(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のルーフ(3)に形成されたルーフ開口(4)を開閉自在に閉鎖するパネル(6)を備え、このパネル(6)の左右方向端部側の下方に、該パネル(6)に取り付けられたリフタ(28)と、前後移動自在なスライダ(30)とを備え、
前記パネル(6)が全閉状態にある状態でスライダ(30)を後方移動させることにより、該スライダ(30)がリフタ(28)の前部に設けられた昇降係合部(36)に係合してパネル(6)後部をチルトアップさせた後に該パネル(6)が後方移動するように構成したサンルーフ装置であって、
前記パネル(6)を全開させたときの前記リフタ(28)と前記スライダ(30)との上下間には、前記昇降係合部(36)の後部で後方へ向けて開口して前記ルーフ開口(4)の後縁(4a)より後方のルーフ(3)を挟み込む上下無連結区間が形成されており、
前記スライダ(30)には、前記上下無連結区間内の前部であって且つ前記昇降係合部(36)より後部となる配置で、前記パネル(6)の閉鎖へ向けた前進により前記リフタ(28)に設けられた被引込係合部(52)と係合して当該パネル(6)をチルトダウンさせる引込係合部(51)が設けられ、
前記リフタ(28)の後端部には、前記パネル(6)の全閉時に、前記スライダ(30)に設けられた浮上規制部(57)と係合して前記パネル(6)後端の浮き上がりを規制する被浮上規制部(58)が設けられていることを特徴とするサンルーフ装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1はサンルーフ装置2を備えた車両1の平面図を示しており、該車両1のルーフ3の前部側には矩形状のルーフ開口4が形成され、該ルーフ開口4は前後のパネル6,7によって閉鎖されている。
車両1のルーフ3は左右方向及び前後方向において上方に凸となる緩やかな湾曲状に形
成され、前後のパネル6,7もルーフの湾曲形状に対応して湾曲状に形成されている。
【0016】
本実施形態において、前後・左右・上下は運転席に着座した運転者から見た方向に従う。また、左右方向内方とは車両1の左右方向の端部から左右方向中央部に向かう方向をいい、左右方向外方とは車両1の左右方向中央部から左右方向の端部に向かう方向をいう。したがって、車両1の左右方向の側部に設けられている部材において、左右方向内側とは車両1の左右方向中央側をいい、左右方向外側とは車両1の左右方向中央側とは反対側をいう。
【0017】
図1、
図2に示すように、サンルーフ装置2は、ルーフ開口4の前部を開閉自在に閉鎖する前側のパネル6(フロントパネルという)と、ルーフ開口4の後部を開閉自在に閉鎖する後側のパネル7(リヤパネルという)と、ルーフ3の下面側に取付固定されたフレーム8と、フロントパネル6を開閉作動させるパネル作動装置9(フロントパネル作動装置という)と、リヤパネル7を開閉作動させるパネル作動装置10(リヤパネル作動装置という)と、これらパネル作動装置9,10を駆動する駆動モータ11と、この駆動モータ11の動力を前後のパネル作動装置9,10に伝達する駆動ケーブル12とを備えている。
【0018】
このサンルーフ装置2は、1つの駆動モータ11によって、フロントパネル作動装置9(フロントパネル6)とリヤパネル作動装置10(リヤパネル7)とを駆動するタイプのサンルーフ装置2である。
図1に示すように、フレーム8は、前後方向に延びる左右一対のガイドレール13と、左右ガイドレール13の前端側を連結する前枠材14と、左右ガイドレール13の前後方向中間部を連結する後枠材15とを備えており、前後枠材14,15間で且つ左右ガイドレール13間がフレーム開口16(サンルーフ装置2の室内側の開口)とされている。
【0019】
左右のガイドレール13の前部はルーフ開口4の左右側縁部の下方に位置し、前枠材14はルーフ開口4の前縁部の下方に位置し、後枠材15はルーフ開口4の後縁部の下方に位置している。したがって、フレーム開口16は、ルーフ開口4の下方に対応する位置に位置しており、該フレーム開口16は図示省略のサンシェードによって開閉自在とされる。
【0020】
駆動モータ11は前枠材14に取り付けられ、該駆動モータ11の近傍には、該駆動モータ11によって回転駆動される駆動ギヤ17が設けられ、この駆動ギヤ17に前記駆動ケーブル12が咬み合っており、駆動モータ11によって駆動ギヤ17を回転駆動することにより、駆動ケーブル12が長手方向に押し引きされるよう構成されている。
フロントパネル作動装置9とリヤパネル作動装置10は左右一対設けられ、フロントパネル作動装置9はフロントパネル6の左右の端部側(側縁部側)の下方に配置され(フロントパネル6とガイドレール13との間に設けられ)、リヤパネル作動装置10はリヤパネル7の左右の端部側(側縁部側)の下方に配置されている(リヤパネル7とガイドレール13との間に設けられている)。
【0021】
また、駆動ケーブル12も左右のフロント、リヤのパネル作動装置9,10に対応して一対設けられている。
前記ガイドレール13は押出形材によって上方に凸となる緩やかな湾曲状に形成されており、
図12に示すように、パネルガイド部18と、このパネルガイド部18の左右方向内側方に設けられたサンシェードガイド部19と、パネルガイド部18の左右方向外側方に設けられた樋部21とを有する。
【0022】
パネルガイド部18には、ガイドレール13の底壁22上面を摺動面とした左右方向内外一対の第1、第2スライドガイド溝23A,23Bと、第2スライドガイド溝23Bの上方に位置する第3スライドガイド溝23Cと、第1スライドガイド溝23Aの上方に位置するタイミングガイド溝24と、第1スライドガイド溝23Bの左右方向外側方に位置するケーブルガイド溝25と、タイミングガイド溝24の上方に位置する補助溝26とがガイドレール13の長手方向に沿って形成されている。
【0023】
第1スライドガイド溝23Aは左右方向外方に向けて開口するコ字形に形成され、第2スライドガイド溝23B及び第3スライドガイド溝23Cは左右方向内方に向けて開口す
るコ字形に形成され、第1、第2スライドガイド溝23A,23Bは左右方向で対向状とされている。また、パネルガイド部18の第1、第2スライドガイド溝23A,23Bの間は上方開放状とされている。
【0024】
タイミングガイド溝24及び補助溝26は左右方向外方に向けて開口するコ字形に形成され、第3スライドガイド溝23Cとタイミングガイド溝24とは左右方向で対向状とされている。
ケーブルガイド溝25は第2スライドガイド溝23Bに連通していると共に前方から駆動ケーブル12が挿入されている。
【0025】
フロントパネル作動装置9は、フロントパネル6をチルトアップ、チルトダウン(昇降)及びチルトアップ状態で前後移動させるものであり、
図4〜
図7に示すように、フロントパネル作動装置9は、リフタ28(フロントリフタという)とスライダ30(フロントスライダという)とを有する。
フロントリフタ28は、フロントパネル6の略前端部から略後端部にわたる長さに形成されていて、フロントパネル6の左右方向の端部側(側縁側)の下方に配置されている。
【0026】
また、
図12(a)に示すように、フロントリフタ28は、パネルガイド部18の第1、第2スライドガイド溝23A,23Bの間で前後移動可能に配置されている。また、フロントリフタ28は、フロントパネル6の側縁側の下面側に固定された取付ブラケット31にボルト29等を介して取り付けられている。
図8等に示すように、この取付ブラケット31に取り付けられる取付部分27は、フロントリフタ28に前後2カ所設けられている。また、
図12(a)に示すように、前記取付ブラケット31に形成されたボルト挿通孔35は上下方向に長い長孔に形成されていて、フロントパネル6の上下位置が調整可能(高さ調整可能)とされている。
【0027】
図5、
図6、
図8に示すように、このフロントリフタ28の前端側にはフロントブラケット32が枢軸33を介して左右軸回りに回動自在に枢支連結され、このフロントブラケット32の左右両側には、第1、第2の各スライドガイド溝23に長手方向摺動自在に嵌合されたスライドシュー34が取り付けられている。
また、フロントリフタ28の前部には、チルトガイド溝36(昇降係合部)が左右方向貫通状に設けられている。このチルトガイド溝36は、後方に向けて下り勾配となる傾斜状に形成されている。
【0028】
フロントスライダ30は、フロントリフタ28の下方に配置されていて、ガイドレール13のパネルガイド部18に前後移動自在(長手方向移動自在)に支持され、前後移動することによりフロントパネル作動装置9を駆動してフロントパネル6を開閉作動する(前後移動することによりフロントパネル6を昇降及び前後移動させる)ものである。
このフロントスライダ30は、
図9に示すように、スライダ本体37と、このスライダ本体37の後方に配置されていて該スライダ本体37から後方に延びる延設部材38とから主構成されている。
【0029】
図9に示すように、スライダ本体37は、ガイドレール13のパネルガイド部18の第1、第2スライドガイド溝23A,23B間に配置され、底壁39と、該底壁の左右方向内外両側から立ち上がる一対の側壁40とを有する。
図12(a)に示すように、スライダ本体37の内外の側壁40間に対応する位置にフロントリフタ28が配置されている。
【0030】
このスライダ本体37の内側の側壁40の下端側には、第1、第2スライドガイド溝23A,23Bに長手方向摺動自在に嵌合したスライドシュー41が設けられ、該スライドシュー41がスライドガイド溝23A,3B内を摺動することでフロントスライダ30が前後移動自在とされている。
また、スライダ本体37の外側の側壁40の下端には、第2スライドガイド溝23B及びケーブルガイド溝25を長手方向に移動自在なケーブル固定具42が設けられ、このケーブル固定具42に駆動ケーブル12が固定されている。したがって、駆動ケーブル12が長手方向に押し引きされることによりフロントスライダ30が前後移動するよう構成されている。
【0031】
スライダ本体37の内側の側壁40の前部には、タイミング解除部43が設けられている。
図9に示すように、スライダ本体37の前部側にはフロントリフタ28を挟むように内外の側壁40から上方に延出した左右一対の延出片44が設けられ、この延出片44の上部には、該内外の延出片44を貫通すると共にフロントリフタ28のチルトガイド溝36を挿通するチルトピン45が設けられている。
【0032】
前記延設部材38の後端側の取付部46には、第3スライドガイド溝23を長手方向に摺動自在なスライドシュー47が設けられている。
前記構成のフロントパネル作動装置9にあっては、
図2(a)、
図4(a)及び
図5に示すように、フロントパネル6がルーフ開口4の前部を閉鎖したフロントパネル6の閉鎖状態において、チルトピン45はチルトガイド溝36の前端側に位置している。
【0033】
このフロントパネル6の閉鎖状態からフロントスライダ30を後方移動させると、
図2(b)、
図4(b)及び
図6に示すように、チルトピン45がチルトガイド溝36を後方に移動することにより、フロントパネル6が前後方向略同位置(ルーフ開口4の前部位置)において、フロントリフタ28前部の枢軸33を中心として後部が上昇するように(後傾状に傾くように)チルトアップ動作する。
【0034】
このとき、フロントリフタ28に設けられた図示省略のタイミング部材の係合部分がガイドレール13に設けられた係止部に係止されることにより、フロントリフタ28(フロントパネル6)の後方移動が規制されている。
その後、チルトピン45がチルトガイド溝36の後端まで移動すると、フロントパネル6が
図3に示すようなフルチルトアップ状態となる。フロントパネル6がフルチルトアップ状態となると、フロントスライダ30のタイミング解除部43が前述したタイミング部材の係合部分に係合することにより、該係合部分がガイドレール13の係止部から下方に外れてタイミングガイド溝24に入り、フロントリフタ28(フロントパネル6)が後方移動可能となる。
【0035】
フロントパネル6がフルチルトアップ状態となった状態から、フロントスライダ30をさらに後方に移動させると、フロントスライダ30がフロントリフタ28を後方に引動して、
図3に示すように、フロントパネル6がフルチルトアップ状態のまま後方移動し、ルーフ開口4を開放すると共にフロントパネル6がルーフ3の後部上方にオーバーラップする。
【0036】
このとき、リヤパネル7がフロントパネル6の後方移動に連動して下降した後、リヤパネル7の下方に潜り込むように後方移動するが、この動作については後述する。
図3及び
図7は、フロントパネル6の後方移動の途中を示している。また、
図2〜
図7において、フロントパネル6、リヤパネル7及びルーフ3は車両1の左右方向中央での断面を示している。ルーフ3は左右方向端部側は中央側よりも低い位置に位置しており、
図3及び
図7において、フロントリフタ28はルーフ3の上方に位置する。
【0037】
また、フロントパネル6がルーフ開口4を全開したフロントパネル6の全開状態からフロントスライダ30を前方移動させると、前記とは逆に、フロントパネル6はフルチルトアップ状態のまま前方移動し、ルーフ開口4の前部に対応する位置でチルトダウン(フロントパネル6の後部が下降)し、ルーフ開口4の前部を閉塞する。
前記フロントパネル作動装置9には、このフロントパネル6のチルトダウン時において該フロントパネル6を下方に引込み可能な引込み手段48と、フロントパネル6が全閉状態であるときにおける該フロントパネル6の後端側の浮き上がりを規制する浮上り規制手段49とが設けられている。
【0038】
前記引込み手段48は、
図5(a)、
図6(a)に示すように、フロントスライダ30に設けられた引込係合部51と、フロントリフタ28に設けられた被引込係合部52とから構成されている。
引込係合部51は、
図9、
図10に示すように、フロントスライダ30のスライダ本体37の後部側に設けられている。具体的には、フロントスライダ30のスライダ本体37の後部には、左右の各側壁40から上方に延出された立上り片53が設けられ、この各立
上り片53の上端側に固定されたピン形成部材54の対向内側に対向方向に突出した部分(引込みピンという)によって引込係合部51が構成されている。
【0039】
被引込係合部52は、
図8、
図10に示すように、フロントリフタ28の前部で且つチルトガイド溝36の後方側に設けられている。具体的には、フロントリフタ28の前部で且つチルトガイド溝36の後方側にカム形成部材55が固定され、このカム形成部材55の左右両側それぞれに形成されたカム溝(引込み溝という)によって被引込係合部52が構成されている。
【0040】
引込み溝52は、前後方向に長く形成され、後方に開放状に形成されていると共に、左右方向内側の引込み溝52は左右方向内方に開放状に形成され、左右方向外側の引込み溝52は左右方向外方に開放状に形成されている。
各引込み溝52の溝下面は、前部が前後方向に関してストレート状のストレート面56aに形成され、後部が後方に向かうに従って下方に移行する(前方に向けて上り勾配の)傾斜面56b(引込み傾斜面という)に形成されている。
【0041】
前記カム形成部材55(引込み溝52)は、フロントパネル6がルーフ開口4を全開したフロントパネル6の全開状態において、ルーフ開口4の後縁4aの前方近傍に位置する。
なお、引込係合部が引込み溝52で、被引込係合部が引込みピン51であってもよい。
浮上り規制手段49は、
図5(b)、
図6(b)に示すように、フロントスライダ30に設けられた浮上規制部57と、フロントリフタ28に設けられた被浮上規制部58とから構成されている。
【0042】
浮上規制部57は、
図9、
図11(a)、(b)に示すように、フロントスライダ30の後端側に設けられている。具体的には、フロントスライダ30の延設部材38の後端側の取付部46上に固定された溝形成部材59に形成された溝(シャッティング溝という)によって浮上規制部57が構成されている。
このシャッティング溝57は、前後方向に長い略ストレート状の溝に形成され、前方及び左右方向内方に開放状に形成されている。
【0043】
シャッティング溝57の前端側(被浮上規制部58の挿入側)には、前方に向かうに従って上方に移行する(後方に向けて下り勾配の)傾斜面60(引下げ傾斜面という)が設けられている。この引下げ傾斜面60は、シャッティング溝57の溝上面57aに連続するように設けられている。
被浮上規制部58は、
図8、
図11(c)に示すように、フロントリフタ28の後端側の下端側に設けられている。具体的には、フロントリフタ28の後部側下端に、該下端から左右方向外方に延びる延出壁61が設けられ、この延出壁61の後端側に左右方向外方に突出状に設けられた突出部(シャッティングピンという)によって被浮上規制部58が構成されている。
【0044】
なお、浮上規制部がシャッティングピン58で、被浮上規制部がシャッティング溝57であってもよい。
フロントパネル6がチルトダウンする際には、フロントスライダ30が前方移動すると共にフロントリフタ28が下降し、引込みピン51が引込み溝52に後方から侵入する。
そして、例えば、走行時の風圧などによってフロントパネル6の下降を妨げる力が該フロントパネル6に作用した場合に、引込みピン51が引込み溝52の引込み傾斜面56bに係合することにより、フロントリフタ28を下方に引き込む「引込み作用」が生じ、強制的にフロントパネル6を引き下げることができる。
【0045】
前記引込みピン51が引込み溝52の引込み傾斜面56bに係合しているときには、引下げ傾斜面60及びシャッティング溝57はシャッティングピン58の後方側に位置している。
そして、引込みピン51が引込み溝52の引込み傾斜面56bを通過して引込み溝52の前部のストレート面56aに至ると(引込み傾斜面56bによるフロントパネル6の引込み作用の終了後に)、引下げ傾斜面60がシャッティングピン58に係合することによりフロントリフタ28が下方に引き下げられ、強制的にフロントパネル6を引き下げるこ
とができる。
【0046】
フロントパネル6がルーフ開口4の前部を閉鎖する全閉状態に下降すると、引下げ傾斜面60がシャッティングピン58を通過して該シャッティングピン58がシャッティング溝57に侵入してフロントパネル6後部の浮き上がりを規制する。
前記構成のものにあっては、フロントパネル6のチルトダウン時において、フロントパネル6を下方に引込み可能な引込み溝52(被引込係合部52)をフロントリフタ28の後端に設けると、フロントパネル6を全開させる際において引込み溝52とルーフ3との干渉を避けなければならないことからサンルーフ装置1の上下方向の総厚を薄くするのに妨げとなるが、本実施形態では、引込み溝52をフロントリフタ28の前部に設けたので、フロントパネル6を全開させる際における引込み溝52とルーフ3との干渉を考慮する必要がなく、チルトアップ時におけるフロントパネル6後部の高さ(フロントリフタ28後端の高さ)を低くしてサンルーフ装置1の上下方向の総厚を薄くすることができる。
【0047】
また、チルトダウン時におけるフロントパネル6の引込みをフロントリフタ28の前部だけで行うようにすると、フロントパネル6の全閉時におけるフロントパネル6後端側の浮上り規制があまくなるが、本実施形態では、フロントスライダ30に設けたシャッティングピン58に係合してフロントパネル6の全閉状態におけるフロントパネル6後端の浮き上がりを規制するシャッティング溝57をフロントリフタ28の後端側に設けることにより、フロントパネル6後端の浮き上がり規制機能を確保することができる。
【0048】
しかも、フロントパネル6の全閉状態において、チルトガイド溝36とチルトピン45との係合部分、引込みピン51と引込み溝52との係合部分、シャッティング溝57とシャッティングピン58との係合部分の前後方向3箇所でフロントパネル6を支持するので、フロントパネル6の全閉状態における支持剛性が向上する。
また、フロントパネル6のチルトダウン時の引き下げ機能を、前部の引込み傾斜面56bと、後部の引下げ傾斜面60とで分担して行うようにしたことにより、引込み溝52の上下寸法を薄くでき、引込み溝52をコンパクトに形成することができる。
【0049】
リヤパネル作動装置10は、リヤパネル7を昇降及び前後移動させるものであり、
図13に示すように、リフタ61(リヤリフタという)と、タイミングリンク62と、リヤスライダ63とを有する。
リヤリフタ61は、リヤパネル7の略前端から略後端にわたる長さに形成されていて、リヤパネル7の左右方向の端部側(側縁側)の下方に配置されている。
【0050】
また、
図12(b)に示すように、リヤリフタ61は、パネルガイド部18の第1、第2スライドガイド溝23A,23Bの間に対応する位置に前後移動可能に配置されている。
また、リヤリフタ61はリヤパネル7の側縁側の下面側に固定された取付ブラケット64にボルト65等を介して取り付けられている。
【0051】
図15にも示すように、この取付ブラケット64に取り付けられる取付部分66は前後2カ所設けられている。また、
図12(b)に示すように、前記取付ブラケット64に形成されたボルト挿通孔67は上下方向に長い長孔に形成されていて、リヤパネル7の上下位置が調整可能(高さ調整可能)とされている。
このリヤリフタ61の左右方向内外両側面には、
図12(b)、
図13、
図14に示すように、前部及び後部にそれぞれリフトガイド溝68(カム溝)が形成されている。
【0052】
これらリフトガイド溝68は、前部が前後方向にストレート状に形成され、中途部から後部にかけて後方に向けて上り勾配の傾斜状に形成されている。
図13に示すように、タイミングリンク62はリヤリフタ61の後方側に配置され、前端側が枢軸69を介してリヤリフタ61の後端側に左右軸回りに回動自在に枢支連結されている。タイミングリンク62の後端側には、タイミングガイド溝24に摺動自在に嵌合したスライドシュー70が設けられて支持されている。
【0053】
タイミングリンク62の中間部にはタイミング部材71が設けられている。このリヤタイミング部材71は、タイミングリンク62の左右方向内側方に位置し、ガイドレール13に設けられた係止部に係止されることによりリヤリフタ61の前後移動を規制し、該係
止部から下方に外れることによりタイミングガイド溝24を長手方向に移動可能とされている。
【0054】
リヤスライダ63は、
図13に示すように、リヤリフタ61の前部から後部にわたる長さに形成されている。また、このリヤスライダ63は、
図12(b)に示すように、リヤリフタ6172の下方に配置され、ガイドレール13のパネルガイド部18に前後移動自在(長手方向移動自在)に支持されており、前後移動することによりリヤパネル作動装置10を駆動してリヤパネル7を開閉作動する(リヤパネル7を昇降及び前後移動させる)。
【0055】
このリヤスライダ63は、
図12(b)、
図16に示すように、底壁72と、該底壁72の左右方向内外両側から立ち上がる一対の側壁73とを有する。
このリヤスライダ63の左右方向内外の側壁73の下端側には、第1、第2スライドガイド溝23A,23Bに長手方向摺動自在に嵌合したスライドシュー74が設けられ、該スライドシュー74がスライドガイド溝23A,23B内を摺動することでリヤスライダ63が前後移動自在とされている。
【0056】
このリヤスライダ63の前部及び後部には、それぞれ左右一対の係合シュー75が設けられており、前側の係合シュー75は前側のリフトガイド溝68に摺動自在に嵌合され、後側の係合シュー75は後側のリフトガイド溝68に摺動自在に嵌合されている。
各係合シュー75は、リヤスライダ63の内外の側壁73の前部及び後部から上方に延設された取付片76の上部に取り付けられている。
【0057】
図16に示すように、リヤスライダ63の前端側には、フロントスライダ30のスライダ本体37の後端側に連結される連結部材77が設けられている。この連結部材77はフロントスライダ30のスライダ本体37に連結されるまではガイドレール13に係合してリヤスライダ63の前後移動を規制し、フロントスライダ30のスライダ本体37に連結されるとガイドレール13から外れてリヤスライダ63の前後移動を可能とする。
【0058】
前記構成のリヤパネル作動装置10にあっては、フロントパネル6をフルチルトアップ状態で後方移動して、
図13に示すフロントパネル6の後方移動途中位置でフロントスライダ30のスライダ本体37の後端側にリヤスライダ63の前端側の連結部材77が連結される。これにより、リヤスライダ63はフロントスライダ30と一体的に前後移動可能となる。
【0059】
リヤパネル7がルーフ開口4の後部を塞ぐリヤパネル7の全閉状態で、リヤスライダ63を後方移動させると、前側の係合シュー75が前側のリフトガイド溝68を後方に摺動すると共に、後側の係合シュー75が後側のリフトガイド溝68を後方に摺動することにより、
図3及び
図7に示すように、リヤパネル7の前後が下降し(リフトダウンし)、リヤパネル7がルーフ3の後部下方に侵入可能となる。
【0060】
このリヤパネル7の下降中は、タイミングリンク62の中間部のタイミング部材71がガイドレール13の係止部に係止されることによりリヤリフタ61の後方移動が規制されると共に、タイミングリンク62がリヤパネル7に連動して下降する。
そして、係合シュー75がリフトガイド溝68の後端に達してリヤパネル7のリフトダウンが完了すると、タイミング部材71が係止部から外れてタイミングガイド溝24内に入り、リヤリフタ61(リヤパネル7)の後方移動が可能となる。
【0061】
この状態からさらにフロントスライダ30及びリヤスライダ63を後方移動させると、フロントパネル6と共にリヤパネル7が後方移動して、該リヤパネル7がルーフ3の後部下方へと移動し、リヤパネル7がルーフ3の後部下方に収納され且つフロントパネル6後部がルーフ3の後部上方にオーバーラップしたサンルーフ全開状態となる。
なお、このサンルーフ全開状態からフロントスライダ30及びリヤスライダ63を前方移動させると、フロントパネル6はフルチルトアップ状態で前方移動した後、チルトダウンしてルーフ開口4の前部を閉鎖し、リヤパネル7は前方移動した後、リフトアップ(上昇)してルーフ開口4の後部を閉鎖する。
【0062】
前記リヤパネル作動装置10には、
図13に示すように、リヤパネル7のリフトダウン中に(リヤリフタ61の下降中に)、リヤリフタ61と、リヤスライダ63又はガイドレ
ール13との間に異物が挟み込むのを防止すべく、リヤリフタ61と、リヤスライダ63又はガイドレール13との間の隙間を室内側から覆うカバー部材78が設けられている。
このカバー部材78は、リヤスライダ63に取り付けられ且つリヤスライダ63に支持されている。したがって、カバー部材78はリヤスライダ63と前後方向に一体移動する。
【0063】
前記リヤスライダ63には、
図16及び
図18に示すように、カバー部材78を取り付けるためのカバー取付部79が前後方向に間隔をおいて複数設けられている。
このカバー取付部79は、
図18及び
図19に示すように、リヤスライダ63の左右方向内側の側壁73から上方側に立ち上がる立上り壁81と、この立上り壁81の上端から左右方向内方側に向けて延出された延出壁82と、立上り壁81から延出壁82にわたって形成された矩形状の開口83の左右方向内端側から左右方向外方に向けて斜め上方に延びる係止片84とから構成されている。係止片は弾性変形可能とされている。
【0064】
本実施形態では、カバー取付部79は、リヤスライダ63の前端側、後端側及び前後方向中途部の2箇所の、計4箇所設けられている。
前記カバー部材78は、
図13(b)、
図16、
図17に示すように、リヤスライダ63に取り付けられる下側カバー85と、この下側カバー85に取り付けられる上側カバー86とから主構成されている。
【0065】
下側カバー85は、金属等の剛性のある材料で形成され、
図17に示すように、前後方向に長い下カバー本体87と、リヤスライダ63に設けられたカバー取付部79に取り付けられる被取付部88と、ガイドレール13に長手方向移動自在に係合するレール係合部89とを有する。
下カバー本体87は、
図13及び
図14に示すように、リヤスライダ63に取り付けられた状態で且つリヤパネル7がリフトアップした状態において、リヤリフタ61の前端からリヤスライダ63の後端にわたる長さに形成され、リヤスライダ63の左右方向内側方に位置している。
【0066】
また、この下カバー本体87は、
図19及び
図20に示すように、リヤスライダ63に取り付けられた状態で、その下部がパネルガイド部18の補助溝26の左右方向内方側を形成する壁部26aと左右方向でオーバーラップしている。
また、この下カバー本体87には、
図18、
図19及び
図20に示すように、その上面から下方に向けて形成された保持溝90が前端から後端にかけて形成されている。
【0067】
被取付部88は、
図17に示すように、前記カバー取付部79に対応して形成され、本実施形態では、下カバー本体87の前部、後端側及び前後方向中途部の2箇所の計4箇所に設けられている。
この被取付部88は、下カバー本体87の上端から左右方向外方に延出する上壁91と、該上壁91の下方に間隔をおいて配置されていて下カバー本体87から左右方向外方に延出する下壁92とを有する。
【0068】
この被取付部88の上壁91には、
図18に示すように、平面視矩形状の係止孔93が形成されている。また、該上壁91の延出端側(左右方向外端側)の下面には、
図19に示すように、左右方向外方に向けて上り勾配のガイド面94が形成されている。
被取付部88の下壁92は、
図18に示すように、上壁91より前後幅が幅広に形成され、該下壁92の前後端部から上方に縦壁95が延出されている。前後の縦壁95は、下カバー本体87の上端から左右方向外方に延設された延設壁96に接続されている。
【0069】
延設壁96は、
図17に示すように、前端の被取付部88の上壁91前方と、前後方向で隣接する被取付部88の上壁91間と、後端の被取付部88の上壁91後方に設けられている。
前記下側カバー85は、被取付部88の上下壁91,92間にリヤスライダ63のカバー取付部79の延出壁82を差し込むことにより、リヤスライダ63に取り付けられる。すなわち、カバー取付部79の延出壁82を被取付部88の上下壁91,92間に差し込む際において、カバー取付部79の係止片84は被取付部88のガイド面94に案内されて弾性変形することにより、カバー取付部79の延出壁82が被取付部88の上下壁91
,92間に差し込まれ、カバー取付部79の係止片84が被取付部88の上壁91の係止孔93に対応する位置にくると、係止片84の前記弾性変形が復元し、
図19に示すように、係止片84が被取付部88の上壁91の係止孔93の左右方向外方側の縁部に係止され、カバー取付部79の延出壁82が被取付部88の上下壁91,92間から抜止めされる。
【0070】
レール係合部89は、前端の被取付部88の前方に設けられている。このレール係合部89は、ガイドレール13の補助溝26及び該補助溝26の上面を構成する壁部26bに後方側から嵌合されて、ガイドレール13に沿って前後移動自在とされている。
また、このレール係合部89とガイドレール13との間にはガタがあり、該レール係合部89をガイドレール13に対して係合した状態において、下側カバー85は所定範囲上下及び左右に揺動自在である。
【0071】
前記上側カバー86は、ゴム、樹脂等の弾性部材によって構成され、下カバー本体87と前後方向同長さに形成されており、リヤリフタ61の左右方向内側方に位置している。
この上側カバー86は、下側カバー85の上方に位置する上カバー本体96と、下カバー本体87の保持溝90に差し込まれる下部の差込み部97とを有する。
上カバー本体96は、下カバー本体87の上面に上方から重ね合わされる底壁98と、この底壁98の左右方向内端から上方に延設された縦壁99とを有する。
【0072】
差込み部97は、上カバー本体96の左右方向中央部から下方に延出された差込み基部100と、この差込み基部100の左右両面に斜め上方傾斜状に形成された抜止め部101とからなる。
前記構成のカバー部材78にあっては、リヤリフタ61と、リヤスライダ63又はガイドレール13との間の隙間を室内側から覆うカバー部材78をリヤスライダ63に取付け及び支持することにより、構造の簡素化を図ることができる。
【0073】
また、予め、カバー部材78をリヤスライダ63に組み付けておくことができ、カバー部材78をリヤスライダ63に組み付けておくことで組付けの簡素化を図ることもできる。
また、リヤパネル7にリヤリフタ61を取付固定して該リヤリフタ61をガイドレール13に組み付け且つリヤスライダ63とカバー部材78とをガイドレール13に組み付けた状態で、リヤパネル7の上下位置をルーフ3に合わせるべく、該リヤパネル7の上下位置を調整する場合、カバー部材78をリヤスライダ63に取り付けずに、リヤスライダ63のカバー取付部79からカバー部材78の被取付部88を取り外した状態にしておくことにより、リヤパネル7の上下位置調整を容易に行うことができる。
【0074】
すなわち、前述したように、レール係合部89をガイドレール13に係合した状態で、カバー部材78は所定範囲上下に揺動自在であるので、該カバー部材78を下げた状態にしておくことによりリヤパネル7の上下位置調整を容易に行うことができるのである。
また、カバー部材78はレール係合部89をガイドレール13に係合した状態で所定範囲左右に揺動自在であるので、レール係合部89をガイドレール13に係合した状態であっても、カバー部材78をリヤスライダ63に対して左右方向内方から近接する方向に移動させて、被取付部88の上下壁91,92間にカバー取付部79の延出壁82が差し込まれるように、被取付部88をカバー取付部79に嵌合することにより、リヤスライダ63にカバー部材78を取り付けることができる。
【0075】
また、カバー部材78がガイドレール13に支持されるという構造ではないので、カバー部材78の左右方向及び高さ方向のレイアウトを自由に採れると共に、ガイドレール13にカバー部材78をガイドする専用のガイド部が必要でないので、ガイドレール13の左右幅が広くなることがなく、サンルーフ装置1の室内側の開口を損なうこともない。
なお、上側カバー86と下側カバー85とを、金属又は樹脂等で且つ同材料によって一体形成したものであってもよい。また、カバー部材78の下側カバー85にレール係合部89を設けなくてもよい。