【実施例】
【0031】
図1及び
図2は、鉱石堆積物10を示している。鉱石堆積物10は、前処理工程を実施する前は、鉱石12からなっている。或は、前処理工程は、少なくとも部分的には、鉱石堆積物が構成されている間に、凝集工程を使用して実施される。従って、両方の技術を適用することができる。前処理工程は、凝集技術を適用して開始され、鉱石堆積物が構成されるまで、継続される。鉱石堆積物10は、従来の鉱石堆積物として示してある。これは、単なる例示であって、鉱石カラム、ダンプ、バット、又は回収されるべき金属を含んでいる類似の鉱石集積装置でもよい。
【0032】
水源18から導出された水で製造された溶液16を鉱石堆積物へ給水するために、給水ネットワーク14が配設されている。給水ネットワーク14は、網状のシステムと、スプレー又は出口ノズル22を含んでいる。網状のシステムは、鉱石堆積物の表面及び内部へ分散して配置された給水パイプから構成されている。スプレー又は出口ノズル22は、どのようなタイプのものでもよい。感湿センサ24及びその関連器具が、鉱石堆積物の上、またはその中に配設されており、鉱石堆積物の中の鉱石の含水量を測定するようになっている。
【0033】
前処理工程は、管理システム26による管理の下で実施される。この管理システムは、種々のパラメータと変数に対応して、塩化物イオン28、硫酸30及び銅―含有材料32を水28へ添加するのを管理して、望ましい特性の溶液16を調製する。さらに、このシステムは、鉱石堆積物から排出される溶液34の特性に対応する。
【0034】
前述したように、鉱石12は、凝集工程を適用して、堆積物の中に載置される。即ち、鉱石堆積物を構築している間に、鉱石粒子は、溶液16で処理される。或は、鉱石粒子で鉱石堆積物を構築し、その後、溶液16を、鉱石堆積物へ適用する。然しながら、これら両方の方法を、連続して使用してもよい。
【0035】
前処理工程では、溶液16を200日間まで鉱石に給水する。鉱石と接触する溶液は、下記の特性を有している:
a) 溶液の電位は、微生物不存在下で、700mv・SHE超である。
b) 鉄対銅比は1以上である。
c) 全鉄濃度は0.1g/L超である。
d) pHは、3.0未満、好ましくは2.5以下である。
e) 塩化物イオン濃度は、130g/Lと230g/Lの間である。
f) 溶存酸素濃度は、1mg/L未満である。
【0036】
前記溶液を鉱石に適用して、鉱石の含水量を2wt%〜25wt%の範囲に調整する。好ましくは、鉱石の含水量は、5wt%〜8wt%の範囲である。
【0037】
システム26は、センサ24からの情報及び(適当なモニター方法とセンサを使用して導出される)排水溶液34の特性に関する情報を利用して、鉱石中の含水量を監視し、かつ、溶液への水の添加を管理する。従って、給水ネットワーク14への水の添加が管理される。鉱石堆積物へ溶液を添加する速度は変えてもよい。前記溶液は、鉱石堆積物へ、バッチモードで添加してもよい。即ち、一定時間鉱石堆積物へ溶液を適用した後、鉱石堆積物への溶液の適用を一定時間中断する回分方式等である。
【0038】
下記a、b、c及びdの少なくとも一つを使用して、塩化物イオン(ブロック28)を、溶液16へ導入する。
a) NaCl、MgCl
2、KCl、及びAlCl
3 の一つ以上の添加。
1. 凝集工程の間、NaCl、MgCl
2、KCl、及びAlCl
3 の一つ以上を直接鉱石12へ添加するか、又は
2.凝集工程の間、特別に設計された塩が添加されたポンド40から塩を導出することにより、NaCl、MgCl
2、KCl、及びAlCl
3 の一つ以上を直接溶液16へ添加するか、又は、
b) NaCl、MgCl
2、KCl、及びAlCl
3 (42)の一つ以上を、特別に設計された塩が添加されたポンド40に貯留されている溶液へ添加し、前記ポンドから導出された溶液を、給水ネットワーク14を介して鉱石堆積物10へ適用するか、又は
c)海水脱塩工程の間に製造されたブライン46を、凝集工程の間、又は給水ネットワーク14を介して、鉱石12へ添加するか、又は
d)天然に塩を含有している水、たとえば、海水、塩湖の水、又は貯留水を、塩化物イオン源として使用して、凝集工程の間、又は給水ネットワーク14を使用して、鉱石12へ添加する。
【0039】
凝集工程の間、硫酸(ブロック30)を直接鉱石へ添加してもよく、又は、硫酸を溶液16へ添加し、次いで、凝集工程の間又は給水ネットワーク14を介して、鉱石へ添加してもよい。
【0040】
本来、前処理工程で行うべきであるが、鉄に対する銅の比率を所定の値にするために、下記の種々の方法の一つ以上を採用する。
a)凝集工程の間、硫酸銅50を直接鉱石12へ添加するか、又は溶液16へ添加し、凝集工程の間に使用するか、或は給水ネットワーク14を介して鉱石へ適用する。
b)溶液16と混合された銅鉱石を含む電解質を添加する。
c)浸出回路のいずれからか導出された銅を含む浸出溶液54を添加する。および
d)硫化銅及び/または酸化銅金属の溶液16への溶解。
【0041】
前処理工程の間に、溶液電位を700mV・SHE超に設定することにより、第2次コベリン(輝銅鉱の酸化の第一工程の生成物)の酸化及び自然コベリンの酸化が、鉄イオンにより、向上する。
a) 第一工程における輝銅鉱の浸出は、鉱石と接触する溶液中の第二鉄イオンによる酸化で開始される。この反応は、溶液電位が500mV・SHE超で、下記のように進行する。
Cu
2S+2Fe
3+→2Fe
2++CuS+Cu
2+
b) 前述した条件で、第二鉄イオンが第二銅により酸化され、下記の平衡式に従って、溶液電位値が700mV・SHE超になる。
Fe
2++Cu
2+⇔Cu
++Fe
3+
c) 規定値1mg/L以下の溶存酸素を利用する場合、第一鉄イオンより酢酸第一銅が効果的で、下記の反応式に従って、酸化される。
4Cu
++O
2+4H
+→4Cu
2++2H
2O
d) 溶液電位が700mV・SHE超において、第二次及び/または第一次コベリンの酸化が促進され、下記の平衡式に従って、第二次硫化物から銅の抽出が加速する。
CuS+2Fe
3+→2Fe
2++S+Cu
2+
【0042】
図2は、前処理工程に続く活性浸出サイクルの概念を示している。
【0043】
活性浸出サイクルにおいて、鉱石堆積物の中の鉱石は、浸出溶液60で給水処理される。鉱石堆積物から浸出された銅は、溶媒抽出工程64を経て、排出溶液34から回収される。浸出溶液のpHは2.5未満で、これは硫酸30を添加することにより適切に調整される。また、この浸出溶液は、塩酸を含んでいてもよい。さらに、この浸出溶液は、浸出サイクルで使用した処理水起源、又は処理される鉱石から溶出した銅、鉄、及びその他のアニオン及びカチオン種を含んでいてもよい。
【0044】
溶媒抽出工程64において、銅を充填した有機洗浄ステージ72を、少なくとも1ステージ以上使用することにより、電解質の塩化物イオン濃度を50ppm以下にすることを促進することができる。回収された銅を、74で示す。
【0045】
図3〜
図5は、本発明の方法の特定例と、本発明の方法を使用して得られる利点を示すグラフである。
【0046】
図3は、環境条件下で、溶液電位を、それぞれ、550mV、600mV、650mV、及び700mVとして、第二次硫化銅を含む全鉱石からの銅の抽出を、時間(日)に対してパーセンテージ基準で示したグラフである。銅の回収率が、700mVで増加していることは明らかである。
【0047】
図4は、環境条件下で、第二次硫化銅を含む全鉱石からの銅のパーセント回収率を示す比較のためのグラフである。このグラフにおいて、(A)は、本発明の前処理工程を使用する例、(B)は、塩化物イオン濃度が130g/L以下において、化学浸出を使用する例、(C)は、微生物を使用する従来の微生物浸出の例である。
【0048】
図5は、
図4に関して述べたシステムからの浸出溶液の溶液電位を示すグラフである。前処理工程の後、溶液電位は700mVを超えている。この前処理工程における塩化物イオン濃度は180g/Lであった。
【0049】
図6は、環境条件下において、本発明の前処理工程を適用して、第二次硫化銅を含む全鉱石からの銅抽出の増加率を、生物的浸出工程を使用して得た同様の増加率と比較した結果を示すグラフである。これらのテストは、高さ10mのカラム浸出システムを使用し、鉱石床に自然の空気だけを拡散させて行った。強制曝気は採用しなかった。
【0050】
図7は、それぞれ本発明に従って、前処理を行って1日後における第二次硫化銅を含む全鉱石からの銅抽出(カーブF)と、同じく30日後の銅抽出(カーブG)の違いを示すグラフである。
【0051】
種々の濃度の銅(
図8に示す)、出発材としての第二鉄イオンを1g/L、塩化物イオンを80g/L、及び硫酸を4g/L含むバッチ式反応容器を25℃で使用してテストを実施した。時間の経過と共に溶液電位を測定した。これらの条件で、活性鉱石堆積物への給水サイクルの大部分において、溶液電位は期待できるものである。擬平衡条件では、溶液電位は700mV以下である。
【0052】
鉱石床には、強制気曝をせずに、自然の空気を拡散させ、バッチ式反応容器の中の溶液電位を25℃で所定時間にわたって測定した。
図9に示すように、これらの反応容器は、種々の濃度の銅、出発材としての第二鉄イオンを9.1g/L、塩化物イオンを180g/L、及び硫酸を1g/L含んでいた。これらの条件だけでは、活性鉱石堆積物への給水サイクルを容易に実施することはできない。然しながら、活性給水の前に、本発明の「低含水量式前処理工程」を適用することにより、活性鉱石堆積物への給水サイクルを容易に実施することができる。鉄に対する銅の比率を1以上にすると、溶液電位を700mV以上にすることができた。
【0053】
図10は、塩化物イオンの濃度を130〜180g/Lの範囲の種々の濃度で変化させ、出発材としての第二鉄イオンを1g/L、銅イオンを16g/L、及び硫酸を1g/L使用し、自然曝気のみで、25℃で所定時間にわたって測定したバッチ式反応容器の中の溶液電位を示している。
図10に示す塩化物濃度において、擬平衡条件は700mV以上である。
【0054】
図11は、系の圧を大気圧として、定常状態にある市販のプラント内の浸出溶液の塩化物濃度の関数として外挿した溶存酸素濃度を示している。溶存酸素濃度は、塩化物濃度が100g/L塩化物イオン超において、1mg/L以下である。
【0055】
図12は、濃硫酸及び硫酸4g/Lを含む溶液、鉄1g/L、銅5g/L及び塩化物イオン180g/Lによる凝集工程の後の、時間(分)に対する鉱石の温度を示すカーブである。
【0056】
図13は、比較のためのグラフで、周囲温度以上における、鋳造金属ブロックの温度の上昇を示している。この鋳造金属ブロックは、水と混合された濃硫酸(H)、塩化物イオンを180g/L含む酸性水(J)、及び塩化物イオン180g/Lと銅イオン5g/Lを含む酸性水(K)と接触している。
【0057】
図14は、前処理工程の間、2種類の異なる硫酸濃度で、第二次硫化銅を含む全鉱石から、周囲条件下で実施した銅の抽出量の違いを示すグラフである。
【0058】
図15は、
図14に関連しており、
図14に示した銅抽出値の浸出溶液のpHを示している。
【0059】
図16は、硫化銅を含む全鉱石から抽出された銅の量を、前処理工程の時間の関数として示している。この場合、前処理時間を0日から100日未満の間で、増加させた。