【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.公開日 2013年10月10日、公開場所 向日市上植野浄水場2階会議室(京都府向日市上植野町久我田17−1) 2.公開日(電子メール送信日)2013年11月1日 公開場所(電子メール送信先)向日市上下水道部上水道課 3.公開日 2013年11月11日 公開場所 一般社団法人日本ダクタイル鉄管協会関西支部 会議室(大阪市中央区南船場4丁目12番12号) 4.公開日(入札公告日) 2013年11月13日、公開場所 向日市上植野浄水場2階会議室(京都府向日市上植野町久我田17−1) 5.公開日 2013年12月2日 公開場所 京都府向日市上植野町北ノ田地区
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地中に埋設される金属管は、上水道管、下水道管、ガス管などとして、様々な用途で用いられている。地中に埋設された金属管は腐食が進行した場合には破損するおそれがあるため、金属管の腐食を防止することが課題の一つとなっている。非特許文献1に記載されているように、地中における金属管の腐食の原因は様々であるが、主な原因として、腐食性土壌または地下水と接触することによる腐食と、迷走電流の影響を受けることによる腐食(電食)とが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、推進工法またはシールド工法により埋設された金属管の電食を防止する方法が記載されている。一般的に、推進工法およびシールド工法などの非開削工法は、地中に立坑を掘削しなければならないため、開削工法に比べてコストが余分に掛かる。
【0004】
開削工法としては、ダクタイル鋳鉄管などの金属管をポリエチレンスリーブで被覆して埋設するポリエチレンスリーブ工法が知られている。ポリエチレンスリーブ工法によれば、複雑な作業を必要とすることなく低コストで、金属管と腐食性土壌との接触を防止し、かつ、金属管への迷走電流の流入を防止することができる。これにより、地中における金属管の電食を防止することができる。
【0005】
特許文献2および3には、ポリエチレンスリーブ工法において、金属管をチューブ状のポリエチレンスリーブで被覆する被覆工程を簡略化した工法について記載されている。さらに、特許文献4には、ポリエチレンスリーブの内側に地下水が滞留することによる金属管の腐食を防止するために、ポリエチレンスリーブの垂れ下がりを防止する支持ネットを設けることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2〜4に記載されているポリスチレンスリーブ工法を実施することにより、地中における金属管の電食対策は十分であるものと従来は考えられていた。特に、金属管の中でも、ゴム輪を介して接合されるダクタイル鋳鉄管は管同士が電気的に遮断されており、電食の影響を受けにくいとされていた。
【0009】
しかしながら、発明者らは、特定の条件下においては、上記従来のポリスチレンスリーブ工法では、地中における金属管の電食対策が十分であるとは言えないことを発見した。電食対策が十分とは言えない条件について説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
ポリスチレンスリーブ工法に用いられるポリスチレンスリーブは、通常、薄いポリエチレンフィルムを筒状(スリーブ状)に成形したものである。そのため、金属管を地中に埋設する際等において、当該金属管を覆うポリスチレンスリーブに小さい穴が開き貫通してしまうことがある。このような穴は、通常は金属管の腐食防止効果を著しく阻害するものではない。しかしながら、例えば電位勾配が1000mV/mを超えるような強い迷走電流が流れ得る環境下においては、ゴム輪を介して接合されるダクタイル鋳鉄管であっても、上記穴の存在が金属管の電食を進行させてしまうおそれがあることを、発明者らは見出した。
【0011】
迷走電流による電食は、直流式電気鉄道から地中へ漏れ出て金属管に流入した電流が、変電所や電鉄の車庫等の地下において再び土中に流出する箇所で起こり得る。現在の電鉄は大部分が直流電流を用いており、レールは電流の帰路として使用されている。そのため、レール近傍に埋設された金属管は上記帰路のバイパスとなり得るのである。金属管は、複数が繋ぎ合わされることにより長距離のパイプラインを形成するが、その繋ぎ目がネジや溶接継手等により電気的に接続されてしまうことにより長距離の電気的バイパスが形成されることになる。そのような場合に、特に上記迷走電流による電食が発生しやすくなる。
【0012】
発明者らの検証によれば、ポリエチレンスリーブに直径10mm程度の穴が開いた場合、電位勾配が1000mV/mを超えるような環境下においては金属管の電食が進行することが判明した。
【0013】
そのため、上記のような環境下においては、金属管をポリエチレンスリーブで被覆した場合であっても、金属管の電食が進行するおそれがある。
【0014】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、その目的は、金属管の腐食を抑制した地中埋設管、及び、簡易な方法によって金属管を防食して埋設する埋設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る地中埋設管は、金属管と、内側に上記金属管を包含することにより上記金属管の外周面を被覆するフィルム状部材からなる保護スリーブと、上記保護スリーブの外周面に捲回されることにより当該外周面を被覆する保護シートと、を備えていることを特徴とする。
【0016】
上記の構成によれば、保護スリーブが損傷し、保護スリーブに穴が開いた場合であっても、保護スリーブの周囲には保護シートが設けられているため、金属管への迷走電流の流入・流出を防止することができる。これにより、金属管を保護する部材として保護スリーブのみが設けられている場合に比べて、金属管の電食をより確実に防止することができる。
【0017】
また、保護スリーブの形状は筒状(スリーブ状)であるため、金属管の周囲が全周に亘って隙間なく覆われる。これにより、金属管と腐食性土壌との接触を防止することができる。一方で、保護シートの形状は平板状(シート状)であるため、保護スリーブを保護シートで被覆する作業は、保護スリーブを他の保護スリーブで被覆する作業に比べて容易である。すなわち、保護スリーブを他の保護スリーブで被覆する場合、保護スリーブに被覆された金属管を持ち上げた状態において、保護スリーブに他の保護スリーブを被せる作業が必要となる。これに対して、保護スリーブを保護シートで被覆する場合に必要となる作業は、保護スリーブの周囲に保護シートを巻きつけるのみである。そのため、保護スリーブを他の保護スリーブで被覆する作業に比べて、簡易な作業により金属管の腐食対策を施すことができる。
【0018】
さらに、金属管の被覆が、保護スリーブによる包み込みであるものと保護シートによる捲回という異なる構成によって形成されている。そのため、被覆された金属管が作業時や埋設後に受ける物理的な負荷に対して、被覆材がそれぞれ異なる挙動でズレや伸びを示すことにより、被覆材同士を同一箇所において外部から金属管まで貫通する貫通穴が開きにくいという、単なる多重化では得られない効果を得ることができる。
【0019】
なお、金属管の防食の観点からは、金属管と保護スリーブとの間に地下水が侵入しないように、金属管と保護スリーブとの間の隙間は小さいことが好ましい。被覆層として保護スリーブのみを設けた場合、保護スリーブの内側に地下水が侵入することによって、地下水の重みで保護スリーブが弛み、金属管と保護スリーブとの間に隙間が生じることがある。これにより、地下水が上記隙間から保護スリーブの内側に次々に侵入することによって、地下水に溶存する酸素が、保護スリーブの内側に供給され、その結果、金属管の腐食が進行する。
【0020】
これに対して、上記の構成によれば、保護スリーブの外側に保護シートが設けられているため、保護スリーブの内側に地下水が侵入した場合であっても、保護シートの剛性によって保護スリーブの変形が抑制されるため、保護スリーブは弛み難い。これにより、金属管と保護スリーブとの間に隙間が生じ難くなるため、保護スリーブの内側への地下水の侵入を抑制することができ、その結果、金属管の腐食の進行を抑制する、という効果も奏することができる。
【0021】
また、本発明の態様2に係る地中埋設管は、上記金属管の長手方向に沿って隣り合う複数の保護スリーブを備えており、上記保護スリーブとして、互いに隣り合う第1保護スリーブと第2保護スリーブとを含んでおり、第2保護スリーブの端部は、上記第1保護スリーブの外周面上に及んでおり、上記保護シートは、上記第2保護スリーブの上記端部を被覆するように設けられていてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、保護スリーブの端部は保護シートに被覆されているため、保護スリーブの端部からの地下水の侵入を抑制することができる。これにより、金属管の腐食の進行を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の態様3に係る地中埋設管は、互いに連結された複数の上記金属管を含んでおり、上記保護スリーブのそれぞれは、上記金属管のそれぞれの外周面を被覆するように設けられており、少なくとも一つの上記保護シートは、複数の上記保護スリーブを被覆するように設けられていてもよい。
【0024】
互いに連結された複数の金属管を被覆する場合、各保護スリーブの内側に各金属管を包含することによって、各金属管の外周面を被覆する。さらに、保護スリーブの外周面を他の保護スリーブで被覆する場合、各保護スリーブに各他の保護スリーブを1つずつ被せる必要がある。
【0025】
これに対して、上記の構成によれば、保護シートの形状はシート状であるため、複数の保護スリーブの外周面に一括して捲回することができる。これにより、簡易な工程により保護スリーブを保護シートで被覆した地中埋設管を提供することができる。
【0026】
また、本発明の態様4に係る地中埋設管は、上記保護シートの一方の端部側の一部は、他方の端部側の一部を覆うようにして重なっており、上記金属管の長手方向に垂直な面で切断したときの断面において、上記他方の端部から上記一方の端部に向かう方向を捲回方向とすると、上記一方の端部は、上記捲回方向における頂部から底部の間に位置してもよい。
【0027】
上記の構成によれば、保護シートの重畳部の隙間は、上方向に向けて開口しておらず、下方向に向けて開口している。
【0028】
保護シートの重畳部の隙間は上方向に向けて開口していないため、地上から地下に降りる水の、保護シートの内側への侵入を抑制することができる。
【0029】
また、保護シートの重畳部の隙間は下方向に向けて開口しているため、保護シートの内側に侵入した地下水が、重畳部の隙間から流れ出ることができる。その結果、保護シートの内側における地下水の滞留を抑制し、保護シートの弛みを抑制することができる。その結果、保護スリーブの弛みを抑制することができ、保護スリーブの内側に酸素が供給されることによる金属管の腐食の進行を抑制することができる。
【0030】
また、本発明の態様5に係る地中埋設管は、上記保護シートの一方の端部側の一部は、他方の端部側の一部を覆うようにして重なっており、上記一方の端部が上方側に位置するように、上記保護シートが設けられていてもよい。
【0031】
上記の構成によれば、地下水の水位が上昇しやすいような場所において、保護シートの内側への地下水の侵入を抑制することができる。これにより、地下水が保護シートの内側に侵入することによる保護シートの弛みを抑制することができる。その結果、保護スリーブの弛みを抑制することができ、保護スリーブの内側に酸素が供給されることによる金属管の腐食の進行を抑制することができる。
【0032】
また、本発明の態様6に係る地中埋設管は、上記保護スリーブは、ポリエチレンシートであってもよい。
【0033】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る金属管の埋設方法は、互いに連結された複数の金属管を地中に埋設する、金属管の埋設方法であって、地盤に設けられた開削溝の中に保護シートを配置し、上記保護シートの上方で、保護スリーブに被覆された上記金属管を連結し、上記保護スリーブの外周面に、上記保護シートを捲回することを特徴とする。
【0034】
上記の方法によれば、地盤に設けられた開削溝の中で、保護スリーブの外周面に保護シートを捲回するという簡易な方法によって、保護スリーブを保護シートで被覆することができる。そのため、簡易な方法によって、金属管の腐食対策を施すことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、金属管の腐食を抑制した地中埋設管、及び、簡易な方法によって金属管を防食して埋設する埋設方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、
図1〜6に基づいて詳細に説明する。
【0038】
<地中埋設管>
図1は、本実施形態に係る地中埋設管の概略図であり、(a)は側面図であり、(b)はA−A線矢視断面図であり、(c)はB−B線矢視断面図である。
【0039】
図1に示すように、地中埋設管1は、金属管10と、フィルム状部材からなるポリエチレンスリーブ20(保護スリーブ)と、ポリエチレンシート30(保護シート)とを備えている。
【0040】
なお、
図1では、説明のために、金属管10とポリエチレンスリーブ20との間、およびポリエチレンスリーブ20とポリエチレンシート30との間に隙間を設けて図示しているが、各構成の間の隙間は小さいことが好ましい。
【0041】
<金属管>
地中埋設管1は、互いに連結された複数の金属管10を備えている。金属管10は、受口12および挿し口11を備えており、1つの金属管10の受口12に他の金属管10の挿し口11を挿入することによって、金属管10同士が連結されている。
【0042】
具体的には、
図1の(b)に示すように、ゴム輪8を間に挟むようにして、金属管10Aの受口12Aに、金属管10Bの挿し口11Bを挿入することによって、受口12Aおよび挿し口11Bが継手部13Aを構成し、継手部13Aを介して金属管10Aと金属管10Bとが互いに連結されている。
【0043】
図示を省略するが、金属管10Bの受口12Bに、金属管10Cの挿し口11Cを挿入することによって、金属管10Bと金属管10Cとが互いに連結されており、同様にして、複数の金属管10同士が互いに接続されている。
【0044】
金属管10として、例えばダクタイル鋳鉄管を用いることができる。また、例として、直管型の金属管10を図示して説明するが、これに限ることはなく、曲管、T字管などの異形管型の金属管10を用いてもよい。
【0045】
<ポリエチレンスリーブ>
ポリエチレンスリーブ20は、ポリエチレンを主原料とする、柔軟性があり変形可能な筒状の部材である。
【0046】
図1の(b)に示すように、地中埋設管1は、金属管10の長手方向に沿って隣り合う複数のポリエチレンスリーブ20を備えており、各ポリエチレンスリーブ20は、各金属管10を内部に包含することによって、各金属管10の外周面を被覆している。
【0047】
具体的には、
図1の(b)に示すように、ポリエチレンスリーブ20A(第1保護スリーブ)は、金属管10Aを内部に包含することによって金属管10Aの外周面を被覆しており、ポリエチレンスリーブ20B(第2保護スリーブ)は、金属管10Bを内部に包含することによって金属管10Bの外周面を被覆している。ポリエチレンスリーブ20の厚さは特に限定されないが、例えば、厚さ0.2mmのものを用いることができる。
【0048】
互いに隣り合うポリエチレンスリーブ20の一部は、継手部13の外周面上において重なっている。具体的には、ポリエチレンスリーブ20Aは、継手部13Aにまたがって金属管10Bの外周面の一部にまで及んでおり、ポリエチレンスリーブ20Bは、継手部13Aにまたがってポリエチレンスリーブ20Aの外周面上に及んでいる。これにより、ポリエチレンスリーブ20Aの端部21Aは金属管10Bの外周面上に配され、ポリエチレンスリーブ20Bの端部21Bはポリエチレンスリーブ20Aの外周面上に配されており、継手部13Aの周囲においてポリエチレンスリーブは二重構造となっている。なお、ポリエチレンスリーブ20Aが外側に配置され、ポリエチレンスリーブ20Bが内側に配置されていてもよい。
【0049】
ポリエチレンスリーブ20は、ゴムバンド5を用いて、金属管10の外周面上に固定されている。ポリエチレンスリーブ20の固定方法は特に限定されず、ゴムバンド5に代えて、合成樹脂などの弾性材料からなる結束用バンドを用いてポリエチレンスリーブ20を固定してもよい。
【0050】
ポリエチレンスリーブ20の内径は金属管10の外径よりも大きいため、ポリエチレンスリーブ20が金属管10を包含した状態において、金属管10とポリエチレンスリーブ20との間には隙間が生じる。
【0051】
そこで、
図1の(c)に示すように、ポリエチレンスリーブ20は、一部を重ねあわせ、余剰分を金属管10の外周面に沿って折り畳むことによって折畳部22とし、折畳部22は粘着テープ7で固定されている。これにより、金属管10とポリエチレンスリーブ20との間の隙間を小さすることができ、その結果、ポリエチレンスリーブ20の内側への地下水の侵入を抑制することができる。
【0052】
<ポリエチレンシート>
ポリエチレンシート30は、ポリエチレンを主原料とする変形可能なシート状の部材である。ポリエチレンスリーブと比較すると剛性があり、引っ張りに強く裂けにくいことが好ましい。
【0053】
図1の(b)に示すように、地中埋設管1は、ポリエチレンスリーブ20の外周面に捲回されることによって当該外周面を被覆するポリエチレンシート30を備えている。
【0054】
これにより、ポリエチレンスリーブ20に穴が開いた場合であっても、金属管10への迷走電流の流入を抑制することができ、従来の地中埋設管に比べて、金属管10の電食をより確実に防止することができる。なお、ポリエチレンシート30を二つ折りまたは四つ折りとし、ポリエチレンシート30の外周面に捲回してもよい。これにより、ポリエチレンスリーブ20の保護効果が増大する。ポリエチレンシート30の厚さは特に限定されないが、例えば、厚さ0.2mmのものを用いることができる。
【0055】
さらに、ポリエチレンシート30の剛性によってポリエチレンスリーブ20の変形が抑制されるため、金属管10とポリエチレンスリーブ20との間に隙間が生じ難くなり、その結果、ポリエチレンスリーブ20の内側への地下水の侵入を抑制することができる。
【0056】
ポリエチレンシート30の形状は平板状(シート状)であるため、ポリエチレンスリーブ20の周囲にポリエチレンシート30を巻きつけるという簡易な作業によって、ポリエチレンスリーブ20の外周面を被覆することができる。
【0057】
また、
図1の(b)に示すように、ポリエチレンシート30は、ポリエチレンスリーブ20Bの端部21Bを被覆するように設けられている。これにより、ポリエチレンスリーブ20Bの端部21Bからの地下水の侵入を抑制することができる。なお、ポリエチレンシート30は、複数のポリエチレンスリーブ20にまたがって、複数のポリエチレンスリーブ20を一括して被覆するように設けられていることが好ましい。
【0058】
図1の(c)に示すように、ポリエチレンシート30の一方の端部側の一部は、他方の端部側の一部を覆うようにして重なっており、一方の端部32は、他方の端部31よりも外周側に配されている。また、金属管10の長手方向に垂直な面で切断したときの断面において、他方の端部31から一方の端部32に向かう方向を捲回方向とすると、一方の端部32は、捲回方向に沿って地中埋設管1の頂部から底部の間に位置している。
【0059】
上記の構成によれば、ポリエチレンシート30の重畳部の隙間は上方向に向けて開口していないため、地上から地下に降りる水の、ポリエチレンシート30の内側への侵入を抑制することができる。また、ポリエチレンシート30の重畳部の隙間は下方向に向けて開口しているため、ポリエチレンシート30の内側に侵入した地下水が、重畳部の隙間から流れ出ることができる。その結果、ポリエチレンシート30の内側における地下水の滞留を抑制し、ポリエチレンシート30の弛みを抑制することができる。
【0060】
ポリエチレンシート30は、ゴムバンド6を用いて、ポリエチレンスリーブ20の外周面上に固定されている。ポリエチレンシート30の固定方法は特に限定されず、ゴムバンド6に代えて、合成樹脂などの弾性材料からなる結束用バンドを用いて固定してもよい。
【0061】
なお、ポリエチレンシート30に代えて、ステンレス(SUS)製、銅(Cu)製、またはアルミニウム(Al)製の薄板を用いてもよいし、合成繊維を合成樹脂フィルムでラミネートしたシルバーシートやブルーシートを用いてもよい。この場合、ポリエチレンシート30と同様にして、ポリエチレンスリーブ20の外周面に捲回する。
【0062】
さらに、ポリエチレンシート30に代えて、チューブ状のステンレス製フレキチューブを用いてもよい。この場合、ポリエチレンスリーブ20を内部に包含することによって、ポリエチレンスリーブ20の外周面をフレキチューブで被覆する。
【0063】
<埋設方法>
次に、金属管10を地中に埋設する手順について説明する。
【0064】
第1に、地盤を開削することによって地盤に設けられた開削溝の中に、ポリエチレンシート30を配置する。
【0065】
第2に、金属管10にポリエチレンスリーブ20を被せることによって、金属管10の外周面をポリエチレンスリーブ20で被覆する。
【0066】
第3に、開削溝の中に配置されたポリエチレンシート30の上方で、ポリエチレンスリーブ20に被覆された金属管10を連結する。
【0067】
第4に、ポリエチレンスリーブ20の外周面に、予め開削溝の中に配置しておいたポリエチレンシート30を捲回する。その後、開削溝を土壌で埋めるという簡易な方法によって、金属管10と、金属管10を被覆するポリエチレンスリーブ20と、ポリエチレンスリーブ20を被覆するポリエチレンシート30とからなる地中埋設管1を地盤内に設けることができる。
【0068】
上記の説明では、一例として、地盤に設けられた開削溝の中で、ポリエチレンスリーブ20の外周面にポリエチレンシート30を捲回する方法について説明したが、金属管10を埋設する方法はこれに限られない。例えば、地上で、金属管10にポリエチレンスリーブ20を被せ、さらにポリエチレンシート30を捲回した後で、金属管10を開削溝の中に配置し、開削溝を土壌で埋める方法を用いてもよい。
【0069】
<変形例>
図2は、変形例に係る地中埋設管の断面図であり、
図1の(c)に対応する図である。
図2に示すように、地中埋設管101のポリエチレンシート130は、端部132が、地中埋設管101における上方側に配されるように設けられている。ここで、地中埋設管101における上方側とは、水平方向を含む面で地中埋設管101を半分に切断したときの断面より上方側を意味するものとする。
【0070】
地下水の水位は、降雨量などに応じて上昇する場合がある。ポリエチレンシートの端部が下方側に配されている場合、地下水の水位が上昇することによって、地下水が端部からポリエチレンシートの内側に侵入するおそれがある。その結果、金属管に地下水が接触し、金属管が腐食するおそれがある。
【0071】
これに対して、変形例の地中埋設管101は、ポリエチレンシート130の端部132の位置が地中埋設管101の上方側に配されるように設けられているため、地下水の水位が上昇した場合であっても、ポリエチレンシート130の内側への地下水の侵入を抑制することができる。これにより、地下水がポリエチレンシート130の内側に侵入することによるポリエチレンシート130の弛みを抑制することができる。その結果、ポリエチレンスリーブ20の弛みもまた抑制することができ、ポリエチレンスリーブ20の内側に酸素が供給されることによる金属管10の腐食の進行を抑制することができる。
【0072】
このように、本変形例は地下水の水位が上昇しやすい場所に適しているといえる。
【実施例】
【0073】
本発明者らは、迷走電流に対する地中埋設管1の防食性を検証するために、以下の試験を行った。
図3〜6に基づいて、迷走電流に対する地中埋設管1の防食性を検証するための試験について説明する。
【0074】
図3は、地中埋設管の防食性を検証するための試験の概要を示す概略図であり、(a)は金属管及び試験装置の平面図であり、(b)はC−C線矢視断面図である。
図4は、地中埋設管の防食性を検証するための試験の概要を示す、従来の地中埋設管及び試験装置の平面図である。
図5は、地中埋設管の防食性を検証するための試験の概要を示す、実施形態1の地中埋設管及び試験の概要を示す平面図である。
【0075】
(試験概要)
図3に示すように、水で満たされた内寸1880mm×920mm×708mmの水槽の中に、金属管と、正極と、負極とを配置した。
【0076】
金属管はダクタイル鋳鉄製であり、内径がφ100であり、長さは1200mmである。金属管内は比抵抗が6000Ω・cm程度の水道水を満水状態にしている。様々な土壌環境を想定し、水槽内の水に添加物を適宜添加するなどして、水の比抵抗を、500Ω・cm、1000Ω・cm、5000Ω・cmに調整した。正極および負極は何れも、150mm×90mm×10mmの黒鉛電極であり、互いに800mmの間隔を空けて、間に金属管を挟むようにして配置した。そして、
図3の(b)に示すように、定電圧発生装置を用いて正極と負極との間に電圧を印加することによって、正極と負極との間の電位勾配を、1000mV/m、2000mV/m、5000mV/mに調整した。これにより、迷走電流が流出している様々な土壌環境と同様の環境を水槽内に作り出した。
【0077】
また、金属管の表面電位を測定するために、金属管の表面近傍の測定点Aおよび測定点Bに、基準電極(飽和KCl銀・塩化銀電極)を配置した。
【0078】
正極と負極との間に電圧を印加していない状態での測定点Aおよび測定点Bにおける表面電位と、正極と負極との間に電圧を印加した状態での測定点Aおよび測定点Bにおける表面電位とを測定した。そして、電圧印加前後での測定点Aにおける表面電位の変化量の絶対値と、電圧印加前後での測定点Bにおける表面電位の変化量の絶対値との平均値(以下、単に電位変動値という)を算出した。
【0079】
正極と負極との間に電圧を印加することによって金属管に電流が流出入した場合、測定点Aおよび測定点Bにおける表面電位が変化する。そこで、測定点Aおよび測定点Bにおける電位変動値を測定することによって、迷走電流に対する地中埋設管の防食性を評価した。
【0080】
地中埋設管として、
図3に示す金属管のみからなる従来の地中埋設管と、
図4に示す金属管をポリエチレンスリーブで被覆した従来の地中埋設管と、
図5に示す、金属管をポリエチレンスリーブで被覆し、さらにシルバーシートで被覆した本実施形態の地中埋設管1を用意した。シルバーシートは、合成樹脂を主材料とする絶縁体のシートである。
【0081】
また、本実施形態の地中埋設管1として、シルバーシートに代えて、SUS製の薄板(以下、SUSの薄板という)、Cu製の薄板(以下、Cuの薄板という)、Al製の薄板(以下、Alの薄板という)、SUS製のフレキチューブ(以下、SUSフレキチューブという)を用いた地中埋設管を用意した。シルバーシートは厚さが0.35mmのものを用い、SUSの薄板、Cuの薄板、Alの薄板、SUSフレキチューブは、厚さが0.05mm〜0.2mmのものを用いた。なお、シルバーシートに代えて、ポリエチレンシートを用いてもよい。
【0082】
さらに、
図4に示す従来の地中埋設管として、ポリエチレンスリーブにφ10mm(直径)の穴が開いているものと、穴が開いていないものとを用意し、穴の内側において、電位変動値を測定した。
【0083】
(試験結果)
図6は、地中埋設管の防食性の検証するための試験の結果を示す表である。
【0084】
表は、電位勾配、遮蔽物の種類、溶液比抵抗の各条件下における電位変動値(単位:mV)を示しており、括弧内の数値は遮蔽率を示している。ここで、遮蔽率とは、1−{(各条件下における地中埋設管の電位変動値)/(金属管のみからなる地中埋設管の電位変動値)}を百分率で表したものである。
【0085】
表に示すように、ポリエチレンスリーブで被覆されていない金属管のみからなる地中埋設管は、電位勾配が5000mV/Vの場合と2500mV/Vの場合、溶液比抵抗が何れの値であっても、電位変動が発生しており、金属管に電流が流出入したことが判る。さらに、電位勾配が1000mV/Vの場合は、溶液比抵抗が5000Ω・cmの場合と1000Ω・cmの場合に、電位変動が発生しており、金属管に電流が流出入したことが判る。電位勾配が1000mV/Vであり、溶液比抵抗が500Ω・cmの場合には、電位変動が発生せず、金属管に電流が流出入しなかったことが判る。
【0086】
また、穴が開いていないポリエチレンスリーブで金属管を被覆した従来の地中埋設管では、電位勾配および溶液比抵抗が何れの条件であっても、電位変動が発生せず、遮蔽率は100%であった。これはすなわち、穴が開いていないポリエチレンスリーブで被覆した地中埋設管であれば、上記の試験条件と同等の環境下においては、迷走電流が金属管に流出入せず、電食は発生しないことを示している。
【0087】
一方で、φ10mmの穴が開いているポリエチレンスリーブで金属管を被覆した従来の地中埋設管では、電位勾配が1000mV/Vの場合は、電位変動が発生せず金属管に電流が流出入しなかった。しかしながら、電位勾配が2500mV/Vの場合と5000mV/Vの場合には、溶液比抵抗が何れの条件であっても、電位変動が発生しており、遮蔽率は100%ではなかった。これはすなわち、穴が開いているポリエチレンスリーブで被覆した地中埋設管では、上記の試験条件と同等の環境下において、迷走電流が金属管に流出入し、比較的小さいが、電食が発生することを示しており、従来の地中埋設管は、強い迷走電流が流れ得る環境下においては、地中における金属管の電食対策が十分とは言えないことが判る。
【0088】
これに対して、本実施形態の地中埋設管1は、ポリエチレンスリーブにφ10mmの穴が開いている場合であっても、上記の何れの試験条件においても、電位変動が発生せず金属管に電流が流出入しなかった。また、シルバーシートに代えて、SUSの薄板、Cuの薄板、Alの薄板、SUSフレキチューブを用いた地中埋設管も同様に、上記の何れの試験条件においても、電位変動が発生せず金属管に電流が流出入しなかった。
【0089】
すなわち、本実施形態の地中埋設管1は、従来の地中埋設管に比べて、金属管の電食をより確実に防止することができる。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。