(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記駆動機構(10)は、計時器用ムーブメント、引き部品(14)又は押し部品によって巻かれる少なくとも1つの打撃用バレル(11)と、及び音を発生させることを判断する判断手段(12)とを有し、
この判断手段(12)は、少なくとも1つの前記打撃用バレル(11)から、必要な持続時間実質的に一定の速さで少なくとも1つのアクチュエーター(8)を駆動するように構成する少なくとも1つの駆動車(13)へのエネルギーの伝達を制御するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の腕時計(200)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、打撃機構を有する腕時計に、磁気的エスケープ機構についてのTHE SWATCH GROUP RESEARCH & DEVELOPMENT Ltd名義の欧州特許EP13199427に開示されている概念を適用することを提案するものである。この磁気的エスケープ機構においては、可動な磁化された止めメンバー、特に、パレットレバーが、磁化されたトラックと、非接触の形態で交番的に連係し、磁場の傾斜勾配が、止めメンバーの転換点まで増加している。
【0010】
本明細書において、磁気を用いる変種のみを用いて本発明を説明する。しかし、磁場の代わりに又は磁場に加えて、静電場を利用することもできる。特に、エレクトレットを使用することによってである。
【0011】
本発明を、以下の2つの形態を用いて説明する(これに制限されない)。
− 2つの自由度を用い、回転する可動要素が同心又は平行なトラックと連係するような第1の形態
− 単一の自由度を用い、可動要素が単一のトラックと連係するような第2の形態
【0012】
図1〜4は、2つの隣り合ったトラックを用いる様々な構成を示している。これらのトラックは、互いに平行であり、これらの2つのトラックどうしの境界部に実質的に位置する可動要素に対する磁場分布が局所的に異なっている。
【0013】
図5及び7に示すように、これらの構成は、ゴングを打つための打撃ハンマー駆動機構のために設けられるものである。
し手段を有し、これは、ゴングが打たれる前にハンマーを打撃位置に戻す。
【0014】
これらの機構のために、以下のいくつかの基準を考慮すべきである。
− 打撃時にゴングに与えられるエネルギー量
− ゴングとの第2の衝突を回避するために打撃の後にハンマーが定位置に戻る速さ
− トルク変化を補うために打撃の速さを調整することができる可能性
【0015】
図1〜4は、いくつかの手法で磁化されている要素を有するトラックの図であり、各場合において、特定の磁場トポグラフィーを形成しており、これによって、特定の極性で磁化された可動要素が操作される。この可動要素は、ここでは、打撃ハンマー又は打撃ハンマーに対応する制御レバーである。
【0016】
トラックに対する相対的な運動を行うように駆動される磁化された可動要素が動くことができる経路は、磁気ポテンシャルトポグラフィーによって定まる。打撃制御トラックが制御車と一体的であることが好ましいところ、理論的にはハンマーの回転軸が腕時計プレートに対して固定されているが、慣例によって、ここにおいては、磁化された可動要素が、図面において矢で示されている軸Xの正の方向に相対的な運動をするように、トラックの上を運動するものと考える。
【0017】
慣例によって、ここにおいては、以下のように考える。
− 互いに反発する磁石どうしに対して:
− 「磁化が増加している」とは、磁気ポテンシャルが増加していることを意味する。
− 「磁化が減少している」とは、磁気ポテンシャルが減少していることを意味する。
− 互いに引き合う磁石どうしに対して:
− 「磁化が増加している」とは、磁気ポテンシャルが減少していることを意味する。
− 「磁化が減少している」とは、磁気ポテンシャルが増加していることを意味する。
【0018】
これらの変種において、打撃の時間的な部分、すなわち、振りの間の時間間隔、についてのモデルを確立するために、Xにおける自由度を使用する。これに対して、横断方向Yにおける自由度は、打撃位置y1と巻き位置y2の間のハンマーの変位に対応するものである。
【0019】
本発明によると、打撃位置y1と巻き位置y2の間では機能が異なり、打撃位置y1と巻き位置y2の間は、非対称の構成であると考えることができる。
【0020】
内側トラックと外側トラックの磁化の値が同じならば、
図1の構成のみが対称的なトラック変更機能に従う。すなわち、外側トラックの反発性の外側の勾配RREに面する磁化された可動要素が、同じ外側トラックの反発性の外側ポールPREに達すると、内側トラックに切り替えられて、反発性の内側の勾配RRIの底部分に動く。可動要素は、この勾配RRIを反発性の内側ポールPRIに達するまで登り、外側トラックに切り替えられて動き、その後も同様に続く。
【0021】
図2〜4の3つの変種は、
図1の構成とは異なり、非対称の構成を示している。
【0022】
図2の変種では、ハンマー打撃位置y1に対応する内側トラックから磁場の勾配をなくしている。この構成は、二重の利点を有する。
− 一方では、巻き位置y2から打撃位置y1までの変化の際に解放されるエネルギーをわずかに増加させることができる。
− 他方では、X方向の運動時の抵抗力が、打撃位置y1において減少する。
【0023】
結果的に、規制がないために、ハンマーが打撃位置にあるときに可動要素はより速く動き、巻き位置までより速く戻る。このことによって、第2の打撃を行ってしまうリスクを減らすことができる。
【0024】
また、反発性の内側ポールPRIと反発性の外側ポールPREの間の軸X上の距離Δは、速い戻りを得るように決めることができる。
【0025】
この間隙において可動要素が推進力から十分な力を得ることが確実になるように、寸法構成を適応させるべきである。
【0026】
好ましい変種においては、ガバナーを導入する。このガバナーは、本質的に巻き位置y2において経験する典型的なトルク範囲に対して有効であるような寸法構成を有するが、打撃位置y1において経験する典型的なトルク範囲に対して許容できる程度に有効性が低くてもいい。理想的には、2つの速さが2つのトルク範囲に対応するような2つの平坦な領域を有する。
【0027】
図3の変種は、Xの正方向の運動時における、打撃位置y1に対応する内側トラックの増加している勾配を、誘引性が増加している領域において、減少している勾配によって置き換えることを提案するものである。この変種は、
図2の変種の利点を強調するものである。すなわち、打撃パワーと巻き位置までの戻りのための打撃位置y1における加速を強調するものであるが、短所も強調される。具体的には、打撃位置y1から巻き位置y2までの変更がより困難となることがありうる。なぜなら、車が磁気ポテンシャルに対して上昇して動かなければならないからである。しかし、磁気的な引力を通して獲得した速さと推進力が、打撃位置y1と巻き位置y2の間の磁気ポテンシャル差を克服するのに十分であるように、磁性領域の寸法構成を定めることができる。なお、この内側トラック上で、反発性の下降勾配又は図示したような誘引性の上昇勾配RAIを有することは等価である。しかし、反発性の下降勾配が用いられる場合には、ゴングに与えられるエネルギーがより低いことがある。
【0028】
図4の変種は、内側トラックの打撃位置y1の増加する傾斜について、反発性の磁石を誘引性の磁石に置き換えることを提案するものである。これにおいては、誘引性の内側の下降勾配DAIがある。このシステムには、打撃時にゴングにより大きなエネルギーを与えることを可能にするという利点がある。このバージョンにおいて、ハンマーが打撃位置にあるときに可動要素の加速現象が失われる。しかし、磁気ポテンシャルの傾斜、したがって、磁気制動トルクが、打撃位置y1と巻き位置y2の両方において同じであることを確実にすることができる。このことによって、ピーク領域における変化を補うことを望むのでないかぎり、規制を行いながら発動させることを可能にする。ピーク領域は、非常に短いことが好ましい。
【0029】
これらのすべての変種において、打撃位置y1から巻き位置y2までの自動変更のために、横断方向Yの距離eを変えることができる。方向Yにおける可動要素のいずれの運動をも防ぐために、本機構は、好ましいことに、機械的な止め及び/又は磁場の障壁を形成する磁気的な止めを有する。この距離がゼロである場合、可動要素は離れなければならない。
【0030】
要するに、
図1〜4の変種は、与えられるエネルギーが最大限にされる状況と打撃位置にある時間が最小限にされる状況との間の折衷の結果として生まれた手法である。
【0031】
図5は、ハンマーMの制御に適用される
図3の変種の詳細を示している。このハンマーMは、ゴングTを打つために軸D1を中心に回転し、磁化された端Eを有する
【0032】
図7は、
図1〜4の4つの変種に係るハンマーの制御のための環状トラックの例示的な構成を示している。
【0033】
図6の変種は、操作用のシステムへの十分なエネルギー量の供給を確実にするために、機械的な発動と磁気的な発動を組み合わせている。本機構は、一次元的であり、単一のトラックは、磁気ポテンシャルのピークのみを含んでいる。このトラックにおいては、磁石が規則的な距離d離れて設けられており、一端が磁化されているハンマーの近くを磁石が通ると、ハンマーを回転させて巻くトルクを発生させる。回転の際には、ハンマーは、ばねを巻く。このばねは、打撃する方向に自身を戻す傾向がある。特定の変位の後に、ばねトルクは、最大の磁気トルクに達し、ハンマーは、磁気ポテンシャルのピークの頂上を通る。この時点から、ハンマーは、ばねと磁気反発によって加速される。このように、ゴングに与えられる最大エネルギーは、ばねの位置エネルギーと、磁気ポテンシャルのピークにおける磁気的な位置エネルギーとの和である。この合計エネルギーは、
図1〜4の変種よりも大きい。距離Dが適切な寸法を有することによって、次の磁気ポテンシャルの上昇を利用して、ハンマーを迅速に戻し、第2の衝撃を回避することができる。この構成において、可動要素の速さvを規制することが完全に可能である。これは、磁気トルクがゼロである場合にハンマーの再位置合わせを加速することによって速さを規制しないことができるように、あるいは規制を所与の値より大きいトルクの範囲内においてのみとするように寸法構成を決めることによって速さを部分的に規制することができることと同様である。
【0034】
したがって、具体的には、図面に示すように、本発明は、計時器用打撃機構100に関し、これは、巻き位置である第1の位置と打撃位置である第2の位置の間を運動可能な少なくとも1つのハンマーを動作させるために打撃機構を駆動し制御する駆動機構10を有する。この打撃位置である第2の位置では、ハンマー1は、ゴング4を打つように構成している。
【0035】
より詳細には、この計時器用打撃機構100は、腕時計用打撃機構であり、これは、腕時計の空間における任意の位置において動作するように構成する剛体のハンマーを有する。
【0036】
本発明によると、ハンマー1は、少なくとも1つの磁化部分3を有し、これは、少なくとも1つのアクチュエーター8と連係するように構成している。このアクチュエーター8は、駆動機構10によって駆動されて運動することができる。
【0037】
このアクチュエーター8は、互いとは異なった磁場特性を有する少なくとも第1の領域21と第2の領域22の連続の交番構成を有する少なくとも1つのトラックを有する。磁化部分3は、これらの第1の領域21と第2の領域22の影響を連続的に受け、これによって、場合に応じて、ハンマー1の巻き又はゴング4に対するハンマー1の打撃を発動する。
【0038】
本発明によると、このようなアクチュエーター8に含まれる各トラックにおいて、第1の領域21はそれぞれ、当該トラックにおいて磁場の強さが最も大きいような磁気ポテンシャルのピークを形成し、第1の領域21はそれぞれ、ハンマー1の磁化部分3と磁気的極性が同じ磁場障壁を形成し、ハンマー1の磁化部分3がその磁場障壁を越えることを防ぐ傾向がある。
【0039】
図6及び8の変種では、アクチュエーター8は、このような第1の領域21と磁化されていない第2の領域22との交番構成を有する少なくとも1つのトラックを有している。磁気ポテンシャルのピークの第1の領域21とハンマー1の磁化部分3との間の周期的な相互作用には、鉛直方向から見て、トラックから及び/又はアクチュエーター8から、磁化部分3を押し出す傾向がある。また、ハンマー1は、このハンマー1をトラック及び/又はアクチュエーター8の上の位置に戻す傾向がある弾性の戻し手段5を有する。
【0040】
図1〜4及び7の実施形態では、アクチュエーター8は、第1の領域21と第2の領域22の交番構成を有する第1のトラック81と、及び第1のトラック81の隣にあり、同様に第1の領域21と第2の領域22の交番構成を有する第2のトラック82とを少なくとも有する。第1の領域21と第2の領域22の間の磁場特性は、当該トラック81、82それぞれの中では異なる。
【0041】
図1〜4、7及び10の実施形態においては、アクチュエーター8は環状であり、第1のトラック81は、環状であり、第2のトラック82に対して同心であり隣にあり、この第2のトラック82も環状である。
【0042】
具体的には、第1のトラック81の第1の領域21は、第2のトラック82の第2の領域22の隣にあり、第1のトラック81の第2の領域22は、第2のトラック82の第1の領域21の隣にある。したがって、このことによって、打撃機構の動作の全体にわたって、巻き位置と打撃位置の間のハンマーの揺動運動が確実になる。
【0043】
図1〜4及び7に示すように、アクチュエーター8に含まれる少なくとも1つのトラックでは、第2の領域22はそれぞれ、磁場の強さが増加又は減少しているポテンシャル勾配を形成しており、これらは、ハンマー1に対するアクチュエーター8の相対的変位の際に、ハンマー1の磁化部分3とエネルギーを交換する。
【0044】
第1の場合には、ポテンシャル勾配は、上昇勾配である。
【0045】
図4に示すように、第2の場合には、ポテンシャル勾配は、下降勾配である。
【0046】
いくつかの変種において、ポテンシャル勾配は、ハンマー1の磁化部分3と同じ磁気的極性を有する。
【0047】
特に、
図3〜5における他のいくつかの変種においては、ポテンシャル勾配は、ハンマー1の磁化部分3の磁気的極性とは反対の磁気的極性を有する。
【0048】
図1及び7に対応する変種では、アクチュエーター8は、内側トラック81と外側トラック82を有する第1のリングA1であり、これらはそれぞれ、第2の領域22と第1の領域24との交番構成を有し、第2の領域22はそれぞれ、磁化が増加するにしたがって磁気ポテンシャルが増加している1つの勾配を形成し、第1の領域24は、磁気ポテンシャルのピークを形成している。勾配とピークは、内側トラック81と外側トラック82の両方にて互い違いにされ、常に、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3に対して反発するようにふるまう。
【0049】
図2及び7に対応する変種では、アクチュエーター8は、
図2に示された内側トラック81と、及び第2の領域22と第1の領域21の交番構成を有する外側トラック82とを有する第2のリングA2であり、第2の領域22はそれぞれ、磁化が増加するにしたがって磁気ポテンシャルが増加している1つの勾配を形成し、第1の領域21は、磁気ポテンシャルのピークを形成しており、これらのピークは、内側トラック81と外側トラック82の両方にて互い違いになっている。これら2つのトラック81、82の勾配とピークは、常に、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3に対して反発するようにふるまう。
【0050】
図3及び7に対応する変種では、アクチュエーター8は、外側トラック82が第2の領域22と第1の領域21との交番構成となっている第3のリングA3であり、第2の領域22はそれぞれ、磁化が増加するにしたがって磁気ポテンシャルが増加している1つの勾配を形成しており、第1の領域21は、磁気ポテンシャルのピークを形成しており、外側トラック82の勾配とピークは、常に、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3に対して反発するようにふるまう。また、第3のリングA3は、
図3に示した第2の領域22と第1の領域21との交番構成を有する内側トラック81を有し、第2の領域22はそれぞれ、磁化が増加するにしたがって磁気ポテンシャルが減少している1つの勾配を形成しており、この勾配の極性は、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3の極性とは反対である。第1の領域21は、磁気ポテンシャルのピークを形成している。ピークは、内側トラック81と外側トラック82の両方にて互い違いにされており、2つのトラック81、82のピークは、常に、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3に対して反発するようにふるまう。
【0051】
図4及び7に対応する変種では、アクチュエーター8は、第4のリングA4であり、その外側トラック82では、第2の領域22と第1の領域21との交番構成を有し、第2の領域22はそれぞれ、磁化が増加するにしたがって磁気ポテンシャルが増加している1つのポテンシャル勾配を形成しており、第1の領域21は、磁気ポテンシャルのピークを形成しており、外側トラック82の勾配とピークは、常に、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3に対して反発するようにふるまう。内側トラック81は、
図4に示した第2の領域22と第1の領域21との交番構成を有する。第2の領域22はそれぞれ、磁化が減少するにしたがって磁気ポテンシャルが増加している1つのポテンシャル勾配を形成しており、これにおいて、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3の極性とは反対の極性を有する。第1の領域21は、磁気ポテンシャルのピークを形成している。これらのピークは、内側トラック81と外側トラック82の両方にて互い違いにされ、2つのトラック81、82のピークは、常に、トラック81、82の上を動くハンマー1の磁化部分3に対して反発するようにふるまう。
【0052】
様々な変種の特定の実施形態においては、ハンマー1は、弾性の戻し手段5を有する。これは、トラック及び/又はアクチュエーター8上で打撃位置の方に向かっているような位置にハンマー1を戻す傾向がある。
【0053】
図9及び10に示した変種(これに制限されない)においては、駆動機構10は、計時器用ムーブメントあるいはボルト14又は押し部品によって巻かれる少なくとも1つの打撃用バレル11と、及び音の発生を判断する判断手段12とを有する。この判断手段12は、少なくとも1つのバレル11から少なくとも1つの駆動車セット13へのエネルギーの伝達を制御するように構成している。この駆動車セット13は、必要な持続時間のために実質的に一定の速さで少なくとも1つのアクチュエーター8を駆動するように構成している。
【0054】
具体的には、判断手段12は、複数の駆動車13A、13Bを制御するように構成しており、駆動車13A、13Bのそれぞれは、特定のゴング4A、4Bを打つために少なくとも1つのアクチュエーター8A、8Bを駆動するように構成している。
【0055】
勾配の形については、以下の形を用いることができる(これに制限されない)。
− 線形的に増加する(又はもちろん減少も)、すなわち、磁気ポテンシャルの変化が線形であるような、勾配
− 差動的に増加する勾配であって、最初は、非常に早い時期に可動要素を加速するために急勾配の曲線を有し、最後においては、穏やかな曲線を有するような勾配であり、この磁気ポテンシャル輪郭は、打撃位置から巻き位置への迅速な戻りのために特に有効である。
【0056】
ミニッツリピーターのような打撃機構の伝統的な構造には、回転軸が固定されたハンマー、固定されたゴング及び可動アクチュエーターを伴うが、本発明の原理から逸脱せずに、ハンマーとゴングが可動であり、アクチュエーターが固定されているような逆の構成を思い描くことができる。
【0057】
この場合、アクチュエーター8は不動であり、ハンマー1及びゴング4が駆動機構10によって駆動され運動する。
【0058】
このようなゴングが動くような構成によって、鳴動音を変調することができる。なぜなら、音に寄与する様々な部分(音符)の発散が、腕時計の外側部品の中のゴングの位置に応じて変わるからである。また、少なくとも2つのゴング(例、時間と分のためのゴング)の相対的位置によって、音響及び審美的な効果を発生させることができる。
【0059】
この変種の特定の実施形態において、ゴングは回転する。
【0060】
この場合、ゴングを駆動することができ、また、ゴングは自由回転車であることができる。この直前の例においては、自由回転車であるゴングは、振動する重量体を形成することができ、また、反対に、振動する重量体をゴングとして使用することができる。
【0061】
この変種の別の特定の実施形態において、ゴングは線形運動をする。
【0062】
変種の1つにおいて、ハンマーとゴングとの衝突がいくつかの異なる位置で発生する。これらの位置は、定まっていることができ(例、接続ノードにて)、反対に、ランダムであることができる。
【0063】
これらの変種は、磁気の維持に関して非常に適している。これは、プレートとハンマーの間のいずれの接触をも必要とせず、したがって、ハンマーがゴングと一体的に動くことができる。
【0064】
伝統的な維持においては、可動なゴング及びハンマーを備えた設計を生産することはもちろん複雑であるが、以下の2つの有利な特徴が発生しうる。
− 固定ハンマーが定められた位置にありゴングのみを動かす。
− ハンマーとゴングを一体的に動かし、振動プレートのような細長材ばね又はピンによってハンマーを発動させる。
【0065】
これらの可動なゴングの変種の重要な利点として、音の調性を変えることができるということがある。
【0066】
他の利点も続けて説明する。具体的には、振動応答が非常に非均質であるようなケース内にて一体的にされたハンマーとゴングを動かすことによって、調性を変調することができる。一例は、ケースに風防と膜が取り付けられており、ムーブメントと膜の間の連結が3時と9時の位置にあり、ベゼルと風防の連結が12時と6時の位置にあり、ゴングが12時と6時の位置にあるときにベゼル−風防に同調されたゴング周波数が活性化して大きく放射し、ゴングが3時と9時の位置にあるときに膜に同調されたゴング周波数が活性化して大きく放射する。したがって、発される音は、ゴングの位置に応じて高くなったり低くなったりする。実際に、ゴングの部分音、したがって、音符が、依然として同じであったとしても、音におけるそれらの相対的な重み付けは変わる。
【0067】
凹部、側方膜、共振器、音響放射メンバーなどの特定の外側部品の設計によっても、2つ又はそれより多い数のゴングの間の立体音的効果の方法によって、音の指向性を変えることができる。
【0068】
ゴングがいくつかの位置に動くだけで、調性をさらに大きく変えることができる。これは、いくつかの異なる位置でゴングを打つように位置合わせされた異なるハンマーがいくつか(例、3や4)ある場合に対応している。音は、ゴングの取り付け点から離れるにしたがって深くなる。
【0069】
特定の場合において、まっすぐな長方形のゴングを使用することに関わる。このゴングは、その軸で回転してスチフネスを変え、したがって、部分音が衝撃の際に最も活性化される。これらの手法の特定の非常に有利な応用例として、昼と夜とで音の調性を変えるものがある。
【0070】
別の非常に実際的な利点として、ゴングの位置を、安静位置、例えば、わずかに応力を与えられた位置から、一又は複数の動作位置に変えて、ゴングが、各位置に対する異なる有効長に対して自由であったり当接していたりするものがある。これによって、ゴングの自由度、したがって、発される音の強度や持続時間に害を与えずに、塑性変形や望まない衝撃のリスクを抑えることができる。この場合、有効長が変わるので、特定の位置から別の位置に変わる際に、単に調性ではなく発生する音符を変えることによって、音を完全に変えることができる。
【0071】
また、可動なゴングを表示部品として有利に使用することができる。特に、まっすぐな形又は針の形のゴングの形に作られたものを使用すると有利である。
【0072】
本発明は、さらに、このような打撃機構100を少なくとも1つ有する腕時計200に関する。
【0073】
本発明は、機械的ムーブメント又は電子的ムーブメントとともに用いることができる。実際に、打撃機構は、時間、4分の1時間及び分の部品及び対応するスネール状部品のような表示パラメーター判断手段の下流にある。
【0074】
本発明は、各ゴングに対して、このような特定のハンマーを備えたアクチュエーターと、及びこれに関連づけられた、アクチュエーターを回転駆動させる手段とを有する下流の打撃モジュールの生産に非常に適している。このモジュールは、装備されているブリッジであることができる。磁気駆動には、小さな厚みのリングのみしか必要としないコンパクトな形態を実現できるという利点があり、このことによって、ゴングのために腕時計の内部でより大きなスペースを確保して、ユーザーに提供される音楽のスペクトルを豊かにすることができる。