特許第6159086号(P6159086)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6159086遺伝子−栄養素相互作用を決定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159086
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】遺伝子−栄養素相互作用を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170626BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12Q1/68 A
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-555156(P2012-555156)
(86)(22)【出願日】2011年2月24日
(65)【公表番号】特表2013-520207(P2013-520207A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】US2011026108
(87)【国際公開番号】WO2011106549
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2014年2月12日
(31)【優先権主張番号】61/307,526
(32)【優先日】2010年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/307,522
(32)【優先日】2010年2月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512220064
【氏名又は名称】ボディシンク インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BODYSYNC,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ギル、ロザリン ディ.
(72)【発明者】
【氏名】グリマルディ、キース エイ.
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/140569(WO,A2)
【文献】 国際公開第2008/109147(WO,A2)
【文献】 Nutr. J.,2007年,vol.6, no.29,pp.1/8-8/8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体に対する体重減少プログラムを選択するための方法であって、前記方法は、
a.遺伝子座位置313、341または両方での個体のGSTP1遺伝子型を決定する決定工程と、
b.個体が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型、位置313にてヘテロ接合型(A/G)、位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型、位置341にてヘテロ接合型(C/T)、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子型を含む場合、個体に対して体重減少プログラムを選択する選択工程であって、前記体重減少プログラムが、位置313および341にて野生型である比較可能な個体に対する体重減少プログラムより改変される、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含み、前記個体が、位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型である個体と比較して、体重減少プログラムに対するより大きな応答を得ることが予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記個体の遺伝子型が、位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかを含み、前記個体が、位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型である個体と比較して、体重減少プログラムに対するより大きな応答を得ることが予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含み、前記選択された体重減少プログラムが、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、より大きなエネルギー摂取、またはより期間が短い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記選択された体重減少プログラムが、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、より大きなカルシウム摂取を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記個体の遺伝子型が、位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型を含み、前記体重減少プログラムは、位置341にてT対立遺伝子からなる遺伝子型を有する個体と比較して、エネルギー摂取がより低く、または期間がより長い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型および位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型のうちの少なくとも一方を含み、前記体重減少プログラムが、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)を含み、かつ位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)を含む、遺伝子型を有する個体と比較して、エネルギー摂取がより低くまたは期間がより長い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記個体の遺伝子型が、位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかを含み、前記選択された体重減少プログラムが、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、アブラナ科野菜摂取がより高い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含み、前記選択された体重減少プログラムが、位置313で野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、ビタミンA摂取がより高い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含み、前記選択された体重減少プログラムが、位置313で野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、カルシウム摂取がより高い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含むとともに位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかを含み、前記選択された体重減少プログラムが、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、ビタミンA摂取がより高い規定食プログラムを含み、かつ前記選択された体重減少プログラムが、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、アブラナ科野菜摂取がより高い、規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)の遺伝子型を含むとともに位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)を含み、前記選択された体重減少プログラムが、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、カルシウム摂取がより高い規定食プログラムを含み、かつ前記選択された体重減少プログラムが、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、アブラナ科野菜摂取がより高い規定食プログラムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
GSTP1対立遺伝子が、1つまたはそれ以上の対立遺伝子を有する少なくとも5つの遺伝子のパネルの部分として決定され、他の遺伝子が、メチレン−メトラ−ヒドロ−葉酸−リダクターゼ(MTHFR)、メチオニンシンシンターゼリダクターゼ(MS−MTRR)、メチオニンシンターゼ(MTR)、シスタチオニンベータシンターゼ(CBS)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM1(GSTM1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼT1(GSTT1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼpi(GSTP1)、アポリポプロテインC−III(APOC3)、アポリポプロテインA−V(APOA5)、コレステリルエステルトランスファータンパク質(CETP)、イポプロテインリパーゼ(LPL)、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)、アンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)、ビタミンD受容体(VDR)、コラーゲンI型アルファ1(COL1A1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ2(PPAR−γ2)、エポキシドヒドロラーゼI(EPHX1)、肝臓リパーゼ(LIPC)、パラオキソナーゼ1(PON1)、アルコールデヒドロゲナーゼIB(ADH1B)、アルコールデヒドロゲナーゼIC(ADH1C)、アンジオテンシノーゲン(AGT)、シトクロームP450 1A1(CYP1A1)、シトクロームP450 1A2*1B(CYP1A2_1B)、シトクロームP450 1A2*1E(CYP1A2_1E)、およびシトクロームP450 1A2*1F(CYP1A2_1F)から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルタチオンS−トランスフェラーゼpi遺伝子(GSTP1)および/またはインターロイキン−6遺伝子(IL−6)中の多型に基づき、食事要因に対する代謝応答を予測するための方法および遺伝子−栄養素相互作用に基づいた規定食およびライフスタイルアドバイスを提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀の後半より、工業地帯にすむ人々の食生活が相当変化してきた。広く植物に基づいた昔ながらの食事が、脂肪またはカロリーが高く、かつ、かなりの量の動物由来の食物が含まれる食物にとって代わられてきた。また、よりデスクワークのライフスタイルへと進行的にシフトした結果として、工業国での身体活動が一般的に減少してきた。
【0003】
食事と運動不足は、体重増加または肥満の進行に関連した鍵となるリスク要因であることが知られている。体重過多または肥満として臨床的に診断されている人の数が増加しており、多くの健康諮問機関にとって、過剰な体重増加または肥満が、重大な健康に関する懸案事項となっている。肥満はすべての年齢群に影響を与え、かつ高血圧、冠動脈心疾患または糖尿病のような多くの健康リスクに関連する慢性疾患である。過剰な体脂肪を有し、および/または体重が極度に過剰である、すなわち体重が、同じ年齢、身長および国籍の人に対して一般的に健康であると理解されるものよりも、有意に多い場合に、その人は肥満である。過剰な体脂肪の存在はまた、その人が身体障害となるリスクを増加させる。
【0004】
数十年間にわたり、政府、慈善基金および健康諮問機関が、例えば食事、運動、喫煙および日光浴に関連する健康アドバイスを発行してきた。そのような機関から提供された食事または運動ガイドラインは、公的に全体として、または最適には高齢者、小児および妊婦のような一群に向けて、体重増加または肥満傾向を予防することを目的としていた。このアドバイスはしたがって、ごく一般的なものにすぎず、もともと、個体の遺伝的特性のような、個別のリスク要因を考慮することは出来ない。さらに、最近では研究により、特定の食物や薬物などと医学的状況との間の相互関係における発見が非常に大きな注目を浴びており、しばしば健康不安の原因となっている。
【0005】
健康状態、および医学的状態にかかりやすくなることに寄与する要因は、集団間、および集団内の個体間で様々であり、したがって、個体にとって、そのような一般的な報告および研究から、彼または彼女の特定の環境に適切な有用なアドバイスを導くことは不可能であることが多い。
【0006】
医師および他の専門家にとって、個体の要求に対してより適合したアドバイスを提供するために、プラスの効果またはマイナスの効果に関連した任意の遺伝子を同定するためにその個体の遺伝的組成を解析することが望ましい。栄養素の効果、または栄養法の効果の機構を決定することによって、(ニュートリジェノミクスとも呼ばれる)ニュートリジェネティクスの科学により、人の健康における、これらの特定の栄養素間の関係と、特定の栄養法間の関係と、を定義することが試みられている。個体のゲノム中の多数の遺伝子変異を試験するための技術は現在かなり進歩している。ニュートリジェネティクス分野における現在の問題は、十分に大きな変異のプールを同定することであり、それによって有益なアドバイスを、その健康およびフィットネスに寄与しうる様式で、個体に提供することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願は上記した懸案を鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、個体に対して、体重減少プログラムを選択するための方法を含む。一態様において、同方法は、遺伝子座位置313、341、または両方における、個体のGSTP1遺伝子型を決定する工程と、個体が位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型、位置313にてヘテロ接合型(A/G)、位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型、位置341にてヘテロ接合型(C/T)およびこれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子型を含む場合に、同個体に対して体重減少プログラムを選択する工程と、を含み、体重減少プログラムは、位置313および341にて野生型である比較可能な個体に対する体重減少プログラムから改変される。同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型か、または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含む場合に、個体が、位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型である個体と比較して、体重減少プログラムに対してより大きな応答を得ることが予測されることを提供する。本発明の方法の別の態様はさらに、個体の遺伝子型が、位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかを含む場合、同個体が、位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型である個体と比較して、体重減少プログラムに対して、より大きな応答を得ることが予想されることを提供する。
【0009】
本発明の別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含む場合に、選択された体重減少プログラムは、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、エネルギー摂取がより高く、期間がより短い、規定食プログラムが含むことを提供する。同方法にはさらに、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、より高いカルシウム摂取を含む選択された体重減少プログラムを含む。
【0010】
本発明の更に別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置341にてC対立遺伝子に対してホモ接合型である時に、位置341にてT対立遺伝子からなる遺伝子型を有する個体と比較して、エネルギー摂取がより低く、期間がより長い、規定食プログラムを含む、体重減少プログラムを提供する。
【0011】
本発明の別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型、および/または位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型である時に、位置313にてG対立遺伝子に対してホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)を含むとともに位置341にてT対立遺伝子に対してホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)を含む遺伝子型を有する個体と比較して、エネルギーの摂取がより低く、または期間がより長い、規定食プログラムを含む体重減少プログラムを提供する。
【0012】
本発明のまた別の様態おいて、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置341にてT対立遺伝子に対してホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかである時に、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、アブラナ科野菜摂取がより高い規定食プログラムを含む、選択された体重減少プログラムを提供する。
【0013】
本発明の更に別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかである時に、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、ビタミンA摂取がより高い規定食プログラムを含む、選択された体重減少プログラムを提供する。
【0014】
本発明の別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対してホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかである時に、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、カルシウム摂取がより高い規定食プログラムを含む、選択された体重減少プログラムを提供する。
【0015】
本発明のまた別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかであり、かつ位置341にてT対立遺伝子に対してホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかである時に、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較してビタミンA摂取がより高く、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較してアブラナ科野菜摂取がより高い規定食プログラムを含む、選択された体重減少プログラムを提供する。
【0016】
本発明の更に別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかであり、かつ位置341にてT対立遺伝子に対してホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかである時に、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較してカルシウム摂取がより高く、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較してアブラナ科野菜摂取がより高い規定食プログラムを含む、選択された体重減少プログラムを提供する。
【0017】
本発明はまた、体重の増加を達成する必要がある個体に対する規定食プランを選択するための方法も提供する。本方法は、GSTP1遺伝子の遺伝子座位置313にて、個体のGSTP1遺伝子型を測定する工程と、個体が位置313にてA対立遺伝子に対してホモ接合型である時に、同個体に対して規定食プログラムを選択する工程と、を含み、規定食プログラムは、体重増加を達成する必要のない個体に対する規定食プログラムと比較して、より低いカルシウム摂取を推奨している。
【0018】
本発明の他の様態は、GSTP1対立遺伝子が、1つまたはそれ以上の対立遺伝子を有する、少なくとも5つの遺伝子のパネルの部分として決定されることを提供する。本方法はさらに、パネルの他の遺伝子が、メチレン−メトラ−ヒドロ−葉酸−リダクターゼ(MTHFR)、メチオニンシンシンターゼリダクターゼ(MS−MTRR)、メチオニンシンターゼ(MTR)、シスタチオニンベータシンターゼ(CBS)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM1(GSTM1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼT1(GSTT1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼpi(GSTP1)、アポリポプロテインC−III(APOC3)、アポリポプロテインA−V(APOA5)、コレステリルエステルトランスファータンパク質(CETP)、イポプロテインリパーゼ(LPL)、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)、アンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)、ビタミンD受容体(VDR)、コラーゲンI型アルファ1(COL1A1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ2(PPAR−γ2)、エポキシドヒドロラーゼI(EPHX1)、肝臓リパーゼ(LIPC)、パラオキソナーゼ1(PON1)、アルコールデヒドロゲナーゼIB(ADH1B)、アルコールデヒドロゲナーゼIC(ADH1C)、アンジオテンシノーゲン(AGT)、シトクロームP450 1A1(CYP1A1)、シトクロームP450 1A2*1B(CYP1A2_1B)、シトクロームP450 1A2*1E(CYP1A2_1E)、およびシトクロームP450 1A2*1F(CYP1A2_1F)から選択されることを提供する。
【0019】
本発明はまた、50歳未満の個体に対する体重減少プログラムを選択するための方法も提供する。同方法にはさらに、遺伝子座位置−174にて個体のIL−6遺伝子型を決定する工程を含む。同方法にはさらに、個体が位置−174にてG対立遺伝子に対してホモ接合型及び位置−174にてヘテロ接合型(C/G)からなる群から選択される遺伝子型を含む場合、個体に対して体重減少プログラムを選択する工程を含み、同体重減少プログラムは、位置−174にてC対立遺伝子に対してホモ接合型である比較可能な個体に対する体重減少プログラムから改変される。同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置−174にてC対立遺伝子に対してホモ接合型である時に、個体が、位置−174にてG対立遺伝子に対するホモ接合型および位置−174にてヘテロ接合型(C/G)からなる群から選択された遺伝子型を有する個体と比較して、体重減少プログラムに対してより大きな応答を得ることが予測されることを提供する。本発明による方法のまた別の様態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置−174にてG対立遺伝子に対するホモ接合型および位置−174にてヘテロ接合型(C/G)からなる群から選択される時に、選択された体重減少プログラムが、位置−174にてC対立遺伝子に対してホモ接合型の遺伝子型を含む個体と比較して、エネルギー摂取がより低く、および/または期間がより長い、規定食プログラムを含むことを提供する。本発明のさらに別の様態において、同方法はさらに、IL−6対立遺伝子が、1つまたはそれ以上の対立遺伝子を有する少なくとも5つの遺伝子のパネルの一部として決定されることを提供する。本方法はさらに、パネルの他の遺伝子が、メチレン−メトラ−ヒドロ−葉酸−リダクターゼ(MTHFR)、メチオニンシンシンターゼリダクターゼ(MS−MTRR)、メチオニンシンターゼ(MTR)、シスタチオニンベータシンターゼ(CBS)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM1(GSTM1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼT1(GSTT1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼPi(GSTP1)、アポリポプロテインC−III(APOC3)、アポリポプロテインA−V(APOA5)、コレステリルエステルトランスファータンパク質(CETP)、イポプロテインリパーゼ(LPL)、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)、アンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)、ビタミンD受容体(VDR)、コラーゲンI型アルファ1(COL1A1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ2(PPAR−γ2)、エポキシドヒドロラーゼI(EPHX1)、肝臓リパーゼ(LIPC)、パラオキソナーゼ1(PON1)、アルコールデヒドロゲナーゼIB(ADH1B)、アルコールデヒドロゲナーゼIC(ADH1C)、アンジオテンシノーゲン(AGT)、シトクロームP450 1A1(CYP1A1)、シトクロームP450 1A2*1B(CYP1A2_1B)、シトクロームP450 1A2*1E(CYP1A2_1E)、およびシトクロームP450 1A2*1F(CYP1A2_1F)から選択されることを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、GSTP1の2つの対立遺伝子と肥満度指数との間の関連性を同定し、さらに特定の食事要因とこれらの対立遺伝子との間の関連を見出した。さらに、本発明は、IL−6の−174対立遺伝子と年齢に関連した脂肪度指数との間の関連性を同定した。これらの対立遺伝子が個体に存在するかしないかを評価することによって、個体に対する、体重マネージメントプログラムを選択することが可能である。
【0021】
本発明は、遺伝子座位置313、341または両方での個体のGSTP1遺伝子型を決定することによって、同個体に対する、体重減少プログラムのような体重マネージメントプログラムを選択するための方法に関する。
【0022】
グルタチオンS−トランスフェラーゼpi遺伝子(GSTP1)は、生体異物代謝にて機能すると考えられ、がんおよび他の疾病への感受性における役割を果たす、活性な、機能的に異なるGSTP1変異体タンパク質をコードしている多型遺伝子である。しかしながら、通常の食事要因との関連性は現在までのところ報告されていない。GSTP1遺伝子(オープンリーディングフレーム)の配列とその翻訳は、それぞれ配列番号1および配列番号2として示されている。野生型(cDNA)配列が示されている(配列番号3)。数字は、最初のメチオニンATGを配列の1〜3番として、オープンリーディングフレームに基づいている。
【0023】
GSTP1の2つの一般的な対立遺伝子が存在する。1つは核酸のオープンリーディングフレームの位置313にあり、AがGに代わっており(配列番号4)、位置341の他のものは、CがTに代わっている(配列番号6)。両方の変化がまた、コーディング配列の変化を引き起こし、結果として、タンパク質変異体Ile105Val(配列番号5)およびAla114Val(配列番号7)となる。遺伝子は常染色体であり、したがって個体は各対立遺伝子にてホモ接合型またはヘテロ接合型である。
【0024】
GSTP1遺伝子の配列(オープンリーディングフレーム)およびその翻訳は、それぞれ配列番号1および配列番号2として示されている。野生型(cDNA)配列が示されている(配列番号3)。数字は、最初のメチオニンATGを配列の1〜3番として、オープンリーディングフレームに基づいている。上記で示唆したように、位置313と341での変化はまたコーディング配列を与え、またそれぞれ文献中でIle105ValおよびAla114Valと呼ばれている。本発明において、対立遺伝子は、遺伝子スクリーニングがまずヌクレオチド解析を参照することによって実施されるため、ヌクレオチドナンバリングおよび変化を参照することによって引用される。
【0025】
単一のヌクレオチド多型がまた、Database of Single Nucleotide Polymorphisms(dsSNP)、Bethesda(MD):National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine(Sherry ST,et al;dbSNP:the NCBI database of genetic variation.Nucleic Acids Res.2001 Jan 1;29(1):308−11を参照のこと)によって分類される。SNPsは、固有のアクセッション番号によって分類される。本願の場合、GSTP1 A313G多型は、SNPアクセッション番号rs1695であり、GSTP1 C341T多型は、rs1138272である。
【0026】
本発明の実施形態には、遺伝子座位置313、341または両方での個体のGSPT1遺伝子型を決定することが含まれる。個体の遺伝子型は一般的に、たとえば、頬スワッブまたは類似の試料の形態で、個体より得た核酸、通常はDNA試料の解析によって決定される。解析は、本技術分野で公知の従来の方法を用いて実施される。これには、位置313および341の1つまたは両方での遺伝子の増幅と配列決定のためのPCRの利用、または野生型と変異体配列へ異なってハイブリッド形成することによる、対立遺伝子間の区別を可能にする核酸プローブの利用が含まれてよい。対立遺伝子はまた、タンパク質コード変化に反映されるため、対立遺伝子を、たとえば、イムノアッセイまたは他のタンパク質解析方法によって、タンパク質レベルで検出してよい可能性がある。そのような方法は、検出可能なレベルのGSTP1タンパク質を含む、個体からの試料を用いて実施され得る。
【0027】
本発明の実施形態はまた、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対してホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかである時に、位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型である個体と比較して、体重減少プログラムに対してより大きな応答を得ることが予測されることを含む。さらに、個体の遺伝子型が、位置341にてT対立遺伝子に対してホモ接合型であるか、位置341にてヘテロ接合型(C/T)であると決定された場合、個体がまた、位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型である個体と比較して、体重減少プログラムに対してより大きな応答を得ることが予測される。
【0028】
本発明の別の実施形態は、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対してホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかである時に、選択された体重減少プログラムに、位置313にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、エネルギー摂取がより高く、期間がより短い規定食プログラムが含まれることを含む。同方法はさらに、位置311にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、より高いカルシウム摂取を含む、体重減少プログラムを選択することを含む。
【0029】
GSTP1 313多型の異なる対立遺伝子を有する対象において、BMIとカルシウム摂取との間に関連性が存在する。AA対立遺伝子に対するそれらのホモ接合型は、低カルシウム摂取より利益を得るようであり、ここで、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)である対象は高摂取で利益を得る。低摂取とは、摂取が1000mg/日まで、たとえば800mg/日までなどの900mg/日までであることを意味する。高摂取とは、摂取が、少なくとも1100mg/日、たとえば1300mg/日などの少なくとも1200mg/日であることを意味する。
【0030】
本発明の幾らかの実施形態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置341にてT対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてヘテロ接合型(C/T)のいずれかを含む場合、位置341にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、アブラナ科野菜摂取がより高い規定食プログラムを含む体重減少プログラムを提供する。
【0031】
(Cruciferaeとも呼ばれる)Brassicaceae属の食用植物がアブラナ科野菜と呼ばれる。そのような野菜のもっとも一般的な食物には、キャベツ、ブロッコリ、カリフラワー、ケール、ブリュッセルスプラウト、カブ、菜種、マスタード、ラディッシュ、ホースラディッシュ、クレスおよびクレソンが含まれる。本発明の方法を用いて、アブラナ科野菜を多く摂取する位置341にてGSTP1 T対立遺伝子(すなわちヘテロ接合型CTまたはホモ接合型TT遺伝子型)を有する個体は、CCホモ接合型と比較して、より低いBMIと正の関連性を有する。好適には、CTまたはTT遺伝子型にて観察された利点に関連した、最小レベルのアブラナ科野菜摂取は、週あたり少なくとも3回のアブラナ科野菜の給仕、週あたり少なくとも5回のアブラナ科野菜の給仕、週あたり少なくとも7回のアブラナ科野菜の給仕である。アブラナ科野菜の給仕は、およそ100gの野菜の一部であると考えられる。
【0032】
本発明の実施形態において、同方法はさらに、個体の遺伝子型が、位置313にてG対立遺伝子に対するホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)のいずれかを含む場合、位置313の位置にて野生型遺伝子型を有する比較可能な個体に対する体重減少プログラムと比較して、ビタミンA摂取がより高い、規定食プログラムを含む選択体重減少プログラムを提供する。
【0033】
個体中のビタミンA摂取は、食材の組み合わせからであり、ビタミンサプリメントの形態、一般的には、レチノールまたは体内でレチノールに変換されるカロテン類の形態である。位置313にてG対立遺伝子に対する個体のホモ接合型または位置313にてヘテロ接合型(A/G)では、ビタミンの低摂取と関連してより高いBMIである。したがって、そのような個体は、このビタミンを含む食物供給源を増やすこと、およびビタミンAサプリメントを摂取することの少なくともいずれかによって、それらの食事でのビタミンA摂取を増加させることから利益を得てよい。好適には、AGおよびGG遺伝子型にて観察される利点に関連するビタミンA摂取最小レベルは、少なくとも3000(国際ユニット)/日、たとえば、少なくとも5000IU/日のような、少なくとも4000IU/日であってよい。
【0034】
本発明のこの方法及び他の方法において、食物サブタイプの摂取レベルの推奨(すなわち、場合によってはアブラナ科野菜、ビタミンAまたはカルシウムであり得る)は、現在の食事に関連した質問データを考慮して改変してよい。たとえば、高いアブラナ科野菜摂取から利益を得る可能性が高い個体がすでに最小摂取量を超過している場合、最小レベルの推奨は、現在の規定食摂取で達成されるようなレベルである。
【0035】
本発明のさらなる実施形態は、体重の増加を達成する必要がある個体に対する規定食プランを選択するための方法である(すなわち体重増加プログラム)。この方法には、GSPT1遺伝子の遺伝子座位置313にて、個体のGSPT1遺伝子型を決定することが含まれる。とりわけ、高カルシウム食を摂取する313Aホモ接合型遺伝子型を有する個体が、G対立遺伝子を有するものと比較して高いBMIを有することから、そのような対象に、体重増加目標を達成することを補助するために、高カルシウム食サプリメントを処方してよく、またはカルシウムが豊富な食品を推奨してよい。位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型を有する個体には、体重増加の達成を必要としない対象と比較して、低カルシウム摂取規定食プログラムを処方可能である。さらに、本発明はまた、体重増加の達成を必要とする個体に対して、規定食プランを選択するために、GSPT1遺伝子の位置341で、GSPT1遺伝子型を決定することを熟考する。
【0036】
本発明の別の実施形態は、遺伝子座位置−174で、個体IL−6遺伝子型を決定することによって、同個体に対して、体重減少プログラムのような、体重マネージメントプログラムを決定するための方法である。インターロイキン−6(IL−6)遺伝子(配列番号10は、配列番号11をコードしている野生型IL−6を表している)は、位置−174でのプロモーター領域中のヌクレオチド配列が、CまたはGであってよい(配列番号8)多型遺伝子である。単一ヌクレオチド多型は、Database of Single Nucleotide Polymorphisms(dsSNP)、Bethesda(MD):National Center for Biotechnology Information,National Library of Medicine(Sherry ST,et al;dbSNP:「遺伝子変異体のNCBIデータベース」Nucleic Acids Res.2001 Jan 1;29(1):308−11を参照のこと)によって分類される。SNPsは、固有のアクセッション番号によって分類される。この場合、IL−6 −174多型は、アクセッション番号rs1800795(配列番号9)である。
【0037】
個体の遺伝子型は一般的に、たとえば、頬スワッブまたは類似の試料の形態で、個体より得た核酸、通常はDNA試料の解析によって決定される。解析は、本技術分野で公知の従来の方法を用いて実施される。これには、位置−174での遺伝子の増幅と配列決定のためのPCRの利用、または野生型と変異体配列へ異なってハイブリッド形成することによる、対立遺伝子間の区別を可能にする核酸プローブの利用が含まれてよい。
【0038】
本実施形態において、50歳未満の個体に対して体重減少プログラムを選択する方法が提供される。同方法は、遺伝子座位置−174にて個体IL−6遺伝子型を決定する工程と、個体が位置−174にてG対立遺伝子に対してホモ接合型か、位置−174にてヘテロ接合型(C/G)かいずれかである時に、体重減少プログラムを選択する工程と、を含み、同体重減少プログラムは、位置−174にて野生型である比較可能な個体に対する体重減少プログラムから改変される。
【0039】
本発明の多くの実施形態において、GSTP1および/またはIL−6の対立遺伝子が、遺伝子チップアレイ内で決定され、そこでは、ライフスタイルや食事リスク要因に関連した多数の他の遺伝子変異体もまた解析される。
【0040】
本発明は、GSTP1対立遺伝子および/またはIL−6対立遺伝子を単独で試験することによって実施されてよいが、対立遺伝子を、食事および健康に関連した遺伝子のパネルの部分として決定することも熟慮される。
【0041】
個体の遺伝型が、以上で言及した2つまたはそれ以上の食事要因が有益な、または有害な効果と関連するようなものである場合、本発明は、そのような要因の任意の組み合わせに関連するライフスタイル規定食アドバイスプランを提供することが熟考される。
【0042】
「個体(Individual)」または「対象」
本発明はヒトを対象とした実施を意図している。一般的に、ヒトは大人、すなわち18歳またはそれ以上である。対象は男性または女性であってよい。
【0043】
本明細書で報告される関連性は、両方の性別の白人を対象として決定されており、男性および女性間で有意な差違は同定されていない。しかしながら、異なる民族亜集団にて連鎖不均衡が発生しうるハプロタイプ解析とは異なり、本発明は、タンパク質コード領域中の対立遺伝子に関する。このことは、異なる遺伝子型間の差違が、構造、したがってGSTP1タンパク質の活性に対する変化の結果であることを示唆している。したがって、本発明は、特定の対立遺伝子の特定の頻度における差違に関係なく、すべての集団群においてタンパク質の活性が同様であるため、アフリカ系黒人または東洋起源のような、他の民族集団群を対象としても実施可能である。
【0044】
IL−6における多型に関して、本明細書で報告する関連性は、両方の性別の白人を対象として決定され、男性および女性の間で有意な差違は同定されていない。IL−6における多型が、遺伝子の発現レベルに影響を与えること、またこの差違は、対立遺伝子の頻度が変化する場合でも、すべての民族亜群にて維持されるものと考えられている。したがって、本発明はまた、特定の対立遺伝子の特定の頻度における差違に関係なく、すべての集団群においてタンパク質の活性が同様であるため、アフリカ系黒人または東洋起源のような、他の民族集団群を対象としても実施可能である。
【0045】
本発明において、本発明の関連する方法に対する場合のように、比較可能な個体とは、野生型GSPT1 313(A対立遺伝子に対するホモ接合型)、341(T対立遺伝子に対するホモ接合型)および/またはIL−6 −174対立遺伝子(C対立遺伝子に対するホモ接合型)を有すると決定された個体または個体群である。さらに、比較可能な個体は、方法に対してその他の関連する特徴については本方法の対象である個体と同様である。例えば、そのような関連する特徴には、年齢、体重、身長、健康歴、性別、他の遺伝的特徴、ライフスタイル要因および/または食事が含まれうる。
【0046】
体重減少プログラムに対する応答の予測
本発明のGSTP1またはIL−6多型が、体重減少プログラムに対する応答を予測するために、個体またはヘルスケア施術士によって使用されてよい。本発明のデータは、平衡カロリー制御食において、GSTP1 313GまたはGSTP1 341T対立遺伝子を有する対象の体重減少が、野生型対立遺伝子におけるものよりも大きかったことを示している。さらに、本発明のデータは、IL−6遺伝子の場合、BMIについて、年齢に関連した効果及びIL−6対立遺伝子に関連した効果の両方が存在することを示している。
【0047】
この情報は、変異体対立遺伝子を有する個体よりも、その体重減少が小さい可能性がある、野生型対立遺伝子を有する個体に、そのような食事をアドバイスするために使用してよい。そのような情報は、たとえば、臨床設定にて体重減少プログラムにて、または利益志向または非営利体重減少機関にて有益でありうる。体重減少の実際の程度は、食事の性質および/または食事に伴う運動管理に依存する。それぞれのプログラムに対して、参加者の過去のまたは予測平均体重減少を、GSTP1またはIL−6遺伝子型を考慮して個体に対して改変可能であり、そのような個人の予想または目標が、それらの特定の遺伝的構成に対してより調整される。たとえば、GSTP1野生型対立遺伝子を有する個体には、その体重減少が、同一の食事または運動プログラムに従った参加者に対する平均より少ない可能性があると助言してよく、一方GSTP1 313GまたはGSTP1 341T対立遺伝子を有する参加者には、同様のプログラムの過程にわたり、平均よりも体重減少が大きくなることが予想可能である。さらに、IL−6G対立遺伝子を有する50歳未満の個体(「高BMI−関連プロファイル」)には、その体重減少は、同一の食事または運動プログラムを経験した参加者に対する平均より小さい可能性があり、一方で、これらの年齢−遺伝子型組み合わせではない個体(「低BMI−関連プロファイル」)は、同様のプログラムの過程にわたり、平均より減少が大きいと予測可能である。
【0048】
規定食プログラム
特定の食事における相対的な見込み体重減少を予測することとともに、本発明はまた、そのようなプログラムの文脈内で、GSTP1対立遺伝子またはIL−6遺伝子型に基づくそのようなプログラムを調整する可能性を許容してよい。たとえば、野生型GSTP1対立遺伝子を有する個体に、見込み体重減少の予測においてのみでなく、食事のカロリー摂取を低下させること、運動を増加させること、またはより長くプログラムに参加することのいずれかによって、より大きな減少を達成するための方法における、ガイダンスおよびアドバイスを与えることでも助言可能である。同様に、GSPT1 313GまたはGSPT1 341T対立遺伝子を有する個体を、より意欲的な体重減少の目標、または野生型対立遺伝子を有する個体よりもより高いカロリー食を許容するように改変された規定食プログラムを設定可能である。
【0049】
個体に対する食事の的確なエネルギー摂取は関与する個体によって決定されることが必要であり、その場合、ヘルスケアアドバイザーとの相談が必要または適切であり、したがって的確な数が、すべての環境ですべての個体に適用可能であるわけではない。一般的に、食事における個体のカロリー摂取は、1000〜2000キロカロリー/日(およそ4200〜8400kJ/日)の範囲内である。したがって、特定の体重減少レジメに参加している個体の一群に対して、そのような群を、本発明のBMI−関連プロファイルにしたがって分けることが可能であり、食事を処方された高BMI−関連プロファイル(すなわち位置313にてA対立遺伝子に対するホモ接合型または位置341にてC対立遺伝子に対するホモ接合型)の個体は、低BMI−関連プロファイルの個体(位置313にてG対立遺伝子を有する個体か、位置341にてT対立遺伝子を有する個体)よりも、エネルギー摂取が、たとえば約5〜10%のような、約5〜20%まで減少する。
【0050】
IL−6遺伝子型に関して、高BMI−関連プロファイルの個体に、可能性のある体重減少の予測においてのみでなく、食事のカロリー摂取を減少させること、運動を増加させること、またはより長くプログラムに参加することのいずれかによって、より大きな減少を達成する方法において、ガイダンスおよびアドバイスを与えることでも助言可能である。同様に、低BMI−関連プロファイルの個体は、より意欲的な体重減少目標、または野生型対立遺伝子を有する個体よりも、より高いカロリー食を許容するように改変された規定食プログラムを設定可能である。さらに、低BMI関連プロファイルの個体は、50歳以上の高BMIの増加リスクを軽減するために、若いうちに注意深く体重を制御するように助言可能である。
【0051】
ニュートリジェネティックスクリーニング
ニュートリジェネティックスクリーニングの分野には、規定食または他の健康に関連する要因への応答に関与する対象中の1つまたはそれ以上の遺伝子の解析が含まれ、そこで、その応答を変化させうる1つまたはそれ以上の対立遺伝が同定された。典型的な手順において、対象からのDNA試料が提供される。これは、頬スワッブまたは他の体試料の形態であってよい。DNAを次いで、1つまたはそれ以上の対象の遺伝子に、どの対立遺伝子が存在するか、決定するために試験する。対立遺伝子が、1つまたはそれ以上の有害転帰(たとえばより低い骨ミネラル密度、心臓病のより高いリスクなど)のリスクの増加を引き起こすことを同定される場合、個体には、そのリスクに対する説明によって、彼または彼女の食事を改変することを助言してよい。たとえば、助言には、脂肪、野菜亜群(ブラシカス、ニンニクなど)のような食物サブタイプの推奨最小量および/または最大量が含まれてよい。そのような方法は、以上で引用した米国特許第7,054,758号明細書の方法であり得る。
【0052】
ニュートリジェネティックスクリーニングの幾らかの実施形態において、個体はまた、DNA試料とともに、(たとえば現在の食事、年齢、性別、アルコール摂取および喫煙するかどうかの1つまたはそれ以上のような)ライフスタイル詳細を提供する質問に対する応答を提供してもよい。これにより、個体の要求にさらに対応する助言が可能となる。
【0053】
ニュートリジェネティックススクリーニングの典型的な方法において、GSTP1の対立遺伝子が、食事または健康に対する応答、またはそれらに対するリスク要因と関連する対立遺伝子変異体を含む、5〜20のような、5〜100の他の遺伝子のパネル内で決定されてよい。パネル内に含まれてよい遺伝子は、メチレン−メトラ−ヒドロ−葉酸−リダクターゼ(MTHFR)、メチオニンシンシンターゼリダクターゼ(MS−MTRR)、メチオニンシンターゼ(MTR)、シスタチオニンベータシンターゼ(CBS)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM1(GSTM1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼT1(GSTT1)、インターロイキン−6(IL−6)、アポリポプロテインA−V(APOA5)、アポリポプロテインC−III(APOC3)、コレステリルエステルトランスファータンパク質(CETP)、リポプロテインリパーゼ(LPL)、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)、アンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)、ビタミンD受容体(VDR)、コラーゲンI型アルファ1(COL1A1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ2(PPAR−γ2)、エポキシドヒドロラーゼI(EPHX1)、肝臓リパーゼ(LIPC)、パラオキソナーゼ1(PON1)、アルコールデヒドロゲナーゼIB(ADH1B)、アルコールデヒドロゲナーゼIC(ADH1C)、アンジオテンシノーゲン(AGT)、シトクロームP450 1A1(CYP1A1)、シトクロームP450 1A2*1B(CYP1A2_1B)、シトクロームP450 1A2*1E(CYP1A2_1E)、およびシトクロームP450 1A2*1F(CYP1A2_1F)から選択されてよい。
【0054】
ニュートリジェネリックスクリーニングの典型的な方法においてまた、IL−6の対立遺伝子が、食事または健康に対する応答、またはそれらに対するリスク要因と関連する対立遺伝子変異体を含む、5〜20のような、5〜100の他の遺伝子のパネル内で決定されてよい。パネル内に含まれてよい遺伝子は、メチレン−メトラ−ヒドロ−葉酸−リダクターゼ(MTHFR)、メチオニンシンシンターゼリダクターゼ(MS−MTRR)、メチオニンシンターゼ(MTR)、シスタチオニンベータシンターゼ(CBS)、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)、スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)、グルタチオンS−トランスフェラーゼM1(GSTM1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼT1(GSTT1)、グルタチオンS−トランスフェラーゼpi(GSTP1)、アポリポプロテインA−V(APOA5)、アポリポプロテインC−III(APOC3)、コレステリルエステルトランスファータンパク質(CETP)、リポプロテインリパーゼ(LPL)、内皮一酸化窒素シンターゼ(eNOS)、アンジオテンシン変換酵素遺伝子(ACE)、ビタミンD受容体(VDR)、コラーゲンI型アルファ1(COL1A1)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ2(PPAR−γ2)、エポキシドヒドロラーゼI(EPHX1)、肝臓リパーゼ(LIPC)、パラオキソナーゼ1(PON1)、アルコールデヒドロゲナーゼIB(ADH1B)、アルコールデヒドロゲナーゼIC(ADH1C)、アンジオテンシノーゲン(AGT)、シトクロームP450 1A1(CYP1A1)、シトクロームP450 1A2*1B(CYP1A2_1B)、シトクロームP450 1A2*1E(CYP1A2_1E)、およびシトクロームP450 1A2*1F(CYP1A2_1F)から選択されてよい。
【0055】
上記遺伝子に対する遺伝子パネルの多型が、パネル内に含まれる場合に、表1にて列記した以下の遺伝子から選択されてよい。
【0056】
【表1】
したがって本明細書で記述される本発明の方法の変法が、313および341にて対立遺伝子の1つまたは両方を決定するために、GSTP1遺伝子上のみで、またはニュートリジェネリックスクリーニング法の一部として実施されてよい。後者の場合、同方法には、上記表の遺伝子1つまたはそれ以上の対立遺伝子の決定が含まれてよい。
【0057】
さらに、本明細書で記述した本発明の種々の方法を、−174対立遺伝子を決定するために、IL−6遺伝子上のみで、またはニュートリジェネリックスクリーニング法の一部として実施してよい。後者の場合、同方法には、上記表1の遺伝子1つまたはそれ以上の対立遺伝子の決定が含まれてよい。
【0058】
肥満度指数(BMI)
用語「体重過多」および「肥満」が、所与の身長に対して一般的に健康であると認識されるものよりも大きな体重範囲を意味することが、本技術分野で一般的に公知である。その肥満度指数(BMI)を計算するために、その体重測定と身長を用いることによって、個人が体重過多または肥満であると分類されてよい。体重肥満指数は、以下の式
【0059】
BMI(kgm−2)=体重(kg)÷[身長(m)]
を用いて計算してよい。BMIは、ほとんどの人々にとって、体脂肪の量と比例することから、体重過多または肥満であると個体を分類するために使用される傾向にある。成人に対して、健康なBMIは典型的に、18.5〜25kgm−2である。成人が、少なくとも25kgm−2であり30kgm−2未満のBMIを有する場合、典型的に体重過多であると認識される。30kgm−2以上のBMIはその成人が肥満であることを示唆する。
【0060】
本発明は体重不足、健康体重(18.5〜25のBMI)、体重過多および肥満個体において有用であり得る。本発明は、規定食プログラムの一部として使用する時に、体重過多または肥満として分類された人においてとりわけ有用であってよい。健康体重個体における本発明の利用はまた、18.5〜25範囲でのBMIの維持においてアドバイスを提供することにおける利用が可能である。
【0061】
人対象に対する個別ライフスタイルアドバイスプランを決定するための種々の方法が、その開示物が本明細書にて参考文献によって組み込まれている、米国特許第7,054,758号明細書にて開示されている。一般的に、方法には、通常コンピュータによって補助される、以下の工程:
【0062】
(i)第一データセットをデータ処理デバイスに提供する工程であって、同第一データセットには、疾患感受性の増加または減少、ライフスタイルリスク要因に関連することが知られている個体対立遺伝子の存在に関連している情報が含まれている、工程と;
【0063】
(ii)第二データセットをデータ処理デバイスに提供する工程であって、同第二データセットには、同リスク要因を少なくとも1つのライフスタイル推奨とマッチさせる情報が含まれている、工程と;
【0064】
(iii)対象内に存在する対立遺伝子を同定する第三データセットを入力する工程であって、同対立遺伝子は第一データセットの対立遺伝子の1つまたはそれ以上である、工程と;
【0065】
(iv)同対立遺伝子を第一データセットによって提供されたリスク要因と相互関連させることによって、ヒト対象中に存在する対立遺伝子に関連するリスク要因を決定する工程と;
【0066】
(v)リスク要因を第二データセットからのライフスタイル推奨とマッチさせることによって、工程(iv)からの各同定されたリスク要因に基づく少なくとも1つのライフスタイル推奨を決定する工程と;
【0067】
(vi)工程(v)にて決定した少なくとも1つのライフスタイル推奨を含む、個別ライフスタイルアドバイスプランを作成する工程と;
が含まれる。
個別ライフスタイルアドバスプランには、食物サブタイプの推奨最大量および/または最小量が含まれてよい。他の遺伝的マーカーのうち、GSTP1遺伝子型を考慮に入れる、個別ライフスタイルアドバイスプランを作り出すために、GSTP1遺伝子と本明細書で開示された内容との関連性を、上記工程の工程(i)のための対立遺伝子、工程(ii)のためのBMIおよび現在の食物摂取に関連しているリスク要因、及び工程(v)のための本明細書で開示される推奨を提供するために使用してよい。
【0068】
本発明のさらなる実施形態は、キットおよびキットを使用するための方法を提供し、キットには、個体のDNA試料を回収するための手段、及び任意選択的に、個体BMIとアブラナ科野菜、ビタミンAおよびカルシウムの1つまたはそれ以上の摂取に関連するデータを集めるための質問のための手段が含まれる。「BMIに関連するデータ」は、BMIそれ自体、またはBMIを計算可能な身長および体重であってよい。キットを使用するための方法には、GSTP1の位置313および/または341および/またはIL−6にて個体の遺伝子型を決定するためにDNA試料を解析すること、およびGSTP1遺伝子型および/またはIL−6遺伝子型の決定に基づいて、食事および/またはライフスタイル(たとえば運動または活動レベル)に関連する推奨を提供することが含まれる。
【0069】
本願はここで、米国仮特許出願第61/307,522号明細書および第61/307,526号明細書を参照によりそのすべてを組み込んでいる。
本発明の種々の実施形態が、詳細に記述された一方で、これらの実施形態の改変および適合を、当業者が気付くことは明らかである。しかしながら、そのような改変および適合が、以下の典型的な請求項にて記述されるように、本発明の範囲内であることが明白に理解されるべきである。
【0070】
実施例
以下の実施例は、例示の目的のために提供され、本明細書で請求するような本発明の範囲を限定する意図はない。当業者が気付く任意の変更が、本発明の範囲内に入ることが意図される。本明細書で引用されたすべての参考文献が、本明細書との不一致が存在しない程度まで、本明細書にて参考文献として組み込まれている。
【0071】
実施例1〜5にて以下記述するように、制御された食事に対する個体の応答(体重減少)は、野生型対立遺伝子を有する個体と比べて、1つまたはその他の変異体遺伝子型(位置313にてAGまたはGG、位置341にてCTまたはTT)を有する個体においてより大きいことが発見された。341にて変異体遺伝子型(CTまたはTT)を有する個体が、野生型対立遺伝子を有する個体と比べて、より低い肥満度指数(BMI)を有することがわかった。
【0072】
実施例1〜5にて提供されたデータは、BMIと体重調整およびGSTP1遺伝子型の関連性が存在することを示している。この関連性によって、遺伝子型に依存した食事および運動に対する可能性ある結果として、予測が可能となり、個体またはそのような個体にアドバイスを与える健康についての専門家が、体重減少を達成するか、または健康体重を維持することにおいて利点がある可能性が高い、規定食および/または運動プログラムについて決定することを可能にする。
【0073】
したがって、本発明の知見を、個体のGSTP1遺伝子型に基づいた、一般的な規定食および/またはライフスタイルアドバイスの両方、ならびに食物サブタイプ摂取、すなわち、アブラナ科野菜、ビタミンAおよびカルシウムの1つまたはそれ以上に関してのより特定のアドバイス、を提供するために使用してよい。
【実施例1】
【0074】
本実施例は、GSPT1多型と体重減少との間の遺伝的関連性を説明している。以下のような低血糖インデックス地中海食、推奨された運動ルーティンおよび習慣的なフォローアップ通院を含む、伝統的な体重マネージメントプログラムに従う、ギリシャ、アテネでの体重マネージメントクリニックに参加した、体重減少における試みが成功しなかった経歴(少なくとも2回またはそれ以上の成功しなかった試みと定義する)を有する41人の患者。
【0075】
朝食:1杯のコーヒーまたは紅茶、チーズスライス1および七面鳥ハムスライス1、またはマーガリン(Becel(商標名))およびわずかな蜂蜜を乗せた1枚の薄い全粒粉パンまたはライ麦ビスケット、または一人分の1.5%低脂肪牛乳でのシリアル
【0076】
昼食−夕食:
1日目:新鮮なサラダまたはゆでた野菜のサラダ1、チーズスライス1、スライスしたパン1。
【0077】
2日目:焼き魚+サラダ。
3日目:グリルチキン+サラダ。
4日目:トマト及びオリーブオイルとともに調理した一人分のサヤマメ。チーズスライス1。
【0078】
5日目:焼きフィレ+サラダ。
6日目:一人分のレンティル豆、チーズスライス1、スライスしたパン1。
7日目:焼き魚+サラダ。
患者の規定食プログラムを、位置313または341でのGSTP1変異体の遺伝的結果に基づき標準食より改変した。グルタチオンS−トランスフェラーゼpi遺伝子の位置313または341で、1つまたは2つの変異体対立遺伝子のコピーを有する患者に、食事に、その患者へ提供した提案とレシピで、通常量のアブラナ科(5回/週)とニンニク(毎日)を含む食事、また必要であればブロッコリ抽出物およびニンニクサプリメントを確実に追加することを推奨した。
【0079】
BMI試験結果を、通常の間隔で、患者の臨床記録から解析した。41人の個体は、100日後にBMI測定した(平均フォローアップ167日または5.6ヶ月)。
ニュートリジェネティック試験のために、Sciona Body Benefitsキットを使用した(コロラド州ボルダーに所在のSciona社)。頬細胞試料を、2つの頬スワッブを用いて臨床的に採取し、患者は、包括食とライフスタイル質問を完了した。スワッブと試料をクーリエ便にてSciona社に送り、遺伝的試験をSequenom Mass Arrayシステムを用いて実施した。
【0080】
統計学的方法:GSTP1遺伝子の位置313および341中の多型における個体の遺伝子型と体重減少との間の遺伝的関連性を、5.6ヶ月フォローアップの時点での野生型ホモ接合型遺伝子型と、1つまたは2つの変異体対立遺伝子を有する遺伝子型間の、体重減少、BMI減少、BMI減少の割合を比較することによって評価した。関連性の統計学的有意性は、HelixTreeソフトウェアパッケージの直線回帰モデュール((著作権)Golden Helix Inc Bozeman,アメリカ合衆国モンタナ州)を用いることによって評価した。
【0081】
直線回帰解析には、共変数として年齢と性別が含まれた。各遺伝子型に対する調整平均BMI減少、体重減少およびBMI減少割合を、共分散解析を用い、S−Plus6(Insightful Corp,WA)中の最小調整平均を出力して評価した。(基準として、もともとのBMIの割合としての)GSTP1多型に対する平均体重減少、BMI減少およびBMI減少割合。統計学的有意差のp−値は、結果変数としてBMIの変化を意味する。
【0082】
【表2】
【表3】
【実施例2】
【0083】
本実施例は、GSPT1多型と肥満度指数との間の遺伝的関連性を説明している。遺伝子型、BMIおよび栄養素摂取データを、民族的に白人であると自己報告した、Sciona MyCellf(商標名)ニュートリジェネティック試験を受けた3000人の顧客から収集した(すべてのデータは解析の前に匿名とした)。遺伝子型決定および栄養素摂取解析を、実施例1にて記述したように実施した。遺伝子−栄養素−BMI相互関係を、個体の自己申告民族群にて、そして性別によって解析した。
【0084】
GSTP1遺伝子の位置341での多型における個体の遺伝子型と体重減少との間の遺伝的関連性を、野生型ホモ接合型遺伝子型と、1つまたは2つの変異体対立遺伝子を保持する遺伝子型との間のBMIを比較することによって評価した。関連性の統計学的有意差を、HelixTreeソフトウェアパッケージの直線回帰モデュール((著作権)Golden Helix Inc Bozeman,アメリカ合衆国モンタナ州)を用いることによって評価した。直線回帰解析には、共変量として年齢と性別が含まれた。1個または2個の、変異体対立遺伝子(「T」)のコピーを有する個体は、表3で示すように、野生型遺伝子型を有する個体と比べて、肥満度指数がより低かった。
【0085】
【表4】
【実施例3】
【0086】
本実施例および以下の実施例にて、用語「遺伝子−環境相互作用(gene−by−environment interaction)」または「遺伝子−栄養素相互作用(gene−by−nutrient interaction)」は、特徴、例えば肥満度指数における効果が、(個体の年齢であり得るような)ある環境下、または栄養素摂取条件下でのみ見られる、または特徴における異なる効果が、栄養素摂取または環境条件に依存して見られる、状況を意味する。
【0087】
本実施例は、ビタミンA摂取に関して、肥満度指数における、位置313でのGSTP1多型での遺伝子型の異なる効果を説明している。
直線回帰モデルまたは変量解析を用いた、栄養素相互作用による遺伝子の統計学的評価
【0088】
統計において、相互作用は、2つまたはそれ以上の変数の効果が単純な相加ではない時に加えられた統計学的モデルでの用語である。そのような用語は、1つの変数の効果が1つまたはそれ以上の他の変数値に依存することを反映する。本願の場合、BMI=aX1+bX2+eであり、式中、X1は所与の栄養素の個体の摂取または個体の年齢の値を表すことができ、X2は個体の遺伝子型を表すことができ、aおよびbは回帰モデルによって推定可能な係数である。これとは対照的に、BMI=aX1+bX2+c(X1×X2)+eは、変数X1とX2との間の相互作用でのモデルの例である(「e」は、その値が、観察されたBMIが直線モデルにフィットしたBMIの予測値から異なるまでの量である、無作為な変数を意味する)。相互作用変数は、カテゴリー変数(例えば遺伝子型)または実際の数字であってよい。相互作用の結果は、1つの変数の効果が、他の値に依存することである。
【0089】
分散または多重直線回帰モデルの解析により、差違が、遺伝子型変数、栄養素変数および相互作用変数に関して(一致の結果である差違とは対照的に)それらが実際の差違であることによるものである可能性を示唆する値を産する。有意値が、各個体因子(すなわち主要効果)ならびに因子相互関係の有意差(すなわち相互作用効果)に対して得られる。相互作用効果にて、有意なp−値が、2つまたはそれ以上の因子が考慮される場合に返ってくる。因子(栄養素摂取と遺伝子型または年齢と遺伝子型)間の相互作用が発見された場合、ANOVAまたは直線回帰モデルは、統計学的に有意な確立値(例えば<0.05)を産出する(James J.Jaccard,Robert Turrisi,Intreration Effects in Multiple Regression,Sage Publications,2003,ISBN 0−7619−2742−5)。遺伝子−栄養素相互作用または遺伝子−年齢相互作用の統計学的有意差を、S−Plus6.0中直線回帰モデルにて、相互作用項を含めることによって推定した。
【0090】
位置313でのGSTP1遺伝子型間の遺伝的関連性を、ビタミンA摂取の下半分(11,000IU/日未満)の個体、およびビタミンA摂取の上半分(11,000IU/日以上)の個体間で別々に研究した。
【0091】
【表5】
位置313での遺伝子型は、共変量として、この多型に存在する「G」対立遺伝子のコピー数、年齢および性別に依存して、カテゴリー変数0、1、2として遺伝子型を含んだ、分散の解析によって明らかになったように、p<0.025にて、この群の人々の間で、BMIと有意に関連した。
【0092】
【表6】
位置313での遺伝子型は、共変量として、この多型に存在する「G」対立遺伝子のコピー数、年齢および性別に依存して、カテゴリー変数0、1、2として遺伝子型を含んだ、分散の解析によって明らかになったように、p<0.16にて、この群の人々の間で、BMIと有意に関連した。
【0093】
位置313でのGSTP1遺伝子型(略してGSTP1_313)、ビタミンA摂取、年齢、性別、およびビタミンAとGSTP1遺伝子型の相互作用を含む、ソフトウェアS−Plus6.0を用いて適合した直線回帰モデルが、相互作用項が、p<0.01で統計学的に有意であることを示した。GSTP1_313のBMIにおける主要な効果は統計学的に有意ではなく、ビタミンAの主要な効果は、p<0.0001で統計学的に有意であった。
【0094】
したがって、BMIにおけるG対立遺伝子のより高いMBIとの有意な相互作用は、ビタミンAの摂取が低い個体間でのみ見られる。
313対立遺伝子の場合、変異体AGまたはGG遺伝子型の有益な効果が、ビタミンA摂取が低い対象では観察されなかった。十分なビタミンA摂取がないと、AGおよびGG遺伝子型はBMIの増加と関連する。この効果は、食事における十分なビタミンA摂取によって無効になる。
【実施例4】
【0095】
本実施例は、位置341でのGSTP1多型での遺伝子型の、アブラナ科野菜摂取に依存する、肥満度指数における異なる効果を説明している。位置341でのGSTP1遺伝子型間の遺伝的関連性を、アブラナ科野菜摂取の下半分(一週間あたり3回給仕未満)の個体、およびアブラナ科野菜摂取の上半分(一週間あたり3回給仕以上)の個体間で別々に研究した。
【0096】
【表7】
位置341での遺伝子型は、個体がT対立遺伝子を有する(1)か、または有していない(0)かに依存して、カテゴリー変数0、1として遺伝子型を含んだ、分散の解析によって明らかになったように、p<0.036にて、この群の人々の間で、BMIと有意に関連した。年齢および性別が共変量として含まれた。
【0097】
【表8】
位置341での遺伝子型は、分散の解析によって、p<0.43にて、この群の人々の間で、BMIと有意に関連しない。
位置341でのGSTP1遺伝子型(略してGSTP1_341)、アブラナ科野菜摂取、年齢、性別、およびアブラナ科野菜摂取とGSTP1_341遺伝子型の相互作用を含む、ソフトウェアS−Plus6.0を用いて適合した直線回帰モデルが、相互作用項が、p<0.02で統計学的に有意であることを示した。したがって、BMIにおけるT対立遺伝子のより低いBMIとの有意な関連性は、アブラナ科野菜の大きな摂取をした個体間で優先的に見られる。
【0098】
CTまたはTT341遺伝子型の有益な効果が、高いアブラナ科野菜摂取の個体にて観察され、この食物サブタイプの摂取が低い個体では利益は見られなかった。
【実施例5】
【0099】
本実施例は、カルシウム摂取に依存する肥満度指数における、位置313でのGSTP1多型での遺伝子型の異なる効果を説明している。これは、上記実施例3および4と類似した様式にて決定され、摂取が低い群(770mg/日未満)および摂取が高い群(770mg/日以上)群において以下の差違が観察された。
【0100】
【表9】
【表10】
野生型(AA)遺伝子型は、カルシウムの摂取が高い個体にてより高いBMIと関連するが、カルシウムの摂取が低い個体間でより低いBMIと関連する。
313遺伝子型は、カルシウム摂取に関連して、BMIにおいて効果を有する。とりわけ、AA遺伝子型を有する個体は、より低いカルシウム摂取により、(より低いBMIという観点から)利益を得ると思われ、一方で、高いカルシウム摂取は、そのような遺伝子型に対して有害であると思われる。反対に、313にてG対立遺伝子を有する個体(すなわちAGおよびGG遺伝子型)は、カルシウムの高摂取により利益を得ると思われる。
【実施例6】
【0101】
用語「遺伝子−環境相互作用」または「遺伝子−栄養素相互作用」は、特徴、例えば肥満度指数における効果が、(個体の年齢であり得るような)ある環境下、または栄養素摂取条件下でのみ見られる、または特徴に対する異なる効果が、栄養素摂取または環境条件に依存して見られる状況を意味する。
【0102】
本実施例は、年齢に依存する肥満度指数における、位置−174でのIL−6多型の異なる効果を説明している。位置−174でのIL6遺伝子型間の遺伝的関連性を、50歳未満の個体および50歳以上の個体間で別々に研究した。
【0103】
【表11】
ANOVAによって、IL6遺伝子の位置−174での遺伝子型が、G対立遺伝子を有する50歳未満のこれらの個体間でBMIと有意に関連し(p<0.016)、より高いBMIと関連することがわかった(表7A)。C(変異体)対立遺伝子のコピー数に依存して、カテゴリー変数0、1または2として遺伝子型を含んだ、分散の解析。性別が変数として含まれた。
【0104】
【表12】
ANOVAによって、IL6遺伝子の位置−174での遺伝子型が、50歳以上の個体間で、BMIと関連せず(p<0.49)、一方でG対立遺伝子を保持するこれらの年齢群個体で、より低いBMIを有する(表7B)。
【0105】
位置−174でのIL6遺伝子型、年齢、性別、および年齢とIL6−174遺伝子型の相互作用を含む、ソフトウェアS−Plus6.0を用いて適合した直線回帰モデルは、相互作用項が、p<0.086のp値であり、有意ではなかったことを示した。
【0106】
本発明の以上の記述は、例示の目的のために提示した。本記述は、本明細書で開示された形態に対する、本発明の限定を意図していない。その結果として、変法および改変は上記した示唆に相応しており、関連技術分野の当業者および知識が、本発明の範囲内である。本明細書以上で記述した実施形態はさらに、本発明の実施のために公知の最良の形態を説明し、当業者が、そのような、または他の実施形態で、そして本発明の特定の適用または利用によって要求される種々の改変とともに、本発明を利用することを可能にするという意図がある。付随する請求項は、先行技術によって許可される程度まで、異なる実施形態を含むように解釈されることが意図される。本明細書で引用した各発行物および参考文献は、そのすべてが参照により本明細書に組み込まれている。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]