(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159202
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ベルトプライ検査装置及びそれを用いたタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20170626BHJP
G01B 11/04 20060101ALI20170626BHJP
B29D 30/70 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01B11/04 Z
B29D30/70
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-177089(P2013-177089)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-45577(P2015-45577A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】中山 量平
(72)【発明者】
【氏名】田部 芳孝
【審査官】
池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−351810(JP,A)
【文献】
特開2012−002522(JP,A)
【文献】
特開2010−208090(JP,A)
【文献】
特開2010−101721(JP,A)
【文献】
特開2009−294182(JP,A)
【文献】
特開2003−090721(JP,A)
【文献】
特開2008−155494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00−11/30,
21/00−21/32
B29D30/00−30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の円周面を有する中子の外側に、直接的に又はカーカスプライを介して間接的に、短冊プライがタイヤ周方向に位置をずらせながら貼り付けられて、実質的にタイヤ周方向に連続するものとして作られた環状ベルトプライを検査するためのベルトプライ検査装置であって、
前記短冊プライは、タイヤ周方向に沿った第1側縁と、前記第1側縁とは反対側の位置でタイヤ周方向に沿った第2側縁と、前記第1側縁と第2側縁との間をタイヤ軸方向に対して傾斜してのびる一対の斜辺とを具えた略平行四辺形状であり、
前記ベルトプライ検査装置は、前記中子の外側に設けられ、かつ、前記環状ベルトプライまでの距離を測定しうるセンサーと、前記センサーの出力信号が入力される信号処理部とを具え、
前記センサーは、前記各短冊プライの前記第1側縁を横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域を有する第1センサーと、前記各短冊プライの前記第2側縁を横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域を有する第2センサーとを含み、
前記第1センサーの前記測定領域と、前記第2センサーの前記測定領域とは、タイヤ周方向にずれて配設され、同時に一つの短冊プライの第1側縁及び第2側縁をそれぞれ測定する位置に設けられ、
前記信号処理部は、前記第1センサー及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記短冊プライの前記第1側縁及び前記第2側縁の位置を検出することを特徴とするベルトプライ検査装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記各短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置に基づいて、前記環状ベルトプライの幅を検査する請求項1記載のベルトプライ検査装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、前記各短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置に基づいて、前記環状ベルトプライと前記中子とのタイヤ軸方向の位置ずれ量を検査する請求項1記載のベルトプライ検査装置。
【請求項4】
前記短冊プライは、タイヤ軸方向の幅が大きい第1短冊プライと、前記第1短冊プライよりもタイヤ軸方向の幅が小さい第2短冊プライとを有し、
前記環状ベルトプライは、前記第1短冊プライがタイヤ周方向に並べられた第1環状ベルトプライと、前記第2短冊プライがタイヤ周方向に並べられた第2環状ベルトプライとが重ねられて構成されており、
前記信号処理部は、前記第1短冊プライ及び前記第2短冊プライのそれぞれの前記第1側縁及び前記第2側縁の位置を検出する請求項1乃至3のいずれかに記載のベルトプライ検査装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、前記第1センサー及び前記第2センサーの信号に基づいて、さらに、前記短冊プライの厚さを検出する請求項1乃至4のいずれかに記載のベルトプライ検査装置。
【請求項6】
前記第1センサーの前記測定領域及び前記第2センサーの前記測定領域は、前記短冊プライの前記斜辺を横切ることなくその手前で終端している請求項1乃至5のいずれかに記載のベルトプライ検査装置。
【請求項7】
生タイヤを成形する生タイヤ成形工程と、前記生タイヤ成形工程によって成形された生タイヤを加硫する加硫工程とを有するタイヤ製造方法において、
前記生タイヤ成形工程は、前記中子の外側に貼り付けられた前記短冊プライを請求項1乃至6のいずれかに記載のベルトプライ検査装置を用いて検査するベルトプライ検査工程を含むことを特徴とするタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状の円周面を有する中子の外側に貼り付けられたベルトプライの貼付状態を検査するためのベルトプライ検査装置及びそれを用いたタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤのユニフォミティを向上させるため、タイヤ形成用のドラムとして、仕上がりタイヤの内腔形状に近い環状の外形を有する中子を用いるタイヤ製造方法が提案されている。この種のタイヤ製造方法にあっては、中子の円周面に、カーカスプライ及びベルトプライを含む未加硫のタイヤ構成部材を順次貼り付けることにより生タイヤが形成される。ベルトプライは、貼り付けに先立ち、略平行四辺形に切断された短冊プライによって構成される。短冊プライは、中子に貼り付けられたカーカスプライの外側に周方向に位置をずらせながら順次貼り付けられ、実質的にタイヤ周方向に連続する環状のベルトプライを構成する。
【0003】
ところで、上述した中子及び短冊プライを用いない従来のタイヤ製造方法において、ベルトプライは、ロール状に巻回されたロール体として生産され、ロール体の幅や重量が管理されていた。この場合、ロール体の幅がベルトプライの幅となる。
【0004】
しかしながら、上述した中子を用いて、その外側に短冊プライを順次貼り付けていくタイヤ製造方法においては、個々の短冊プライの幅や中子に対するタイヤ軸方向の位置ずれ(オフセンター)等の貼り付け状態を管理する工程がなく、ベルトプライの品質管理は、作業者の手計測による検査に委ねられていた。このような手計測の検査は、測定精度にバラツキが生じやすく、また作業者に過度の負担を強いていた。
【0005】
下記特許文献1では、レーザ変位計によって測定された2点の照射位置の半径方向変位の差分と、ドラムの回転方向とに基づいて、ベルトの周方向端縁の向きが右上がりか左上がりかを検出するベルト特性検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2005/065924号公報
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているベルト特性検出装置を用いても、短冊プライの幅や中子に対するタイヤ軸方向の位置ずれを検出することができない。このため、短冊プライの幅や中子に対するタイヤ軸方向の位置ずれ等を含むベルトプライの総合的な品質管理は、作業者に過度の負担を強いることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、作業者に負担を強いることなく、短冊プライの幅や中子に対するタイヤ軸方向の位置ずれ等を含むベルトプライの総合的な品質管理を可能とするベルトプライ検査装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、環状の円周面を有する中子の外側に、直接的に又はカーカスプライを介して間接的に、短冊プライがタイヤ周方向に位置をずらせながら貼り付けられて、実質的にタイヤ周方向に連続するものとして作られた環状ベルトプライを検査するためのベルトプライ検査装置であって、前記短冊プライは、タイヤ周方向に沿った第1側縁と、前記第1側縁とは反対側の位置でタイヤ周方向に沿った第2側縁と、前記第1側縁と第2側縁との間をタイヤ軸方向に対して傾斜してのびる一対の斜辺とを具えた略平行四辺形状であり、前記ベルトプライ検査装置は、前記中子の外側に設けられ、かつ、前記環状ベルトプライまでの距離を測定しうるセンサーと、前記センサーの出力信号が入力される信号処理部とを具え、前記センサーは、前記各短冊プライの前記第1側縁を横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域を有する第1センサーと、前記各短冊プライの前記第2側縁を横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域を有する第2センサーとを含み、前記信号処理部は、前記第1センサー及び前記第2センサーの出力信号に基づいて、前記短冊プライの前記第1側縁及び前記第2側縁の位置を検出する
ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記信号処理部は、前記各短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置に基づいて、前記環状ベルトプライの幅を検査することが望ましい。
【0011】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記信号処理部は、前記各短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置に基づいて、前記環状ベルトプライと前記中子とのタイヤ軸方向の位置ずれ量を検査することが望ましい。
【0012】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記第1センサーの前記測定領域と、前記第2センサーの前記測定領域とは、同一のタイヤ軸方向線上に設けられていることが望ましい。
【0013】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記第1センサーの前記測定領域と、前記第2センサーの前記測定領域とは、同時に一つの短冊プライの第1側縁及び第2側縁をそれぞれ測定する位置に設けられていることが望ましい。
【0014】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記短冊プライは、タイヤ軸方向の幅が大きい第1短冊プライと、前記第1短冊プライよりもタイヤ軸方向の幅が小さい第2短冊プライとを有し、前記環状ベルトプライは、前記第1短冊プライがタイヤ周方向に並べられた第1環状ベルトプライと、前記第2短冊プライがタイヤ周方向に並べられた第2環状ベルトプライとが重ねられて構成されており、前記信号処理部は、前記第1短冊プライ及び前記第2短冊プライのそれぞれの前記第1側縁及び前記第2側縁の位置を検出することが望ましい。
【0015】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記信号処理部は、前記第1センサー及び前記第2センサーの信号に基づいて、さらに、前記短冊プライの厚さを検出することが望ましい。
【0016】
本発明に係る前記ベルトプライ検査装置において、前記第1センサーの前記測定領域及び前記第2センサーの前記測定領域は、前記短冊プライの前記斜辺を横切ることなくその手前で終端していることが望ましい。
【0017】
本発明は、生タイヤを成形する生タイヤ成形工程と、前記生タイヤ成形工程によって成形された生タイヤを加硫する加硫工程とを有するタイヤ製造方法において、前記生タイヤ成形工程は、前記中子の外側に貼り付けられた前記短冊プライを請求項1乃至8のいずれかに記載のベルトプライ検査装置を用いて検査するベルトプライ検査工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のベルトプライ検査装置は、中子の外側に設けられ、かつ、環状ベルトプライまでの距離を測定しうるセンサーと、センサーの出力信号が入力される信号処理部とを具える。センサーは、各短冊プライの第1側縁を横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域を有する第1センサーと、各短冊プライの第2側縁を横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域を有する第2センサーとを含む。信号処理部は、第1センサー及び第2センサーの信号に基づいて、短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置を検出する。これにより、作業者に負担を強いることなく、各短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置が精度よく検出される。さらに、信号処理部によって、かかる短冊プライの第1側縁及び第2側縁の位置に基づいて、例えば、短冊プライの幅や中子に対するタイヤ軸方向の位置ずれを算出することも可能である。これにより、環状ベルトプライの総合的な品質管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のベルトプライ検査装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の短冊プライの側縁が測定される生タイヤの正面図である。
【
図3】
図2の第1センサー及び第2センサーの出力信号に基づいて算出された短冊プライの第1側縁及び第2側縁を含む近傍の形状である。
【
図4】
図1の短冊プライの側縁が測定される生タイヤの別の正面図である。
【
図5】
図2の第1センサー及び第2センサーの別の配置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のベルトプライ検査装置1の斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態のベルトプライ検査装置1は、環状の円周面を有する中子100の外側に形成された環状ベルトプライ11を検査する装置である。
【0021】
本実施形態に係るタイヤ製造方法は、生タイヤを成形する生タイヤ成形工程と、生タイヤ成形工程によって成形された生タイヤを加硫する加硫工程とを有する。生タイヤ成形工程は、中子100の外側に貼り付けられた短冊プライを検査するベルトプライ検査工程を含んでいる。ベルトプライ検査工程において、短冊プライの検査にはベルトプライ検査装置1が用いられる。ベルトプライ検査装置1は、生タイヤ成形工程の生タイヤの成形ライン、すなわち、中子100の近傍に配設されている。ベルトプライ検査装置1によって検査された短冊プライの外側には、その後、トレッドゴムが貼り付けられ、生タイヤが完成する。完成した生タイヤは、加硫工程に搬送され、加硫されることによりタイヤが製造される。
【0022】
中子100は、生タイヤ成形工程における生タイヤの成形ラインに配設され、例えば、支持軸101によって片持ち支持されている。支持軸101は、中子100を所定の角度ピッチで回転駆動することができる。
【0023】
環状ベルトプライ11は、複数の短冊プライ12がタイヤ周方向に位置をずらせながら貼り付けられて、実質的にタイヤ周方向に連続するものとして作られる。支持軸101は、短冊プライ12の貼り付け動作に同期して、矢印A方向に回転及び矢印B方向に並進し、短冊プライ12の貼り付け位置に中子100の円周面を合致させる。このような中子100及び短冊プライ12を用いた生タイヤの製造方法に関しては、例えば、特開2012−166516号公報等に開示されている。
【0024】
各短冊プライ12は、中子100の外側のタイヤ形成面に直接的に又はカーカスプライ13を介して間接的に、貼り付けられる。カーカスプライ13の内周部には、ビードコア(図示せず)が形成されている。
図1においては、カーカスプライ13の外側に短冊プライ12が貼り付けられて生タイヤ14が形成される実施形態が示されている。短冊プライ12は、例えば、ローラー102によってカーカスプライ13に押圧され、圧着される。
【0025】
各短冊プライ12は、タイヤ周方向に沿った第1側縁12aと、第1側縁12aとは反対側の位置でタイヤ周方向に沿った第2側縁12bと、第1側縁12aと第2側縁12bとの間をタイヤ軸方向に対して傾斜してのびる一対の斜辺12c、12dとを具えた略平行四辺形状に形成されている。図示していないが、各短冊プライ12の内部には、斜辺12c、12dに沿ってベルトコードが埋設されている。
【0026】
ベルトプライ検査装置1は、環状ベルトプライ11までの距離を測定しうるセンサー2と、センサー2の出力信号が入力される信号処理部3とを具える。センサー2は、中子100の外側で、環状ベルトプライ11の両側縁の近傍に設けられた第1センサー21及び第2センサー22を有する。第1センサー21は、第1側縁12aのタイヤ半径方向の外側に設けられ、第2センサー22は、第2側縁12bのタイヤ半径方向の外側に設けられている。
【0027】
本実施形態において、第1センサー21及び第2センサー22には、2次元レーザー変位センサーが用いられている。2次元レーザー変位センサーは、被検体にレーザー光を照射してその反射光を検出することにより、所定の測定領域にわたって被検体までの距離を測定する非接触式の変位センサーである。第1センサー21及び第2センサー22の測定誤差を抑制するために、レーザー光が、中子100の円周面に垂直に照射され、かつその走査方向がタイヤ軸方向と一致するように、第1センサー21及び第2センサー22の位置及び姿勢が調整されていることが望ましい。
【0028】
第1センサー21は、各短冊プライ12の第1側縁12aを横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域21aを有する。第2センサー22は、各短冊プライ12の第2側縁12bを横切ってタイヤ軸方向にのびる測定領域22aを有する。第1センサー21及び第2センサー22と信号処理部3とは、それぞれケーブル4によって接続されている。第1センサー21及び第2センサー22の出力信号は、ケーブル4を介して、信号処理部3に入力される。
【0029】
信号処理部3は、第1センサー21及び第2センサー22の出力信号に基づいて、各種の信号処理を行なう。例えば、信号処理部3は、第1センサー21及び第2センサー22の出力信号に基づいて、短冊プライ12の第1側縁12a及び第2側縁12bの位置を検出する。
【0030】
図2は、中子100の外側に貼り付けられた短冊プライ12並びに第1センサー21及び第2センサー22を示している。第1センサー21及び第2センサー22は、同一のタイヤ軸方向線S上に設けられている。これにより、第1センサー21の測定領域21aと、第2センサー22の測定領域22aとは、中子100の円周面上において、同一のタイヤ軸方向線S上に配置される。従って、第1センサー21及び第2センサー22によって、同一断面内における環状ベルトプライ11の側縁が同時に検出される。
【0031】
図2において、短冊プライ12の第1側縁12aの位置は、中子100の赤道Cからの第1側縁12aのタイヤ軸方向の距離L1として表され、第2側縁12bの位置は、中子100の赤道Cからの第2側縁12bのタイヤ軸方向の距離L2として表される。
【0032】
図3は、第1センサー21及び第2センサー22の出力信号に基づいて信号処理部3によって算出された第1側縁12a及び第2側縁12bを含む近傍の形状に相当する波形を示している。
図3において、横軸は中子100の赤道C(
図2参照)からのタイヤ軸方向の距離であり、縦軸は第1センサー21又は第2センサー22からの被検体の距離である。本実施形態においては、第1センサー21の測定領域21a及び第2センサー22の測定領域22aにわたって、出力波形が得られる。
【0033】
図3(a)において、第1センサー21からの距離が不連続である箇所は、短冊プライ12の第1側縁12aの段差に相当する。従って、信号処理部3は、第1センサー21からの出力信号に基づいて、第1センサー21からの距離が不連続な箇所を検出することにより、短冊プライ12の第1側縁12aの位置、すなわち、中子100の赤道Cからの短冊プライ12の第1側縁12aのタイヤ軸方向距離L1を検出できる。
【0034】
同様に、
図3(b)において、第2センサー22からの距離が不連続である箇所は、短冊プライ12の第2側縁12bの段差に相当する。従って、信号処理部3は、第1センサー21からの出力信号に基づいて、短冊プライ12の第2側縁12bの位置、すなわち、中子100の赤道Cからの短冊プライ12の第2側縁12bのタイヤ軸方向距離L2を検出できる。
【0035】
本実施形態においては、
図1に示されるように、短冊プライ12の貼り付け開始位置から貼り付け進行方向に所定角度αだけ進んだタイヤ軸方向線S上に、第1センサー21及び第2センサー22が設けられている。このため、短冊プライ12を貼り付ける工程と実質的に同時に、第1センサー21及び第2センサー22からレーザー光を照射して、短冊プライ12の第1側縁12aの位置及び第2側縁12bの位置の検出を行なうことができる。従って、短冊プライ12の第1側縁12aの位置及び第2側縁12bの位置の検出によって、実質的に生タイヤ14の生産性が妨げられることがない。
【0036】
一方、全ての短冊プライ12を中子100の外側に貼り付けた後に、第1側縁12aの位置及び第2側縁12bの位置の検出を行なうことも可能である。この場合、中子100が一周以上回転されながら、第1センサー21及び第2センサー22からレーザー光が照射され、第1側縁12a及び第2側縁12bの位置の検出がなされる。
【0037】
信号処理部3は、検出した中子100の赤道Cからの短冊プライ12の第1側縁12aのタイヤ軸方向距離L1及び第2側縁12bのタイヤ軸方向距離L2に基づいて、環状ベルトプライ11の貼り付け状態を検査する。
【0038】
例えば、信号処理部3は、第1側縁12aのタイヤ軸方向距離L1と第2側縁12bのタイヤ軸方向距離L2から、下記の式(1)により、環状ベルトプライ11の幅(すなわち、環状ベルトプライ11のタイヤ軸方向の長さ)Wを算出する。
W=L1+L2 ・・・(1)
【0039】
また、信号処理部3は、下記の式(2)により、中子100の赤道Cに対する環状ベルトプライ11のタイヤ軸方向の位置ずれ量Dを算出する。
D=(L1−L2)/2 ・・・(2)
【0040】
これらの環状ベルトプライ11の幅W及びタイヤ軸方向の位置ずれ量Dの数値は、信号処理部3に内蔵され又は別途設けられたメモリやハードディスク装置等の記憶手段(図示せず)に適宜格納される。信号処理部3等によって、記憶手段に格納された数値が統計的に処理されることにより、環状ベルトプライ11の貼り付け状態に関する統計的な品質管理を行なうことができる。
【0041】
ところで、各短冊プライ12は、
図2に示されるように、仕上がりタイヤの内腔形状に近い中子100に適応するよう、隣り合う短冊プライ12同士が重ならないように、所定の隙間Gを隔てて貼り付けられることがある。このような短冊プライ12の貼り付け手法において、第1センサー21の測定領域21a及び第2センサー22の測定領域22aに隙間Gが存在すると、第1側縁12a及び第2側縁12bを誤検出するおそれがある。
【0042】
本実施形態においては、測定領域21a及び測定領域22aが、短冊プライ12の斜辺12c、12dを横切ることなく、その手前で終端するように構成されている。より具体的には、第1センサー21の測定領域21a及び第2センサー22の測定領域22aに、制限がかけられている。測定領域21a及び測定領域22aは、例えば、第1センサー21及び第2センサー22のレーザ光の走査範囲を限定することにより、制限される。測定領域21a及び測定領域22aの制限は、環状ベルトプライの幅及びタイヤ周方向に対するベルトコードの角度に応じて設定される。環状ベルトプライの幅及びベルトコードの角度は、タイヤサイズ毎に定められているため、測定領域21a及び測定領域22aの設定は、タイヤサイズ毎に変更される。
【0043】
さらには、短冊プライ12の貼り付け動作に応じて間欠的に駆動される中子100の回転と第1センサー21及び第2センサー22による測定タイミングとの同期がとられている。これらの第1センサー21及び第2センサー22の動作により、上記測定領域21a及び測定領域22aに隙間Gが存在することが回避され、第1側縁12a及び第2側縁12bの誤検出が防止される。
【0044】
一方、測定領域21a及び測定領域22aが、短冊プライ12の斜辺12c、12dを横切るように、中子100の回転と第1センサー21及び第2センサー22による測定とが同期される場合、短冊プライ12の斜辺12c、12dを検出可能である。これにより、短冊プライ12の斜辺12c、12dの向き、すなわち、タイヤ軸方向に対するベルトコードの向きが、右上がりか、又は左上がりかを検出できる。
【0045】
図3に示されるように、第1側縁12a及び第2側縁12bにおいて、被検体のセンサー2からの距離が不連続となり、段差が生ずる。この段差は、短冊プライ12の厚さによって生じたものである。従って、信号処理部3は、第1センサー21及び第2センサー22からの出力信号に基づいて、上記段差を算出することにより、さらに、短冊プライ12の厚さを検出することができる。これにより、短冊プライ12の貼り付け工程において短冊プライ12の厚さの変動を管理でき、環状ベルトプライの総合的な品質管理が可能となる。
【0046】
図4は、カーカスプライ13の外側に第1環状ベルトプライ15が形成された後、さらにその外側に第2環状ベルトプライ16が重ねて形成された生タイヤ19を示している。生タイヤ19にあっては、第1環状ベルトプライ15を構成する第1短冊プライ17がタイヤ周方向に並べられて貼り付けられた後、その外側に第2環状ベルトプライ16を構成する第2短冊プライ18がタイヤ周方向に並べられて貼り付けられる。
【0047】
本実施形態にあっては、第1短冊プライ17は、タイヤ軸方向の幅が大きく、第2短冊プライ18は、第1短冊プライ17よりもタイヤ軸方向の幅が小さい。第1短冊プライ17は、タイヤ軸方向の幅が小さく、第2短冊プライ18は、第1短冊プライ17よりもタイヤ軸方向の幅が大きく設定されていてもよい。
【0048】
生タイヤ19にあっても、第1短冊プライ17の貼り付け時に、第1センサー21は、第1短冊プライ17の第1側縁17aの位置を検出し、第2センサー22は、第1短冊プライ17の第2側縁17bの位置を検出する。さらに、第2短冊プライ18の貼り付け時に、第1センサー21は、第2短冊プライ18の第1側縁18aの位置を検出し、第2センサー22は、第2短冊プライ18の第2側縁18bの位置を検出する。3層以上の環状ベルトプライが形成される場合も、上記と同様である。
【0049】
このように、複数層の環状ベルトプライが形成されてなる生タイヤにおいても、第1センサー21及び第2センサー22によって、各層の環状ベルトプライを構成する短冊プライの両側縁の位置が検出される。各層の短冊プライの両側縁の位置が検出されることにより、上記と同様に、各層の環状ベルトプライの貼り付け状態に関する統計的な品質管理を行なうことも可能となる。
【0050】
図5は、第1センサー21及び第2センサー22の配置のバリエーションを示している。
図5において、第1センサー21及び第2センサー22は、短冊プライ12の斜辺12c、12dのタイヤ軸方向に対する角度に応じて、互いに周方向にずれて配設されている。より具体的には、第1センサー21及び第2センサー22は、同時に一つの短冊プライ12Aの第1側縁12a及び第2側縁12bをそれぞれ測定しうる位置に設けられている。すなわち、第1センサー21の測定領域21aは、短冊プライ12Aの第1側縁12aをカバーし、第2センサー22の測定領域22aは、短冊プライ12Aの第2側縁12bをカバーする。このような第1センサー21及び第2センサー22の配置によって、第1側縁12a及び第2側縁12bの位置が、短冊プライ毎に個別かつ同時に検出され、環状ベルトプライ11の貼付状態が、より詳細に検査される。
【0051】
以上のような構成を有する本実施形態のベルトプライ検査装置1によれば、作業者に負担を強いることなく、各短冊プライ12の第1側縁12a及び第2側縁12bの位置が精度よく検出される。さらに、信号処理部3によって、かかる短冊プライ12の第1側縁12a及び第2側縁12bの位置に基づいて、例えば、短冊プライ12の幅Wや中子100の赤道Cに対するタイヤ軸方向の位置ずれDを算出することも可能である。これにより、環状ベルトプライ11の総合的な品質管理が可能となる。
【0052】
以上、本発明のベルトプライ検査装置1が詳細に説明されたが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施される。
【実施例】
【0053】
図1の基本構造をなすベルトプライ検査装置1によって、環状ベルトプライ11の貼付状態が検査された。第1センサー21及び第2センサー22には、キーエンス社製のセンサーヘッドLJ−G200及びセンサーアンプLJ−G5000が使用された。その測定距離は、200mm±48mmに設定され、測定領域は62mmに設定された。
【0054】
環状ベルトプライ11の品質を管理するための評価項目として、短冊プライ12の貼り付け後の環状ベルトプライ11の幅W及び中子100に対する環状ベルトプライ11のタイヤ軸方向の位置ずれ量Dが検証された。環状ベルトプライ11の幅W及び位置ずれ量Dは、第1センサー21及び第2センサー22の出力信号に基づいて算出された。その結果、本実施例のベルトプライ検査装置1によれば、0.2mm以下の精度で、環状ベルトプライ11の幅W及び位置ずれ量Dが検出可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0055】
1 ベルトプライ検査装置
2 センサー
3 信号処理部
11 環状ベルトプライ
12 短冊プライ
12a 第1側縁
12b 第2側縁
12c 斜辺
12d 斜辺
13 カーカスプライ
21 第1センサー
21a 測定領域
22 第2センサー
22a 測定領域
100 中子