(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159061
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ピン付き装飾体のための止め具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A44C 7/00 20060101AFI20170626BHJP
A44B 9/08 20060101ALI20170626BHJP
A44B 1/34 20060101ALI20170626BHJP
A44B 1/18 20060101ALI20170626BHJP
A44B 99/00 20100101ALI20170626BHJP
【FI】
A44C7/00 B
A44B9/08 E
A44B1/34
A44B1/18 D
A44B99/00 601Q
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-161066(P2012-161066)
(22)【出願日】2012年7月20日
(65)【公開番号】特開2014-18496(P2014-18496A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】506218712
【氏名又は名称】菊永 英里
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(72)【発明者】
【氏名】菊永 英里
【審査官】
栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭38−025008(JP,Y1)
【文献】
国際公開第2010/032707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 1/00
A44C 7/00
A44B 1/18
A44B 1/34
A44B 9/08
A44B 9/10
A44B 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾体が備えるピンを挿通するピン通孔が設けられると共に、該ピン通孔との正対位置に開口部が設けられたハウジングと、
該ハウジング内に配設され、前記ピン通孔から挿通されたピンを複数個の小球体の各球面間で挟持保持するピン保持部と、
該ピン保持部に支柱部を介して前記開口部外に連設され、前記ピン通孔から前記ピン保持部を後退させることにより前記ピンの挟持保持の解除動作を前記ハウジング外から行う操作レバー体と、
前記ハウジング内の前記支柱部の外周に配設され、前記ピン保持部及び前記操作レバー体を、前記ピン通孔方向に付勢するコイルスプリングと、
を有して成り、
前記ピン保持部の小球体によるピンの挟持保持が、前記ピン保持部の前記ピン通孔側への付勢によって各小球体がピン方向に押され、該各小球体のピン側の球面の一部がピンに押圧状態で当接することによって行われ、
前記ピン保持部の挟持保持の解除動作が、前記ピン保持部の前記ピン通孔からの後退によって各小球体によるピンへの押圧力が解除されることによって行われる構成である、
ピン付き装飾体のための止め具において、
前記支柱部が、
前記ピン保持部の後退方向側に前記ピン保持部と一体的に形成されると共に、内部にピン挿通方向と同方向の貫通孔を有する筒状体である外支柱部と、
前記外支柱部の内部の貫通孔に挿通固定され、前記操作レバー体の付勢方向側に前記操作レバー体と一体的に形成されると共に、前記ピン通孔から挿通されたピンの導入路となる貫通孔を有する筒状体である内支柱部と、
を有して構成されており、前記ハウジングが、前記ピン通孔側を構成する一側ケース部と、前記開口部側を構成する他側ケース部と、を有して成り、前記外支柱部に対する内支柱部の挿通固定が圧入固定であり、前記ピン保持部の外周面と該外周面と相対向する前記ハウジングの一側ケース部の内周面との間に、前記ピン通孔側の開放端が小径部であると共に前記開口部側の開放端が大径部であるテーパー面を有するガイド部を配設した構成であり、
更に、前記コイルスプリングが、前記外支柱部の外周面と前記他側ケース部の内周面との間隙に配設され、この間隙内において伸縮する構成であること、
を特徴とするピン付き装飾体のための止め具。
【請求項2】
前記外支柱部の外周面の全てが、ピンの非挿通時は前記ハウジング内に入り込んだ状態となる構成であることを特徴とする請求項1に記載のピン付き装飾体のための止め具。
【請求項3】
前記外支柱部の外周面の略全てが、ピンの挟持保持時は前記ハウジング内に入り込んだ状態となる構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のピン付き装飾体のための止め具。
【請求項4】
前記テーパー面の角度が、挿通するピンの軸方向に対して10〜40度の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のピン付き装飾体のための止め具。
【請求項5】
請求項1に記載のピン付き装飾体のための止め具の製造方法であって、
組立製造位置に、
先ず、ハウジングの一構成部材であり、装飾体が備えるピンを挿通するピン通孔が設けられた一側ケース部を、前記ピン通孔を下にして載置し、
該一側ケース部の内部に、前記ピン通孔から挿通されるピンを挟持保持するピン保持部を、該ピン保持部の内部に複数個の小球体を抱持させた状態で組み込み載置し、
該ピン保持部に連設され、前記ピン保持部の後退方向側に一体的に形成された外支柱部の外周にコイルスプリングを巻き回し状態で配設し、
ガイド部、ピン保持部及び外支柱部、コイルスプリングを組み込んだハウジングの一側ケース部に対して、ハウジングの他構成部材である他側ケース部を該他側ケース部に形成された開口部を上位置となる状態で上方から前記外支柱部及びコイルスプリングを被覆するように組み込み、
前記一側ケース部と他側ケース部とを接続固定することによりハウジングを一体化させ、
該ハウジングの他側ケース部の開口部から、該開口部内に現れる前記外支柱部の貫通孔内に内支柱部を挿通固定することにより、該内支柱部に一体的に形成されると共にピンの挟持保持の解除動作を行う操作レバー体を前記ピン保持部に外支柱部及び内支柱部を介して前記開口部外に連設させることにより、止め具を完成させる構成であると共に、一側ケース部の内部にピン保持部を組み込み載置する前に、
前記一側ケース部の内部に、ピン通孔側の開放端が小径部であると共に該小径部と反対側の開放端が大径部であるテーパー面を有するガイド部を、前記小径部を下にして組み込み載置し、
該ガイド部を組み込み載置した後に、前記ピン保持部を、該ピン保持部の内部に複数個の小球体を抱持させた状態で、前記一側ケース部の内部であり前記ガイド部のテーパー面の内周面に当接した状態で組み込み載置する構成であること、
を特徴とする請求項1に記載のピン付き装飾体のための止め具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はピン付き装飾体のための止め具及びその製造方法に関し、詳しくは装飾体が備えるピンに対し、その着脱を自在に保持するピン付き装飾体のための止め具及びその製造方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
装飾体が備えるピンを別途用意される止め具を介して着脱自在に保持できるように形成された装身具には、ピアスやネクタイピンやボタンなどがあり、この場合に用いられる止め具には、従来より種々の構造のものが提案されてきている。
【0003】
この場合の止め具には、その基本構造として弾性体でピンを保持するタイプのものと、内蔵させた複数個の小球体によりピンを保持させるタイプのものとに大別することができる。
【0004】
このうち、弾性体でピンを保持するようにしたタイプの止め具としては、ピン付き装身具がピアスであり、径寸法の異なるピンであっても柔軟に対応し得るようにシリコーン樹脂材で形成された下記特許文献1に開示されているピアスキャッチがある。
【0005】
一方、内蔵させた小球体によりピンを挟持するようにして保持させるタイプの止め具には、以下の各特許文献に開示されているように種々の構造のものが既にある。
【0006】
すなわち、下記特許文献2には、環状に遊支された3個の小鋼球(小球体)を遊動保持させた截頭円錐形を呈する鋼球受と、該鋼球受を小鋼球が常に圧接するように押圧付勢された状態のもとで支持するテーパー管状の鋼球ガイドとを備え、鋼球受をその押圧付勢力に抗して移動させることでピンを解放できるようにしたバッジの座金(止め具)が開示されている。
【0007】
下記特許文献3には、截頭円錐形部位に3個の小球体を環状に緩着したチャック体と、各小球体と対面する内側面にテーパー面を有して常に押圧付勢された状態のもとでチャツク体を支持する止金具とを備え、チャック体が備える円錐面にその押圧付勢力に抗して操作部材を押し付けて各小球体とピンとの係合を解除してピンを解放できるようにしたネクタイピン(止め具)が開示されている。
【0008】
下記特許文献4には、先端内部に円錐台状の嵌合溝を備える遊動体と、頭部に設けられた鍔部に小球体を備えて前記嵌合溝内に配置される係合子と、該係合子の終端部に固着される係止基台と、該係止基台と前記鍔部との間に介在させたコイルスプリングとを備え、前記係合子の係合孔に挿入されて小球体により挟持されているピンは、遊動体をその押圧付勢力に抗して引き上げることで解放できるようにした装身体保持具が開示されている。なお、この場合、係合孔と連通する係合孔側口の口径を小球体の直径よりも小さくして、係合孔側に突出する各小球体が、係合孔内へ脱落するのを阻止している。
【0009】
下記特許文献5には、回転を防止できるように複数本のピンを備えるピン体と、各ピンとの対面位置にピン用孔を備えるピン噛合体とを備えて形成され、各ピン用孔に挿入されてテーパー面との位置関係のもとで小球体と係合しているピンは、押圧付勢力に抗して操作握部を引き下げることでその係合を解除してピンを解放できるようにした装身具における回転及び抜落防止装置(止め具)が開示されている。
【0010】
下記特許文献6には、ボタン側に連結されるピンと、該ピンの先端部を係脱可能に嵌合するピン留め具とを備え、テーパー面との位置関係のもとで小球体と係合しているピンは、押圧付勢力に抗して解除レバーを押し込むことによりその係合を解除してピンを解放できるようにした留め機能を有するボタンが開示されている。
【0011】
下記特許文献7には、剛体で形成される3個の小球体と、環状に配置されたこれらの各小球体を弾性変形が可能に保持するボールホルダとを備え、該ボールホルダの中心に位置するピン挿入口にピンを圧入させることで一体化させることができるようにしたピアスキャッチ及びこれを含むピアスが開示されている。
【0012】
下記特許文献8には、環状に配置された3個の金属小球体からなる把持部材と、ゴム状弾性部材からなるホルダと、これら把持部材とホルダとを締め付けるリングとを備え、3個の金属小球体の中心位置に形成される貫通孔にピンを圧入させることで一体化させることができるようにした止め具及ぴその止め具を含む身飾り品が開示されている。
【0013】
一方、下記特許文献9には、本願出願人が提案したピアスなど装身具の止め具が開示されている。該止め具は、内周面にテーパーが形成された案内筒と、該案内筒内に配置された複数の小球体と、これらの各小球体に下面が接触する鍔部を備えて押圧付勢されている押圧部材とを有してなり、ピンを挟持する各小球体は、押圧部材が備える摘みを介してその押圧付勢力に抗して引き上げることでその挟持状態を解除できるように形成されている。
【0014】
ところで、上記特許文献2〜9に開示されている技術は、そのいずれもが押圧付勢力のもとで小球体側に生成される挟持力によりピンを挟持しようとするものであり、その解除も人的操作を利用して押圧付勢力に抗して小球体を遊動方向に移動させて挟持力を緩めて行うものであった。
【0015】
しかし、これらの従来技術のうち、例えば装飾体がピアスの場合には、ピン径φが0.6mm〜1.2mmまでという、約2倍も直径が異なるピンが存在しているにもかかわらず、その対応が不十分なため、各小球体が生成する押圧力によっては、これらの径を異にするピンの別に応じた確実な挟持力を発揮させることができないばかりでなく、その挿入操作や解放操作も必ずしも円滑に行うことができないという問題があった。
【0016】
そこで本願出願者は、従来技術の上記課題に鑑み、ピンを円滑に挿入したり解放する上で、各小球体が接触し中心軸方向に押圧付勢力を与えるテーパー面のテーパー角度や可動操作体に押圧付勢力を与えるコイルスプリングが大きく作用しているとの知見に基づき、特許文献10に記載の技術を更に提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−26143号公報
【特許文献2】実公昭39−11877号公報
【特許文献3】実公昭39−33805号公報
【特許文献4】実開昭58−107010号公報
【特許文献5】特開平3−261403号公報
【特許文献6】実用新案登録第3070576号公報
【特許文献7】特開2000−50918号公報
【特許文献8】特開2005−204752号公報
【特許文献9】特許第4167703号公報
【特許文献10】特許第4560588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献10の技術について、本願出願者は更に研究を続けた結果、ピンの着脱を自在に且つ確実に保持する点では充分な効果が得られたが、製造組立時における作業性や歩留まり率の点で改善の余地があることを見出した。
【0019】
本発明の課題は、装飾体が備えるピンの着脱を自在に且つ確実に保持するすることができ、しかも製造組立時における作業性が良好であり、歩留まり率が改善されたピン付き装飾体のための止め具及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0021】
1.装飾体が備えるピンを挿通するピン通孔が設けられると共に、該ピン通孔との正対位置に開口部が設けられたハウジングと、
該ハウジング内に配設され、前記ピン通孔から挿通されたピンを複数個の小球体の各球面間で挟持保持するピン保持部と、
該ピン保持部に支柱部を介して前記開口部外に連設され、前記ピン通孔から前記ピン保持部を後退させることにより前記ピンの挟持保持の解除動作を前記ハウジング外から行う操作レバー体と、
前記ハウジング内の前記支柱部の外周に配設され、前記ピン保持部及び前記操作レバー体を、前記ピン通孔方向に付勢するコイルスプリングと、
を有して成り、
前記ピン保持部の小球体によるピンの挟持保持が、前記ピン保持部の前記ピン通孔側への付勢によって各小球体がピン方向に押され、該各小球体のピン側の球面の一部がピンに押圧状態で当接することによって行われ、
前記ピン保持部の挟持保持の解除動作が、前記ピン保持部の前記ピン通孔からの後退によって各小球体によるピンへの押圧力が解除されることによって行われる構成である、
ピン付き装飾体のための止め具において、
前記支柱部が、
前記ピン保持部の後退方向側に前記ピン保持部と一体的に形成されると共に、内部にピン挿通方向と同方向の貫通孔を有する筒状体である外支柱部と、
前記外支柱部の内部の貫通孔に挿通固定され、前記操作レバー体の付勢方向側に前記操作レバー体と一体的に形成されると共に、前記ピン通孔から挿通されたピンの導入路となる貫通孔を有する筒状体である内支柱部と、
を有して構成されており、前記ハウジングが、前記ピン通孔側を構成する一側ケース部と、前記開口部側を構成する他側ケース部と、を有して成り、前記外支柱部に対する内支柱部の挿通固定が圧入固定であり、前記ピン保持部の外周面と該外周面と相対向する前記ハウジングの一側ケース部の内周面との間に、前記ピン通孔側の開放端が小径部であると共に前記開口部側の開放端が大径部であるテーパー面を有するガイド部を配設した構成であり、
更に、前記コイルスプリングが、前記外支柱部の外周面と前記
他側ケース部の内周面との間隙に配設され、この間隙内において伸縮する構成であること、
を特徴とするピン付き装飾体のための止め具。
【0024】
2.前記外支柱部の外周面の全てが、ピンの非挿通時は前記ハウジング内に入り込んだ状態となる構成であることを特徴とする上記
1に記載のピン付き装飾体のための止め具。
【0025】
3.前記外支柱部の外周面の略全てが、ピンの挟持保持時は前記ハウジング内に入り込んだ状態となる構成であることを特徴とする上記
1又は2に記載のピン付き装飾体のための止め具。
【0027】
4.前記テーパー面の角度が、挿通するピンの軸方向に対して10〜40度の範囲であることを特徴とする上記
1〜3のいずれかに記載のピン付き装飾体のための止め具。
【0028】
5.上記
1に記載のピン付き装飾体のための止め具の製造方法であって、
組立製造位置に、
先ず、ハウジングの一構成部材であり、装飾体が備えるピンを挿通するピン通孔が設けられた一側ケース部を、前記ピン通孔を下にして載置し、
該一側ケース部の内部に、前記ピン通孔から挿通されるピンを挟持保持するピン保持部を、該ピン保持部の内部に複数個の小球体を抱持させた状態で組み込み載置し、
該ピン保持部に連設され、前記ピン保持部の後退方向側に一体的に形成された外支柱部の外周にコイルスプリングを巻き回し状態で配設し、
ガイド部、ピン保持部及び外支柱部、コイルスプリングを組み込んだハウジングの一側ケース部に対して、ハウジングの他構成部材である他側ケース部を該他側ケース部に形成された開口部を上位置となる状態で上方から前記外支柱部及びコイルスプリングを被覆するように組み込み、
前記一側ケース部と他側ケース部とを接続固定することによりハウジングを一体化させ、
該ハウジングの他側ケース部の開口部から、該開口部内に現れる前記外支柱部の貫通孔内に内支柱部を挿通固定することにより、該内支柱部に一体的に形成されると共にピンの挟持保持の解除動作を行う操作レバー体を前記ピン保持部に外支柱部及び内支柱部を介して前記開口部外に連設させることにより、止め具を完成させる構成である
と共に、一側ケース部の内部にピン保持部を組み込み載置する前に、
前記一側ケース部の内部に、ピン通孔側の開放端が小径部であると共に該小径部と反対側の開放端が大径部であるテーパー面を有するガイド部を、前記小径部を下にして組み込み載置し、
該ガイド部を組み込み載置した後に、前記ピン保持部を、該ピン保持部の内部に複数個の小球体を抱持させた状態で、前記一側ケース部の内部であり前記ガイド部のテーパー面の内周面に当接した状態で組み込み載置する構成であること、
を特徴とする上記
1に記載のピン付き装飾体のための止め具の製造方法。
【発明の効果】
【0030】
請求項1又は8によれば、装飾体が備えるピンの着脱を自在に且つ確実に保持するすることができ、しかも製造組立時における作業性が良好であり、歩留まり率が改善されたピン付き装飾体のための止め具及びその製造方法を提供することができる。
【0031】
特に、外支柱部と内支柱部とから構成される支柱部の組立構成が、外周にコイルスプリングが配設された外支柱部の貫通孔に対して、操作レバー体と一体構成の内支柱部を挿通取付する構成により、かかる挿通取付はハウジングの他側ケース部の開口部から覗く外支柱部の貫通孔内にハウジング外から挿通固定するだけでよく、組立ミスが生じるおそれが極めて低く、作業性が極めて良好である。
【0032】
従って、特許文献10の先提案技術が抱えていた問題点、即ち、外周に間隔を有してコイルスプリングを配設した内支柱部に対して、操作レバー体と一体構成の外支柱部を、前記内支柱部の外周とコイルスプリングの内周との間隙に差し込むようにハウジング外から挿通取付する構成によって、その挿通取付作業が慎重を要するものであり作業性が良好とは云えないものであった点が改善された。特に、各構成部品が小さいために、コイルスプリングと内支柱部との間への差し込みには慣れが必要であり、コイルスプリングの後端を押圧してしまった場合には反力で弾かれて外支柱部及び操作レバー体を飛ばして紛失してしまう場合があり、また、外支柱部の先端がコイルスプリングの上端の巻き部分を挟み込んでしまう場合もあり、製品不良が発生して歩留まり率を低下させるおそれがあったが、これらの問題点を改善することができる。
【0033】
請求項2に示す発明によれば、製造組立時に、一側ケース部にハウジング内に組み込まれる部品である小球体・ピン保持部及び外支柱部・コイルスプリングを組み込んだ後、他側ケース部を被せる構成により、ハウジング内への各部品の組込みが容易である。
【0034】
請求項3に示す発明によれば、支柱部を構成する外支柱部と内支柱部とを極めて容易に一体化することができ、しかも接着剤等の固着手段を用いた場合のように各部品の動作構成が接着剤の漏出等による固着等が生じることがなく、製品不良の発生を抑制することができる。
【0035】
請求項4又は5に示す発明によれば、外支柱部が外部に露出することがなくなるので、メッキ仕上げ製品とする場合、操作レバー体(及び一体構成の内支柱部)とハウジングとをメッキ加工すればよく、メッキ加工を必要とする部品数を低減するのでコストダウンを図ることができる。
【0036】
請求項6又は9に示す発明によれば、ピンの挟持保持動作及び解除動作の円滑性及び確実性を向上させることができる。
【0037】
請求項7に示す発明によれば、ピンの挟持保持動作及び解除動作の円滑性及び確実性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施例につき、ピンを挿入する前の初期状態の内部構造を示す説明図
【
図2】
図1に示す実施例の製造組立工程の一例を示す概略説明図
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、添付の図面に従って本発明を実施例に基づき説明する。
【0040】
本発明に係るピン付き装飾体のための止め具(以下、単に止め具ということもある。)は、装飾体が備えるピンに対し、その着脱を自在に保持するものであり、
図1に示すように、止め具1の具体的な構成としては、
装飾体(図示は省略)が備えるピンPを挿通するピン通孔20が設けられると共に、該ピン通孔20との正対位置に開口部21が設けられたハウジング2と、
該ハウジング2内に配設され、前記ピン通孔20から挿通されたピンPを複数個(本実施例では3個)の小球体31・31・31の各球面間で挟持保持するピン保持部3と、
該ピン保持部3に支柱部4を介して前記開口部21外に連設され、前記ピン通孔20から前記ピン保持部3を後退させることにより前記ピンPの挟持保持の解除動作を前記ハウジング2外から行う操作レバー体5と、
前記ハウジング2内の前記支柱部4の外周に配設され、前記ピン保持部3及び前記操作レバー体5を、前記ピン通孔20方向に付勢するコイルスプリング6と、
を有して成り、
前記ピン保持部3の小球体31・31・31によるピンPの挟持保持が、前記ピン保持部3の前記ピン通孔20側への付勢によって各小球体31・31・31がピンP方向に押され、該各小球体31・31・31のピンP側の球面の一部がピンPに押圧状態で当接することによって行われ、
前記ピン保持部3の挟持保持の解除動作が、前記ピン保持部3の前記ピン通孔20からの後退によって各小球体31・31・31によるピンPへの押圧力が解除されることによって行われる構成を基本的構成とする。
【0041】
また、本発明の止め具1では、前記支柱部4が、前記ピン保持部3の後退方向側に前記ピン保持部3と一体的に形成されると共に、内部にピン挿通方向と同方向の貫通孔42を有する筒状体である外支柱部41と、前記外支柱部41の内部の貫通孔42に挿通固定され、前記操作レバー体5の付勢方向側に前記操作レバー体5と一体的に形成されると共に、前記ピン通孔20から挿通されたピンPの導入路となる貫通孔44を有する筒状体である内支柱部43と、を有して構成されている。
【0042】
また、前記ハウジング2は、好ましくは本実施例に示すように、前記ピン通孔20側を構成する一側ケース部22と、前記開口部21側を構成する他側ケース部23と、を有する2分割構成であり、組立時に一側ケース部21と他側ケース部23の各々の開口端部同士を組み合わせてかしめ止着して接合することにより一体化させる。尚、ハウジング2を構成する一側ケース部21と他側ケース部23の構成は、図示の実施例に限定されず、組合せ接合位置が異なっていてもよいし、一体化手段もかしめ止着に限定されない。尚また、ハウジング2は図示の2部材構成に限らず、1部材で構成されていてもよく、1部材の場合、ピン通孔20又は開口部21のいずれかを大きく開口し、この大きく開口したピン通孔20又は開口部21からハウジング2内に組み込まれる他の構成部材(小球体31、ピン保持部3、支柱部4、コイルスプリング6等)を組み込んだ後に大きく開口したピン通孔20又は開口部21を所望の大きさまで絞り成形する構成とすることもできる。
【0043】
ピン保持部3の小球体31・31・31の各々は、ピン保持部3に穿かれた透孔である小球体保持孔30内に収容される。小球体保持孔30は、ピンPの挿通方向に直交する方向であって且つピンP軸に対して等角の3方向に形成された3つの透孔から成る。
【0044】
支柱部4を構成する外支柱部41に対する内支柱部43の挿通固定は、接着、圧入、螺合等の公知公用の手段を挙げることができるが、中でも圧入固定であることが好ましい。かかる構成によれば、外支柱部41と内支柱部43とを極めて簡単に一体化することができるだけでなく、接着剤等の固着手段を用いた場合のように各部品の動作構成が接着剤の漏出等による固着等が生じることがなく、製品不良の発生を抑制することができる。
【0045】
更に本発明の止め具1では、好ましくは本実施例に示すように、前記ピン保持部3の外周面と該外周面と相対向する前記ハウジング2の一側ケース部22の内周面との間に、前記ピン通孔20側の開放端が小径部であると共に前記開口部側の開放端が大径部であるテーパー面71を有するガイド部7を配設した構成を有している。
【0046】
前記テーパー面の角度は、挿通するピンPの軸方向に対して、10〜40度の範囲が好ましく、25〜35度の範囲がより好ましい。ガイド部7を配設し、テーパー面71の角度を規定することにより、ピン保持部3及び小球体31によるピンPの挟持保持がより確実となると共に、挟持保持の解除もより確実且つ円滑に可能となる。
【0047】
尚、複数個の小球体31によるピンPの挟持保持及び該挟持保持の解除の詳細については、先提案技術である特許文献10と同様の構成を採ることができる。
【0048】
以上の構成を有する本発明の止め具1は、外支柱部42の外周面の全てが、ピンPの非挿通時は前記ハウジング2内に入り込んだ状態となる構成や、前記外支柱部42の外周面の略全てが、ピンPの挟持保持時は前記ハウジング2内に入り込んだ状態となる構成とすることが好ましい。かかる構成によれば、メッキ仕上げの止め具1とする場合に、外部への露出が無い乃至は僅かである外支柱部42のメッキ加工を不要とすることができるのでメッキ加工を必要とする部品点数を減じることができる。
【0049】
以上、本発明の止め具1の具体的構成例について実施例に基づき説明した。
次に、上記構成の止め具1の製造組立時の工程の一例について
図2に基いて説明する。
【0050】
(1)先ず、組立製造位置に、ハウジング2の一構成部材であり、装飾体が備えるピンPを挿通するピン通孔20が設けられた一側ケース部22を、前記ピン通孔20を下にして載置する(
図2の(a)参照)。
【0051】
(2)一側ケース部22の内部に、ピン通孔20側の開放端が小径部であると共に該小径部と反対側の開放端が大径部であるテーパー面71を有するガイド部7を、前記小径部を下にして組み込み載置する(
図2の(a)から(b)参照)。
【0052】
(3)ガイド部7を組み込み載置した後に、前記ピン保持部3を、該ピン保持部3の小球体保持孔30内に複数個(本実施例では3個)の小球体31を抱持させた状態で、前記一側ケース部22の内部であり前記ガイド部7のテーパー面71の内周面に当接した状態で組み込み載置する(
図2の(b)参照)。
【0053】
(4)一側ケース部22の内部に、前記ピン通孔20から挿通されるピンPを挟持保持するピン保持部3を、該ピン保持部3の内部に小球体31を抱持させた状態で組み込み載置する(
図2の(b)から(c)参照)。
【0054】
(5)ピン保持部3に連設され、前記ピン保持部3の後退方向側に一体的に形成された外支柱部41の外周にコイルスプリング6を巻き回し状態で配設する(
図2の(c)から(d)参照)。
【0055】
(6)ガイド部7、ピン保持部3及び外支柱部41、コイルスプリング6を組み込んだハウジング2の一側ケース部22に対して、ハウジング2の他構成部材である他側ケース部23を該他側ケース部23に形成された開口部21を上位置となる状態で上方から前記外支柱部41及びコイルスプリング6を被覆するように組み込む(
図2の(d)から(e)参照)。
【0056】
(7)一側ケース部23と他側ケース部23とを接続固定(カシメ止着)することによりハウジング2を一体化させる(
図2の(e)参照)。
【0057】
(8)ハウジング2の他側ケース部23の開口部21から、該開口部21内に現れる前記外支柱部41の貫通孔42内に内支柱部43を挿通固定する(
図2の(e)から(f)参照)。
【0058】
(9)外支柱部41への内支柱部43の挿通固定により、該内支柱部43に一体的に形成されると共にピンPの挟持保持の解除動作を行う操作レバー体5を前記ピン保持部3に外支柱部41及び内支柱部43を介して前記開口部21外に連設させることにより、止め具1が完成する(
図2の(f)参照)。
【0059】
上記構成を有し、上記製造組立工程を有する止め具1は、メッキ仕上げとする場合は組立済みの完成品をメッキ液に浸漬させてメッキ処理を施してもよいが、メッキ液の滲入による内部機構への影響や外部に露出しない構成部品までメッキ加工されてしまうというメッキ液の無駄な消費等の点から、メッキ加工が必要な部品のみ、即ち、外部に露出する部品であるハウジング2の一側ケース部22及び他側ケース部23、操作レバー体5及び該操作レバー体5と一体構成の内支柱部43(貫通孔44の内壁部分が外部から見える部分となる)の4構成部である3つの部品についてのみ、各々単品でのメッキ加工を施すことが好ましい。
【0060】
尚、先提案技術である特許文献10は、操作レバー体が外支柱部と一体構成であり、この外支柱部を内支柱部の外側に挿通固定する構成であるため、外支柱部内の貫通孔内に内支柱部の端部及び内部の貫通孔内壁部が露出してしまう構成となることから、内支柱部のメッキ加工も必要であり、メッキ加工を施す必要のある部品がハウジングの一側ケース部、外側ケース部、操作レバー体及び外支柱部、内支柱部の4つであった。従って、メッキ加工を施す必要のある部品点数は、先提案技術の4つから本発明では3つに減るため、メッキ処理の手間を25%減少させることができる。
【0061】
また、組立済みの完成品へのメッキ処理ではなく、製造組立前の部品単位でのメッキ処理により、メッキ液の無駄な消費が無くなるだけでなく、組立済みの完成品内部へのメッキ液滲入による製品不良等の発生が無くなるので、歩留まり率を改善することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 止め具
2 ハウジング
20 ピン通孔
21 開口部
22 一側ケース部
23 他側ケース部
3 ピン保持部
30 小球体保持孔
31 小球体
4 支柱部
41 外支柱部
42 貫通孔
43 内支柱部
44 貫通孔
5 操作レバー体
6 コイルスプリング
7 ガイド部
71 テーパー面
P ピン