【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)、「手術ロボットの開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 平成24年度、文部科学省、イノベーションシステム整備事業、大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)、「気体の超精密制御技術を基盤とした低侵襲手術支援ロボットシステムの開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
原口大輔,柔軟関節を用いた空気圧駆動鉗子マニピュレータの開発(先端屈曲機構の簡略化と外力推定),日本フルードパワーシステム学会論文集,日本,2012年 5月,第43巻 第3号,第62-69頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉗子を有する把持部を回転させる回転関節部と、貫通孔を軸線方向に沿って有し該回転関節部に連結される複数の柔軟な多自由度関節部と、該複数の多自由度関節部の貫通孔に挿入される柔軟な駆動力伝達部材を介して該回転関節部を駆動させる駆動部とを備える鉗子マニピュレータと、
前記把持部の姿勢を制御するように前記鉗子マニピュレータの前記駆動部を制御する制御部と、を具備して構成され、
前記把持部、前記回転関節部、及び前記駆動力伝達部材は、前記軸線周りに回転され、
前記駆動力伝達部材は、前記軸線方向に沿って中空部を有し、
前記中空部の中には、前記軸線方向に沿って、流体供給用の管部材が挿入される、鉗子システム。
鉗子を有する把持部を回転させる回転関節部と、貫通孔を軸線方向に沿って有し該回転関節部に連結される複数の柔軟な多自由度関節部と、該複数の多自由度関節部の貫通孔に挿入される柔軟な駆動力伝達部材を介して該回転関節部を駆動させる駆動部とを具備して構成され、
前記把持部、前記回転関節部、及び前記駆動力伝達部材は、前記軸線周りに回転され、
前記駆動力伝達部材は、前記軸線方向に沿って中空部を有し、
前記中空部の中には、前記軸線方向に沿って、流体供給用の管部材が挿入される、鉗子マニピュレータ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hagn, U., et al.: DLR MiroSurge: a versatile system for research inendoscopic telesurgery, International Journal of Computer Assisted Radiologyand Surgery, Vol. 5, p.183-193(2010), 10.1007/s11548-009-0372-4
【非特許文献2】K. Xu, R. Goldman, J. Ding, P. Allen, D. Fowler, and N. Simaan,“System design of an insertable robotic effector platform for single portaccess (spa) surgery”, Intelligent Robots and Systems, IEEE/RSJ InternationalConference on, pp. 5546-5552, 2009
【非特許文献3】原口大輔、只野耕太郎、川嶋健嗣:超弾性合金ワイヤのプッシュ・プル機構を用いた空気圧駆動鉗子マニピュレータの開発、第12回流体計測制御シンポジウム、計測自動制御学会産業応用部門大会講演論文集、pp.22-25
【非特許文献4】Daisuke Haraguchi, Kotaro Tadano, Kenji Kawashima: A Prototype ofPneumatically-Driven Forceps Manipulator with Force Sensing Capability Using aSimple Flexible Joint, 2011 IEEE/RSJ International Conference on IntelligentRobots and Systems, pp.931-936
【非特許文献5】Tadano, K., Kawashima, K., Kojima, K., Tanaka, N.: Development of a PneumaticSurgical Manipulator IBIS IV, Journal of Robotics and Mechatronics, Vol. 22,No. 2, p. 179-188 (2010)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明を実施するための形態について説明する。なお、本明細書の文章において、英文字記号にハット記号を付すものを「(英文字記号)ハット」と記載し、英文字記号にオーバードットを付すものを「(英文字記号)オーバードット」と記載する。
図2は、本発明に係る鉗子マニピュレータを備える鉗子システムの一例において用いられる鉗子マニピュレータの外観を示す。
【0013】
図2において、鉗子マニピュレータ10は、8個のエアシリンダ12a1〜12a8からなる関節駆動部12と、関節駆動部12における各ピストンロッドと後述する複数のワイヤおよびチューブとを接続するコネクタユニット14と、鉗子を含んで構成される把持部24と、把持部24の基端部に連結される回転関節部26と、回転関節部26の基端部にボールベアリング22BEを介して連結される第2関節22と、第2関節22の一方の端部の嵌合円筒部22mfに嵌合されねじ締結される嵌合孔部18ffを介して連結される第1関節18と、一端がコネクタユニット14に接続され、他端が第1関節18の嵌合円筒部18mfに嵌合され第1関節18を貫通する複数のワイヤおよびチューブを移動可能に支持する駆動力伝達部16と、を主な要素として含んで構成されている。
【0014】
8個のエアシリンダ12a1〜12a8は、コネクタユニット14における支持プレート42に支持されている。エアシリンダ12a1〜12a8の各ピストンロッド12Lは、支持プレート42の端面に対し直交するようにコネクタユニット14内に突出している。8個のエアシリンダ12a1〜12a8のうちエアシリンダ12a1〜12a4(
図9参照)は、それぞれ、ピストンロッド12Lにワイヤロッドコネクタ38(
図3参照)を介して連結されるワイヤ30を進退させるものとされる。
図1に示されるように、エアシリンダ12a1とエアシリンダ12a3とは向かい合って配されている。また、エアシリンダ12a2とエアシリンダ12a4とは向かい合って配されている。
【0015】
また、残りのエアシリンダ12a5〜12a8(
図9参照)は、それぞれ、ピストンロッド12Lにチューブロッドコネクタ40(
図3参照)を介して連結されるチューブ32を進退させるものとされる。エアシリンダ12a5とエアシリンダ12a7とは向かい合って配されている。また、エアシリンダ12a6とエアシリンダ12a8とは向かい合って配されている。
エアシリンダ12a1〜12a8のピストンロッド12Lのストローク量、および、速度は、それぞれ、後述する空気圧制御部72(
図11および
図12参照)により駆動制御される。
【0016】
コネクタユニット14は、
図3に拡大されて示されるように、お互いに所定の間隔をもって向かい合って複数本のシャフトで連結される支持プレート42および44と、支持プレート42および44相互間に配されピストンロッド12Lとワイヤ30の端部とを連結する複数のワイヤロッドコネクタ38と、支持プレート42および44相互間に配されピストンロッド12Lとチューブ32の端部とを連結する複数のチューブロッドコネクタ40とを含んで構成されている。各ワイヤロッドコネクタ38、各チューブロッドコネクタ40に隣接してワイヤ30、チューブ32の移動量をそれぞれ、検出する複数のポテンショメータ46が設けられている。複数のポテンショメータ46は、それぞれ、検出出力信号Siを後述する制御ユニット部60に供給するものとされる。チューブ32およびワイヤ30は、それぞれ、例えば、超弾性合金で作られている。この連結でチューブ32およびワイヤ30が湾曲しない構造とすることで、機構の摺動摩擦力を最小限に抑えることができ、後述するような制御性や外力推定精度の向上に寄与することとなる。
また、支持プレート42には、回転関節部26を、フレキシブルシャフト34を介して回転駆動するベーンモータ40(
図9参照)が支持されている。ベーンモータ40は、後述する制御ユニット部60により制御される。
【0017】
一端が支持プレート44に接続される駆動力伝達部16の円筒状パイプ15の他端は、その軸線方向に沿って延び第1関節18の嵌合円筒部18mfに嵌合され、ねじ締結されることにより連結されている。円筒状パイプ15の他端は、第1関節18の嵌合円筒部18mfの各ねじ孔に対応した複数の透孔を円周方向に沿って有している。これにより、小ねじ(不図示)がその透孔を介して嵌合円筒部18mfのねじ孔にねじ込まれることにより、締結される。駆動力伝達部16は、
図4および
図5に示されるように、上述のワイヤ30およびチューブ32を支持するセパレータ17と、セパレータ17を内側に収容する円筒状パイプ15とを主な要素として含んで構成されている。
【0018】
円形断面を有する細長いセパレータ17は、断面中央部に、フレキシブルシャフト34およびエア供給用チューブ36が挿入される貫通孔17aを有している。セパレータ17の外周部には、ステンレス鋼製のガイドパイプ17GPが配される溝17gが円周方向に沿って均等間隔で4箇所に形成されている。各ガイドパイプ17GPの内側には、円筒状のチューブ32および円形断面を有するワイヤ30が移動可能に配されている。ワイヤ30は、所定の隙間をもってチューブ32の内周部に移動可能に配されている。
【0019】
ワイヤ30およびチューブ32は、プッシュプル作動を行うため特に圧縮力に対して駆動伝達部16の内部で座屈変形を起こさないことが必要である。チューブ32およびワイヤ30をガイドパイプ17GPに通すことにより、理想的な直線経路が確保される。さらにガイドパイプ17GP自体も座屈防止のためガイドパイプ17GPがセパレータ17の溝17gによってしっかりと固定されている。
【0020】
柔軟構造である第1関節18は、例えば、
図8(A)に示されるように、切削スプリング18bにより形成されている。切削スプリング18bは、例えば、円筒状の金属材料がレーザー加工等による切削加工により螺旋状に形成されることにより得られる。切削スプリング18bの一端に一体に形成される嵌合孔部18ffには、各ワイヤ30が挿入されるチューブ32の一端が接着される貫通孔18gaが、上述のセパレータ17の溝17gに対応して4箇所に形成されている。切削スプリング18bの他端に一体に形成される嵌合円筒部18mfには、各ワイヤ30が挿入されるチューブ32が挿入される貫通孔18gbが上述のセパレータ17の溝17gに対応して4箇所に形成されている。
切削スプリング18bの断面中央の貫通孔18aには、フレキシブルシャフト34が挿入されている。
【0021】
また、切削スプリング18bの貫通孔18aの周囲には、
図7(B)に示されるように、チューブ32が挿入される貫通孔18Hが貫通孔18ga、18gbに対応した位置に形成されている。第1関節18の嵌合孔部18ffには、
図6に示されるように、第2関節22の嵌合円筒部22mfがねじ締結により連結されている。嵌合孔部18ffは、嵌合円筒部22mfの複数のねじ孔に対応した複数の透孔を円周方向に沿って有している。これにより、小ネジ(不図示)がその透孔を介して嵌合円筒部22mfのねじ孔にねじ込まれることにより締結される。
【0022】
柔軟構造である第2関節22の構造は、第1関節18の構造と同様に切削スプリング22bを有している。第2関節22の軸線方向の長さは、第1関節18の軸線方向の長さに比して小に設定されている。第2関節22における切削スプリング22bの断面中央の貫通孔22aの周囲には、
図7(A)に示されるように、ワイヤ30だけが挿入される貫通孔22Hが溝18gに対応した位置に形成されている。4本チューブ32をそれぞれ通過した4本のワイヤ30の一端は、第2関節22におけるベアリングハウジング22BHに連通する貫通孔22gaに接着されている。
【0023】
第1関節18および第2関節22の柔軟構造は、斯かる例に限られることなく、例えば、
図10に示されるように、柔軟構造体50が、βチタンチューブにスリットを入れて柔軟性を持たせ、外側に数か所のカラーを取り付けて4か所の駆動チューブ/ワイヤ用のガイド穴を設けたものであってもよい。
第2関節22の端部に連結される回転関節部26は、
図8(B)に示されるように、フレキシブルシャフト34の回動に応じて回転関節部26に連結される把持部24を回動させるものとされる。回転関節部26は、ハウジング26Hの内周部に固定されフレキシブルシャフト34の回動力を把持部24に伝達するローター26Rと、把持部24のグリッパの開閉機構を把持状態にするピストン26Pと、ピストン26Pを作動空気圧に抗して初期状態に戻し、グリッパの開閉機構を非把持状態とするリターンスプリング26RSとをハウジング26H内に備えている。
【0024】
ローター26Rは、第2関節22におけるボールベアリング22BEに回動可能に支持されフレキシブルシャフト34の一端に連結されるとともに内部に作動空気を供給するエア供給用チューブ36の一端が連結されている。
把持部24における空気圧式グリッパの開閉機構は、図示が省略されるが、例えば、非特許文献5に示されるような機構と同様な機構を備えるものであってもよい。そのような空気圧式グリッパは、フレキシブルシャフト34の内側に配されるエア供給用チューブを介して供給される作動空気により駆動せしめられる。
本発明に係る鉗子マニピュレータを備える鉗子システムの一例においては、斯かる構成に加えて
図11に示されるように、上述の鉗子マニピュレータにおける第1関節18および第2関節22、把持部24の動作制御を行う空気圧制御回路72を制御する制御ユニット部60を備えている。
【0025】
制御ユニット部60には、上述のコネクタユニット14における複数のポテンショメータ46からの検出出力信号Siと、後述する空気圧制御回路72における各圧力センサ74からの圧力をあらわす検出出力信号Spとが供給される。制御ユニット部60は、所定のプログラムデータ等を格納する記憶部を備えている。また、制御ユニット部60には、表示部として液晶ディスプレイ62、および、入力部としてのキーボード64が接続されている。
【0026】
空気圧制御回路72は、例えば、
図12に示されるように、コンプレッサ等の空気圧供給源70に圧力調整弁76を介して複数の5ポート型のサーボ弁が設けられている。各サーボ弁は、上述のエアシリンダ12a1〜12a8に対応してそれぞれ設けられている。なお、
図12においては、代表的に、エアシリンダ12a1、12a3、サーボ弁1、サーボ弁3を示す。これにより、エアシリンダ12a1〜12a4が駆動されることにより、第2関節22がワイヤ30を介して駆動制御され、また、エアシリンダ12a5〜12a8が駆動されることにより、第1関節18がチューブ32を介して駆動制御されることとなる。さらに、ベーンモータ40が制御されることにより、把持部24の回転角が制御されることとなる。
【0027】
制御ユニット部60は、記憶部から読み出された所定のプログラムデータに従い動作を開始し、検出出力信号Si、検出出力信号Spに基づいて把持部24、第1関節18、第2関節22の位置、姿勢制御を行うとともに、鉗子先端にかかる外力ベクトルf
extハットを推定する演算を行い、空気圧制御回路72の動作制御を行う。制御ユニット部60において、後述する外力ベクトルを推定する演算は、
図13に示されるブロック図にあらわされる演算式に従い行われる。
【0028】
次に、鉗子システムにおける外力推定について説明する。
図13は、鉗子システムにおける、外力推定のブロック線図である。
図13のブロック線図について、各記号の説明をしながら外力推定の方法を述べる。
F:空気圧アクチュエータの駆動力ベクトルである。
具体的には、以下のようになる。
F
1〜F
4:第1関節のシリンダ駆動力である。
F
5〜F
8:第2関節のシリンダ駆動力である。
F
9:回転関節のためのベーンモータ駆動トルクである。
X:アクチュエータの変位量である。
具体的には、以下のようになる。
X
1〜X
4:第1関節のためのシリンダ変位である。
X
5〜X
8:第2関節のためのシリンダ変位である。
X
9:回転関節のためのベーンモータの回転角である。
Xオーバードット:アクチュエータの速度である。sはラプラス微分演算子であるが、実際はコンピュータの数値微分(擬似微分)により求める。
q:関節の位置変数ベクトルであり、最大7次元ベクトルである。
具体的には、以下のようになる。
q=[δ
1、θ
1、l
1、δ
2、θ
2、l
2、ψ]
Tとなる。添え字1、2は関節の番号である。屈曲にかかるδ、θ、lの定義は
図15に示す第2関節の位置座標の定義のとおりである。第1関節も同様である。ψについては回転関節の角度を表わす。
第2関節については、関節の屈曲する方向δ
2、その方向へ屈曲した角度θ
2、および関節長さの変化量l
2である。関節長さの変化量l
2は、関節の中心線つまり
図15で破線になっている部分の長さの変化量である。ただしδ
2およびθ
2は次の範囲で表わすこととする。
−π≦δ
2≦π θ
2≧0
また、pは鉗子先端の位置座標であり、Lsは関節の自然長であり、Lgは把持部と回転関節部の合計の長さであり、rは駆動ワイヤの配置円半径であり、数字5〜8は駆動ワイヤ番号である。
第1関節については、関節の屈曲する方向δ
1、その方向へ屈曲した角度θ
1、および関節長さの変化量l
1である。ただしδ
1およびθ
1は次の範囲で表わすこととする。
−π≦δ
1≦π θ
1≧0
また、Lsは関節の自然長であり、rは駆動チューブの配置円半径であり、数字1〜4は駆動チューブ番号である。
ここでqとアクチュエータ変位Xとの関係は式(1)のようになる。
【0029】
【数1】
なお式中のγはベーンモータから回転関節への減速比(増速比)を表わす。
次に、式(1)を関節位置qについて変形すると次のようになる。
【0031】
Zハット:関節の逆動力学モデルで、所望の関節位置および速度を実現するためのアクチュエータ駆動力ベクトルであり、9次元ベクトルである。ここでZハットを各関節に分け、第1関節のモデルZ
1(4次元ベクトル)、第2関節のモデルZ
2(4次元ベクトル)および回転関節のモデルZr(1次元ベクトル)を考える。すなわち
【0032】
【数3】
式(3)の各成分は、各アクチュエータの作動にかかる機械的インピーダンス(弾性力、摩擦力、慣性力など)に関する項により構成される。
F
ext、F
extハット:シリンダ駆動力およびベーンモータの駆動トルクの外力成分のベクトルであり、回転含む9次元ベクトルである。これらは鉗子先端に外力を受けて、アクチュエータがバックドライブされることで生じる。なお、ハット付きの記号は計算による推定値を意味する。
τ
extハット:関節位置座標q(δ
1、θ
1、l
1、δ
2、θ
2、l
2、ψ)に対するトルクおよび並進力の外力成分である。
f
extハット:鉗子先端にかかる外力で、ここでは並進力3自由度およびトルク3自由度の6次元ベクトルである。
J
aT:F
extからτ
extへの変換行列である。J
aは関節速度qオーバードットからアクチュエータ速度Xオーバードットへのヤコビアンであり、式(1)を時間微分して整理することにより得られる。
(J
T)
+:τ
extからf
extへの変換行列である。Jは関節速度qオーバードットから鉗子先端の速度pオーバードットおよび角速度ベクトルωへのヤコビアンである。
【0033】
これについて、
図14を使って説明する。第1関節、第2関節および回転関節の位置・姿勢を記述するため、基準座標系Obをとり、各関節の先端中心にローカル座標系O
1、O
2をとる。図中、記号pは位置(3次元ベクトル)を、記号Rは姿勢行列(3×3行列)を表わしており、例えば
bp
1という記述は、座標系Obにより記述したO
1の位置ベクトルという意味である。この設定において、鉗子先端の位置pおよび姿勢行列Rを求めると次のようになる。
【0035】
【数5】
ここで外力推定に必要なヤコビアンJの並進速度にかかる成分Jpについては、式(4)を時間微分することにより得られる。すなわち
【0037】
次に関節位置ベクトルqにおける角度パラメータの時間微分δ
1オーバードット、θ
1オーバードット、δ
2オーバードット、θ
2オーバードット、ψオーバードットについて、各回転軸ベクトルの基準座標系に対する方向余弦を求めることにより角速度ベクトルωが得られ、姿勢ヤコビアンJrを含む形に整理できる。ここで、並進速度パラメータl
1オーバードット、l
2オーバードットにかかる成分は0とする。すなわち
【0038】
【数7】
式(6)および(7)から、ヤコビアンJが得られる。すなわち
【0040】
ところで、先に定義した関節位置ベクトルqは7自由度ある。後述する式(10)の外力計算で冗長な成分があってもよいが、qの成分l
1またはl
2を選択的に消去すれば、非冗長の独立6自由度システムとすることができる。外力推定における自由度の削減は、逆行列計算におけるコスト削減および精度向上を図ることができる。
アクチュエータ駆動力の外力成分のベクトルの推定値F
extハットは、式(9)に従いアクチュエータの駆動力Fからマニピュレータの内部逆動力学Zハットを差し引くと、外力にかかる成分を求めることができる。
【0041】
【数9】
鉗子先端にかかる外力ベクトルf
extハットは、式(10)に従い求められる。
【0043】
屈曲部としてスプリングの例を説明したが、屈曲部はこれに限定されるものではない。このほか、屈曲部としては、中空の物体にスリットを加工して柔軟に屈曲できるようにしたものなどを採用することができる。シリンダ位置の検出部としてのポテンショメータの例を説明したが、検出部はこれに限定されるものではない。このほか検出部としては、エンコーダなどを採用することができる。
駆動力の発生装置として空気シリンダの例を説明したが、駆動力の発生装置はこれに限定されるものではない。このほか駆動力の発生装置としては、電気モーター、水圧シリンダ、油圧シリンダなどを採用することができる。
駆動力の計測装置として圧力センサの例を説明したが、駆動力の計測装置はこれに限定されるものではない。このほか駆動力の計測装置としては、力センサをマニピュレータに直接搭載する方法などを採用することができる。
【0044】
本発明に係る一例は、最先端の回転関節の駆動にフレキシブルシャフトを採用することで、運動学および動力学の両面において屈曲関節との干渉を回避できる。本発明に係る鉗子マニピュレータの一例は、外力推定に有効な7自由度(5自由度(屈曲2自由度×2および回転1自由度))に屈曲関節の伸縮方向×2を加える)を体内において有しており、並進力3軸およびトルク3軸の6自由度外力を、体内の関節のみを用いて推定計算することが可能である。
体外での運動を外力推定に利用しないので挿入部におけるトロッカーの拘束、鉗子マニピュレータに連結された配線などの抵抗が関節のダイナミクスに影響しない。よって、鉗子マニピュレータがどのような配置状況にあっても、外力推定精度が安定しているという利点がある。