(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上を、ヒト若しくは動物に投与又は摂取する非治療的PDE3阻害方法(但し、スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物からなる群から選ばれる1種以上を血栓症改善のために使用する場合、並びに、リゾリン脂質を心不全改善のために使用する場合を除く)。
【背景技術】
【0002】
3’,5’−サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)及び3’,5’−サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)は、細胞がホルモンや神経伝達物質のシグナルを受容した時にセカンドメッセンジャーとして働き、その細胞内濃度が上昇することで、下流にシグナルが伝達され、細胞が応答反応することが知られている。例えばプロスタグランジンやアドレナリンなどが細胞表面受容体に作用すると、アデニル酸シクラーゼが活性化され、細胞内のcAMP濃度が増加し、平滑筋が弛緩拡張するといった種々の細胞応答を引き起こす。
【0003】
cAMPやcGMPに代表される環状リン酸ジエステルを基質とし、これを加水分解する酵素をホスホジエステラーゼ(Phosphodiesterase;PDE)といい、PDEの活性が上昇すると細胞内cAMPやcGMPの濃度が低下する。従ってPDEの活性は、細胞内cAMPやcGMPの濃度に大きく影響を与えるため、PDEは細胞内情報伝達系の活性化や、細胞、組織の機能を調節に極めて重要な役割を果たしている。
【0004】
PDEは、約11種のサブタイプが知られており、そのうちPDE3はcAMPに対しcGMPより高い親和性を持つため別名cGMP−inhibited PDEとも呼ばれ、特にcAMPの細胞内濃度を低下させることが知られている。PDE3は、主に心臓、血管平滑筋、卵巣、腎臓、脂肪組織、肝細胞、気管支平滑筋などに発現する。
【0005】
肺、心臓や末梢の血管に存在するPDE3の活性を抑制することは、cAMP濃度の低下を防止するため、肺、心臓や末梢の血管における収縮弛緩、心筋力を増大、血小板の凝集阻害につながる。したがってPDE3阻害剤は心不全、慢性動脈閉塞症、血栓症の予防改善に有効である。
【0006】
このようなPDE3阻害剤としては、例えばアムリノン、ミルリノンが知られており、これらの薬物の先行療法(Preemptive therapy)は、心臓手術後の低心拍出量、低酸素供給量のリスクを低下させることができる。しかしながら、より活性が緩和で用い易い天然物由来の素材が求められている。
【0007】
一方、スペアミントはシソ科ハッカ属の多年草であり、当該スペアミント又はその抽出物は、抗肥満効果(特許文献1〜4)を有することが報告されている。
ペパーミントはシソ科ハッカ属の多年草であり、当該ペパーミント又はその抽出物は、抗肥満効果(特許文献1、3、4)を有することや、皮膚から吸収されて精神高揚作用に基づく血行促進により脂質の分解に寄与すること(特許文献5)が報告されている。
【0008】
またリゾリン脂質は、親水性が高い安定な乳化剤として広く利用されており、当該リゾリン脂質は抗肥満(特許文献6)効果を有することが報告されている。
【0009】
しかしながら、スペアミント、ペパーミント及びリゾリン脂質と、PDE3阻害との関係については知られていない。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、「PDE3阻害」とは、PDE3の酵素活性を低下又は消失させることをいい、詳細にはPDE3の活性中心に作用して反応開始の阻止、特定部分と共有結合を形成する不可逆的に結合、PDE3による反応の触媒作用の阻害などや、PDE3の分子単独、酵素−基質複合体又はその両方に結合して反応進行の阻害、基質と同じ部位に競合的に結合して反応開始を妨げる拮抗阻害、酵素又は酵素・基質複合体の、基質と別の部位に結合して反応の進行を妨げる非拮抗阻害などをいう。またPDE3遺伝子の蛋白質発現量を急性又は慢性的に低下させることで、PDE3の酵素活性が抑制されることも含む。
当該PDE3には、3A、3Bの2種のタイプがあることが知られているが、本願発明においてはいずれも包含される。
【0016】
「循環機能改善」とは、肺、心臓や末梢の血管平滑筋の弛緩拡張、血小板の凝集抑制、心筋力の増大を引き起こし、心不全、血管機能等の不全、慢性動脈閉塞症、血栓形成又は血栓症の予防改善をもたらすことをいう。
【0017】
(A)スペアミント、ペパーミント
本発明において、スペアミントはシソ科ハッカ属のMentha spicataをいい、ペパーミントはシソ科ハッカ属のMentha x piperitaをいう。
【0018】
斯かる植物は、いずれの任意の部位、例えばその植物の全草、葉(葉身、葉柄等)、樹皮、木質部、枝、果実、種子、花(花弁、子房等)、根、根茎等、又はそれらの組み合わせを使用することができるが、スペアミント又はペパーミントは、全草を使用するのが好ましい。
【0019】
斯かる植物は、そのまま、破砕、粉砕、搾取して用いるか、又はこれから処理されたものを乾燥若しくは粉末化して用いるか、或いはこれから抽出して用いることができるが、抽出した抽出物として用いるのが好ましい。
【0020】
上記植物は、そのまま抽出工程に付されてもよく、又は粉砕、切断若しくは乾燥された後に抽出工程に付されて抽出物を得てもよい。
【0021】
上記抽出物としては、市販されているものを利用してもよく、又は常法により得られる各種溶剤抽出物、又はその希釈液、その濃縮液、その乾燥末、ペースト若しくはその活性炭処理したものであってもよい。一例として、抽出物は、上記植物を一定温度(低温、常温又は加温)下にて抽出、又はソックスレー抽出器等の抽出器具を用いて抽出すること等の抽出手段により得ることができる。
【0022】
既知の抽出方法としては、例えば、固液抽出、液液抽出、浸漬、煎出、浸出、還流抽出、超音波抽出、マイクロ波抽出、攪拌等が挙げられる。抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出が望ましい。この固液抽出の好適な条件の一例としては、10〜100℃下、100〜400rpm/minで1〜30分間の攪拌が挙げられる。浸漬の好適な一例として、10〜50℃で、1時間〜14日間の浸漬が挙げられる。また、抽出時間を短縮する場合には、攪拌を伴う固液抽出が望ましい。
上記抽出物の酸化を防止するため、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する手段を併用してもよい。
【0023】
抽出のための溶剤には、極性溶剤、非極性溶剤のいずれをも使用することができる。当該抽出溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状又は環状のエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワレン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル等の有機溶剤;ならびにこれらの混合物が挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上混合して混合液として使用することができる。
【0024】
これらの溶剤のうち、水、アルコール類(より好ましくは炭素数1〜5)、ケトン類、炭化水素類から選ばれる1種以上のものが好ましい。このうち、水、エタノール、水−エタノール混合液、アセトン、ヘキサンがより好ましい。水−エタノール混合液を使用する場合には、混合液中のエタノール濃度(V/V)は、好ましくは0.01容量%、より好ましくは20容量%以上、更に好ましくは40容量%以上、好ましくは100容量%未満、より好ましくは99.5容量%以下である。また、0.01容量%以上100容量%未満が好ましく、20容量%以上100容量%未満がより好ましく、40〜99.5容量%が更に好ましい。
【0025】
溶剤の使用量としては、上記植物(乾燥質量換算)1質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。抽出温度としては、0〜100℃が好ましく、4〜85℃がより好ましく、4〜60℃が更に好ましい。抽出時間としては、1分〜150日間が好ましく、5分〜50日間がより好ましく、10分〜30日間が更に好ましい。スペアミント又はペパーミントの場合には、10〜30℃で3〜10日間抽出するのが好ましい。
【0026】
具体的には、スペアミント又はペパーミントの抽出物は、植物1質量部に対して、20〜80容量%エタノール−水混合液5〜15質量部の溶剤を用い、4〜85℃の温度(好ましくは、15〜85℃)で、1時間〜30日間(好ましくは3時間〜25日間)抽出することで得ることができる。
【0027】
斯くして得られる抽出物は、抽出液や画分を単独で又は混合して、そのまま用いてもよく、適宜な溶媒で希釈した希釈液として用いてもよく、或いは濃縮エキスや乾燥粉末としたり、ペースト状に調製したものでもよい。また、凍結乾燥し、用時に、通常抽出に用いられる溶剤、例えば水、エタノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、水−エタノール混合液、水−プロピレングリコール混合液、水−ブチレングリコール混合液等の溶剤で希釈して用いることもできる。また、リポソーム等のベシクルやマイクロカプセル等に内包させて用いることもできる。
【0028】
上記抽出物は、食品上・医薬品上許容し得る規格に適合し本発明の効果を発揮するものであれば粗精製物であってもよく、更に得られた粗精製物を既知の分離精製方法を適宜組み合わせ不活性な夾雑物を除去してこれらの純度を高めてもよい。精製手段としては、有機溶剤沈殿、遠心分離、限界濾過膜、高速液体クロマトグラフやカラムクロマトグラフ、液液分配、ゲルろ過分離、活性炭処理等が挙げられる。
【0029】
(B)リゾリン脂質
本発明において、リゾリン脂質は、グリセロリン脂質のα位又はβ位の脂肪酸残基のいずれか一方が加水分解により外れたリゾ体であり、具体的には、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルグリセロール、リゾプラスマニルコリン(リゾPAF)、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジン酸等が挙げられる。
リゾリン脂質は、リン脂質をホスホリパーゼA2等の酵素により処理することにより得られるが、本発明において、リゾリン脂質を得るためのリン脂質としては、例えば、大豆、米、とうもろこし、菜種、綿実、小麦、落花生、ひまし、ヒマワリ、大麦、エンバク、紅花、ゴマ等の植物、卵黄、乳、魚介類等の動物の組織から抽出されるものを用いることができる。また、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸等のリン脂質の単体を酵素処理することでもよく、この場合は、当該リゾリン脂質を単独又は2種以上混合すること、或いはリゾ体とリン脂質を混合して使用することができる。また、SLP−ホワイトリゾ(辻製油)等の市販品を用いてもよい。
【0030】
リゾリン脂質は、例えば大豆から分散又は抽出等で得られるレクチンや、イカから精製又は酵素反応等により得ることができる。
分散又は抽出に用いる溶剤としては、極性溶剤、非極性溶剤の何れをも使用することができる。当該抽出溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状又は環状のエーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;スクワレン、ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類;ピリジン類;二酸化炭素、超臨界二酸化炭素;油脂、ワックス、その他のオイル等が挙げられる。これら溶剤は、単独で又は2種以上混合して混合液として使用することができる。また無機塩類を含む水溶液、緩衝液等を用いてもよい。
【0031】
これらの溶剤のうち、水、アルコール類(好ましくは炭素数1〜5)、多価アルコール類、エステル類、炭化水素類から選ばれる1種以上のものが好ましい。このうち、水、エタノール、酢酸エチル、グリセリン、アセトン、ヘキサン、クロロホルムが好ましい。
溶剤の使用量は、原材料1質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、2〜30質量部がより好ましい。抽出温度は、0〜100℃が好ましく、4〜85℃がより好ましく、4〜60℃が更に好ましい。抽出時間は、1分〜150日間が好ましく、5分〜50日間がより好ましく、10分〜30日間が更に好ましい。
【0032】
後記実施例に示すように、スペアミント、ペパーミントの抽出物、及びリゾリン脂質は、PDE3の活性を抑制する作用を有する。従って、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、及び(B)リゾリン脂質は、PDE3阻害に有用であり、これらには、循環機能改善の効果が期待できる。
【0033】
従って、本発明で用いる上記スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、及びリゾリン脂質は、PDE3阻害剤、循環機能改善剤(以下、「PDE3阻害剤等」とする)として、使用することができ、更にこれらの剤を製造するために使用することができる。
【0034】
当該PDE3阻害剤等は、それ自体、ヒトを含む動物に摂取又は投与した場合にPDE3阻害、循環機能改善の各効果を発揮する、ヒト若しくは動物用の医薬品、医薬部外品、食品、又は飼料であってもよく、或いは当該医薬品、医薬部外品、食品又は飼料に配合して使用される素材又は製剤であってもよい。
【0035】
上記PDE3阻害剤等を、ヒト又は動物に投与して使用する場合の使用は、治療的使用であっても、非治療的使用であってもよい。
ここで、「非治療的」とは、医療行為を含まない、すなわち医師又は医師の指示を受けた者によりヒトを手術、治療又は診断する方法を含まない概念である。
【0036】
また、当該食品には、中高年者等におけるPDE3阻害、循環機能改善をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性食品、保健食品、病者用食品、特定保健用食品が包含される。これらの食品は機能表示が許可された食品であるため、一般の食品と区別することができる。
【0037】
上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質を含有する上記医薬品(医薬部外品も含む)の剤型は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、軟膏、ローション、クリーム、湿布剤、バップ剤、静脈内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射用剤、輸液、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、点鼻剤等のいずれかでもよい。投与形態も経口投与(内用)、非経口投与(経皮、経腸、経粘膜等の外用、注射)のいずれであってもよい。これらの投与形態のうち、好ましい形態は経口投与である。なお、当該製剤は配合すべき対象物に応じて常法により製造することができる。
【0038】
また、このような種々の剤型の医薬製剤を調製するには、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質を其々単独で、又は薬学的に許容される担体とを組み合わせて使用してもよい。斯かる担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、浸透圧調整剤、pH調整剤、乳化剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤、保湿剤、増粘剤、光沢剤、活性増強剤、抗炎症剤、殺菌剤、矯味剤、矯臭剤、増量剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、香料、被膜剤等や、他の薬効成分等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0039】
上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物(乾燥物換算)、(B)リゾリン脂質を経口投与用製剤に配合して使用する場合、その含有量は、製剤全質量中、通常好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは50質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、好ましくは0.001〜50質量%、より好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0040】
上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質を含有する上記食品の形態としては、パン類、麺類、菓子類、ゼリー類、乳製品、冷凍食品、インスタント食品、澱粉加工製品、加工肉製品、その他加工食品、飲料、スープ類、調味料、栄養補助食品、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ジュース、ウエハース、ビスケット、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品及びそれらの原料等のいずれかでもよい。更には、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、粉末剤、顆粒剤等)の栄養補給用組成物が挙げられる。
【0041】
種々の形態の食品は、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質を単独で、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、本発明以外の有効成分等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0042】
当該食品中の、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物(乾燥物換算)、(B)リゾリン脂質の含有量は、その使用形態により異なるが、飲料の形態では、通常好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは50質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。また、好ましくは0.001〜50質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。
錠剤や加工食品等の固形食品の形態では、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物(乾燥物換算)、(B)リゾリン脂質の含有量は、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは50質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。また、好ましくは0.005〜50質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。
【0043】
飼料としては、牛、豚、鶏、羊、馬等に用いる家畜用飼料、犬、猫等に用いるペットフード等が挙げられ、上記食品と同様の形態に調製できる。
【0044】
なお、飼料を製造する場合には、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質の他に、牛、豚、羊等の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料、更に一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等を組み合わせて用いることができる。
【0045】
飼料中の、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物(乾燥物換算)、(B)リゾリン脂質の含有量は、その使用形態により異なるが、通常好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、好ましくは50質量%%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。また、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%が更に好ましい。
【0046】
本発明の上記天然物又はその抽出物、精製物を含む外用医薬品、医薬部外品又は化粧料として用いる場合には、皮膚外用剤、洗浄剤、入浴剤、メイクアップ化粧料等とすることができ、使用方法に応じて、美容液、化粧水、マッサージ剤、ローション、乳液、ゲル、クリーム、軟膏剤、粉末剤、パック、パップ剤、顆粒剤、ファンデーション、口紅、シャンプー、コンディショナー、ヘアトニック、錠剤、カプセル、吸収性物品、シート状製品等の種々の剤型で提供することができる。このような種々の剤型の外用医薬品、医薬部外品又は化粧料は、本発明の上記天然物又はその抽出物、精製物等を、単独で、又は外用医薬品、医薬部外品若しくは皮膚化粧料に通常配合される、油又は油状物質、保湿剤、粉体、色素、乳化剤、可溶化剤、洗浄剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬効成分、香料、樹脂、防菌防黴剤、他の植物抽出物(生薬、漢方薬、ハーブ類)、アルコール類、多価アルコール類、無機酸、有機酸、ビタミン類、水溶性高分子、界面活性剤等を組み合わせることにより調製することができる。
【0047】
当該外用医薬品、医薬部外品、化粧料の全量中の、本発明の上記天然物又はその抽出物、精製物は、乾燥物換算で、通常0.0001〜30質量%であり、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。
【0048】
また、入浴剤の全量中の、本発明の上記天然物又はその抽出物、精製物は、乾燥物換算で、通常0.0001〜30質量%であり、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%がさらに好ましい。
【0049】
本発明のPDE3阻害剤等の摂取量は、対象の種、体重、性別、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔、及び摂取の量や間隔は、当業者によって適宜決定され得るが、成人(60kg)に対して1日あたり、上記(A)スペアミント、ペパーミント又はそれらの抽出物(乾燥物換算)、(B)リゾリン脂質として、通常好ましくは0.01mg以上、より好ましくは0.1mg以上、更に好ましくは1mg以上、好ましくは5000mg以下、より好ましくは1000mg以下、更に好ましくは500mg以下である。また、好ましくは0.01〜5000mg、より好ましくは0.1〜1000mg、更に好ましくは1〜500mgである。また、上記製剤は、任意の投与計画に従って投与され得るが、1日当たり1回〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0050】
投与又は摂取対象者としては、病者又は健常者に関わらず、それを必要若しくは希望する人であれば特に限定されないが、中高年者が好ましい。また本発明のPDE3阻害剤等は、心不全、慢性動脈閉塞症及び血栓症等の循環機能疾患の患者だけでなく、循環機能疾患に罹患していない対象者、例えば、循環機能が低下に起因する冷え症、むくみ、肩こりなどに悩み、これらを改善したいと欲する対象者に適用することができる。
【0051】
上述した実施形態に関し、本発明においては以下の態様が開示される。
<1>(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上を有効成分とするPDE3阻害剤。
<2>(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上を有効成分とする循環機能改善剤。
<3>PDE3阻害剤を製造するための、(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上の使用。
<4>循環機能改善剤を製造するための、(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上の使用。
<5>PDE3阻害に使用するための、(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上。
<6>循環機能改善に使用するための、(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上。
<7>非治療的に使用するための、<5>又は<6>に記載の(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上。
<8>(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上を、ヒト若しくは動物に投与又は摂取するPDE3阻害方法。
<9>(A)スペアミント、ペパーミント及びそれらの抽出物、(B)リゾリン脂質からなる群から選ばれる1種以上を、ヒト若しくは動物に投与又は摂取する循環機能改善方法。
<10>非治療的方法である、<8>又は<9>に記載の方法。
<11><2>、<4>、<6>、<7>、<9>、<10>のいずれかに記載の循環機能改善は、好ましくは心不全改善、慢性動脈閉塞症改善及び血栓症改善から選ばれる1種以上である。
<12><1>〜<11>のいずれかに記載のリゾリン脂質が、好ましくはリゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルグリセロール又はリゾプラスマニルコリンである。
<13><1>〜<12>のいずれかにおいて、上記抽出物は、好ましくはエタノール水溶液抽出物である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例及び試験例を挙げるが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
実施例1
乾燥したスペアミントの全草(栃本天海堂)100gに、10倍量の50容量%エタノール−水混合溶液1Lを加え、約20℃、7日間、マグネチックスターラーで撹拌しながらフラスコで抽出し、得られた抽出液の不溶物をろ別後、固形分濃度は2.1%のスペアミント抽出液を得た。
【0054】
実施例2
乾燥したペパーミントの全草含水エタノール抽出物であるファルコレックスペパーミントB(一丸ファルコス)6.25gを凍結乾燥した後に、固形分濃度は1%になるよう50容量%エタノール−水混合溶液3.75mLを加えペパーミント抽出液を得た。
【0055】
実施例3
大豆由来のL-α-Lecitin(CALBIOCHEM社製)30gに、イオン交換水120mL、200mM TRIS塩酸バッファー(pH=8.5)100mL、100mM塩化カルシウム水溶液30mLを加え、マグネチックスターラーで分散させた。そこに、ホスホリパーゼA2(Lecitase 10L、novo社製)1mL(10000unit)を加え、40〜50℃で3日間インキュベートした。この間、28%アンモニア水でpH8.5に調整した。3日間の反応後、クロロホルム700mL、メタノール350mLを加え、液々分配し、下層を採取後、濃縮した。得られた濃縮物にヘキサン400mL、エタノール200mL、イオン交換水150mL、及び1N塩酸50mLを加え、液々分配し、上層を除去した。得られた上層を、更にヘキサン400mLずつを使用して、4回液々分配の操作を繰り返した。残った下層を飽和重曹水40mLで中和し、濃縮した後、再度クロロホルム−メタノールにより抽出した。抽出液を濃縮した後、イオン交換水に分散させ、凍結乾燥することにより、リゾホスファチジルコリン17.76g(淡黄色粉末、収率89%)を得た。得られたリゾホスファチジルコリンは99.5%エタノールに溶解(濃度10mM)して調製した。
【0056】
実施例4
大豆由来のL-α-Lecitin30gに、酢酸エチル1300mL、200mM酢酸ナトリウムバッファー(pH=5.6)525mL、塩化カルシウム二水和物4.4gを加え、分散した。そこに、グリセリン225mLおよびホスホリパーゼD220unitを加え、40℃で3日間インキュベートした。3日後、1N塩酸250mLを加え、液々分配し、水層を除去した。更に、1N塩酸300mL、食塩水300mLにて順次洗浄した。飽和重曹水で中和した後、再度、食塩水300mLで2回洗浄し、濃縮することによってホスファチジルグリセロール・ナトリウム塩29.94gを得た。
得られたホスファチジルグリセロール・ナトリウム塩は、実施例3のリゾホスファチジルコリン調製法と同様の操作により、リゾホスファチジルグリセロール・ナトリウム塩に変換した。精製は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/メタノール)により行った。収量は11.8g(収率58%)であった。得られたリゾホスファチジルグリセロール・ナトリウム塩は、99.5%エタノールに溶解(濃度10mM)して調製した。
【0057】
実施例5
イカ肉質乾燥物1kgをとり、ヘキサン−エタノール(1:1)混合液3Lを加え、室温下で3時間攪拌抽出した。ろ過後、ろ過残渣に再度ヘキサン−エタノール(1:1)混合液3Lを加え、室温下で3時間攪拌抽出した。2回分の抽出液を併せて減圧濃縮した後、ヘキサン500mL、ラヂオライトデラックスW−50(昭和化学工業)50gを加え溶解した後、ろ過し、減圧濃縮した。これによりイカミール抽出物97gを得た。
得られたイカミール抽出物のうち40gをとり、アセトン800mLを加え、氷冷下にホモミキサーにて分散した。その後、遠心分離により、アセトン可溶画分を除去した。同様の操作を更に2回繰り返した後、沈殿物をヘキサンに溶解し回収した。これを濃縮、乾燥し、アセトン不溶画分1(10g)を得た。
更に、得られたアセトン不溶画分1に0.4mol/LのKOH−MeOH溶液200mLを加え、37℃で4時間攪拌し、加水分解反応を行った。反応終了後、クロロホルム400mLおよび0.9%食塩水を加え、抽出操作を行った。得られたクロロホルム層を減圧濃縮し、アルカリ安定画分7.6gを得た。
得られたアルカリ安定画分には、再度、アセトン100mLを加え、氷冷下にホモミキサーにて分散した。その後、遠心分離により、アセトン可溶画分を除去した。同様の操作を更に2回繰り返した後、沈殿物をヘキサンに溶解し回収した。これを濃縮、乾燥し、アセトン不溶画分2(2.0g)を得た。
最後に、アセトン不溶画分2をクロロホルムに溶解した後、シリカゲルカラムクロマト(Silica-gel 60《Merck社製》100g)に供した。クロロホルム−メタノール(30/70)で溶出し、Lyso−PAF精製品0.1gを得た。得られたLyso−PAFは99.5%エタノールに溶解(濃度10mM)して調製した。
【0058】
試験例
PDE-Glo Phosphodiesterase Assay (Promega社)を用いて、ヒトリコンビナントホスホジエステラーゼ3Bが0.8μg/mLになるようPDE−Glo反応溶液で調製した溶液10μL、及び上記各実施例の溶液2.5μLを混合した後、2μM濃度になるように調製したcAMP溶液を添加することで酵素反応させた。得られた反応液を、37℃で10分間反応させ、その後PDE-Glo Termination Buffer 12.5μLを添加して反応を停止させた。そこへPDE−Glo検出溶液12.5μLを添加し、10分後にKinase-Glo溶液50μLを添加し、化学発光量を測定した。測定した発光量から、下記式でPDE3活性を求め、その結果を表1に示す。
PDE3活性(%)=(実施例1〜5、比較例2のいずれかの発光量/比較例1の発光量)×100
なお、比較例1はPDE−Glo反応溶液の調製液に上記実施例の溶液を未添加のもの、比較例2は前記調製液に上記実施例の溶液の代わりにカフェインを添加したものとした。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、実施例1〜5及びカフェインを用いた比較例2は、比較例1に対してPDE3活性が抑制された。スペアミント、ペパーミント及びリゾリン脂質は、優れたPDE3阻害する作用を有することが明らかである。
なお、カフェインは、既知のPDE3阻害作用を有する素材である。