【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)2−フルフリルエチルエーテルにおけるオフフレーバー低減効果の検討
<2−フルフリルエチルエーテルの食塩水への添加(1)>
2−フルフリルエチルエーテル単体でのオフフレーバーのマスキング効果を検討するため、17%(w/v)食塩水を対照品とし、17%食塩水に2−フルフリルエチルエーテルを各濃度となるように添加することで、2−フルフリルエチルエーテルの含有量がそれぞれ1、2.5、30、1000ppbである試験品を調製した。
【0029】
<官能評価>
訓練され識別能力を有するパネル8名により、下記の各調理におけるマスキング効果について、上記のように用意した対照品と試験品の香りを嗅ぎ、比較を行った。評価サンプルの臭いの強さを、臭いの強いものを10とし、弱いものを1とする10段階で評価し、8名の平均を比較することでマスキング効果を比較した。結果は、対照品に対する評点の平均が5となるよう対照品に対する評点に乗じた値を、各評点の平均に対し乗じて示した。
【0030】
<食塩水における評価>
ほうれん草のお浸しおよびトラウトサーモンのお造りを下記の要領で用意し、オフフレーバーの低減効果を評価した。
熱湯中で茹でたほうれん草を流水中で冷やし、水気を絞った。対照品または試験品の食塩水を適量添加し、青臭さを評価した。また市販のトラウトサーモンお造り(チリ産)に対し、対照品または試験品の食塩水を適量添加し、生臭さを評価した。
結果を表1および
図1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1および
図1の結果より、食塩水に2−フルフリルエチルエーテルを添加することによって、ほうれん草の青臭さやサーモンの生臭さなどのオフフレーバーを低減できることが分かった。
また、とくに2−フルフリルエチルエーテル濃度が30〜1000ppbである試験品を使用したとき、官能評価における対照品と比較して青臭さ、生臭さのスコアも対照と比較して2割以上低くなっており、オフフレーバーの低減効果はより明瞭であった。
【0033】
<2−フルフリルエチルエーテルの食塩水への添加(2)>
2−フルフリルエチルエーテル単体でのオフフレーバーのマスキング効果をさらに検討するため、食塩を含まない水(食塩濃度0%)、および食塩濃度6、12、17%(w/v)の食塩水に対して2−フルフリルエチルエーテルを濃度30ppbとなるように添加し、各試験品を調製した。
【0034】
<官能評価>
訓練され識別能力を有するパネル8名により、食品へのマスキング効果について、上記のように用意した試験品の香りを嗅ぎ、比較を行った。評価サンプルの臭いの強さを、臭いの強いものを10とし、弱いものを1とする10段階で評価し、8名の平均を比較することでマスキング効果を比較した。結果は、すでにマスキング効果が確認されている、食塩濃度17%(w/v)、2−エチルフリルエーテル30ppbである試料を対照品とし、当該対照品に対する評点の平均が5となるよう対照品に対する評点に乗じた値を、各評点の平均に対し乗じて示した。
【0035】
<評価>
市販のモッツァレラチーズ 100gに対し、対照品または試験品を適量添加し、乳臭さを評価した。結果を表1に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
上記表2からも明らかなように、液体調味料が食塩を含有する/しないにかかわらず、2−フルフリルエチルエーテルを添加することによって、モッツァレラチーズの乳臭さのようなオフフレーバーを低減できること、また液体調味料が食塩を含有する場合、当該調味料の塩分濃度は、オフフレーバー低減効果の度合いに大きな影響を及ぼさないことが判明した。
【0038】
(実施例2)各種調味料への応用
各種の調味料に2−フルフリルエチルエーテルを添加し、当該成分を実際の調味料に配合したときのオフフレーバー低減効果を下記の要領で調べた。
<2−フルフリルエチルエーテルの各種調味料への添加>
液体調味料として、市販の濃口醤油(食塩16%(w/v))、イタリアンドレッシング(食塩4.7%(w/v))、和風醤油ごま入りドレッシング(食塩4.7%(w/w))、焼肉のたれ(食塩6.0%(w/v))、ぽん酢醤油(食塩8.1%(w/v))、つゆ(食塩11.2%(w/v))を対照品とした。これらの調味料に2−フルフリルエチルエーテルを添加することにより、2−フルフリルエチルエーテルの添加量が2.5〜1000ppbである試験品の調味料を調製した。
各試験品について、試験例と同様の方法によって官能評価を実施した。
【0039】
(1)<焼き肉の官能評価>
サラダ油(日清オイリオグループ社製)を用いて加熱調理した牛肉(オーストラリア産)に対し、対照品または試験品の調味料(醤油または焼肉のたれ)を適量添加し、獣臭さを評価した。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
(2)<ほうれん草のお浸しの官能評価>
熱湯中で茹でたほうれん草を流水中で冷やし、水気を絞った。対照品または試験品の液体調味料(醤油またはぽん酢醤油)を適量添加し、青臭さを評価した。結果を表4に示す。
【0042】
【表4】
【0043】
(3)<サーモンのお造りの官能評価>
市販のトラウトサーモンお造り(チリ産)に対し、対照品または試験品の液体調味料(醤油、和風醤油ごま入りドレッシングまたはイタリアンドレッシング)を適量添加し、生臭さを評価した。結果を表5に示す。
【0044】
【表5】
【0045】
(4)<モッツァレラチーズの官能評価>
市販のモッツァレラチーズ 100gに対し、対照品または試験品の液体調味料(醤油またはつゆ)を適量添加し、乳臭さを評価した。結果を表6に示す。
【0046】
【表6】
【0047】
表3の官能評価結果より、対照品と比較して試験品の醤油または焼肉のたれ(とくに2−フルフリルエチルエーテルを30ppb以上添加したもの)を使用した際に、焼いた牛肉の獣臭を顕著に低減していることが分かる。
【0048】
表4の官能評価結果より、ほうれん草のお浸しでは、対照品と比較して試験品の醤油またはぽん酢醤油(とくに2−フルフリルエチルエーテルを30ppb以上添加したもの)を使用した際に、ほうれん草の有する青臭さが顕著に低減していることが分かる。
【0049】
表5の官能評価結果より、サーモンマリネでは、対照品と比較して試験品の醤油、和風醤油ごま入りドレッシングまたはイタリアンドレッシング(とくに2−フルフリルエチルエーテルを30ppb以上添加したもの)を使用した際に、顕著に生臭さが低減していることが分かる。
【0050】
表6の官能評価結果より、モッツァレラチーズでは、対照品と比較して試験品の醤油またはつゆ(とくに2−フルフリルエチルエーテルを30ppb以上添加したもの)を使用した際に、顕著に乳臭さが低減していることが分かる。
【0051】
以上の結果より、2−フルフリルエチルエーテルを液体調味料へ添加することによって、オフフレーバーのマスキング効果が著しく向上することが明らかになった。