(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
主軸の軸線方向が上下方向であって本体ハウジングには上部室と下部室が形成され、上部室にメインバネが配置され、下部室に緩衝ピストンが配置されている請求項2記載のドアクローザ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それゆえに本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされ、扉が全閉となる直前のトルクが大きいというカム式の利点を活かしつつ、作動油の流量調整が容易なドアクローザを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係るドアクローザは、扉の開閉動作に伴って回転する主軸と、閉じ力を発生させるためのメインバネと、閉扉動作を緩衝すべく作動油を流量制御流路に押し流すための緩衝ピストンとを備え、主軸には、開扉動作時にメインバネを弾性変形させ、閉扉動作時にメインバネの閉じ力を受けるカムが設けられ、主軸の回転に伴って緩衝ピストンを主軸の軸線方向に沿って移動させるネジ送り機構を備えていることを特徴とする。
【0006】
該構成のドアクローザにあっては、主軸にメインバネを弾性変形させるためのカムが設けられている。即ち、カム式の構成を採用しているので、扉が全閉となる直前において主軸に大きなトルクを発生させることができ、扉を全閉状態まで確実に閉じることができる。従って、特に、気密性の高い部屋等において有効である。また、主軸の回転に伴って緩衝ピストンを主軸の軸線方向に沿って移動させるネジ送り機構を備えているので、カムによる制約を受けることなく緩衝ピストンの移動量を容易に大きく設定することができる。従って、閉扉動作時において緩衝ピストンを大きく移動させることができて、流量制御流路を通過する作動油の流量を多くすることができる。
【0007】
ところで、ドアクローザにはリンク型のものとスライド型のものが存在する。リンク型のものは、主軸とブラケットとの間に二本のリンクアームが介在するタイプであり、スライド型のものは、二本のリンクアームではなく、一本のアームのみが存在するタイプである。即ち、スライド型のドアクローザは、アームの基端部が主軸に相対回転不能に固着されてアームと主軸とが一体となって回転し、アームの先端部は、例えば扉枠に固定されているレールに案内されてそのレールに沿って水平方向にスライドする。このようなスライド型のドアクローザはリンク型のものに比して美観に優れているという利点がある。本発明はリンク型のドアクローザとスライド型のドアクローザの何れにも適用可能であるが、スライド型のドアクローザの方がリンク型のドアクローザよりも、扉が全閉となる直前において大きなトルクを発生させることが相対的に困難であることが多い。従って、特にスライド型のドアクローザに適しており、スライド型のドアクローザであっても、扉が全閉となる直前において大きなトルクを容易に発生させることができる。
【0008】
また、本体ハウジングに二つの室が設けられ、一方の室にメインバネが配置され、他方の室に緩衝ピストンが配置されていることが好ましい。二つの室を設けることによりメインバネと緩衝ピストンをそれぞれ個別に分けて配置することができる。上述の特許文献1に記載された構成では、一つの室にメインバネと緩衝ピストンが配置されて、しかも緩衝ピストン側にも別途のバネを設けているので、構造が複雑であるのみならず、メインバネと別途のバネとが互いに干渉する結果、緩衝ピストンをカムでスムーズに移動させることが難しく、また閉じ力も不安定になりやすいという問題がある。これに対して、本体ハウジングに二つの室を設けてそれらの室にそれぞれメインバネと緩衝ピストンを分けて配置することにより、メインバネの動作と緩衝ピストンの動作との干渉を確実に防止することができ、閉じ力を正確に発生させることができると共に、作動油も流量制御流路にスムーズに押し流すことができる。
【0009】
更に、主軸の軸線方向が上下方向であって本体ハウジングには上部室と下部室が形成され、上部室にメインバネが配置され、下部室に緩衝ピストンが配置されていることが好ましい。主軸の軸線方向が上下方向であって、二つの室が上部室と下部室であるので特に装置の前後方向の寸法を小さくコンパクトなものにすることができる。
【0010】
また更に、上部室は、横方向に延びる形状であり、下部室は、上下方向に延びる形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明に係るドアクローザにあっては、カムとは別にネジ送り機構を設けて該ネジ送り機構によって緩衝ピストンを主軸の軸線方向に沿って移動させるようにしているので、緩衝ピストンを大きく移動させることが可能となって作動油の流量調整が容易となり、しかも、カムによってメインバネを弾性変形させるので、扉が全閉となる直前に大きなトルクを発生させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態にかかるドアクローザについて
図1〜
図4を参酌しつつ説明する。本実施形態におけるドアクローザは、
図1〜
図4に示すようにドアクローザ本体1を備えている。尚、
図1及び
図2は扉が全閉状態のときを示しており、
図3及び
図4は扉が全開状態のときを示している。尚、後述の
図5〜
図9は何れも全閉状態を示している。
【0014】
ドアクローザ本体1は、本体ハウジング2と、該本体ハウジング2に軸支されて上下方向の軸線まわりに回転する主軸3とを備えている。該主軸3には図示しないアームの基端部が相対回転不能に取り付けられる。ドアクローザ本体1は、上下方向の軸線まわりに回動する扉に取り付けられるかあるいは扉枠に取り付けられるが、例えば扉に取り付けられる場合では、扉枠には水平方向に延びる図示しないレールが取り付けられ、該レールにアームの先端部が係合する。扉が回動すると、その開閉動作に応じてアームと主軸3とが一体となって回転し、アームの先端部がレールに案内されつつ水平方向にスライドする。
【0015】
本体ハウジング2は、全体としては水平方向(横方向)に長い横長の直方体形状であるが、前後方向(紙面奥行き方向)の寸法に対して上下方向(縦方向)の寸法が長い形状となっている。尚、
図1において、向かって右側を横方向一端側とし左側を横方向他端側として、以下の説明では単に右側、左側と称することとする。尚、扉の回動中心はドアクローザ本体1に対して向かって左側に位置することになる。
【0016】
本体ハウジング2には横方向に延びる上下二つの室が形成されている。該上部室4と下部室5とは互いに上下に並んで形成されていてその軸線方向は横方向であって互いに平行であり、何れの室にも作動油が充填されている。上部室4と下部室5とは両者の間に位置する隔壁6によって区切られてそれぞれ独立した室となっているが、該隔壁6には貫通した連通孔7が形成されていて該連通孔7によって上部室4と下部室5とは互いに連通している。また、下部室5は本体ハウジング2の横方向の全長に近い長さを有している一方、上部室4は下部室5よりは短い。下部室5は、本体ハウジング2に横方向に貫通する貫通孔を形成すると共にその貫通孔の両端開口部をそれぞれ横キャップ8で閉塞することにより形成されている。一方、上部室4は下部室5に対して右側に偏って形成されている。即ち、上部室4は、本体ハウジング2に右側の端部のみが開口する非貫通の横孔を形成してその右側の端部開口部を横キャップ8で閉塞することにより形成されている。そして、上部室4には扉を閉じるための閉じ力を発生させるメインバネが収容されており、下部室5には閉扉動作を緩衝すべく作動油を流量制御流路9に押し流すための緩衝ピストン10が収容されている。
【0017】
かかる上部室4と下部室5とを共に貫くようにして主軸3が配置されている。主軸3は、本体ハウジング2の横方向中央よりも左側に偏って配置されており、上部室4の左側の端部近傍に位置している。即ち、主軸3は、扉の回動中心側にオフセットされて配置されており、従って、主軸3からドアクローザ本体1の左側の端部までの寸法に対して、主軸3からドアクローザ本体1の右側の端部までの寸法が長くなっている。主軸3は、本体ハウジング2の上面と下面に取り付けられた上キャップ11と下キャップ27にそれぞれ軸受けを介して回転可能に支持されていると共に隔壁6にも軸受けを介して回転可能に支持されている。主軸3の下端部は下キャップ27から突出していない一方、主軸3の上端部は上キャップ11から上方に所定長さ突出しており、該主軸3の上方突出部に図示しない上記アームの基端部が相対回転不能に取り付けられる。
【0018】
主軸3の上部にはハート状のカム12が設けられている。該カム12は主軸3とは別部材の構成ではなくて主軸3と一つの部材を構成するように一体的に加工形成されたものである。該カム12は上部室4に対応した高さに位置していて、開扉動作時にはメインバネを圧縮させ、閉扉動作時にはメインバネからその弾性復元力による閉じ力を受けるようになっている。該カム12は、その周面をカム面とする板カムであって、全周のうちの所定角度領域のみを扉の開閉動作において使用する区間とするものであり、凹部12aから頂部12bまでの片方の角度領域が使用区間12cである。
【0019】
カム12には、上下方向の支軸13に支持されたカムフォロアーとしてのコロ14が当接している。コロ14の支軸13は上部室4内を上部室4の軸線方向である横方向に沿って移動可能なバネ支持体15に取り付けられており、該バネ支持体15がその右側に位置するメインバネを開扉動作時に押圧して圧縮させる。尚、バネ支持体15には横方向に貫通する貫通孔が形成されていて該貫通孔を作動油が通過できる。
【0020】
メインバネは大小二つのコイルバネ16,17からなる。大径のコイルバネ16と小径のコイルバネ17は互いに同軸状に配置されている。即ち、大径のコイルバネ16の内側に小径のコイルバネ17が挿入されている。また、上部室4の横キャップ8の中心には調整軸18が横方向に貫通していて所定長さ上部室4内に突出しており、その突出部分には雄ネジ部が形成されている。該調整軸18の雄ネジ部にはバネ力調整ナット19が螺合している。調整軸18は横キャップ8にその軸線周りに回転可能に支持されており、本体ハウジング2の外側に僅かに突出した調整軸18の右側の端部(外側の端部)には調整ギア20が取り付けられている。該調整ギア20を図示しない調整具によって回転させることにより、調整軸18を回転させてバネ力調整ナット19を横方向に移動させることができる。該バネ力調整ナット19とバネ支持体15との間に大径のコイルバネ16が介装されており、従って、そのバネ力は調整可能である。一方、小径のコイルバネ17は、バネ支持体15と調整軸18の左側の端部(内側の端部)との間に介装されており、従って、そのバネ力は調整不能である。
【0021】
図2に示すように全閉時においてコロ14はカム12の凹部12aに係合した状態にあり、そこから扉が開いていくとカム12は
図2において時計回りに回転する。カム12の凹部12aから頂部12bまで時計回りにおいて180度を越えた角度、一例としては約225度の角度を有していて、
図4に示すように扉が最大180度開いた状態においてもコロ14はカム12の頂部12bには到達しない。このようにカム12は、全周のうち扉の開閉動作において使用する使用区間12cが、残りの周長である未使用区間に比して長くなった非対称形状となっている。
【0022】
主軸3の下部にはピニオンギア21が一体的に形成されている。該ピニオンギア21も主軸3とは別部材の構成ではなくて主軸3と一つの部材を構成するように一体的に加工形成されたものである。該ピニオンギア21はカム12から所定高さ下側にあって下部室5に対応した高さに位置しており、扉の開閉動作に応じて緩衝ピストン10を横方向に移動させるための緩衝用駆動部を構成している。緩衝ピストン10はその両端部に下部室5の壁面と摺動するヘッド部22,23をそれぞれ有しており、両ヘッド部22,23間にラック24が形成され、該ラック24に主軸3のピニオンギア21が螺合している。両ヘッド部22,23にはそれぞれ貫通孔が中心部分に形成されていて、左側のヘッド部22の貫通孔には逆止弁25が設けられている。開扉動作時には緩衝ピストン10が向かって右側に移動するが、その時には逆止弁25の弁体であるボールが左側に移動して弁を開き、作動油は貫通孔を挿通できる。その一方、閉扉動作時には緩衝ピストン10が向かって左側に移動するのでその時には逆止弁25のボールが油圧によって右側に押されて貫通孔を閉じ、作動油は貫通孔を挿通できない。閉扉動作時に緩衝ピストン10によって左側に押される作動油は迂回路である流量制御流路9に押し込まれ、該流量制御流路9を通って左側のヘッド部22よりも右側の領域に移動する。流量制御流路9には、流量制御流路9を流れる作動油の流量を制御するための調整弁26が配置されている。該調整弁26は複数具体的には三つ配置されている。
【0023】
本実施形態では扉の内部にドアクローザ本体1が配置される、いわゆるコンシールドタイプのドアクローザの場合を例にして説明しているので、複数の調整弁26は何れも本体ハウジング2の上面に配置されていて上方から調整可能である。緩衝ピストン10は下部室5に配置されているので、流量制御流路9は下部室5の壁面から本体ハウジング2の上面近傍まで形成されている。本体ハウジング2においてカム12の左側には上部室4が形成されていない。その本体ハウジング2の上部のうち上部室4が形成されていない左側の部分に、流量制御流路9が形成されている。つまり、主軸3を中心として、右側にはメインバネが配置され、それとは反対側である左側に流量制御流路9が形成されている。
【0024】
また、本実施形態のドアクローザを使用した場合、扉は最大180度まで開くことができ、その180度開いた全開状態を
図3及び
図4に示している。その扉の全開状態において緩衝ピストン10は右側に最大限移動した状態にあり、その状態において緩衝ピストン10は下部室5の右側の横キャップ8には当接しておらず両者は離間している。即ち、下部室5は、緩衝ピストン10が開扉側である右側に最大限移動した箇所よりも更にその右側(開扉側)に所定長さ余裕を持って長く形成されており、この余裕分、つまり
図3及び
図4において緩衝ピストン10と右側の横キャップ8との間の部分が下部室5の延長部5aとなっている。尚、この延長部5aの長さは緩衝ピストン10のストロークよりも長いものとなっていてその数倍程度の長さを有している。
【0025】
尚、扉の開閉動作に伴って主軸3が回転し、その回転によってバネ支持体15と緩衝ピストン10が共に移動するが、その移動量は緩衝ピストン10の方が大きい。また、
図3及び
図4に示すように、バネ支持体15と緩衝ピストン10が最大限右側に移動した状態において、バネ支持体15の右側の端面と緩衝ピストン10の右側の端面は横方向に略同じ位置にある。そして、バネ支持体15と緩衝ピストン10によって閉塞されないようにその位置よりも右側に上記連通孔7が形成されている。
【0026】
また、主軸3は上下二つの軸部が互いに上下方向に連結一体化された上下二分割構造となっている。即ち、主軸3は上側軸部30と下側軸部31とからなり、上側軸部30の下端部と下側軸部31の上端部が互いに相対回転不能に連結されている。該連結構造は種々あるが、本実施形態では上下方向のセレーション32によって連結されている。上側軸部30にはカム12が一体的に形成されており、下側軸部31にはピニオンギア21が一体的に形成されている。そして、上側軸部30は本体ハウジング2の上面から挿入され、下側軸部31は本体ハウジング2の下面から挿入されて、隔壁6の位置においてセレーション32によって互いに連結されている。このように主軸3を上下二分割構造とすることにより、主軸3にカム12とピニオンギア21とを何れも主軸3とは別部材の構成ではなく一つの部材として一体的に高精度に加工形成することが容易になる。また、上側軸部30と下側軸部31をそれぞれ本体ハウジング2の上面と下面から挿入することができるので、容易に組み立てることができる。
【0027】
以上のように構成されたドアクローザにあっては、メインバネをカム12で圧縮させるので、扉が所定角度開いた以降は比較的軽い力で楽に例えば180度の全開状態まで開けることができる。また、扉が全閉となる直前においてはカム12によって主軸3に大きな閉扉方向のトルクを発生させることができるので、扉を全閉状態まで確実に閉じることができる。従って、特に気密性の高い部屋等における使用に適しており、また、スライド型のドアクローザに特に有効である。
【0028】
そして、主軸3には、カム12とは別に、緩衝ピストン10を移動させるための緩衝用駆動部としてのピニオンギア21を形成しているので、カム12の制約を受けることなく緩衝ピストン10を容易に大きく移動させることができる。従って、閉扉動作時に緩衝ピストン10を大きく移動させて十分な量の作動油を流量制御流路9に押し流すことができ、調整弁26による作動油の流量調整を容易に行うことができる。
【0029】
また、カム12とピニオンギア21を上下に位置ずれして配置しているので、両者の干渉を容易に防止でき、それらの配置も容易である。しかも、上部室4と下部室5とを上下に平行に並べて形成していることとも相まってドアクローザ本体1の前後方向の寸法を小さくすることができるので、扉の内部に配置するコンシールドタイプに特に適している。
【0030】
更に、上部室4と下部室5にメインバネと緩衝ピストン10を別々に配置しているので、メインバネの動作と緩衝ピストン10の動作の干渉を容易に防止することができ、閉じ力をカム12の設計どおりに正確に発生させることができ、流量制御流路9に作動油をスムーズに押し流すことができる。また、上部室4にメインバネが配置されているので、そのバネ力を調整するための機構も調整弁26と共に本体ハウジング2の上部に位置することになり、バネ力と作動油の流量の何れも上方から容易に調整することができ、特にコンシールドタイプにおける調整作業が容易となる。
【0031】
また、下部室5の右側に延長部5aが形成されているので、作動油の量をその分増大させることができ、作動油の劣化を抑制することができる。特に、連通孔7によって上部室4と下部室5とが連通しているので、室を上下に独立して配置していても作動油としては全体として一つの大きな容量を有することになり、上部室4と下部室5が互いに連通していない構成に比して作動油が安定し、制動も安定する。
【0032】
また更に、作動油には温度上昇時による作動油の膨張を吸収緩和するためにエアを混入させている。そのエアは上部室4に溜まることになるが、その上部室4にはメインバネを配置して、緩衝ピストン10を下部室5に配置しているので、エアが流量制御流路9に入り込みにくくなり、エアが流量制御流路9を通過する際に発生する異音を抑制することができる。
【0033】
尚、本実施形態では上部室4にメインバネを配置し下部室5に緩衝ピストン10を配置したが逆の配置であってもよい。即ち、
図5のように上部室4に緩衝ピストン10を配置すると共に下部室5にはメインバネ(大径のコイルバネ16と小径のコイルバネ17)を配置し、上側軸部30にピニオンギア21を形成し、下側軸部31にカム12を形成するようにしてもよい。尚、
図5に示す態様では下キャップ27を設けておらず、従って本体ハウジング2の上面から上側軸部30と下側軸部31を挿入する。この形態では、上側軸部30と下側軸部31との連結は角軸部33を採用している。また、上部室4の右側には
図1の下部室5の延長部5aと同様に延長部4aが設けられている。更に、下部室5にもその左側に延長部5aが設けられている。即ち、下部室5には、カム12に対してメインバネが配置されている側とは反対側である左側に延長部5aが形成されているので、上部室4と下部室5は互いの横方向の長さが略等しくなっている。このように上部室4と下部室5に共に延長部4a,5aが設けられているので、作動油をより多量に充填することができ、作動油の劣化防止により一層効果がある。尚、この場合、上部室4に緩衝ピストン10を配置しているので、上部室4から上方に延びて形成された流量制御流路9は
図1の場合に比して短くなる。
【0034】
また、
図6のように緩衝ピストン10の右側に補助バネ40を設けてもよい。即ち、上部室4の延長部4aにバネ支持体41を配置し、該バネ支持体41と右側の横キャップ8との間に補助バネ40を配置する。バネ支持体41は緩衝ピストン10の右側のヘッド部23よりも大径(大型)とし、上部室4の壁面も所定長さだけ一段大径としていて、その所定長さの大径部分にバネ支持体41が摺動可能に配置されている。
図6は扉が全閉状態にあるときを示したものであるが、その全閉状態において、バネ支持体41は補助バネ40に押されて最も左側即ち緩衝ピストン10に接近した位置にあるが、バネ支持体41は上部室4の壁面の段差部に当接していてそれ以上左側には移動できず、緩衝ピストン10とは当接していなくて、緩衝ピストン10から右側に所定距離離間した位置にある。そして、扉が所定角度開くと緩衝ピストン10がバネ支持体41に当接し、それ以上の扉の開き角度において緩衝ピストン10がバネ支持体41を介して補助バネ40を押して圧縮させる。即ち、補助バネ40は扉が所定角度以上開いた場合に初めて初期状態(通常状態)からの圧縮変形を開始し、所定角度未満の開き角度では緩衝ピストン10によって押されずに初期状態にあって圧縮変形しない。尚、補助バネ40の初期状態は自然長であってもよいが所定量圧縮されていることが好ましい。また、圧縮開始時の扉の開き角度は任意に設定すればよいが例えば100度に設定できる。カム12を使用した構成では、開扉動作の開始直後から徐々に開くために必要な力が小さくなるので、軽い力で楽に扉を開くことができるという利点がある反面、逆に、全開状態から閉扉動作が開始される際にはメインバネからカム12に伝わる閉じ力が弱いという欠点もある。従って、上述のように補助バネ40を配置することにより、特に全開状態から閉じ始めの閉じ力を補助バネ40で補うことができ、確実に閉扉動作が開始されることになる。かかる補助バネ40は、
図1に示した構成にも同様に適用できる。
図1の場合には緩衝ピストン10が下部室5に配置されているので、その下部室5の延長部5aに補助バネ40を設けるようにすればよい。何れにしても、緩衝ピストン10が配置された室に延長部を設けてその延長部に補助バネ40を配置するようにすればよい。
【0035】
また更に、緩衝ピストン10を上述したのとは反対の向きに配置するようにしてもよい。例えば、
図7では上部室4に緩衝ピストン10を配置しているが、この緩衝ピストン10は、開扉動作時には左側に移動し、閉扉動作時には右側に移動する。逆止弁25は右側のヘッド部23に設けられる。尚、
図7の形態では右側のヘッド部23は主部50と該主部50の右側に連結一体化された延在部51とから構成されており、その延在部51の右側の端部に逆止弁25が設けられている。そして、流量制御流路9も本体ハウジング2の右側に設けられている。このように流量制御流路9を右側即ち扉の回転中心から離れた遠い側に配置することにより、主軸3よりも左側即ち扉の回転中心に近い側のドアクローザ本体1の寸法を短くすることができ、主軸3を扉の回転中心に接近させることができる。あるいはまた主軸3を扉の回転中心に位置させることも可能となり、扉の回転中心軸自体を主軸3とする構成も可能となる。尚、
図7の形態では下部室5の左側に延長部5aを設けている。
【0036】
尚、上記実施形態ではカム12とピニオンギア21をそれぞれ主軸3に一体的に加工形成していたが、カム12やピニオンギア21を主軸3とは別部材としてそれを主軸3に組み付けてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、主軸3にピニオンギア21を形成し緩衝ピストン10にラック24を形成したが、扉の開閉動作に応じて緩衝ピストン10を移動させるための緩衝用駆動部はこのようなラック&ピニオン機構には限られず種々の機構を採用でき、例えば、緩衝ピストン10にネジ部を形成して主軸3のネジ部と螺合させ、このネジ送り機構を緩衝用駆動部として、主軸3の回転に伴って緩衝ピストン10を主軸3の軸線方向に沿って移動させるようにしてもよい。例えば、
図8のように、本体ハウジング2に主軸3から横方向に延びる横長の上部室4と主軸3の軸線方向に沿って下方に延びる縦長の下部室5とを形成して、本体ハウジング2をL字状に形成する。主軸3の上部にはカム12を形成してその位置に対応した上部室4にはメインバネとしての大径のコイルバネ16と小径のコイルバネ17を配置し、下部室5に緩衝ピストン10を配置する。
【0038】
詳細には、上側軸部30とセレーション32を介して軸線方向に連結された下側軸部31は、セレーション32を有する軸主部60と、該軸主部60に上端部が固着されて下方に延びる円筒状の回転筒体61とを備えた構成とされている。回転筒体61の内周面には雌ネジ部61aが形成され、該雌ネジ部61aに緩衝ピストン10の外周面上部所定領域の雄ネジ部10aが螺合していて、主軸3即ち回転筒体61が回転することで緩衝ピストン10は回転筒体61の内側を上下に移動する。緩衝ピストン10の上部には逆止弁25が設けられており、緩衝ピストン10は開扉動作時には下降し、閉扉動作時には上昇して作動油を流量制御流路9に押し流す。緩衝ピストン10の上部の中心を調整ロッド62が上方に向けて貫通している。該調整ロッド62は主軸3とは独立しており、従って、主軸3が回転してもそれに伴って回転することはない。調整ロッド62は下キャップ27にねじ込まれていてその下端部は本体ハウジング2から下方に突出しており、そこには調整ギア63が固定されている。該調整ギア63に図示しない工具を係合させることにより調整ロッド62を回転させて、下キャップ27に対するねじ込み量が変化して調整ロッド62は上下に移動できる。調整ロッド62の上側所定領域は下方に向かって徐々に小径となるテーパ形状であり、そのテーパ部62aが緩衝ピストン10の上部の貫通孔を挿通している。緩衝ピストン10の上部の貫通孔と調整ロッド62との間には僅かな隙間が形成され、調整ロッド62を上昇させるとその隙間は広くなり逆に下降させると狭くなる。この隙間が流量制御流路9を構成し、調整ロッド62が調整弁として機能し、閉扉動作時に緩衝ピストン10が上昇すると、上部の貫通孔と調整ロッド62との間の隙間を作動油が通って下側に移動する。このように、本体ハウジング2に二つの室を設けて一方の室にメインバネを配置し、他方の室に緩衝ピストン10を配置するようにすることによって、メインバネの圧縮動作と緩衝ピストン10の移動動作の互いの干渉を容易に防止することができる。
【0039】
尚、カム12は上述したような非対称形状でなくてもよく、
図9のように全周のうち開閉動作において使用する使用区間12cと使用しない未使用区間とが等しい周長である対称形状としてもよい。
図9では凹部12aとカム12の中心と頂部12bとが一直線上にある。
【0040】
また、緩衝ピストン10にラック24を形成する場合においては、扉を所定の開き角度状態に保持するためのストップ機構をラック24に設けた、いわゆる内装式ストップ装置を備えるようにしてもよい。
【0041】
また更に、扉の内部にドアクローザ本体1が配置される、いわゆるコンシールドタイプのドアクローザの場合を例にして説明したが、扉の外面にドアクローザ本体1が設置される外付けタイプのドアクローザにも無論適用可能である。
【0042】
また、扉にドアクローザ本体1を配置してその主軸3を扉枠に相対回転不能に固定するか、あるいは逆に、扉枠にドアクローザ本体1を配置してその主軸3を扉に相対回転不能に固定するかにより、主軸3が扉の回動中心となるようにして用いてもよい。