(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素数1以上、16以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a1)由来の構成単位を70質量%以上、100質量%以下含有し、かつガラス転移温度が−40℃以上、0℃未満であるポリマー(A)、カチオン化澱粉(B)、下記一般式(1)で表されるカチオン性化合物(C)、20℃の飽和水溶液における無水化合物の濃度が30質量%以上、80質量%以下であり、かつ陽イオンの標準電極電位(Eo)が−1.50V以下である無機塩(D)、及び水を含有し、(A)成分100質量部に対する(D)成分の量が25質量部以上、200質量部以下であり、(D)成分100質量部に対する(C)成分の量が1質量部以上、10質量部以下である衣料用仕上げ剤組成物。
R1R2R32N+・X- (1)
(式中、R1は炭素数12以上、18以下の炭化水素基を示し、R3は炭素数1以上、4以下のアルキル基、ベンジル基及び炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基を示し、R2はR1又はR3で定義される基を示し、X-は陰イオンを示す。)
【発明を実施するための形態】
【0012】
[衣料用仕上げ剤組成物]
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、炭素数1以上、16以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(a1)由来の構成単位を70質量%以上、100質量%以下含有し、かつガラス転移温度が−40℃以上、0℃未満であるポリマー(A)、カチオン化澱粉(B)、下記一般式(1)で表されるカチオン性化合物(C)、20℃の飽和水溶液における無水化合物の濃度が30質量%以上、80質量%以下であり、かつ陽イオンの標準電極電位(E
o)が−1.50V以下である無機塩(D)、及び水を含有し、(A)成分100質量部に対する(D)成分の量が25質量部以上、200質量部以下であり、(D)成分100質量部に対する(C)成分の量が1質量部以上、10質量部以下である衣料用仕上げ剤組成物である。
R
1R
2R
32N
+・X
- (1)
(式中、R
1は炭素数12以上、18以下の炭化水素基を示し、R
3は炭素数1以上、4以下のアルキル基、ベンジル基及び炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2はR
1又はR
3で定義される基を示し、X
-は陰イオンを示す。)
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するにあたり、前記課題が「投入ケース方式」の全自動洗濯機の仕上げ剤保持部内に組成物が残留し、水分が揮発することによりポリマー粒子が凝集しやすくなった結果、衣料用仕上げ剤組成物の凝集物が繊維製品に付着しやすくなることに起因すると考えた。さらに、本発明者らはもう一つの原因がポリマーの物性にあることを知見した。具体的には、通常、洗濯に用いられる5〜40℃程度の水道水の温度では、ガラス転移温度0℃未満のポリマーは柔らかい物性を示し、この柔らかい物性を示すポリマーが、カチオン化澱粉と共に凝集し、凝集物が繊維製品に付着しやすくなっていると考えた。
そこで、本発明者らは種々の検討を行い、特定の無機塩を用いることにより水の揮発量が低下しポリマー粒子の凝集が抑制されること、及び仕上げ剤保持部内で仕上げ剤組成物が凝集した場合であっても、再度水と接触させることにより仕上げ剤組成物の凝集物を水に再分散させることができることを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、衣料等の繊維製品の毛羽立ちや毛玉の発生を抑制することができると共に、投入ケース方式の全自動洗濯機の仕上げ剤保持部(ケース)使用時に、衣料用仕上げ剤組成物の凝集物が繊維製品に対して付着することを抑制することができるものである。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はこれらの混合物」をいう。
また、本明細書において「毛羽立ち」とは、摩擦によって単繊維が引っ張られ、糸から単繊維が抜けかけたり(視覚的には、糸表面から単繊維が飛び出したり)している状態、又は磨耗によって単繊維に亀裂が入り、単繊維表面から繊維片が剥離しかけたりする状態をいう。
また、「毛玉」とは衣料から抜け落ちた単繊維同士が絡まり、玉状になって衣料に再付着している状態、繊維上の前記毛羽同士が絡まって玉状になった状態、又は糸を構成する単繊維から剥離しかかった繊維片が繊維上で絡まって玉状となった状態をいう。
更に、本明細書において、投入ケース方式での「仕上げ剤保持部」とは、洗濯槽に取り付けられた仕上げ剤を投入する区画を指し、販売メーカーによってその名称は異なるが、「仕上げ剤投入口」ともよばれる。具体的には、洗濯槽に取り付けられた「柔軟剤注入口」や「ソフト仕上剤注入口」と表記されている投入区画をいう。
【0015】
<ポリマー(A)>
本発明に用いられるポリマー(A)は、炭素数1以上、16以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル(以下、「モノマー(a1)」ともいう)由来の構成単位を70質量%以上、100質量%以下含有し、かつガラス転移温度が−40℃以上、0℃未満のポリマーである。
モノマー(a1)は、炭素数1以上、16以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであれば特に制限はなく、ポリマー(A)が前記ガラス転移温度を満すのであれば1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明において、「炭素数1以上、16以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、前記アルキル基が炭素数1以上、16以下のアルキル基である化合物をいう。
また、前記アルキル基はn−体、sec−体、tert−体、iso−体を含む、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
【0016】
アクリル酸エステルを用いる場合のアルキル基の炭素数は、ガラス転移温度の調節しやすさの観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上であり、そして、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
アクリル酸エステルの具体例としては、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸n−プロピルエステル、アクリル酸n−ブチルエステル、アクリル酸iso−ブチルエステル、アクリル酸tert−ブチルエステル、アクリル酸n−ペンチルエステル、アクリル酸n−ヘキシルエステル、アクリル酸n−ヘプチルエステル、アクリル酸n−オクチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられ、アクリル酸n−ブチルエステル、アクリル酸iso−ブチルエステル、アクリル酸tert−ブチルエステル、アクリル酸2−エチルヘキシルエステルが好ましく、及びアクリル酸n−ブチルエステルがより好ましい。
【0017】
メタクリル酸エステルを用いる場合のアルキル基の炭素数は、ガラス転移温度の調節しやすさの観点から、好ましくは1以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である。
メタクリル酸エステルの具体例としては、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸n−プロピルエステル、メタクリル酸n−ブチルエステル、メタクリル酸iso−ブチルエステル、メタクリル酸tert−ブチルエステル、メタクリル酸2−エチルヘキシルエステル等が挙げられ、メタクリル酸メチルエステル、及びメタクリル酸エチルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルエステルがより好ましい。
ポリマー(A)(以下、「(A)成分」ともいう)のガラス転移温度を−40℃以上、0℃未満の範囲に調整する観点から、メタクリル酸エステルと、アクリル酸エステルとを併用することが好ましい。
【0018】
両者を併用する場合、炭素数1以上、6以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルと炭素数2以上、6以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルとを併用することが好ましく、炭素数1以上、2以下のアルキル基を有するメタクリル酸エステルと炭素数3以上、5以下のアルキル基を有するアクリル酸エステルとを併用することがより好ましく、メタクリル酸メチルエステルとアクリル酸n−ブチルエステルとの併用が更に好ましい。
メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとを併用する場合において、メタクリル酸エステル(a1−1)とアクリル酸エステル(a1−2)との合計に対するアクリル酸エステル(a1−2)の割合は、(A)成分のガラス転移温度を前記範囲に調整する観点から、好ましくは55質量%以上、より好ましくは56質量%以上であり、そして、好ましくは99質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。
本明細書において、(A)成分が表1に記載の1種類のモノマーのみで重合されたポリマー(以下、「ホモポリマー」ともいう)である場合のガラス転移温度(Tg)は、表1に記載した値を用いた。
【0020】
(A)成分として、表1に記載のないモノマーを用いる場合には、ガラス転移温度(Tg)は、「ポリマーハンドブック、Fourth EditionVolume1, WILEY-INTERSCIENCE, A John Wiley & Sons, Inc., Publication,1999」に記載のホモポリマーの値を用いる。
また、(A)成分がn種類のモノマーを重合して得られる共重合体である場合のガラス転移温度(Tg)は、各モノマー(i)のホモポリマーのガラス転移温度〔Tg(i)〕から、下記式(I)にしたがって共重合体のガラス転移温度(Tg)を算出する。ただし、小数点以下は四捨五入し、共重合体が多官能性モノマーを含む場合には、該多官能性モノマーを除いたモノマーについて計算を行う。
【0022】
(式(I)中、Tgは共重合体のガラス転移温度(℃)であり、Tg(i)は共重合体を構成する各モノマー(i)のホモポリマーのガラス転移温度であり、wiは共重合体を構成するモノマー(i)の質量分率である。)
【0023】
(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、−40℃以上、0℃未満である。ガラス転移温度(Tg)が−40℃未満又は0℃以上であると、着用等の際に衣類に発生する毛羽を抑制することができない。また、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上であると、着用等の際に衣料に発生する毛羽立ちを抑制することができず、かつ衣料のしなやかな風合いが損なわれる場合がある。
【0024】
毛羽の発生を抑制する観点から、ガラス転移温度(Tg)は、好ましくは−30℃以上、より好ましくは−25℃以上、更に好ましくは−20℃以上であり、そして、好ましくは−5℃以下、より好ましくは−8℃以下、更に好ましくは−10℃以下である。また、全自動洗濯機の仕上げ剤保持部に衣類用仕上げ剤組成物が残留することを防止する観点から、(A)成分のガラス転移温度(Tg)は、更に好ましくは−25℃以上、−5℃以下である。
【0025】
ポリマー(A)は、モノマー(a1)を70質量%以上、100質量%以下含有する。モノマー(a1)の含有量が前記範囲内であると、衣類の毛羽発生を抑制することができる。衣類の毛羽発生抑制の観点から、ポリマー(A)中のモノマー(a1)の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは94質量%以下である。
前記含有量は、ポリマー(A)に対するモノマー(a1)由来の構成単位の割合であり、重合時のモノマー(a1)の配合割合から求めることができる。これは後述するモノマー(a2)及びモノマー(a3)についても同様である。
モノマー(a1)と共重合してもよい他のモノマーとしては、例えば下記のモノマー(a2)及びモノマー(a3)が挙げられる。
【0026】
<モノマー(a2)>
モノマー(a2)としては、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。モノマー(a2)を用いることにより、衣類等に付着した(A)成分を洗濯時に衣類から容易に脱離させることができると共に、洗濯機の仕上げ剤組成物の保持部に仕上げ剤組成物が残留することを防止する(以下、「液残りを防止する」ともいう)ことができる。
【0027】
本発明において、炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであって、前記ヒドロキシアルキル基の炭素数が2以上、4以下であるものをいう。
洗浄工程における(A)成分の衣類からの脱離性((A)成分が衣類から脱離しやすい性質であることを意味する)をより向上させる観点、及び液残りを防止する観点から、炭素数2以上、3以下のヒドロキシアルキル基が好ましく、炭素数2のヒドロキシエチル基がより好ましい。
【0028】
アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル、及びアクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル等が挙げられる。
メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピルエステル、及びメタクリル酸4−ヒドロキシブチルエステル等が挙げられる。
これらの中では、(A)成分の衣類からの脱離性の観点及び液残りを防止する観点から、アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル及びメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステル等が好ましい。
【0029】
(A)成分中のモノマー(a2)由来の構成単位の割合は、(A)成分の衣類からの脱離性を向上させる観点、及び液残りを防止する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは7質量%以下である。
【0030】
<モノマー(a3)>
モノマー(a3)としては、エチレン性不飽和カルボン酸及びその塩から選ばれる少なくとも1種のモノマーを用いることができる。なお、本発明において「エチレン性不飽和カルボン酸」とは、分子内にビニル基及びカルボン酸基を有する化合物をいう。
モノマー(a3)を用いることにより、衣類に付着した(A)成分の衣類からの脱離性を向上させることができると共に、液残りを防止することができる。
【0031】
エチレン性不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、及びマレイン酸等が挙げられる。これらの中では、原料の入手性の観点から、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
エチレン性不飽和カルボン酸塩としては、前記エチレン性不飽和カルボン酸のアルカリ金属塩、及びアルカリ土類金属塩等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和カルボン酸塩は、アンモニウム塩、及びアルカノールアミン塩であってもよい。エチレン性不飽和カルボン酸塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのエチレン性不飽和カルボン酸及びその塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(A)成分中のモノマー(a3)由来の構成単位の割合は、衣類からの脱離性を向上させる観点、及び液残りを防止する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上、より更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下である。
(A)成分は、毛羽及び毛玉の発生を抑制する観点から、前記モノマー(a1)、モノマー(a2)及びモノマー(a3)を含む共重合体が好ましい。
なお、(A)成分としては、(A)成分の効果に影響を及ぼさない範囲で、前記モノマー(a1)〜(a3)以外のモノマーを使用してもよい。
【0033】
(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上、更に好ましくは20万以上、より更に好ましくは30万以上であり、そして、好ましくは50万以下、より好ましくは45万以下、更に好ましくは40万以下である。
なお、(A)成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値をいう。より具体的には、溶離液としてクロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトン及びこれらの溶媒を組み合わせた液のいずれか、好ましくはジメチルホルムアミドを使用して測定したポリスチレン換算の分子量をいう。
(A)成分は溶液重合や乳化重合等の方法で製造することができるが、取り扱いの容易性の観点から、乳化重合で製造することが好ましい。乳化重合の方法としては、例えば特開2008−88414号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0034】
<カチオン化澱粉(B)>
本発明においては、(A)成分の衣料への吸着性を高めることを目的として、また、(A)成分を乳化重合等で製造する際の乳化安定化剤として、カチオン化澱粉(B)(以下、「(B)成分」ともいう。)を用いる。
カチオン化澱粉の主骨格を形成する澱粉類としては、特開2010−180320号公報に記載の澱粉等を用いることができる。具体的には、コーンスターチ、小麦スターチ、ポテトスターチ、タピオカスターチ等の澱粉が挙げられる。
前記澱粉にカチオン基を導入してカチオン化澱粉とする方法は特に限定されず、例えば、澱粉類と四級アンモニウムアルキル化試薬とを反応させる方法が挙げられる。
四級アンモニウムアルキル化試薬としては、例えば、特開2010−180320号公報に記載のグリシジル基を有する4級アンモニウム化合物を挙げることができ、化合物の入手の容易性の観点から、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
四級アンモニウムアルキル化試薬の具体的な製造方法としては、例えば特開昭56−36501号公報、特開平6−100603号公報、特開2010−180320号公報、及び特開平8−198901号公報等に記載の方法が挙げられる。
【0035】
(B)成分であるカチオン化澱粉の窒素原子の含有量(以下、「N質量%」ともいう)は、0.01質量%以上、1.5質量%以下が一般的であるが、(A)成分の衣料への吸着性をより高める観点から、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは1.3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.9質量%以下、より更に好ましくは0.8質量%以下である。
本明細書において、N質量%は(B)成分の全質量に対して第4級アンモニウム基由来の窒素原子の含有量(質量%)をいう。N質量%は、「第十二改正日本薬局方」(財団法人日本公定書協会・第一法規出版株式会社発行)の第43〜44頁に記載された窒素定量法(セミミクロケルダール法)に基づいて行うことができる。
【0036】
(B)成分であるカチオン化澱粉の重量平均分子量は、毛羽立ち、毛玉の発生を抑制する観点から、好ましくは10万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは50万以上、より更に好ましくは80万以上であり、そして、好ましくは190万以下、より好ましくは170万以下、更に好ましくは150万以下、より更に好ましくは130万以下、より更に好ましくは110万以下、より更に好ましくは100万以下である。
【0037】
<カチオン性化合物(C)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、下記一般式(1)で表されるカチオン性化合物(C)(以下、「(C)成分」ともいう)を含有する。
R
1R
2R
32N
+・X
- (1)
(式中、R
1は炭素数12以上、18以下の炭化水素基を示し、R
3は炭素数1以上、4以下のアルキル基、ベンジル基及び炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2はR
1又はR
3で定義される基を示し、X
-は陰イオンを示す。)
本発明においては、カチオン性化合物(C)を用いることにより、衣料の毛羽立ちや、毛玉を抑制することができ、また、仕上げ剤保持部への液残りを抑制することができる。
【0038】
前記R
1は、炭素数12以上、18以下の炭化水素基を示す。R
1の炭素数が12以上、18以下であると、水中の炭酸イオン(CO
32-)や炭酸水素イオン(HCO
3-)等の陰イオンをトラップする効果が高く、衣料用仕上げ剤組成物を構成するポリマー粒子の表面の表面電荷の低下を抑制することができ、炭素数が12未満であるとポリマー粒子の表面電荷の低下を抑制しにくくなる。また、炭素数が18を超えると毛羽や毛玉の抑制効果が低下する。
R
1が示す炭化水素基の炭素数は、ポリマー粒子の表面電荷の低下を抑制する観点から、12以上、好ましくは14以上であり、そして、毛羽や毛玉の発生を抑制する観点から、18以下、好ましくは16以下である。炭化水素基としては、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。
【0039】
R
3は、炭素数1以上、4以下のアルキル基、ベンジル基及び炭素数2以上、4以下のヒドロキシアルキル基を示す。このR
3の具体例としては、メチル基、エチル基、ヒドロキエチル基、ベンジル基が挙げられる。
R
3としては、(A)成分の衣料への吸着性を向上させる観点から、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基が好ましい。
R
2は、R
1又はR
3で定義される基を示すが、(A)成分の衣料への吸着性を向上させる観点から、R
3であることが好ましい。
【0040】
X
-は陰イオンであり、具体的には塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオン、メチル硫酸エステルイオン、エチル硫酸エステルイオンが挙げられる。これらの中でも、塩素イオンが好ましい。
(C)成分の具体例としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0041】
<無機塩(D)>
本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、20℃の飽和水溶液における無水化合物の濃度が30質量%以上、80質量%以下であり、かつ陽イオンの標準電極電位(E
o)が−1.50V以下である無機塩(D)(以下、「(D)成分」ともいう)を含有する。
本明細書において「20℃の飽和水溶液における無水化合物の濃度」は、「20℃の飽和水溶液100gに含まれる無水化合物の質量」と同義であり、以下、「溶解度」という場合がある。
本発明においては、前記(D)成分を含有することにより、水の揮発を効果的に抑制することができ、仕上げ剤保持部における仕上げ剤の凝集を抑制することができる。具体的には、(D)成分として用いる無機塩は、陽イオンの標準電極電位が低くイオン化傾向が高いため、イオン化傾向が低い無機塩に比べて水溶液中の質量モル濃度が高くなる。これにより、本発明の仕上げ剤組成物を含む水溶液の蒸気圧降下が大きくなり、結果として水の揮発を効果的に抑制することができる。
【0042】
(D)成分の20℃の飽和水溶液における無水化合物の濃度(溶解度)は、水の揮発を効果的に抑制する観点、及び水が揮発した場合であっても水に対して再度容易に分散させる(以下、「再分散」ともいう)観点から、30質量%以上、好ましくは35質量%以上、より好ましくは37質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、仕上げ剤組成物の安定性の観点から、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
また、(D)成分の陽イオンの標準電極電位(E
o)は、水の揮発を効果的に抑制する観点、及び再分散性の観点から、−1.50V以下、好ましくは−2.00V以下、更に好ましくは−2.30V以下である。
前記条件を満たす(D)成分としては、塩化カルシウム[溶解度:42.7質量%、標準電極電位(E
o):−2.84(V)]、塩化マグネシウム[溶解度:35.3質量%、標準電極電位(E
o):−2.37(V)]、及び塩化アルミニウム[溶解度:31.8質量%、標準電極電位(E
o):−1.662(V)]等を挙げることができる。これらの中でも、入手容易性の観点、水の揮発を効率的に抑制する観点から、塩化カルシウムが好ましい。
【0043】
<非イオン性界面活性剤(E)>
本発明においては、(A)成分の乳化安定性を向上させる観点から、非イオン性界面活性剤(以下、「(E)成分」ともいう)を用いてもよく、非イオン性界面活性剤としては、炭素数8以上、18以下の炭化水素基を少なくとも1つ有し、オキシアルキレン基を平均20モル以上、100モル以下付加したポリオキシアルキレン付加型非イオン性界面活性剤が挙げられる。(E)成分としては、(A)成分の乳化安定性の観点から、炭素数8以上、18以下の炭化水素基を少なくとも1つ有し、オキシアルキレン基を平均20モル以上、100モル以下付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0044】
前記炭化水素基の炭素数は、乳化安定性の観点から、好ましくは10以上、より好ましくは11以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数は、好ましくは30以上、より好ましくは35以上、更に好ましくは40以上、より更に好ましくは45以上であり、そして、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下であり、前記オキシアルキレン基は、オキシエチレン基であることが好ましい。
本発明の(E)成分は、前記(A)成分の製造時に使用してもよく、(A)成分とは別に衣料用仕上げ剤組成物に用いてもよい。
【0045】
<各成分の含有量>
衣料用仕上げ剤組成物中の(A)成分の含有量は、好ましくは1質量%以上、50質量%以下であり、洗濯1回当たりの前記衣料用仕上げ剤組成物の使用量を低減させる点から、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは12質量%以上である。また衣料用仕上げ剤組成物中の(A)成分の含有量は、仕上げ剤保持部への付着性を低減する観点から、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下、より更に好ましくは17質量%以下である。
【0046】
(A)成分100質量部に対する(B)成分の量は、(A)成分の乳化安定性と希釈分散性の観点から、好ましくは2質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上、より更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、より更に好ましくは10質量部以下である。
【0047】
(A)成分100質量部に対する(C)成分の量は、(A)成分の仕上げ剤保持部への付着性を低減する観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは3質量%以上であり、そして、毛羽立ち、毛玉の発生を抑制する観点から、好ましくは25質量部以下、より好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6.5質量部以下、より更に好ましくは5.5質量部以下である。
【0048】
(A)成分100質量部に対する(D)成分の量は、(A)成分の仕上げ剤保持部への付着性を低減する観点から、25質量部以上、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは125質量部以上であり、そして、200質量部以下、好ましくは180質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。
【0049】
(D)成分100質量部に対する(C)成分の量は、(A)成分の仕上げ剤保持部への付着性を低減する観点から、1質量部以上、好ましくは1.2質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、10質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
【0050】
(A)成分100質量部に対する(E)成分の量は、(A)成分の乳化安定性の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。
【0051】
また、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、貯蔵安定性を高める観点から、炭素数2以上、6以下の2価以上、6価以下のアルコールを含有することが好ましい。具体的例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及びソルビトール等が挙げられる。
【0052】
また、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、香料、染料、消泡剤、抗菌剤、殺菌剤、酸化防止剤、キレート剤、防腐剤及びpH調整剤等の任意の成分必要に応じて用いることができる。
前記のとおり、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、衣料等の繊維製品の毛羽立ちや毛玉の発生を抑制することができると共に、洗濯機の仕上げ剤保持部使用時に繊維製品に凝集物が付着することがないため、ニット衣料の仕上げに好適に用いることができる。
なお、本明細書において「ニット衣料」とは、ニット(編物)で構成されて衣料をいい、「ニット(編物)」とは糸のループを連結して構成された布をいう。
【0053】
[衣料の処理方法]
本発明の衣料の処理方法は、下記工程1〜工程3を有するものである。
工程1:前記衣料用仕上げ剤組成物を、投入ケース方式の全自動洗濯機の仕上げ剤保持部に保持させる工程。
工程2:仕上げ剤保持部内の前記衣料用仕上げ剤組成物を水と接触させずに洗濯槽内に投入する工程。
工程3:洗濯槽内の水浴中において、衣料用仕上げ剤組成物と衣料とを接触させる工程。
【0054】
工程1は、前記衣料用仕上げ剤組成物を、投入ケース方式の全自動洗濯機の仕上げ剤保持部に保持させる工程である。
仕上げ剤保持部に投入される本発明の衣料用仕上げ剤組成物の量は、2g以上、80g以下が一般的であるが、本発明の効果を実感し易くする観点から、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、好ましくは60g以下、より好ましくは50g以下である。
【0055】
工程2は、仕上げ剤保持部内の前記衣料用仕上げ剤組成物を水と接触させずに洗濯槽内に投入する工程である。仕上げ剤保持部内の前記衣料用仕上げ剤組成物は、脱水時の遠心力で仕上げ剤保持部内を移動し、最終すすぎ時に洗濯槽内に投入される。
【0056】
工程3は、工程2の後、洗濯槽内の水浴中において、衣料用仕上げ剤組成物と衣料とを接触させる工程である。工程2の後とは、工程2において仕上げ剤保持部内の前記衣料用仕上げ剤組成物を水と接触させずに洗濯槽内に投入した後を意味する。
洗濯槽内の水の量は、一般的に浴比で決めることができる。なお、本明細書における「浴比」とは、衣類の質量と水の容量との比、〔水の容量(リットル)〕/〔衣類の質量(kg)〕で表す値をいう。
浴比が小さいと衣類同士の擦れによって、毛羽や毛玉が発生しやすくなる。よって、浴比は、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上であり、
好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは60以下である。
衣料用仕上げ剤組成物の使用量は、衣類の質量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.12質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上であり、そして、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下、更に好ましくは0.6質量%以下である。
【0057】
また、前記衣料の処理方法で衣料を処理する場合において、前記衣料用仕上げ剤組成物の(A)成分の衣料に対する付着量は、毛羽立ち、毛玉の発生を効果的に抑制する観点から、衣料の質量に対して、好ましくは0.05質量%以上、0.4質量%以下であり、しなやかな風合いの付与と、毛羽や毛玉抑制効果を衣料に付与する観点から、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、そして、より好ましくは0.3質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0058】
前記のとおり、本発明の衣料の処理方法は、本発明の衣料用仕上げ剤組成物を用いるものであるため、衣料等の繊維製品の毛羽立ちや毛玉の発生を抑制することができると共に、洗濯機の仕上げ剤保持部使用時に繊維製品に対して凝集物が付着することを抑制することができる。したがって、本発明の衣料の処理方法は、ニット衣料を処理するのに適している。
【実施例】
【0059】
まず、以下の調製例及び合成例にしたがって各成分の調製及び合成を行った。なお、(A)成分及び(A)成分の比較化合物である(A’)成分のモノマー組成を表2に示す。
[各成分の調製例及び合成例]
<(A)成分を含む仕上げ剤原液の調製例>
前記(A)成分は、カチオン化澱粉(B)及び非イオン界面活性剤(E)の少なくとも一部を含む溶液中で(A)成分を構成するモノマーを重合することにより得られる。したがって、本発明の仕上げ剤組成物は、重合後の(A)成分含有溶液をベースにして調製される。なお、以下の調製例によって調製された(A)成分含有溶液を「仕上げ剤原液」という場合がある。
調製例1:(a−1)成分含有仕上げ剤原液の調製
窒素雰囲気下、反応容器に下記合成例1で得られたカチオン化澱粉1.1質量部、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製、GL−05)0.2質量部、及びイオン交換水48.7質量部を90℃にて均一溶解したのち60℃まで冷却した。これに、アクリル酸n−ブチル0.3質量部、メタクリル酸メチル0.2質量部、炭素数12の直鎖第1級アルコールにEOを平均47モル付加させた非イオン性界面活性剤(以下、「(e−1)成分」ともいう)1.68質量部、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.03質量部、及びイオン交換水19.4質量部を加え、75℃に加熱して重合を開始した。重合開始後、5時間かけてメタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(質量比19/75/5/1)になるように予め混合しておいたもの16.2質量部、及び2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.05質量部をイオン交換水11.9質量部に溶解した水溶液を反応溶液中に滴下した。滴下終了後、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩0.004質量部を加え、1時間そのまま撹拌を続けた。冷却後、255メッシュにて反応溶液を濾過し、重合体重量が約20質量%の仕上げ剤原液を500g得た。
【0060】
得られた仕上げ剤原液5gを20mLのメスフラスコに入れ、アセトンでメスアップした後、0.5μmのPTFEメンブランフィルターでろ過した。ろ液を用い、GPCにて分子量を測定したところ、重合平均分子量は33万であった。GPC測定条件を下記に示す。
カラム :α−M+α−M(アニオン)(α−Mを2本連結したもの)
溶離液 :H
3PO
4(60mmol/L)/LiBr(50mmol/
L)/DMF
流速 :1.0mL/min
カラム温度 :40℃
検出器 :RI
サンプル濃度:5mg/mL
サンプル量 :100μL
【0061】
調製例2:(a−2)成分含有仕上げ剤原液の調製
メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(質量比30/64/5/1)になるように、調製例1と同様の方法で合成し仕上げ剤原液を得た。調製例1と同様の方法で分子量を測定したところ、重量平均分子量は34万であった。
【0062】
調製例3:(a−3)成分含有仕上げ剤原液の調製
メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸の最終比が(質量比38/56/5/1)になるように、調製例1と同様の方法で合成し仕上げ剤原液を得た。調製例1と同様の方法で分子量を測定したところ、重量平均分子量は35万であった。
【0063】
調製例4:(a−4)成分含有仕上げ剤原液の調製
下記合成例1で得られたカチオン化澱粉の添加量を2.2質量部に変え、調製例2と同様の方法で合成し仕上げ剤原液を得た。調製例1と同様の方法で分子量を測定したところ、重量平均分子量は35万であった。
【0064】
調製例5:(a−5)成分含有仕上げ剤原液の調製
下記合成例1で得られたカチオン化澱粉の添加量を1.7質量部に変え、調製例2と同様の方法で合成し仕上げ剤原液を得た。調製例1と同様の方法で分子量を測定したところ、重量平均分子量は32万であった。
【0065】
<(A’)成分((A)成分の比較化合物)の調製例>
比較調製例1:(a’−1)成分含有仕上げ剤原液の調製
メタクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリル酸の最終比が(質量比46/48/5/1)になるように、調製例2と同様の方法で合成し仕上げ剤原液を得た。調製例1と同様の方法で分子量を測定したところ、重量平均分子量は35万であった。
【0066】
比較調製例2:(a’−2)成分含有仕上げ剤原液の調製
下記合成例1で得られたカチオン化澱粉を添加せず、調製例2と同様の方法で合成し仕上げ剤原液を得た。調製例1と同様の方法で分子量を測定したところ、重量平均分子量は33万であった。
【0067】
【表2】
【0068】
<(B)成分の合成例>
合成例1:(b−1)成分の合成
プロペラ型撹拌羽根、冷却管、温度計がついた500mL容量の4つ口フラスコに苛性ソーダ0.9g、イオン交換水45g、イソプロピルアルコール100gを入れ、25℃に調温した。以下の操作は撹拌条件下で行った。コーンスターチ(三和澱粉工業株式会社製)100gを30分かけて投入した。更に苛性ソーダの20質量%水溶液9.7gと3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド150gとの混合物を4つ口フラスコ内に投入した。投入後50℃まで昇温し、10時間撹拌した。次に36質量%塩酸水溶液で反応液のpHを7に調製した後、25℃まで冷却した。更に36質量%塩酸水溶液2.3gを加えた後、40℃まで昇温し、反応液の粘度が50〜100mPa・sになるまで撹拌した。次いで5質量%苛性ソーダ水溶液で反応液のpHを5.0に調整した。この反応物をイソプロピルアルコール/水(質量比50/50)で2回洗浄し、乾燥させた。標準プルランを標準物質として用い、GPCにて分子量を測定したところ、重量平均分子量は97.2万であった。また、N質量%は0.67質量%であった。
【0069】
[実施例1〜12、比較例1〜9]
表3〜4に示す配合量にしたがって衣料用仕上げ剤組成物を調製した。表3〜4の各組成物は、合計で100質量%となる。得られた組成物について、後述の評価方法に沿って、毛羽立ち及び毛玉抑制効果、希釈分散性を評価した。結果を表3〜4に示す。
【0070】
<(A)成分、(A')成分>
(a−1)〜(a−5):上記調製例1〜5で得られたポリマー
(a'−1),(a'−2):上記比較調製例1,2で得られたポリマー
<(B)成分>
(b−1):上記合成例1で得られたカチオン化澱粉
(N質量%は0.67質量%、重量平均分子量97.2万)
【0071】
<(C)成分>
(c−1):ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド
(式(1)におけるR
1=ラウリル基、R
2=メチル基、R
3=メチル基)
(c−2):パルミチルトリメチルアンモニウムクロリド
(式(1)におけるR
1=パルミチル基、R
2=メチル基、R
3=メチル基)
【0072】
<(D)成分>
(d−1):塩化カルシウム(SIGMA−ALDRICH 特級試薬)
溶解度:42.7質量%
標準電極電位(E
o):−2.84(V)
(d−2):塩化マグネシウム・六水和物(和光純薬株式会社)
溶解度:35.3質量%
標準電極電位(E
o):−2.37(V)
【0073】
<(D')成分>
(d'−1):塩化カリウム(SIGMA−ALDRICH 特級試薬)
溶解度:25.5質量%
標準電極電位(E
o):−2.925(V)
(d'−2):硫酸鉄(SIGMA−ALDRICH 特級試薬)
溶解度 20.8質量%
標準電極電位(E
o):−0.44(V)
【0074】
<(E)成分>
(e−1):炭素数12の直鎖第1級アルコールにEOを平均47モル付加させた非イオン性界面活性剤
【0075】
<衣料用仕上げ剤組成物の調製方法>
300mLビーカーに衣料用仕上げ剤組成物の全量が200gになる量のイオン交換水(温度:25℃)を入れた。このビーカーに(C)成分を投入して均一に溶解させた後10分間撹拌した。さらに2cmの羽根が3枚ついたタービン型の撹拌羽根で撹拌(300rpm)しながら上記調製例にて得られた仕上げ剤原液((A)成分と(B)成分と(E)成分)を投入して10分間撹拌した。更に任意の濃度に調整した(D)成分水溶液、及び香料を表3,4に記載の割合になるように投入して10分間撹拌した。
【0076】
[衣料用仕上げ剤組成物の処理方法]
<試験布の準備>
T/Cニット布(ポリエステル65質量%、綿35質量%、エアーフライスF401−F11、茶色、マスダ株式会社製)2kgを市販の液体洗剤(花王株式会社のアタックバイオジェル(登録商標)、2012年製)を用いて全自動洗濯機(日立アプライアンス株式会社、NW−7FT)で5回繰り返し洗濯した(洗剤濃度0.083質量%、水道水(20℃)40L使用、標準コース、洗濯9分−すすぎ2回−脱水6分、浴比1/20)。
洗濯したT/Cニット布を25℃/50%RHの環境下で12時間乾燥させて10×10cm角に裁断し、試験布(X1)とした。
次いで、500mlガラスビーカーに水道水300g、及び表3〜4に示す実施例1〜12、比較例1〜9の衣料用仕上げ剤組成物0.30gをそれぞれ加えてマグネットスターラーと回転子(クロスヘッド回転子ダブル、型番001.1140、高さ14mm、直径40mm、アズワン製)を使用して10分間撹拌した(回転速度400rpm)。撹拌後、この溶液に試験布(X1)を4枚(10g)入れ、5分間撹拌した(回転速度400rpm)。その後、二層式洗濯機(TOSHIBA VH−52G(H))を用い、試験布(X1)を脱水槽の内壁に貼りつけ2分間脱水し、25℃/50%RHの環境下で12時間乾燥させ、これを試験布(X2)とした。
【0077】
<毛羽立ち及び毛玉抑制効果の評価法>
表3〜4に示す実施例1〜12、比較例1〜9の衣料用仕上げ剤組成物で処理した各試験布(X2)をアピアランス・リテンションテスター(株式会社大栄科学精器製作所製、型番「ARP−1」)を用いて荷重3.2Nにて2回転摩擦した。
摩擦した各試験布(X2)の毛羽立ちレベルを以下の基準サンプル1〜4と比較して下記判定基準にて得点をつけて平均点を求めることにより評価した。なお、評価は布帛の外観の評価に5年以上従事した判定者5人により行った。
毛羽立ち抑制効果としては3.5以下が合格であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは3.0未満である。
【0078】
基準サンプル1:未処理の前記T/Cニット布(評価点:0)
基準サンプル2:試験布(X1)(評価点:2.0)
基準サンプル3:実施例2の衣料用仕上げ剤組成物0.2gで処理した試験布
(X2)(評価点:3.5)
基準サンプル4:比較例1の試験布(X2)(評価点:5.0)
【0079】
〔判定基準〕
0 :基準サンプル1の試験布と同等の外観で、毛羽も毛玉もない。
1.0:基準サンプル1と2の試験布の中間の外観で、極わずかに毛羽立ちが
あるが、毛玉はない。
2.0:基準サンプル2の試験布と同等の外観で、僅かに毛羽立ちがあるが、
毛玉はない。
2.5:基準サンプル2と3の試験布の間の外観であるが、どちらかというと
基準サンプル2の外観に近く、基準サンプル2よりも毛羽立ちは多い
が、毛玉はない。
3.0:基準サンプル2と3の試験布の間の外観であるが、どちらかというと
基準サンプル3の外観に近く、毛羽立ちがあるが、毛玉はない。
3.5:基準サンプル3の試験布と同等の外観で、毛羽立ちはあるが、毛玉は
ない。
4.0:基準サンプル3と4の試験布の間の外観であるが、どちらかというと
基準サンプル3の外観に近く、毛羽立ちがあり、やや毛玉がある。
4.5:基準サンプル3と4の試験布の外観の間であるが、どちらかというと
基準サンプル4の外観に近く、毛羽立ちがあり、毛玉がある。
5.0:基準サンプル4の試験布と同等の外観で、毛羽立ちも毛玉もある。
【0080】
<再分散性の評価法>
5mLのプラカップ(ネオミニカップNo.5、直径25mm、高さ20mm、株式会社マルエム製)の中にPP板(標準試験板、1×10×70mm、日本テストパネル株式会社)を立てかけた。表3〜4に示す実施例1〜12、比較例1〜9の衣料用仕上げ剤組成物(0.1g)をPP板の上端に滴下し、25℃/50%RHの環境下で24時間乾燥させ、これを試験片(Y1)とした。乾燥させた試験片(Y1)をプラカップに立てかけたまま、試験片の上端にイオン交換水(2mL)を滴下し、これを試験片(Y2)とした。試験片(Y2)上のポリマー皮膜の流動性や分散性を観察し、下記の判定基準に従って再分散性効果を評価した。1つの実施例について、5人の評価員が1回ずつ評価を行い、評価結果を平均した。
再分散性の評価においては、3.0以下が合格であり、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、更に好ましくは1.5以下である。
【0081】
〔判定基準〕
1.0:試験片からポリマーが全て流れ落ち、白濁分散した(凝集粒子なし)
2.0:試験片からポリマーが全て流れ落ち、白濁分散した(僅かに凝集粒子あり)
3.0:試験片からポリマーが全て流れ落ち、白濁分散した(凝集粒子あり)
4.0:試験片からポリマーが全て剥がれ落ちるが、凝集した塊のまま浮遊している
5.0:試験片からポリマーが全く剥がれ落ちない
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
以上の結果から明らかなように、本発明の衣料用仕上げ剤組成物は、衣料等の繊維製品の毛羽立ちや毛玉の発生を抑制することができると共に、投入ケース方式の全自動洗濯機の仕上げ剤保持部の使用時に繊維製品に凝集物が付着することがない。