特許第6159138号(P6159138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159138
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】エアレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 7/00 20060101AFI20170626BHJP
   B60C 7/10 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B60C7/00 H
   B60C7/10 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-97804(P2013-97804)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-218132(P2014-218132A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩村 和光
【審査官】 阿川 寛樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−035051(JP,A)
【文献】 特開2012−035792(JP,A)
【文献】 特開2011−246050(JP,A)
【文献】 特開平03−082601(JP,A)
【文献】 特開2007−118913(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/009042(WO,A1)
【文献】 特開平01−314602(JP,A)
【文献】 特開2013−139253(JP,A)
【文献】 特開2008−162495(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/057975(WO,A1)
【文献】 特開平03−189202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 7/00− 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地面を有する円筒状のトレッドリング、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブ、及び前記トレッドリングとハブとを連結するスポークを具えるエアレスタイヤであって、
前記スポークは、前記トレッドリングの内周面と接合するトレッド接合部と、前記ハブの外周面と接合するハブ接合部とを有するとともに、
前記トレッドリングの周方向の各位置xにおける、前記トレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さtxのタイヤ一周に亘る分布において、
記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0倍より大かつ0.6倍未満である周方向領域で、タイヤ一周を占め、
前記トレッドリングは、縦バネ定数Kが0.01〜100.00kN/mmの範囲であり、
前記スポークは、周方向にのびる1列以上のスポーク板列を具えるとともに、前記各スポーク板列は、タイヤ軸方向に対する角度が同一の同一傾斜のスポーク板が互いに平行に配列することを特徴とするエアレスタイヤ。
【請求項2】
前記スポークは、2列のスポーク板列を具えるとともに、
一方のスポーク板列は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜のスポーク板が互いに平行に配列する第1傾斜のスポーク板列からなり、
かつ他方のスポーク板列は、タイヤ軸方向に対して他方側に傾斜する第2傾斜のスポーク板が互いに平行に配列する第2傾斜のスポーク板列からなることを特徴とする請求項1記載のエアレスタイヤ。
【請求項3】
前記第1傾斜のスポーク板列の配列ピッチと、前記第2傾斜のスポーク板列の配列ピッチとは互いに等しく、前記配列ピッチの位相を1/2ピッチずらせていることを特徴とする請求項2記載のエアレスタイヤ。
【請求項4】
前記スポークの全体積Vsは、前記トレッドリングの内周面と前記ハブの外周面との間のスペースの容積Vaとの比Vs/Vaが、0.001〜0.4であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項5】
前記比Vs/Vaが、0.01〜0.2であることを特徴とする請求項に記載のエアレスタイヤ。
【請求項6】
前記縦バネ定数Kが1.0〜50kN/mmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項7】
前記スポークは、前記スポークの半径方向外端部に膨出部が設けられることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のエアレスタイヤ。
【請求項8】
前記スポークは、前記スポークの半径方向外端部に内輪部分が設けられることを特徴とする請求項1〜の何れかに記載のエアレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動性能を改善したエアレスタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエアレスタイヤとして、中実ゴム構造のソリッドタイヤが主として産業車両用などに使用されている。しかし中実ゴム構造のタイヤは、質量が大でありかつ衝撃吸収性に劣るため、乗り心地性能が重視される乗用車用には採用されていなかった。
【0003】
このようなエアレスタイヤの乗り心地性能を改善し、乗用車用にも適用可能にするため、トレッドリングとハブとの間を、放射状に配列する複数のフィン状のスポーク板によって連結させた構造(以下「スポーク構造」という場合がある。)のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかし前記「スポーク構造」のエアレスタイヤでは、スポーク板が周方向に隔設されている。そのため、スポークがトレッドリングと接合する接合部におけるタイヤ軸方向の成分長さtxのタイヤ一周に亘る分布を考えたとき、前記分布が不均一であり成分長さtxのバラツキが大きい。これに伴い、転動時に車軸が受ける荷重変化も大となり、車両に振動を発生させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−260514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、スポーク構造が有する利点である軽量性や乗り心地性を確保しながら、振動性能を改善したエアレスタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、接地面を有する円筒状のトレッドリング、前記トレッドリングの半径方向内側に配されかつ車軸に固定されるハブ、及び前記トレッドリングとハブとを連結するスポークを具えるエアレスタイヤであって、
前記スポークは、前記トレッドリングの内周面と接合するトレッド接合部と、前記ハブの外周面と接合するハブ接合部とを有するとともに、
前記トレッドリングの周方向の各位置xにおける、前記トレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さtxのタイヤ一周に亘る分布において、
・前記成分長さtxが、前記トレッドリングの内周面のタイヤ軸方向巾Wの0倍である周方向領域を第1領域Y1、
・前記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0倍より大かつ0.6倍未満である周方向領域を第2領域Y2、
・前記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0.6倍以上かつ1.0倍以下である周方向領域を第3領域Y3としたとき、
タイヤ一周に占める前記第1領域Y1の割合E1、前記第2領域Y2の割合E2、前記第3領域Y3の割合E3は、それぞれ下記式(1)〜(3)を充足することを特徴としている。
0≦E1≦0.5 −−−(1)
0<E2≦1.0 −−−(2)
0≦E3<0.3 −−−(3)
【0008】
本発明に係るエアレスタイヤでは、前記トレッドリングは、縦バネ定数Kが0.01〜100.00kN/mmの範囲であることが好ましい。
【0009】
本発明に係るエアレスタイヤでは、 前記スポークの全体積Vsは、前記トレッドリングの内周面と前記ハブの外周面との間のスペースの容積Vaとの比Vs/Vaが、0.001〜0.4であることが好ましい。
【0010】
本発明に係るエアレスタイヤでは、前記スポークは、周方向にのびる1列以上のスポーク板列を具えるとともに、前記スポーク板列では、タイヤ軸方向に対して傾斜するスポーク板を周方向に配列させたことが好ましい。
【0011】
本発明に係るエアレスタイヤの前記スポーク板列では、タイヤ軸方向に対する角度が同一の同一傾斜のスポーク板を互いに平行に配列させても良い。
【0012】
本発明に係るエアレスタイヤの前記スポーク板列では、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜のスポーク板とタイヤ軸方向に対して他方側に傾斜する第2傾斜のスポーク板とからなり、前記第1傾斜のスポーク板と第2傾斜のスポーク板とを周方向に交互に配列させても良い。
【0013】
本発明に係るエアレスタイヤの前記スポークは、2列のスポーク板列を具え、
一方のスポーク板列は、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜のスポーク板が互いに平行に配列する第1傾斜のスポーク板列からなり、
かつ他方のスポーク板列は、タイヤ軸方向に対して他方側に傾斜する第2傾斜のスポーク板が互いに平行に配列する第2傾斜のスポーク板列からなっても良い。
【0014】
本発明に係るエアレスタイヤでは、前記スポークは、周方向に連続してのびる周方向のスポーク板を1以上具えても良い。
【0015】
本発明に係るエアレスタイヤでは、前記周方向のスポーク板は、周方向にジグザグ状にのびても良く、又周方向に直線状にのびても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明は叙上の如く、トレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さtxのタイヤ一周に亘る分布を、下記のように規制している。即ち、
・前記成分長さtxが、前記トレッドリングの内周面のタイヤ軸方向巾Wの0倍である周方向領域を第1領域Y1、
・前記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0倍より大かつ0.6倍未満である周方向領域を第2領域Y2、
・前記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0.6倍以上かつ1.0倍以下である周方向領域を第3領域Y3としたとき、
タイヤ一周に占める前記第1領域Y1の割合E1、前記第2領域Y2の割合E2、前記第3領域Y3の割合E3を、それぞれ下記式(1)〜(3)を充足するように規制している。
0≦E1≦0.5 −−−(1)
0<E2≦1.0 −−−(2)
0≦E3<0.3 −−−(3)
【0017】
ここで、前記第3領域Y3では、トレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さtxが大であり、この第3領域Y3の割合E3が0.3以上になると、スポークの重量が不必要に増加し、タイヤの軽量化を損ねる。又第2領域Y2は、トレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さtxが適度な領域であって、成分長さtxを均一化し成分長さtxのバラツキを抑える。これにより、転動時に車軸が受ける荷重変化が抑制され、タイヤの振動性能を向上させることができる。又第1領域Y1は、トレッド接合部が存在しない領域であって、この第1領域Y1の割合E1が0.5を越えると、必然的に第2領域Y2の割合E2も少なくなるため、振動性能の向上効果を阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のエアレスタイヤの一実施例を示す斜視図である。
図2】その断面図である。
図3】トレッドリングを内周面側から見た展開図、及びそれに対応したトレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さの分布図である。
図4】(A)、(B)はトレッド接合部の巾を規定する断面図である。
図5】トレッドリングの他の実施例を内周面側から見た展開図、及びそれに対応したトレッド接合部のタイヤ軸方向の成分長さの分布図である。
図6】(A)〜(E)はトレッドリングのさらに他の実施例を内周面側から見た展開図である。
図7】(A)、(B)は表1の比較例のスポーク配列を概念的に示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0020】
図1、2に示されるように、本発明のエアレスタイヤ1は、接地面Sを有する円筒状のトレッドリング2、前記トレッドリング2の半径方向内側に配されかつ車軸Jに固定されるハブ3、及び前記トレッドリング2とハブ3とを連結するスポーク4を具える。本例では、前記エアレスタイヤ1が乗用車用タイヤとして形成される場合が示される。
【0021】
前記トレッドリング2は、空気入りタイヤにおけるトレッド部に相当する部位であり、トレッドゴム部2Aと、その内部に埋設される補強コード層2Bとを具える。
【0022】
トレッドゴム部2Aとしては、接地に対する摩擦力、耐摩耗性に優れるゴム組成物が好適に採用しうる。又トレッドリング2の外周面である接地面Sには、ウエット性能を付与するために、トレッド溝(図示しない)が種々なパターン形状にて形成される。
【0023】
前記補強コード層2Bとして、本例では、ベルト層5と、その半径方向外側又は内側に重置されるバンド層6とから形成される場合が示される。しかしベルト層5のみ、或いはバンド層6のみによって形成することもできる。前記ベルト層5は、タイヤコードをタイヤ周方向に対して例えば10〜45度の角度で配列した1枚以上、本例では2枚のベルトプライ5A、5Bから形成される。各タイヤコードが、プライ間相互で交差することにより、トレッドリング2の剛性が高められる。又バンド層6は、タイヤコードをタイヤ周方向に螺旋状に巻回した1枚以上、本例では1枚のバンドプライから形成される。
【0024】
ベルト層5のタイヤコード、及びバンド層6のタイヤコードとしては、それぞれスチールコード及び有機繊維コードが適宜使用できる。又有機繊維コードの場合、強度及び弾性率が高いアラミド、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高モジュラス繊維が好適に採用しうる。
【0025】
このようなトレッドリング2は、例えば、円筒状のドラム上で、ベルト層形成用のシート状部材、バンド層形成用のシート状部材、トレッドゴム部形成用のシート状部材を順次周方向に巻回して生のトレッドリングを形成し、しかる後この生のトレッドリングを金型内で加硫成形することにより形成される。
【0026】
前記ハブ3は、タイヤホイールに相当するもので、本例では、車軸Jに固定される円盤状のディスク部3Aと、このディスク部3Aの半径方向外端部に一体に形成される円筒状のスポーク取付け部3Bとを具える。前記ディスク部3Aの中央には、車軸Jの前端部Jaが挿通するハブ孔3A1が形成される。又ハブ孔3A1の周囲には、車軸側に配されるボルト部Jbをナット止めするための複数のボルト挿通孔3A2が設けられる。このようなハブ3としては、タイヤホイールと同様、例えば、スチール、アルミ合金、マグネシウム合金等の金属材料によって形成されるのが好ましい。
【0027】
次に、前記スポーク4は、前記トレッドリング2の内周面2sと接合するトレッド接合部4Aと、前記ハブ3の外周面3s(本例ではスポーク取付け部3Bの外周面)と接合するハブ接合部4Bとを有する。スポーク4としては、ゴム、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はこれらを含む組成物によって形成されるのが好ましい。特に、ウレタン樹脂に代表される熱硬化性樹脂を用いることがより好ましい。
【0028】
このスポーク4と、前記トレッドリング2及びハブ3との接合は、本例では、前記樹脂材を用いて前記スポーク4をトレッドリング2及びハブ3と一体成形することによる樹脂材の接着によって行われる。なお一体成形時、トレッドリング2及びハブ3の表面に、所望の接着剤を付加的に塗布することもできる。
【0029】
図3は、前記トレッドリング2を内周面2s側から見た周方向の展開図である。この図3を用いてスポーク4をより具体的に説明する。本例のスポーク4は、周方向にのびる1列以上のスポーク板列10Rから形成される。このスポーク板列10Rは、タイヤ軸方向に対して傾斜するスポーク板11が周方向に配列することによって形成される。
【0030】
本例では、スポーク4が1列のスポーク板列10Rから形成され、かつこのスポーク板列10Rとして、タイヤ軸方向に対する角度θが同一の同一傾斜のスポーク板11を互いに平行に配列させた場合を例示している。
【0031】
そして、トレッドリング2の周方向の各位置xにおける、前記トレッド接合部4Aのタイヤ軸方向の成分長さをtxとしたとき、この成分長さtxのタイヤ一周に亘る分布を下記のように規制している。前記分布において、
・前記成分長さtxが、前記トレッドリング2の内周面2sのタイヤ軸方向巾Wの0倍である周方向領域を第1領域Y1、
・前記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0倍より大かつ0.6倍未満である周方向領域を第2領域Y2、
・前記成分長さtxが、前記タイヤ軸方向巾Wの0.6倍以上かつ1.0倍以下である周方向領域を第3領域Y3に区分する。そして、タイヤ一周に占める前記第1領域Y1の割合E1、前記第2領域Y2の割合E2、前記第3領域Y3の割合E3は、それぞれ下記式(1)〜(3)を充足している。図3の場合、第3領域Y3は存在せず、従って、前記割合E3は0となる。
【0032】
このようにトレッド接合部4Aのタイヤ軸方向の成分長さtxの分布を規制することで、スポーク4の質量を低く抑えながら、振動性能を向上させることができる。
【0033】
なお図5に示されるように、複数のスポーク板11がタイヤ軸方向に重なる場合、「トレッドリング2の周方向の各位置xにおける、トレッド接合部4Aのタイヤ軸方向の成分長さtx」は、各位置xにおける、それぞれのスポーク板11のトレッド接合部4Aの成分成分長さ(本例ではtx1、tx2)の和tx1+tx2として示される。
【0034】
前記第3領域Y3では、トレッド接合部4Aのタイヤ軸方向の成分長さtxが0.6W以上と大である。従って、この第3領域Y3の割合E3が0.3以上になると、スポーク4の占める割合が大となって質量が増加し、タイヤの軽量化を阻害する。又第2領域Y2は、成分長さtxが適度な領域であって、成分長さtxの分布が均一化され、そのバラツキが抑えられる。これにより、転動時に車軸Jが受ける荷重変化が抑制され、タイヤの振動性能が向上する。又第1領域Y1は、トレッド接合部4Aが存在しない領域であって、この第1領域Y1の割合E1が0.5を越えると、必然的に第2領域Y2の割合E2も少なくなり、振動性能の向上効果が阻害される。このような観点から、タイヤ一周に占める前記第2領域Y2の割合E2は、0.5以上、さらには0.7以上であるのがより好ましく、1.0であるのが最も好ましい。又第1、3領域Y1、Y3の割合E1、E3は前記範囲でより小さいことが好ましい。
【0035】
前記エアレスタイヤ1では、スポーク4の全体積Vsは、トレッドリング2の内周面2sと前記ハブ3の外周面3sとの間のスペースの容積Vaとの比Vs/Vaが、0.001〜0.4の範囲であるのが好ましい。前記スペースの容積Vaは、厳密には、前記内周面2s、外周面3s、及び前記内周面2sの側縁と外周面3sの側縁とを継ぐ側面とで囲むスペースの容積を意味する。
【0036】
この比Vs/Vaが0.001を下回ると、スポーク4の割合が不足し、車両荷重を十分に支持することができなくなって、タイヤ強度及び耐久性を低下させる。逆に、比Vs/Vaが0.4を越えると、タイヤ質量が不必要に増加し、スポーク構造のメリットがなくなる。このような観点から、比Vs/Vaの下限値は0.01以上がより好ましく、又上限は0.2以下がより好ましい。
【0037】
又、エアレスタイヤ1では、トレッドリング2の縦バネ定数Kが0.01〜100.00kN/mmの範囲であるのが好ましい。前記縦バネ定数Kが0.01kN/mmを下回ると、車両荷重を十分に支えることができなくなり、操縦安定性や耐久性の低下を招く。逆に縦バネ定数Kが100.00kN/mmを越えると、乗り心地性能を低下させる。このような観点から、縦バネ定数Kの下限は1.0kN/mm以上がより好ましく、上限は50kN/mm以下がより好ましい。
【0038】
なお前記縦バネ定数Kは、トレッドリング2の単体において、縦荷重F(kN)を上方から負荷した時の縦撓み量ε(mm)を測定したものであって、縦撓み量ε(mm)がトレッドリング2の外径の0%〜10%の範囲内の時の値を採用する。
【0039】
図4(A)に示されるように、スポーク4とトレッドリング2との接合強度を高めるために、スポーク4の半径方向外端部に三角形状や円弧状の膨出部4aを設けて、スポーク4とトレッドリング2との接触面積を高めることができる。係る場合、前記トレッド接合部4Aの巾4AWは、前記膨出部4aを取り除いた仮想線間の巾が採用される。又、図4(B)に示されるように、スポーク4とトレッドリング2との接合強度を高めるために、スポーク4の半径方向外端部に内輪部分4bを設けることができる。前記内輪部分4bの厚さTが7mm以下の場合には、前記トレッド接合部4Aの巾4AWは、前記内輪部分4bを取り除いた仮想線間の巾が採用される。そして前記トレッド接合部4Aの巾4AW、前記角度θ、スポーク板11の配列ピッチ、列数等に基づき、トレッド接合部4Aのタイヤ軸方向の成分長さtxが設定される。
【0040】
次に、図5にスポーク4の他の実施例が示される。同図は、トレッドリング2を内周面2s側から見た周方向の展開図であって、本例のスポーク4は、周方向にのびる2列のスポーク板列10Rを具える。一方のスポーク板列10Rは、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜のスポーク板11aが互いに平行に配列する第1傾斜のスポーク板列10Raからなる、又他方のスポーク板列10Rは、タイヤ軸方向に対して他方側に傾斜する第2傾斜のスポーク板11bが互いに平行に配列する第2傾斜のスポーク板列10Rbからなる。
【0041】
前記第1傾斜のスポーク板列10Raの配列ピッチと、第2傾斜のスポーク板列10Rbの配列ピッチとは互いに等しく、又本例では、配列ピッチの位相を1/2ピッチずらせている。このように、傾斜方向が異なる第1傾斜、第2傾斜のスポーク板列10Ra、10Rbを用いることにより、タイヤの左右の対称性を高めてユニフォーミティを向上させるとともに、車両流れ等の発生を抑しうる。又配列ピッチの位相を1/2ピッチずらすことにより、第1領域Y1の割合E1を0まで減じることができ、かつ前記分布をより均一化しうるため、振動性能の向上に大きく貢献できる。
【0042】
なお図6(A)〜(E)に、さらにスポーク4の他の実施例が示される。
【0043】
図6(A)において、前記スポーク4は、1列のスポーク板列10Rからなり、このスポーク板列10Rは、タイヤ軸方向に対して一方側に傾斜する第1傾斜のスポーク板11aと、タイヤ軸方向に対して他方側に傾斜する第2傾斜のスポーク板11bとを具える。第1傾斜のスポーク板11aと、第2傾斜のスポーク板11bとは周方向に交互に配列する。このスポーク4は、スポーク板列10Rを1列としながらも、図5の場合と同様、タイヤの左右の対称性を高めてユニフォーミティを向上させるとともに、車両流れ等の発生を抑制しうる。
【0044】
図6(B)〜(E)において、前記スポーク4は、周方向に連続してのびる周方向のスポーク板12を1以上具える。図6(B)、(C)において、周方向のスポーク板12は、周方向に直線状にのびる。又図6(D)、(E)において、周方向のスポーク板12は、周方向にジグザグにのびる。又図6(E)に代表して示すように、スポーク4が周方向のスポーク板12を具える場合、剛性を高めるために、スポーク板12の側面からタイヤ軸方向外側にのびる側板部12eを設けることもできる。特に周方向のスポーク板12がジグザグ状をなす場合、前記側板部12eをジグザグのコーナ部に設けるのが好ましい。
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0045】
本発明の効果を確認するため、表1に示す仕様に基づき、乗用車用タイヤ(タイヤサイズ145/70R12に相当するタイヤ)を試作するとともに、各試供タイヤの振動性能、乗り心地性能、操縦安定性能、耐久性能をテストした。又軽量化の比較のために、スポークの質量を測定した。
【0046】
各タイヤとも、表1に記載以外は実質的に同仕様であり、トレッドリングの縦バネ定数Kは、補強コード層におけるタイヤコードの打ち込み数、又はプライ枚数を違えることにより変化させた。スポークはウレタン樹脂(熱硬化性樹脂)による注型成形法により、トレッドリング及びハブと一体成形している。
【0047】
(1)振動性能、乗り心地性能、操縦安定性能:
試供タイヤを、車両(超小型EV:商品名CMOS)の4輪に装着し、ドライアスファルト路面のタイヤテストコースを走行し、振動性能、乗り心地性能、操縦安定性能についてドライバーの官能評価により比較例1を100とする指数で表示した。指数が大きい方が、上記性能に優れている。
【0048】
(2)耐久性能:
ドラム試験機を用い、試供タイヤを、荷重(3kN)、速度(100km/h)にてドラム上を走行させ、タイヤに故障が発生するまでの走行距離を、比較例1を100とする指数で表示した。指数が大きい方が耐久性能に優れている。
【0050】
(3)スポークの質量:
成形前後の質量差から、スポークの質量を換算し、比較例1を100とする指数で表示した。指数が大きい方が軽量である。
【0051】
【表1】
【符号の説明】
【0052】
1 エアレスタイヤ
2 トレッドリング
2s 内周面
3 ハブ
3s 外周面
4 スポーク
4A トレッド接合部
4B ハブ接合部
10R スポーク板列
10Ra 第1傾斜のスポーク板列
10Rb 第2傾斜のスポーク板列
11 傾斜のスポーク板
11a 第1傾斜のスポーク板
11b 第2傾斜のスポーク板
12 周方向のスポーク板
J 車軸
S 接地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7