特許第6159457号(P6159457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6159457
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ホイールアライメントの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   G01M17/007 R
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-183867(P2016-183867)
(22)【出願日】2016年9月21日
【審査請求日】2017年2月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515138757
【氏名又は名称】有限会社島田自動車工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 敏文
(72)【発明者】
【氏名】島田 文則
【審査官】 北川 創
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−011545(JP,U)
【文献】 特表2005−510411(JP,A)
【文献】 特開2011−002334(JP,A)
【文献】 特許第2880251(JP,B2)
【文献】 特許第3008718(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左前輪及び右前輪の一方をその切れ角がフルロックに対応する角度より小さい所定の角度となるように左方及び右方の一方に回転させた状態で測定される左前輪及び右前輪の他方の切れ角に少なくとも基づいて、ホイールアライメントに不具合が生じている原因がナックルアームの曲がりであることの蓋然性を判定すると共に、
ホイールアライメントに不具合が生じている原因がナックルアームの曲がりである蓋然性が高い場合に、前輪をフルロックとなるように左方及び右方のいずれか一方である第1方向に回転させた状態で測定される、左前輪及び右前輪の一方である測定対象前輪の切れ角と、前輪をフルロックとなるように前記第1方向とは逆の第2方向に回転させた状態で測定される前記測定対象前輪の切れ角との差を第1基準値と比較した結果に基づいて、前記測定対象前輪側のナックルアームが内側及び外側のいずれの方向に曲がっているかを判定することを特徴とするホイールアライメントの検査方法。
【請求項2】
右前輪をその切れ角が前記所定の角度となるように前記第1方向に回転させた状態で測定される左前輪の切れ角を第1切れ角とし、
左前輪をその切れ角が前記第1角度となるように前記第1方向とは逆の第2方向に回転させた状態で測定される右前輪の切れ角を第2切れ角とするとき、
前記第1切れ角と前記第2切れ角の差を第2基準値と比較した結果に少なくとも基づいて、ホイールアライメントに不具合が生じている原因がナックルアームの曲がりであるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のホイールアライメントの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールアライメントの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの四輪を有する車両においてホイールアライメントに不具合が生じている原因を検査することは、走行時の安定性を確保したりタイヤの偏摩耗を抑制したりするために重要である。特許文献1は、特許文献1の段落0023〜0025に記載されているように、ホイールアライメントの不具合の原因を以下のように検査する。ハンドルをフルロックの状態まで左に切ったときの内輪及び外輪間の切れ角の差とハンドルをフルロックの状態まで右に切ったときの内輪及び外輪間の切れ角の差とのずれの大きさを評価する。また、同様の評価を、ハンドルをフルロックより小さい切れ角まで切った状態でも行う。そして、2つの評価結果に基づいて、ラックの位置ずれ等が原因であるかナックルアームの曲がりが原因であるかを区別している。次に、特許文献1の段落0028〜0031及び表2に記載されているように、フルロック時に測定された切れ角と基準値との比較に基づいて、左右のナックルアームのいずれに問題があるかとナックルアームの曲がりの状態とを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5945620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールアライメントの検査は迅速に行うことが要請される。
【0005】
本発明の目的は、ホイールアライメントに不具合を生じている原因をより迅速に検査できるホイールアライメントの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のホイールアライメントの検査方法は、左前輪及び右前輪の一方をその切れ角がフルロックに対応する角度より小さい所定の角度となるように左方及び右方の一方に回転させた状態で測定される左前輪及び右前輪の他方の切れ角に少なくとも基づいて、ホイールアライメントに不具合が生じている原因がナックルアームの曲がりであることの蓋然性を判定すると共に、ホイールアライメントに不具合が生じている原因がナックルアームの曲がりである蓋然性が高い場合に、前輪をフルロックとなるように左方及び右方のいずれか一方である第1方向に回転させた状態で測定される、左前輪及び右前輪の一方である測定対象前輪の切れ角と、前輪をフルロックとなるように前記第1方向とは逆の第2方向に回転させた状態で測定される前記測定対象前輪の切れ角との差を第1基準値と比較した結果に基づいて、前記測定対象前輪側のナックルアームが内側及び外側のいずれの方向に曲がっているかを判定する。
【0007】
本発明によると、まず、前輪の一方を切れ角が所定の角度となるように左右のいずれかに切った場合の他方の前輪の切れ角に少なくとも基づいて、ホイールアライメントの不具合の原因がナックルアームの曲がりであることの蓋然性を判定できる。次に、前輪をフルロックとなるように左右にそれぞれ切った場合の測定対象前輪の切れ角の差に基づいて、測定対象前輪側のナックルアームがどのように曲がっているかを判定できる。このように、比較的少ない工程により、ホイールアライメントの不具合の原因を迅速に検査することが可能である。
【0008】
また、本発明においては、右前輪をその切れ角が前記所定の角度となるように前記第1方向に回転させた状態で測定される左前輪の切れ角を第1切れ角とし、左前輪をその切れ角が前記第1角度となるように前記第1方向とは逆の第2方向に回転させた状態で測定される右前輪の切れ角を第2切れ角とするとき、前記第1切れ角と前記第2切れ角の差を第2基準値と比較した結果に少なくとも基づいて、ホイールアライメントに不具合が生じている原因がナックルアームの曲がりであるか否かを判定することが好ましい。これによると、切れ角の差に基づくことで、ホイールアライメントの不具合の原因がナックルアームの曲がりであるか否かを適切に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るホイールアライメントの検査方法の検査対象となる自動車の概略構成図である。
図2】本ホイールアライメントの検査方法の流れを示すフロー図である。
図3図1の自動車のステアリング機構の概略構成図であって、図3(a)はハンドルを左に切った場合を、図3(b)はハンドルを右に切った場合を示す。
図4図1の自動車のステアリング機構の概略構成図であって、図4(a)は左ナックルアームに内曲がりが生じている場合を、図4(b)は左ナックルアームに外曲がりが生じている場合を示す。
図5図1の自動車のステアリング機構の概略構成図であって、ラックに位置ずれが生じている場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係るホイールアライメント検査方法(以下、本検査方法とする。)について図1図5を参照しつつ説明する。図1は、本検査方法の対象となる自動車1の概略構成を示す。自動車1は、前輪2L(左前輪)及び2R(右前輪)、後輪3L及び3R、並びに、ステアリング機構10を有している。ステアリング機構10は、ハンドル20、ラック11、タイロッド12L及び12R、並びに、ナックルアーム13L及び13Rを有している。運転者がハンドル20を操作すると、ハンドル20の回転動作が図示しないピニオンギアを介してラック11に伝達され、ラック11が左右方向に移動する。ラック11の移動は、タイロッド12L及び12Rを通じてナックルアーム13L及び13Rに伝達され、ナックルアーム13L及び13Rが回転する。これにより、前輪2L及び2Rが回転する(図3(a)及び図3(b)参照)。自動車1にはエンジン、エンジンの駆動力を後輪3L及び3Rに伝達する伝達機構、ハンドル20以外の操作部など、運転者が自動車1を運転するための種々の構成が設けられている。
【0011】
以下、フルロックとは、ハンドル20を左方及び右方のいずれかに最大限に切ること、又は切った状態を意味するものとする。外側前輪又は内側前輪とは、前輪2L及び2Rのうち、自動車1の走行中にハンドル20を左右いずれかに切った場合に生じる自動車1の旋回運動において外側又は内側に配置される前輪を意味するものとする。前輪の切れ角とは、図1に示す直進状態を基準にした前輪の回転角度を意味するものとする。例えば、前輪の切れ角は、図3(a)又は図3(b)のα又はβが示す角度を示す。図3(a)のαは、前輪を左方に切った場合の外側前輪(前輪2R)の切れ角を示す。図3(a)のβは、前輪を左方に切った場合の内側前輪(前輪2L)の切れ角を示す。図3(b)のαは、前輪を右方に切った場合の外側前輪(前輪2L)の切れ角を示す。図3(b)のβは、前輪を右方に切った場合の内側前輪(前輪2R)の切れ角を示す。なお、以下においては、αnは内側前輪の切れ角を、βnは外側前輪の切れ角を示すものとする。
【0012】
本検査方法では、まず、図2のS1に示すように、自動車1に前調整を施す。前調整は、自動車1をアライメントテスター装置に設置する工程や、自動車1のスラストラインがその幾何学的中心線に一致するように後輪3L及び3Rのトー等を調整する工程を含んでいる。また、本検査方法では、ハンドル20がセンターにあるときに前輪2L及び2Rが図1に示す直進状態を取ることを想定している。このため、本検査前にハンドル20がセンターにあるときに前輪2L及び2Rが直進状態を取らない場合には、前調整において、ハンドル20がセンターにあるときに前輪2L及び2Rが直進状態を取るようにタイロッド12L及び12Rの長さを調整してもよい。
【0013】
本実施形態において使用されるアライメントテスター装置(以下、テスターという。)は、ハンドル20をフルロックとしたとき及び外側前輪の切れ角20°の状態としたときの前輪2L及び2Rのそれぞれの切れ角を計測可能である。外側前輪の切れ角20°の状態とは、外側前輪の切れ角が20°(第1角度)になった状態をいう。なお、アライメントテスター装置が、ハンドル20を内側前輪の切れ角20°の状態としたときの前輪2L及び2Rのそれぞれの切れ角を計測可能であってもよい。この場合、以下においてハンドル20を外側前輪の切れ角20°の状態としたときの前輪2L又は2Rの切れ角は、ハンドル20を内側前輪の切れ角20°の状態としたときの切れ角に代えてもよい。
【0014】
次に、ハンドル20を外側前輪の切れ角20°の状態になるように左方(第1方向)に切った状態における外側前輪(前輪2R)及び内側前輪(前輪2L)のそれぞれの角度をテスターによって測定する(S2)。次に、ハンドル20を外側前輪の切れ角20°の状態になるように右方(第2方向)に切った状態における外側前輪(前輪2L)及び内側前輪(前輪2R)のそれぞれの角度をテスターによって測定する(S3)。
【0015】
次に、ハンドル20をフルロックとなるように左方に切った状態における外側前輪(前輪2R)及び内側前輪(前輪2L)のそれぞれの角度をテスターによって測定する(S4)。次に、ハンドル20をフルロックとなるように右方に切った状態における外側前輪(前輪2L)及び内側前輪(前輪2R)のそれぞれの角度をテスターによって測定する(S5)。
【0016】
次に、S1〜S5において測定及び算出した値に基づき、ホイールアライメントに不具合が生じているか否か、及び、不具合が生じている場合にはその原因を判定する(S6)。
【0017】
S6の判定方法について詳細に説明する。この判定には、δ1=β1−β2、δ2=β3−α2、及び、δ3=β4−α1を用いる。δ1は、外側前輪の切れ角が20°となるようにハンドル20を回転させた場合の内側前輪の切れ角の左右差に対応する。δ2は、前輪がフルロックとなるようにハンドル20を左右それぞれに回転させた場合の前輪2Lの切れ角の差(内外差)に対応する。δ3は、前輪がフルロックとなるようにハンドル20を左右それぞれに回転させた場合の前輪2Rの切れ角の差(内外差)に対応する。そして、δ1の絶対値|δ1|が30′(第1基準値)以上であるか否かを判定する。|δ1|が30′未満である場合には、ホイールアライメントに不具合があるとすれば、その原因がナックルアーム13L及び13R以外にあると判定する。例えば、その原因は、ラック11の位置ずれやサイドメンバー、サスペンションメンバーの位置ずれ等、ナックルアーム13L及び13R以外のいずれかにあると考えられる。一方、|δ1|が30′以上である場合には、ナックルアーム13L又は13Rに曲がりが生じている蓋然性が高いと判定する。
【0018】
次に、δ2と基準値Lとを比較する。Lは、ハンドル20をフルロックとなるように左方に切った状態における当該車両の内側前輪(前輪2L)の切れ角から、ハンドル20をフルロックとなるように右方に切った状態における当該車両の外側前輪(前輪2L)の切れ角を引いた値の基準値である。かかる基準値は、例えば、自動車1やその他の自動車に関する過去の検査結果に基づいて取得される値であってもよいし、製造時の設定値として、自動車1のメーカーによって提供される。δ2がLより一定程度小さい(例えば、δ2−L≦−2°を満たす)場合、ナックルアーム13Lが外側に曲がっていると判定される。一方、δ2がLより一定程度大きい(例えば、δ2−L≧2°を満たす)場合、ナックルアーム13Lが内側に曲がっていると判定される。
【0019】
次に、δ3と基準値Rとを比較する。Rは、ハンドル20をフルロックとなるように右方に切った状態における当該車両の内側前輪(前輪2R)の切れ角から、ハンドル20をフルロックとなるように左方に切った状態における当該車両の外側前輪(前輪2R)の切れ角を引いた値の基準値である。かかる基準値は、例えば、自動車1やその他の自動車に関する過去の検査結果に基づいて取得される値であってもよいし、製造時の設定値として、自動車1のメーカーによって提供される値であってもよい。δ3がRより一定程度小さい(例えば、δ3−R≦−2°を満たす)場合、ナックルアーム13Rが外側に曲がっていると判定される。一方、δ3がRより一定程度大きい(例えば、δ3−R≧2°を満たす)場合、ナックルアーム13Rが内側に曲がっていると判定される。
【0020】
【表1】
【0021】
以上のようにホイールアライメントの不具合の原因を判定できる理由について説明する。当該判定は右の知見に基づいている:ラック11の位置ずれ等が原因でホイールアライメントに不具合が生じている場合には、フルロック時の切れ角にずれが生じやすい一方、フルロックでない時の切れ角にずれが生じにくい。これに対し、ナックルアーム13L又は13Rの曲がりが原因でホイールアライメントに不具合が生じている場合には、フルロック時及びフルロックでない時のいずれの切れ角にもずれが生じやすい。
【0022】
例えば、車体に対するラック11の設置位置にずれがあることで、ラック11に左右方向に関する位置ずれが生じているとする。この場合、上記のとおり、ハンドル20がセンターにあるときに前輪が直進方向に正しく向くように、タイロッド12L及び12Rの長さが調節されることになる。図5は、一例としてラック11が右にずれている場合において、タイロッド12L及び12Rの長さを調節することにより、ナックルアーム2L及び2R並びに左前輪2L及び右前輪2Rが直進方向を向いている状態を示す。この状態からハンドル20を左右いずれかに切っていくと、ラック11の移動に応じ、タイロッド12L及び12Rを介してナックルアーム13L及び13Rが回転する。ナックルアーム12L及び12Rに異常がない場合には、ラック11の移動に伴ってほぼ正常にナックルアーム12L及び12Rが回転していく。このため、例えば、前輪がフルロック近くに至るまでのいずれかの切れ角にあるときには、前輪の切れ角に正常な角度からのずれが生じにくい。しかしながら、前輪がフルロックになるまでハンドル20を回転させると、ラック11の当初位置にずれがあることから、このずれの分、フルロックのときのラック11の位置も正常位置からずれることになる。したがって、前輪がフルロック近くにあるときは切れ角が正常な角度からずれやすい。
【0023】
これに対し、ナックルアーム13L又は13Rに図4に示すような曲がりが生じている場合には、ラック11の所定量の移動に対するナックルアーム13L又は13Rの回転量(回転角の変化量)に、ナックルアームが正常である場合の回転量からのずれが生じる。そして、この回転量のずれは、ハンドル20を切り始める当初から生じると共に、前輪がフルロックの状態に近づくほど大きくなっていく。したがって、ナックルアーム13L又は13Rに曲がりが生じている場合には、前輪2L又は2Rの切れ角におけるナックルアームが正常である場合からのずれが、ハンドル20を切り始めてから前輪がフルロックになるまでの途中の切れ角、例えば、20°切れ角のときにもある程度大きい。そして、前輪の切れ角が大きくなるほどそのずれは大きくなる。また、ナックルアーム13Lに曲がりが生じている場合、前輪2Lをフルロックの状態まで左に切った場合と右に切った場合との切れ角の差δ2に基準値Lからのずれが生じる。基準値Lからのずれが正になるか負になるかは、ナックルアーム13Lの曲がりが外側であるか内側であるかに依存する。さらに、ナックルアーム13Rに曲がりが生じている場合、前輪2Rをフルロックの状態まで左に切った場合と右に切った場合との切れ角の差δ3に基準値Rからのずれが生じる。基準値Rからのずれが正になるか負になるかは、ナックルアーム13Rの曲がりが外側であるか内側であるかに依存する。
【0024】
以上説明した本実施形態によると、δ1〜δ3を算出し、これらをそれぞれ基準値と比較することにより、左右いずれのナックルアームが内側及び外側のいずれの方向に曲がっているかまで測定できる。したがって、比較的少ない工程によって迅速にホイールアライメントに不具合を生じている原因を検査できる。
【0025】
以下、上述の実施形態の変形例について説明する。上述の実施形態では、外側前輪の切れ角が20°のときの内側前輪の切れ角の左右差δ1=β1−β2に基づき、|δ1|が30′以上である場合には、ナックルアーム13L又は13Rに曲がりが生じている蓋然性が高いと判定している。しかしながら、かかる判定をβ1及びβ2のそれぞれに基づいて行ってもよい。例えば、右前輪の切れ角が20°となるようにハンドル20を左に切った場合の左前輪の切れ角の基準値(正常値)が21°であるとする。かかる基準値は、例えば、自動車1やその他の自動車に関する過去の検査結果に基づいて取得される値であってもよいし、製造時の設定値として自動車1のメーカーによって提供されてもよい。このとき、β1とこの基準値21°との差の絶対値が30′以上となった場合には、その時点でナックルアーム13L又は13Rに曲がりが生じている蓋然性が高いと判定してもよい。β1の代わりにβ2を用いても同様である。このように判定できるのは、外側前輪の切れ角20°のときに内側前輪の切れ角が基準値より所定の大きさ以上ずれている場合には、ラック11の位置ずれ等が原因である場合と比べ、ナックルアーム13L又は13Rの曲がりが原因である蓋然性が高いからである。その他、β1及びβ2と、前輪がフルロックの状態である場合に測定された切れ角α1、α2、β3及びβ4との両方に基づいてナックルアーム13L又は13Rの曲がりが原因であるか否かが判定されてもよい。例えば、前輪がフルロックの状態である場合の内外差の左右差Δ=α1−α2−β3+β4とδ1との両方に基づいてナックルアーム13L又は13Rの曲がりが原因であるか否かが判定されてもよい。具体例としては、|α1−α2−β3+β4|≧1°且つ|δ1|≧30′である場合にナックルアーム13L又は13Rの曲がりが原因である蓋然性が高いと判定してもよい。
【0026】
また、上述の実施形態においては、図2のS2及びS3の工程にて、外側前輪の切れ角が20°となるようにハンドル20を回転させている。しかし、図2のS2及びS3の工程にて、フルロックに対応する切れ角より小さい切れ角であれば、外側前輪の切れ角が20°とは異なる切れ角となるようにハンドル20を回転させてもよい。
【符号の説明】
【0027】
2L,2R 前輪
3L,3R 後輪
10 ステアリング機構
11 ラック
12L,12R タイロッド
13L,13R ナックルアーム
【要約】
【課題】ホイールアライメントに不具合を生じている原因をより迅速に検査できる。
【解決手段】外側前輪が切れ角20°となるようにハンドルを左に切った状態における外側前輪及び内側前輪の切れ角を測定する(S2)。次に、外側前輪が切れ角20°となるようにハンドルを右に切った状態における外側前輪及び内側前輪の切れ角を測定する(S3)。次に、前輪がフルロックとなるようにハンドルを左に切った状態における外側前輪及び内側前輪の切れ角を測定する(S4)。次に、前輪がフルロックとなるようにハンドルを右に切った状態における外側前輪及び内側前輪の切れ角を測定する(S5)。S2及びS3の切れ角の測定結果に基づいてナックルアームの曲りに原因があるか否かを判定し、S4及びS5の切れ角の差に基づいてナックルアームの曲りの状態を判定する。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5