特許第6159352号(P6159352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6159352-エキスパンションの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159352
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】エキスパンションの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/18 20060101AFI20170626BHJP
   B21D 51/16 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   B21D53/18
   B21D51/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-23848(P2015-23848)
(22)【出願日】2015年2月10日
(65)【公開番号】特開2016-147271(P2016-147271A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】598038108
【氏名又は名称】日本鏡板工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123021
【弁理士】
【氏名又は名称】渥美 元幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 三郎
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−255649(JP,A)
【文献】 特開昭49−039109(JP,A)
【文献】 特開昭49−043867(JP,A)
【文献】 特開昭54−117373(JP,A)
【文献】 特公昭48−007588(JP,B1)
【文献】 米国特許第01390282(US,A)
【文献】 米国特許第04466566(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/18
B21D 51/16
B21D 22/14−22/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板材を打ち抜いて所定寸法の円板にする第1工程と、
円板を凸弧状面に加工する第2工程と、
スピニング一次加工で円板の外周縁に周溝を設ける第3工程と、
円板の凸弧状面の中央不要部を切断して開口部にする第4工程と、
スピニング二次加工でR止まり部より直線部を持つU字状溝に形成する第5
工程とからなる
ことを特徴とするエキスパンションの製造方法。
【請求項2】
前記第3工程のスピニング一次加工は、外周縁の内側に設けたスピニング機と外周縁の外側に設けたローラ機により周溝を設ける
ことを特徴とする請求項1に記載のエキスパンションの製造方法。
【請求項3】
前記第5工程のスピニング二次加工は、周溝に嵌めるスピニング機と開口部の内側にあるローラ機によりR止まり部より直線部を持つU字状溝に形成する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のエキスパンションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気炉などの排ガス用冷却ダクトに使用し、温度変化などによって生じる円周方向の伸縮を吸収するために設けるエキスパンションの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気炉で鉄スクラップなどを溶解して溶湯を精錬する時には高温の排ガスが発生する。この排ガスを所定温度に冷却して炉外へ排出するのに冷却ダクトが使用されている。この冷却ダクトは、円筒状の配管である内筒と外筒の2重構造であり、内筒と外筒の間隙に冷却水を流し込んで、内筒内を通過する排ガスを冷却して内筒を保護しているが、内筒と外筒との温度差による熱膨張差が生じ、応力緩和を図るために内筒と外筒の管端にエキスパンションが取り付けられている。
【0003】
このエキスパンションは、従来から鋼管により製造されていた。すなわち、図4のAに示すように、所定の径と長さのパイプ材21を用意する。図4のBに示すように、パイプベンダー(図示せず)によりパイプ材21を曲げ加工して半円形パイプ22を形成する。図4のCに示すように、半円形パイプ22の両端22a,22aを所定寸法に切断し、2個の半円形パイプ22,22の両端22a,22aを突き合わせ、その突合せ部を溶接部23とすることによりリング24を形成する。図4のDに示すように、リング24の中心位置にて、リング24の内面、外面より輪切りに切断する。図4のEに示すように、リング24は上下に2分割され分割半円体25、26となり、寸法変形を修正してエキスパンション27を製作している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような方法で製造されたエキスパンション27は、図4Fに示すように、内筒28と外筒29との繋ぎ溶接部30がリングパイプの丁度R止まり部になる。このR止まり部はダクト使用中において温度差による熱膨張応力が最も集中する箇所であることから、溶接部30が破損しやすく長期の使用に耐えられなかった。
【0005】
また、前述のエキスパンションの製造方法によれば、パイプ材21を半円形に曲げ加工し、その半円形パイプ22を2個突き合わせ接合して周縁を溶接部23としてリング24にするための溶接作業に時間がかかりすぎ作業能率が悪いばかりでなく、完成品のエキスパンション27には溶接部23が存在することになり、溶接欠陥が生じやすい問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑み開発されたもので、内筒と外筒との溶接箇所を、応力集中するR止まり部を避け、R止まり部より直線部が一体となるように製作することにより、応力集中をなくして破断問題が生じることなく、また、エキスパンション本体には板継ぎ溶接のない品質向上するエキスパンションの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決し、その目的を達成するために、本発明に係るエキスパンションの製造方法は、金属板材を打ち抜いて所定寸法の円板にする第1工程と、円板を凸弧状面に加工する第2工程と、スピニング一次加工で円板の外周縁に周溝を設ける第3工程と、円板の凸弧状面の中央不要部を切断して開口部にする第4工程と、スピニング二次加工でR止まり部より直線部を持つU字状溝に形成する第5工程からなるものである。
【0008】
これによれば、エキスパンションの端部に直線部が一体に設けてあるから、熱膨張差による応力集中を分散でき、機器使用中の破損を防ぐことにより機器の安全性と耐久性を向上したエキスパンションが得られる。また、エキスパンション本体には溶接部のないエキスパンションが得られるので製作工期の短縮が図れる。
【0009】
ここで、前記第3工程のスピニング一次加工は、外周縁の内側に配したスピニング機と外周縁の外側に配したローラ機により周溝を設けるのが好ましい。
【0010】
これによって、円板の外周縁には正確な深さと幅の寸法の周溝が容易に素早く形成できることになる。
【0011】
ここで、前記第5工程のスピニング二次加工は、周溝に嵌まるスピニング機と開口部の内側に配したローラ機によりR止まり部より直線部を持つU字状溝に形成するのが好ましい。
【0012】
これによって、外周縁に最終仕上げの正確な寸法の直線部を持つU字状溝を極めて容易に確実に形成できる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のエキスパンションの製造方法によれば、エキスパンションの端部を直線部で一体的に取り付けられることにより、熱膨張差による応力集中を分散でき、機器使用中の割れなどを防ぐことができ、機器の安全性と耐久性を向上できる。また、エキスパンション自体には、溶接部がないので製作工期の短縮化が図れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のエキスパンションの製造工程を順次に示す説明図である。
図2】本発明の製造工程で得られたエキスパンションの縦断面図である。
図3】エキスパンションの使用状態示す正面図である。
図4】従来のエキスパンションの製造工程を順次に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るエキスパンションの製造方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明をする。図1に示すように、エキスパンションの形状、寸法および鏡板の寸法を考慮して金属板から打ち抜かれた円板1を用意する第1工程(図1A)、打ち抜かれた円板1をプレス機(図示せず)にかけて上部を凸弧状面2に形成する第2工程(図1B)、円板1の外周縁の上部からスピニング機3を押し当て窪みを設け、側端片4を外側のローラ機5で内側に折り曲げて所定深さと幅の周溝6を設ける第3工程(図1C)、エキスパンションの内径寸法を考慮して円板1の上部弧状面2の不要中央部を切断除去し、残余傾斜片7,7間を開口部8とする第4工程(図1D)、前記の第3工程で形成された周溝6の上部からスピニング機9を嵌めこんで最終の正確な溝深さにすると共に、残余傾斜片7,7の内側に配した内側のローラ機10で外側に曲げて最終仕上げの正確な幅のU字状溝11を形成する第5工程(図1E)を経て、エキスパンション12は製造される(図1F)。
【0016】
このような方法で製作されたエキスパンション12は、図2図3に示すように、従来の製造方法では得られなかった直線部13が存在し、その直線部13とダクトの内筒14と外筒15からなる二重胴板の管端に溶接で取り付けられるものである。そして、内筒14と外筒15の間隙16に給水口17から排水口18にわたって冷却水を循環させることによって熱交換が行われ、温度差によって生じる円周方向の伸縮を吸収するものである。
【0017】
また、エキスパンション12の端部には直線部13が存在することにより熱膨張差による応力集中を分散でき、ダクト使用中の割れなどを防ぐことができ、ダクトの安全性と耐久性を向上できる。
【0018】
また、従来のエキスパンションのように溶接工程を経ることなく、加工は全て冷間加工による一体成形であるから、加工のスピードが早くなり、寸法精度が正確であり、連続生産が可能であるために大量生産に適し、低廉な価格で供給できる。
【0019】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は電気炉に限らず、その他の金属溶解炉などの設備から発生する排ガス冷却用ダクトに使用されるエキスパンションの製造方法としても利用可能である。
図1
図2
図3
図4