特許第6159294号(P6159294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6159294タイヤのトレッド形状測定方法、及びそれに用いるトレッド形状測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159294
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】タイヤのトレッド形状測定方法、及びそれに用いるトレッド形状測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20170626BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   G01B11/24 A
   B60C19/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-114282(P2014-114282)
(22)【出願日】2014年6月2日
(65)【公開番号】特開2015-227847(P2015-227847A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 清人
(72)【発明者】
【氏名】伊都 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智史
【審査官】 梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05636026(US,A)
【文献】 特開2008−116352(JP,A)
【文献】 特開2008−281438(JP,A)
【文献】 特開2006−308320(JP,A)
【文献】 特開昭59−043307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 − 11/30
B60C 1/00 − 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー変位計を有するトレッド形状測定装置を用いてタイヤのトレッドの表面形状を求める測定方法であって、
前記トレッド形状測定装置は、前記レーザー変位計の周囲を囲む周囲壁を具え、
前記周囲壁の内部を、温調器によって温度管理する管理工程を有することにより、温度変化によるレーザー変位計の出力変動を抑制し、
前記レーザー変位計は、タイヤ軸方向に間隔を隔てて配される3つを用い、
前記3つのレーザー変位計から、それぞれタイヤ軸芯回りで回転するタイヤのトレッド表面までの半径方向の距離を測定し、レーザー変位計毎の半径方向距離データy1、y2、y3をタイヤ1周当たりm個取得する測定ステップと、
横溝に起因するノイズデータを除去した後の残りの半径方向距離データy1、y2、y3をそれぞれ平均して平均値y1N、y2N、y3Nを求める平均化ステップと、
各平均値y1N、y2N、y3Nと、タイヤ軸方向の基準位置から各レーザー変位計までのタイヤ軸方向の距離x1、x2,x3とからトレッドラジアスTRを算出する算出ステップとを含むトレッドラジアス測定工程を具えることを特徴とするタイヤのトレッド形状測定方法。
【請求項2】
前記ノイズデータは、取得した各m個の半径方向距離データy1、y2、y3に対し、それぞれ時系列的に得たi番目のデータyiと、それよりも先行して得た直近のk個のデータの平均値である移動平均yNとを比較し、その差|yi−yN|が閾値よりも大きい場合の前記データyiである請求項1記載のタイヤのトレッド形状測定方法。
【請求項3】
前記レーザー変位計は、レーザー光の巾Wが5mm以上である請求項1又は2に記載のタイヤのトレッド形状測定方法。
【請求項4】
前記周囲壁には、レーザー変位計のレーザー光が通る開口部と、この開口部を開閉する開閉蓋とが設けられ、
前記レーザー光の照射の際、前記開口部を開放する開放ステップと、照射後に、前記開口部を開閉蓋によって閉じる閉鎖ステップとを行う請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤのトレッド形状測定方法。
【請求項5】
レーザー変位計を用いてタイヤのトレッドの表面形状を求める測定装置であって、
前記レーザー変位計と、前記レーザー変位計の周囲を囲む周囲壁と、前記周囲壁の内部を温度管理する温調器とを具えるとともに、
前記周囲壁は、前記レーザー変位計のレーザー光が通る開口部と、前記開口部を開閉する開閉蓋とが設けられ
前記レーザー変位計は、中央のレーザー変位計と、前記中央のレーザー変位計の両側に配される一対の中間のレーザー変位計と、前記中間のレーザー変位計の両側に配される一対の外のレーザー変位計とを有する5つからなり、かつ、回転する前記タイヤのトレッド表面までの半径方向の距離を測定し、
タイヤをその軸芯回りで回転可能に支持する支持軸を有するタイヤ保持機、及び、
前記5つのレーザー変位計のうちの3つのレーザー変位計により取得されたトレッド表面までの半径方向距離データy1、y2、y3と、タイヤ軸方向の基準位置から前記3つのレーザー変位計までのタイヤ軸方向の距離x1、x2,x3とに基づいてトレッドラジアスTRを算出する演算手段を含むことを特徴とするタイヤのトレッド形状測定装置。
【請求項6】
タイヤ軸方向に移動可能に支持される移動台を含み、
前記中央のレーザー変位計は、前記移動台に一体移動可能に支持され、
前記中間のレーザー変位計は、前記中央のレーザー変位計とはタイヤ軸方向に相対移動可能に支持され、
前記外のレーザー変位計は、前記中央のレーザー変位計及び中間のレーザー変位計とはタイヤ軸方向に相対移動可能に支持される請求項5記載のタイヤのトレッド形状測定装置。
【請求項7】
前記各レーザー変位計の光軸は、タイヤ軸芯からのびる1つの放射面上で並列する請求項5又は6に記載のタイヤのトレッド形状測定装置。
【請求項8】
前記各レーザー変位計はレーザー光の巾Wが5mm以上である請求項5乃至7のいずれかに記載のタイヤのトレッド形状測定装置。
【請求項9】
前記温調器は、冷却器を含むことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載のタイヤのトレッド形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッドの表面形状を精度良く測定するトレッド形状測定方法、及びそれに用いるトレッド形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤのトレッドの表面形状を計測するレーザー変位計を具えたトレッド形状計測装置が知られている。しかしながら、このトレッド形状計測装置は、測定誤差が大きいという問題があった。
【0003】
上記問題について、本発明者が研究した結果、レーザー変位計は、温度依存性を有しており、例えば、計測装置の近傍の生産設備からの輻射熱や計測装置が設置されている室内温度の変化によって、その出力が大きく変動するため、トレッドの表面形状の測定に誤差が生じていることが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−153555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、レーザー変位計の温度依存性を解消して、トレッドの表面形状を精度良く測定しうるタイヤのトレッド形状測定方法、及びそれに用いるトレッド形状測定装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1の発明は、レーザー変位計を有するトレッド形状測定装置を用いてタイヤのトレッドの表面形状を求める測定方法であって、
前記トレッド形状測定装置は、前記レーザー変位計の周囲を囲む周囲壁を具え、
前記周囲壁の内部を、温調器によって温度管理する管理工程を有することにより、温度変化によるレーザー変位計の出力変動を抑制することを特徴としている。
【0007】
本発明に係る前記タイヤのトレッド形状測定方法では、前記周囲壁には、レーザー変位計のレーザー光が通る開口部と、この開口部を開閉する開閉蓋とが設けられ、
前記レーザー光の照射の際、前記開口部を開放する開放ステップと、照射後に、前記開口部を開閉蓋によって閉じる閉鎖ステップとを行うことが好ましい。
【0008】
本発明に係る前記タイヤのトレッド形状測定方法では、前記温度管理は、設定値±1℃の温度範囲で行われることが好ましい。
【0009】
本発明に係る前記タイヤのトレッド形状測定方法では、前記温調器は、冷却器を含むことが好ましい。
【0010】
本願第2の発明は、レーザー変位計を用いてタイヤのトレッドの表面形状を求める測定装置であって、
前記レーザー変位計と、前記レーザー変位計の周囲を囲む周囲壁と、前記周囲壁の内部を温度管理する温調器とを具えるとともに、
前記周囲壁は、前記レーザー変位計のレーザー光が通る開口部と、前記開口部を開閉する開閉蓋とが設けられることを特徴としている。
【0011】
本発明に係る前記タイヤのトレッドの表面形状を求める測定装置では、前記温調器は、冷却器を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトレッド形状測定方法では、レーザー変位計を有するトレッド形状測定装置は、レーザー変位計の周囲を囲む周囲壁を具え、周囲壁の内部を、温調器によって温度管理する管理工程を有する。これにより、レーザー変形計の周囲の温度が一定に保たれるため、レーザー変位計の出力変動が小さくなる。従って、タイヤの表面形状を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のトレッドラジアス測定方法に使用されるトレッドラジアス測定装置の一実施例を示す斜視図である。
図2】その主要部を上方から見た平面図である。
図3】レーザー測定装置の開閉扉が開いた状態を示す側面図である。
図4】レーザー測定装置の開閉扉が閉じた状態を示す側面図である。
図5】レーザー測定装置の内部構造を側方から見た概念図である。
図6】幅広のレーザー光による効果を説明する部分斜視図である。
図7】第1のトレッドラジアスTRsを算出する工程と、第2のトレッドラジアスTRmとを算出する工程を示す概念図である。
図8】(A)、(B)は、校正工程を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1、2に示すように、本発明のトレッド形状測定方法に使用されるトレッド形状測定装置(以下、単に「測定装置」という場合がある。)1は、タイヤ保持機2と、レーザー測定装置3とを具えている。タイヤ保持機2は、内圧を充填したタイヤTをその軸芯j回りで回転可能に支持する支持軸4を有する。又、レーザー測定装置3は、回転するタイヤTのトレッド表面Tsまでの半径方向の距離を測定する少なくとも3つのレーザー変位計5(図3に示す)と、レーザー変位計5によって測定された半径方向距離データに基づいてトレッド形状を算出する演算手段(図示しない)とを有している。
【0015】
本実施形態のタイヤ保持機2は、リム組みされたタイヤTを水平に支持する支持軸4と、該支持軸4を所定の回転速度で回転させるモータ等の駆動手段(図示しない)とを具えている。なお、支持軸4がタイヤTを垂直に支持する構成とすることもできる。又、駆動手段として、例えば、トレッド部に圧接してタイヤTを直接駆動するロードホイールを用いることもできる。
【0016】
本実施形態の測定装置1で測定されるタイヤTは、例えば、トレッド表面Tsにタイヤ周方向にのびる周方向リブRが配されるリブパターンの乗用車用タイヤである。周方向リブRは、例えば、中央のセンタリブRcと、その両側のミドルリブRm、Rmと、その外側のショルダリブRs、Rsとの5本のリブで構成されている。
【0017】
レーザー測定装置3は、レーザー変位計5と、その周囲を囲む周囲壁7と、この周囲壁7の内部を温度管理する温調器6とを具える。具体的には、レーザー測定装置3は、前記温調器6と、架台8と、この架台8にガイド手段9を介してタイヤ軸方向Xとは直角なZ方向に移動可能に支持される第1の移動台10と、この第1の移動台10にガイド手段11を介してタイヤ軸方向Xに移動可能に支持される第2の移動台12とを具える。
【0018】
温調器6は、例えば、冷暖房能力を具えた周知のエアコン6aと、エアコン6aで温度管理された空気をレーザー変位計5に供給する風導管6bとを含んで構成される。このようなエアコン6aは、通年で、レーザー変位計5の周囲を一定の温度に管理しうる。風導管6bは、例えば、伸縮自在な蛇腹状構造のフレキシブルダクトが望ましい。なお、夏期シーズンなどで室温が非常に高い場合は、エアコン6aの冷房能力を補助するため、例えばスポットエアコン等の周知の冷却装置6cを、さらに使用するのが望ましい。
【0019】
第2の移動台12は、レーザー変位計5と、レーザー変位計5の周囲を囲む周囲壁7とを有している。第2の移動台12は、本実施形態では、5つのレーザー変位計5(図5に示す)を有している。
【0020】
図3に示されるように、周囲壁7は、本実施形態では、レーザー変位計5の周囲全体を囲んでいる。本実施形態の周囲壁7は、レーザー変位計5の上側に設けられる上壁部7a、レーザー変位計5の下側に設けられる下壁部7c、及び、上壁部7aと下壁部7cとを継ぐ側壁部7bとを含んでいる。また、周囲壁7は、その内部の温度を一定に保つよう、例えば、保温効果の高い材料で形成されるのが望ましい。
【0021】
また、周囲壁7は、レーザー変位計5のレーザー光Lが通る第1の開口部13と、第1の開口部13を開閉する開閉蓋14と、温調器6からの空気を取り込むための第2の開口部15(図1に示す)とが設けられている。第1の開口部13及び第2の開口部15は、本実施形態では、側壁部7bに配されている。
【0022】
図1に示されるように、第2の開口部15には、風導管6bからの空気を周囲壁7の内部の全体に供給するために、周囲壁7に向かって外径を拡大させたホッパー状の拡径部6dが接続されている。
【0023】
図3に示されるように、開閉蓋14は、例えば、Z字状に折り曲げられた板材で構成されている。開閉蓋14は、例えば、金属材料からなり、一方側の面に保温材が貼り付けられているのが望ましい。
【0024】
第2の移動台12は、さらに、開閉蓋14を開閉させるための蓋開閉装置16を具えている。
【0025】
蓋開閉装置16は、例えば、回転可能に支持された回転軸17と、回転軸17の一端に固着されるリンク機構18と、リンク機構18を回動しうるアクチュエータ19とを含んでいる。
【0026】
回転軸17は、本実施形態では、側壁6cに沿って上下にのび、上壁部7aに設けられた一方の支持片20aと、下壁部7cに設けられた他方の支持片20bとで支持されている。本実施形態では、回転軸17と開閉蓋14とが、リベットによって固着されている。なお、回転軸17と開閉蓋14とは、溶接やかしめによって固定されても良い。
【0027】
リンク機構18は、一端側に枢支点Qを有しかつ枢支点Q周りに回動可能に保持された1対のリンク片18a、18bからなる。一方のリンク片18aは、枢支点Qと逆側の端部がアクチュエータ19と固着されている。他方のリンク片18bは、枢支点Qと逆側の端部が回転軸17と固着されている。他方のリンク片18bの回転により、回転軸17が軸中心線17c(図4に示す)回りに回転する。
【0028】
アクチュエータ19は、例えば、伸縮自在のシリンダ19aを含んでいる。従って、図3及び図4に示すように、シリンダ19aの伸縮に伴い、リンク機構18が枢支点Q周りに回動し、他方のリンク片18bの回転に伴って回転軸17回転して、開閉蓋14が軸中心線17c回りで回転する。これにより、開閉蓋14が第1の開口部13を開閉しうる。本実施形態のアクチュエータ19は、周囲壁7の上壁部7aに設けられている。アクチュエータ19は、シリンダ19aに限定されるものではなく、例えば、ボールネジ構造のもの等が採用されても良い。
【0029】
ガイド手段9、11としては、周知の種々の構造のものが使用される。図2に示すように、本実施形態のガイド手段9、11は、直線状にのびるガイドレールと、それに案内されるガイド溝とを具えるものが示される。なおガイド手段9には、架台8に固定されかつZ方向にのびるシリンダ9Aが含まれるとともに、そのロッド端は第1の移動台10に連結される。従って、第1の移動台10は、シリンダ9Aの伸縮により、待機位置Q1と測定位置Q2との間をZ方向に移動しうる。又ガイド手段11は、第1の移動台10に枢支されてタイヤ軸方向X(図1に示す)にのびるボールネジ軸11Aと、第2の移動台12に取り付きかつボールネジ軸11Aに螺合するナット部11Bとを含む。従って、モータMcによるボールネジ軸11Aの回転により、第2の移動台12はタイヤ軸方向Xに自在に移動しうる。
【0030】
図5に示すように、5つのレーザー変位計5は、タイヤ軸方向Xに互いに間隔を有して配されており、本実施形態では、中央のレーザー変位計5cと、その両側に配される中間のレーザー変位計5m、5mと、そのさらに両側に配される外のレーザー変位計5s、5sとから構成されている。
【0031】
中央のレーザー変位計5cは、第2の移動台12に固定され、従って、第2の移動台12とは一体にタイヤ軸方向Xに移動しうる。各中間のレーザー変位計5m、5mは、それぞれガイド手段25を介してタイヤ軸方向Xに移動可能に第2の移動台12に支持される。即ち、中間のレーザー変位計5mは、中央のレーザー変位計5cに対してタイヤ軸方向Xに相対移動可能である。各外のレーザー変位計5s、5sは、それぞれガイド手段26を介してタイヤ軸方向Xに移動可能に第2の移動台12に支持される。即ち、外のレーザー変位計5sは、中央のレーザー変位計5c及び中間のレーザー変位計5mに対してタイヤ軸方向Xに相対移動可能である。
【0032】
従って、ガイド手段11による第2の移動台12自体の移動により、例えば、中央のレーザー変位計5cをタイヤ赤道Co上の基準位置に位置合わせすることができる。又ガイド手段25、26により、タイヤサイズやトレッドパターンに応じて、各中間のレーザー変位計5m及び外のレーザー変位計5sを、中央のレーザー変位計5cを基準とした適宜の測定位置に移動させることができる。
【0033】
図2に示すように、測定位置Q2においては、各レーザー変位計5は、照射側の光軸Liがタイヤ軸芯jからのびる1つの放射面上で並列するように配置される。
【0034】
ガイド手段25、26として、周知の種々の構造のものが使用できる。本実施形態では、図5に示すように、第2の移動台12の側板間に架け渡されるガイド軸27A、ボールネジ軸28A、レーザー変位計取り付け板29に取り付きかつガイド軸27Aに案内されるガイド孔27B、及び、ボールネジ軸28Aに螺合するナット部28Bを含む。従って、モータMm、Msによるボールネジ軸28Aの回転により、中間のレーザー変位計5mと外のレーザー変位計5sとを、それぞれ独立してタイヤ軸方向Xに自在に移動させることができる。
【0035】
各レーザー変位計5として、図6に示すように、レーザー光Lの巾Wを5mm以上としたものが採用される。このようなレーザー変位計5では、例えばレーザー光Lの照射部分La内に局部的に存在するトレッド表面Tsの凹凸30(例えばサイプ30aや切欠き30b等に起因する凹凸)に対しては、レーザー変位計5自体が有するフィルタリング機能によって除去される。そのため、局部的な凹凸30に起因するノイズデータの発生を抑制できるという利点がある。これに対して、横溝31などレーザー光の照射部分La全体が凹凸内に落ち込む場合には、ノイズデータとなってしまう。しかしこのノイズデータは、前記演算手段によるスムージング処理によって検出され削除されることとなる。なお演算手段は、この測定装置1を用いたトレッド形状測定方法において説明する。
【0036】
次に、本発明のトレッドの表面形状を求める測定方法では、周囲壁7の内部を温度管理する管理工程SAと、タイヤのトレッドの表面形状を測定するトレッド形状測定工程SBとを具える。
【0037】
管理工程SAは、レーザー変位計5を囲む周囲壁7の内部を温調器6によって、温度管理する。これにより、レーザー変形計5の周囲の温度が一定に保たれるため、レーザー変位計5の出力変動が小さくなる。従って、タイヤの表面形状を精度良く測定することができる。また、測定装置1が置かれた室内全体を温度管理することよりも、温度管理に伴う消費エネルギーを小さくできるため、省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
管理工程SAは、第1の開口部13を開放する開放ステップと、第1の開口部13を開閉蓋14によって閉じる閉鎖ステップとを有している。
【0039】
管理工程SAは、先ず、閉鎖ステップが行われる。閉鎖ステップでは、アクチュエータ19を作動させて、周囲壁7の第1の開口部13を開閉蓋14で閉鎖する。本実施形態では、シリンダ19aを縮め、リンク機構18の回動により回転軸17を回転させて、開閉蓋14を回転移動させる。次に、温調器6が運転されて、温度制御された空気が周囲壁7の第2の開口部15からその内部に送風される。本実施形態では、周囲壁7の外側の室内の空気がエアコン6aに吸い込まれ、温度制御されて周囲壁7の内部に送風される。
【0040】
周囲壁7の内部の温度は、設定値±1℃の範囲で温度管理されるのが望ましい。これにより、レーザー変位計5の温度依存性による出力変動が確実に小さくなる。設定値は、例えば、22〜28℃が選択される。このような温度は、通年で温度管理することができるため、さらにタイヤの表面形状を精度良く測定することができる。このような観点より、設定値は、好ましくは24〜26℃、より好ましくは25℃である。
【0041】
なお、周囲壁7の内部の温度管理は、周囲壁7の内部の空気を温調器6に取り込んで周囲壁7の内部に吹き出す循環方式によって制御する方法でも良い。
【0042】
次に開放ステップが行われる。開放ステップは、開閉蓋14を回転移動させて、第1の開口部13を開放する。このとき、温調器6によって、周囲壁7の内部に温度管理された空気を連続的に供給しておくのが望ましい。この開放ステップにおいて、トレッド形状測定工程SBが行われる。
【0043】
トレッド形状測定工程SBは、本実施形態では、トレッドラジアスTRを測定する。トレッド形状測定工程SBは、測定ステップと、平均化ステップと、算出ステップとを含んでいる。図7に示すように、トレッド形状測定工程SBが、5本の周方向リブRのうちのセンタリブRcとショルダリブRs、Rsとの3本から第1のトレッドラジアスTRsを算出する工程SB1、及びセンタリブRcとミドルリブRm、Rmとの3本から第2のトレッドラジアスTRmを算出する工程SB2を含む場合が示される。第1、第2のトレッドラジアスTRs、TRmを測定する理由は、例えばA国の使用条件では、第1のトレッドラジアスTRsと操縦安定性との相関が強く、B国の使用条件では、第2のトレッドラジアスTRmと操縦安定性との相関が強くなるなど、タイヤの使用条件等によって操縦安定性との相関性が変化するためである。従って、2つのトレッドラジアスTRs、TRmを測定することで、操縦安定性をより的確に評価することが可能になる。
【0044】
以下に、第1のトレッドラジアスTRsを算出する工程SB1を代表して説明する。
【0045】
測定ステップでは、5つのレーザー変位計5のうちの3つのレーザー変位計5から、それぞれタイヤ軸芯回りで回転するタイヤTのトレッド表面Tsまでの半径方向の距離を測定し、レーザー変位計5毎の半径方向距離データy1、y2、y3をタイヤ1周当たりm個取得する。
【0046】
工程SB1の場合には、中央のレーザー変位計5cによりセンタリブRcまでの半径方向距離データy1をタイヤ1周当たりm個取得する。即ち、m個の半径方向距離データy1〜y1を取得する。又外のレーザー変位計5s、5sにより、それぞれショルダリブRs、Rsまでの半径方向距離データy2、y3をタイヤ1周当たりm個取得する。即ち、それぞれm個の半径方向距離データy2〜y2、データy3〜y3を取得する。
【0047】
平均化ステップでは、各m個の半径方向距離データy1、y2、y3に対してスムージング処理を施し、横溝31に起因するノイズデータを除去する。又ノイズデータを除去した後の半径方向距離データy1、y2、y3をそれぞれ平均して平均値y1N、y2N、y3Nを求める。
【0048】
スムージング処理は、取得した各m個の半径方向距離データy1、y2、y3に対し、それぞれ時系列的に得たi番目のデータyと、それよりも先行して得た直近のk個のデータの平均値である移動平均yNとを比較する。そして、その差|y−yN|が閾値より大きい場合、データyをノイズデータとして半径方向距離データy1、y2、y3から削除する。
【0049】
具体的には、i番目のデータyよりも先行して得た直近のk個のデータとは、yi−1〜yi−kを意味する。又直近のk個のデータの平均値である移動平均yNとは、(yi−1+yi−2+・・・+yi−k)/kを意味する。
【0050】
半径方向距離データy1の場合、i番目のデータyとはy1であり、直近のk個のデータyi−1〜yi−kとはy1i−1〜y1i−kである、又移動平均yNは、(y1i−1+y1i−2+・・・+y1i−k)/kを意味する。半径方向距離データy2、y3についても同様である。
【0051】
そしてこの移動平均yNとデータyiとの差|y−yN|を閾値と比較し、差|y−yN|が閾値より大きい場合、データyをノイズデータとして削除するのである。この操作をi=1からi=mまで順に行う。なおk≧iの場合、直近のk個のデータとしては、yi−1、yi−2、〜y、y、ym−1、〜ym−(k−i)を採用する。ここで、閾値としては、想定されるRR0よりも大きな値、かつ測定する周方向リブRに配される横溝31の溝深さよりも小な値が選択される。通常3.0mm程度に設定される。
【0052】
トレッド形状測定工程では、各平均値y1N、y2N、y3Nと、タイヤ軸方向の基準位置(任意に設定できる。)Xから各レーザー変位計5までのタイヤ軸方向の距離x1、x2,x3とからトレッドラジアスTRを算出する。具体的には、次式(1)に3点P(x1、y1N)、P(x2、y2N)、P(x3、y3N)を代入することで、曲率半径TRであるトレッドラジアスを求めることができる。
(x−a)+(y−b)=TR −−−(1)
【0053】
そしてこのような半径方向距離データy1、y2、y3のスムージング処理、平均値y1N、y2N、y3Nの算出、平均値y1N、y2N、y3Nと距離x1、x2,x3とからのトレッドラジアスTRの算出は、前記演算手段によって行われる。
【0054】
第2のトレッドラジアスTRmを算出する工程SB2も同様である。なお工程SB1と工程SB2とは同時に行うことができ、このとき中央のレーザー変位計5cによる取得する半径方向距離データy1、及びこの半径方向距離データy1をスムージング処理した後の平均値y1N等は、共通使用できる。
【0055】
なお、半径方向距離データの取得の数mは、500個以上であることが好ましく、これより少ないと、トレッドラジアスと操縦安定性との相関が低下する傾向となる。なお数mの上限は特に規制されないが、多すぎると処理が煩雑となって時間の無駄を招く。そのため数mの上限は2000個以下が好ましい。
【0056】
移動平均の数kは、2〜100であるのが好ましく、100を越えてもスムージング処理の精度の上昇が見込まれず、又処理が煩雑となって時間の無駄を招く。又、スムージング処理の精度を高めるために、タイヤTの回転数を20〜3000rpmの範囲とするのが好ましく、20rpmを下回ると精度が低下する。又、3000rpmを越えると、1周当たり500個以上の半径方向距離データの取得が難しくなる。
【0057】
又、レーザー変位計5によるフィルタリング精度高めるためには、図6に示すように、レーザー光Lの巾Wが、測定する周方向リブRのリブ巾WRの10〜70%の範囲であるのが好ましい。レーザー光Lの巾Wが5mmを下回る、或いはリブ巾WRの10%を下回る場合、照射部分Laに占めるサイプ30aや切欠き30b等の割合が大きくなって、フィルタリング機能が十分発揮されなくなる。逆に70%を越えると、レーザー光Lが周方向リブRからはみ出す恐れを招く。
【0058】
トレッド形状測定工程SBの後、閉鎖ステップが行われ、周囲壁7の内部が予め定められた温度に管理される。このとき、タイヤ保持機2のタイヤTが交換される。
【0059】
本発明は、本実施形態のように、開放ステップにおいて、測定ステップ、平均化ステップ、算出ステップが行われるものに限定されるものではなく、例えば、測定ステップのみ開放ステップで行われ、平均化ステップ及び算出ステップは、閉鎖ステップにおいて行われても良い。これにより、周囲壁7の内部を予め定められた温度に早期に確保できるため、測定工程SBを効率よく行うことができる。
【0060】
なお、本発明のトレッドラジアス測定方法では、3つのレーザー変位計5を同時に使用するため、各レーザー変位計5により高い正確さが要求される。そのためトレッド形状測定方法は、トレッド形状測定工程に先駆けて行うレーザー変位計の校正工程を具える。
【0061】
図8に概念的に示すように、校正工程では校正治具35が用いられる。校正治具35は、支持軸4に支持される円筒状の基部36と、この基部36に一体に取り付く反射板37とを具える。反射板37は、支持軸4の軸芯4i(タイヤ軸芯jに相当する)から半径方向に距離F1を隔たる第1の反射板37aと、第1の反射板37aから半径方向内外に距離F2を隔たる第2、第3の反射板37b、37cとを具え、各反射板37a、37b、37cは、周方向に互いに間隔を隔てて配される。
【0062】
そして校正工程では、まず第1の反射板37aを用いて、各レーザー変位計5の原点調整が行われる。次に第2、3の反射板37b、37cを用い、各レーザー変位計5のゲイン調整が行われる。第1〜3の反射板37a、37b、37cの反射面は、それぞれ軸芯4iからの距離と等しい曲率半径r1、r2、r3を有する凸円筒面からなることが好ましい。即ちr1=F1、r2=F1+F2、r3=F1−F2である。これにより、各反射板37a、37b、37cを軸芯4i廻りで位置替えする際、反射板37a、37b、37cの位置替えの角度が多少ずれている場合にも、レーザー光Lを正確に反射でき、校正工程を迅速化することができる。
【0063】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0064】
1 トレッド形状測定装置
5 レーザー変位計
T タイヤ
6 温調器
7 周囲壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8