見られ、また、8ppm付近にイソシアネートとアンモニアとの反応によって生成されたと考えられる2級アミンのピークがみられることから、IPDIのNCO基がアンモニアに由来するウレア末端によってブロックされたブロックイソシアネート化合物の溶液であることが確認された。このことは、一定温度に維持された水系溶媒中において、IPDIやMDI等のイソシアネート化合物が存在する場合、水よりアンモニアの方が迅速にそのイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応して、イソシアネート基を保護すること(即ち、アンモニアがイソシアネート基のブロック剤として機能すること)を示している。
【0040】
また、この溶液に関し、2210cm
−1付近のイソシアネート基に帰属する赤外吸収スペクトルについては、この溶液の130℃以上で連続的にピークの増加が見られた。このことから、このサンプル溶液を130℃以上に加熱すると、イソシアネート基が再生されていることが確認できた。即ち、このサンプル溶液の130℃以上では、上記アンモニアに由来するウレア末端によるイソシアネート基の保護が外れ、このサンプル溶液が硬化剤としての機能を発現することが確認できた。
【0041】
<ゲル分率・膨張率>
次に、本発明者らは、上記IPDIによる確認試験の場合と同様にして、所定の容器中でアンモニア水を含有する水溶液(例えば、アンモニア水と極性有機溶媒との混合水溶液)を含む水系溶媒を一定温度に維持する一方で、その水系溶媒中にジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を滴下し、最終的にMDIからなるブロックイソシアネートを粉体状に析出させて粉体状のサンプルを得た後、この粉体状のサンプルについて、ゲル分率、及び、膨張率の測定を行った。即ち、この粉体状のサンプルを一定の比率でポリビニルアルコール(PVA)と合わせて150℃の温度で30分間(150℃×30min)処理し、PVAを(硬化剤としての)上記サンプルで硬化した硬化体を得た。その後、この硬化体を70℃の水中に48時間(48H)浸漬し、その硬化体について、浸漬前及び浸漬後(取り出し後)の重量と面積との変化率で評価した。その結果、一定の比率においては、ゲル部率が90%以上であり、膨潤率が120%以下であった。
【0042】
ここで、このゲル分率・膨張率の確認試験、及び、後述する実施例では、ブロックイソシアネートの構成要素中、ジイソシアネートとしてはMDIを使用している一方、上記NCO基のブロックに関する確認試験では、ジイソシアネートとして、脂肪族ジイソシアネートであるIPDIを使用している。これは、ジイソシアネートとして頻用されるMDI等の芳香族ジイソシアネートでは、1級アミン及び2級アミンの赤外吸収スペクトルが芳香族の官能基の赤外吸収スペクトル重なって確認できないためであり、IPDIを使用したNCO基のブロックに関する確認試験結果及び他の実験結果から、上記MDI等の芳香族ジイソシアネートを使用したブロックイソシアネートにおいても、IPDI等の脂肪族ジイソシアネートを使用したブロックイソシアネートの場合と同様に、アンモニア(又は、アンモニウム塩)に由来するウレア末端によりNCO基がブロックされたブロックイソシアネートが得られることが確認できる。
【0043】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物における熱解離>
次に、本発明者らは、前記
粘稠なサンプル溶液にグルコースを溶解させたものを、レオメーター(エム・エス・ティー・エンジニアリング株式会社製デジタルコーンビスコメーターCV−1S)を用いて粘度測定を行った結果、120〜130℃の温度範囲で急激に硬化が進行し、測定不可能な硬化度(極限粘度)に到達した。この熱硬化プロセス中において、有毒ガスや環境に有害な影響を及ぼす物質の発生は無かった。このことから、アンモニアのブロック剤は、亜硫酸水素ナトリウムと同程度の低温解離性があり、グルコースの使用によって、フェノール樹脂のプレポリマーを凌ぐ熱硬化速度が得られることが示された。
【0044】
本発明者らは、アンモニアの他に、アンモニウムの炭酸塩、アンモニウムの炭酸水素塩、アンモニウムの過炭酸塩、アンモニウムのリン酸塩、アンモニウムのリン酸水素塩、アンモニウムのリン酸二水素塩、アンモニウムの酢酸塩、及び、アンモニウムのシュウ酸塩を用いて実験を行ったところ、これらについても、アンモニアと同様の温度で熱解離現象が確認できた。また、本発明のプレポリマー組成物については、ブロックイソシアネート組成物と混合するイソシアネート反応性化合物の種類によって、80〜150℃の温度範囲で、硬化温度が変動することが確認された。
【0045】
<ブロックイソシアネートの末端構造>
上記の実験結果を含む各種の実験結果から、本発明に係るブロックイソシアネート組成物の末端構造は、ウレア末端となっており、下記化学式(1)のとおり、そのウレア末端基が保護基としてイソシアネート基(NCO基)を保護していることが確認できた。
【化1】
【0046】
また、上記の実験結果を含む各種の実験結果から、本発明に係るブロックイソシアネート組成物を加熱すると、下記化学式(2)のとおり、そのウレア末端基からアンモニア(NH
3)が解離してイソシアネート基(NCO基)の保護を外すことが確認できた。
【化2】
【0047】
[実施の形態の説明]
次に、本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態の説明では、本発明のブロックイソシアネート組成物及びプレポリマー組成物における熱解離性ブロック剤を、上記のように、アンモニア系熱解離性ブロック剤、及び、アンモニウム塩系熱解離性ブロック剤の2種類に分類して、それらの熱解離性ブロック剤を含有するブロックイソシアネート組成物及びプレポリマー組成物の発明を、それぞれ、実施の形態1及び実施の形態2として説明する。
【0048】
[実施の形態1:アンモニア系熱解離性ブロック剤]
<ブロックイソシアネート組成物>
実施の形態1に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と、イソシアネート化合物と反応して極低温で解離できるアンモニア系熱解離性ブロック剤とからなり、イソシアネート化合物の末端イソシアネート基をアンモニア系熱解離性ブロック剤が保護することによりブロックイソシアネート化合物を合成するものである。
【0049】
<イソシアネート化合物>
本実施の形態において、前記イソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDC)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)のいずれか1種、これらのイソシアネートを互いに混合したもの、あるいは、これらのイソシアネートをウレタン変性、アロファネート変性、カルボジイミド(CD)変性、イソシアヌレート変性等によって変性した変性イソシアネート、又は、これらの混合物などが使用できる。前記イソシアネート化合物としては、入手容易性等の観点からMDIを使用することが好ましいが、必要に応じて、IPDI等の他のイソシアネート化合物を使用することも無論可能である。
【0050】
<熱解離性ブロック剤>
本実施の形態では、熱解離性ブロック剤としては、前記アンモニア系熱解離性ブロック剤が使用される。具体的には、熱解離性ブロック剤は、アンモニア水である。より詳細には、本実施の形態の熱解離性ブロック剤は、濃度25〜28%のアンモニア水(NH
3(aq))を好適に使用することができる。
【0051】
<ブロックイソシアネート組成物(化合物)の一般式>
本実施の形態のブロックイソシアネート組成物(及び当該ブロックイソシアネート組成物により合成したブロックイソシアネート化合物)の一般式は、熱解離性ブロック剤としてアンモニア水を使用した場合、一般式(1)で示される分子式となる。式中の−R−NH−CO−は、イソシアネート化合物を示す。なお、一般式(1)は、各イソシアネートモノマーの末端の(遊離の)イソシアネート基(NCO基)を本発明の熱解離性ブロック剤が反応して保護する場合を示す。即ち、一般式(1)は、アンモニア(NH
3)により末端構造がウレア末端となって、そのウレア末端基がイソシアネート基(NCO)の保護基を構成する場合を示す。また、式中、Rは、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート、及び芳香族イソシアネートから選ばれる1種又は2種以上から形成されたイソシアネートのイソシアネート基を除く残基である。
【0052】
(アンモニア:NH
3)
−R−NH−CO−NH
2 一般式(1)
【0053】
このように、上記一般式(1)に示すとおり、熱解離性ブロック剤がアンモニア水の場合、アンモニア(NH
3)により末端構造がウレア末端となって、そのウレア末端基がイソシアネート基(NCO)の保護基を構成することで、イソシアネート化合物の末端のイソシアネート基(NCO基)を保護(ブロック)している。
【0054】
<熱解離性ブロック剤の添加量>
本実施の形態のブロックイソシアネート組成物(及び化合物)中の熱解離性ブロック剤の添加量は、NCO基換算で、イソシアネート1モルに対し、0.1〜2.0モル、好ましくは、0.5〜2.0モル、最も好ましくは、1.0〜1.5モルである。
【0055】
<ブロックイソシアネートの解離温度>
本実施の形態のブロックイソシアネート化合物は、熱解離性ブロック剤としてアンモニア系熱解離性ブロック剤を使用しており、その熱解離温度は、上記のとおり、60〜150℃の温度範囲となる(即ち、下限値が約60℃で、上限値が約150℃となる)。
【0056】
<ブロックイソシアネート組成物の製造方法>
本実施の形態のブロックイソシアネート組成物の製造方法は、まず、熱解離性ブロック剤溶液調製工程で、所定の容器中で、所定量のアンモニア系熱解離性ブロック剤としての所定濃度のアンモニア水を、所定の濃度となるように所定量の(ジオキサン等の)極性有機溶媒を(添加して)含む水系溶媒に溶解させて熱解離性ブロック剤溶液を調製するとともに、この熱解離性ブロック剤溶液を所定の攪拌装置により一定の攪拌速度で攪拌しながら、所定の冷却装置により一定温度に維持する。次に、ブロックイソシアネート組成物調製工程で、前記容器中で前記一定温度に維持された前記熱解離性ブロック剤溶液中に、所定量のイソホロンジイソシアネート(IPDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のイソシアネート化合物を、所定の長時間(例えば、30分〜90分の時間範囲、好ましくは、1時間程度)にわたって所定の滴下装置によって滴下しながら、所定の攪拌装置により攪拌すると共に、必要に応じて、ジエチレングリコール(DEG)や低分子量ポリエチレングリコール(例えば、分子量50〜500のPEG、好ましくは、分子量400以下のPEGであって、PEG200等)等の鎖延長剤、及び/又は、触媒を所定量添加して、ブロックイソシアネート溶液を得る。更に、このブロックイソシアネート溶液を(真空乾燥等の)所定の乾燥装置及び/又は所定の乾燥方法により、所定の乾燥温度で所定時間乾燥して、ゲル状(イソシアネート化合物がIPDI等の場合)又は粉体からなる固体状(イソシアネート化合物がMDI等の場合)のブロックイソシアネート組成物を得る。なお、本実施の形態のブロックイソシアネート組成物は、固体状のブロックイソシアネート組成物として具体化してもよいが、前記(イソシアネート化合物がIPDIの場合におけると同様な)ブロックイソシアネート溶液として具体化することもできる。
【0057】
<極性有機溶媒>
前記極性有機溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、又は、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、極性有機溶媒は、アセトンあるいはジオキサンである。なお、使用できる極性有機溶媒は、これらに限らない。
【0058】
<極性有機溶媒の添加量>
前記ブロックイソシアネート組成物の製造方法に用いられる水系溶媒において、水100部に対する極性有機溶媒の添加量は、1〜500部、好ましくは、5〜100部、更に好ましくは、10〜50部、最も好ましくは、20〜40部である。
【0059】
<水系溶媒の温度>
前記ブロックイソシアネート組成物の製造方法において、水系溶媒の温度(即ち、前記容器中で前記一定温度に維持される前記熱解離性ブロック剤溶液の温度)は、0〜60℃の温度範囲(即ち、少なくとも、その上限値は、前記熱解離性ブロック剤の解離温度の下限値である60℃とすることが必要であり)、好ましくは、5〜40℃の温度範囲、最も好ましくは、5〜20℃の温度範囲である。
【0060】
<添加剤>
本実施の形態のブロックイソシアネート組成物を原料としてブロックイソシアネートプレポリマー組成物を調製した後、そのブロックイソシアネートプレポリマー組成物を加熱して熱硬化するときに、熱解離性ブロック剤を確実に解離するためには、ブロックイソシアネート組成物に金属の有機酸塩からなる触媒を添加することが好ましい。かかる金属の有機酸塩からなる触媒としては、酢酸亜鉛(二水和物)、炭酸水酸ナトリウム、3級アミン等があるが、酢酸亜鉛を好適に使用することができる。一方、ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の原料(イソシアネート反応化合物)としてポリビニルアルコール(PVA)を使用する場合は、かかる触媒の添加は不要である。即ち、この場合、ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の加熱時に、熱解離性ブロック剤は、ポリビニルアルコール(PVA)の酢酸ビニル基と反応して容易に解離するため、上記のような触媒の添加は不要となる。また、ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の原料(イソシアネート反応化合物)として、酢酸エステル基や酢酸ビニル基を有する原料を使用する場合も、かかる触媒の添加は不要である。即ち、この場合も、ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の加熱時に、熱解離性ブロック剤は、酢酸ビニル基や酢酸エステル基と反応して容易に解離するため、上記のような触媒の添加は不要となる。
【0061】
<鎖延長>
前記ブロックイソシアネート組成物は、ブロックイソシアネート組成物を構成するイソシアネート化合物は、その分子鎖同士を所定の鎖延長剤により鎖延長してなるもの(鎖延長イソシアネート化合物)としてもよく、或いは、その分子鎖同士を鎖延長剤により鎖延長していないもの(非鎖延長イソシアネート化合物)としてもよい。即ち、ブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物が、イソシアネート基を(アンモニアに由来する)ウレア末端によりブロックすると共に、その分子鎖同士を鎖延長剤により鎖延長してなる鎖延長イソシアネート化合物からなる場合もあり、また、イソシアネート化合物が、鎖延長剤により鎖延長することなくイソシアネート基をウレア末端によりブロックしてなる非鎖延長イソシアネート化合物からなる場合もある。
【0062】
詳細には、例えば、ジイソシアネートとしてIPDIを使用する場合において、IPDIの分子鎖同士を、鎖延長剤としてのPEGにより鎖延長することで、PEGによる鎖延長イソシアネート化合物を得ることができ、この場合、ブロックイソシアネート組成物を構成するブロックイソシアネート化合物は、その鎖延長イソシアネート化合物の末端のイソシアネート基をウレア末端によりブロックした構造(以下、この構造のブロックイソシアネート化合物を「鎖延長ブロックイソシアネート化合物」ということがある。)となる。
【0063】
この鎖延長ブロックイソシアネート化合物における鎖延長部分(即ち、PEG)の分子量(MW)の範囲は、分子量50〜1000,000の範囲とすることができるが、好ましくは、頻用される範囲として、分子量100〜10,000の範囲とすることができる。
【0064】
一方、例えば、ジイソシアネートとしてIPDIを使用する場合において、IPDIの分子鎖同士を、鎖延長剤としてのPEGにより鎖延長することなく、非鎖延長イソシアネート化合物を得ることができ、この場合、ブロックイソシアネート組成物を構成するブロックイソシアネート化合物は、その非鎖延長イソシアネート化合物の末端のイソシアネート基をウレア末端によりブロックした構造(以下、この構造のブロックイソシアネート化合物を「非鎖延長ブロックイソシアネート化合物」ということがある。)となる。
【0065】
上記において、非鎖延長ブロックイソシアネート化合物からなるブロックイソシアネート組成物は、PVA等のポリオールと共にプレポリマーを形成するが、鎖延長ブロックイソシアネート化合物からなるブロックイソシアネート組成物は、所定の触媒を添加することで自己重合するため、ポリオールが不要となる。即ち、鎖延長ブロックイソシアネート化合物からなるブロックイソシアネート組成物自体が、いわゆるブロックイソシアネートプレポリマーとして機能する。
【0066】
<鎖延長剤>
鎖延長剤としては、マクロポリオール、又は、低分子ポリオールを使用することができる。マクロポリオールとしては、ポリエーテル系、ポリエステル系、又は、その他ポリオールを使用することができる。ポリエーテル系としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、EO/PO共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)を使用することができる。ポリエステル系としては、例えば、ポリオール/多塩基酸からのポリエステルポリオール、ポリオールEG、DEG、1.4−BG、1.6−HG、NPG、MPD等のポリエステル系鎖延長剤や、多塩基酸AA(アジピン酸)、AZA(アゼライン酸)、SA(セバシング酸)、IPA(イソフタール酸)、TPA(テレフタール酸)等のポリエステル系鎖延長剤や、ポリカプロラクトンジオール(PCL)、ポリカーボネートジオールを使用することができる。その他ポリオールとしては、ひまし油、アクリルポリオール、ポリウタジエンジオール、エポキシ樹脂等を使用することができる。低分子ポリオールとしては、短鎖ポリオール等を使用することができる。短鎖ポリオール等としては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、1.4−ブタンジオール(1.4−BG)、1.6−ヘキサンジオール(1.6−HG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、3−メチルペンタンジオール(MPD)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ドリメチロールプロパン(TMP)
ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、イソホロンジアミン(IPDA)等を使用することができる。更に、鎖延長剤としては、ジアミン系の鎖延長剤を使用することもできる。
【0067】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、前記ブロックイソシアネート組成物から合成したブロックイソシアネート化合物と、イソシアネート反応性化合物との混合物であり、所定の温度で加熱することにより熱硬化することを特徴としている。
【0068】
<イソシアネート反応性化合物>
前記イソシアネート反応性化合物は、ポリオール、又は、ポリアミンからなり、詳細には、単糖、二糖類、少糖類、オリゴ糖、多糖類、及び多糖類の水性化されたもの、多価アルコール、芳香族系ポリオール、一級アミン化合物、二級アミン化合物、カルボン酸化合物、水、又はこれらの混合物である。単糖としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース等がある。二糖類としては、マルトース、スクロース、トレハロース、ラクトース、セロビオース、イルマルトース、ゲンチオビース等がある。少糖類としては、ゲンチアノース、ラフィノース、パノース、メレジトース(以上三糖類)、スタキオース(四糖類)等があり、オリゴ糖としては、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ダイズオリゴ糖等がある。多糖類としては、澱粉、セルロース等があり、澱粉としては、タピオカ、馬鈴薯、コーン(とうもろこし)、小麦、甘藷、米、サゴ等がある。多糖類の水性化されたものとしては、デキストリン、アルファー澱粉等がある。好ましくは、本実施の形態のイソシアネート反応性化合物は、ポリオールとしてのポリビニルアルコール(PVA)からなる。なお、イソシアネート反応性化合物としてポリアミンを使用する場合、本実施の形態の熱解離性ブロック剤としてのアンモニアがアミンに安定であることから、アミノ型の結合が可能である。
【0069】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の製造方法>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、まず、原料混合工程で、所定量の前記ブロックイソシアネート化合物と、所定量のイソシアネート反応性化合物とを、(所定の配合比率となるよう)所定の容器中で混合して、混合原料を得る。次に、この混合原料を所定の粉砕装置により所定の粒度分布(及び所定値以下の最大粒度)となるよう粉砕して、本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物を得る。なお、このように製造する本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、以下のように、レジンタイプ、水性エマルジョンタイプ及び水性ディスパージョンタイプのいずれかとして具体化することができる。
【0070】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物のレジンタイプ>
前記ブロックイソシアネートプレポリマー組成物のレジンタイプは、(典型的にはジイソシアネートとしてMDIを使用してなる)前記ブロックイソシアネート化合物とイソシアネート反応性化合物との混合物の乾燥品を、最大粒度が20マイクロメーター以下になるように所定の乾式粉砕装置により乾式粉砕したものである。乾式粉砕装置としては、ハンマーミル、ローラーミル、ボールミル、ターボミルなどが使用可能である。レジンタイプのブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、好ましくは、10〜20マイクロメーターの粒度範囲に調整されたものとする。
【0071】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の水性エマルジョンタイプ>
ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の水性スラリータイプは、(典型的にはジイソシアネートとしてIPDIを使用してなる)前記ブロックイソシアネート化合物とイソシアネート反応性化合物との混合物の乾燥品を、最大粒度が20マイクロメーター以下になるように所定の湿式粉砕装置により湿式粉砕したものである。湿式粉砕装置としては、ホモジナイザー、ボールミルなどが使用可能である。ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の水性スラリータイプは、必要に応じて、分散剤や界面活性剤等を加えることができる。水性スラリータイプのブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、好ましくは、1〜10マイクロメーターの粒度範囲に調整されたものとする。
【0072】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の水性ディスパーションタイプ>
ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の水性ディスパーションタイプは、(典型的にはジイソシアネートとしてMDIを使用してなる)前記ブロックイソシアネート化合物とイソシアネート反応性化合物との混合物を、最大粒度が10マイクロメーター以下になるように所定の粉砕装置により調整して水中に分散したものである。粉砕装置としては、ビーズミル、ホモジナイザー、ボールミル等が使用できる。ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の水性ディスパーションタイプは、必要に応じて、分散剤や界面活性剤等を加えることができる。水性ディスパーションタイプのブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、好ましくは、1マイクロメーター以下の粒度範囲に調整されたものとする。
【0073】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度は、含有するブロックイソシアネート化合物の(使用する熱解離性ブロック剤に応じた)解離温度と同等であり(即ち、本実施の形態で使用する熱解離性ブロック剤としてのアンモニア系熱解離性ブロック剤の解離温度と同等であり)、60〜150℃の温度範囲となる。
【0074】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化時間>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、含有するブロックイソシアネート化合物中の熱解離性ブロック剤がアンモニア系熱解離性ブロック剤であり、その硬化時間は、(使用するイソシアネートがMDIの場合は)約20〜約180秒の時間範囲、(使用するイソシアネートがIPDIの場合は)約20秒〜約1時間の時間範囲である。
【0075】
[実施の形態2:アンモニウム塩系熱解離性ブロック剤]
<ブロックイソシアネート組成物>
実施の形態2に係るブロックイソシアネート組成物は、イソシアネート化合物と、イソシアネート化合物と反応して極低温で解離できるアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤とからなり、イソシアネート化合物の末端イソシアネート基をアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤が保護することによりブロックイソシアネート化合物を合成するものである。
【0076】
<イソシアネート化合物>
本実施の形態において、前記イソシアネート化合物としては、実施の形態1と同様のものを使用することができる。
【0077】
<熱解離性ブロック剤>
本実施の形態では、熱解離性ブロック剤としては、アンモニウム塩系熱解離性ブロック剤が使用される。本実施の形態において、熱解離性ブロック剤としてのアンモニウム塩としては、好ましくは、熱解離性ブロック剤の加熱時の解離性の点から、有機酸の塩を使用する。(オキソ酸の塩では、熱解離性ブロック剤の加熱時の解離性が不十分となる可能性がある。)具体的には、本実施の形態の熱解離性ブロック剤は、炭酸アンモニウム((NH
4)
2CO)、炭酸水素アンモニウム(NH
4HCO
3)、過炭酸アンモニウム((NH
4)
2CO
4)、リン酸アンモニウム((NH
4)
3PO
4)、リン酸水素アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、酢酸アンモニウム(CH
3COONH
4)、シュウ酸アンモニウム((NH
4)
2C
2O
4)のいずれか1種又はこれらの2種以上の混合物である。
【0078】
<熱解離性ブロック剤の添加量>
本実施の形態のブロックイソシアネート組成物(及び化合物)中の熱解離性ブロック剤の添加量は、実施の形態1のブロックイソシアネート組成物と同様である。
【0079】
<ブロックイソシアネートの解離温度>
本実施の形態のブロックイソシアネート化合物は、熱解離性ブロック剤としてアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤を使用しており、その熱解離温度は、上記のとおり、60〜150℃の温度範囲となる。
【0080】
<ブロックイソシアネート組成物の製造方法>
本実施の形態のブロックイソシアネート組成物の製造方法は、実施の形態1のブロックイソシアネート組成物の製造方法と同様であり、使用する極性有機溶媒の種類、極性有機溶媒の添加量、添加剤、鎖延長、水系溶媒の温度等の条件も、実施の形態1のブロックイソシアネート組成物の条件と同様である。
【0081】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、実施の形態1の場合と同様、前記ブロックイソシアネート組成物から合成したブロックイソシアネート化合物と、イソシアネート反応性化合物との混合物であり、所定の温度で加熱することにより熱硬化することを特徴としている。なお、イソシアネート反応性化合物は、実施の形態1のイソシアネート反応性化合物と同様とすることができる。
【0082】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の製造方法>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物の製造方法は、実施の形態1のブロックイソシアネートプレポリマー組成物の製造方法と同様であり、実施の形態1の場合と同様、レジンタイプ、水性スラリータイプ及び水性ディスパージョンタイプのいずれかとして具体化することができる。
【0083】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化温度は、含有するブロックイソシアネート化合物の(使用する熱解離性ブロック剤に応じた)解離温度と同等であり(即ち、本実施の形態で使用する熱解離性ブロック剤としてのアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤の解離温度と同等であり)、60〜150℃の温度範囲となる。
【0084】
<ブロックイソシアネートプレポリマー組成物の硬化時間>
本実施の形態のブロックイソシアネートプレポリマー組成物は、含有するブロックイソシアネート化合物中の熱解離性ブロック剤がアンモニウム塩系熱解離性ブロック剤であり、その硬化時間は、(使用するイソシアネートがMDIの場合は)約20〜約180秒の時間範囲、(使用するイソシアネートがIPDIの場合は)約20秒〜約1時間の時間範囲である。
【実施例】
【0085】
以下、
図1の表及び
図2の表にしたがって、本発明の実施例に係るブロックイソシアネート組成物の製造方法(製造例)及びブロックイソシアネートプレポリマー組成物の製造方法(製造例)、並びに、比較例に係るブロックイソシアネート組成物の製造方法(製造例)及びブロックイソシアネートプレポリマー組成物の製造方法(製造例)をそれぞれ示し、本発明の実施例に係るブロックイソシアネート組成物及びブロックイソシアネートプレポリマー組成物を、比較例に係るブロックイソシアネート組成物及びブロックイソシアネートプレポリマー組成物と対比して、その特有の作用効果と共に具体的に説明する。なお、以下において、「部」及び「%」は、特記しない限り、「重量部」及び「重量%」である。
【0086】
[比較例1]
a) 第1の工程
まず、開放の反応容器中で、εカプロラクタム100部を90℃に加熱し、溶融した中に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で固体のブロックイソシアネート(比較例1のブロックイソシアネート)を得た。比較例1のブロックイソシアネートの回収率は95%であった。
【0087】
b) 第2の工程
次に、前記比較例1のブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液1を調製し、その水性溶液1を型に流し込み、成形乾燥させて(比較例1用の)成形体1を得た。次に、この成形体1を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(比較例1用の)硬化体1を得た。次に、この硬化体1を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(比較例1用の)試料1を得た。次に、この試料1を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料1について、ゲル分率は55%、膨潤率は156%であった。また、硬化体1を得る際の熱硬化時の臭気はεカプロラクタム臭であった。
【0088】
[比較例2]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、飽和亜硫酸水素ナトリウム溶液(42%)100部、及びジオキサン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0089】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は50℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(比較例2のブロックイソシアネート)を得た。比較例2のブロックイソシアネートの回収率は90%であった。
【0090】
c) 第3の工程
次に、比較例2のブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液2を調製し、その水性溶液2を型に流し込み、成形乾燥させて(比較例2用の)成形体2を得た。次に、この成形体2を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(比較例2用の)硬化体2を得た。次に、この硬化体2を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(比較例2用の)試料2を得た。次に、この試料2を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料2について、ゲル分率は93%、膨潤率は117%であった。また、硬化体2を得る際の熱硬化時の臭気は亜硫酸臭であった。
【0091】
[比較例3]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、炭酸水素カリウム溶液(85%)100部、及び、アセトン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0092】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は50℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(比較例3のブロックイソシアネート)を得た。比較例3のブロックイソシアネートの回収率は93%であった。
【0093】
c) 第3の工程
次に、比較例3のブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液3を調製し、その水性溶液3を型に流し込み、成形乾燥させて(比較例3用の)成形体3を得た。次に、この成形体3を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(比較例3用の)硬化体3を得た。次に、この硬化体3を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(比較例3用の)試料3を得た。次に、この試料3を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料3について、ゲル分率は85%、膨潤率は135%であった。また、硬化体3を得る際の熱硬化時の臭気は無臭であった。
【0094】
[比較例4]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、炭酸水素カリウム溶液(85%)100部、及び、ジオキサン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0095】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は50℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(比較例4のブロックイソシアネート)を得た。比較例4のブロックイソシアネートの回収率は95%であった。
【0096】
c) 第3の工程
次に、比較例3のブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液4を調製し、その水性溶液4を型に流し込み、成形乾燥させて(比較例4用の)成形体4を得た。次に、この成形体4を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(比較例4用の)硬化体4を得た。次に、この硬化体4を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(比較例4用の)試料4を得た。次に、この試料4を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料4について、ゲル分率は88%、膨潤率は123%であった。また、硬化体4を得る際の熱硬化時の臭気は無臭であった。
【0097】
[実施例1]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、28%アンモニア水60部、及び(非プロトン性極性有機溶媒としての)ジオキサン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0098】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は60℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(実施例1のブロックイソシアネート)を得た。実施例1のブロックイソシアネートの回収率は92%であった。
【0099】
c) 第3の工程
次に、実施例1のブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液5を調製し、その水性溶液5を型に流し込み、成形乾燥させて(実施例1用の)成形体5を得た。次に、この成形体5を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(実施例1用の)硬化体5を得た。次に、この硬化体5を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(実施例1用の)試料5を得た。次に、この試料5を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料5について、ゲル分率は90%、膨潤率は132%であった。また、硬化体5を得る際の熱硬化時の臭気としてはわずかなアンモニア臭(アンモニアの微臭)が確認された。
【0100】
[実施例2]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、28%アンモニア水40部、及び、(非プロトン性極性有機溶媒としての)ジオキサン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0101】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は60℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(実施例2のブロックイソシアネート)を得た。実施例2のブロックイソシアネートの回収率は95%であった。
【0102】
c) 第3の工程
次に、ブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液6を調製し、その水性溶液6を型に流し込み、成形乾燥させて(実施例2用の)成形体6を得た。次に、この成形体6を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(実施例2用の)硬化体6を得た。次に、この硬化体6を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(実施例2用の)試料6を得た。次に、この試料6を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料6について、ゲル分率は95%、膨潤率は110%であった。また、硬化体6を得る際の熱硬化時の臭気としてはわずかなアンモニア臭(アンモニアの微臭)が確認された。
【0103】
[実施例3]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、28%アンモニア水60部、(非プロトン性極性有機溶媒としての)ジオキサン20部及び(両親媒性の)アセトン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0104】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は60℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(実施例3のブロックイソシアネート)を得た。実施例3のブロックイソシアネートの回収率は93%であった。
【0105】
c) 第3の工程
次に、ブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液7を調製し、その水性溶液7を型に流し込み、成形乾燥させて(実施例3用の)成形体7を得た。次に、この成形体5を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(実施例3用の)硬化体7を得た。次に、この硬化体7を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(実施例3用の)試料7を得た。次に、この試料7を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料7について、ゲル分率は90%、膨潤率は132%であった。また、硬化体7を得る際の熱硬化時の臭気としてはわずかなアンモニア臭(アンモニアの微臭)が確認された。
【0106】
[実施例4]
a) 第1の工程
まず、還流冷却器を付けたセパラブルフラスコに、28%アンモニア水40部、(非プロトン性極性有機溶媒としての)ジオキサン20部及び(両親媒性の)アセトン20部を入れ、1000rpmで攪拌しながら、温度を25℃に維持した。
【0107】
b) 第2の工程
次に、セパラブルフラスコ内に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)100部を1時間掛けて徐々に添加し、常温(反応温度25℃)で液体のブロックイソシアネート溶液を得た。ブロックイソシアネート溶液は60℃で真空乾燥され、固体のブロックイソシアネート(実施例4のブロックイソシアネート)を得た。実施例4のブロックイソシアネートの回収率は94%であった。
【0108】
c) 第3の工程
次に、ブロックイソシアネート100部を、25%ポリビニルアルコール水溶液を固形分比で60部になるように添加したものに分散混合して(即ち、表1のように、ブロックイソシアネート100部を、ポリビニルアルコール60部と水180部とからなる水溶液に混合して)水性溶液8を調製し、その水性溶液8を型に流し込み、成形乾燥させて(実施例4用の)成形体8を得た。次に、この成形体8を150℃で30分間加熱し、硬化させて、(実施例4用の)硬化体8を得た。次に、この硬化体8を湯温70℃の温水中に24時間浸漬して水洗処理し、その後、乾燥処理して、(実施例4用の)試料8を得た。次に、この試料8を、ボールミルにおいて1時間粉砕し、淡褐色のプレポリマーのレジンを得た。また、このレジンの粒度分布を光学顕微鏡下で観察した結果、最大粒度は20マイクロメーター(μm)であった。また、この試料8について、ゲル分率は95%、膨潤率は110%であった。また、硬化体8を得る際の熱硬化時の臭気としてはわずかなアンモニア臭(アンモニアの微臭)が確認された。
【0109】
[比較例1〜4及び実施例1〜4の対比]
比較例1〜4及び実施例1〜4について、
図1の表に、(上記第1の工程から第2の工程、又は、上記第1の工程から第3の工程までの工程で調製される)ブロックイソシアネート組成物の製造のための、使用原料、混合比(重量部)、反応温度(第1の工程から第2の工程、又は、上記第1の工程から第3の工程においてブロックイソシアネート溶液を得るまでの間における水系溶媒の維持温度(即ち、ブロックイソシアネート溶液を得るための反応温度))、及びその回収率を示す。
【0110】
比較例1〜4及び実施例1〜について、
図2の表に、(上記第3の工程で調製される)ブロックイソシアネートプレポリマー組成物のレジンタイプの製造のための、使用原料、混合比(重量部)、最大粒度、硬化温度、硬化時間、ゲル分率、膨潤率、製造時又は熱硬化時の発生ガス及び臭気の発生状況の結果を示す。硬化温度は、レオメーターにおいて、昇温毎分10℃で、極限粘度に到達したときの温度とした。また、硬化時間は、粘度上昇開始から極限粘度に到達するまでの時間とした。
【0111】
本発明の実施例1〜4のブロックイソシアネート組成物についての実験結果によれば、上記極性有機溶媒を添加され、反応温度が25℃に調整された水系溶媒中で、イソシアネート化合物(実施例1〜4のMDI)に対して、熱解離性ブロック剤として、アンモニア水のアンモニアを反応させることで、上記熱硬化温度と同等の温度範囲である低温域(即ち、上記硬化温度の125℃〜136℃の温度域であるが、試験条件や計測等における誤差等を勘案すれば約120℃〜約140℃程度の温度範囲と考えられる低温域)で熱解離が可能な熱解離性ブロックイソシアネート組成物を、90%〜95%(即ち、90%以上)という高い回収効率で製造できることが確認された。なお、ブロックイソシアネート化合物と熱解離性ブロック剤との組合せとして、実施例1〜4では、MDIとアンモニアとの組合せを使用しているが、熱解離性ブロック剤としてアンモニウム塩を使用した場合においても、更には、他の組合せにおいても(即ち、ブロックイソシアネート化合物としてMDI以外のものを使用し、熱解離性ブロック剤としてアンモニア又はアンモニウム塩を使用した場合でも)、同等の効果が期待できる。
【0112】
特に、実施例1〜4中、実施例2及び実施例4のように、極性有機溶媒としてジオキサン又はジオキサンとアセトンとの組合わせを添加され、反応温度が25℃に調整され、かつ、ジエチレングリコール(DEG)が添加された水系溶媒中で、MDIとアンモニアを反応させることで、(硬化温度が150℃となるような)低温での解離の可能な熱解離性ブロックイソシアネート組成物を、95%又は94%という(比較例1〜4及び実施例1〜4の中で)相対的に高い回収効率で製造できることが確認された。
【0113】
また、得られた(固体の)ブロックイソシアネート100部とポリビニルアルコール(PVC)60部を20マイクロメーター以下に粉砕したレジンタイプのブロックイソシアネートプレポリマー組成物(即ち、実施例1〜4のブロックイソシアネートプレポリマー組成物)は、150℃という極低温の温度範囲(試験条件や計測等における誤差等を勘案すれば約145℃〜約155℃程度の温度範囲と考えられる)で、30秒という驚異的な短さの硬化時間(試験条件や計測等における誤差等を勘案すれば約25秒〜約35秒程度の範囲の硬化時間と考えられる)で硬化が完了することが確認された。
【0114】
[発生ガス及び臭気]
実施例1〜4のブロックイソシアネートプレリマー組成物についての発生ガス及び臭気に関する実験結果によれば、製造時の発生ガスは、実施例1〜4のいずれもアンモニアガスのみであることが確認された。また、熱硬化時の臭気の発生状況は、実施例1〜4のいずれも、わずかなアンモニア臭(アンモニアの微臭)であることが確認された。
【0115】
[ホルムアルデヒドの発散量]
本発明者らは、成形1日後のフェノール樹脂と、実施例1〜4の方法で製造された熱硬化性プラスチックについて、JIS_A1901に準じてホルムアルデヒドの発散量を測定した。その結果、検出されたアルデヒド濃度は、フェノール樹脂で0.035(mg/m
2・65℃・2h)であるのに対し、熱硬化性プラスチックの値は、0.000(mg/m
2・65℃・2h)となり検出できなかった。この値は、最も厳しい自動車内装部品における業界基準である0.005(mg/m
2・65℃・2h)を下回っており、規制のあるすべての用途で使用可能であった。
【0116】
[耐アルカリ性]
本発明者らは、成形1日後のフェノール樹脂と、実施例1〜4の方法で製造された熱硬化性プラスチックを、常温において苛性ソーダ(50%溶液)に24時間浸漬し変化(強アルカリ性である水酸化ナトリウム水溶液に対する耐変色性)を観察した。その結果、フェノール樹脂において著しい変色が見られたが、本発明の熱硬化性プラスチックにおいては、まったく変色が見られなかった。
【0117】
[耐溶剤性]
本発明者は、成形1日後のフェノール樹脂と、実施例1〜4の方法で製造された熱硬化性プラスチックを、常温においてアセトンに24時間浸漬し変化を観察したが、両者共変化は見られなかった。このように、本発明の熱硬化性プラスチックがフェノール樹脂と同等以上の耐候性(耐溶剤性)を持つことが確認された。
【課題】ブロックイソシアネート化合物とイソシアネート反応性化合物との混合物であるプレポリマーに、フェノール樹脂のプレポリマーを凌駕する低温熱硬化特性を付与するとともに、熱硬化時において環境に有害な影響を及ぼすことがなく、その熱硬化物である熱硬化性プラスチックをフェノール樹脂に匹敵するコストで提供し、ホルムアルデヒドの発散を抑制する。
【解決手段】イソシアネート化合物と反応し極低温で解離できる熱解離性ブロック剤として、アンモニア及びアンモニウム塩からなる群から選択された少なくとも1種の熱解離性ブロック剤を使用し、前記熱解離性ブロック剤が、前記イソシアネート化合物のイソシアネート基をウレア末端によりブロックする。