特許第6158989号(P6158989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6158989
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】小水力発電装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/04 20060101AFI20170626BHJP
   F03B 17/06 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   E02B9/04 A
   F03B17/06
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-110535(P2016-110535)
(22)【出願日】2016年6月2日
【審査請求日】2016年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501467810
【氏名又は名称】株式会社マルヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161975
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 恵太
(72)【発明者】
【氏名】松井 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大治
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−143571(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/060504(WO,A2)
【文献】 特開2015−101838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/00−9/06
F03B 13/00−13/26
F03B 17/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が流れる通路の行き先を上下に分岐する分岐部と、前記分岐部により前記通路の行き先が上側に分かれて先端が開放された第1放水口を含む上水路と、前記分岐部により下側に分かれて先端が開放された第2放水口を含む下水路と、前記第1放水口及び前記第2放水口の下方に位置して前記第1放水口及び前記第2放水口から放水された水が合流する合流部と、を有する水路部と、
前記第1放水口に隣接して前記第1放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第1軸線回りに前記第1放水口からの水流により回転する第1水車と、前記第1水車の少なくとも一部を覆い、前記第1放水口からの水流を前記合流部に導く第1カバーと、を有して前記第1水車の回転により発電する第1発電部と、
前記第2放水口に隣接して前記第2放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第2軸線回りに前記第2放水口からの水流により回転する第2水車と、前記第2水車の上部を覆うとともに前記第2放水口からの水流を前記合流部に導く第2カバーと、を有して前記第2水車の回転により発電する第2発電部と、
を備え、
前記第1放水口からの水流が前記第1カバーによって前記合流部に導かれる経路上から外れて前記第2カバーが位置することを特徴とする小水力発電装置。
【請求項2】
前記第1カバーは、前記第1水車を回転させた前記第1放水口からの水流を前記第1水車の下側に導き、
前記下水路は、前記上水路の直下において前記上水路に沿って前記上水路の途中まで延び、
前記第2カバーは、前記上水路の直下に位置する請求項1に記載の小水力発電装置。
【請求項3】
前記上水路は、第1上水路であり、
前記水路部は、前記分岐部により前記通路の行き先が上側に分かれて先端が開放された第3放水口を含み、前記第1上水路の横側において前記第1上水路に沿って前記第1上水路の途中まで延びる第2上水路を有し、
前記第3放水口に隣接して前記第3放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第3軸線回りに前記第3放水口からの水流により回転する第3水車と、前記第3水車の少なくとも一部を覆い、前記第3放水口からの水流を前記合流部に導く第3カバーと、を有して前記第3水車の回転により発電する第3発電部を備え、
前記第3水車及び前記第3カバーは、前記第1上水路の横側に位置し、
前記第3放水口からの水流が前記第3カバーによって前記合流部に導かれる経路上から外れて前記第2カバーが位置する請求項1又は2に記載の小水力発電装置。
【請求項4】
前記下水路は、第1下水路であり、
前記水路部は、前記分岐部により前記通路の行き先が下側に分かれて先端が開放された第4放水口を含み、前記第1下水路の横側において前記第1下水路に沿って延びて前記第1下水路より突出する第2下水路を有し、
前記第4放水口に隣接して前記第4放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第4軸線回りに前記第4放水口からの水流により回転する第4水車と、前記第4水車の上部覆うとともに前記第4放水口からの水流を前記合流部に導く第4カバーと、を有して前記第4水車の回転により発電する第4発電部を備え、
前記第2水車及び前記第2カバーは、前記第2下水路の横側に位置し、
前記第1カバー及び前記第3カバーにより前記合流部に導かれる水流の経路上から外れて前記第2下水路と前記第4カバーが位置する請求項3に記載の小水力発電装置。
【請求項5】
前記第1上水路及び前記第2上水路並びに前記第1下水路及び前記第2下水路は、それぞれ直線状に形成される請求項4に記載の小水力発電装置。
【請求項6】
前記第1発電部は、前記第1軸線に沿って延びるとともに前記第1水車の回転に対応して回転する第1回転軸と、前記第1回転軸の回転に対応して発電をする第1本体部を有し、
前記第2発電部は、前記第2軸線に沿って延びるとともに前記第2水車の回転に対応して回転する第2回転軸と、前記第2回転軸の回転に対応して発電をする第2本体部を有し、
前記第3発電部は、前記第3軸線に沿って延びるとともに前記第3水車の回転に対応して回転する第3回転軸と、前記第3回転軸の回転に対応して発電をする第3本体部を有し、
前記第4発電部は、前記第4軸線に沿って延びるとともに前記第4水車の回転に対応して回転する第4回転軸と、前記第4回転軸の回転に対応して発電をする第4本体部を有し、
前記第1軸線、前記第2軸線、前記第3軸線及び前記第4軸線は、互いに平行であり、
前記第1軸線及び前記第3軸線は同一平面である第1平面上に位置し、前記第2軸線及び前記第4軸線は、前記第1平面上と異なる同一平面上に位置し、
前記第2軸線の直上に前記第3軸線が位置し、かつ、前記第4軸線の直上に前記第1軸線が位置する請求項4又は5に記載の小水力発電装置。
【請求項7】
前記第1発電部、前記第2発電部、前記第3発電部及び前記第4発電部は、マイクロ水力発電機である請求項4ないし6のいずれか1項に記載の小水力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、小河川、用水路などを流れる水流を利用して小規模な水力発電を行う小水力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、農地の水路を複数に分岐させ、分岐させた各水路に水車を設けることで、効率よく発電を行う小規模な水力発電装置(小水力発電装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−257127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の小水力発電装置では、分岐させた各水路に設けた水車の出力軸が共通であるため、共通の出力軸に故障が生じると各水路に水が流れても発電が行われない。このような故障は、小規模な発電を行う小水力発電装置では致命的となる。また、小水力発電装置を山間部などに設置する場合には、小水力発電装置の設置スペースが限られるため、特許文献1のように複数の水路を並列に広げる以外にも上下の空間も効果的に活用することが望ましい。
【0005】
本発明の課題は、発電が停止する危険性を低減させるとともに、上下の空間を利用して発電を行う小水力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
本発明の小水力発電装置は、
水が流れる通路の行き先を上下に分岐する分岐部と、分岐部により通路の行き先が上側に分かれて先端が開放された第1放水口を含む上水路と、分岐部により下側に分かれて先端が開放された第2放水口を含む下水路と、第1放水口及び第2放水口の下方に位置して第1放水口及び第2放水口から放水された水が合流する合流部と、を有する水路部と、
第1放水口に隣接して第1放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第1軸線回りに第1放水口からの水流により回転する第1水車と、第1水車の少なくとも一部を覆い、第1放水口からの水流を合流部に導く第1カバーと、を有して第1水車の回転により発電する第1発電部と、
第2放水口に隣接して第2放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第2軸線回りに第2放水口からの水流により回転する第2水車と、第2水車の上部を覆うとともに第2放水口からの水流を合流部に導く第2カバーと、を有して第2水車の回転により発電する第2発電部と、
を備え、
第1放水口からの水流が第1カバーによって合流部に導かれる経路上から外れて第2カバーが位置することを特徴とする。
【0007】
本発明の小水力発電装置は、水が流れる通路を上水路と下水路に分岐し、上水路に第1発電部を設ける一方で下水路には第2発電部を設けることで、一方の発電部が故障しても他方の発電部により発電を行うことができる。よって、発電が完全に停止する危険性を低減させることができる。また、第1カバーにより上水路からの水流が合流部に導かれる経路上から外れて第2カバーが位置することで、上水路からの水流が第2カバーに直撃するのが回避され、第2カバーを有する第2発電部の耐久性が高まる。それ故、第2発電部が故障する危険性を低減させることができる。更に、上水路の第1放水口に隣接して第1水車が位置するとともに、下水路の第2放水口に隣接して第2水車が位置することで、水路と水車がそれぞれ上下に配置され、上下の空間を利用して発電を行うことが可能となる。
【0008】
本発明の実施態様では、
第1カバーは、第1水車を回転させた第1放水口からの水流を第1水車の下側に導き、
下水路は、上水路の直下において上水路に沿って上水路の途中まで延び、
第2カバーは、上水路の直下に位置する。
【0009】
これによれば、上水路の直下の空間に下水路及び第2カバーが位置するため、上水路の直下の空間を有効に活用できるとともに、第1放水口からの水流が第2カバーに直撃するのを回避できる。
【0010】
本発明の実施態様では、
前記上水路は、第1上水路であり、
水路部は、分岐部により通路の行き先が上側に分かれて先端が開放された第3放水口を含み、第1上水路の横側において第1上水路に沿って第1上水路の途中まで延びる第2上水路を有し、
第3放水口に隣接して第3放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第3軸線回りに第3放水口からの水流により回転する第3水車と、第3水車の少なくとも一部を覆い、第3放水口からの水流を合流部に導く第3カバーと、を有して第3水車の回転により発電する第3発電部を備え、
第3水車及び第3カバーは、第1上水路の横側に位置し、
第3放水口からの水流が第3カバーによって合流部に導かれる経路上から外れて第2カバーが位置する。
【0011】
これによれば、第1上水路の横側の空間に第2上水路、第3水車及び第3カバーが位置するため、第1上水路の横側の空間を有効に活用できるとともに、第3放水口からの水流が第2カバーに直撃するのを回避できる。
【0012】
本発明の実施態様では、
前記下水路は、第1下水路であり、
水路部は、分岐部により通路の行き先が下側に分かれて先端が開放された第4放水口を含み、第1下水路の横側において第1下水路に沿って延びて第1下水路より突出する第2下水路を有し、
第4放水口に隣接して第4放水口から水が流れる方向に交差する方向に平行な第4軸線回りに第4放水口からの水流により回転する第4水車と、第4水車の上部覆うとともに第4放水口からの水流を合流部に導く第4カバーと、を有して第4水車の回転により発電する第4発電部を備え、
第2水車及び第2カバーは、第2下水路の横側に位置し、
第1カバー及び第3カバーにより合流部に導かれる水流の経路上から外れて第2下水路と第4カバーが位置する。
【0013】
これによれば、第2下水路の横側の空間に第1下水路、第2水車及び第2カバーが位置するため、第2下水路の横側の空間を有効に活用できるとともに、第1放水口及び第3放水口からの水流が第2下水路及び第4カバーに直撃するのを回避できる。
【0014】
本発明の実施態様では、
第1上水路及び第2上水路並びに第1下水路及び第2下水路は、それぞれ直線状に形成される。
【0015】
これによれば、第1上水路及び第2上水路並びに第1下水路及び第2下水路を流れる水の勢いが大きく妨げられず、発電効率を高めることが可能となる。
【0016】
本発明の実施態様では、
第1発電部は、第1軸線に沿って延びるとともに第1水車の回転に対応して回転する第1回転軸と、第1回転軸の回転に対応して発電をする第1本体部を有し、
第2発電部は、第2軸線に沿って延びるとともに第2水車の回転に対応して回転する第2回転軸と、第2回転軸の回転に対応して発電をする第2本体部を有し、
第3発電部は、第3軸線に沿って延びるとともに第3水車の回転に対応して回転する第3回転軸と、第3回転軸の回転に対応して発電をする第3本体部を有し、
第4発電部は、第4軸線に沿って延びるとともに第4水車の回転に対応して回転する第4回転軸と、第4回転軸の回転に対応して発電をする第4本体部を有し、
第1軸線、第2軸線、第3軸線及び第4軸線は、互いに平行であり、
第1軸線及び第3軸線は同一平面である第1平面上に位置し、第2軸線及び第4軸線は、第1平面上と異なる同一平面上に位置し、
第2軸線の直上に第3軸線が位置し、かつ、第4軸線の直上に第1軸線が位置する。
【0017】
これによれば、空間を有効に活用して各水路及び各発電部をコンパクトに配置することが可能となる。
【0018】
本発明の実施態様では、
第1発電部、第2発電部、第3発電部及び第4発電部は、マイクロ水力発電機である。
【0019】
これによれば、出力が小さいマイクロ水力発電機を用いても各マイクロ水力発電機の出力を複合することで、比較的大きな出力を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一例の小水力発電機装置の設置例を示す模式図。
図2図1の小水力発電装置の模式正面図。
図3図2の小水力発電装置の第1及び第2上水路と第1及び第2上水路に対応して配置された発電機との位置関係を示す模式平面図。
図4図2の小水力発電装置の第1及び第2下水路と第1及び第2下水路に対応して配置された発電機との位置関係を示す模式平面図。
図5図2の小水力発電装置の4つの発電機における水車とカバー並びに第2上水路と第2下水路の位置関係を示す模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すように本発明の一例の小水力発電装置(以下、「発電装置1」とする。)は、例えば、山岳地帯において標高の高い場所から標高の低い場所に向けて水が流れるように配置された水路2を利用して発電を行う。水路2は、上流から下流に向けて水が流れる管状の主水路2aと、主水路2aから分岐する導水管2bを有する。導水管2bは、主水路2aの上流側に接続する一端と発電装置1に接続する他端を有し、主水路2aからの水を発電装置1に導く。発電装置1に導かれた水流は発電装置1で発電に利用され、主水路2aの下流側で合流する。
【0022】
図2及び図3に示すように発電装置1は、導水管2b(図3参照)に繋がる接続水路3と、接続水路3に繋がって接続水路3の行き先を分岐する分岐水路4と、分岐水路4に接続する複数の主水路5と、主水路5の水流で発電する発電機6と、複数の主水路5の水流が合流する合流水路7(図2参照)と、を備える。
【0023】
接続水路3は管状であり、図3に示すように一端が導水管2bに連なるように通じるとともに、他端が分岐水路4に接続する。接続水路3は、導水管2bから接続水路3を経由して分岐水路4に流れる水の通路を開閉可能な止水弁3a(図2参照)を有する。止水弁3aを閉じると、導水管2bから分岐水路4に流れる水が遮断される。止水弁3aを開くと、導水管2bから分岐水路4に水が流通可能となる。
【0024】
分岐水路4は、4つ股の管状に形成され、4つ股のもとが接続水路3に連なるように通じる一方で、4つに分かれた先の先端が、それぞれ各主水路5に接続する。分岐水路4は、接続水路3を通過して下流に流れる水の行き先を上下に分岐する。図3及び図4に示すように分岐水路4は、接続水路3を通過して下流に流れる水の行き先を上段の2つの行き先(図3)と下段の2つの行き先(図4)の計4つの行き先に分岐させる。
【0025】
分岐水路4により分岐された水流は、主水路5に到達する。主水路5は、図3に示すように分岐水路4から上側に分かれた水路である第1上水路5a及び第2上水路5bと、図4に示すように分岐水路4から下側に分かれた水路である第1下水路5c及び第2下水路5dを有する。第1及び第2上水路5a、5b並びに第1及び第2下水路5c、5dは、それぞれ直線の管状に形成され、管状の一端が分岐水路4の4つに分かれた、それぞれの端に連なるように通じるとともに、管状の他端には開放された開口Oが位置する。開口Oは、分岐水路4からそれぞれの水路(第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c、第2下水路5d)に流入した水を放出する放水口である。これらの水路の位置関係は、第1上水路5aを基準にすると、図3の第2上水路5bは、第1上水路5aの真横(図3の上側)で第1上水路5aの途中まで延びる。そして、図2の第1下水路5cは、第1上水路5aの直下において第1上水路5aに沿って第1上水路5aの途中まで延びる。また、図4の第2下水路5dは、第1下水路5cの真横(図4の上側)で第1下水路5cに沿って延びて第1下水路5cより突出する。第2下水路5dの直上には、第1及び第2上水路5a、5bは位置せず、図5に示すように平面視において、第2下水路5dは、第2上水路5bの横側に位置する。なお、第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c、第2下水路5dは、管状の水路の内径と外径が同一であるとともに、図3図4に示すように第1上水路5aと第2下水路5dの長さが同じとなり、第2上水路5bと第1下水路5cの長さが同じとなる。
【0026】
図3及び図4に示すように第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c、第2下水路5dのそれぞれの開口Oから放水される水流を利用して発電機6が発電を行う。発電機6は、第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c及び第2下水路5dのそれぞれの開口Oに対して個別に設けられる。発電機6は、それぞれの開口Oに隣接して設けられる。発電機6は、開口Oからの水流により回転する水車6aと、水車6aの一部を覆い水車6aを回転させる水流を導くカバー6bと、水車6aの回転に対応して回転する回転軸6cと、回転軸6bの回転に応じて発電する本体部6dを有する。水車6aは、各水路(第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c、第2下水路5d)に直交する方向に平行な軸線Lを回転軸として、開口Oから放出される水流により軸線L回りに回転する。カバー6bは、図2に示すように水車6aの上部から水車6aの側面に沿って略C字状に水車6aを覆うとともに、水車6aを回転させる開口Oから放水される水流を水車6aの下側に導くガイドとしての機能を有する。開口Oから放水される水流がカバー6bにより水車6aが回転するように案内され、水車6aの回転に応じて図3及び図4の回転軸6cが回転し、回転軸6cを通じて本体部6dが発電を行う。なお、水車6aを回転させた水流は、カバー6bによって水車6aの下側(例えば、水車6aの真下)に導かれる。発電機6としては、発電出力が100kW以下(例えば、5kW)となるマイクロ水力発電機が採用され、それぞれの開口Oに対して同一のマイクロ水力発電機が設置される。各マイクロ水力発電機により生じた電力は、例えば、パワーコンディショナーなどに入力され、4つの電力が複合される。
【0027】
発電機6の水車6aを回転させた水流は、カバー6bにより図2に示す合流水路7に導かれる。合流水路7は、第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c、第2下水路5dのそれぞれの開口Oの下方に位置して、各開口Oから放出された水が流れ込む。また、合流水路7は図1に示す主水路2aの下流側に連なるように通じ、図2の各開口Oから放水された水が合流水路7で合流し、合流した水が主水路2aを流れる水に合流する。
【0028】
以上、発電装置1の主要な各部について説明した。次に、図1の主水路2aを流れる水が導水管2bにより発電装置1に導かれて発電が行われる過程を説明する。発電装置1により発電を行う際は、主水路2aを流れる水流が導水管2bにより図2の接続水路3に導かれる。接続水路3では、例えば、発電機6のメンテナンス等をする場合は、止水弁3aが閉じられ、分岐水路4に流れる水流が遮断されるが、通常時には止水弁3aが開かれ、接続水路3を経由して分岐水路4に水が流れる。分岐水路4に水が流れると、第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c及び第2下水路5dの各水路に水が流入し、各水路の開口Oから水平方向に水が放水される。この放水される方向は、例えば、軸線Lに直交する方向であり、放水される水により水車6aが軸線L回りに回転し、発電が行われる。このような発電が、第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c及び第2下水路5dの開口Oに個別に設けられた発電機6で行われ、各発電機6の発電出力がパワーコンディショナーで複合される。水車6aを回転させた水流は、水車6aを覆うカバー6bにより水車6aの上部から水車6aの側面に略C字状に沿うようにして水車6aの真下に導かれ、他の発電機6のカバー6bに直撃することなく、そのまま合流水路7に導かれる。合流水路7では、第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c及び第2下水路5dの各開口Oから放水されて水車6aを回転させた水流が流れ込み、合流水路7に流れ込んだ水流が図1の主水路2aを流れる水流に合流する。
【0029】
発電装置1は、図2に示すように水が流れる通路を第1及び第2上水路5a、5bと第1下水路5c、5dに分岐させ、これらの水路の開口Oに個別に発電機6を設ける。よって、1つの発電機6が故障しても他の発電機6で発電ができ、発電が完全に停止してしまう危険性を低減させることができる。また、第1及び第2上水路5a、5bの開口Oから放出されて水車6aを回転させた水流がカバー6bにより水車6aの真下に落下する。図5に示すように各水車6aの位置が互いにずれて配置されるため、開口Oからの水流が発電機6のカバー6bに直撃するのが回避される。よって、発電機6が故障する危険性を低減させることができる。また、このように複数の発電機6が上下に配置することで、上下の空間を利用して発電を行うことができる。
【0030】
図2に示すように第1上水路5aの直下の空間には、第1下水路5cと、第1下水路5cに隣接する発電機6の水車6a及びカバー6bが位置するため、第1上水路5aの直下の空間を有効活用できる。更に、図3に示すように第1上水路5aの真横(図3の上側)の空間に第2上水路5bと、第2上水路5bに隣接する発電機6の水車6a及びカバー6bが位置するため、第1上水路5aの真横の空間を有効活用できる。
【0031】
一方、図4に示すように第2下水路5dの真横(図4の下側)の空間に第1下水路5cと、第1下水路5cに隣接する発電機6の水車6a及びカバー5bが位置するため、第2下水路5dの真横の空間を有効活用できる。図5に示すように平面視で各発電機6の水車6aの位置が重ならないように配置されるため、上側に位置する水車6aから真下に流れ落ちる水流が他の水車6aの上部を覆うカバー6に直撃しない。
【0032】
また、図3及び図4に示すように第1上水路5a、第2上水路5b、第1下水路5c、第2下水路5dは、それぞれ直線状に形成されることで、各水路で水の勢いが大きく妨げられず、発電効率を高めることができる。
【0033】
図3及び図4に示すように発電機6は、水車6aの回転軸となる軸線Lに沿って延びる回転軸6cを有し、図2に示すように各発電機6の軸線Lは互いに平行に位置する。そして、第1上水路5aに隣接する発電機6の軸線L1と、第2上水路5bに隣接する発電機6の軸線L2が同一平面上に位置し、第1下水路5cに隣接する発電機6の軸線L3と、第2下水路5dに隣接する発電機6の軸線L4が同一平面上に位置する。更に、軸線L4の直上に軸線L1が位置し、軸線L3の直上に軸線L2が位置する。よって、主水路5及び発電機6をコンパクトに配置することが可能となり、上下左右の空間を有効に活用することができる。
【0034】
なお、発電機6にマイクロ水力発電機を用いて、各発電機6で得られる発電出力をパワーコンディショナーにより複合することで、出力が小さいマイクロ水力発電機を用いる場合でも比較的大きな出力を確保できる。
【0035】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。
【符号の説明】
【0036】
1 発電装置(小水力発電装置) 2 水路
3 接続水路 4 分岐水路
5 主水路 5a 第1上水路
5b 第2上水路 5c 第1下水路
5d 第2下水路 6 発電機
6a 水車 6b カバー
6c 回転軸 6d 本体部
7 合流水路(合流部) L 軸線
O 開口(放水口)
【要約】
【課題】発電が停止する危険性を低減させるとともに、上下の空間を利用して発電を行う小水力発電装置を提供する。
【解決手段】発電装置1は、水路部と、発電機6と、を備える。水路部は、分岐水路4と、主水路5と、合流水路7を有する。分岐水路4は、水が流れる通路の行き先を上下に分岐する。主水路5は、分岐水路4により通路の行き先が上下に分かれて先端が開放された開口Oを含む。合流水路7は、開口Oの下方に位置して開口Oから放水された水が合流する。発電機6は、主水路5の開口Oに隣接して開口Oからの水流により軸線L回りに回転する水車6aと、水車6aの少なくとも一部を覆い開口Oの水流を合流水路7に導くカバー6bを有する。分岐水路4により上下に分かれた主水路5の上側の水路の開口Oからの水流が合流経路7に導かれる経路上から外れて下側の水路の開口Oに隣接する発電機6のカバー6bが位置する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5