(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159409
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】航空機胴体フレームをウィングボックスに取り付ける方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B64C 1/26 20060101AFI20170626BHJP
B64C 3/34 20060101ALI20170626BHJP
B64F 5/10 20170101ALI20170626BHJP
【FI】
B64C1/26
B64C3/34
B64F5/10
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-536842(P2015-536842)
(86)(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公表番号】特表2015-533111(P2015-533111A)
(43)【公表日】2015年11月19日
(86)【国際出願番号】US2013063913
(87)【国際公開番号】WO2014062423
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】13/652,975
(32)【優先日】2012年10月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100161274
【弁理士】
【氏名又は名称】土居 史明
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、グラント、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】リン、チュン―リアン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ、フランシス、イー・
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ウェンデル、シー・ケイ・
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2008/0283666(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0146007(US,A1)
【文献】
特表2010−503578(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0089292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/26
B64C 3/34
B64F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機胴体であって、当該航空機胴体のアウトボード部上に機体外板を有する航空機胴体と、
前記航空機胴体の一部を通って延びるウィングボックスであって、封止され、加圧可能とされたウィングボックスと、
前記ウィングボックスの外面及び前記機体外板に固定して取り付けられた少なくとも一対の取り付け部材及び取り付け用リンク部材と、を含み、
前記取り付け部材は、前記機体外板からインボード距離離間した遠位端を有するインボード延出部を含み、
前記取り付けリンク部材は、前記インボード延出部の前記遠位端及び前記ウィングボックスの前記外面に連結されている、航空機。
【請求項2】
前記取り付け部材は、複数の留め具によって、前記ウィングボックスの垂直外面に固定されている、請求項1に記載の航空機。
【請求項3】
前記ウィングボックスの前記垂直外面は、
前記ウィングボックスの前面、または、
前記ウィングボックスの後面、の一方をさらに含む、請求項2に記載の航空機。
【請求項4】
前記複数の留め具は、前記ウィングボックスの内部キャビティの外側に設けられている、請求項2又は3に記載の航空機。
【請求項5】
航空機胴体であって、当該航空機胴体のアウトボード部上に機体外板を有する航空機胴体と、
前記航空機胴体の一部を通って延びるウィングボックスであって、封止され、加圧可能とされたウィングボックスと、
前記ウィングボックスの外面及び前記機体外板に固定して取り付けられた少なくとも一対の取り付け部材及び取り付け用リンク部材と、を含み、
前記取り付け部材は、インボード延出部を含み、
前記取り付けリンク部材は、前記インボード延出部と前記ウィングボックスの前記外面とに連結されている、航空機。
【請求項6】
前記取り付け部材は、
前記航空機胴体の前記機体外板に連結された上方延出部と、
前記航空機胴体の前記機体外板及び前記ウィングボックスに連結された下方延出部と、をさらに含み、
前記取り付け部材の前記上方延出部及び下方延出部は、固定して取り付けられている、
請求項1〜5のいずれかに記載の航空機。
【請求項7】
前記ウィングボックスは、前記ウィングボックスの内部キャビティ内に配置されたウィング燃料容器をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の航空機。
【請求項8】
ウィングボックスを作製することと、
前記ウィングボックスに連結する航空機胴体を作製することと、
前記ウィングボックスの外面または前記航空機胴体のアウトボード部の少なくとも一方に少なくとも1つの取り付け部材を取り付けることと、
前記航空機胴体を前記ウィングボックスに固定して取り付けるためにアラインメントすることと、
前記少なくとも1つの取り付け部材を介して、前記ウィングボックスに前記航空機胴体を留め具で締結することと、
前記ウィングボックスの外面及び前記航空機胴体における機体外板に、取り付け用リンク部材と前記少なくとも1つの取り付け部材とを固定して取り付けることであって、前記取り付けリンク部材は、前記少なくとも1つの取り付け部材におけるインボード延出部と前記ウィングボックスの前記外面とに連結されていることと、を含む、航空機の製造方法。
【請求項9】
前記ウィングボックスの前記外面に前記少なくとも1つの取り付け部材を取り付けた後で、
前記ウィングボックスに前記航空機胴体を締結する前に、
前記ウィングボックスの内部キャビティに対して耐圧試験を行うこと、をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウィングボックスの前記外面における、前記航空機胴体の前記アウトボード部から所定距離の位置に、前記少なくとも1つの取り付け部材の前記インボード延出部を取り付けることをさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの取り付け部材を取り付けることは、
前記ウィングボックスの垂直外面のうちの前面または後面の1つに、少なくとも1つの取り付け部材を取り付けること、をさらに含む、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ウィングボックスに前記航空機胴体を取り付けることは、
締結中に前記留め具が前記ウィングボックスの内部キャビティに入るのを防止することをさらに含む、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの取り付け部材は、上方延出部及び下方延出部を含み、少なくとも1つの取り付け部材を取り付けることは、
前記上方延出部を前記航空機胴体の前記アウトボード部に取り付けることと、
前記下方延出部をウィングボックスの前記外面に取り付けること、とをさらに含み、
前記ウィングボックスに前記航空機胴体を取り付けることは、前記少なくとも1つの取り付け部材の前記上方延出部及び前記下方延出部を介して、前記航空機胴体を前記ウィングボックスに留め具で締結することをさらに含む、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、概して、航空機の構造体に関し、より具体的には、航空機の胴体に対するウィングの取り付けに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の最終的な組み立てに要する時間のかなりの部分は、航空機胴体にウィングアセンブリを連結することに費やされる。従来の胴体に対するウィングの取り付けでは、外側ウィングボックス(outboard wing box)を、センターウィングボックス、及び、航空機胴体の外板を連結する垂直フランジに接合するフレームスタブビーム(frame stub beams)を、ウィングボックスに取り付ける。ウィングボックスとの境界面には、胴体スタブビームと、ウィングボックスストリンガー(wing box stringer)細部部品及び留め具の両方が含まれている。航空機胴体サイドパネルフレームは、2つに分割されており、これよって、下側のフレーム部分を、ウィングと胴体との接合箇所に対して曲げることができるようになっている。このような構成では、航空機の胴体フレーム接合部材によって、フレーム重量が増す。また、二次的燃料バリア付与プロセスは、有害な煙霧を含み、この取り付けが完了するまでは十分に行うことができない。このことによって、胴体とウィングとの一体化の箇所において、費用がかかり且つ複雑なプロセスが必要となっている。
【0003】
上述の記載が示唆するように、航空機の胴体にウィングを接合するための現在の方法は、時間とコストの両方がかかり、さらに、多数の締結システムによって胴体重量が増すため、航空機の性能や燃費が低下するという問題もある。従って、必要な時間及び構造補強が少なくてすむ、航空機の胴体にウィングを接合するための新規の方法及びシステムが望まれている。本明細書における開示は、このような考慮点及びその他の考慮点に基づいて提示されるものである。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、選択された概念を簡単に紹介するためのものであり、これらの概念は以下の詳細な説明に詳しく記載されている。この概要は、特許請求の範囲の要旨を限定することを意図したものではない。
【0005】
本明細書に開示した航空機は、外側部材及び当該外側部材上の機体外板を有する航空機胴体と、当該航空機胴体の一部を通って延びるとともに、封止され、加圧可能とされたウィングボックス、とを含む。取り付け部材及び取り付け用リンク部材の少なくとも一対が、ウィングボックスの外面及び機体外板に固定して取り付けられている。
【0006】
本明細書に開示した航空機用の取り付け装置は、外側部材及び当該外側部材上の複数の機体フレーム部材を有する航空機胴体と、当該航空機胴体の一部を通って延びるウィングボックスとを含む。当該取り付け装置は、ウィングボックスの外面に固定して取り付けられた取り付け部材及び取り付け用リンク部材の少なくとも一対を含む。当該取り付け部材は、航空機胴体の外側部材を支持する上方延出突出部と、前記外側部材又はセンターウィングボックスの前記外面を支持する下方延出部材と、ウィングボックスの機内外面に連結されている取り付けリンク部材を支持する内向き延出突出部と、を含む。複数の留め具によって、航空機胴体が、取り付け部材及び取り付けリンク部材に固定して取り付けられており、これによって、航空機胴体がウィングボックスに固定されている。
【0007】
本明細書に開示した航空機の組み立て方法は、ウィングボックスを作製することと、ウィングボックスに連結する航空機胴体を作製することと、ウィングボックスの外面または航空機胴体の外側部材の少なくとも一方に少なくとも1つの取り付け部材を取り付けることと、航空機胴体をウィングボックスに固定して取り付けるために位置合わせすることと、少なくとも1つの取り付け部材を介してウィングボックスに航空機胴体を留め具で締結することと、を含む。
【0008】
上述した特徴、機能、利点は、本願の開示の様々な実施形態によって個別に達成することができ、あるいは、さらに他の実施形態と組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の記載及び図面を参照することによってより明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本明細書で提示される実施形態は、詳細な説明及び添付図面からより理解されるであろう。
【
図1】本明細書で開示される一実施形態による、航空機胴体に接合されたウィング部材を有する航空機の上側等角投影図である。
【
図2】ウィングボックス及び機体に接合された、第1実施形態のワンピース取り付け部材を示す、一部切欠き等角投影図である。
【
図3】ウィングボックス及び機体に接合された、
図2の第1実施形態のワンピース取り付け部材を示す、一部切欠き前方または後方図である。
【
図4】ウィングボックス及び機体に接合された、第2実施形態のツーピース取り付け部材を示す、一部切欠き等角投影図である。
【
図5】ウィングボックス及び機体に接合された、
図4の第2実施形態のツーピース取り付け部材を示す、一部切欠き前方または後方図である。
【
図6】ウィングボックス及び機体に接合されつつある、
図4〜
図5の第2実施形態のツーピース取り付け部材を示す分解等角投影図である。
【
図7】ウィングアセンブリを航空機胴体に取り付ける方法を示す、論理的なフローチャートプロセスである。
【
図8】地上位置及び飛行位置における、航空機胴体に対する負荷過程を示す、論理的なフローチャートプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の開示は、航空機胴体に航空機ウィングを効率的な方法で取り付けるための種々の方法及びシステムを説明している。以下により詳しく述べるように、一実施形態において、航空機ウィングは、留め具を用いて航空機胴体に取り付けられ、当該留め具を用いることによって、ウィングアセンブリを貫通する締結装置を用いずに、航空機胴体をウィングアセンブリに取り付けることが可能になっている。本明細書に記載した種々の実施形態を完全に理解できるようにするため、一部詳細を以下の説明及び
図1〜8に記載している。ただし、本明細書に記載した種々の実施形態の説明を不必要に不明瞭にすることを避けるため、一般的に航空機ウィング、胴体、及び、航空機構造によく関連付けられる周知の構造及びシステムについては、詳しい説明を記載していない。
【0011】
図面に示された細部、寸法、角度、及び他の特徴は、本明細書に開示した特定の実施形態の単なる例示である。従って、別の実施形態は、本明細書に記載の実施形態の精神または範囲から逸脱することなく、別の細部、寸法、角度、及び他の特徴を有する可能性がある。さらに、当業者であれば理解できるように、以下に記載した詳細の一部がなくても、さらなる実施形態を実施しうる。また、図面における同一の参照数字は、同一または少なくとも概ね類似する要素を示している。上述した特徴、機能、利点は、本願の開示の様々な実施形態によって個別に達成することができ、あるいは、さらに他の実施形態と組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の記載及び図面を参照することによってより明らかになるものである。
【0012】
図1は、本明細書で提示された一実施形態による、航空機胴体3に取り付けられたウィングアセンブリ2を有する航空機1の上側等角投影図(top isometric view)である。航空機胴体3は、右航空機胴体部材3Rと、対応する左航空機胴体部材3Lとを含む。ウィングアセンブリ2は、右航空機胴体部材3Rから延出する右ウィングアセンブリ部材2Rと、左航空機胴体部材3Lから延出する左ウィングアセンブリ部材2Lとを含む。ウィングアセンブリ2は、航空機胴体3の少なくとも一つの部材を通って延びるウィングボックス10をさらに含む。ウィングボックス10によって、右ウィングアセンブリ部材2Rが左ウィングアセンブリ部材2Lに構造的に取り付けられている。ウィングアセンブリ部材2R及び2Lは、それぞれ、隣接交点5において、航空機胴体部材3R及び3Lにそれぞれ接合されており、当該交点において、ウィングアセンブリ2の主翼外板6が、航空機胴体3の胴体外板7に交差している。
【0013】
ウィングボックス10は、その全体がウィングアセンブリ2内に配置されていてもよく、例えば燃料タンクを含むことができる内部キャビティ構造(図示せず)、または、別個に区分けされた、航空機胴体3から独立した他のキャビティを規定していてもよい。例えば、ウィングボックス10によって規定された内部キャビティ構造に対して、胴体3の耐圧試験とは独立して、耐圧試験を行ってもよい。これによれば、航空機胴体構造体3をウィングアセンブリ2に取り付ける前に、あらゆる圧力漏れに対してテストを行うことができる。ウィングボックスは、垂直方向に配置された前面及び後面をさらに含む。
【0014】
本明細書で提示した実施形態は、ウィングボックス10を介して航空機胴体3をウィングアセンブリ2に接合するための新規な方法及びシステムであり、この接合は、ウィングボックス10の前方または後方の側縁に配置された取り付け部材20を用いて行われ、その近傍で胴体外板7が主翼外板6に繋がっている。
【0015】
図示の実施形態においては、航空機1は、右ウィングアセンブリ部材2Rによって保持された1エンジン4Rと、左ウィングアセンブリ部材2Lによって保持された第2エンジン4Lとを有する民間航空機である。ただし、他の実施形態において、胴体にウィングを取り付けるための本明細書に記載の方法及びシステムは、他の航空機、例えば上記以外の民間航空機及び非民間航空機、に用いることもできる。例えば、航空機胴体に取り付けられた1つまたは複数のエンジンを有する輸送機に用いることもできる。
【0016】
図2は一部切欠き等角投影図であり、
図3は一部切欠き前方または後方図であり、それぞれ、第1実施形態のワンピース取り付け部材(one-piece attachment member)30を示している。当該取り付け部材は、一部が図示されたウィングボックス10の角部と機体構造体50とに接合されている。ウィングボックス10は、ウィングボックス10の上面12、及び、ウィングボックス10の前方垂直外面または後方垂直外面14のどちらかが確認できるよう、部分的に図示されている。この前後の向きは、
図1に両方が示されているように、ワンピース取り付け部材30が、ウィングボックス10の前方部または後方部のどちらに配置されるかによって決まる。ワンピース取り付け部材30を、ウィングボックス10の外側部材(outboard member)に追加的に配置することによって、機体部材50を介して、航空機胴体3に固定して取り付けることができ、当該機体部材は、機体外板52と台形パネル54の両方を含みうる。台形パネル54と組み合わせて用いた場合、機体部材50に対する垂直方向の負荷を低減することができる。機体外板52は、台形パネル54の外側部材(図示せず)も取り囲む場合もある。
【0017】
ワンピース取り付け部材30は、留め具33によって機体部材50、特に機体外板52、に固定連結された上方延出部32と、機体部材50の反対側に遠位端36を有する内向き(inboard)延出部34とを含む。当該遠位端は、延出部リンク60を介して、ウィングボックス10の垂直部材14にウィングボックス取り付け部品70によって連結されている。ワンピース取り付け部材30は、下方延出部38をさらに含み、当該下方延出部は、留め具39によって、ウィングボックス10の垂直部14に固定連結されており、さらに当該留め具によって台形部材54に、あるいは、直接、機体外板52の外側部材(図示せず)に、固定連結されている。
【0018】
内向き延出部34は、ウィングボックス10の上面12によって規定される平面から、距離Dだけ上方に配置されている。機体外板52の締結位置、及び、ウィングボックス10/台形部材54の締結位置にそれぞれ連結された上方延出部32及び下方延出部38の取り付け面から内向き延出部34の遠位端36が長手方向に相当に離間しているため、曲げモーメントM(
図3参照)は、一時的または定常の負荷による曲げに対する抵抗や剛性を向上させる。内向き延出部34の遠位端36から曲げモーメントMの中央線までの内向き距離Xを、上方延出部32及び下方延出部38の幅W(
図3参照)よりも大きくすることによって、この剛性の向上が達成される。
【0019】
図4は一部切欠き等角投影図であり、
図5は一部切欠き前方または後方図であり、それぞれ、第2実施形態のツーピース取り付け部材40を示している。当該取り付け部材は、一部が図示されたウィングボックス10の角部と機体構造体50とに接合されている。本明細書で提示された様々な実施形態間で類似の要素は、同様の参照数字によって示している。ウィングボックス10は、ウィングボックス10の上面12、及び、ウィングボックス10の前方垂直外面または後方垂直外面14のどちらかが確認できるよう、部分的に図示している。ツーピース取り付け部材(two-piece attachment member)40を、ウィングボックス10の外側部材上にも追加的に配置することによって、機体部材50を介して、航空機胴体3に固定して取り付けることができ、当該機体部材は、機体外板52を含みうる。
【0020】
ツーピース取り付け部材40は、留め具43によって機体部材50、特に機体外板52、に固定連結された上方延出部42と、機体部材50の反対側に遠位端46を有する内向き延出部44とを含む。当該遠位端は、延出部リンク60を介して、ウィングボックス10の垂直部14にウィングボックス取り付け部品70によって連結されている。ツーピース取り付け部材40は、下方延出部48をさらに含み、当該下方延出部は、留め具49によって、台形部材54及びウィングボックス10の垂直部14に固定連結されている。上方延出部42と下方延出部48とは、留め具41によって固定連結されている。
【0021】
内向き延出部44は、ウィングボックス10の上面12によって規定される平面から、距離Dだけ上方に配置されている。機体外板52の締結位置、及び、ウィングボックス10/台形部材54の締結位置にそれぞれ連結された上方延出部42及び下方延出部48の取り付け面から内向きから内向き延出部44の遠位端46が長手方向に相当に離間しているため、曲げモーメントM(
図5参照)は、一時的または定常の負荷による曲げに対する抵抗や剛性を向上させる。内向き延出部44の遠位端46から曲げモーメントMの中央線までの内向き距離Xを、上方延出部42及び下方延出部48の幅W(
図5参照)よりも大きくすることによって、この剛性の向上が達成される。
【0022】
図6は、
図4〜
図5に示した第2実施形態のツーピース取り付け部材を、ウィングボックス10及び機体部材50に接合する方法を示す分解等角投影図である。当該方法では、留め具43を用いて、上方延出部42/内向き延出部44を、機体部材50、特に、機体外板52に取り付ける。取り付けリンク60は、この場合、内向き延出部44の遠位端46に取り付けられるが、これに代えて、ウィングボックス取り付け部品70に取り付けてもよい(図示せず)。当該方法では、留め具49を用いて、下方延出部48を、ウィング台形部材54及びウィングボックス10の垂直部14に取り付ける。取り付け対象部材48、54、70が、それぞれのウィングボックス取り付け位置に取り付けられた後で、且つ、上方延出部42と下方延出部48とが互いに固定連結される前に、ウィングボックス10の内部キャビティに対して耐圧試験を行うことによって、その構造的な完全性を判定することができる。
【0023】
耐圧試験を行った後、上方延出部42/内向き延出部44及びこれらが取り付けられた機体部材50を含む第1アセンブリを、下方延出部48及びウィングボックス10を含む対応する第2アセンブリに対して、位置合わせする。次に、第1アセンブリと第2アセンブリとを、上方延出部42の連結用下側部材と下方延出部48の連結用上側部材とで互いに接触させて、留め具41で固定連結する。次に、取り付けリンク60を、内向き延出部44の遠位端46と、ウィングボックス10に取り付けられたウィングボックス取り付け部品70とに連結してもよい。
【0024】
追加的にはウィングボックス10内に配置された燃料タンクの任意の外部部品に対して、機体圧力限界に共通の二次的な燃料バリア付与プロセス(secondary fuel barrier application process)を、ウィングアセンブリ2を航空機胴体3に連結する前に、制御された環境下で行ってもよく、当該バリアは、機体に対するウィングの接合の際に破られることはない。
【0025】
ウィングアセンブリ2は、大部分の力を、取り付け部材(30または40)、及び、リンク60が取り付けられたウィングボックス取り付け部品70を介して、機体部材50を経由して航空機胴体3に伝える。第1の負荷状態は、航空機1が地上にあり、ウィングアセンブリ2に対する揚力が存在しない時であり、この状態では、取り付け部材(30または40)は、航空機胴体3の重量を支え、当該重量をウィングアセンブリ2を介して主着陸装置(図示せず)に伝える。航空機1が離陸すると、第2の負荷状態が起こる。この状態では、取り付け部材(30または40)は、飛行中のウィングアセンブリ2によって引き起こされる揚力負荷を、取り付け部材(30または40)、及び、リンク60が取り付けられたウィングボックス取り付け部品70を介して、航空機胴体3に伝える。
【0026】
図7は、ウィングアセンブリを
図6に示したように航空機胴体に取り付ける方法を示す、論理的なフローチャートプロセスである。当該方法では、まず、100においてウィングボックス10を作製し、102においてウィングボックス10に連結する航空機胴体3を作製する。104において、取り付け部材30、40を、ウィングボックス10の外面14、または、機体部材50の外側部材52のいずれかに取り付ける。上述したように、当該取り付け部材は、例えば、ウィングボックス10または機体部材50のいずれかにも取り付けられるワンピース構造30を含むか、あるいは、ウィングボックス10及び機体部材50のそれぞれに各ピースを連結した後に両者を接合するツーピース構造40を含む。106において、機体部材50をウィングボックス10に対して位置合わせし、取り付け部材が、ワンピース構造30の場合には、対応する機体部材50またはウィングボックス10の対象面に連結されるようにし、ツーピース構造40の場合には、上側取り付け部品42と下側取り付け部品48とが互いに連結されるようにする。加えて、ワンピース構造またはツーピース構造の場合において、内向き延出部上の取り付けリンク60を、ウィングボックス取り付け部品70に対して、位置合わせする。最後に、108において、複数の留め具を用いて機体部材50をウィングボックス10に締結することによって、取り付け部材が機体部材50をウィングボックス10に対して固定保持した状態となる。
【0027】
図8は、地上位置及び飛行位置における、航空機胴体に対する負荷過程を示す、論理的なフローチャートプロセスである。
図7に示した方法と同様に、200においてウィングボックス10が作製され、202においてウィングボックス10に連結する航空機胴体3が作製される。204において、取り付け部材30、40を、ウィングボックス10の外面14、または、機体部材50の外側部材52のいずれかに取り付ける。上述したように、当該取り付け部材は、例えば、ウィングボックス10または機体部材50のいずれかにも取り付けられるワンピース構造30を含むか、あるいは、ウィングボックス10及び機体部材50のそれぞれに各ピースを連結した後に両者を接合するツーピース構造40を含む。206において、機体部材50をウィングボックス10に対して位置合わせし、取り付け部材が、ワンピース構造30の場合には、対応する機体部材50またはウィングボックス10の対象面に連結されるようにし、ツーピース構造40の場合には、上側取り付け部品42と下側取り付け部品48とが留め具41によって互いに連結されるようにする。加えて、ワンピース構造またはツーピース構造の場合において、内向き延出部上の取り付けリンク60を、ウィングボックス取り付け部品70に対して、位置合わせする。208において、複数の留め具を用いて機体部材50をウィングボックス10に締結することによって、取り付け部材が機体部材50をウィングボックス10に対して固定保持した状態となる。当該方法は、さらに、航空機1が地上にあり、ウィングアセンブリ2に対する揚力要素が存在しない状態である第1の負荷状態210を含み、この状態では、取り付け部材30、40は、航空機胴体3の重量を支え、当該重量をウィングアセンブリ2及びウィングボックス10を介して主着陸装置(図示せず)に伝える。航空機1が離陸すると、第2の負荷状態212が起こる。この状態では、取り付け部材(30、40)は、飛行中のウィングアセンブリ2によって引き起こされる揚力負荷を、ウィングアセンブリ2からウィングボックス10を介して航空機胴体3及び機体部材50に伝える。
【0028】
航空機胴体3からウィングボックス10を分離したことで、ウィングボックスストリンガーと航空機胴体スタブビーム(図示せず)の両方を、軽量化に最適なものとすることができる。さらに、航空機胴体3に連結する前に、ウィングアセンブリ2、特に、ウィングボックス10を、別個に且つ所望どおりに完成させるとともに、その耐圧試験及び就航準備も行うことができる。航空機胴体支持部材30、40は、ワンピースの実施形態の場合は、その全体を機体50またはウィングボックス10のいずれかに取り付けることができ、ツーピースの実施形態の場合は、機体50及びウィングボックス10に別々に取り付けた後に連結することができる。ウィングボックス10を機体50に取り付ける前にワンピースの実施形態30の全体を機体50に取り付ける場合は、ウィングと機体とを接合する際に取り付け用の留め具がウィングボックス10の燃料バリアを貫通するため、機体50に連結する前にウィングボックス10の耐圧試験を行うことの構造上の利点はなくなるであろう。
【0029】
本明細書に開示した実施形態は、ウィングボックス10の前方または後方垂直面14に対する航空機胴体フレーム3の連結を、ウィングアセンブリ2とウィングボックス10内のウィング燃料タンクとの共通の境界面から切り離し可能とするものであり、これは、ウィングボックス10の外側の垂直取り付けインターフェース32、38及び42、48を介して、航空機胴体フレーム取り付け部材30、40をウィングアセンブリ2のウィングボックス10に取り付けることだけで実現される。この構成によれば、ウィングボックス10を航空機胴体3に接合する前に完成させることができる。また、この構造によれば、ウィング2に接合する前に、航空機胴体フレーム全体を一体構造として航空機胴体外板52に取り付けることができ、これによって、重量を低減し、複数のフレーム部品同士を接合する工程を省くことができる。この構成によれば、ウィングボックスに機体フレームのスタブビームの取り付けるという困難な作業を大幅に減らすことによって、ウィングと機体との接合位置における軽量化及び製造作業の削減を実現することができる。
【0030】
上述した要旨は、単に例示的なものであり、開示を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書で説明した要旨に対し、例示した実施形態ならびに図示及び説明した実用例に従うことなく、且つ、以下の特許請求の範囲に記載される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の修正及び変更を行ってもよい。